(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】補強要素、エラストマー複合体、及び該補強要素を含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
D02G 3/48 20060101AFI20221007BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221007BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20221007BHJP
B60C 17/00 20060101ALI20221007BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20221007BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
D02G3/48
B60C9/00 G
B60C13/00 E
B60C17/00 B
D02G3/04
D02G3/26
(21)【出願番号】P 2019515481
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(86)【国際出願番号】 FR2017052467
(87)【国際公開番号】W WO2018051032
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-08
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマン ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ ソレンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヌア ジュリアン
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-071204(JP,A)
【文献】特表2015-536269(JP,A)
【文献】特開2013-154766(JP,A)
【文献】特開2015-027849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D07B1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強要素(45)であって、組立体(49)を含み、
前記組立体(49)は、
・芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランド(46)と、
・ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランド(48)と、
で構成され、
前記2本のストランド(46、48)は、互いにらせん状に巻き付けられ、前記補強要素(45)は、撚り平衡化され、前記補強要素(45)の撚り係数Kは、5.5から6.5までの範囲であり、Kは、式
K=(R×Ti
1/2)/957により定義され、
ここでRは、撚り毎メートルで表された前記補強要素(45)の撚りであり、Tiは、テックスで表された前記補強要素(45)の前記マルチフィラメント・ストランドの番手の合計であり、前記補強要素(45)の撚りが300から330撚り毎メートルの範囲であ
り、前記補強要素(45)の初期引張りモジュラスが、5.0から10.5cN/テックスである、ことを特徴とする、補強要素(45)。
【請求項2】
前記補強要素(45)の前記撚り係数Kが
、5.9から6.1までの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の補強要素(45)。
【請求項3】
前記補強要素(45)の初期引張りモジュラスが
、5.7から8.5cN/テック
スの範囲であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の補強要素(45)。
【請求項4】
前記補強要素(45)の最終引張りモジュラスが、14.0から21.5cN/テック
スの範囲であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の補強要素(45)。
【請求項5】
初期モジュラスに対する最終モジュラスの比が、2.10から2.7
5の範囲であることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の補強要素(45)。
【請求項6】
エラストマー複合体(36)であって、エラストマー組成物に埋設された請求項1~請求項5のいずれかに記載の少なくとも1つの補強要素(45)を含むことを特徴とする、エラストマー複合体(36)。
【請求項7】
少なくとも1つのカーカス・プライ(34)を含むカーカス補強体(32)を含むタイヤ(10)であって、前記カーカス・プライ(34)が、請求項6に記載のエラストマー複合体(36)から得られることを特徴とする、タイヤ(10)。
【請求項8】
前記カーカス補強体(32)は、単一のカーカス・プライ(34)を含むことを特徴とする請求項7に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
ランフラット用に設計された請求項7または請求項8に記載のタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドと、ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドとを含み、それらストランドが互いに組み立てられた、補強要素に関する。本発明はまた、この補強要素を含むエラストマー複合体、及びこの複合体から得られるカーカス・プライを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
多年にわたり、タイヤ製造者は、特に縁石、窪み等のタイプの「ロードハザード(road hazard)」と称されるものに対抗することにおいて、破断力を高めると同時に良好な耐久性を維持するためにタイヤカーカス補強体を改善しようと努めてきた。カーカス補強体の耐久性は、タイヤの長期寿命を保証するために必須である。
【0003】
いくつかの補強要素を含む単一カーカス・プライを含むカーカス補強体を含むタイヤが従来技術で知られている。各補強要素は、互いに組み立てられた、270撚り毎メートルの撚りで互いのまわりにらせん状に巻き付けられた、ポリエステル製の2本のマルチフィラメント・ストランドを含む。各マルチフィラメント・カーカス・ストランドは、334テックスに等しい比較的高い番手を有する。この補強要素は、7.3に等しい撚り係数及び0.96mmに等しい直径を有する。
【0004】
このカーカス・プライは、補強要素が埋設されたエラストマー組成物を含む複合体から得られる。この複合体を例えばスキミングにより製造する際に、補強要素が前進し、エラストマースキムと称されるエラストマー組成物で作られた2つのストリップが補強要素の各側に1つずつ導入され、補強要素が2つのエラストマースキムの間に挟まれるようになっている。これら2つのエラストマースキムは比較的厚く、エラストマー組成物によって達成される補強要素間の凝集に必要なエラストマー組成物のブリッジの適正な形成を保証するのに十分な量のエラストマー組成物が、2つの隣接する補強要素の間の空間を充填するようになっている。
【0005】
このようにして得られた複合体は、1.47mmという比較的厚い厚さを有し、密度は複合体1デシメートル当たり80補強要素である。
【0006】
したがって、複合体及びこの複合体から得られるカーカス・プライは、補強要素の直径が比較的大きいことと、これらの補強要素の適正なスキミングに必要な2つのエラストマースキンの厚さとが理由で、比較的重くなる。
【0007】
したがって当業者は、とりわけカーカス・プライの厚さを削減することによって、タイヤの質量を低減しようと努めている。
【0008】
習慣的に実施されている2つの解決策がある。第1には、補強要素の密度を小さくすることである。第2には、各補強要素の破断力を高めることである。
【0009】
カーカス・プライの中の補強要素の密度を、例えば60補強要素毎デシメートルまで低減することによって、カーカス・プライは軽量化されるが、これはこのプライの破断力の低下につながる。このカーカス・プライの破断力の低下は、ロードハザードに関してタイヤの性能の低下につながり、これは明らかに望ましくない。
【0010】
各補強要素の破断力を、特に撚りを例えば230撚り毎メートルまで減らすことによって高めることにより、耐久性は著しく低下することになり、これはタイヤ寿命によって有害である。
【0011】
したがって、これら2つの解決策、特に撚りを減らすことによりカーカス・プライにとって必須の性能態様である耐久性が低下することを伴う第2の解決策は、カーカス・プライの所望の性能とは相容れない。
【0012】
他の解決策は、特に特許文献1において開発されている。とはいえ、これらの解決策は、工業的に複雑であり、主として非スポーツ車両での使用に対応する大部分のタイヤ用途にとっては、コスト及び/又は性能の面で不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第2233318号明細書
【文献】国際公開第02/096677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、極めて多様な用途、例えば都市型車両(urban vehicle)に対応するものからスポーツ用車両に対応するものに渡る用途に対応する多くのタイプのタイヤでの使用が可能な比較的軽量のカーカス・プライを得ることを可能にするエラストマー複合体の製造を可能にする、補強要素を見いだすことである。本発明の別の目的は、ロードハザードに対抗することができる満足すべき破断力を有するカーカス・プライを得ることを可能にするエラストマー複合体の製造を可能にするとともに、タイヤ設計者が、他のタイヤ性能態様、例えば耐久性を、そのタイヤが意図する用途に合うように適合させることを可能にする番手及び撚り特性を有する、補強要素を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的で、本発明の1つの主題は、
-芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドと、
-ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドと、
で構成された組立体を含む補強要素であり、これら2本のストランドは、互いにらせん状に巻き付けられ、補強要素は、撚り平衡化され(twist-balanced)、補強要素の撚り係数Kは、5.5から6.5までの範囲であり、Kは、式K=(R×Ti1/2)/957により定義され、ここでRは、撚り毎メートルで表された補強要素の撚りであり、Tiは、テックスで表された補強要素のマルチフィラメント・ストランドの番手の合計である。
【0016】
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のフィラメントに関して、周知のように、これは、アミド結合で互いに結合された芳香族基で形成され、アミド結合の85%は2つの芳香核を直接接続する、線形高分子のフィラメントであり、より具体的には、長期にわたって光学異方性紡糸組成物から製造されてきたポリ(p-フェニレンテレフタレート)(すなわちPPTA)製のフィラメントであることを想起されたい。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの中でも、特に、ポリアリールアミド(すなわちPPA、特にSolvay社の商品名Ixefで知られる)、ポリ(メタキシリレンアヂパミド)、ポリフタルアミド(すなわちPPA、Solvay社の商品名Amodelで知られる)、アモルファス半芳香族ポリアミド(すなわちPA6-3T、Evonik社の商品名Trogamidで知られる)、メタアラミド(すなわちポリ(メタフェニレンイソフタルアミド又はPA MPD-I、特にDu Pont de Nemours社の商品名Nomexで知られる)又はパラアラミド(すなわちポリ(パラフェニレンテレフタルアミド又はPA PPD-T、特にDu Pont de Nemours社の商品名Kevlar又はTeijin社の商品名Twaron)が挙げられる。
【0017】
ポリエステル・フィラメントに関して、これはエステル結合で互いに結合された基で形成された線形高分子のフィラメントであることを想起されたい。ポリエステルは、カルボン二酸又はその誘導体のうちの1つとジオールとの間のエステル化による重縮合によって生成される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって製造することができる。既知のポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)又はポリプロピレンナフタレート(PPN)が含まれる。
【0018】
撚り平衡化(twist-balanced)とは、2本のマルチフィラメント・ストランドが実質的に同じ撚りで巻き付けられ、各マルチフィラメント・ストランドのモノフィラメントの撚り、すなわち芳香族ポリアミド又はコポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドのモノフィラメントの撚り及びポリエステル製のストランドのモノフィラメントの撚りが、実質的にゼロであることを意味する。詳細には、従来技術で周知のこれらの補強要素の製造方法は、第1のステップを伴い、その間に、モノフィラメントの各紡績糸(より適切には「ヤーン」と称される)が、最初にそれ自体個別に(初期撚りR1’及びR2’(R1’=R2’)で)所与の方向D’=D1’=D2’(それぞれS方向又はZ方向であり、これは巻きの向きをS又はZの横断する棒線に従って表す公知の用語に従う)に撚糸され、モノフィラメントそれ自体がストランドの軸線のまわりでらせんを形成する、ストランド又はオーバーツイスト(overtwist)(より適切には「ストランド」と称される)を形成する。次いで、第2のステップの間に、2本のストランドが次に、R3=R1’=R2’となるような最終撚りR3で、D’=D1’=D2’(それぞれZ又はS方向)とは反対の方向D3に一緒に撚り合わされて、補強要素(より適切には「コード」と称される)が得られる。この補強要素は、このとき撚り平衡化されていると言われ、なぜならR1’=R2’なので2本のストランドのモノフィラメントが最終補強要素内で同じ残留撚り(residual twist)を有しているからである。R3=R1’=R2’であり方向D’=D1’=D2’がD3とは逆であるので、この残留撚りはゼロ又はゼロに近い。ゼロに近い残留撚りとは、残留撚りが、撚りR3の2.5%を厳密に下回ることを意味する。
【0019】
「で構成された組立体」とは、その組立体が芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製及びポリエステル製の2本のマルチフィラメント・ストランド以外のマルチフィラメントを含まないことを意味する。
【0020】
選択された撚り係数の区間内で、所与の番手に対して、タイヤ補強要素は比較的一定の破断力を有し、それにより、タイヤ設計者は、補強要素の他の特性、特に撚りを、そのタイヤが意図する1つ又は複数の用途に合うように適合させることが可能になる。さらに、選択された撚り係数の区間内で、補強要素は、今日の大部分のタイヤ用途に適合した耐久性を有する。
【0021】
本発明の補強要素を含む複合体は、タイヤ設計者がタイヤ内で単一のカーカス・プライを使用することを可能にするという利点と同時に、一方でロードハザードに対抗するのに十分な破断力、他方で今日の大部分のタイヤ用途に適合した耐久性を提供する。
【0022】
所与の番手に対して、撚りが高いほど、補強要素の破断力において高レベルのスプレッド(spread)を経験するという工業的リスクが高くなる。それゆえ、所与の番手に対して、高い撚り係数(これは要するに厳密に6.5より高いことを意味する)を有する補強要素と比べて、選択された撚り係数区間は、より低い撚りを有する、したがって補強要素の破断力に対してスプレッドがより小さくなり易い補強要素を選ぶことを可能にする。
【0023】
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドとポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドとを互いに組み立てて、互いの周りにらせん状に巻き付ける。
【0024】
撚り係数は、以後、文字Kで示され(撚り乗数としても知られる)、式:
K=(R×Ti1/2)/957
で定義され、ここでRは、撚り毎メートルで表された補強要素の撚り(上述の撚りR3)であり、Tiは、テックスで表された補強要素のマルチフィラメント・ストランドの番手の合計である。
【0025】
補強要素の撚りRは、当業者に知られた任意の方法を用いて、例えば2010年1月のASTM D1423 又は ASTM D 885/D 885MA規格(パラグラフ30)に従って、例えばねじり動力計を用いて測定することができる。
【0026】
各ストランドの番手(又は線形密度)は、ASTM D1423規格に従って決定される。番手は、テックス(tex)(製品1000mの重量をグラムで表したもの。0.111テックスが1デニールに等しいことに留意)で与えられる。
【0027】
1つの有利な実施形態において、補強要素はまた、2本のストランドで構成された組立体を被覆する接着剤組成物の層も含む。このような接着剤組成物は、例えばRFL(レソルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)タイプである。
【0028】
有利には、補強要素の撚り係数Kは、5.5から6.5までの範囲であり、値5.5は除外され、すなわち区間]5.5;6.5](これは要するに値5.5を除外することを意味する)に属する。補強要素の撚り係数Kは、好ましくは5.6から6.1まで、さらにより好ましくは5.9から6.1までの範囲である。このようにして、所与の番手に対して、補強要素の破断力に対するスプレッドのリスクがさらに軽減される。
【0029】
有利には、補強要素の撚りは、有利には275から365撚り毎メートル(twists per metre)、好ましくは275から350撚り毎メートル、より好ましくは300から330撚り毎メートルの範囲である。所与の番手に対して、この撚り区間内で、補強要素は、今日の大部分の用途に適したタイヤで用いられる十分な耐久性と、その破断力におけるスプレッドの比較的低いリスクとを有する。
【0030】
有利には、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドの番手は、140から210テックス、好ましくは150から190テックス、より好ましくは160から180テックスの範囲である。本発明による撚り係数区間内で上述の区間より低い番手を用いると、補強要素は、比較的高い撚りを示すことになり、このことが破断力におけるスプレッドのリスクに至らしめる。逆に、本発明による撚り係数区間内で上述の区間よりも高い番手を用いると、補強要素は比較的低い撚りを示すことになり、このことが耐久性の低下のリスクに至らしめる。それゆえ、上述の芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドに対する番手区間は、好ましくは破断力と耐久性との間の良好な妥協点を得ることを可能にする。
【0031】
有利には、ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドの番手は、100から210テックス、好ましくは120から190テックス、より好ましくは130から180テックス、さらにより好ましくは160から180テックスの範囲である。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドの番手と同様に、上述のポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドに対する番手区間内で、補強要素は、好ましくは破断力と耐久性との間の良好な妥協点を示す。
【0032】
有利には、補強要素の初期引張りモジュラスは、5.0から10.5cN/テックスの範囲である。初期モジュラスは、小さい変形に関する補強要素の特定の性能態様、特にタイヤの剛性に関連する。そのため、タイヤ設計者は、補強要素、したがってタイヤを、そのタイヤが意図する用途に合うように適合させるように初期モジュラスを選択することができる。
【0033】
好ましくは、補強要素の初期引張りモジュラスは、5.7から8.5cN/テックス、より好ましくは6.2から7.8cN/テックス、さらにより好ましくは6.8から7.5cN/テックスの範囲である。事実上、従来技術によるタイヤの製造方法中に、カーカス・プライは、巻き付けられ、その2つの端部は互いに1センチメートル程度の長さにわたって重ね合わされる。この重ね合わされた区域内では、カーカス・プライは2倍の厚さを有し、したがって、カーカス・プライが単一の厚さを有する(したがって補強要素密度K/2を有する)隣接区域の2倍の高さの補強要素密度Kを有する。この重ね合わせ区域と隣接区域との間の補強要素密度の違いは、これらの区域の各々の補強要素間の応力荷重の差をもたらし、したがってこれらの区域の各々の補強要素間の比較的顕著な伸びの差をもたらし、タイヤのサイドウォールの好ましくない変形をもたらす。
【0034】
有利には比較的高い初期モジュラスを有する、これらの好ましい初期モジュラス区間内で、各区域の補強要素間の応力荷重の差は、比較的小さい伸びの差をもたらし、したがって、タイヤのサイドウォール変形の好ましくない問題を低減することを可能にする。
【0035】
有利には、補強要素の最終引張りモジュラスは、14.0から21.5cN/テックスの範囲である。最終モジュラスは、大きい変形に関する補強要素の特定の性能態様、特に補強要素がロードハザードに曝されたときの補強要素の強度に関連する。タイヤ設計者は、補強要素が可能な限り大部分のロードハザードに対して耐性となり、それにより他の性能態様が犠牲にならないように、最終モジュラスを選択することができる。
【0036】
好ましくは、補強要素の最終引張りモジュラスは、15.0から19.0cN/テックス、より好ましくは15.8から18.5cN/テックス、さらにより好ましくは16.6から17.9cN/テックスの範囲である。
【0037】
初期モジュラスは、標準的な引張り予荷重0.5cN/テックスの直後に生じる力-伸び曲線の線形部分の原点における勾配として定義される。最終モジュラスは、力-伸び曲線の破断力の80%に対応する点における勾配として定義される。力-伸び曲線は、「4D」クランプを装着した「INSTRON」引張試験機を用いて、公知の方法による測定によって得られる。試験される試料は、標準引張り予荷重0.5cN/テックスの下で、初期長さ400mm、公称速度200mm/分で引張り応力に供される。
【0038】
有利には、初期モジュラスに対する最終モジュラスの比は、2.10から2.75、好ましくは2.15から2.45、より好ましくは2.20から2.40、さらにより好ましくは2.25から2.40の範囲である。
【0039】
本発明の別の主題は、エラストマー組成物に埋設された上記定義の少なくとも1つの補強要素を含むエラストマー複合体である。
【0040】
エラストマー組成物とは、エラストマー、好ましくはジエンエラストマー、例えば天然ゴムと、補強用フィラー、例えばカーボンブラック及び/又はシリカと、架橋系、例えば好ましくは硫黄を含む加硫系とを含む、組成物を意味する。
【0041】
有利には、複合体における補強要素の密度は、複合体1デシメートル当たり80から145補強要素、好ましくは複合体1デシメートル当たり90から130補強要素、より好ましくは複合体1デシメートル当たり100から125補強要素、さらにより好ましくは複合体1デシメートル当たり105から120補強要素の範囲である。これらの補強要素密度区間内では、複合体は、比較的高い破断力及び比較的低いコストを有し、大部分の用途に適したタイヤでの使用を可能にする。
【0042】
複合体における補強要素の密度は、補強要素が互いに平行に延びる方向に対して垂直な方向における複合体1デシメートル内に含まれる補強要素の数である。
【0043】
有利には、複合体の厚さに対する補強要素の直径の比は、厳密に0.65未満、好ましくは0.62以下である。このようにして、複合体の厚さ、それゆえタイヤのヒステリシスは、このようなタイヤを装着した車両にエネルギー消費を削減するために低減される。
【0044】
有利には、補強要素の直径は、0.95mm以下、好ましくは0.80mm以下、より好ましくは0.70mm以下である。本発明による補強要素は、全体方向Gに延び、この補強要素の直径は、方向Gに対して垂直な切断面内でこの補強要素が内接することができる直径である。
【0045】
有利には、複合体の厚さは、1.45mm以下、好ましくは1.30mm以下、より好ましくは1.20mm以下である。複合体の厚さは、複合体の2つの外面間の最短距離であり、すなわち複合体の2つの外面に対して垂直方向に測定した距離である。
【0046】
本発明のさらに別の主題は、上記定義のようなエラストマー複合体から得られる少なくとも1つのカーカス・プライを含むカーカス補強体を含む、タイヤである。
【0047】
本発明のタイヤは具体的には、乗用車、4×4及びSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)タイプの自動車用として意図することができるが、バイクのような二輪車用、又は地下鉄、バス、大型道路運搬車両(トラック、トラクタ、トレイラー)、オフロード車両及び農業若しくは土木機械のような産業車両用としても意図することができる。
【0048】
好ましくは、タイヤは、乗用車、4×4又はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)タイプの自動車用として意図することができる。
【0049】
有利には、カーカス補強体は、単一のカーカス・プライを含む。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドとポリエステルとを組み合わせた使用は、機械的強度特性、特に破断力及び耐久性を示すカーカス・プライを得ることを可能にし、この特性は、タイヤ設計者がカーカス補強体の中のカーカス・プライの数を(いくつかではなく)1つだけに制限することを可能にするのに十分なほど高い。それゆえ、カーカス・プライの数を削減することにより、タイヤのコスト、質量そしてまたヒステリシス、したがって転がり抵抗が低減される。さらに、単一のカーカス・プライの存在は、いくつかのカーカス・プライを含むカーカス補強体を有するタイヤよりも可撓性のカーカス補強体を有するタイヤを得ることを可能にする。そのためタイヤの垂直方向剛性が制限される。
【0050】
1つの実施形態において、タイヤは、半径方向内側に2つのサイドウォールによって延びたクラウンを含み、各サイドウォールは、半径方向内側に2つのビードによって延びており、各ビードは少なくとも1つの環状補強構造体を含み、カーカス補強体は、環状補強構造体を取り巻くターンアップによって各ビードに固定される。
【0051】
好ましくは、カーカス・プライの補強要素は、カーカス・プライの補強要素が延びる全体方向に対して実質的に垂直な主方向に横並びに互いに平行に配置され、全体方向は、タイヤの円周方向に対して80°から90°までの範囲の角度を成す。
【0052】
別の実施形態において、タイヤは、カーカス補強体の半径方向外側に配置されたクラウン補強体を含み、クラウン補強体は、少なくとも1つ、好ましくは2つのワーキング・プライを含む、ワーキング補強体を含む。随意的に、各ワーキング・プライは、横並びに互いに実質的に平行に配置された、好ましくは金属製の、いくつかのワーキング補強要素を含む。このようなワーキング補強要素は、タイヤの円周方向に対して10°から45°の範囲の角度を成す。有利には、ワーキング補強要素は、1つのワーキング・プライから他のワーキング・プライまで交差する。
【0053】
好ましくは、クラウン補強体は、ワーキング補強体の半径方向外側に配置されたフープ補強体を含む。有利には、フーピング・プライは、横並びに互いに実質的に平行に配置された、好ましくはテキスタイル製の、フープ補強要素を含む。このようなフープ補強要素は、タイヤの円周方向に対して、高々10°に等しい、好ましくは5°から10°までの範囲の角度を形成する。
【0054】
本出願において「テキスタイル」という用語は、なんらかの適切な変換プロセスによってスレッド、ファイバ又はフィルムへの変換が可能な、天然物質又は合成物質のいずれであれ金属物質以外の物質で作られた任意の材料を意味する、極めて全般的な用語である。例えば、以下の例は限定的ではないが、例えば溶融紡糸、溶液紡糸又はゲル紡糸のようなポリマー紡糸プロセスを挙げることができる。
【0055】
非ポリマー物質で作られた(例えば、ガラスのような無機物質、又はカーボンのような非ポリマー有機物質で作られた)材料は、テキスタイル材料の定義には含まれるが、本発明は、熱可塑性タイプ及び非熱可塑性タイプ両方のポリマー物質で作られた材料で行われることが好ましい。
【0056】
熱可塑性又は非熱可塑性タイプのポリマー材料の例として、例えば、セルロース、特にレーヨン、ポリビニルアルコール(「PVA」と略記」、ポリケトン、アラミド(芳香族ポリアミド)、芳香族ポリエステル、ポリベンザゾール(「PBO」と略記)、ポリイミド、ポリエステル、特にPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)又はPPN(ポリプロピレンナフタレート)の中から選択されるポリエステルが挙げられる。
【0057】
好ましくは、タイヤは、タイヤが駆動するとき地面に接触することが意図された、クラウン補強体の半径方向外側に配置されたトレッドを含む。
【0058】
特定の実施形態において、カーカス・プライは、未硬化タイヤを成形することによって複合体から得られる。これらの実施形態において、ビルディング・ドラムが使用され、その全体の形状はドラムの軸線の周囲でトロイド状であり、ドラムは、敷設面を有し、本発明による複合体は、この敷設面に接触して巻き付けられ、この複合体は、次いで軸線方向及び円周方向に連続した円筒巻きを形成する。複合体は、敷設面に直接接触して敷設されてもよく、あるいは、それ自体が敷設面に接触して巻き付けられた半径方向内側プライ、例えば気密内側ライナプライの上に敷設されてもよい。大部分の実施形態において、複合体は、ひと巻きだけ円筒に巻き付けるだけで敷設される。随意に、複合体の上に他のプライが敷設される。
【0059】
敷設面は次いで、例えば、敷設面の内側の環状空間を、膨張ガスを用いて、例えば空気を用いて加圧することによって、ドラムの軸線から半径方向に離間される。このステップは、未硬化タイヤがその後のクラウン補強体及びトレッドの敷設に適した形状を得るように変形されるので、成形と称される。この成形は、本発明による複合体から得られるカーカス・プライ中の補強要素の密度を、それがビード内にあるか又はクラウン補強体の半径方向下方にあるかによって変化させる。これは次いで、成形された未硬化形態のタイヤを生じる。
【0060】
次に、クラウン補強体及びトレッドが成形された未硬化形態のタイヤに付加される。
【0061】
最後に、敷設面は、例えば環状空間を減圧することによって、ドラムの軸線の半径方向でより近くに来ることになる。
【0062】
生の状態のタイヤがこのようにして得られる。最後に、タイヤは、硬化状態のタイヤを得るために、例えば加硫によって架橋される。
【0063】
特定の実施形態において、タイヤは、30から55まで、好ましくは30から50までの範囲のアスペクト比を有するアスペクト比又は公称アスペクト比は、ETRTO(European Tyre and Rim Technical Organization)文書「Engineering Design Information」2010年、パラグラフD、ページGI.5で定義された通り、タイヤの横断面の公称幅に対するタイヤの断面の高さの、百分率で表された比である。他のすべてのことが等しければ、アスペクト比が低いほど、タイヤはロードハザード、特にカーカス・プライがピンチされること(より正確に言えば「ピンチショック」)を伴うロードハザードに対してより敏感になる。そのため、アスペクト比が55以下のタイヤは、ピンチショックに対して特に敏感である。驚くべきことに、アスペクト比が55以下であるが本発明によるカーカス・プライ補強要素を含むタイヤは、より高い、例えば55より高いアスペクト比を有する類似のタイヤよりも敏感ということはなく、このことは、アスペクト比55以下においてはピンチショックに対して極めて敏感である一方で、この感度が、より高い、例えば55より高いアスペクト比を有する類似のタイヤについては穏やかであるような、例えばポリエステル製のカーカス・プライ補強要素を含む従来技術のタイヤとは異なる。
【0064】
他の実施形態において、タイヤは、55以上、好ましくは55から75まで、より好ましくは60から70までの範囲のアスペクト比を有する。このようなアスペクト比を有するタイヤは、一般に4×4又はSUVタイプの車両で用いられ、特定の用途、特にオフロード及び/又は重い積荷を積載する用途に遭遇することが意図される。このようなアスペクト比を有する従来技術のタイヤは、このような特定の用途に対処するために、2つのカーカス・プライを含むカーカス補強体を含む。上述の複合体によれば、このようなタイヤが、単一カーカス・プライを1つだけ含み、遭遇することが意図される特定の用途に対処することが可能である。
【0065】
1つの実施形態において、タイヤは、2つのサイドウォールを含み、各サイドウォールは、タイヤの正中正接面(median tangential plane)内で測定して10mm未満のタイヤの平均厚さを有する。このようなタイヤは、ランフラットとして設計されたものではない。このサイドウォールの厚さは、タイヤの外面とタイヤの内面との間を正中正接面内で測定した距離である。タイヤの正中正接面は、正中円周面に対して垂直であり、かつトレッドの外面を通る第1の正接面及びタイヤの半径方向内端部を通る第2の正接面から半径方向に等距離な平面である。
【0066】
別の実施形態において、タイヤは、ランフラットタイヤとして設計される。一般に、ランフラットとして設計されたタイヤの能力は、タイヤのサイドウォール上に、特にロゴ又は区別するマークによって、例えば「SSR」(Self Supporting Runflat)、「SST(Self Supporting Tyre)、「RFT」、「ROF」(Run On Flat)、「RME」(Extended Mobility Technology)、「Run-On-Flat」又は代替的に「ZP」(zero Pressure)、又はよりシンプルに「Run Flat」によって示される。
【0067】
好ましくは、タイヤがランフラットとして設計された実施形態において、タイヤは、カーカス補強体の軸方向内側に配置されたサイドウォール・インサートを含む。
【0068】
好ましくは、タイヤがランフラットとして設計された実施形態において、タイヤは、2つのサイドウォールを含み、各サイドウォールは、タイヤの正中正接面内で測定して10mm以上の平均厚さを有する。各サイドウォールの厚さ及び正中正接面は、上記定義の通りである。
【0069】
詳細には、幾年にもわたって、タイヤ製造者は、車両に搭載するスペア車輪の存在を排除しようと努める一方で同時に、1つ又は複数のタイヤの圧力が著しく又は完全に失われても車両がその走行を続けることを保証しようとしてきた。このことは、例えば、スペア車輪を装着するために、危険であることが多い状況下で停車することを要さずにサービスセンタに到着することを可能にする。
【0070】
1つの想定される解決策は、ランフラットとして設計された、自己支持型(self-supporting)サイドウォールを備えたタイヤの使用である。
【0071】
膨張圧力がサービス圧力に近いとき(これは以後「正常走行」モードと称する)、タイヤは、可能な限り良好な「IM(inflated mode)」(膨張モード)走行性能と称される性能を示すことが望ましい。このIM走行性能は、とりわけ、質量(mass)、転がり抵抗、又は快適性されも含む。
【0072】
膨張圧力がサービス圧力に比べて著しく低減したとき、さらにはゼロのとき(これは以後「ランフラット」モードと称する)、タイヤは、所与の速度で所与の距離を走破することを可能にしなければならない。この性能は、「EM(extended mobility)」(延長移動)走行性能と称され、法令により又は自動車製造者により、生産者がそのタイヤをランフラットタイヤとして広告することを許容するために要求される。この性能は、カーカス補強体の補強要素の耐久性に大いに依存し、その耐久性は、本発明による補強要素を用いると十分である。
【0073】
詳細には、補強要素は、低変形(正常走行モード)において比較的低いモジュラス、この例では、IM走行性能に適合していることが証明されているポリエステル・ストランドのモジュラスを有する。補強要素は、高変形(ランフラットモード)において比較的高いモジュラス、この例では、それ自体でEM走行性能を提供するのに十分であることが証明されている芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドストランドのモジュラスを有する。
【0074】
本発明は、単に非限定的な例として、図面を参照して与えられる、以下の説明に照らしてより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】本発明の第1の態様によるタイヤの半径方向断面図である。
【
図2】
図1のタイヤのカーカス・プライを得るために用いることができる複合体を示す。
【
図3a】
図2の複合体のIII-III’の断面図を示す。
【
図3b】従来技術の複合体の、
図3aと同様の図である。
【
図4】
図1のタイヤ及び
図2の複合体の補強要素の詳細図を示す。
【
図6】本発明の第2の実施形態によるタイヤの
図1と同様の図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態によるタイヤの
図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
「半径(方向)/ラジアル(radial)」という用語を用いるとき、当業者によるこの語のいくつかの異なる用法の間を区別すべきである。第一に、この表現はタイヤの半径を指す。この意味で、点Aがタイヤの回転軸に対して点Bより近くにある場合、点Aは点Bの「半径方向内側」である(又は点Bの「半径方向内側にある」)と言われる。逆に、点Cがタイヤの回転軸から点Dより遠くにある場合、点Cは点Dの「半径方向外側」である(又は「又は半径方向外側にある」)と言われる。「半径方向内方(又は外方)」に進むとは、より小さい(又はより大きい)半径に向かって進むことを意味する。半径方向距離が論じられるときにもこの意味の語が適用される。
【0077】
「半径方向横断面」又は「半径方向断面」は、本明細書では、タイヤの回転軸を含む平面内の横断面又は断面を意味する。
【0078】
タイヤの「正中円周面」Mは、タイヤの回転軸に対して垂直であるとともに各ビードの環状補強構造から等距離に位置する平面である。
【0079】
既に上で説明したように、タイヤの「正中正接面」Tは、「正中円周面」Mに対して垂直であるとともに、トレッドの外面を通る第1の正接面T1及びタイヤの半径方向内端部を通る第2の正接面T2から半径方向に等距離な平面である。
【0080】
「軸」方向は、タイヤの回転軸に対して平行な方向である。
【0081】
「円周」方向は、タイヤの半径及び軸方向の双方に対して垂直な方向である。
【0082】
既に上で説明したように、Fは、正中正接面で測定されたタイヤのサイドウォールの平均厚さであり、すなわち正中正接面のタイヤの外壁と内壁との間で測定された距離である。この厚さは、タイヤ上で円周方向に均一に配分された5つの断面上で測定した5つの値に対して計算されることから、平均厚さである。
【0083】
本出願において、特段の指示のない限り、「aからbまで」という表現で表される値の範囲は、いずれも終点「a」から終点「b」までに及ぶ値の範囲を意味し、すなわち厳密に終点「a」及び「b」を含む。
【0084】
「本発明の第1の実施形態によるタイヤ」
通常のそれぞれタイヤの軸方向(X)、半径方向(Y)及び円周方向(Z)に対応する座標系X、Y、Zが、図中に描かれている。
【0085】
図1は、全般的な符号10で示される本発明の第1の実施形態によるタイヤの、半径方向断面を模式的に示す。タイヤ10は、軸方向Xに実質的に平行な軸の周りでの回転を実質的に示す。タイヤ10は、ここでは乗用車用であることが意図されている。タイヤ10は、30から55まで、好ましくは30から50までの範囲のアスペクト比を有する。この具体的な例では、タイヤは、サイズ245/40 R18のものであり、したがって40に等しいアスペクト比を有する。第1の実施形態によるタイヤ10は、ランフラットとして設計されたものではない。
【0086】
タイヤ10は、クラウン補強体14を含むクラウン12を含み、クラウン補強体14は、ワーキング補強要素の2つのワーキング・プライ16、18を含むワーキング補強体15と、フープ補強要素のフーピング・プライ19を含むフープ補強体17とを含む。クラウン補強体14は、クラウン補強体14の半径方向外側に配置されたトレッド20を載置している。この事例では、フープ補強体17、この事例ではフーピング・プライ19は、ワーキング補強体15とトレッド20との間に半径方向に挟まれている。
【0087】
タイヤはまた、クラウン12を半径方向内方に延長する2つのサイドウォール22も含む。タイヤ10は、サイドウォール22の半径方向内側に2つのビード24をさらに含み、ビード24の各々は、環状補強構造26、この例ではビードワイヤ28を含み、これにはビード頂点充填ゴム30の塊が載置されており、タイヤ10は、半径方向カーカス補強体32も含む。
【0088】
カーカス補強体32は、いくつかの補強要素を含む少なくとも1つのカーカス・プライを含み、プライは、ビードワイヤ28を取り巻くターンアップによってビード24の各々に固定され、各ビード24内で、ビードからサイドウォールを通ってクラウン12に向かう主ストランド38と、ターンアップ・ストランド40とを形成するようになっており、ターンアップ・ストランド40の半径方向外端部42は、環状補強構造26の半径方向外側にある。カーカス補強体32は、このようにしてビード24からサイドウォール22を通ってクラウン12の中まで延びている。カーカス補強体32は、クラウン補強体14及びフープ補強体17の半径方向内側に配置される。カーカス補強体32は、単一のカーカス・プライ34を含む。
【0089】
タイヤ10はまた、サイドウォール22の軸方向内側かつクラウン補強体14の半径方向内側に位置するとともに2つのビード24間に延びる、好ましくはブチル製の、気密内側ライナ43も含む。
【0090】
正中正接面Tで測定したタイヤ10の各サイドウォール22の平均厚さFは、10mm未満である。この特定の例において、平均厚さFは、ここでは5mmに等しい。
【0091】
各ワーキング・プライ16、18、フーピング・プライ19及びカーカス・プライ34は、対応するプライの補強要素が埋設されたポリマー組成物を含む。ワーキング・プライ16、18、フーピング・プライ19及びカーカス・プライ34の各ポリマー組成物、ここではエラストマー組成物は、補強要素のスキミング用の従来の組成物から作られ、この組成物は、従来、ジエンエラストマー、例えば天然ゴムと、補強用フィラー、例えばカーボンブラック及び/又はシリカと、架橋系、例えば加硫系とを含み、加硫系は、好ましくは硫黄と、ステアリン酸と、酸化亜鉛と、場合によっては加硫促進剤及び/又は遅延剤及び/又は種々の添加剤とを含む。
【0092】
「本発明による複合体」
カーカス・プライ34を得るための複合体を、ここで
図2、
図3a及び
図4を参照して説明する。
【0093】
複合体は、いくつかの補強要素を含む。補強要素は、カーカス・プライの補強要素が延びる全体方向Gに対して実質的に垂直な主方向Dに、横並びに互いに平行に配置され、全体方向Gは、ひとたびカーカス・プライ34を形成する複合体がタイヤ10内に入ると、タイヤ10の円周方向Zに対して80°から90°までの範囲の角度を成す。この具体的な例において、全体方向Gは、ひとたびカーカス・プライ34を形成する複合体がタイヤ10内に入ると、タイヤ10の円周方向Zに対して実質的に90°に等しい角度を成す。
【0094】
補強要素45及び対応する組立体49を以下で説明する。補強要素45に対応する複合体36も説明する。
【0095】
補強要素のストランドの性質
図4に模式的に示すように、補強要素45は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドで作られたマルチフィラメント・ストランド46と、ポリエステルで作られたマルチフィラメント・ストランド48とで構成された組立体49を含み、2本のストランド46、48は、互いの周りにらせん状に巻き付けられている。補強要素45は、撚り平衡化されている。説明の正確さのために、
図5は、本発明による補強要素45の横断面図であり、各ストランドのモノフィラメントを識別することができる。
【0096】
選択された芳香族ポリアミドは、この例では、好ましくは、Teijin社による商品名Twaron1000として知られるパラアラミドである。ポリエステルは、Hyosung社又はHailide社による商品名PET HMLS(高モジュール低収縮(High Module Low Shrinkage))として知られるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0097】
図示していない特定の実施形態において、補強要素45は、組立体49に加えて、組立体49を被覆する接着剤組成物の層を含む。
【0098】
補強要素の番手
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランド46の番手は、140から210テックス、好ましくは150から190テックス、より好ましくは160から180テックスの範囲である。
【0099】
補強要素45において、ストランド46の番手は、167テックスに等しい。
【0100】
ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランド48の番手は、100から210テックス、好ましくは120から190テックス、より好ましくは130から180テックス、さらにより好ましくは160から180テックスの範囲である。
【0101】
補強要素45において、ストランド48の番手は、167テックスに等しい。
【0102】
補強要素の撚り
補強要素45において、補強要素の撚りは、275から365撚り毎メートル、好ましくは275から350撚り毎メートル、より好ましくは300から330撚り毎メートルの範囲である。この具体的な例において、補強要素45の撚りは、315撚り毎メートルに等しい。
【0103】
補強要素の初期及び最終モジュラス
各補強要素45の初期引張りモジュラスは、5.0から10.5cN/テックスの範囲である。
【0104】
補強要素45において、補強要素の初期引張りモジュラスは、有利には5.7から8.5cN/テックス、好ましくは6.2から7.8cN/テックス、より好ましくは6.8から7.5cN/テックスの範囲である。この特定の例において、補強要素45の初期モジュラスは、7.2cN/テックスに等しい。
【0105】
補強要素45の最終引張りモジュラスは、14.0から21.5cN/テックスの範囲である。
【0106】
補強要素45において、補強要素の最終引張りモジュラスは、有利には15.0から19.0cN/テックス、好ましくは15.8から18.5cN/テックス、より好ましくは16.6から17.9cN/テックスの範囲である。この具体的な例において、補強要素45の最終モジュラスは、16.9cN/テックスに等しい。
【0107】
初期モジュラスに対する最終モジュラスの比は、2.10から2.75の範囲である。
【0108】
補強要素45において、初期モジュラスに対する最終モジュラスの比は、有利には2.15から2.45、好ましくは2.20から2.40、より好ましくは2.25から2.40の範囲である。この具体な例において、補強要素45の初期モジュラスに対する最終モジュラスの比は、2.34に等しい。
【0109】
補強要素の撚り係数
補強要素45の撚り係数Kは、5.5から6.5までの範囲である。
【0110】
好ましくは、補強要素45において、撚り係数Kは、区間]5.5;6.5](これは要するに値5.5を除外することを意味する)に属し、好ましくは5.6から6.1まで、さらにより好ましくは5.9から6.1までである。この具体的な事例において、補強要素45の撚り係数Kは、6.0に等しい。
【0111】
複合体の幾何学的特性
図3aに戻ると、複合体36は、厚さEを有し、補強要素45は直径dを有する。直径dは、補強要素が内接することができる理論的な円の直径に対応する。
図3aにおいて、各ストランドは、説明を簡単にするために、あえて模式的に描かれている。
図5は、補強要素45を実際に見えるように示す。
【0112】
補強要素45の直径は、0.95mm以下、好ましくは0.80mm以下、より好ましくは0.70mm以下である。補強要素45は、直径d=0.67mmを有する。
【0113】
複合体36の厚さEは、1.45mm以下、好ましくは1.30mm以下、より好ましくは1.20mm以下である。補強要素45は、厚さE=1.10mmを有する。
【0114】
それゆえ、比d/Eは、厳密に0.65未満、好ましくは0.62以下である。補強要素45は、比d/E=0.61を有する。
【0115】
複合体36における補強要素45の密度は、各複合体36の1デシメートル当たり90から130補強要素、好ましくは複合体36の1デシメートル当たり100から125補強要素、より好ましくは複合体36の1デシメートル当たり105から120補強要素の範囲である。複合体36について、補強要素45の密度は、複合体36の1デシメートル当たり110補強要素に等しい。
【0116】
図3aは、2つの隣接する補強要素45の2つの類似の点を隔てる距離であるピッチPを示す。ピッチPは、一般に、補強要素が複合体内に敷設される敷設ピッチのことを指す。ピッチPと、複合体1デシメートル当たりの補強要素の密度とは、複合体1デシメートル当たりの補強要素の密度が100/Pに等しくなるようになっている。
【0117】
上述の補強要素の密度及び厚さは、前に説明したように、補強要素45の密度及び複合体36の厚さEである。タイヤ10において、カーカス・プライ34は、未硬化タイヤを成形することによって複合体36から得られるので、補強要素の密度及びカーカス・プライ34の厚さは、複合体のそれらとは異なり、タイヤの回転軸からのその距離に従って変化する。これらの変動は、特にタイヤの未硬化形態の形状要因及びまたその幾何学的形状に依存する。当業者は、特にタイヤの未硬化形態の形状要因及びその幾何学的形状に基づいて、対応する複合体の特性を決定することができる。
【0118】
「補強要素の製造方法」
上述のように、補強要素45は、撚り平衡化されており、これは要するに、2本のマルチフィラメント・ストランドが実質的に同じ撚りで巻き付けられ、各マルチフィラメント・ストランド内のモノフィラメントの撚りが実質的にゼロであることを意味する。第1のステップにおいて、モノフィラメントの各紡績糸(より適切には「ヤーン」と称される)が最初にそれ自体個別に315撚り毎メートルに等しい初期撚りで、所与の方向、この例ではZ方向に撚糸され、ストランド又はオーバーツイスト(より適切には「ストランド」と称される)を形成する。次いで、第2のステップの間に、2本のストランドが次に315撚り毎メートルに等しい最終撚りでS方向に一緒に撚り合わされて、補強要素の組立体(より適切には「コード」と称される)が得られる。
【0119】
後のステップにおいて、各組立体は、接着剤組成物、例えばRFL(レソルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)タイプの接着剤組成物で被覆され、接着剤組成物を少なくとも部分的に架橋するために熱処理ステップに供される。
【0120】
「本発明による複合体の製造方法」
複合体36は、いくつかの補強要素45をエラストマー組成物に、例えばスキミングにより埋設することによって製造される。このような当業者に周知のスキミングステップの間に、補強要素が前進し、スキムと称されるエラストマー組成物で作られた2つのストップが、補強要素の各側に1つずつ導入され、補強要素が2つのスキムの間に挟まれるようになっている。補強要素は、このようにしてエラストマー組成物の中に埋設される。
【0121】
「本発明によるタイヤの製造方法」
タイヤの製造方法は、当業者が従来用いている方法である。この方法の工程の間に、既に上で説明したように、タイヤ10のカーカス・プライ34を形成することを意図した本発明による複合体を含む種々のプライ及び複合体が、最初の一連のタイヤ構築ステップ中に連続的に敷設される。このようにして得られた未硬化物は、次いで成形される。次に、タイヤ10のクラウン12を形成することを意図した他のプライ及び複合体が敷設される。最後に、このようにして得られた未硬化物は、タイヤ10を得るために加硫される。
【0122】
「本発明の第2の実施形態によるタイヤ」
図6は、本発明の第2の実施形態によるタイヤを示す。
第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の符号で示す。
【0123】
第1の実施形態によるタイヤ10とは異なり、第2の実施形態によるタイヤ10は、55以上、好ましくは55から75までの範囲のアスペクト比を有する。この具体的な例において、タイヤはサイズ205/55 R16のものであり、したがってアスペクト比は55に等しい。
【0124】
「本発明の第3の実施形態によるタイヤ」
図7は、本発明の第3の実施形態によるタイヤを示す。第1の実施形態の要素と同様の要素は、同一の符号で示す。
【0125】
第1の実施形態によるタイヤ10とは異なり、第3の実施形態によるタイヤ10は、ランフラットとして設計されたタイヤである。そのため、タイヤは、ランフラット状況の間、車両の重量の一部に対応する荷重に耐えるように、すなわち大気圧に実質的に等しい圧力を有するように構成される。
【0126】
第3の実施形態によるタイヤ10は、クラウン12を半径方向内方に延長する2つの自己支持型サイドウォール22を含む。この目的で、タイヤ10は、カーカス補強体32の軸方向内側かつ気密内側ライナ43の軸方向外側に、2つのサイドウォール・インサート50を含む。このように、サイドウォール・インサート50は、軸方向でカーカス補強体32と気密内側ライナ43との間に配置される。
【0127】
その特徴的な三日月形の半径方向断面を有するこれらのインサート50は、サイドウォール22を補強することを意図する。各インサート50は、特定のエラストマー組成物から作られる。特許文献2は、このようなインサートを形成するために用いることができる特定のエラストマー組成物のいくつかの例を与える。各サイドウォール・インサート50は、ランフラット状態の間、車両の重量の一部に対応する荷重に耐えることに寄与することが可能である。
【0128】
タイヤの第1の実施形態とは異なり、各サイドウォール22は、正中正接面で測定して10mm以上の平均厚さFを有する。この具体的な例において、平均厚さFは、ここでは17mmに等しい。
【0129】
「比較試験及び測定」
比較例として、
図3bは、従来技術のタイヤの、全般的な符号NTで示される従来技術の複合体を示す。複合体NTは、補強要素ETを含み、各補強要素ETは、ポリエステル製の2本のマルチフィラメント・ストランドで構成された組立体を含み、2本のマルチフィラメント・ストランドは、互いに組み立てられ、270撚り毎メートルの撚りで互いのまわりにらせん状に巻き付けられている。各補強要素ETは、撚り平衡化されている。補強要素ETの各マルチフィラメント・ストランドは、334テックスに等しい番手を有する。
【0130】
対照補強要素ET’を含む対照複合体NT’も使用され、各補強要素ET’は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランドとポリエステル製のマルチフィラメント・ストランドとで構成され、これらのマルチフィラメント・ストランドは、互いに組み立てられ、290撚り毎メートルの撚りで互いのまわりにらせん状に巻き付けられている。各補強要素ET’は、撚り平衡化されている。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド、この事例では補強要素45のものと同一のパラアミドのマルチフィラメント・ストランドは、167テックスに等しい番手を有する。ポリエステル、この事例では補強要素45のものと同一のPETのマルチフィラメント・ストランドは、144テックスに等しい番手を有する。
【0131】
補強要素間の比較
表1に、本発明によるタイヤ10の補強要素45、対照補強要素ET’及び従来技術の補強要素ETの特性をまとめる。破断力測定値は、ISO6892規格(1984年)に準拠した引張試験下で取得される。
【表1】
【0132】
補強要素45は、従来技術の補強要素ETよりも有意に高い初期及び最終モジュラス値を有することに注目されたい。
【0133】
補強要素45の破断力値は、ロードハザードに効果的に対処するのに十分なほど高い。補強要素45の破断力は、対照補強要素ET’の破断力を上回り、補強要素ETの破断力とほぼ同じであることが注目される。
【0134】
複合体の比較
補強要素45を含む本発明による複合体36を、対照補強要素ET’を含む対照複合体NT’及び補強要素ETを含む従来技術の複合体NTと比較した。これらの複合体の幾何学的性質を下記の表2において照合する。
【表2】
【0135】
従来技術の補強要素ETは、本発明による複合体の補強要素45の直径よりも非常に大きい直径dを有することに注目されたい。本発明による複合体36は、複合体NTよりもはるかに薄く、複合体NT’よりも薄い。複合体36の比d/Eは、従来技術の複合体の比d/Eよりも小さく、それは複合体36の重さがより軽いことを意味する。
【0136】
より軽量であることに加えて、複合体36は、複合体NT及び複合体NT’よりも有意に高い破断力を有することが注目される。
【0137】
補強要素の破断力
表3は、167テックスに等しい番手を有するアラミド(Teijin社によるTwaron 1000)製のマルチフィラメント・ストランドと、144テックスに等しい番手を有するPET(Hyosung社によるPET HMLS)製のマルチフィラメント・ストランドとを含み、2つのストランドが互いにらせん状に巻き付き、各補強要素が撚り平衡化されている、補強要素の破断力を示す。撚りは、撚り係数Kが3.7から7.0まで変化するように変化させた。破断力測定値は、ISO6892規格(1984年)に準拠した引張試験下で取得する。
【表3】
【0138】
表4は、167テックスに等しい番手を有するアラミド(Teijin社によるTwaron 1000)製のマルチフィラメント・ストランドと、167テックスに等しい番手を有するPET(Hailide社によるPET HMLS)製のマルチフィラメント・ストランドとを含み、2つのストランドが互いにらせん状に巻き付き、各補強要素が撚り平衡化されている補強要素の破断力を示す。撚りは、撚り係数Kが4.6から7.0まで変化するように変化させた。破断力測定値は、ISO6892規格(1984年)に準拠した引張試験下で取得する。
【表4】
【0139】
表3及び表4は、所与の番手に対して、5.5から6.5までの範囲の撚り係数Kの区間内で、各補強要素の破断力が実質的に一定であることを示す。それゆえ、上述のように、選択された撚り係数区間内で、タイヤ設計者は、補強要素の他の特性、特に撚りを、そのタイヤが意図する1つ又は複数の用途に合うように、特に後述のように耐久性を変更するために適合させることができる。
【0140】
補強要素の耐久性
補強要素45の耐久性を、他のアラミド/PET補強要素I、II、III及びET’の耐久性と比較した。補強要素II及び45は、本発明によるものである。補強要素I、III及びET’は、本発明によるものではない。耐久性を評価するために、補強要素をエラストマー組成物に埋設して厚さが30mmに等しいストリップの形態の試験片を形成し、これを円筒形のバーの周りでサイクルさせた。190,000サイクル後、各補強要素の最終破断力を測定した。190,000サイクル後の破断力における損失に対応するドロップオフを%として計算した。ドロップオフが高いほど、耐久性が低い。試験の結果及び試験された補強要素の特性を下記の表5において照合する。
【表5】
【0141】
補強要素II及び45についての結果は、所与のストランド番手に対して、5.5から6.5までの範囲の撚り係数Kの区間内で、耐久性を、タイヤの所望の用途に従って、例えば撚りを変えることによって変更することができることを示す。それゆえ、タイヤ設計者は、タイヤが意図する特定の用途、例えばスポーツ用途に応じて撚りを増大することによって耐久性を変更することができ、あるいは、より低い撚りを選択することによって今日の大部分のタイヤ用途に適合した耐久性を選択することができる。
【0142】
これらの結果は、補強要素45が、比較的高い初期破断力と、はるかに高い撚り係数を有する補強要素IIIの耐久性に近い耐久性との両方を兼ね備えることを示す。さらに、5.5から6.5までの範囲の撚り係数Kの区間において、初期破断力は、この区間よりも高い撚り係数を有する補強要素IIIの初期破断力よりはるかに高い。
【0143】
タイヤの比較
本発明によるタイヤ10を、複合体NTから得られるカーカス・プライを含む従来技術のタイヤPTに対して比較した。
【0144】
タイヤ10及びPTの質量を、試験されるタイヤを秤量することによって比較した。この試験の結果を下記の表6において照合する。
【表6】
【0145】
このように、タイヤ10は、従来技術のタイヤPTと比べて質量が低いことを示すことが注目される。
【0146】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0147】
上述していない実施形態において、タイヤは、60から70までの範囲のアスペクト比を有し得る。
【0148】
上記で説明した又は想定される種々の実施形態及び代替的形態の特性を組み合わせることも、それらの特性が互いに両立できる条件で可能である。
【符号の説明】
【0149】
10:タイヤ
12:クラウン
14:クラウン補強体
15:ワーキング補強体
16、18:ワーキング・プライ
17:フープ補強体
19:フーピング・プライ
20:トレッド
22:サイドウォール
24:ビード
28:ビードワイヤ
32:カーカス補強体
34:カーカス・プライ
36:エラストマー複合体
38:主ストランド
40:ターンアップ・ストランド
43:気密内側ライナ
45:補強要素
46:芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミド製のマルチフィラメント・ストランド
48:ポリエステル製のマルチフィラメント・ストランド
49:組立体
50:サイドウォール・インサート