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特許7154225封入されたカソード活物質粒子、それを含有するリチウム二次バッテリー及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】封入されたカソード活物質粒子、それを含有するリチウム二次バッテリー及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20221007BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221007BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221007BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20221007BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20221007BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20221007BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/60
H01M4/36 A
H01M4/36 B
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M10/058
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2019555191
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018025163
(87)【国際公開番号】W WO2018191026
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】15/483,342
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0034993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムバッテリーのためのカソード活物質の粒状物において、前記粒状物が、5%以上の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン伝導率及び0.5nm~10μmの厚さを有する熱可塑性ポリマーである高弾性ポリマーの薄層によって包含されているか、又は封入されているカソード活物質粒子の1つ又は複数を含んでなり、前記ポリマーが、0.5×10~9×10グラム/モルの分子量を有する超高分子量ポリマーを含有し、且つ前記リチウムバッテリーが、金属-エア及び金属-硫黄バッテリーを除いて、リチウムイオンバッテリー又はリチウム金属バッテリーから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項2】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルエーテルアクリレート)、そのコポリマー、そのスルホン化誘導体、その化学的誘導体、及びその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項3】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、0.5×10~5×10グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする粒状物。
【請求項4】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、1×10~3×10グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする粒状物。
【請求項5】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、前記超高分子量ポリマーの連鎖間に分散されたリチウム塩及び/又は液体溶媒を含有することを特徴とする粒状物。
【請求項6】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、その中に分散された電気導電性材料を含有することを特徴とする粒状物。
【請求項7】
請求項6に記載の粒状物において、前記電気導電性材料が、電子導電性ポリマー、金属粒子若しくはワイヤー、グラフェンシート、カーボン繊維、黒鉛繊維、カーボンナノ繊維、黒鉛ナノ繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子、膨張黒鉛フレーク、アセチレンブラック粒子、及びその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項8】
請求項7に記載の粒状物において、前記電気導電性材料が100nm未満の厚さ又は直径を有することを特徴とする粒状物。
【請求項9】
請求項5に記載の粒状物において、前記液体溶媒が、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、イオン液体溶媒、及びその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項10】
請求項5に記載の粒状物において、前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム(LiClO 、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF 、ホウフッ化リチウム(LiBF 、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF 、トリフルオロメタスルホン酸リチウム、LiCFSO、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、LiN(CFSO、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、LiBF、硝酸リチウム、LiNO、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF (CF CF 、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、LiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項11】
請求項1に記載の粒状物において、前記高弾性ポリマーの薄層が、1nm~1μmの厚さを有することを特徴とする粒状物。
【請求項12】
請求項1に記載の粒状物において、前記高弾性ポリマーの薄層が、100nm未満の厚さを有することを特徴とする粒状物。
【請求項13】
請求項1に記載の粒状物において、前記高弾性ポリマーの薄層が、10nm未満の厚さを有することを特徴とする粒状物。
【請求項14】
請求項1に記載の粒状物において、前記高弾性ポリマーが、1×10-4S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン伝導率を有することを特徴とする粒状物。
【請求項15】
請求項1に記載の粒状物において、前記カソード活物質が、無機材料、有機材料、ポリマー材料又はその組合せから選択され、且つ前記無機材料が、硫黄又はアルカリ金属ポリスルフィドを含まないことを特徴とする粒状物。
【請求項16】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、遷移金属硫化物及びその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項17】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物及びその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項18】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項19】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、M及びMaが、Fe、Mn、Co、Ni、V及びVOから選択され、Mbが、Fe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn及びBiから選択され;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項20】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物又はその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項21】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム又はその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項22】
請求項16に記載の粒状物において、前記金属酸化物が、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有することを特徴とする粒状物。
【請求項23】
請求項16に記載の粒状物において、前記金属酸化物又は金属リン酸塩が、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMP 、タボライト(Tavorite)化合物LiMPO F又はその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項24】
請求項15に記載の粒状物において、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、或いは(e)その組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項25】
請求項15に記載の粒状物において、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li又はその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項26】
請求項25に記載の粒状物において、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項27】
請求項15に記載の粒状物において、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体又はその組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とする粒状物。
【請求項28】
請求項1に記載の粒状物において、前記カソード活物質が、0.5nm~100nmの厚さ又は直径を有するナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態であることを特徴とする粒状物。
【請求項29】
請求項1に記載の粒状物において、前記粒子の1つ又は複数が、炭素又はグラフェンの層によってコーティングされることを特徴とする粒状物。
【請求項30】
請求項に記載の粒状物において、前記電気導電性材料が、黒鉛、グラフェン又は炭素、或いはその組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項31】
請求項30に記載の粒状物において、前記黒鉛又は炭素材料が、ポリマー炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nm未満の寸法を有する微細膨張黒鉛粒子、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項32】
請求項28に記載の粒状物において、前記ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンが、カーボン材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物、又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコートされるか、又は包含されることを特徴とする粒状物。
【請求項33】
請求項1に記載の粒状物において、前記高弾性ポリマーが、その中に分散された添加剤又は充填剤を有さないニートポリマーであることを特徴とする粒状物。
【請求項34】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、その中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%を含有するか、或いは0.1重量%~10重量%のカーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン又はそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有することを特徴とする粒状物。
【請求項35】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーがリチウムイオン導電性添加剤と混合されて、複合物が形成され、前記リチウムイオン導電性添加剤が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、0<x≦1、y=1~4である)から選択されることを特徴とする粒状物。
【請求項36】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、そのスルホン化誘導体又はその組合せから選択される電子導電性ポリマーと混合されて、ブレンド、コポリマー又は半相互侵入ネットワークが形成されることを特徴とする粒状物。
【請求項37】
請求項1に記載の粒状物において、前記超高分子量ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼンエクス(phosphazenex)、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体、又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、ブレンド、コポリマー又は半相互侵入ネットワークが形成されることを特徴とする粒状物。
【請求項38】
請求項1に記載の複数の粒状物と、導電性添加剤と、前記複数の粒状物を一緒に結合する結合剤とを含有することを特徴とするカソード活物質層。
【請求項39】
ノード集電体と、アノード活物質層と、請求項38に記載のカソード活物質層と、カソード集電体と、前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層とイオン接触する電解質と、多孔性分離体とを含有することを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項40】
請求項39に記載のリチウムバッテリーにおいて、リチウムイオンバッテリー又はリチウム金属バッテリーであることを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項41】
リチウムバッテリーの製造方法において、
(a)カソード活物質層及び前記カソード活物質層を支持するためのカソード集電体を提供することと;
(b)アノード活物質層及び前記アノード活物質層を支持するためのアノード集電体を提供することと;
(c)前記アノード活物質層及び前記カソード活物質層と接触する電解質並びに前記アノード及び前記カソードを電気的に分離する分離体を提供することと
を含んでなり、前記カソード活物質層を提供する操作が、カソード活物質の複数の粒状物を提供することを含み、少なくとも1つの前記粒状物は、2%~200%の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン伝導率及び0.5nm~10μmの厚さを有する熱可塑性ポリマーである高弾性ポリマーの薄層によって完全に包含されているか、又は封入されているカソード活物質粒子の1つ又は複数から構成され、且つ前記高弾性ポリマーが、0.5×10~9×10グラム/モルの分子量を有する超高分子量ポリマーを含有することを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、1nm~100nmの厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項41に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、1×10-5S/cm~2×10-2S/cmのリチウムイオン伝導率を有することを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項41に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、5~100%の回復可能な引張歪みを有することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項41に記載の方法において、前記超高分子量ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルエーテルアクリレート)、そのコポリマー、そのスルホン化誘導体、その化学的誘導体、又はその組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項41に記載の方法において、前記超高分子量ポリマーが、エラストマー、電子導電性ポリマー、リチウムイオン導電性材料、強化材、又はその組合せとの混合物を形成することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法において、前記リチウムイオン導電性材料が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、0<x≦1、y=1~4である)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法において、前記リチウムイオン導電性材料が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウム(LiClO 、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF 、ホウフッ化リチウム(LiBF 、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF 、トリフルオロメタスルホン酸リチウム、LiCFSO、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、LiN(CFSO、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、LiBF、硝酸リチウム、LiNO、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF (CF CF 、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、LiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項41に記載の方法において、前記複数の粒状物を提供することが、パンコーティング、エアサスペンション、遠心押出成形、振動ノズル、噴霧乾燥、超音波噴霧、コアセルベーション-相分離、界面重縮合、現場重合、マトリックス重合又はその組合せから選択される手順を使用して、前記高弾性ポリマーの薄層によって前記カソード活物質粒子の1つ又は複数を包含するか、又は封入することを含むことを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項41に記載の方法において、前記カソード活物質が、無機材料、有機材料、ポリマー材料、又はその組合せから選択され、且つ前記無機材料が、硫黄又はアルカリ金属多硫化物を含まないことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項41に記載の方法において、前記カソード活物質粒子の1つ又は複数が、炭素又はグラフェンの層によってコーティングされることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項41に記載の方法において、前記カソード活物質粒子の1つ又は複数が、炭素、グラフェン又は黒鉛材料と混合されて混合物が形成され、且つ前記混合物が、グラフェンシートの1つ又は複数によって包含されることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項41に記載の方法において、前記カソード活物質粒子の1つ又は複数が、炭素材料、黒鉛材料及び/又はグラフェンシートと混合され、外部グラフェンシートによって包含された混合物を形成して、グラフェン包含カソード活物質粒子が形成され、これが、次いで、高弾性ポリマーによって封入されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月10日に出願された米国特許出願第15/483342号(その内容を参照によって本願明細書に組み入れる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、再充電可能なリチウムバッテリーの分野、特にリチウムバッテリーカソード活物質、カソード層及びバッテリーセル並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリーの単位セル又は構成ブロックは典型的に、アノード集電体、アノード又は陰極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するアノード活物質、導電性添加剤、及び樹脂結合剤を含有する)、電解質及び多孔性セパレーター、カソード又は陽極層(リチウムをその中に貯蔵するのに関与するカソード活物質、導電性添加剤、及び樹脂結合剤を含有する)、並びに別個のカソード集電体から構成される。電解質は、アノード活物質及びカソード活物質の両方とイオン接触している。電解質がソリッドステート電解質である場合、多孔性セパレーターは必要とされない。
【0004】
アノード層中の結合剤を使用して、アノード活物質(例えば黒鉛又はSi粒子)と導電性充填剤(例えばカーボンブラック粒子又はカーボンナノチューブ)とを一緒に結合して構造統合性のアノード層を形成すると共にアノード層を別個のアノード集電体に結合し、それは、バッテリーが放電される時にアノード活物質から電子を集めるように作用する。換言すれば、バッテリーの陰極(アノード)側において、典型的に4つの異なった材料:アノード活物質、導電性添加剤、樹脂結合剤(例えばポリフッ化ビニリデン、PVDF、又はブタジエンスチレンゴム、SBR)、及びアノード集電体(典型的にCu箔のシート)が必要とされる。典型的に前者の3つの材料は、別個の、離散アノード活物質層(又は、単にアノード層)を形成し、後者の1つの材料は別の離散層(集電層)を形成する。
【0005】
カソード活物質及び導電性添加剤粒子を一緒に結合させて構造完全性のカソード活性層を形成するために、カソード中に結合剤樹脂(例えば、PVDF又はPTFE)も使用される。同樹脂結合剤は、このカソード活性層をカソード集電体(例えば、Al箔)に結合させるためにも作用する。
【0006】
歴史的に、リチウムイオンバッテリーは、アノードとしてリチウム(Li)金属及びカソードとしてLiインターカレーション化合物(例えば、MoS)を使用する再充電可能な「リチウム金属バッテリー」から実際に発展した。Li金属は、その軽量(最軽量金属)、高い電気陰性度(-3.04V対標準水素電極)及び高い理論的容量(3,860mAh/g)のため、理想的なアノード材料である。これらの秀逸な特性に基づき、リチウム金属バッテリーは高エネルギー密度応用のための理想的なシステムとして40年前に提案された。
【0007】
純粋なリチウム金属のいくつかの安全性における問題点(例えば、リチウム樹枝状結晶形成及び内部ショート)のため、現在はリチウムイオンバッテリーを製造するために、リチウム金属の代わりにアノード活物質として黒鉛が導入されている。これまでの20年間、エネルギー密度、レート能力及び安全性に関してLiイオンバッテリーにおいて絶え間ない改良が見られている。しかしながら、Liイオンバッテリーでの黒鉛ベースのアノードの使用には、いくつかの重要な欠点がある:低い比容量(Li金属に関する3,860mAh/gとは対照的な372mAh/gの理論的容量)、長い再充電時間(例えば、電気自動車バッテリーに関して7時間)を必要とする長いLiインターカレーション時間(例えば、黒鉛及び無機酸化物粒子内及び外のLiの低いソリッドステート拡散係数)、高いパルス電力(電力密度<0.5kW/kg)をもたらすことが不可能であること、並びにプレリチウム化カソード(例えば、酸化コバルトに対してリチウム酸化コバルト)を使用することが必要であること。それによって利用可能なカソード材料の選択が制限される。
【0008】
さらに、これらの一般に使用されるカソード活物質は、比較的低い比容量を有する(典型的に、<220mAh/g)。これらの因子は、現在のLiイオンバッテリーの2つの主要な欠点、低エネルギー密度(典型的に、150~220Wh/kgセル)及び低い電力密度(典型的に、<0.5kW/kg)の要因になっている。加えて、リチウム金属アノードがインターカレーション化合物(例えば、黒鉛)によって置き換えられ、したがって、リチウムイオンバッテリーにおけるリチウム樹枝状結晶問題がわずかであるか、又は全くないとしても、バッテリーの安全性の問題は消失しない。リチウムイオンバッテリーの発火又は爆発を伴う事象が生じないというわけではない。要約すると、バッテリー分野の科学者は、30年間以上、リチウムイオンセルの低エネルギー密度、不適切なサイクル寿命及び燃焼性に失望している。
【0009】
既存のカソード材料を改善し、且つ新規カソード組成物を開発するために、バッテリー産業及び研究コミュニティーにおいて相当な努力がなされてきた。しかしながら、リチウム二次バッテリーのための現在の、及び新興のカソード活物質には、なお次の重大な欠点がある:
(1)最も一般に使用されるカソード活物質(例えば、リチウム遷移金属酸化物)は、バッテリー内部での望ましくない化学反応(例えば、電解質の分解)を促進する可能性のある強力な触媒である遷移金属(例えば、Fe、Mn、Co、Niなど)を含有する。これらのカソード活物質は、熱暴走の進行を補助し、そして爆発の危険又は火炎危険を増加させる電解質酸化のための酸素を供給する可能性のある高い酸素含有量も有する。これは電気自動車の広範囲にわたる実行を妨げる重大な問題である。
(2)有望な有機、又はポリマーカソード活物質の多くは、一般に使用される電解質中に可溶性であるか、又はこれらの電解質と反応性である。電解質中での活物質の溶解は、活物質の継続的損失をもたらす。活物質と電解質との間の望ましくない反応によって、バッテリーセル中での電解質及び活物質の段階的な減少が導かれる。バッテリーのこれら全ての現象によって、容量損失及び短いサイクル寿命が導かれる。
(3)現在のカソード材料(例えば、リン酸リチウム鉄及びリチウム遷移金属酸化物)によって達成可能な実際的な容量は、150~250mAh/gの範囲に制限され、そして多くの場合、200mAh/g未満である。加えて、新出現の高容量カソード活物質(例えば、FeF)は、まだ長いバッテリーサイクル寿命をもたらすことができない。
【0010】
金属フッ化物、金属塩化物及びリチウム遷移金属ケイ化物などの高容量カソード活物質は、リチウムバッテリーの放電及び充電の間に大きい体積膨張及び収縮を受ける。これらの繰り返される体積変化によって、カソードの構造不安定性、結合剤樹脂と活物質との間の通常弱い結合の切断、活物質粒子の断片化、カソード活物質層と集電体との間の剥離、及び電子伝導路の中断が導かれる。これらの高容量カソードには、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnClなどが含まれる。高容量カソード活物質には、M及びMaがFe、Mn、Co、Ni、V若しくはVOから選択され、MbがFe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn若しくはBiであり;且つx+y≦1であるリチウム遷移金属ケイ酸塩、LiMSiO又はLiMaMbSiOも含まれる。
【0011】
したがって、リチウム二次バッテリーが長いサイクル寿命及びより高いエネルギー密度を有することを可能にさせる、新規カソード活物質及びカソード活物質層が、緊急に、且つ継続的に必要とされている。大量にそのような物質を直ちに且つ容易に製造する方法も必要とされている。したがって、これらの要求を満たし、且つリチウムバッテリーの急速な容量減衰に関連する問題に対処することが本発明の主要な目的である。
【発明の概要】
【0012】
本明細書中、カソード活物質の非常にユニークな分類を含有するリチウムバッテリーのためのカソード活物質層が報告される。特に、カソード活物質粒子は、再充電可能なリチウムバッテリーと一般に関連する、カソードによって誘発される急速な容量減衰の問題を克服することができる(超高分子量ポリマーを含有する)高弾性ポリマーによって完全に包含されるか、又は封入される。
【0013】
本発明は、(アノード活物質として、リチウム金属ではなく、リチウムインターカレーション化合物又は変換型化合物を使用する)リチウムイオンバッテリー、或いは(アノード活物質としてリチウム金属、及びカソード活物質としてリチウムインターカレーション又は変換化合物を使用するが、硫黄又はアルカリ金属多硫化物を含まない)リチウム金属バッテリーに関する。アルカリ金属-硫黄セル(Li-S、Na-S及びK-S)並びにリチウム-エアセルの両方が本願の請求項から除外される。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明はリチウムバッテリー、好ましくは、再充電可能なバッテリーのためのカソード活物質粒状物を提供する。カソード活物質粒状物は、添加剤又は強化材の不在下で測定される場合、5%~200%の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び0.5nm~10μmの厚さを有する(超高分子量ポリマーを含有する)高弾性ポリマーの薄層によって完全に包含されているか、又は封入されているカソード活物質粒子の1つ又は複数から構成される。ポリマー中に添加剤又は強化材を用いて測定される場合、結果として生じる複合体の引張弾性変形は2%より高いままで残らなければならない。このポリマーは、室温において10-6S/cm以上(好ましく且つより典型的に10-4S/cm以上、且つより好ましく且つ典型的に10-3S/cm以上)のリチウムイオン導電率も有する。
【0015】
超高分子量(UHMW)ポリマーは、好ましくは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(メチルエーテルアクリレート)(PMEA)、そのコポリマー、そのスルホン化誘導体、その化学的誘導体、又はその組合せから選択される。
【0016】
好ましくは、粒状物は、実質的に、又は本質的に球形又は楕円形である。また好ましくは、粒状物は、30μm未満、より好ましくは、20μm未満、そして最も好ましくは、10μm未満の直径又は厚さを有する。
【0017】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で(ポリマー中に添加剤又は強化材の不在下で)測定される場合、少なくとも2%(好ましくは、少なくとも5%)である弾性変形を示すポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復プロセスが本質的に瞬間的(ほぼ時間遅れはない)である(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。従来より、そのような高弾性は、軽度に架橋されたポリマー又はゴムに由来する。それとは対照的に、本発明の高弾性ポリマーは、熱可塑性ポリマー(非架橋ポリマー又は架橋ネットワークを含有しないポリマー)に由来する。この熱可塑性物質は架橋ポリマーではない。本発明のUHMWポリマーの弾性変形は、典型的に、且つ好ましくは10%より高く、より好ましくは30%より高く、さらにより好ましくは50%より高く、なおより好ましくは100%より高い。
【0018】
UHMWポリマーは、粒状物製造を容易にするため、好ましくは、0.5×10~5×10グラム/モル未満、より好ましくは、1×10~3×10グラム/モル未満の分子量を有する。UHMWポリマーは、5×10g/モルより高いか、又は最高9×10g/モルの分子量を有することが可能である。分子量が非常に高いと、活物質粒子の周囲に包含ポリマー薄層を堆積することが困難となる可能性がある。
【0019】
特定の実施形態において、超高分子量ポリマーは、その中に分散された電気導電性材料を含有する。電気導電性材料は、電子導電性ポリマー、金属粒子若しくはワイヤー、グラフェンシート、カーボン繊維、黒鉛繊維、カーボンナノ繊維、黒鉛ナノ繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子、膨張黒鉛フレーク、アセチレンブラック粒子又はその組合せから選択されてよい。電気導電性材料(例えば、金属ナノワイヤー、ナノ繊維など)は、好ましくは、100nm未満の厚さ又は直径を有する。
【0020】
特定の実施形態において、超高分子量ポリマーは、超高分子量ポリマーの連鎖間に分散されたリチウム塩及び/又は液体溶媒を含有する。
【0021】
UHMWポリマー中に分散された液体溶媒は、好ましくは、1,3-ジオキソラン(DOL)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDME)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、2-エトキシエチルエーテル(EEE)、スルホン、スルホラン、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸ジエチル(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、ギ酸プロピル(PF)、ギ酸メチル(MF)、トルエン、キシレン、酢酸メチル(MA)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、アリルエチルカーボネート(AEC)、ヒドロフルオロエーテル、イオン液体溶媒又はその組合せから選択されてよい。
【0022】
UHMWポリマー中に分散されリチウム塩は、好ましくは、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されてよい。
【0023】
カソード活物質粒状物は、無機材料、有機材料、ポリマー材料又はその組合せから選択されるカソード活物質を含有し得る。無機材料は、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、遷移金属硫化物又はその組合せを含有してもよい。無機材料は、硫黄又はアルカリ金属ポリスルフィドを含まない。
【0024】
無機材料は、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物又はその組合せから選択されてよい。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択される。特定の好ましい実施形態において、無機材料は、M及びMaがFe、Mn、Co、Ni、V若しくはVOから選択され、MbがFe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn若しくはBiであり;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択される。
【0026】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物又はその組合せから選択される。無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム又はその組合せから選択される。
【0027】
カソード活物質層は、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有する金属酸化物を含有してもよい。
【0028】
カソード活物質層は、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト(Tavorite)化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO又はその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択される金属酸化物又は金属リン酸塩を含有してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、無機材料は、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、或いは(e)その組合せから選択される。
【0030】
カソード活物質層は、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li又はその組合せから選択される有機材料又はポリマー材料を含有してもよい。
【0031】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0032】
他の実施形態において、カソード活物質層は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体又はその組合せなどのフタロシアニン化合物から選択される有機材料を含有する。
【0033】
カソード活物質は、好ましくは、100nm未満の厚さ又は直径を有するナノ粒子(球形、楕円、及び不規則な形状)、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態である。これらの形状は、特に断りがない限り又は上記の種のうちの特定のタイプが望ましいのでなければ一括して「粒子」と称することができる。さらに好ましくは、カソード活物質は、50nmより小さい、さらにより好ましくは20nmより小さい、最も好ましくは10nmより小さい寸法を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、1つの粒子又は粒子のクラスターは、粒子と高弾性ポリマー層(封入シェル)との間に配置された炭素の層でコート又は囲まれてもよい。代わりに又はさらに、炭素層を堆積させて、封入粒子又は複数のカソード活物質粒子の封入クラスターを囲んでもよい。
【0035】
粒状物は、カソード活物質粒子と混合され、封入又は包含ポリマーシェル内に配置された黒鉛、グラフェン又は炭素材料をさらに含有してもよい。炭素又は黒鉛材料は、ポリマー炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nmより小さい寸法を有する微細膨張黒鉛粒子、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子、又はそれらの組合せから選択される。グラフェンは、純粋(pristine)グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、グラフェンフルオリド、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、官能化グラフェンなどから選択されてもよい。
【0036】
カソード物質粒子は、カーボン材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物、又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコートされるか、又は包含されてもよい。好ましくは、ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態のカソード活物質が、リチウムイオンでプレインターカレートされるか、又はプレドープされて、プレリチウム化アノード活物質の0.1重量%~54.7重量%のリチウムの量を有する前記プレリチウム化アノード活物質を形成する。
【0037】
好ましく且つ典型的に、高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-3S/cm以上、そして最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。選択されたポリマーのいくつかは、10-2S/cmより高いリチウムイオン導電率を示す。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、その中に分散された添加剤又は充填剤を含有しないニートUHMWポリマーである。他の実施形態では、高弾性ポリマーは、UHMWポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)を含有するポリマー母材複合物である。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、0.1重量%~10重量%のカーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン又はそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、UHMWポリマーは、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、及びそれらの組合せから選択されるエラストマーと(ブレンド、コポリマー又は相互侵入ネットワークを形成するために)混合される。
【0039】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、UHMWポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有する複合物であり、そこでリチウムイオン導電性添加剤は、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO、又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I、又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である。
【0040】
UHMWポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらの誘導体(例えばスルホン化変種)、又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物又はブレンド、コポリマー又は半相互侵入ネットワーク(セミ-IPN)を形成してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、UHMWポリマーは、エラストマーと、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス(phosphazenex)、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体、又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、ブレンド又はセミ-IPNを形成してもよい。スルホン化はここで、改良されたリチウムイオン導電率をポリマーに与えることが見出されている。
【0042】
また、本発明は、本発明の高弾性ポリマー封入カソード活性材料粒子、任意選択の導電性添加剤(例えば膨張黒鉛フレーク、カーボンブラック、アセチレンブラック、又はカーボンナノチューブ)、及び任意選択の樹脂結合剤(典型的には必要とされる)を含有するカソード電極を提供する。
【0043】
また、本発明は、任意選択のアノード集電体、アノード活物質層、上に記載されたような本発明のカソード活物質層、任意選択のカソード集電体、アノード活物質層及びカソード活物質層とイオン接触する電解質並びに任意選択の多孔性セパレーターを含有するリチウムバッテリーを提供する。リチウムバッテリーは、リチウムイオンバッテリー、又はリチウム-セレンバッテリーを含むリチウム金属バッテリー(主要アノード活物質としてリチウム金属又はリチウム合金を含有し、インターカレーションベースのアノード活物質を含有しない)であってよいが、請求項の定義に関して、アルカリ金属-硫黄バッテリー及びリチウムエアバッテリーは除外される。
【0044】
本発明は、リチウムバッテリーの製造方法も提供する。本方法は、(a)カソード活物質層及びカソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと;(b)アノード活物質層及びアノード活物質層を支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと;(c)アノード活物質層及びカソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に単離(分離)する任意選択的な分離体に提供することとを含み、カソード活物質層を提供する操作が、(添加剤又は強化材の不在下で測定される場合)2%~200%(好ましくは、>5%)の回復可能な引張弾性歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び0.5nm~10μm(好ましくは、1~100nm)の厚さを有する(超高分子量ポリマーを含有する)高弾性ポリマーによってカソード活物質の粒子を完全に包含又は封入して、保護された粒状物を形成することを含む。
【0045】
この高弾性ポリマー封入層は、カソード活物質との直接接触から液体電解質を単離(防止)することが可能であり、したがって、カソード活物質中の触媒元素(例えば、Fe、Mn、Ni、Coなど)が電解質の分解を促進することを防ぐことが可能であると思われる。これは、さもなければ、急速な容量減衰、並びに火災及び爆発の危険を引き起こす可能性がある。この高弾性ポリマー封入層は、さもなければ活物質の継続的損失、したがって、容量の損失を導くであろう液体電解質中での有機又はポリマー活物質の溶解も防ぐ。
【0046】
好ましくは、高弾性ポリマーは、1×10-5S/cm~5×10-2S/cmのリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、10~200%、(より好ましくは>30、さらにより好ましくは>50%)の回復可能な引張歪みを有する。
【0047】
特定の実施形態において、高弾性ポリマーを提供する操作は、超高分子量ポリマーと、エラストマー、電子導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、そのスルホン化誘導体又はその組合せ)、リチウムイオン導電性材料、強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維及び/又はグラフェン)或いはその組合せとの混合物/ブレンド/複合物を提供することを含有する。
【0048】
この混合物/ブレンド/複合物において、リチウムイオン導電性材料は、高弾性ポリマー中に分散され、且つ好ましくは、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である)から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン導電性材料は高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択される。
【0050】
好ましくは、カソード活物質粒子は、高弾性ポリマーによって包含される前に炭素又はグラフェンの層によってコーティングされる。好ましくは、カソード活物質粒子及び炭素又は黒鉛材料の粒子は高弾性ポリマーによって一緒に結合される。好ましくは、カソード活物質粒子は、可能であれば、炭素又は黒鉛材料と、及び/又はいくつかの内部グラフェンシートと一緒にグラフェンシートによって包含されて、カソード活物質粒子が形成され、次いで、高弾性ポリマーによって封入される。グラフェンシートは、清純グラフェン(例えば、CVD又は直接超音波を使用する液相剥離によって調製される)、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド(RGO)、グラフェンフルオリド、ドープドグラフェン、官能化グラフェンなどから選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A図1(A)は、アノード層がアノード活物質(Li又はリチウム化Si)の薄いコーティングであり、且つカソードが、カソード活物質の粒子、導電性添加剤(図示されず)及び樹脂結合剤(図示されず)から構成される、従来技術のリチウムイオンバッテリーセルの概略図である。
図1B図1(B)は、別の先行技術のリチウムイオンバッテリーの略図である。アノード層が、アノード活物質の粒子、導電性添加剤(図示せず)及び樹脂結合剤(図示せず)から構成される。
図2A図2(A)は、従来技術のリチウムイオンバッテリーの放電/充電中にリチウムの挿入及び脱挿入の際、電極活物質粒子の膨張/収縮は、粒子からの樹脂結合剤の剥離、導電性添加剤によって形成される導電路の遮断、及び集電体との接触の低下をもたらし得るという考えを概略的に説明する。
図2B図2(B)は、高弾性ポリマー封入カソード活物質粒子を含有する粒状物のいくつかの異なるタイプを示す。
図3A図3(A)は、UHMW PEO-ECポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線である。
図3B図3(B)は、4つのリチウムセル:未封入V粒子を含有するカソード、未封入であるが、グラフェン包含されたV粒子を含有するカソード、UHMW PEO封入V粒子を含有するカソード、及びUHMW PEO封入グラフェン包含V粒子を含有するカソードの比インターカレーション容量曲線である。
図4A図4(A)は、UHMW PAN/PCポリマーフィルムの代表的な引張応力-歪み曲線である。
図4B図4(B)は、それぞれ、(1)高弾性UHMW PAN/PC封入炭素コーティングLiFePO粒子、及び(2)ポリマー封入を有さない炭素コーティングLiFePO粒子を特徴とするカソード活物質を有する2つのリチウムバッテリーの比容量値である。
図5図5は、2つの異なるタイプのカソード活物質:(1)高弾性UHMW PPO封入金属フッ化物粒子及び(2)非封入金属フッ化物を有する2つのコインセルの放電容量曲線を示す。
図6図6は、それぞれ、アノード活物質としてLi及びカソード活物質としてFePc/RGOを有する2つのリチウム-FePc(有機)セルの比容量である(セルの1つは、未封入粒子を含有し、そして他は、UHMW PANポリマーによって封入された粒子を含有する)。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、非水電解質、ポリマーゲル電解質、イオン性液体電解質、疑似固体電解質、又はソリッドステート電解質に基づいた二次バッテリーであるのが好ましい、リチウム二次バッテリー用の保護された粒状物の形態のカソード活物質を含有するカソード活物質層(カソード集電体を含めない、陽極層)を目的としている。リチウム二次バッテリーの形状は、円筒形、四角形、ボタン状等であることが可能である。本発明は、任意のバッテリー形状又は形態或いは電解質の種類に限定されない。また本発明は、超高分子量ポリマーを含有する高弾性ポリマーの薄層によって封入又は包含されたカソード活物質粒子から構成されるそのような保護されたカソード粒状物も提供する。
【0053】
図1(B)において説明されるように、リチウムイオンバッテリーセルは典型的に、アノード集電体(例えばCu箔)、アノード又は陰極活物質層(すなわち典型的にアノード活物質の粒子と、導電性添加剤と、結合剤とを含有するアノード層)、多孔性セパレーター及び/又は電解質成分、カソード又は陽極活物質層(カソード活物質と、導電性添加剤と、樹脂結合剤とを含有する)、及びカソード集電体(例えばAl箔)から構成される。より具体的には、アノード層は、アノード活物質(例えば黒鉛、Sn、SnO、又はSi)の粒子、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)、及び樹脂結合剤(例えばSBR又はPVDF)から構成される。このアノード層は、単位電極面積当たり十分な量の電流を生じるために典型的に厚さ50~300μm(より典型的に100~200μm)である。同様に、カソード層は、カソード活物質(例えば、LiCoO、LiMnO、LiFePOなど)の粒子、導電性添加剤(例えば、カーボンブラック粒子)及び樹脂結合剤(例えば、PVDF又はPTFE)から構成されている。このカソード層は、典型的に、厚さ100~300μmである。
【0054】
図1(A)に例示されるリチウム金属セルにおいて、アノード活物質は、薄膜の形態又は薄い箔の形態でアノード集電体上に直接堆積される。Liコーティングの層又はLi箔がアノード活物質として使用される場合、バッテリーは、リチウム金属バッテリー、リチウム硫黄バッテリー、リチウム-エアバッテリー、リチウム-セレンバッテリーなどである。
【0055】
より高いエネルギー密度のリチウムイオンセルを得るために、図1(B)のアノードは、LIA(Aは、AL及びSIなどの金属又は半導体元素であり、「a」は0<a≦5を満たす)の組成式を有するより高容量のアノード活物質を含有するように設計され得る。これらの材料、例えば、LiSi(3,829mAh/g)、Li4.4Si(4,200mAh/g)、Li4.4Ge(1,623mAh/g)、Li4.4Sn(993mAh/g)、LiCd(715mAh/g)、LiSb(660mAh/g)、Li4.4Pb(569mAh/g)、LiZn(410mAh/g)、及びLiBi(385mAh/g)は、それらの高い理論容量のために非常に重要である。
【0056】
図2(A)に図解的に説明されるように、現在のリチウムバッテリーの1つの重大な問題は、充電及び放電サイクルの間の活物質粒子の体積膨張/収縮のため、活物質粒子が断片化する可能性があり、且つ結合剤樹脂が活物質粒子及び導電性添加剤粒子の両方から分離する可能性があるという考えである。これらの結合剤剥離及び粒子断片形成現象は、活物質粒子と導電性添加剤との間の接触の低下及びアノード活物質とその集電体との間の接触の低下を導く。これらの悪影響は、著しく短縮された充電-放電サイクル寿命をもたらす。
【0057】
30年超にわたってバッテリーの設計者及び電気化学者を等しく煩わせてきたこれらの厄介な問題は、新規分類のカソード活物質を開発することによって解決された。カソード活物質層は、一方向引張下で2%以上の回復可能な(弾性)引張歪み、及び室温において10-6S/cm以上(好ましく且つより典型的に1×10-5S/cm~5×10-2S/cm)のリチウムイオン導電率を有する(UHMWポリマーを含有する)高弾性ポリマーによって完全に包含又は封入された複数のカソード活物質粒子を含んでなる。
【0058】
図2(B)に説明されるように、本発明は、高弾性ポリマーで封入されたカソード活物質粒子の4つの主なタイプの粒状物を提供する。第1のタイプは、高弾性ポリマーシェル12によって封入されたカソード活物質コア10を含有する単一粒子粒状物である。第2のタイプは、高弾性ポリマー16によって封入される、複数のカソード活物質粒子14(例えば、FeF粒子)を任意選択的に他の導電性物質(例えば、黒鉛又は硬質炭素の粒子、図示せず)と共に含有する複数粒子粒状物である。第3のタイプは、高弾性ポリマー22によってさらに封入された炭素又はグラフェン層20(又は他の導電材料)によってコーティングされたカソード活物質コア18を含有する単一粒子粒状物である。第4のタイプは、高弾性ポリマーシェル28によって封入される、導電性保護層26(炭素、グラフェンなど)でコートされた複数のカソード活物質粒子24(例えば、FeF粒子)を任意選択的に他の活物質又は導電性添加剤と共に含有する複数粒子粒状物である。
【0059】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で測定される場合、少なくとも2%の弾性変形を示すポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復が本質的に瞬間的である(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。弾性変形は、好ましくは5%より高く、より好ましくは10%より高く、さらにより好ましくは50%より高く、なおより好ましくは100%より高い。高容量ポリマーの好ましいタイプについては以後に議論する。
【0060】
本発明の高弾性ポリマー封入の方法の適用は、カソード活物質のいずれかの特定の分類に限定されない。カソード活物質層は、無機材料、有機材料、ポリマー材料又はその組合せから選択されるカソード活物質を含有してよい。無機材料は、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、遷移金属硫化物又はその組合せから選択されてよい。
【0061】
無機材料は、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物又はその組合せから選択されてよい。
【0062】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択される。特定の好ましい実施形態において、無機材料は、M及びMaがFe、Mn、Co、Ni、V若しくはVOから選択され、MbがFe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn若しくはBiであり;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択される。
【0063】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物又はその組合せから選択される。無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム又はその組合せから選択される。
【0064】
カソード活物質層は、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有する金属酸化物を含有してもよい。
【0065】
カソード活物質層は、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト(Tavorite)化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO又はその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択される金属酸化物又は金属リン酸塩を含有してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、無機材料は、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、或いは(e)その組合せから選択される。
【0067】
カソード活物質層は、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li又はその組合せから選択される有機材料又はポリマー材料を含有してもよい。
【0068】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0069】
他の実施形態において、カソード活物質層は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体又はその組合せなどのフタロシアニン化合物から選択される有機材料を含有する。
【0070】
アノード活物質の粒子は、ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノプレートリット、ナノディスク、ナノベルト、ナノリボン、又はナノホーンの形態であってもよい。それらは、(アノード活物質層中に混入されるとき)リチウム化されないか、又は所望の程度に(特定の元素又は化合物について可能な最大容量までプレリチウム化され得る。
【0071】
好ましく且つ典型的に、高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、添加剤又は充填剤がその中に分散されていないニートポリマーである。他の実施形態では、高弾性ポリマーは、UHMWポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)を含有するポリマー母材複合物である。高弾性ポリマーは、高弾性(弾性変形歪み値>2%)を有さなければならない。弾性変形は、完全に回復可能である変形であり、回復プロセスは、本質的に瞬間的である(著しい時間遅れはない)。高弾性ポリマーは、5%~300%以下(その元の長さの3倍)、より典型的に10%~200%、さらにより典型的に30%~100%の弾性変形を示すことができる。金属は典型的に高い延性を有するが(すなわち破断せずにかなりの程度伸長され得る)、変形の大部分は塑性変形であり(回復可能でない)且つごく少量の弾性変形である(典型的に<1%及びより典型的に<0.2%)ことを指摘しておいてもよいだろう。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性(高い弾性変形歪み)及び高いリチウムイオン導電率のユニークな組合せを示す超高分子量ポリマーの選択された群を含有する。これらのUHMWポリマーは、リチウムイオン導電率をさらに増加させるためにリチウム塩を含有することができる。UHMWポリマーは、その中に分散された電子導電性材料を含有してもよい。したがって、高弾性は、好ましくは、リチウムイオン導電性及び電子導電性である。
【0073】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、好ましくは、UHMWポリアクリロニトリル(UHMW PAN)、ポリエチレンオキシド(UHMW PEO)、ポリプロピレンオキシド(UHMW PPO)、ポリエチレングリコール(UHMW PEG)、ポリビニルアルコール(UHMW PVA)、ポリアクリルアミド(UHMW PAA)、ポリ(メチルメタクリレート)(UHMW PMMA)、ポリ(メチルエーテルアクリレート)(UHMW PMEA)、そのコポリマー、そのスルホン化誘導体、その化学的誘導体、又はその組合せから選択される超高分子量(UHMW)ポリマーを含有する。
【0074】
封入された活物質粒子を製造するための第1のステップは、UHMWポリマーを溶媒中に溶解して、溶液を形成することである。その後、カソード活物質の粒子(例えば、リチウム金属酸化物、リチウム金属フッ化物など)をポリマー溶媒溶液中に分散させて活物質粒子-ポリマー混合物の懸濁液(分散体又はスラリーとも記載される)を形成することができる。次に、個別粒子が互いに実質的に分離したままで、この懸濁液を溶媒除去処理に供することができる。ポリマーが沈殿して、これらの活物質粒子の表面上に堆積する。これは、例えば、噴霧乾燥、超音波噴霧、空気補助噴霧、エアロゾール適用及び他の二次粒子形成手順によって達成することができる。これらの技術は以下に議論される。
【0075】
スラリー中にいくつかのリチウム塩を添加することが選択されてもよい。例えば、この手順は、液体溶媒中にUHMW PVAを溶解して溶液を形成することによって開始されてもよい。次いで、リチウム塩、LiPFを所望の重量パーセントで溶液中に添加することができる。次いで、選択されたカソード活物質の粒子を混合物溶液中に導入し、スラリーを形成する。次いで、スラリーにマイクロ封入手順を受けさせて、(ポリマーの非晶質ゾーンにおいて)その中に分散されたLiPFを含有するUHMW PVAの包含層によってコーティングされたカソード活物質粒子が製造されてよい。
【0076】
上記高弾性ポリマーは、カソード活物質粒子を封入するために単独で使用されてもよい。代わりに、UHMWポリマーは、広範囲の一連のエラストマー、導電性ポリマー、リチウムイオン導電性材料及び/又は強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維又はグラフェンシート)と混合することができる。
【0077】
広範囲のエラストマーをUHMWポリマーと混合して、カソード活物質粒子を封入するブレンド、コポリマー又は相互侵入ネットワークを形成することができる。エラストマー材料は、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、及びそれらの組合せから選択されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、UHMWポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するポリマー母材複合物を形成し、リチウムイオン導電性添加剤は、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である)から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、UHMWポリマーを、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されるリチウム塩を含有するリチウムイオン導電性添加剤と混合することができる。
【0080】
UHMWポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、その誘導体(例えば、スルホン化変種)又はその組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物、ブレンド又は半相互侵入ネットワークを形成し得る。いくつかの実施形態において、UHMWポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼンエクス(phosphazenex)、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらの誘導体(例えばスルホン化変種)、又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、コポリマー又は半相互侵入ネットワークを形成し得る。
【0081】
UHMWポリマーと混合され得る不飽和ゴムには、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)が含まれる。
【0082】
このカテゴリーの飽和ゴム及び関連エラストマーには、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、及びタンパク質エラスチンが含まれる。ポリウレタン及びそのコポリマー(例えば尿素-ウレタンコポリマー)は、活物質粒子を封入するための特に有用なエラストマーシェル材料である。
【0083】
いくつかのマイクロ封入プロセスは、活物質の粒子を封入するために使用されてもよい。これらのプロセスでは、典型的に、高弾性ポリマー又はその前駆体(モノマー又はオリゴマー)が溶媒中に可溶性であることが必要される。幸いにも、本明細書で使用される全てのUHMWポリマー又はそれらの前駆体は、いくつかの一般的な溶媒中に可溶性である。ポリマー又はその前駆体は一般的な有機溶媒中に容易に溶解可能であり、溶液を形成する。次いで、この溶液を使用して、以下で議論されるマイクロ封入法のいくつかによって、固体粒子を封入することができる。封入時、次いでポリマーシェルを重合させる。
【0084】
活物質の高弾性ポリマー封入粒子を製造するために実施できるマイクロカプセル封入方法の3つの大きいカテゴリーがある:物理的方法、物理化学的方法、及び化学的方法。物理的方法には、パンコーティング、エアサスペンションコーティング、遠心押出、振動ノズル、及び噴霧-乾燥方法が含まれる。物理化学的方法には、向イオン性ゲル化及びコアセルベーション-相分離方法が含まれる。化学的方法には、界面重縮合、界面架橋、in situ重合、及びマトリックス重合が含まれる。
【0085】
パンコーティング方法:パンコーティング方法は、所望の封入シェルの厚さが達せられるまで封入材料(例えばモノマー/オリゴマー、ポリマー溶融体、ポリマー/溶媒溶液)がゆっくりと適用される間に活物質粒子をパン又は同様なデバイス内で混転することを必要とする。
【0086】
エアサスペンションコーティング方法:エアサスペンションコーティング方法において、固体粒子(コア材料)を封入チャンバ内の支持空気流中に分散させる。ポリマー-溶媒溶液(溶媒中に溶解されたポリマー又はそのモノマー若しくはオリゴマー;又は液体状態のそのモノマー若しくはオリゴマーだけ)の制御された流れをこのチャンバ内に同時に導入し、溶液を懸濁粒子に衝突させてコートさせる。揮発性溶媒が除去される間にこれらの懸濁粒子はポリマー又は前駆分子で封入され(完全にコートされる)、ポリマー(又はその前駆物質、それは後で硬化/固化される)の非常に薄い層をこれらの粒子の表面上に残す。このプロセスは、全コーティング厚(すなわち封入シェル又は壁の厚さ)などの必要とされるパラメーターが達せられるまで数回繰り返されてもよい。また、粒子を支持する空気流は、それらを乾燥させるのを助け、乾燥速度は、最適化されたシェルの厚さのために調節され得る、空気流の温度に正比例している。
【0087】
好ましいモードにおいて、封入領域部分の粒子は、繰り返されるコーティングのための再循環に供されてもよい。好ましくは、粒子が封入領域を上方へ通過し、次いでより緩慢な移動空気中に分散されて封入チャンバの底部に戻るように封入チャンバが配置され、所望の封入シェルの厚さが達成されるまで粒子が封入領域を繰返し通過することを可能にする。
【0088】
遠心押出:活物質の粒子は、同心ノズルを含有する回転押出ヘッドを使用して封入されてもよい。このプロセスにおいて、コア流体のストリーム(溶媒中に分散された活物質の粒子を含有するスラリー)は、シェル溶液又は溶融体のシースによって囲まれる。デバイスが回転してストリームが空気中を通過するとき、それはレイリー不安定性のために砕けて、それぞれシェル溶液でコートされたコアの液体粒子になる。液体粒子が飛んでいる間に、溶融シェルが固化されてもよく又は溶媒がシェル溶液から蒸発させられてもよい。必要ならば、カプセルは、固化槽内でそれらを捕らえることによって形成後に固化され得る。液滴は液体ストリームの破壊によって形成されるので、このプロセスは液体又はスラリーのために適しているにすぎない。高い製造速度を達成することができる。1時間当たり1個のノズルに対して22.5kgまでのマイクロカプセルを製造することができ、16のノズルを含有する押出ヘッドが容易に利用可能である。
【0089】
振動ノズル方法:活物質のコア-シェル封入又は母材封入は、ノズルを通しての層流及びノズル又は液体の振動を使用して行なうことができる。振動はレイリー不安定性と共鳴状態で行われなければならず、非常に均一な液体粒子をもたらす。液体は、限られた粘度(1~50,000mPa・s)を有する任意の液体:活物質を含有するエマルション、懸濁液又はスラリーからなり得る。内部ゲル化(例えばゾルゲル加工、溶融体)又は外部ゲル化(例えば、スラリー中の付加的な結合剤系)による使用されたゲル化系に従って凝固を行なうことができる。
【0090】
噴霧-乾燥:活物質が溶融体又はポリマー溶液中に溶解又は懸濁されるとき噴霧乾燥を使用して活物質の粒子を封入してもよい。噴霧乾燥において、液体供給原料(溶液又は懸濁液)を微粒化して液体粒子を形成し、熱ガスと接触したとき、それは溶媒が気化されて薄いポリマーシェルが活物質の固体粒子を完全に囲むことを可能にする。
【0091】
コアセルベーション-相分離:このプロセスは、連続した攪拌下で実施される3つの工程からなる:
(a)3つの不混和性化学相の形成:ビヒクル相、コア材料相及び封入材料相を製造する液体。コア材料は、封入用ポリマー(又はそのモノマー又はオリゴマー)の溶液中に分散される。液体状態において不混和性ポリマーである、封入材料相は、(i)ポリマー溶液中の温度を変化させること、(ii)塩の添加、(iii)非溶媒の添加、又は(iv)ポリマー溶液中に非相溶ポリマーを添加することによって形成される。
(b)封入シェル材料の堆積:封入用ポリマー溶液中に分散されているコア材料、コア粒子の周りにコートされた封入用ポリマー材料、及びコア材料とビヒクル相との間に形成された境界面において吸収されたポリマーによってコア粒子の周りを囲む液体ポリマーの堆積;並びに
(c)封入シェル材料の固化:ビヒクル相において不混和性であり熱的、架橋、又は溶解技術によって剛性にされるシェル材料。
【0092】
界面重縮合及び界面架橋:界面重縮合は、2つの反応体を導入してそれらが互いに反応する境界面において出会わせることを必要とする。これは、酸塩化物と活性水素原子を含有する化合物(例えばアミン又はアルコール)との間のショッテン・バウマン反応、ポリエステル、ポリ尿素、ポリウレタン、又は尿素-ウレタン縮合の概念に基づいている。適切な条件下で、薄い可撓性封入シェル(壁)が境界面において急速に形成される。活物質と二酸塩化物との溶液が水中で乳化され、アミンと多官能性イソシアネートとを含有する水溶液が添加される。塩基を添加して、反応中に形成された酸を中和してもよい。縮合ポリマーシェルはエマルション液体粒子の境界面に直ちに形成される。界面架橋は界面重縮合から誘導され、そこで架橋が成長ポリマー鎖と多官能性化学基との間に起こり、ポリマーシェル材料を形成する。
【0093】
in situ重合:いくつかのマイクロカプセル封入方法において、活物質粒子は、最初にモノマー又はオリゴマーで完全にコートされる。次いで、モノマー又はオリゴマーの直接重合がこれらの材料粒子の表面上で行われる。
【0094】
マトリックス重合:この方法は、粒子を形成する間にコア材料をポリマー母材中に分散させて囲むことを必要とする。これは、噴霧-乾燥によって達成することができ、そこで粒子は、母材材料から溶媒を蒸発させることによって形成される。別の可能な経路は、母材の凝固が化学変化によって引き起こされるということである。
【0095】
以下の実施例において、実施の最良の様式を説明するためのUHMWポリマーの3つの例として、UHMW PEO、UHMW PPO及びUHMW PANが使用された。同様に、他のUHMWポリマーも使用可能である。これらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0096】
実施例1:高弾性UHMWポリマー封入V粒子を含有するカソード活物質層
カソード活物質層は、それぞれ、V粒子及びグラフェン包含V粒子から調製した。V粒子は商業的に入手可能であった。グラフェン包含V粒子は企業内で調製した。典型的な実験において、LiCl水溶液中でのVの混合によって五酸化バナジウムゲルが得られた。LiCl溶液による相互作用によって得られたLi交換ゲル(Li:Vモル比は1:1に保持された)をGO懸濁液と混合し、次いでTeflonラインステンレス鋼35mlオートクレーブ中に配置し、密封し、そして12時間、180℃まで加熱した。そのような水熱処理後、緑色の固体を回収し、これを徹底的に洗浄し、2分間超音波処理し、そして70℃で12時間乾燥後、別の水中0.1%GOと混合し、超音波処理してナノベルトサイズまで分解し、次いで、200℃において噴霧乾燥させ、グラフェン包含V複合物粒状物を得た。
【0097】
次いで、V粒子及びグラフェン包含V粒子の選択された量で、それぞれ、次の手順に従って、UHMW PEOベース高弾性ポリマー封入粒子を作成した。
【0098】
UHMW PEOを最初に脱イオン水(1.6重量%)中に溶解し、均質且つ透明な溶液を形成した。次いで、ポリマー封入V粒子、及びグラフェン包含V粒子を調製するための2つのルートに従った。第1のルートにおいて、それぞれ、V粒子、及びグラフェン包含V粒子をUHMW PEO水溶液中に分散し、スラリーを形成した。いくつかの試料において、0.5%~5%の導電性充填剤(例えばグラフェンシート)をスラリー中に添加した。スラリーを別々に噴霧乾燥させ、ポリマー封入V粒子、及びグラフェン包含V粒子の粒状物を形成した。
【0099】
第2のルートにおいて、1~45%のリチウム塩(LiClO)を溶液中に溶解し、一連のリチウム塩含有溶液を形成した。次いで、V粒子又はグラフェン包含V粒子をリチウム含有UHMW PEO水溶液中に分散させ、一連のスラリーを形成した。いくつかの試料において、0.5%~5%の導電性充填剤(例えばグラフェンシート)をスラリー中に添加した。それぞれのスラリーを噴霧乾燥させ、ポリマー又はポリマー/リチウム塩封入V粒子又はグラフェン包含V粒子の粒状物を形成した。ポリマー又はポリマー/リチウム塩シェルはいくつかの導電性材料(この場合、グラフェンシート)を含有することができる。
【0100】
その後、いくつかの粒状物試料を溶媒(好ましくは、炭酸エチレン、ECなどの所望のリチウムイオンバッテリー電解質溶媒)に浸漬し、アノード粒子を包含するポリマー相の非晶質ゾーン中に溶媒を浸透させる。UHMWポリマーシェルの厚さは、356nm~1.66μmで様々であった。
【0101】
また、UHMW PEO水溶液をガラス表面上にキャストし、そして乾燥させてPEOフィルムを形成した。完全乾燥時に、ポリマーフィルムを所望の溶媒(例えばEC)中に浸漬し、ゴム様ポリマーを形成した。いくつかの引張試験試験片を溶媒(例えばEC)を含むそれぞれのポリマーフィルムから切り取り、そして万能試験機で試験した。ポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線を図3(A)に示す。これは、このポリマーが約150%の弾性変形を有することを示す。この値は、いずれの固体添加剤も含まないニートのポリマー(いくつかの溶媒を含む)に関する(リチウム塩なし、及び導電性添加剤なし)。30重量%までのリチウム塩の添加によって、この弾性は、典型的に、5%~60%の可逆性引張歪みまで減少する。
【0102】
電気化学試験のために、従来のカソード(封入なし)を使用して比較のための電極も調製した。作用電極は、85重量%のV又は88%のグラフェン包含V粒子、5~8重量%のCNT及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解された7重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤を混合して全固形分5重量%のスラリーを形成することによって作製された。スラリーをAl箔上にコートした後、電極を2時間の間真空中で120℃で乾燥させて、加圧前に溶媒を除去した。次いで、電極をディスク(φ=12mm)に切断し、真空中で24時間の間100℃で乾燥させた。
【0103】
対向/参照電極としてリチウム金属、セパレーターとしてCelgard2400膜、及びエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1MのLiPF電解質溶液を有するCR2032(3V)コイン型セルを使用して電気化学測定を実施した。セルの組立をアルゴン充填グローブボックス内で行なった。CV測定は、1mV/sの走査速度でCH-6電気化学ワークステーションを使用して実施された。高弾性ポリマー結合剤を特徴とするセル及びPVDF結合剤を含有するセルの電気化学的性能は、Arbin電気化学ワークステーションを使用して、50mA/gの電流密度で定電流充電/放電サイクル経過によって評価された。
【0104】
未封入V粒子を含有するカソード、未封入であるがグラフェン包含V粒子を含有するカソード、UHMW PEOポリマー封入V粒子を含有するカソード、及びUHMW PEOポリマー封入グラフェン包含V粒子を含有するカソードの4つのリチウムセルの比インターカレーション容量曲線が図3(B)に要約される。サイクル数が増加すると、未封入V電極の比容量は急速に低下する。対照的に、本発明のUHMW PEOポリマー封入は、大きなサイクル数に対して有意により安定な且つ高い比容量を有するバッテリーセルを提供する。これらのデータは明らかに、本発明のUHMWポリマー封入アプローチの驚くべき且つ優れた性能を実証した。
【0105】
高弾性UHMWポリマー封入シェルは、活物質粒子が膨張及び収縮する時に破損することなく、高い範囲まで逆戻り可能なように変形することができるように思われる。また、ポリマーは、封入粒子が膨張又は収縮する時、結合剤樹脂に化学的に結合したままでいる。それとは対照的に、PVDF結合剤は崩壊するか、又は未封入活物質粒子のいくつかから剥離する。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後にバッテリーセルから再生された電極の表面を調査することによって観察された。
【0106】
実施例2:高弾性ポリマー結合剤結合リン酸リチウム鉄(LFP)粒子
LFP粒子の封入のための高弾性ポリマーは、超高分子量ポリアクリロニトリル(UHMW PAN)をベースとするものであった。UHMW PAN(0.3g)を5mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、溶液を形成した。次いで、LFP粒子を溶液中に分散し、スラリーを形成した。次いで、スラリーに別々にマイクロ封入手順を受けさせて、全外部表面がポリマーの包含層によってコーティングされたアノード活物質粒子を作成した。
【0107】
調製された溶液からガラス支持体上に弾性試験用のポリマーフィルムをキャストし、続いて、換気フード下70℃における溶媒蒸発を行った。微量のDMFを除去するために、フィルムを70℃で48時間、減圧(<1トル)において徹底的に乾燥させた。ポリマーフィルムを炭酸プロピレン(PC)中に浸漬させ、PC可塑化UHMW PANフィルムを形成した。これらのフィルム上で引張試験も実行し、そしていくつかの試験結果を図4(A)に要約する。この一連のポリマーは、約80%まで弾性伸張可能である。
【0108】
高弾性ポリマー封入炭素コーティングLFP粒子及び未封入炭素コーティングLFP粒子からのバッテリーセルを実施例1に記載された手順を使用して作製した。図4(B)は、本発明の高弾性ポリマー封入アプローチに従って作製されたカソードが、未封入LFP粒子をベースとしたカソードと比較して有意により安定なサイクル挙動及びより高い可逆的な容量を提供することを示す。高弾性ポリマーは、アノード活物質粒子及び導電性添加剤を一緒に保持し、活物質電極の構造完全性を有意に改善することがより可能である。高弾性ポリマーは、リチウムイオンの容易な拡散を可能にしながらも、電解質を活物質から単離するようにも作用する。
【0109】
実施例3:UHMW PPOによって封入された金属フッ化物ナノ粒子
FeFナノ粒子の封入のため、実施例1に記載された手順と類似の手順を使用することによって、UHMW PPOポリマーを包含ポリマーシェルとして導入した。CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF及びBiFの商業的に入手可能な粉末に高強度ボールミル粉砕を受けさせ、粒径を約0.5~2.3μmまで低下させた。次いで、これらの金属フッ化物粒子のそれぞれのタイプを、(導電性添加剤としての)グラフェンシートと一緒にUHMW PPO-溶媒液状懸濁液中に添加し、複数成分スラリーを形成した。次いで、スラリーを噴霧乾燥させ、単離されたポリマー封入粒子を形成した。
【0110】
図5(B)に、2つの異なるタイプのカソード活性層:(1)高弾性UHMW PPOポリマー封入金属フッ化物粒子;及び(2)未封入金属フッ化物を有する2つのコインセルの放電容量曲線を示す。これらの結果は、高弾性UHMWポリマー封入戦略が、高容量カソード活物質を特徴とするリチウム金属バッテリーの容量減衰に対して優れた保護を提供することを明らかに実証した。
【0111】
高弾性ポリマーは、カソード活物質粒子が膨張及び収縮する時に破損することなく、逆戻り可能なように変形することができるように思われる。また、ポリマーは、活物質粒子が膨張又は収縮する時、結合剤樹脂に化学的に結合したままでいる。それとは対照的に、2つの従来の結合剤樹脂であるSBR及びPVDFの両方は崩壊するか、又は未封入活物質粒子のいくつかから剥離する。高弾性ポリマーは、電極層の構造安定性に寄与する。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後にバッテリーセルから再生された電極の表面を調査することによって観察された。
【0112】
実施例4:高弾性ポリマーによって封入された金属ナフタロシアニン還元グラフェン酸化物(FePc/RGO)ハイブリッド粒状物
ミル粉砕チャンバー中で30分間、FePc及びRGOの混合物をボールミル粉砕することによって、組み合わせたFePcの粒子/グラフェンシートが得られた。得られたFePc/RGO混合物粒子は、ポテト様形状であった。パンコーティング手順を使用して、これらの混合物粒子のいくつかを高弾性UHMW PANポリマーによって封入した。それぞれ、Li箔アノード、多孔性分離体及びFePc/RGO粒子(封入又は未封入)のカソード層を含有する2つのリチウムセルを調製した。
【0113】
これらの2つのリチウムセルのサイクル挙動は図6に示されており、これによって、カソード層中に高弾性ポリマー封入粒子を有するリチウム有機セルが有意により安定なサイクル応答を示すことが示される。この封入ポリマーは、触媒遷移金属元素と電解質との間の直接接触を減少又は排除するが、それでもリチウムイオンに対してまだ透過性である。このポリマーは、液体電解質中でのナフタロシアニン化合物の溶解も完全に排除する。この方法によって、全てのリチウム有機バッテリーのサイクル寿命が有意に増加した。
【0114】
実施例5:高弾性ポリマー内のリチウムイオン導電性添加剤の効果
多種多様なリチウムイオン導電性添加剤をいくつかの異なったポリマー母材材料に添加して、コアアノード活物質の粒子を保護するための封入シェル材料を調製した。得られたポリマー/塩複合体材料のリチウムイオン導電率値を以下の表1に要約する。これらのポリマー複合材料は、室温におけるそれらのリチウムイオン導電率が10-6S/cm以上ならば適した封入シェル材料であることを我々は発見した。これらの材料を使用して、リチウムイオンは、1μm以下の厚さを有する封入シェル中にそして中から容易に拡散することができるように思われる。より厚いシェル(例えば10μm)については、10-4S/cm以上の室温におけるリチウムイオン導電率が必要とされるであろう。
【0115】
実施例6:様々な再充電可能なリチウムバッテリーセルのサイクル安定性
リチウムイオンバッテリー産業において、必要とされる電気化学的形成の後に測定される初期容量に基づいた容量の20%減衰をバッテリーが受ける充電-放電サイクルの数としてバッテリーのサイクル寿命を定義するのが慣例である。以下の表2に記載されるのは、本発明の結合剤材料によって結合したアノード活物質粒子を含む電極を特徴とする広範なバッテリーのサイクル寿命データである。
【0116】
これらデータによって、驚くべきことにカソード構造不安定性によって誘発される容量減衰の問題を軽減することに高弾性UHMWポリマー封入戦略が効果があることがさらに確認される。高弾性UHMWポリマー封入層は、液体電解質がカソード活物質と直接的に物理的接触をすることを防ぐことができ、したがって、カソード活物質中の触媒元素(例えば、Fe、Mn、Ni、Coなど)が電解質の分解に触媒作用を及ぼして、バッテリーセル内に揮発性又は可燃性ガス分子を形成することを防ぐことができると思われる。これは、さもなければ、急速な容量減衰、並びに火災及び爆発の危険を引き起こす可能性がある。高弾性UHMWポリマー封入層は、さもなければ活物質の損失、したがって、容量損失を導くであろう液体電解質中での有機又はポリマー活物質の溶解も防ぐ。
図1A-1B】
図2A-2B】
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6