(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20221007BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20221007BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20221007BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20221007BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221007BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20221007BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B32/05
C01B32/194
C01B33/02 D
C01B33/113 A
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/48
(21)【出願番号】P 2019149106
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2019-08-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】李 柏翰
(72)【発明者】
【氏名】翁 炳志
(72)【発明者】
【氏名】葛 春明
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏文
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】井上 信一
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108336342(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池のための負極極片用の負極材料の製造方法であって、
前記負極材料は、コアとして多層グラフェン及びナノシリコン、かつ、コアを被覆するシェルとして亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層、並びに、緩衝スペースを提供するための複数の緩衝孔を含み、
前記負極材料の深さ10nmまでの表面に含まれる炭素:酸素:シリコンの比率が各々31%:39%:30%であり、以下の:
(A) (i)アルカリエッチング液と、シリコン粉末または亜酸化シリコン粉末であるシリコン含有出発原料とを混合して、ナノシリコン粉末及び亜酸化シリコン粉末を含む混合液を得る工程;
(ii)前記ナノシリコン粉末及び亜酸化シリコン粉末を含む混合液に、塩化水素、硝酸、硫酸、クエン酸、酢酸の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせである停止剤を添加して、前記ナノシリコン及び亜酸化シリコンを含む混合液を中性液体とする工程;
(B)(iii)前記ナノシリコン及び亜酸化シリコンを含む混合液に多層グラフェンを添加して混合して、前記ナノシリコン及び前記亜酸化シリコンを前記多層グラフェンの上に吸着させる工程;
(iv)有機炭素源を添加する工程;
(C)(v)600~1000℃の温度範囲又は900℃で焼成を行う焼成プロセスにより、前記工程(B)で得られた前記混合液からアモルファス炭素層を生成させ、かつ、前記多層グラフェンが、前記亜酸化シリコン及び前記アモルファス炭素層によって被覆されたコアシェル材料を得る工程;かつ、
(D)(vi)前記コアシェル材料を粉砕篩分してから、溶媒で洗浄して、前記コアが前記シェルによって被覆された前記負極材料を得る工程;
を含む、
製造方法。
【請求項2】
前記アルカリエッチング液が、NaOHまたはKOHである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、脱イオン水、グリセリン、エタノールの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機炭素源が、グルコース、スクロース、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、アスファルト、フェノール樹脂、ポリアニリン、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン及び不飽和炭化水素ガスの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕篩分することが、切削、ボールミリング、研磨の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕篩分することにおいて篩網が含まれ、前記篩網の網目数が80~600メッシュの範囲である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
バインダーと、導電剤と、溶媒と、請求項1に記載の方法で製造された負極材料とを混合させた後、金属シートの上にコーティングすることにより、負極極片を製造する方法。
【請求項8】
前記バインダーが、PVDF、CMC、SBR、アルジネート、キトサン、ポリアクリル酸ラテックスの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせである、請求項7に記載の負極極片を製造する方法。
【請求項9】
前記溶媒が、水またはNMPである、請求項7に記載の負極極片を製造する方法。
【請求項10】
リチウム電池のための負極極片用の
負極材料であって、前記負極材料は、コアとして多層グラフェン及びナノシリコン、かつ、コアを被覆するシェルとして亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層、並びに、緩衝スペースを提供するための複数の緩衝孔を含み、
前記負極材料の深さ10nmまでの表面に含まれる炭素:酸素:シリコンの比率が各々31%:39%:30%である、負極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノシリコン、亜酸化シリコンを使用して負極材料を製造する方法であり、特に、多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を、負極極片の製造方法に適用することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テクノロジーと生活の質が迅速に発展し、様々な種類の3Cハイテク電子製品は、いずれも軽量、薄型、短い、小サイズ、及び多機能になるように開発する傾向がある。そして、電池は、使用安全、低コスト、高品質及び環境保護などのあらゆる面を考慮することに伴い、高性能のリチウム電池が生まれるに至った。その中では、リチウムイオン二次電池負極材料は、中間相炭素微小球、天然黒鉛、人造黒鉛などの材料を用いて製造することができる。
【0003】
現在の電池負極活物質、導電性充填剤は、中間相炭素微小球を炭素材料とする応用が増えている。前記炭素材料は、充放電容量、サイクル特性及び熱安定性が比較的優れており、特に、携帯機器端末の電源としてのリチウム充電電池、スーパーキャパシタ及び太陽電池に適用する。
【0004】
リチウムイオン電池における負極材料は、黒鉛を主体とすることが多い、電極の寿命が長い、電圧が安定し、充放電が早いなどの特性を有する。しかし理論上では、炭素の静電容量が比較的低いので、リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上が制限される。現在の研究では、電池の静電容量を増大させるための代替材料を発見することが急務である。ケイ素は、リチウムイオン電池負極材料とする時に、黒鉛類の炭素材料の理論的な静電容量より高い、少量のシリコンを添加して炭素材料と混合する時に、負極の単位静電容量を大幅に高めることができ、未來では、次世代のリチウム電池システムに適用することができる。その中では、シリコン・炭素材料は、最初にSiH4を用いて、CVD方式によってナノシリコンを多孔質炭素材料の上に均一に沈着させることにより、静電容量を330~360 mAh/gから1000~2000 mAh/g程度まで向上することができる。この研究により、負極においてシリコン・炭素材料の実用性が証明された。
【0005】
しかし、充放電の過程には、Siが4倍まで多い体積膨張を生じるので、シリコンの表面に不可逆な欠陥が発生しまい、それにより、電池の静電容量が低下し、クーロン効率が低いなどの欠点が現れることがある。したがって、現在の産業界では、酸化物または炭素層によって充放電の過程におけるシリコンによる体積膨張を抑制する亜酸化シリコンまたはシリコン・炭素負極材料を開発することが急務である。それで、コストと効果を両立することができる上で、高品質なリチウム電池の負極極片を製造する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記既知技術の欠点を鑑みた上で、本発明の主な目的は、多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を提供すること、並びに、多層グラフェン、ナノシリコン、アモルファス炭素層、及び複数の緩衝孔などを整合することによって高品質なリチウム電池の負極極片を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一つ態様によれば、
キャリアとしての多層グラフェンと、
前記多層グラフェンの上に吸着し、前記多層グラフェンと共にコアとされるナノシリコンと、
前記多層グラフェンとナノシリコンとを被覆する亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層と、
緩衝スペースを提供するための、負極材料の上に設けられる複数の緩衝孔と、
を含む多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料が提供される。
【0008】
上記ナノシリコンの粒径範囲は、10~1000 nmであり、好ましい実施例の粒径範囲は50 ~ 300 nmであってもよい。前記ナノシリコンは、シリコン粉末を水酸化ナトリウムアルカリエッチングすることによって必要な粒径のナノシリコン粒子を得ることができ、同時に、水酸基によってナノシリコン粒子と多層グラフェンとを結合させ、多層グラフェンをキャリアとし、ナノシリコンが多層グラフェンの上に吸着する。そして、アモルファス炭素層は、高温熱分解プロセスによって有機炭素源から得られるものである。前記有機炭素源は、グルコース、スクロース、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、アスファルト、フェノール樹脂、ポリアニリン、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン及び不飽和炭化水素ガスの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。そして、本発明の多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料は、焼成プロセスを進行しなければ得ることができないものである。前記焼成プロセスの後に、さらに、脱イオン水、グリセリン(glycerin、プロパントリオール)、またはエタノール(アルコール類)で本発明の多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を洗浄すると、複数の緩衝孔を有する多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を得ることができる。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の他の態様によれば、
(A)エッチング液とシリコン含有出発原料とを提供し、第1の混合プロセスを進行して混合液を得て、さらに前記混合液に停止剤を添加し、前記混合液を中性液体とする工程と、
(B)前記混合液に多層グラフェンを添加して混合した後、さらに有機炭素源を添加する工程と、
(C)焼成プロセスにより、工程(B)における混合液からコアシェル材料を得る工程と、
(D)前記コアシェル材料が、粉砕篩分プロセスを行い、さらに溶媒で洗浄された後に、複数の緩衝孔を有する多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を得る工程と
、を含む多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の製造方法が提供される。
【0010】
上記のエッチング液は、アルカリ液(alkali liquor)、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)から選択してもよいが、これらに限定されない。シリコン含有出発原料は、シリコン粉末または亜酸化シリコン粉末であってもよい。停止剤は、塩化水素(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、クエン酸、酢酸の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。停止剤を添加する主な目的は、酸・塩基中和により、溶液のpH値を7に調整し、溶液におけるエッチング反応を停止させることである。エッチング反応で生成されたナノSiまたはSiOxは、後述するコアシェル材料の中心コアとすることができる。そして、[SiO4]4-イオンは、工程(C)における不活性雰囲気下での熱処理により、中心コア(ナノSi、またはSiOx)を被覆する亜酸化シリコン(SiOx)になる。その中では、NaOHの濃度は0.025~2.5 Mであってもよい。そして、NaOHエッチング反応(第1の混合プロセス)の時間は0.5~24 hrであってもよい。
【0011】
工程(B)の流れにおいて、多層グラフェンを前記混合液に添加して混合した後に、シリコン含有出発原料(シリコン粉末または亜酸化シリコン粉末)が水酸化ナトリウムでアルカリエッチングされた後に水酸基を生じ、ナノSi、亜酸化シリコンSiOxが水酸基によって多層グラフェンと結合することにより、多層グラフェンがキャリアになり、ナノSi、亜酸化シリコンSiOxが多層グラフェンの上に吸着する。そして、有機炭素源は、グルコース、スクロース、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、アスファルト、フェノール樹脂、ポリアニリン、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン及び不飽和炭化水素ガスの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよい
【0012】
上記工程(C)の流れにおいて、前記焼成プロセスは、予備酸化焼成と焼成の2つの流れに分けることができる。その中では、予備酸化焼成の温度範囲は250~400℃であり、最適温度範囲は280~350℃にあり、焼成する流れの焼成温度範囲は600℃~1000℃であり、最適温度範囲は800~900℃にある。焼成プロセスを経た後、[SiO4]4-イオンが亜酸化シリコン(SiOx)になり、有機炭素源が高温熱分解によってアモルファス炭素層になり、最終にコアとする多層グラフェン(ナノシリコン又は亜酸化シリコンがキャリアの上に吸着する)が、亜酸化シリコン(SiOx)及びアモルファス炭素層によって被覆されたコアシェル材料を形成する。上記工程(D)の流れにおいて、前記粉砕篩分プロセスにおける粉砕方法は、切削、ボールミリング、研磨研磨の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよい(ただし、これらに限定されない。)。なお、粉砕篩分プロセスにおいては、篩網を使用することを含み、前記の網目数が80~600メッシュの範囲であってもよい。工程(D)の流れにおいて、前記溶媒は、脱イオン水、グリセリン、エタノールの中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよく、溶媒(例えば、脱イオン水)でNaOHと停止剤の焼成後の副生成物、例えば、Na2CO3水溶性塩類を洗い除いた後に、複数の孔か残存し、これらの孔は、充放電の過程においてSiまたはSiOxが体積膨張する時の緩衝構造として有効である。
【0013】
本発明は、バインダーと、導電剤と、コーティング溶媒と、前記粉末状である複数緩衝孔を有する多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料とを混合した後、金属シートの上にコーティングして負極極片を製造することができるものであり、その中では、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinyldiene Difluoride,PVDF)、カルボキシメチルセルロース(Carboxylmethyl Cellulose,CMC)、スチレンブタジエンゴム(Styrene-Butadiene Rubber,SBR)、アルギン酸ナトリウム(アルジネート)、キチン(キトサン)、及びポリアクリル酸ラテックス(Polyacrylic Latex)の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよく、導電剤は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、薄片化黒鉛の中から選択される1つまたはそれらの組み合わせであってもよい。そして、コーティング溶媒は、水またはNMPであってもよい。
【0014】
上記概要、以下の詳細な説明及び図面は、いずれも本発明が目的を達成するために採用する方式、手段及び効果をさらに説明するものである。そして、本発明の他の目的及び利点については、後述する説明及び図面において述べる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の模式図である。
【
図2】本発明に係る多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図3】本発明に係るSi/SiOx/MLG/C、SiOx(市販)、Si、及びSiO
2のシンクロトロン放射光X線回折(synchrotron X-ray diffraction, SXRD)スペクトルである。
【
図5】本発明に係るSi/SiOx/MLG/CサンプルのSEM図及び(Si、C、O)EDS mapping図である。
【
図6】本発明に係るSiOx(市販)サンプルのSEM図及び(Si、C、O)EDS mapping図である。
【
図7】本発明に係るSi/SiOx/Cサンプル(実施例2)のSEM図である。
【
図8】本発明に係るSi/SiOx/MLG/Cサンプル(実施例3)のSEM図である。
【
図9】本発明に係るSi/SiOx/MLG/CのXPS Si
2pの周波数スペクトル解析である。
【
図10】本発明に係るSiOx(市販)のXPS Si
2pの周波数スペクトル解析である。
【
図11】本発明の実施例3のSi/SiOx/MLG/C材料のハーフセル試験図である。
【
図12】本発明の比較例1のSiOx(市販)材料のハーフセル試験図である。
【
図13】本発明の実施例5の15wt% Si/SiOx/MLG/C + 85wt% MCMB材料のハーフセル試験図である。
【
図14】本発明の比較例3の15wt% SiOx (市販) + 85wt% MCMB材料のハーフセル試験図である。
【
図15】本発明の実施例5(15wt% Si/SiOx/MLG/C + 85wt% MCMB)材料と比較例3(15wt% SiOx (市販) + 85wt% MCMB)材料のハーフセルの長期サイクル充放電試験図である。
【発明を実施するための形態】
【実施方式】
【0016】
以下では、特定の具体的な実例により、本発明の実施方式を説明する。当業者であれば、本明細書に記載の内容から、本発明の利点及び効果を容易に理解し得る。
【0017】
シリコンは、負極材料としての理論的な静電容量が約3500 mAh/gであり、それを一部添加することにより、電池の負極全体のエネルギー密度を大幅に高めることができる。しかし、充放電の過程においては、Siが4倍まで多い体積膨張を生じることにより、シリコンの表面に不可逆な欠陥が発生し、それにより、電池の静電容量が低下し、クーロン効率が低いなどの欠点がある。本発明は、上記問題を解決するために、Si/SiOx/MLG/C構造を含む負極材料を利用することを目的とする。前記負極材料の最外層の構造は、熱分解することによって有機炭素源をアモルファス炭素になるものであり、その後、前記アモルファス炭素とSiOxは、共にSi/グラフェンを被覆し、コアシェル構造を形成する。この構造によれば、充放電の過程におけるシリコンの激しい体積膨張を制限することができる。それにより、シリコン粉末は、巨大な欠陥を生じることまでには至らず、その導電性通路が維持され、負極材料の静電容量が一定の範囲に維持し得る。Siの表面の酸素含有量を変更し、グラフェンと炭素層とを制御することにより、この亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層でナノシリコンを被覆してなる複合負極材料の静電容量を、商業化製品に相当する約1600~1800 mAh g-1に制御することができる。
【0018】
本発明に係る多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の模式図を示す
図1を参照する。図面に示すように、本発明は、キャリアとしての多層グラフェン11と、前記多層グラフェン11の上に吸着し、前記多層グラフェン11と共にコアとされるナノシリコン12と、前記多層グラフェン11とナノシリコン12とを被覆する亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層13と、緩衝スペースを提供するための、負極材料の上に設けられる複数の緩衝孔14と、を含む多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料を提供するものである。
【0019】
本発明に係る多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の製造方法のフローチャートを示す
図2を参照する。図面に示すように、本発明は、工程として、(A)エッチング液とシリコン含有出発原料とを提供し、第1の混合プロセスを進行して混合液を得て、さらに前記混合液に停止剤を添加し、前記混合液を中性液体S201になる工程と、(B)前記混合液に多層グラフェンを添加して混合した後、さらに有機炭素源S202を添加する工程と、(C)焼成プロセスにより、工程(B)における混合液からコアシェル材料S203を得る工程と、(D)前記コアシェル材料が、粉砕篩分プロセスを行い、さらに溶媒で洗浄された後に、複数の緩衝孔を有する多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料S204を得る工程と、を含む多層グラフェンをキャリアとするナノシリコンが亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層によって被覆された負極材料の製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明の[ナノSiまたはSiOxまたは(ナノSi+SiOx)]/多層グラフェン/(亜酸化シリコン+アモルファス炭素)負極材料、バインダー、及び導電性助剤を、一定比率で混合してスラリー状とし、そして、それを10 μm銅箔の上にコーティングし、60℃において溶媒を加熱乾燥させ、次いて真空ベーキングオーブンに入り、110℃で24hベイクすることによって溶媒を除去し、得られた極板を、直径1.2 mmの円(12φ)として切り取り、CR2032ボタン型リチウムイオン二次電池を製造する。並びに、ハーフセル(対極がリチウム金属である(直径1.5 mmの円、15φ)。)の静電容量試験を進行し、電解液として、1.0 M LiPF6を含む、EC(ethylene carbonate):FEC(floroethylene carbonate):DMC(dimethyl carbonate):EMC(ethylene methyl carbonate)=28:7:10:55である溶媒と、追加の添加剤である1% VC(vinylene carbonate)及び1.5% PS(1,3-propane sultone)とを用い、使用する静電容量測定装置のブランド型番がBAT-750Bである。
【0021】
実施例1:0.25 mM NaOH溶液500 mLを調製し、200 rpmの速度で、撹拌を持続し、25 gで寸法が200 nmであるシリコン粉末を上記NaOH溶液の中に添加し、0.5時間反応後、停止剤として、クエン酸を添加して撹拌し、停止剤を添加することで、pHを7に調整してNaOHとSiとの反応を停止させ、900℃高温焼成することによって炭素化処理(焼成プロセス)を進行し、得られたナノシリコンベースの負極材料(その構造が、ナノSi/(亜酸化シリコン+アモルファス炭素)である。)を粉砕、研磨及び篩分した後に、活性材:導電性助剤:PAA:SBR:CMCが73:12:2.5:5.6:6.9である比率で混合してスラリー状とし、その過程において、CMCとPAAを先に混合し、そして、活性材と導電性助剤とを空練りで混合した後にCMCとPAAとの溶液に添加し、最終にSBRを添加して均一に混合し、スラリーをブレード塗布方法によって銅箔の上にコーティングする。このサンプルは、Si/SiOx/C-0.5hと称される。
【0022】
実施例2:0.25 mM NaOH溶液500 mLを調製し、200 rpmの速度で、撹拌を持続し、25 gでその粒子が200 nmであるシリコン粉末を上記NaOH溶液の中に添加し、4時間反応後、停止剤として、クエン酸を添加して撹拌し、停止剤を添加することで、pHを7に調整してNaOHとSiとの反応を停止させ、900℃高温焼成することによって炭素化処理(焼成プロセス)を進行し、得られたナノシリコンベースの負極材料(その構造が、ナノSi/(亜酸化シリコン+アモルファス炭素)である。)を粉砕、研磨及び篩分した後に、活性材:導電性助剤:PAA:SBR:CMCが73:12:2.5:5.6:6.9である比率で混合してスラリー状とし、その過程において、CMCとPAAとを先に混合し、そして、活性材と導電性助剤とを空練りで混合した後にCMCとPAAとの溶液に添加し、最終にSBRを添加して均一に混合し、スラリーをブレード塗布方法によって銅箔の上にコーティングする。このサンプルは、Si/SiOx/Cと称される。
【0023】
実施例3:0.25 mM NaOH溶液500 mLを調製し、200 rpmの速度で、撹拌を持続し、25 gで寸法が200 nmであるシリコン粉末を上記NaOH溶液の中に添加し、4時間反応後、停止剤として、クエン酸を添加して撹拌し、停止剤を添加することで、pHを7に調整してNaOHとSiとの反応を停止させ、そして、2.5 gの多層グラフェン(muti-layer graphene, MLG)を添加して12h撹拌を持続し、ナノシリコン粉末をMLGの上に有効的に分散させ、900℃高温焼成することによって炭素化処理(焼成プロセス)を進行し、得られた負極材料(その構造が、ナノSi/多層グラフェン/(亜酸化シリコン+アモルファス炭素)である。)を粉砕、研磨及び篩分した後に、NaOH及び停止剤の焼成後の副生成物、例えば、Na2CO3水溶性塩類を脱イオン水で洗い取り、活性材:導電性助剤:PAA:SBR:CMCが73:12:2.5:5.6:6.9である比率で混合してスラリー状とし、その過程において、CMCとPAAとを先に混合し、そして、活性材と導電性助剤とを空練りで混合した後にCMCとPAAとの溶液に添加し、最終にSBRを添加して均一に混合し、スラリーをブレード塗布方法によって銅箔の上にコーティングする。このサンプルは、Si/SiOx/MLG/Cと称される。
【0024】
実施例4:実施例3のSi/SiOx/MLG/C負極材料(5%)と商業化黒鉛材料中間相炭素微小球95%とを混合してスラリー状とし(活性材:導電性助剤:PAA:SBR:CMC=93:3:0.67:1.5:1.83)、極板を製造して電池を組み立てる。このサンプルは、5wt% Si/SiOx/MLG/C+95wt%中間相炭素微小球(mesocarbon microbead, MCMB)と称される。
【0025】
実施例5:実施例3のSi/SiOx/MLG/C負極材料(15%)と商業化黒鉛材料中間相炭素微小球85%とを混合してスラリー状とし(比率が実施例4と同じ。)、極板を製造して電池を組み立てる。このサンプルは、15wt% Si/SiOx/MLG/C+85wt% MCMBと称される。
【0026】
比較例1:商業化した炭素被覆SiOx粉体(0.8<x<0.95)を購入し、同様に混合してスラリー状とし、同じ比率(実施例1と同じ。)で、極板を製造して試験用ハーフセルを組み立てる。実施例3との比較として、このサンプルは、SiOx(商業)と称される。
【0027】
比較例2:比較例1のSiOx負極材料と商業化黒鉛材料中間相炭素微小球95%とを混合してスラリー状とし(比率が実施例4と同じ。)、極板を製造して電池を組み立てる。実施例4との比較として、このサンプルは、5wt% SiOx(商業)+95wt% MCMBと称される。
【0028】
比較例3:比較例1的SiOx負極材料と商業化黒鉛材料中間相炭素微小球85%とを混合してスラリー状とし(比率が実施例4と同じ。)、極板を製造して電池を組み立てる。実施例5との比較として、このサンプルは、15wt% SiOx(商業)+85wt% MCMBと称される。
【0029】
本発明に係るSi/SiOx/MLG/C、SiOx(商業)、Si及びSiO
2のシンクロトロン放射光X線回折(synchrotron X-ray diffraction, SXRD)スペクトルを示す
図3と、本発明の
図3の局部拡大図を示す
図4とを参照する。図面に示すように、Si/SiOx/MLG/Cと標準品であるSiとの両者のシリコンのピーク値位置及び強度は非常に接近し、その差は、~12
0である場所がSiOxのアモルファス回折ピーク値であり、
図4の拡大図から明らかにように、Siの標準品では、この場所に若干SiO
2のピーク値がある。このことは、SiO
2の標準品との対比から分かり得る。そして、Siの標準品では、依然としてSiO
2の信号を見えるが、それは大気においてナノシリコン自身が酸化しやすいので、SiO
2薄層を形成することからである。そして、Si/SiOx/MLG/Cのサンプルの中には、Si標準品に比べて、SiO
2の信号の強度がより大幅に高いことが分かる。したがって、この合成方式によって確かにナノシリコンをSi/SiOxの複合サンプルに調製し得ると確認することができる。しかし、X線の酸素に対する感度が比較的劣るから、それがSiO
2であるか、またはSiOxであるかを判定するために、光電子分光装置(XPS)によって判定する必要はある。一方、商業化SiOxは、SiとSiO
2とからなるアモルファス材料であり、現在、この材料の構造についての研究において、Si原子の周辺が4つのSi原子と同時に結合すること(Si相)、または、4つのO原子と結合すること(SiO
2相)ができる二相材料であると認定されるが、単相材料であることを記載している研究もあり、その中では、Si-Si結合とSi-O結合が構造全体の中に無作為に分布される。SXRDの結果から分かるように、この材料Si/SiOx/MLG/Cは、確かにアモルファスSiOxと結晶相のSiとからなる材料である。
【0030】
本発明に係るSi/SiOx/MLG/CサンプルのSEM図と(Si、C、O)EDS mapping図を示す
図5と、SiOx(商業)サンプルのSEM図と(Si、C、O)EDS mapping図を示す
図6とを参照する。図面に示すように、
図5は、Si/SiOx/MLG/CのSEM(scan electron microscope)画像及びそのEDS mappingの結果を示し、C、Si、Oの3つの元素を含み、Siは粒子の上に均一に分布されること、O及びCは粒子の外周における濃度が比較的高いこと、及び内部コアの部分におけるO及びCが比較的少ないことが見られる。したがって、SXRDの結果と合わせると、外殼の材料組成が主にCとSiOxであり、内部コアが主にSiであることを推測でき、本発明が提出しているコアシェル材料という思想を検証する。そして、SiOx(商業)サンプル(
図6)と比較すると、そのEDS mapping結果は、C、Si、Oが粒子の上に均一に分布され、かつCの含有量が比較的低いことを示す。したがって、商業化製品は、高温氣相法によって製造されたものであるので、バルク材全体の組成が一致し、最後で粉砕し、そして、さらに炭素被覆を行うことになる。
【0031】
本発明に係るSi/SiOx/Cサンプル(実施例2)のSEM図を示す
図7と、本発明に係るSi/SiOx/MLG/Cサンプル(実施例3)のSEM図を示す
図8とを参照する。図面に示すように、プロセスにおいて、MLGをSi/SiOxのキャリアとして添加する後に、比較的細小な粉末の生成を減少させることが確実に見られ、混合してスラリー状とする過程の操作による分散を均一にさせることがより容易になる。そして、実施例2と実施例3との比較から、MLGの添加によってSi/SiOx/MLG/C複合材料の可逆静電容量が低下するが、MLG自身の静電容量がSi/SiOxより低いので、一回転目のクーロン効率では、向上することが見られる。その主な原因は、分散性の改善により、充放電の過程においてSi/SiOxが比較的破砕または剥離しにくくなり、クーロン効率を向上させることである。
【0032】
本発明に係るSi/SiOx/MLG/CのXPS Si
2pの周波数スペクトル解析を示す
図9と、本発明に係るSiOx(商業)のXPS Si
2pの周波数スペクトル解析を示す
図10とを参照する。図面に示すように、Si/SiOx/MLG/Cのサンプル表面のSiの価数が、Si
0~Si
4+の範囲にあり、表2に記載のXPS全周波数スペクトル走査のC、O、Si半定量解析の結果から、Si/SiOx/MLG/Cサンプルの百分率が31%、39%、30%であることを示すが、SiOx(商業)サンプルの百分率が87%、10%、3%であり、比較的大きな差がある。その原因は、SiOx(商業)サンプルが、先に高温氣相法によってSiOxを製造した後に、CVD炭素被覆を行い、そして、XPS解析が主に表面解析(深さ~10 nm)を行うので、SiOx(商業)の解析にてC信号が比較的多く得られることである。Si/SiOx/MLG/Cのサンプルでは、外殼材料組成はSiOx/Cであるので、得られた表面の組成がC、O、Siの含有量に近い。さらに、この材料は、異なるSi価数を用いてSi2pピーク分離解析の価数分布(表3)を解析した算出結果から、その一般式をSiOxに平均すると、そのxが1.56であることが分かる。しかし、先行技術文献を参照すると、SiOx(x=1.56)の比容量が800 mAh g
-1以下であるべきことを推測し得るが、表1から分かるように、Si/SiOx/MLG/Cサンプルの可逆静電容量が1814 mAh g
-1である。したがって、この材料が、外殼であるSiOx/CとコアであるSi/MLGとからなる複合材料であることは、再び証明される。逆に、SiOx(商業)のサンプルは、Siの価数が主に2+であり、価数解析の算出から、x=0.94であることが分かる。この値は、当該販売会社の特許に記載の酸素含有量(x=0.95)に近い。
【表1】
【表2】
【0033】
本発明の実施例3のSi/SiOx/MLG/C材料のハーフセル試験図である
図11と、本発明の比較例1のSiOx(商業)材料のハーフセル試験である
図12とを参照する。図面に示すように、
図11は、Siの0.4 V酸化還元の特徴的なプラットフォーム(characteristic platform)とSiOxの斜め上昇ラインから構成されるものであり、
図12は、SiOx(商業)の特性充放電曲線である。しかし、この2つの材料は、単独に使用される時に、クーロン効率が低い、かつ寿命が不良であるという問題がある。そのため、この試験においては、その一回転目のクーロン効率及び可逆的な静電容量のみを測定する。両者の比較から分かるように、Si/SiOx/MLG/Cのサンプルは、より高い可逆静電容量(1814 mAh g
-1)を有し、SiOx(商業)は、一般商業化の静電容量~1600 mAh g
-1である。そして、クーロン効率では、Si/SiOx/MLG/Cが~2%とやや低いが、表3における黒鉛を混合する試験の結果から分かるように、混合後の2つのサンプルのクーロン効率は、5%や15%の混合に関わらず、一回転目のクーロン効率が類似する。そのため、Si/SiOx/MLG/Cは、単独に使用される時に、その体積膨張を抑制し得る他の黒鉛材料を有しないので、クーロン効率がSiOx(商業)よりやや低いになり、SiOx(商業)は、一回転目の活化後に、大量なLi
2OとLi
4SiO
4とを有するので、体積膨張の抑制を促進することができ、クーロン効率をやや高くさせることを推測し得る。したがって、表3から分かるように、この2つの材料の一回転目のクーロン効率が比較的低いという問題について、それらの起因が異なる。SiOx(商業)は、一回転目において、Li
2OとLi
4SiO
4とを形成するために、余分なリチウムが必要である。Si/SiOx/MLG/Cは、コアであるSiの体積膨張に起因して破砕し、それにより、一回転目のクーロン効率が比較的低いであり、当然に、その外殻SiOxが、依然として一部のリチウムを消費してLi
2OとLi
4SiO
4とを形成し、体積膨張の抑制を促進する。しかし、混合された黒鉛によって体積膨張を共同に吸収した後に、実施例4、5と比較例2、3との一回転目のクーロン効率が類似し、かつ、Si/SiOx/MLG/Cは、可逆静電容量が比較的高いので、同じ割合で黒鉛を混合した後に形成された負極材料の比容量は、SiOx(商業)より高いである。
【表3】
【0034】
本発明の実施例5の15wt% Si/SiOx/MLG/C+85wt% MCMB材料のハーフセル試験図である
図13、本発明の比較例3の15wt% SiOx(商業)+85wt% MCMB材料のハーフセル試験図である
図14、及び本発明の実施例5(15wt% Si/SiOx/MLG/C+85wt% MCMB)材料と比較例3(15wt% SiOx(市販)+85wt% MCMB)材料のハーフセル長期サイクル充放電試験図である
図15を参照する。図面に示すように、15%のSi/SiOx/MLG/CまたはSiOx(商業)のみを混合したが、静電容量から見ると、シリコンが占める静電容量は依然として比較的高いことが分かるので、充放電の曲線において、依然としてシロキシ材料を主とする。しかし、85%の黒鉛負極が含まれるので、より優れた一回転目のクーロン効率及びサイクル寿命を有することができる。
図15は、実施例5の15wt% Si/SiOx/MLG/C+85wt% MCMB材料と比較例3の15wt% SiOx (商業)+85wt% MCMB材料のハーフセル長期サイクル充放電試験であり、電流の大きさが0.5C(1C=550 mA g
-1)である。実施例5は、より優れた安定性を有しており、0.1C充放電サイクル5回転、かつ0.5Cの速率で長期サイクル試験100回転を行った後に、静電容量が依然として80%以上に維持し得る。しかし、比較例3は、同じ条件の試験において、0.5C速率で80回転を行った後に、静電容量が大きく減衰し、かつ、100回転を行った後に、わずかに62%の静電容量が残る。
【0035】
本発明の負極材料は、ナノシリコンを原料とし、アルカリエッチングをし、及び、溶媒の湿式分散法によってSi/SiOxをMLGの表面に分散させ、そして、最後で、さらに有機熱分解で形成された炭素層で被覆することにより、ナノシリコンを複合材料の中に均一に分布させることができ、MLGとSiOxは、充放電によるSiの体積膨張効果及び破裂の状況を緩和し、この負極材料15%と商業化の黒鉛負極材料とを物理的混合、パルプすることにより、極板として製造し、その後、CR2032電池として製造し、実際に測定された可逆静電容量が約~570 mAh g-1であり、純黒鉛負極材料の静電容量(~350 mAh g-1)に比べて、~1.6倍に向上し、かつ、一回転目のクーロン効率が~89%まで到達し得り、及び、100回転において80%の静電容量保持率を安定的に維持し得り、商業化のSiOxに比べて、より優れた静電容量保持率及びプロセスコストの優勢を有し、高エネルギー密度リチウムイオン電池負極材料として適するものである。
【0036】
上記実施例は、本発明の特性及び効果を例示的に説明するものに過ぎず、本発明の実質的な技術内容の範囲を限定するためのものではない。当業者であれば、いずれも発明の要旨及び範疇に違反しない前提で、上記実施例を調整や変更することができる。したがって、本発明の特許権で保護される範囲は、特許請求の範囲に記載の通りである。
【符号の説明】
【0037】
11 多層グラフェン
12 ナノシリコン
13 亜酸化シリコン及びアモルファス炭素層
14 孔
S201-204 工程