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特許7154231コークス炉を補修するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】コークス炉を補修するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/06 20060101AFI20221007BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C10B29/06
F27D1/16 Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019564986
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034235
(87)【国際公開番号】W WO2018217955
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】62/510,109
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513028038
【氏名又は名称】サンコーク テクノロジー アンド ディベロップメント リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン クラム
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンソニー ボール
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ディーン ウェスト
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フランシス クアンチ
(72)【発明者】
【氏名】チュン ワイ チョイ
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053077(JP,A)
【文献】特開2004-169016(JP,A)
【文献】特開平08-081681(JP,A)
【文献】特公昭45-040170(JP,B1)
【文献】特開平06-041538(JP,A)
【文献】特開2010-229239(JP,A)
【文献】特開2002-097472(JP,A)
【文献】特開平06-049450(JP,A)
【文献】実開平06-054753(JP,U)
【文献】特開2009-019106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/06
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床、頂部、および前記床と前記頂部との間に延在する側壁によって画定される炉室を有するコークス炉に挿入可能な断熱エンクロージャにおいて、床部分、天井部分、および前記床部分と前記天井部分との間に延在して対向する第1および第2側面部分により画定される内側領域を有する前記断熱エンクロージャであって、前記断熱エンクロージャは、
フレーム部分と、
断熱材と、
前記フレーム部分に解放可能に連結される複数のパネルと、を備え、
前記複数のパネルは、前記床部分、前記天井部分、および前記第1および第2側面部分を少なくとも部分的に画定し、
前記パネル群の個々のパネルは、断熱材部分と、前記断熱材部分に連結される裏当て部分と、を含み、
前記断熱エンクロージャは、第1構成と第2構成との間で変形可能であり、
前記第1構成では、前記断熱エンクロージャは、前記天井部分と前記第1側面部分との間の第1の隙間、および、前記天井部分と前記第2側面部分との間の第2の隙間を含み、前記断熱材は、前記断熱エンクロージャの前記天井部分に連結されて前記第1および第2の隙間を覆い、
前記内側領域は、前記断熱エンクロージャが前記第1構成になっているときの第1の高さ、および前記断熱エンクロージャが前記第2構成になっているときの、前記第1の高さよりも小さい第2の高さを備え、前記第1の高さおよび前記第2の高さは、前記床部分と前記天井部分との間で測定される、断熱エンクロージャ。
【請求項2】
前記フレーム部分に連結される少なくとも1つのジャッキをさらに備え、前記少なくとも1つのジャッキは、前記断熱エンクロージャを前記第1構成と前記第2構成との間で変形させるように構成される、請求項1に記載の断熱エンクロージャ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのジャッキは機械式ジャッキを含む、請求項2に記載の断熱エンクロージャ。
【請求項4】
冷気を前記断熱エンクロージャの外部から前記内側領域内に循環させるために使用される冷却装置をさらに備える、請求項1に記載の断熱エンクロージャ。
【請求項5】
熱を発生させるために使用される外部加熱装置をさらに備え、前記外部加熱装置は、前記断熱エンクロージャの外側表面に連結され、前記発生した熱を前記内側領域から離れる方向に向けるように配置される、請求項1に記載の断熱エンクロージャ。
【請求項6】
前記断熱材部分はセラミック材料を含み、前記裏当て部分は金属を含む、請求項1に記載の断熱エンクロージャ。
【請求項7】
床、頂部、および前記床と前記頂部との間に延在する側壁により画定される炉室を有するコークス炉を補修する方法であって、前記コークス炉は、前記床、前記頂部、および前記側壁を形成する複数のレンガを備え、前記方法は、
断熱エンクロージャを前記炉室に挿入することであって、前記断熱エンクロージャはフレーム部分と、断熱材と、床部分、天井部分、および床部分と天井部分との間に延在して対向する第1および第2側面部分とによって画定される内部領域とを含み、
前記断熱エンクロージャは、前記フレーム部分に取り外し可能に連結される複数のパネルを含み、
前記断熱エンクロージャは、第1構成と第2構成との間で変形可能であり、
前記第1構成では、前記断熱エンクロージャは、前記天井部分と前記第1側面部分との間の第1の隙間、および、前記天井部分と前記第2側面部分との間の第2の隙間を含み、前記床部分と前記天井部分との間で測定される第1の高さを有し、前記断熱材は、前記断熱エンクロージャの前記天井部分に連結されて前記第1および第2の隙間を覆い、
前記第2構成では、前記断熱エンクロージャは、前記床部分と前記天井部分との間で測定される前記第1の高さよりも低い第2の高さを有し、
前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入することは、前記断熱エンクロージャが前記第2構成になっているときに、前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入することを含む、挿入することと、
前記断熱エンクロージャを前記第2構成から前記第1構成に変形させることと、
前記パネル群のうちの少なくとも1つのパネルを前記フレーム部分から取り外して、前記床、前記頂部、または前記側壁のうちの少なくとも1つを剥き出しにすることと、
前記レンガ群のうちの少なくとも1つのレンガを補修することと、
前記少なくとも1つのパネルを前記フレーム部分に再び取り付けることと、
前記断熱エンクロージャを前記第2構成に変形させることと、
前記断熱エンクロージャを前記炉室から取り出すことと、を含む、方法。
【請求項8】
前記断熱エンクロージャは、第1の断熱エンクロージャを含み、前記方法は、
前記第1の断熱エンクロージャを前記第2構成から前記第1構成に変形させる前に、第2の断熱エンクロージャを前記炉室に、前記第1の断熱エンクロージャに隣接して挿入することと、
前記第1の断熱エンクロージャを前記第2の断熱エンクロージャに連結させることと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フレーム部分は、第1フレーム部分を含み、
前記複数のパネルは、第1の複数のパネルを含み、
前記第2の断熱エンクロージャは、第2フレーム部分に連結される第2の複数のパネルを含み、
前記第2の断熱エンクロージャは、前記第2構成から前記第1構成に変形可能であり、
前記第1の断熱エンクロージャを前記第2構成から前記第1構成に変形させることは、前記第1の断熱エンクロージャおよび前記第2の断熱エンクロージャのそれぞれを前記第2構成から前記第1構成に変形させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入する前に、前記炉室の一部分を特定することをさらに含み、
前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入することは、前記断熱エンクロージャを、前記特定した部分の上に配置することを含み、
前記少なくとも1つのパネルを前記フレーム部分から取り外して、前記床、前記頂部、または前記側壁のうち少なくとも1つを剥き出しにすることは、前記少なくとも1つのパネルを取り外して、前記特定した部分を剥き出しにすることを含み、
前記特定した部分は、少なくとも1つのレンガを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのレンガは、第1のレンガを含み、
前記少なくとも1つのレンガを補修することは、前記第1のレンガを第2のレンガと取り替えることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記コークス炉は、石炭を第1温度で燃焼させるように構成され、前記コークス炉の周囲の空気は、前記第1温度よりも低い第2温度であり、前記方法は、
前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入する前に、前記炉室を前記第1温度から、前記第1温度よりも低く、前記第1温度よりも高い第3温度に冷却することと、
前記断熱エンクロージャを前記炉室から取り出した後に、前記炉室を前記第1温度まで加熱することと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
床、頂部、および前記床と前記頂部との間に延在する側壁により画定される炉室を有する炉を補修する炉補修システムであって、コークス炉は、前記床、前記頂部、および前記側壁を形成する複数のレンガを含み、前記炉補修システムは、
前記炉室に挿入可能であり、床部分、天井部分、および前記床部分と前記天井部分との間に延在して対向する第1および第2側面部分により画定される断熱材および内側領域を有する断熱エンクロージャにおいて、少なくとも第1構成から第2構成に変形可能であり、前記第1構成では、前記断熱エンクロージャは、前記天井部分と前記第1側面部分との間の第1の隙間、および、前記天井部分と前記第2側面部分との間の第2の隙間を含み、前記床部分と前記天井部分との間で測定される第1の高さを有し、前記断熱材は、前記断熱エンクロージャの前記天井部分に連結されて前記第1および第2の隙間を覆い、前記第2構成では、前記断熱エンクロージャは、前記床部分と前記天井部分との間で測定される前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する、前記断熱エンクロージャであって、
フレーム部分、および
前記フレーム部分に取り外し可能に連結される複数のパネル、を備え、
前記複数のパネルは、前記床部分、前記天井部分、および前記第1および第2側面部分を少なくとも部分的に画定し、
前記パネル群の個々のパネルは、断熱材部分と、前記断熱材部分に連結される裏当て部分と、を含む、前記断熱エンクロージャと、
位置決め装置であって、前記断熱エンクロージャを前記炉室に挿入する、位置決め装置と、を備える、炉補修システム。
【請求項14】
前記断熱エンクロージャは第1の断熱エンクロージャを含み、前記内側領域は第1の内側領域を含み、前記炉補修システムは、
前記炉室に挿入可能な第2の断熱エンクロージャをさらに備え、
前記位置決め装置は、前記第2の断熱エンクロージャを前記炉室に、前記第1の断熱エンクロージャに隣接して挿入するように構成され、
前記第2の断熱エンクロージャは、前記第1の断熱エンクロージャに連結可能であり、
前記第2の断熱エンクロージャは第2の内側領域を含み、
前記第1および第2の断熱エンクロージャが互いに連結されると、前記第1の内側領域および前記第2の内側領域は互いに流体接続される、請求項13に記載の炉補修システム。
【請求項15】
前記断熱エンクロージャは前記炉室に挿入され、前記床部分は前記炉の前記床に隣接して配置され、前記第1側面部分は、前記側壁群のうちの第1側壁に隣接して配置され、前記第2側面部分は、前記側壁群のうちの第2側壁に隣接して配置され、前記天井部分は、前記頂部に隣接して配置される、請求項13に記載の炉補修システム。
【請求項16】
前記複数のパネルは、前記フレーム部分から取り外されるように構成される第1パネルを含み、
前記レンガ群のうちの少なくとも1つのレンガは、前記第1パネルが前記フレーム部分から切り離されると、前記内側領域に対して剥き出しになる、請求項13に記載の炉補修システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、コークス炉に関し、特にコークス炉を補修して炉の寿命を延ばし、炉のコークス生産量を増加させる方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークスは、鉄鋼の製造において鉄鉱石を溶融および還元させるために使用される固体炭素燃料および炭素源である。コーキング炉は、石炭を冶金コークスに変えるために長年にわたって使用されてきた。「Thompson Coking Process(トンプソンコーキングプロセス)」として知られる1つのプロセスでは、コークスは、密閉され、厳密に制御された雰囲気下で24~48時間の間、非常に高い温度に加熱された炉に微粉炭をバッチ供給することにより製造される。コーキングプロセス中、細かく粉砕された石炭は脱揮し、所定の多孔度および強度を有するコークスの溶融塊を形成する。コークスの製造はバッチプロセスであるため、複数のコークス炉が同時に操業する。
【0003】
コークス炉は、通常、アルミナ、シリカ、および/または他のセラミック材料を含む耐火レンガで構成される。これらの耐火レンガは、高温に耐えることができ、通常は熱を長期間にわたって保持する。しかしながら、耐火レンガは脆く、割れる可能性があり、これにより、コークス炉のコークス製造能力が低下する。コークス炉を補修するために、作業者は多くの場合、コークス炉に入り、壊れたレンガの積み替えを行なう必要がある。コークス炉は、作業者が入るのに適さない極めて高い温度で操業し、作業者がコークス炉に快適に入ることができるためには、コークス炉の温度を下げる必要がある。しかしながら、コークス炉内の温度を過度に低下させることは、そのようにすると、炉に損傷を与える可能性があるため通常、決して許容されない。
【0004】
コークス炉が建設される場合、可燃性のスペーサが炉の頂部のレンガの間に配置されてレンガの膨張を可能にしている。一旦、炉が加熱されると、スペーサが燃え尽きて、レンガは熱膨張により膨張する。しかしながら、炉は通常、熱的容積的に安定な温度(すなわち、その温度を超えると、シリカが普通、容積的に安定であり、膨張または収縮しない)を下回ることは決して許容されない。レンガがこの温度を下回る場合、レンガが収縮し始める。スペーサは燃え尽きているため、従来の頂部は、冷却されると最大で数インチ、収縮する可能性がある。これは、頂部のレンガが移動し始めて崩れ落ちるおそれがある十分大きな動きである可能性がある。したがって、十分な熱を炉内で保持してレンガが熱的容積的に安定な温度を上回るように保つ必要がある。しかしながら、熱的容積的に安定な温度は、作業者がコークス炉に快適に入るためには熱すぎる。したがって、作業者が、コークス炉を熱的容積的に安定な温度以下に冷却することを必要とすることなく、コークス炉に快適に入ることができるようにする改良されたシステムが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本技術の実施形態に従って構成される水平熱回収/非回収コークスプラントの一部の部分等角切り欠き図である。
図2】前扉を取り外した状態の2つの炉の等角図である。
図3A図2の炉室に挿入することができ、本技術の実施形態に従って構成される拡大構成の断熱エンクロージャの等角図である。
図3B】本技術の実施形態に従って構成されるコンパクト構成の図3Aの断熱エンクロージャの等角図である。
図4】本技術の実施形態による、炉室に挿入され、連結されて一体になる図3Aおよび図3Bに示す複数の断熱エンクロージャの等角図である。
図5】炉室に挿入されている図3Aおよび図3Bに示す断熱エンクロージャの等角図である。
図6】本技術の実施形態による、炉室を、断熱エンクロージャを使用して補修する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本技術の幾つかの実施形態は、コークス炉が熱い間にコークス炉を補修するために使用されるシステムおよび装置を対象とする。例えば、本技術は、水平型非熱回収コークス炉または水平型熱回収コークス炉においてコンパクト構成と拡大構成との間で移動可能な断熱エンクロージャを含むことができるが、これらの用途に限定されず、他の同様の用途に適用することができる。断熱エンクロージャは、コンパクト構成のコークス炉内に配置することができ、拡開位置に拡開して作業者がエンクロージャ内で立って作業を進めることができる。断熱エンクロージャは、エンクロージャの内部を加熱炉の側壁、床、および/または頂部から断熱する、エンクロージャの外周の周りに配置される取り外し可能な断熱材パネルを含むことができる。断熱材パネルは取り外し可能であり、作業者がコークス炉の一部分に近づいて、損傷した部分をクリーニングまたは補修することができる。断熱エンクロージャは、モジュール式であり、エンクロージャを異なる規模の炉に合わせることができる。このアプローチにより、コークス炉を冷却することなくコークス炉を補修することができ、コークス炉を冷却するには、コークス炉を長期間にわたって使用しないようにする必要があり得、および/または多くの場合、コークス炉を形成するレンガが冷めると割れたり、位置がずれたりする可能性がある。したがって、断熱エンクロージャは、作業員をコークス炉から放出される高温から遮蔽することができ、作業員が炉を補修している間、コークス炉が、昇温状態を維持できるようになる。さらなる実施形態によれば、断熱エンクロージャにより作業者は、操業サイクルの合間に炉の内部に迅速に近づくことが可能になる。
【0007】
開示される技術の幾つかの実施形態の特定の詳細は、特定の代表的な構成を参照して以下に説明される。開示される技術は、炉、コークス製造施設、および他の適切な構成を有する断熱および遮熱構造に従って実施することができる。公知であり、多くの場合、コークス炉および遮熱体に関連付けられるが、開示される本技術の幾つかの重要な態様を不必要に不明瞭にする可能性がある構造またはプロセスを記述する特定の詳細は、明瞭性を期して以下の説明には記載されていない。さらに、以下の開示は、開示される技術の異なる態様の幾つかの実施形態を記載しているが、本技術の幾つかの実施形態は、このセクションで説明されるものとは異なる構成および/または構成要素を有することができる。このようなことから、本技術は、追加の要素を備えている、および/または図1図6を参照して以下に説明される要素群のうち幾つかの要素を備えていない幾つかの実施形態を含むことができる。
【0008】
図1を参照すると、石炭からコークスを還元環境で製造するコークスプラント100が示されている。一般に、コークスプラント100は、少なくとも1つの炉101を、熱回収蒸気発生器および空気品質制御システム(例えば、排ガス脱硫システムまたは排煙脱硫システム)と一緒に備えており、熱回収蒸気発生器および空気品質制御システムは共に、炉から見て流体的に下流に配置され、熱回収蒸気発生器および空気品質制御システムは共に、炉に適切なダクトを介して流体接続される。本開示の態様によれば、コークスプラントは、熱回収コークス炉もしくは非熱回収コークス炉、または水平型熱回収コークス炉もしくは水平型非回収コークス炉を含むことができる。コークスプラント100は、複数の炉101と、炉101の各炉に排煙ダクト103で流体接続される共通トンネル102と、を含むことが好ましい。冷却ガスダクトは、冷却ガスを熱回収蒸気発生器から排煙脱硫システムに搬送する。流体接続されてさらに下流にあるのは、粒子を回収するバグハウス、システム内の空気圧を制御する少なくとも1つの通風機、および冷却処理された排気を環境に排出する大型の排ガス煙突である。蒸気ラインは熱回収蒸気発生器および熱電併給プラントを相互接続して、回収した熱を利用できるようにしている。コークスプラント100はまた、緊急事態において高温の排ガスを大気に放出するために使用することができるバイパス排ガス煙突104に流体接続することができる。
【0009】
図1は、明瞭性を期して一部を切り欠いた4つの炉101を示している。各炉101は、床111、前扉114、好ましくは前扉114に対向する後扉115、前扉114と後扉115の中間にあって床111から上方に延在する2つの側壁112、炉室110の上側表面を形成する頂部113と、を含む。炉101の内部の空気流および空気圧の制御は、コーキングサイクルを効率的に行なうために必須となり得るので、炉101は、空気を炉101に送り込むことができる1つ以上の吸気口119を含む。各吸気口119は、全開と全閉との間の任意の数の位置に配置して炉101に流れ込む主空気流の量を変えることができる空気ダンパーを含む。図示の実施形態では、炉101は、炉室110への空気流を制御するように構成された前扉114に連結される吸気口119と、炉101の床111の下に配置される単一の煙道118に連結される吸気口119と、を含む。あるいは、1つ以上の吸気口119は、頂部113全体におよび/または排煙ダクト103内に形成される。操業中、炉室110の内部に配置される石炭から放出される揮発性ガスは、頂部113に集まり、システム全体で下流に、一方の側壁112または両方の側壁112に形成される下降流路117に引き込まれる。下降流路117は、炉室110を、配置された単一の煙道118と流体接続する。単一の煙道118は、床111の下に迂回経路を形成し、石炭から放出される揮発性ガスは単一の煙道118内で燃焼させることができることにより、熱を発生させて石炭をコークスに還元するのを支援する。下降流路117は、一方の側壁または両方の側壁112に形成される排煙流路116に流体接続される。単一の煙道118に連結される吸気口119は、単一の煙道118を大気に流体接続することができ、単一の煙道内の燃焼を制御するために使用することができる。炉101は、作業者が立って歩いて前扉および炉室110に近づくことができる、前扉114に隣接する作業台105を含むこともできる。
【0010】
操業中、コークスは、最初に石炭を炉室110に装入し、石炭を酸素欠乏雰囲気で加熱し、石炭の揮発分を追い出し、次に揮発性物質を炉101内で酸化させて、放出される熱を捕らえて利用することにより、炉101内で製造される。石炭の揮発性物質は、炉内で48時間のコーキングサイクルで酸化されて熱を放出し、石炭の炭化を再生可能に進めてコークス化する。コーキングサイクルは、前扉114を開いて、石炭を床111に装入したときに始まる。床111上の石炭は、石炭床として知られている。炉からの熱(前のコーキングサイクルに起因する)により、炭化サイクルが始まる。好ましくは、コーキングプロセスにより生成される燃料以外の追加の燃料は使用されない。石炭床に伝達される全熱の約半分は、石炭床の上側表面に向けて下方に、発光炎および放射炉の頂部113から放射される。残りの半分の熱は石炭床に、床111からの伝熱により伝達され、床111は、単一の煙道118内のガスの蒸発で対流加熱される。このようにして、石炭粒子の塑性流動および高強度のコークス塊の形成の炭化プロセス「波」が、石炭床の上部境界および下部境界の両方から同じ速度で進み、好ましくは約45~48時間後に石炭床の中心で衝突する。
【0011】
床111、側壁112、および頂部113は通常、高温に耐えることができ、通常、熱を長期間にわたって保持するセラミックレンガ(例えば、耐火レンガ)から形成される。幾つかの実施形態では、レンガは、シリカおよび/またはアルミナを含むセラミック材料から形成される。側壁112は、交互に積み上げられて一体となるレンガを含むことができ、頂部113は、アーチ状に配列されるレンガを含むことができる。しかしながら、これらのレンガは脆く、壊れる場合があり得る。例えば、レンガを叩くと(例えば、フォークリフトまたは他の機械で、工具などで)、レンガが割れる可能性がある。さらに、レンガは長期間にわたって繰り返し加熱および冷却されるため、レンガは、熱膨張および収縮により生じる内部応力に起因して壊れる場合があり得る。レンガはまた、レンガの両側の温度差に起因して壊れる可能性があり、これにより、温度勾配に起因して内部応力が形成される可能性がある。例えば、図示の実施形態では、側壁112を形成するレンガ群のうち幾つかのレンガは、炉室110と排煙流路116および下降流路117との間に配置される可能性があり、炉室110内の空気と、排煙流路116内および下降流路117内の空気との間の温度差により、これらのレンガが壊れる場合があり得る。
【0012】
図2は、前扉が取り外され、複数の亀裂106が側壁112に形成されている2つの炉101の等角図である。図示の実施形態では、亀裂106はほぼ垂直であり、側壁112の厚さ全体にわたって延在していて、排煙流路および下降流路が炉室110と流体連通するようになり、空気が亀裂106を通過することができるようになる。他の実施形態では、亀裂106は、側壁112全体に延在していない場合があり、頂部113に形成される可能性がある、および/または床111に形成される可能性がある。これらの亀裂106の存在は、炉室110内の温度、ならびに炉101の気流調節能力に影響を与える可能性があり、これは、炉101の効率に影響する可能性があり、石炭をコークスに変える炉101の能力を低下させる可能性がある。したがって、炉101の操業効率および有効性を維持するために、炉101は、壊れたレンガの積み替えを行なうことにより補修することができる。
【0013】
しかしながら、炉室110は通常、作業者が快適に作業するためには熱過ぎて、追加の断熱冷却システムが必要である。本技術の代表的な実施形態では、断熱材を含む断熱エンクロージャを炉室110内に配置して作業者が、炉室110に快適に入ることができ、クリーニング、補修、または保守を必要とする炉101の亀裂106および他の部分に近づくことができるようにする。断熱材は、レンガから放出される熱がエンクロージャに入るのを防ぐことができるため、エンクロージャ内の温度を十分低い温度に保つことができ、炉101を周囲温度まで完全に冷却する必要がなく、作業員が炉101を快適に作業および補修することができる。図3Aは、断熱エンクロージャ120の立面図を示している。断熱エンクロージャ120は、天井部分122、床部分124、および対向する側面部分123により画定される内側領域121を含む。天井部分122は第1傾斜部分125aを含むことができ、床部分124は第2傾斜部分125bを含むことができる。断熱エンクロージャ120は、フレーム126、およびフレーム126に取り外し可能に連結される複数のパネル130から形成することができる。パネル130は、フレーム126に対して配置されて固定され、天井部分122、床部分124、および側面部分123を形成することができ、パネル群130の各パネルは、炉101から放出される熱が内側領域121に入るのを防ぐように構成される断熱材を含むことができる。
【0014】
パネル群130の各パネルは、断熱材部分131と、断熱材部分に連結される裏当て部分132と、を含むことができ、断熱材部分131が内側領域121の反対(すなわち、側壁112、頂部113、および床111の方)を向くようにパネル130をフレーム126に連結することができる。裏当て部分132は、金属から形成することができ、作業者がパネル130を制御および操作するために使用することができる取っ手を含むことができる。幾つかの実施形態では、断熱材部分131は、高温断熱ウール(HTIW)、セラミックブランケット材料、Kaowoolなどから形成することができる。他の実施形態では、断熱材部分131は、セラミックタイルから作られる剛性断熱材を含む。これらの実施形態のいずれにおいても、断熱材部分131は、裏当て部分132の形状にほぼ適合するようにサイズ設定および整形される。
【0015】
断熱エンクロージャ120が拡大構成になっているとき、側面部分123は隙間133をパネル130の上辺と第1傾斜部分125aとの間に含むことができ、この隙間を通って、炉室110からの熱が内側領域121に入り込むことができる。断熱エンクロージャ120が拡開位置にあるときに隙間133を通過する熱を防止するために、または熱の量を最小限に抑えるために、断熱エンクロージャ120は、隙間133を覆う断熱材129を含むこともできる。断熱材129は、天井部分122に連結されるセラミックブランケット材料から形成することができる。断熱材129は、第1傾斜部分125aを覆うことができ、隙間133を通って延在し、パネル130を少なくとも部分的に覆うことができる。作業者が、断熱材129により塞がれる側壁112の選択した部分に近づく必要がある場合、断熱材129は、側壁112の選択した部分が剥き出しになるように押しのけられるか、または邪魔にならないように固定することができる。幾つかの実施形態では、断熱材129は複数の帯状体を含み、各帯状体は、隙間133の一部を覆う。これらの実施形態では、帯状体は、個々に操作することができ、邪魔にならないように固定することができる。しかしながら、他の実施形態では、断熱材129は、隙間133全体を覆うカーテンを含むことができる。カーテンは、フレーム126に取り付けられるロッドに移動可能に連結されて、カーテンが断熱エンクロージャ120の全長に沿って摺動することができ、隙間133を完全に覆うことができるようにする。
【0016】
図示の実施形態では、第1傾斜部分125aは、側面部分123と約45°の角度を形成し、第2傾斜部分125bは、側面部分123と約45°の角度を形成する。しかしながら、他の実施形態では、第1傾斜部分125aおよび第2傾斜部分125bは、側面部分123と幾つかの異なる角度を形成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、第1傾斜部分125aおよび第2傾斜部分125bは、側面部分123と45°未満の角度を形成することができる。さらに他の実施形態では、断熱エンクロージャ120は、第1傾斜部分125aが側面部分123と、第2傾斜部分125bが形成するのとは異なる角度を形成することができる。一般に、断熱エンクロージャ120は、傾斜部分125aおよび125bが炉室のサイズおよび形状に適合するように形成することができる。
【0017】
断熱エンクロージャ120は、第1の拡大構成と第2のコンパクト構成との間で移動可能とすることができる。図3Aに示す実施形態では、断熱エンクロージャ120は拡大構成になっている。この構成では、内側領域121は、作業者が断熱エンクロージャ120内で快適に立って作業を進めるために十分大きな高さH1を有することができる。しかしながら、断熱エンクロージャ120を炉室110に第2のコンパクト構成で挿入することにより、断熱エンクロージャを、炉室の頂部および/または側壁に誤ってぶつかることなく設置することができる。したがって、断熱エンクロージャ120は、断熱エンクロージャ120が炉室に挿入される場合にコンパクト構成になるようにすることができ、所望の位置で拡開させることができる。図3Bは、コンパクト構成になっている断熱エンクロージャ120を示している。この構成では、内側領域121は、高さH1よりも低い高さH2を有することができる。このようにして、断熱エンクロージャを炉室に挿入するときに、炉室の頂部および/または側壁にぶつかる危険を減らすことができる。
【0018】
断熱エンクロージャ120を第1の拡大構成と第2のコンパクト構成との間で移動させるのを容易にするために、断熱エンクロージャ120は、フレーム126に相互作用可能に連結される1つ以上の調節可能なジャッキ128を含むことができる。ジャッキ128は、伸張位置と収縮位置との間で移動可能とすることができる。具体的には、1つ以上のジャッキは、断熱エンクロージャ120が拡大構成になっているときに伸張位置になることができ、断熱エンクロージャ120がコンパクト構成になっているときに収縮位置になることができる。断熱エンクロージャ120を拡大構成に移動させるために、ジャッキ128は、天井部分122を床部分124から離れるように持ち上げることにより、伸張位置に移動することができるので、内側領域121の高さを第1の高さH1に上げることができる。逆に、断熱エンクロージャ120をコンパクト構成に移動させるために、ジャッキ128は、天井部分122を床部分124の方に向かって下げることにより、収縮位置に移動することができるので、内側領域121の高さを第2の高さH2に下げることができる。図示の実施形態では、断熱エンクロージャ120は、ジャッキ群128のうち、断熱エンクロージャ120の四隅に配置される4つのジャッキを含む。しかしながら、他の実施形態では、断熱エンクロージャは、断熱エンクロージャの中心に配置される単一のジャッキ128を含むことができる。幾つかの実施形態では、ジャッキ128は、流体を利用してジャッキ128を伸張位置と収縮位置との間で移動させる油圧または空圧ジャッキとすることができる。他の実施形態では、ジャッキ128は、作業者がジャッキ128を伸張位置と収縮位置との間で、ハンドルまたはレバーを使用して動かす必要がある機械式ジャッキとすることができる。断熱エンクロージャ120が拡大構成またはコンパクト構成のいずれかになっている場合、ロッキング機構を使用して天井部分を選択した構成で固定することができる。
【0019】
図示の実施形態では、断熱エンクロージャ120を拡大構成とコンパクト構成との間で移動させることにより、断熱エンクロージャ120の幅、または側面部分123と側壁との間の距離に影響を与えることなく、断熱エンクロージャ120の高さ、および屋根部分122と頂部との間の距離の両方が変わる。しかしながら、他の実施形態では、断熱エンクロージャ120を拡大構成とコンパクト構成との間で移動させることにより、断熱エンクロージャ120の幅、および側面部分123と側壁との間の距離の両方が変わる場合がある。これらの実施形態では、断熱エンクロージャ120は、フレーム126に連結され、2つの側面部分123を摺動させて断熱エンクロージャ120の幅を大きくするために使用される水平方向に向いた1つ以上のジャッキ128を含むことができる。
【0020】
断熱エンクロージャ120は、床部分124に隣接するフレーム126に一体的に連結される支持レール127を含むこともできる。支持レール127は、炉室の床に接触するように構成される平坦底面を有する細長い金属部材から形成することができる。このようにして、断熱エンクロージャ120が炉室に挿入されると、断熱エンクロージャ120は、床に沿って支持レール127の上を摺動することができる。しかしながら、他の実施形態では、断熱エンクロージャ120は、車輪、連続軌道(すなわち、タンク接地面 )、または断熱エンクロージャ120を炉室の床に沿って移動させるのを容易にする別の機構を含むことができる。
【0021】
断熱エンクロージャ120が炉室110の入口に配置されると、作業者は断熱エンクロージャ120を使用して、入口付近の炉室110の一部分に近づいて当該部分を作業することができる。しかしながら、炉室110は、断熱エンクロージャ120よりも長い可能性があり、入口から遠く離れた炉室110の選択した部分に近づくためには、断熱エンクロージャ120を入口から離れて配置する必要があり得る。作業者がこれらの選択した部分に快適に近づいて、選択した部分を作業することを可能にするためには、複数の断熱エンクロージャ120を炉室110に、互いに隣接するように挿入して、互いに連結させることができる。
【0022】
図4は、互いに連結され、炉室110内に配置される複数の断熱エンクロージャ120の等角図を示している。図示の実施形態では、複数の断熱エンクロージャ120は、炉室110内全体に前面から後面まで完全に延在している。この配列により、複数の断熱エンクロージャ120は、炉室110の長さに実質的に等しい長さを有する細長い内側領域121を形成することができる。さらに、前扉および後扉(すなわち、図1に示す前扉114および後扉115)は、開放することができる、および/または取り外すことができるので、炉101の外部からの空気が細長い内側領域121内を流れて、作業者をさらに冷却することができる。
【0023】
しかしながら、他の実施形態では、複数の断熱エンクロージャ120は、炉室110内の途中までしか延在していない場合があり、入口付近の炉室110の部分が断熱エンクロージャ120によって占有されるのに対し、入口からさらに離れた部分は占有されないことになる。しかしながら、入口からさらに離れた炉室110の部分は依然として、昇温状態であり、熱を放出している。したがって、入口から最も遠い断熱エンクロージャ120は、隔壁を形成して内側領域121に入る熱量を減らす断熱壁部分を有することができる。幾つかの実施形態では、当該壁部分は、取り外し可能なパネル130を含むことができるか、または取り外し不可能な断熱構造を含むことができる。他の実施形態では、断熱壁部分は、断熱エンクロージャ120の端部に覆い被さる天井部分122に連結された軟質可撓性の断熱材から形成することができる。
【0024】
複数の断熱エンクロージャ120を互いに連結させるために、断熱エンクロージャ群120の各断熱エンクロージャは、隣接する断熱エンクロージャ120の側にある位置合わせ機構と嵌合するように構成される位置合わせ機構を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャ120は、断熱エンクロージャ120を配列して位置決めするのに役立ち得るガイドを含むことができる。一旦、位置合わせされると、断熱エンクロージャ120は、ボルト、クランプ、または異なる接続装置を使用して互いに連結させることができる。
【0025】
図示の実施形態では、最も近い断熱エンクロージャ120の側面部分群123のうちの1つの側面部分を形成する、パネル群130のうちの1つのパネルが、フレーム126から切り離されることにより、側壁112が剥き出しになり、断熱エンクロージャ120内の作業者が、側壁112を形成するレンガに近づいてレンガの処理を行なうことができる。したがって、側面部分123を形成するパネル130をフレーム126から切り離すことにより、作業者は炉室110の側壁112を補修することができる。同様に、床部分124を形成するパネル130をフレーム126から切り離すことにより、炉室110の床111が剥き出しになり、それにより、作業者が床111を補修することができる。例えば、炉101の操業中、硬化後のコークスが、床111を形成するレンガに付着する可能性があり、コークスを炉室110から取り出すことにより、これらのレンガの一部が砕け落ちてコークスと一緒に取り出され、これにより、床111がデコボコになる場合がある。したがって、床部分124を形成するパネル130をフレーム126から切り離すことにより、床111を剥き出しにすることができ、作業者は、レンガに近づいて床111を補修することができる。
【0026】
断熱エンクロージャ120により、作業者は炉室110を、選択した任意の補修技術を使用して補修することができる。例えば、作業者は、損傷したレンガ、または不揃いのレンガを炉室110の剥き出し部分から選択的に取り出すことができ、取り出したレンガを新品のレンガに置き換えることができる。作業者は炉室を、いずれのレンガも取り出すことなく補修することもできる。例えば、炉室110内の温度が低下することにより鋳込み能力および耐火物の性能を向上させることができるので、作業者は、壊れたレンガを取り替える代わりに、床111にある壊れたレンガまたは不揃いのレンガの上に耐火物を鋳込んで床111を平らにすることができる。シリカ溶射およびショットクリートのような他の補修技術を使用して、炉室110を補修することもできる。
【0027】
断熱エンクロージャ120は、床111、側壁112、および/または頂部113から取り出されたレンガを炉室110から搬出する搬送システムを含むことができる。幾つかの実施形態では、搬送システムは、内側領域121内に延在するコンベヤベルトを含むことができる。作業者は、レンガをコンベヤベルトに載せ、コンベヤベルトは、レンガを炉室110から運び出すことができる。炉室110を点検または補修している間に、コンベヤベルト装置を使用して、作業者が使用するレンガおよび/または他の供給物を断熱エンクロージャ120内に運び込むこともできる。
【0028】
断熱エンクロージャ120は、内側領域121内の温度を調節するのに役立つように構成された追加の冷却および断熱装置を含むこともできる。例えば、断熱エンクロージャ120は、炉101の外部からの冷気を内側領域121内に循環させ、および/または内側領域121の内部からの暖気を断熱エンクロージャ120の外部に吹き出させるファンを含むことができる。幾つかの実施形態では、これらのファンは、断熱エンクロージャ120内に配置することができるか、または断熱エンクロージャ120の外部に配置することができる。複数の断熱エンクロージャ120が互いに連結され、炉室110内に延在している実施形態では、ファンは、空気を炉室110の一方の端から他方の端まで吹き付けることができる。ファンは、内側領域121内の空気圧を調節および制御することもできる。他の実施形態では、断熱エンクロージャ120は、炉室110の外部から冷気を内側領域121内に取り入れる配管を含むことができる。配管は、断熱することができ、空気圧縮機またはファンに連結して冷気を配管内から押し出すことができる。さらに、幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャ120は、床部分124に連結される流体膜を含むことができる。流体膜は、流体源に連結させることができ、流体ポンプは、流体を、流体膜を通って循環させて、流体膜上にいる作業者、または流体膜の近くの作業者の足を冷却することができる。
【0029】
前に説明したように、炉101は装入されていないが、炉室110を完全に冷却する必要がない場合、断熱エンクロージャ120を使用して炉室110を点検および補修することができる。したがって、レンガは、断熱エンクロージャ120が炉室110に挿入されるとき、依然として熱い可能性がある。例えば、幾つかの実施形態では、レンガは、炉101が装入されている場合に2000°Fを超える可能性があり、炉101が装入されていない場合に約1000°Fになる可能性がある。しかしながら、炉が極めて長い間、装入されておらず、レンガがセラミック材料の熱的容積的に安定な温度以下に冷却された場合、レンガが縮む可能性があり、これにより、レンガがずれて移動し、炉室110をさらに補修する必要が生じ得る。例えば、頂部113を形成するレンガは、これらのレンガが、熱的容積的に安定な温度以下に冷却される場合に縮んで、断熱エンクロージャ120の方へ落下する可能性があり、これにより、頂部113が崩落する可能性がある。したがって、天井部分122は、レンガが断熱エンクロージャ120内の作業者の上に落下するのを防止することにより、安全機能を果たすことができる。
【0030】
レンガが熱的容積的に安定な温度以下に冷却されるのを防止するために、幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャ120は、断熱エンクロージャ120の外側表面に連結され、熱を頂部113、側壁112、および床111の方に向けるように配置される1つ以上の外部加熱装置を含むことができる。これらの実施形態のうち幾つかの実施形態では、外部加熱装置は電気加熱装置とすることができる。他の実施形態では、外部加熱装置は1つ以上の化学燃焼装置を含むことができる。外部加熱装置は、熱をレンガの方に向けて、レンガを熱的容積的に安定な温度以上に保つことができ、そのため、レンガは、炉室110が補修されている間に縮むことがない。したがって、外部加熱装置は、レンガを縮めずに、作業者が炉室110を長期間にわたって作業することができるように役立ち得る。しかしながら、他の実施形態では、断熱エンクロージャ120は外部加熱装置を含まない。代わりに、炉室110の温度は、断熱エンクロージャ120が炉室110に挿入されると監視されて、温度が熱的容積的に安定な温度に近づくと断熱エンクロージャ120を取り出すことができるようにしている。熱を、単一の煙道118を介して隣接する炉から加えて、補修中の炉をレンガの安定性を維持するのに十分な温度に戻すことができる。あるいは、断熱エンクロージャ120を取り出し、炉室内の温度が選択した温度に達するまで、炉を上述の手段のいずれかの手段により再び加熱することができる。このようにして、断熱エンクロージャ120を炉室110内に短期間だけ置くことができ、レンガが熱的容積的に安定な温度以下に冷却されて縮むのを防止することができる。一旦、炉室110が、選択した温度に達すると、断熱エンクロージャ120を炉室110に再び挿入して、さらなる補修を行なうことができる。このプロセスは、必要な補修の全てが行なわれるまで繰り返すことができる。
【0031】
断熱エンクロージャ120は、炉室110に位置決め装置を使用して挿入することができる。幾つかの実施形態では、位置決め装置はフォークリフトを含む。図5は、断熱エンクロージャ120が炉室110にフォークリフト140を使用して挿入されているときの等角図を示している。図示の実施形態では、フォークリフト140は、断熱エンクロージャ120の天井部分122に係合することにより断熱エンクロージャを持ち上げる。他の実施形態では、フォークリフト140は、断熱エンクロージャ120の異なる部分と係合して、断熱エンクロージャ120の重量を支えることができる。例えば、幾つかの実施形態では、フォークリフト140は、床部分124と係合することができるか、または側面部分123に沿って配置される取り付け位置と係合することができる。しかしながら、他の実施形態では、断熱エンクロージャ120は炉室110に、異なる位置決め装置を使用して挿入することができる。例えば、幾つかの実施形態では、掘削機のような建設機械を使用して、断熱エンクロージャ120を持ち上げて配置することができる。さらに他の実施形態では、位置決め装置は、可動構造物(例えば、鉄道車両)、および押し出し機構(例えば、ラム)を含むことができる。断熱エンクロージャ120は、可動構造物の上に配置することができ、可動構造物が炉室110の入口に位置合わせされると、炉室110内に押し出し機構で押し込むことができる。
【0032】
位置決め装置は、断熱エンクロージャ120を炉室110から取り出すために使用することもできる。例えば、フォークリフト140を使用して断熱エンクロージャ120を炉室110に挿入する実施形態では、フォークリフト140は、断熱エンクロージャ120を持ち上げて、炉室110から引き出すことができる。同様に、押し出し機構を使用して、断熱エンクロージャ120を炉室110から引き出すことができる。断熱エンクロージャ120は、フレームに連結される取り付け機構を含むことができ、取り付け機構は、押し出し機構に連結される第2の取り付け機構に解放可能に連結可能とすることができ、押し出し機構を使用して断熱エンクロージャ120を炉101から、取り付け機構を使用して引き出すことができる。幾つかの実施形態では、取り付け機構は、互いに連結して断熱エンクロージャ120を押し出し機構に取り付ける環状部を含む。幾つかの実施形態では、取り付け機構を使用して、断熱エンクロージャ120を炉室に押し込むこともできる。
【0033】
図6は、断熱エンクロージャを使用してコークス炉の炉室を、炉室内の温度が、昇温状態を下回ることなく補修する方法600を示している。ステップ605では、炉室を補修が必要な全ての部分について点検する。これらの部分は、床部分、側壁、および/もしくは頂部の亀裂もしくは壊れたレンガ、またはずれて移動したレンガのような視覚的に診断することができる欠陥を含み得る。これらの部分は、壊れているようには、または欠陥があるようには見えないが、古くなりより新しいレンガに取り替える必要がある、より古いレンガも含み得る。
【0034】
ステップ610では、炉室の前扉および/または後扉を取り外す。炉室の特定した部分が炉室の前面に近い場合、前扉のみを取り外すことができるのに対し、炉室の特定した部分が炉室の後面に近い場合、後扉のみを取り外すことができる。しかしながら、特定した部分が炉室の中央にある場合、および/または炉室の前面および後面の両方に近い場合、前扉および後扉の両方を取り外すことができる。幾つかの実施形態では、前扉および/または後扉は、炉室が所定の温度に達する前に取り外すことができ、炉室内の冷却速度を速める。
【0035】
ステップ615では、炉の装入物を取り出して、炉を所定の温度に冷却することができるようにする。幾つかのコークス炉は2000°F超の温度で操業することができ、断熱エンクロージャが作業者を熱から保護する必要がある。したがって、作業者が炉室に入ることができる前に炉を停止して炉室を冷却することができるようにする必要がある。しかしながら、コークス炉は通常、コークスを形成するために補助的な熱源を使用することがなく、代わりに、石炭が燃焼して炉室を加熱するときに石炭から発生する熱に頼っている。その結果、コークス炉を冷却することは、多くの場合、コークスを炉室から、新しい石炭を追加することなく取り出すことを含む。装入物をコークス炉から取り出した後、温度が所定の温度に達するまで、炉室を冷却することができる。幾つかの実施形態では、所定の温度は、レンガがほとんど縮むことはないようなレンガの熱的容積的に安定な温度と同様とすることができる。例えば、レンガがシリカから形成される実施形態では、温度が約1200°Fに達するまで炉室を冷却させることができる。しかしながら、レンガがアルミナから形成される実施形態では、炉室を1200°Fを下回る温度まで冷却させることができる。一般に、所定の温度は、炉のタイプおよびレンガの組成に基づいて選択することができ、炉室が冷却されたとき、レンガは、ほとんど縮むことがなく、変形することがないようにする。
【0036】
ステップ620では、1つ以上の断熱エンクロージャを炉室に挿入することができる。1つ以上の断熱エンクロージャは、フレームに連結される取り外し可能な断熱材パネルを含むことができ、1つ以上の断熱エンクロージャが、特定した1つ以上の部分の上に配置されるまで、炉室に機械(例えば、フォークリフトまたは押し出し機構)を使用して挿入することができる。ステップ620aでは、断熱エンクロージャは、連結機構を含むことができ、連結機構を使用して互いに連結されて、炉室の前面入口および/または後面入口から、特定した部分に至る通路を形成することができる。
【0037】
断熱エンクロージャは、コンパクト構成と拡大構成との間で移動可能とすることができ、コンパクト構成になっているときに、炉室に挿入することができる。ステップ625では、断熱エンクロージャをコンパクト構成から拡大構成に1つ以上のジャッキを使用して移動させることができる。幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャを拡大構成に移動させることにより、断熱エンクロージャの高さを高くして、断熱エンクロージャの天井部分が炉室の頂部により近くなるようにし、作業者が断熱エンクロージャ内でより快適に立って作業することができるようにする。他の実施形態では、断熱エンクロージャを拡大構成に移動させることにより、断熱エンクロージャの幅を大きくして、断熱エンクロージャの側面部分が炉室の側壁により近くなるようにすることができる。さらに他の実施形態では、断熱エンクロージャを拡大構成に移動させることにより、断熱エンクロージャの高さ、および幅の両方を大きくすることができる。
【0038】
ステップ625aでは、断熱エンクロージャは任意であるが、断熱エンクロージャ内の作業者をさらに冷却するために使用される冷却装置と、断熱エンクロージャの外側に連結されてレンガを加熱して、それにより、レンガが、炉室が補修されている間に冷却されて縮むことがないようにする外部加熱装置と、を含むことができる。幾つかの実施形態では、冷却装置は、ファン、冷却流体を断熱エンクロージャ全体に循環させる流体膜、冷気を炉の外部から取り入れることができる断熱配管などを含むことができるのに対し、外部加熱装置は、電気ヒーターおよび/または化学燃焼装置を含む。代替実施形態によれば、隣接する操業炉からの熱は、補修中またはクリーニング中の炉に単一の煙道を介して伝達され得る。一旦、断熱エンクロージャが拡大構成になると、冷却装置および外部加熱装置を作動させることができる。
【0039】
ステップ630では、取り外し可能な断熱材パネル群のうち1つ以上の断熱材パネルをフレームから取り外して、炉の特定した1つ以上の部分を剥き出しにすることができる。パネルは、断熱エンクロージャの側面部分、天井部分、および床部分に沿って配列させることができるので、炉室の側壁、床、および/または頂部にある特定した部分に断熱エンクロージャ内の作業者が近づくことができる。
【0040】
ステップ635では、炉室の特定した1つ以上の部分を補修する。特定した1つ以上の部分を補修することは、損傷したレンガを取り替えることと、耐火物を床のデコボコ表面に鋳込むことと、レンガへのシリカ溶射を行なってレンガを一体にすることと、および/またはショットクリートを使用することと、を含むことができる。他のクリーニング技術および補修技術を使用することもできる。
【0041】
ステップ640では、特定した部分を補修した後、取り外し可能な断熱材パネルをフレームに再び取り付けて補修されたばかりの特定した部分を覆う。
【0042】
ステップ645では、断熱エンクロージャを拡大構成からコンパクト構成に移動させることができる。
【0043】
ステップ650aでは、断熱エンクロージャを任意であるが、互いから切り離し、(例えば、フォークリフトまたは押し出し機構を使用して)炉室から取り出すことができる。ステップ650では、断熱エンクロージャを炉から取り出すことができる。幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャは、コンパクト構成に移動させる前に互いから切り離すことができるのに対し、他の実施形態では、断熱エンクロージャは、コンパクト構成に移動させた後に互いから切り離すことができる。
【0044】
ステップ655では、炉に石炭を装入することができる。ステップ660では、前扉および/または後扉を炉室に再び取り付ける。幾つかの実施形態では、炉を加熱することは、石炭を炉室内に堆積させることと、扉を閉めて炉室内の潜熱で石炭を燃焼させ、これにより炉を元通り加熱することと、を含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、追加の熱源または隣接する炉からの熱を使用して炉室を元通り昇温状態に加熱することができる。
【0045】
これまでの説明から、開示される技術の幾つかの実施形態が例示の目的で本明細書において説明されてきたが、様々な変更を本技術から逸脱することなく行なうことができることを理解するであろう。例えば、幾つかの実施形態では、断熱エンクロージャは、拡大構成またはコンパクト構成とすることができるが、拡大構成とコンパクト構成との間で移動可能とすることができない。断熱エンクロージャは、任意の適切なタイプの断熱材を使用して断熱することができ、任意の適切な冷却機構を使用して冷却することができる。より一般的には、断熱エンクロージャは、任意のタイプの炉内で、または加熱炉内で使用されて、作業者が炉室または加熱炉に近づいて炉室または加熱炉を補修することができる。
【0046】
特定の実施形態の文脈で説明される本技術の特定の態様は、他の実施形態において組み合わせることができるか、または削除することができる。例えば、断熱エンクロージャは、断熱材なしで形成することができる、および/またはパネル群のうち幾つかのパネルは、取り外すことができない。さらに、開示される技術の幾つかの実施形態に関連する利点が本明細書において説明されているが、異なる特性を有する構成は、このような利点を示すこともでき、全ての構成が、本技術の範囲内に収まるために必ずしもこのような利点を示す必要がある訳ではない。したがって、本開示および関連する技術は、本明細書において明示的に示されていないか、または説明されていない他の取り合わせを包含することができる。以下の例は、本技術のさらなる代表的な説明を提供する。
【0047】
1.床部分、天井部分、および床部分と天井部分との間に延在する対向する第1および第2側面部分により画定される内側領域を有する断熱エンクロージャであって、断熱エンクロージャは、
フレーム部分と、
フレーム部分に解放可能に連結される複数のパネルと、を備え、
複数のパネルは、床部分、天井部分、ならびに第1および第2側面部分を少なくとも部分的に画定し、
パネル群の個々のパネルは、断熱材部分と、断熱材部分に連結される裏当て部分と、を含み、
断熱エンクロージャは、第1構成と第2構成との間で移動可能であり、
内側領域は、断熱エンクロージャが第1構成になっているときに第1の高さを有し、エンクロージャが第2構成になっているときに第1の高さよりも低い第2の高さを備える、断熱エンクロージャ。
【0048】
2.断熱エンクロージャが第1構成になっているときの天井部分と第1側面部分との間の第1の隙間、および天井部分と第2側面部分との間の第2の隙間と、
第1および第2の隙間を覆うように天井部分に連結される断熱材と、をさらに備える、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0049】
3.フレーム部分に連結される少なくとも1つのジャッキをさらに備え、少なくとも1つのジャッキは、断熱エンクロージャを第1構成と第2構成との間で移動させるように構成されている、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0050】
4.少なくとも1つのジャッキは機械式ジャッキを含む、例3に記載の断熱エンクロージャ。
【0051】
5.冷気を断熱エンクロージャの外部から内側領域内に循環させるために使用される冷却装置をさらに備える、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0052】
6.熱を発生させるために使用される外部加熱装置をさらに備え、外部加熱装置は、断熱エンクロージャの外側表面に連結され、発生した熱を内側領域から離れる方向に向けるように配置される、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0053】
7.内側領域は、断熱エンクロージャが第1構成になっているときの第1の幅、および断熱エンクロージャが第2構成になっているときの、第1の幅よりも小さい第2の幅を備える、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0054】
8.断熱材部分はセラミック材料を含み、裏当て部分は金属を含む、例1に記載の断熱エンクロージャ。
【0055】
9.床、頂部、および床と頂部との間に延在する側壁により画定される炉室を有するコークス炉を補修する方法であって、コークス炉は、床、頂部、および側壁を形成する複数のレンガを含み、方法は、
断熱エンクロージャを炉室に挿入することであって、
断熱エンクロージャは、フレーム部分に取り外し可能に連結される複数のパネルを含み、
断熱エンクロージャは、第1構成と第2構成との間で移動可能であり、
断熱エンクロージャを炉室に挿入することは、断熱エンクロージャが第1構成になっているときに、断熱エンクロージャを炉室に挿入することを含む、挿入することと、
断熱エンクロージャを第1構成から第2構成に移動させることと、
パネル群のうち少なくとも1つのパネルをフレーム部分から取り外して床、頂部、および側壁のうち少なくとも1つを剥き出しにすることと、
レンガ群のうち少なくとも1つのレンガを補修することと、
少なくとも1つのパネルをフレーム部分に再び取り付けることと、
断熱エンクロージャを第1構成に移動させることと、
断熱エンクロージャを炉室から取り出すことと、を含む、方法。
【0056】
10.断熱エンクロージャは第1の断熱エンクロージャを備え、断熱エンクロージャを炉室に挿入することは、第1の断熱エンクロージャを炉室に挿入することを含み、方法は、
断熱エンクロージャを第1構成から第2構成に移動させる前に、第2の断熱エンクロージャを炉室に、第1の断熱エンクロージャに隣接して挿入することと、
第1の断熱エンクロージャを第2の断熱エンクロージャに連結させることと、を含む、例9に記載の方法。
【0057】
11.フレーム部分は第1フレーム部分を含み、
複数のパネルは、第1の複数のパネルを含み、
第2の断熱エンクロージャは、第2フレーム部分に連結される第2の複数のパネルを含み、
第2の断熱エンクロージャは、第1構成から第2構成に移動可能であり、
断熱エンクロージャを第1構成から第2構成に移動させることは、第1の断熱エンクロージャおよび第2の断熱エンクロージャを第1構成から第2構成に移動させることを含む、例10に記載の方法。
【0058】
12.断熱エンクロージャを炉室に挿入する前に、炉室の一部分を特定することをさらに含み、
断熱エンクロージャを炉室に挿入することは、断熱エンクロージャを、特定した部分の上に配置することを含み、
少なくとも1つのパネルをフレーム部分から取り外して、床、頂部、および側壁のうちの少なくとも1つを剥き出しにすることは、少なくとも1つのパネルを取り外して、特定した部分を剥き出しにすることを含み、
特定した部分は、少なくとも1つのレンガを含む、例9に記載の方法。
【0059】
13.少なくとも1つのレンガは第1のレンガを含み、
少なくとも1つのレンガを補修することは、第1のレンガを第2のレンガと取り替えることを含む、例9に記載の方法。
【0060】
14.コークス炉は、石炭を第1温度で燃焼させ、コークス炉の周りの空気を第1温度よりも低い第2温度にするように構成されている、方法は、
断熱エンクロージャを炉室に挿入する前に、炉室を第1温度から、第1温度よりも低く、第1温度よりも高い第3第2温度に冷却することと、
断熱エンクロージャを炉室から取り出した後に、炉室を第1温度に加熱することと、をさらに含む、例9に記載の方法。
【0061】
15.床、頂部、および床と頂部との間に延在する側壁により画定される炉室を有する炉を補修する炉補修システムであって、コークス炉は、床、頂部、および側壁を形成する複数のレンガを含み、炉補修システムは、
炉室に挿入可能であり、床部分、天井部分、および床部分と天井部分との間に延在して対向する第1および第2側面部分により画定される内側領域を有する断熱エンクロージャであって、
フレーム部分、および
フレーム部分に取り外し可能に連結される複数のパネル、を備え、
複数のパネルは、床部分、天井部分、ならびに第1および第2側面部分を少なくとも部分的に画定し、
パネル群の個々のパネルは、断熱材部分と、断熱材部分に連結される裏当て部分と、を含む、断熱エンクロージャと、
位置決め装置であって、挿入装置は、断熱エンクロージャを炉室に挿入する、位置決め装置と、を備える、炉補修システム。
【0062】
16.断熱エンクロージャは第1の断熱エンクロージャを含み、内側領域は第1の内側領域を含み、炉補修システムは、
炉室に挿入可能な第2の断熱エンクロージャをさらに備え、
位置決め装置は、第2の断熱エンクロージャを炉室に、第1の断熱エンクロージャに隣接して挿入するように構成され、
第2の断熱エンクロージャは第1の断熱エンクロージャに連結可能であり、
第2の断熱エンクロージャは第2の内側領域を含み、
第1の内側領域および第2の内側領域は、第1および第2の断熱エンクロージャが互いに連結されると、互いに流体接続される、例15に記載の炉補修システム。
【0063】
17.断熱エンクロージャは、第1構成と第2構成との間で移動可能であり、
天井部分は頂部から、断熱エンクロージャが第1構成になっているときに第1距離だけ分離され、断熱エンクロージャが第2構成になっているときに第1距離よりも大きい第2距離だけ分離される、例15に記載の炉補修システム。
【0064】
18.天井部分の外側表面に連結される断熱材をさらに備え、天井部分は側面部分から、断熱エンクロージャが第1構成になっているときの隙間だけ分離され、断熱材は、隙間の上に延在している、例17に記載の炉補修システム。
【0065】
19.断熱エンクロージャが炉室に挿入されると、床部分は、炉の床に隣接して配置され、第1側面部分は、側壁群のうちの第1側壁に隣接して配置され、第2側面部分は、側壁群のうちの第2側壁に隣接して配置され、天井部分は、頂部に隣接して配置される、例15に記載の炉補修システム。
【0066】
20.複数のパネルは、フレーム部分から取り外されるように構成される第1パネルを含み、
レンガのうちの少なくとも1つのレンガは、第1パネルがフレーム部分から切り離されると、内側領域に対して剥き出しになる、例15に記載の炉補修システム。
【0067】
参照により本明細書に組み込まれる資料が本開示と矛盾する限りにおいては、本開示が必ず優先する。本明細書において使用されるように、「A and/or B」のような「and/or(および/または)」というフレーズは、A単独、B単独、ならびにAおよびBの両方を指している。以下の例は、本技術のさらなる代表的な特徴を提供する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6