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特許7154169未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用防着剤水分散液およびゴム製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用防着剤水分散液およびゴム製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20200101AFI20221007BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C08J7/04 Z CEQ
C09K3/00 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019059040
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158622
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】勢旗 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝生
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-144221(JP,A)
【文献】特開2013-124292(JP,A)
【文献】特開昭56-047476(JP,A)
【文献】特開昭63-130665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J7/04-7/06、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
C09K3/00-3/00,112、3/20-3/32、
B29C41/00-41/36、41/46-41/52、70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴム用防着剤であって、
下記成分(A)~(D)を含み、
前記未加硫ゴム用防着剤中における水の含有率が、前記未加硫ゴム用防着剤の全質量に対し40~90質量%であり、
下記成分(A)と下記成分(C)との質量比(A)/(C)が1を超えることを特徴とする未加硫ゴム用防着剤。ただし、下記成分(C)の質量は、下記成分(C)のラテックス中における水以外の成分の質量であり、前記未加硫ゴム用防着剤中における水の質量は、下記成分(D)以外の成分中における水の質量を含む。
(A)脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方
(B)ナトリウムおよびカリウム以外の金属の脂肪酸塩
(C)樹脂の水分散液であるラテックス(末端水酸基含有シロキサン化合物の水分散液を除く)
(D)水
【請求項2】
前記成分(C)において、前記樹脂が、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリルスチレン樹脂、およびアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項3】
前記成分(C)において、前記樹脂のガラス転移温度Tgが-40℃以上、かつ40℃未満である請求項1又は2記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項4】
前記成分(B)と前記成分(C)との質量比(B)/(C)が3以上、かつ60以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項5】
さらに、下記成分(E)を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤。
(E)前記成分(A)および(B)以外の界面活性剤
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤を水で希釈した未加硫ゴム用防着剤水分散液。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤または請求項6記載の未加硫ゴム用防着剤水分散液を未加硫ゴム用防着剤表面に付着させて防着処理する防着処理工程を含むことを特徴とするゴム製品の製造方法。
【請求項8】
前記防着処理工程が、請求項1から5のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤または請求項6記載の未加硫ゴム用防着剤水分散液を未加硫ゴム用防着剤表面に付着させる工程と、その後に前記未加硫ゴム用防着剤表面の水を揮発させる工程とを含む請求項7記載のゴム製品の製造方法。
【請求項9】
前記ゴム製品が、防着処理済み未加硫ゴムである請求項7または8記載のゴム製品の製造方法。
【請求項10】
前記ゴム製品が、加硫ゴムである請求項7または8記載のゴム製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用防着剤水分散液およびゴム製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムの生産加工の現場においては、未加硫ゴムの密着防止目的で、未加硫ゴムの表面に防着剤(密着防止剤ともいう)を付着させることが行われる。未加硫ゴム用防着剤としては、無機粉末を主成分とする未加硫ゴム用防着剤が広く用いられている。これらは、一般に、水分散液の形態にしてからゴム表面に付着させて用いることができる。例えば、特許文献1および2では、ベントナイト等の無機粉末を、防着効果向上のために、活性剤やラテックスと組み合わせて用いている。
【0003】
無機粉末を主成分とする未加硫ゴム用防着剤は、ゴムへの塗付時および塗布処理後等において、無機粉末由来の粉塵が作業環境を汚染する等のおそれがある。このため、脂肪酸石鹸と脂肪酸金属石鹸を主体とした組成物を未加硫ゴム用防着剤として用いることが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭50-149770号公報
【文献】特開2013-001720号公報
【文献】特開2017-088686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3のような防着剤は、防着処理後のゴム表面がヌメるために、ゴムを積み重ねて保管した場合、上に積んだゴムが滑り落ちるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、防着性に優れ、かつ、防着処理後のゴム表面のヌメりを低減可能な未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用防着剤水分散液およびゴム製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。

(A)脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方
(B)ナトリウムおよびカリウム以外の金属の脂肪酸塩
(C)ラテックス
(D)水
【0008】
本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液は、本発明の未加硫ゴム用防着剤を水で希釈した未加硫ゴム用防着剤水分散液である。
【0009】
本発明のゴム製品の製造方法は、本発明の未加硫ゴム用防着剤または本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を未加硫ゴム用防着剤表面に付着させて防着処理する防着処理工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防着性に優れ、かつ、防着処理後のゴム表面のヌメりを低減可能な未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用防着剤水分散液およびゴム製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記成分(C)が、樹脂の水分散液であり、前記樹脂が、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリルスチレン樹脂、およびアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0013】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記成分(C)が、樹脂の水分散液であり、前記樹脂のガラス転移温度Tgが-40℃~60℃であってもよい。
【0014】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記成分(A)と前記成分(C)との質量比(A)/(C)が1を超えていてもよい。
【0015】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、さらに、下記成分(E)を含んでいてもよい。

(E)前記成分(A)および(B)以外の界面活性剤
【0016】
本発明のゴム製品の製造方法において、例えば、前記防着処理工程が、本発明の未加硫ゴム用防着剤または本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を未加硫ゴム用防着剤表面に付着させる工程と、その後に前記未加硫ゴム用防着剤表面の水を揮発させる工程とを含んでいてもよい。
【0017】
本発明のゴム製品の製造方法において、例えば、前記ゴム製品が、防着処理済み未加硫ゴムであってもよい。
【0018】
本発明のゴム製品の製造方法において、例えば、前記ゴム製品が、加硫ゴムであってもよい。
【0019】
本発明において、「脂肪酸」は、特に断らない限り、飽和脂肪酸でもよく、不飽和脂肪酸でもよく、直鎖状の脂肪酸でもよく、分枝状の脂肪酸でもよい。飽和脂肪酸とは、例えば、アルキルカルボン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸とは、例えば、アルキレンカルボン酸が挙げられる。
【0020】
本発明において、「アルキル」は、例えば、直鎖状または分枝状のアルキルを含む。本発明において、アルキル基は、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0021】
本発明において、「アルキレン」は、例えば、直鎖状アルキレン(メチレンもしくはポリメチレン)または分枝状のアルキレンを含む。本発明において、アルキレン基は、特に限定されないが、例えば、メチレン基、ジメチレン基(エチレン基)、エチリデン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基(プロピレン基)、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0023】
[1.未加硫ゴム用防着剤]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。

(A)脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方
(B)ナトリウムおよびカリウム以外の金属の脂肪酸塩
(C)ラテックス
(D)水
【0024】
[1-1.成分(A)]
前記成分(A)は、前述のとおり、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方である。前記成分(A)において、脂肪酸の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数6~24である。なお、本発明において、脂肪酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む。前記成分(A)において、脂肪酸ナトリウム塩および脂肪酸カリウム塩のうち1種類のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。前記成分(A)は、その全質量中に、炭素数6~10の脂肪酸ナトリウム塩および炭素数6~10の脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方を、例えば、0~40質量%または5~35質量%含んでいてもよい。前記成分(A)は、その全質量中に、炭素数11~14の脂肪酸ナトリウム塩および炭素数11~14の脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方を、例えば、10~60質量%または15~55質量%含んでいてもよい。成分(A)は、その全質量中に、炭素数15~24の飽和脂肪酸ナトリウム塩および炭素数15~24の飽和脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方を、例えば、0~90質量%または5~80質量%含んでいてもよい。前記成分(A)は、その全質量中に、炭素数15~24の不飽和脂肪酸ナトリウム塩および炭素数15~24の不飽和脂肪酸カリウム塩の少なくとも一方を、例えば、0~30質量%または0~20質量%含んでいてもよい。
【0025】
前記成分(A)は、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等の脂肪酸のナトリウム塩や、カリウム塩等があげられる。これらの脂肪酸石鹸(脂肪酸アルカリ金属塩)の中でも、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸のナトリウム塩や、カリウム塩等が、起泡性および溶解性の点で好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸のナトリウム塩およびカリウム塩がさらに好ましい。また、脂肪酸アルカリ金属塩(A)において、脂肪酸の平均炭素鎖長は、例えば、14以上、16以上、または18以上でもよく、24以下、22以下、または20以下でもよい。
【0026】
前記成分(A)中において、炭素原子数が16以上である脂肪酸アルカリ金属塩の割合がなるべく多いことが好ましく、例えば、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上または70質量%以上であり、例えば、100質量%以下である。成分(A)中において、炭素原子数が16以上である脂肪酸アルカリ金属塩の割合が多いと、疎水成分の分散性が向上し、スカム泡等の発泡の抑制効果が高くなる。
【0027】
前記成分(A)中において、スカム泡等の発泡の抑制効果の観点から、不飽和脂肪酸アルカリ金属塩の割合が、80質量%以下であることが好ましく、例えば、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、または60質量%以下であってもよい。不飽和脂肪酸アルカリ金属塩の割合の下限値は特に限定されないが、例えば、成分(A)中において、0質量%以上、10質量%以上、または20質量%以上であってもよい。
【0028】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、成分(A)の含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における成分(A)の含有率が、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、または20質量%以上であってもよく、例えば、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、または50質量%以下であってもよい。なお、本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液において、「水以外の成分の全質量」という場合の水は、前記成分(D)に限定されず、前記成分(D)以外の成分中の水、未加硫ゴム用防着剤を希釈して未加硫ゴム用防着剤水分散液にするときの希釈用の水等も全て含む。前記成分(D)以外の成分中の水とは、例えば、前記成分(C)のラテックスが樹脂の水分散液である場合の、分散媒としての水が挙げられる。
【0029】
[1-2.成分(B)]
前記成分(B)は、前述のとおり、ナトリウムおよびカリウム以外の金属の脂肪酸塩である。なお、一般に、ナトリウムおよびカリウム以外の金属の脂肪酸塩を「金属石鹸」という場合がある。したがって、前記成分(B)は、金属石鹸であるということができる。以下において、前記成分(B)を「金属石鹸(B)」という場合がある。前記脂肪酸は、特に限定されないが、例えば、成分(A)で説明した脂肪酸と同様でもよい。
【0030】
金属石鹸(B)において、ナトリウムおよびカリウム以外の金属としては、特に限定されず、例えば、ナトリウムおよびカリウム以外のアルカリ金属でもよいし、アルカリ金属以外の金属でもよい。前記ナトリウムおよびカリウム以外のアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。前記アルカリ金属以外の金属は、典型金属でも遷移金属でもよく、例えば、アルカリ土類金属、典型金属、遷移金属、希土類金属等があげられる。前記アルカリ金属以外の金属としては、具体的には、例えば、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、ストロンチウム、マンガン、スズ、鉛、銅、鉄等があげられる。金属石鹸(B)は、例えば、多価金属イオンの塩であってもよい。
【0031】
金属石鹸(B)の種類は特に限定されず、また、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。金属石鹸(B)は、例えば、高級脂肪酸またはその誘導体の金属塩のうち、ナトリウム塩およびカリウム塩以外の塩であってもよく、例えば、前記金属塩のうちアルカリ金属塩以外の塩であってもよい。高級脂肪酸とは、例えば、炭素数12以上の脂肪酸であり、炭素数の上限値は、特に限定されないが、例えば20以下である。高級脂肪酸の誘導体とは、例えば、1または複数の置換基で置換された高級脂肪酸でもよい。金属石鹸(B)の具体例としては、例えば、カプリル酸カルシウム、カプリル酸亜鉛、カプリル酸マグネシウム、カプリン酸カルシウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、14-オクタデカン酸カルシウム、14-オクタデカン酸亜鉛、14-オクタデカン酸マグネシウム、8-オクタデカン酸カルシウム、8-オクタデカン酸亜鉛、8-オクタデカン酸マグネシウム、6-オクタデカン酸カルシウム、6-オクタデカン酸亜鉛、6-オクタデカン酸マグネシウム、ヤシ脂肪酸カルシウム、ヤシ脂肪酸亜鉛、ヤシ脂肪酸マグネシウム、パーム油脂肪酸カルシウム、パーム油脂肪酸亜鉛、パーム油脂肪酸マグネシウム、パーム核油脂肪酸カルシウム、パーム核油脂肪酸亜鉛、パーム核油脂肪酸マグネシウム、牛脂脂肪酸カルシウム、牛脂脂肪酸亜鉛、牛脂脂肪酸マグネシウム、ひまし油脂肪酸カルシウム、ひまし油脂肪酸亜鉛、ひまし油脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、金属石鹸(B)の含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における金属石鹸(B)の含有率が、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、または25質量%以上であってもよく、例えば、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、または60質量%以下であってもよい。
【0033】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、金属石鹸(B)の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)の成分の全質量に対し、例えば、30~300質量%であり、下限は、例えば、35質量%以上または40質量%以上でもよく、上限は、例えば、290質量%以下または280質量%以下であってもよい。金属石鹸(B)の含有率が30質量%以上であることにより、例えば、さらに高い滑性およびさらに高い防着性が得られる。また、金属石鹸(B)の含有率が300質量%以下であることにより、例えば、粉塵の発生をさらに抑制できる。
【0034】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(A)と前記成分(B)との質量比(A)/(B)は、特に限定されないが、例えば、0.3~3.0または0.5~2.5であってもよい。
【0035】
[1-3.成分(C)]
前記成分(C)は、前述のとおり、ラテックスである。本発明において、ラテックスは、例えば、樹脂の水分散液である。前記樹脂は、特に限定されないが、例えば、ゴムであってもよい。
【0036】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物において、前記成分(C)すなわちラテックス(以下「ラテックス(C)」という場合がある。)の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)の成分の全質量に対し、例えば、20~300質量%であり、下限は、例えば、30質量%以上または40質量%以上でもよく、上限は、例えば、280質量%以下または250質量%以下であってもよい。ラテックス(C)の含有率が前記成分(A)の全質量の20質量%以上であることにより、例えば、さらにヌメりを抑制できる。また、ラテックス(C)の含有率が前記成分(A)の全質量の300%以下であることにより、例えば、さらに滑性維持しやすくなる。なお、本発明において、ラテックス(C)の質量は、特に断らない限り、ラテックス(C)中における水以外の成分の質量をいう。
【0037】
ラテックス(C)は、前述のとおり、樹脂の水分散液であってもよい。前記樹脂(ポリマー)の種類については、特に限定されず、例えば天然ゴム系、イソブレン系、アクリロニトリルブタジエン系、スチレン-ブタジエン系、スチレン-ブタジエン-スチレン系、ニトリル系、ポリノルボルネン系、アクリルスチレン系、アクリレート系、ポリブタジエン系、エピクロルヒドリン系、メチルメタクリレートブタジエン系重合体、シリコーン系、ポリオレフィン系、2-ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系、アクリロニトリル-ブタジエン系、クロロプレン系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエチレン系、スチレン系、エステル系、塩化ビニル系、スチレン-ブタジエン-アクリル酸系、ポリアクリルアミド系、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート系などを利用できる。前記樹脂は、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。また、ラテックス(C)は、1種類のみのラテックスを用いてもよいし、複数種類のラテックスを併用してもよい。
【0038】
ラテックス(C)における前記樹脂は、前述のとおり、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリルスチレン樹脂、およびアクリレート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。これにより、例えば、未加硫ゴム表面のヌメりをさらに低減できる。
【0039】
ラテックス(C)が、樹脂の水分散液である場合、前記樹脂のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、例えば、前述のとおり-40℃~60℃であってもよい。これにより、例えば、未加硫ゴム表面のヌメりをさらに低減できる。
【0040】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、成分(C)の含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における成分(C)の含有率が、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、または15質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、または30質量%以下であってもよい。
【0041】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(A)と前記成分(C)との質量比(A)/(C)は、特に限定されないが、例えば、0.2~27.0または0.5~20.0であり、前述のとおり、1を超えていてもよく、1.2以上、または1.5以上であってもよい。(A)/(C)が前記数値範囲内であると、ヌメり性が良好となり荷崩れが起こりにくい。特に、(A)/(C)が1を超えると、未加硫ゴム搬送時の滑性不足が起こりにくい。
【0042】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(B)と前記成分(C)との質量比(B)/(C)は、特に限定されないが、例えば、0.1以上、0.5以上、1以上、2以上、または3以上であってもよく、例えば、60以下、50以下、45以下、40以下、または以下であってもよい。(B)/(C)が前記数値範囲内であると、未加硫ゴム表面からの脱落・飛散性が抑制される。
【0043】
[1-4.成分(D)]
成分(D)は、前述のとおり、水である。前記水としては、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、精製水、イオン交換水等であってもよい。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における水の含有率は、特に限定されないが、未加硫ゴム用防着剤の全質量に対し、例えば、40~90質量%、45~85質量%、または50~80質量%程度であってもよい。
【0044】
[1-5.任意成分]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前記成分(A)~(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分を含む場合、前記任意成分は、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記任意成分を含む場合、前記任意成分は、例えば、前記成分(E)でもよいし、前記成分(E)以外の任意成分でもよいし、前記成分(E)と、前記成分(E)以外の任意成分との両方でもよい。
【0045】
前記成分(E)は、前述のとおり、前記成分(A)および(B)以外の界面活性剤である。以下において、前記成分(E)を「界面活性剤(E)」という場合がある。本発明の未加硫ゴム用防着剤が前記成分(E)を含むことで、例えば、濡れ性がさらに向上するという効果が得られる。
【0046】
界面活性剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;2-エチルヘキシルスルホコハク酸Na等の長鎖スルホコハク酸塩;オレオイルザルコシンNa、ラウロイルザルコシンNa等のN‐アシルサルコシン塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリルβ-アラニン、N-ステアリルβ-アラニン等のアミノ酸型等が挙げられる。界面活性剤(E)は、界面活性剤を1種類のみ用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0047】
本発明の未加硫ゴム用防着剤が界面活性剤(E)を含む場合、その含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における界面活性剤(E)の含有率が、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、または2.0質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、または20質量%以下であってもよい。
【0048】
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、界面活性剤(E)以外の任意成分は、特に限定されないが、例えば、消泡剤、濡れ性補助剤、粘性補助剤、異物低減補助剤、無機粉末などの添加剤が挙げられる。
【0049】
消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;鉱物油;シリコーン油;などが挙げられる。前記消泡剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0050】
濡れ性補助剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類が挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサノール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多価アルコールのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加物等が挙げられる。前記濡れ性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0051】
粘性補助剤としては、特に限定されないが、例えば、水溶性高分子類が挙げられ、より具体的には、例えば、蛋白類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等の合成水溶性高分子;キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル類等の天然水溶性高分子が挙げられる。前記粘性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0052】
無機粉末としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;ベントナイト、クレー、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;非晶質シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられる。前記無機粉末は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。なお、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、無機粉末を含んでいてもよいが、無機粉末を含まないか、または、無機粉末の含有率がなるべく小さいと、粉塵発生が抑制または防止されやすいため好ましい。
【0053】
本発明の未加硫ゴム用防着剤が界面活性剤(E)以外の任意成分を含む場合、その含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における界面活性剤(E)以外の任意成分の含有率が、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、または2.0質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、または20質量%以下であってもよい。
【0054】
本発明の未加硫ゴム用防着剤が無機粉末を含む場合、その含有率は特に限定されないが、水以外の成分の全質量中における無機粉末の含有率が、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、または10質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、または10質量%以下であってもよい。
【0055】
[2.未加硫ゴム用防着剤の製造方法]
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分(成分(A)~(D)と、必要に応じて配合される任意成分と)を混合することにより製造できる。混合順序および混合に用いる設備、装置等については、特に限定されない。例えば、水(成分(D))と脂肪酸石鹸(成分(A))、界面活性剤(成分(B))を混合した後、さらに金属石鹸(成分(B))およびその他の成分(成分(C)および必要に応じて任意成分)を混合する方法等が挙げられる。また、例えば、必要に応じ、混合しやすくするために加熱等をしながら混合してもよい。加熱温度は、特に限定されないが、ラテックス(C)の乳化(分散)が崩壊しないように、温度が高すぎないことが好ましい。前記加熱温度は、例えば、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、または30℃以上であってもよく、例えば、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、または25℃以下であってもよい。
【0056】
混合に用いる装置としては、特に限定されないが、例えば、攪拌羽根を容器内に備えた構成の装置などを使用できる。具体的には、例えば、一般的な攪拌装置を装備した液体混合機やラインホモミキサーやラインホモミキサーを併設した液体混合機を挙げることができる。
【0057】
[3.未加硫ゴム用防着剤の使用方法、未加硫ゴム用防着剤水分散液、ゴム製品の製造方法等]
本発明の未加硫ゴム用防着剤の使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用防着剤と同様の方法で使用できる。本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液として用いることができる。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液の製造方法は、特に限定されず、例えば、前述のようにして本発明の未加硫ゴム用防着剤の全ての成分を混合し、本発明の未加硫ゴム用防着剤を製造した後に、それを水で希釈してもよい。また、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤の各成分を、それぞれ水中に溶解または分散させ、水中で混合することにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液としてもよい。前記各成分を水に溶解または分散させる方法も特に限定されない。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液中における、水以外の成分の全質量は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液全体の質量に対し、例えば、0.5質量%以上20質量%以下、0.5質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上12質量%以下、または0.5質量%以上6質量%以下であってもよい。
【0058】
未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、前記未加硫ゴム用防着剤水分散液中における水以外の成分の全質量に対する前記成分(A)~(C)の全質量は、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、であってもよく、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下であってもよい。
【0059】
このように未加硫ゴム用防着剤水分散液として製造した場合、そのまま後述のウェット法などにより未加硫ゴム表面に塗布して使用することもできる。
【0060】
本発明のゴム製品の製造方法は、前述のとおり、本発明の未加硫ゴム用防着剤または本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を未加硫ゴム用防着剤表面に付着させて防着処理する防着処理工程を含むことを特徴とする。このようにして製造された防着処理済み未加硫ゴムは、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵されても、例えば、未加硫ゴム同士が密着してしまうことがない。
【0061】
本発明のゴム製品の製造方法により製造されるゴム製品は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、防着処理済み未加硫ゴムであってもよいし、加硫ゴムであってもよい。また、本発明のゴム製品の製造方法は、前記防着処理工程以外の工程を適宜含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、前記ゴム製品が加硫ゴムである場合、本発明のゴム製品の製造方法は、前記未加硫ゴムを加硫する工程を含んでいてもよい。
【0062】
前記防着処理工程は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を付着させる工程であってもよい。より具体的には、前記防着処理工程は、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を未加硫ゴムの表面に付着させる懸濁液付着工程(水分散液付着工程)と、未加硫ゴムの表面の前記防着剤懸濁液を乾燥して、防着剤からなる被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有することが好ましい。このような防着処理工程を、例えば、ウェット法という。
【0063】
本発明のゴム製品の製造方法において、前記ウェット法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用防着剤におけるウェット法と同様にして行うことも可能である。前記防着剤懸濁液(水分散液)中における前記本発明の未加硫ゴム用防着剤の濃度は、例えば前述のとおりであり、より具体的には、例えば2~3質量%とすることができるが、これには限定されず、任意に調整可能である。
【0064】
前記懸濁液付着工程では、例えば、シート状などに成形された時の熱により高温状態(例えば80~150℃程度)にある未加硫ゴムに対して、防着剤懸濁液を付着させることが好ましい。
【0065】
前記懸濁液付着工程の具体的方法としては、例えば、防着剤懸濁液を未加硫ゴムにシャワー装置で散布する方法、防着剤懸濁液の入った槽に未加硫ゴムを短時間浸漬するディップ法が挙げられる。また、塗布装置を用いて防着剤懸濁液を未加硫ゴムに塗布する方法などを採用してもよく、これらの方法を適宜併用してもよい。
【0066】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、防着性に優れ、かつ、防着処理後のゴム表面のヌメりを低減可能である。本発明の未加硫ゴム用防着剤が適用可能なゴム種には特に制限はなく、未加硫のゴムであればよい。前記ゴム種としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴムや、これらのうちの複数種が混合されたゴムが挙げられる。
【実施例
【0067】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
以下のようにして本実施例の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液を製造した。
【0069】
水(成分(D))580gを反応容器に入れ70℃以上に加熱した。その加熱した水中に、カプリン酸カリウム(90%カプリン酸、製品No.36356、米山薬品工業社製と苛性カリウムを反応させたもの、成分(A))10g、ラウリン酸カリウム(90%ラウリン酸カリウム、製品No.37556、米山薬品工業社製、成分(A))20g、ステアリン酸カリウム(90%ステアリン酸カリウム、製品No.36938、米山薬品工業社製、成分(A))、リポランLB-840(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社の商品名、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、成分(E))、ファインサーフD-1305(青木油脂工業社の商品名、成分(E))を加え、70℃以上で2時間混合した。さらにその後、ステアリン酸カルシウム(日油社製、成分(B))を加え、70℃以上で2時間混合した。それを50℃以下に冷却した後、ナルスターSR-115(日本エイアンドエル社の商品名、成分(C))を50g加え、攪拌して本実施例の未加硫ゴム用防着剤を得た。
【0070】
さらに、前述のようにして得られた本実施例の未加硫ゴム用防着剤を、水で20倍(質量比)に希釈して本実施例の未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を得た。後述の各種評価において、未加硫ゴム表面の防着処理には、この未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を用いた。以下の各実施例および比較例においても同様である。
【0071】
[実施例2~37、比較例1~4]
各成分の質量比を下記表1~3に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤を製造した。なお、下記表1~3中の各成分の欄における数値は、全て、未加硫ゴム用防着剤中の各成分の含有率(質量%)である。また、製造した未加硫ゴム用防着剤を、実施例1と同様に水で20倍(質量比)に希釈して未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を得た。
【0072】
なお、下記表1~3中の成分(A)において、「脂肪酸塩(C10以下)」は、実施例1で用いたカプリン酸カリウムと同じである。「脂肪酸塩(C12~C14)」は、実施例1で用いたラウリン酸カリウムと同じである。「飽和脂肪酸塩(C16以上)」は、実施例1で用いたステアリン酸カリウムと同じである。「不飽和脂肪酸塩(C16以上)」は、オレイン酸カリウムを表す。なお、任意成分におけるPOE(5)デシルエーテル(HLB12.1)およびアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムは、界面活性剤であり、成分(E)に該当する。前記POE(5)デシルエーテルの「HLB」は、グリフィン法によるHLBを意味する。また、任意成分のうち、マイカ以外は液体である。アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムは、3質量%の水溶液であり、表1~3中の質量は、前記水溶液中の水を含む質量である。また、成分(C)(ラテックス)は、全て、樹脂の水分散液であり、表1~3中の質量は、水を含む質量である。成分(C)(ラテックス)のガラス転移温度Tgは、各製品のカタログに記載されている数値である。
【0073】
また、下記表1~3中の成分(C)および任意成分におけるメーカー(製造元または販売元)および製品名(商品名)を、下記表4に示す。なお、下記表4において、ラテックス(成分(C))の「固形分」は、水以外の成分を意味する。また、固形分の「%」は、ラテックス(成分(C))の全質量中における水以外の成分の含有率(質量%)を表す。
【0074】
これら実施例1~37および比較例1~4の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液について、下記の方法で付着性、防着性およびヌメり性を測定し、評価した。評価結果は、下記表1~3にまとめて示す。
【0075】
<評価>
表1~3記載の付着性、防着性およびヌメり性の評価には、評価用ゴムとして下記の未加硫NR/BRゴムを用いた。

(未加硫NR/BRゴム)
NR(RSS♯3)70質量部とBR(JSR(株)製、商品名「BR-01」)30質量部の合計100質量部に対して、ホワイトカーボン(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールVN-3」)10質量部と、ISAFブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部を配合した(合計162.5質量部)未加硫NR/BRゴム。
【0076】
(1)付着性の評価
前記未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とした。繰り出された直後の前記ゴムシートを、実施例1~37および比較例1~5の各例で得られた未加硫ゴム用防着剤水分散液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下で静置した。前記ゴムシートの表面積を100%とした際の、防着剤乾燥被膜(防着剤乾燥固化物の被膜)の均質性、被膜の厚み(一様の膜厚で覆われている)を目視にて確認し、下記1~5の5段階で判定した。判定結果が4または5であったものを合格と評価した。

1:ハジキが発生している
2:被膜が縦て縞状やマダラ状被膜である
3:被膜が縦て縞状やマダラ状でない薄い均質被膜である。
4:被膜が縦て縞状やマダラ状でない均質被膜である。
5:被膜が縦て縞状やマダラ状でないやや厚い均質被膜である。
【0077】
上記のように、80~120℃のオープンロールで繰り出され、表面が高温状態にあるゴムを防着剤懸濁液に、ごく短時間(約1秒間)浸漬させただけで、付着した防着剤懸濁液から水分が急速に蒸発しても、縦縞状、マダラ状などのムラのない、均一な薄膜状態で防着剤がゴム表面に残存できる付着状態が好ましい。付着性が高いほど、防着性が高くなりやすい。また、付着性が高いほど、防着剤付着後の未加硫ゴムの外観不良が抑制されやすい。
【0078】
(2)防着性の評価
前記未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とした。繰り出された直後の前記ゴムシートを、実施例1~37および比較例1~4の各例で得られた未加硫ゴム用防着剤水分散液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下において垂直状態で静置し、自然乾燥した。
【0079】
その後、前記ゴムシートを6cm×15cmにカットして2枚を重ね合わせて積層状態とし、その積層状態にある試験片に対して、一方の面から垂直方向に1t/mの荷重をかけ、60℃で12時間放置した。
【0080】
その後、前記試験片を室温に戻し、引張り試験機〔AGS-500D型、SHIMADZU(株式会社島津製作所の商品名)〕を用いて180°剥離試験を行い、引っ張り速度300mm/minで剥離抗力(N/cm)を測定した。前記剥離抗力が小さいほど前記試験片が剥離しやすかったことを意味し、防着性が優れていることの指標となる。前記剥離抗力が2.0(N/cm)以下であったものを合格と評価した。
【0081】
(3)ヌメり性の評価
前記(1)または(2)と同じ方法で製造および防着処理したゴムシートを6cm×15cmにカットし(ゴムシートAとする)、3cm×5cmのゴムシートBをゴムシートAの上に載せた。さらに、500gのおもりをゴムシートBの上に置き、ゴムシートBを水平に引っ張り、ゴムシートBを動かすのに必要とした荷重をバネばかりで測定した。荷重が500g以上900g以下であればヌメり性が良好と判断した。前記荷重の数値が小さすぎると(ヌメりが大きいと)、積層したゴムが滑って崩れてしまうおそれがある。一方、前記荷重の数値が大きすぎることは、摩擦が大きく滑り性が小さいことを意味する。このように未加硫ゴム表面の摩擦が大きく滑り性が小さいと、搬送等がしにくく、取り扱いにくい。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
前記表1~3に示すとおり、実施例1~37は、いずれも、付着性、防着性およびヌメり性が、全て良好であった。これに対し、ラテックス(C)を含まない比較例1および2は、ヌメり性試験における荷重の数値が小さすぎたことから、防着処理した未加硫ゴム表面のヌメりが大きすぎることが確認された。また、金属石鹸(B)を含まない比較例3は、付着性が低く、これに起因して防着性も低かった。さらに、比較例3は、ヌメり性試験における荷重の数値が大きすぎたことから、防着処理した未加硫ゴム表面の摩擦が大きすぎることが確認された。一方、成分(A)を含まない比較例4も、比較例3と同様に、付着性および防着性が低く、かつ、防着処理した未加硫ゴム表面の摩擦が大きすぎることが確認された。