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特許7154237コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物及び液状経口用組成物の酸味を緩和する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物及び液状経口用組成物の酸味を緩和する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/18 20160101AFI20221007BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20221007BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20221007BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221007BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221007BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L2/00 D
A23L2/00 J
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L33/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019570704
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003163
(87)【国際公開番号】W WO2019155956
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018022436
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡田 恵
(72)【発明者】
【氏名】今尾 孝子
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/50922(WO,A1)
【文献】特開2013-081418(JP,A)
【文献】特開2019-010087(JP,A)
【文献】特開2002-51734(JP,A)
【文献】特開2018-061510(JP,A)
【文献】Mintel GNPD - Peach & Muscat Drink, Jan. 2018, #5353049, [retrieved on 2019.04.17]
【文献】Mintel GNPD - Milk Flavor Three Berry & Grain Smoothie, Nov. 2017, #5261593, [retrieved on 2019.04.19]
【文献】「新規増粘安定剤「ウェランガム」本格販売,三栄原エフ・エフ・アイ,月刊フードケミカル,2016年,vol.32, no.5,p.7-8
【文献】ウェランガムの基礎物性と各種飲料への応用,月刊フードケミカル,2016年,vol.32, no.11,p.12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンペプチド、ウェランガム及び酸味料を含み、pHが3.0~4.0である液状経口用組成物。
【請求項2】
前記コラーゲンペプチドの含有量が600~20000mg/100mLである請求項1に記載の液状経口用組成物。
【請求項3】
前記ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)が20~100である請求項1又は2に記載の液状経口用組成物。
【請求項4】
粘度が30~500mPa・sである請求項1~3のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項5】
前記ウェランガムの含有量が50~400mg/100mLである請求項1~4のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項6】
前記酸味料が、クエン酸又はその塩、及び/又は、リン酸又はその塩である請求項1~5のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項7】
さらに、甘味料を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項8】
さらに、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項9】
飲料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項10】
コラーゲンペプチド及び酸味料を含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物にウェランガムを配合する、前記組成物の酸味を緩和する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物に関する。本発明はまた、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の酸味を緩和(低減)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンペプチドは、肌の保湿性、弾力性を向上するなどの美肌効果や、血液流動性を改善する効果など様々な機能を有することが明らかとなり、近年、多くの飲料、食品、化粧品等に配合されている。
【0003】
コラーゲンペプチドを含有する経口用組成物として、飲料が多く採用されている。飲料においては、保管中に腐敗の原因となる微生物の増殖を抑制するため、pHを低く調整することが重要である。しかしながら飲料は低pH域では酸味を呈し、酸味が強すぎる場合は風味が損なわれて飲用に適さないものとなってしまう。食品の酸味を改善する方法について検討が行われており、特許文献1には、D-マンノースがクランベリー果実の強い酸味を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-170342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コラーゲンペプチドには、pH緩衝能を有することが知られている。このため、液状経口用組成物中にコラーゲンペプチドを含有させる場合は、そのpH緩衝能の影響を無視できなくなる。特に、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物のpHを、防腐性に有効な低いpH、例えばpH4.0以下に調整するためには、多量の酸味料が必要となる。その結果、液状経口用組成物の酸味が非常に強く感じられるようになり、経口摂取に適さない風味となる。
【0006】
本発明は、コラーゲンペプチドを含み、pH3.0~4.0のpH領域において、酸味が緩和されて経口摂取しやすい液状経口用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合すると、pHを3.0~4.0としても、該組成物の酸味を効果的に緩和することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の液状経口用組成物等に関する。
〔1〕コラーゲンペプチド、ウェランガム及び酸味料を含み、pHが3.0~4.0である液状経口用組成物。
〔2〕上記コラーゲンペプチドの含有量が600~20000mg/100mLである上記〔1〕に記載の液状経口用組成物。
〔3〕上記ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)が20~100である上記〔1〕又は〔2〕に記載の液状経口用組成物。
〔4〕粘度が30~500mPa・sである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔5〕上記ウェランガムの含有量が50~400mg/100mLである上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔6〕上記酸味料が、クエン酸又はその塩、及び/又は、リン酸又はその塩である上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔7〕さらに、甘味料を含む上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔8〕さらに、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔9〕飲料である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔10〕コラーゲンペプチド及び酸味料を含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物にウェランガムを配合する、上記組成物の酸味を緩和する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コラーゲンペプチドを含み、pH3.0~4.0のpH領域において、酸味が緩和されて経口摂取しやすい液状経口用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<液状経口用組成物>
本発明の液状経口用組成物は、コラーゲンペプチド、ウェランガム及び酸味料を含み、pHが3.0~4.0である。
【0011】
<コラーゲンペプチド>
本発明において用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲン、又は、ゼラチン等の変性コラーゲンを酵素、酸、アルカリ等で加水分解処理することで得ることができる。コラーゲンペプチドの由来及び製法は特に限定されるものではない。人工的に合成したコラーゲンペプチドを用いることもできる。コラーゲンペプチドは1種のコラーゲンペプチドを単独で用いてもよく、2種以上のコラーゲンペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0012】
コラーゲンペプチドの原料となるコラーゲン又はゼラチンは、ウシ、ブタ、ニワトリ、魚類等に由来するものでよく、これらの1種又は2種以上を原材料として用いることができる。一態様において、魚類由来のコラーゲンが好ましい。魚類は、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ、ナマズ等が挙げられる。
【0013】
コラーゲンペプチドの調製に用いる酵素としては、コラーゲン又はゼラチンのペプチド結合を切断することができるものであればよく、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等が挙げられる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
【0014】
本発明においては、加水分解されたコラーゲンペプチドの水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥等により粉末化したものを用いてもよい。また、当該水溶液に通常用いられる精製処理を施したものを、水溶液や粉末等の形態として用いてもよい。コラーゲンペプチドは、市販品を用いることもできる。
【0015】
本発明で用いられるコラーゲンペプチドの平均分子量は特に限定されないが、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、さらにより好ましくは2000以下、特に好ましくは1000以下、最も好ましくは800以下である。平均分子量が5000以下であると、経口で摂取したときのコラーゲンペプチドの体内吸収性が高いため好ましい。また、コラーゲンペプチドの平均分子量が小さいと体内吸収性は増大するが、平均分子量がより大きいコラーゲンペプチドと比較して、緩衝能が高い傾向がある。このためコラーゲンペプチドの平均分子量が小さいと、液状経口用組成物のpHを3.0~4.0に調整するためにより多量の酸味料が必要となる傾向がある。液状経口用組成物のpHを3.0~4.0とした場合に、該組成物の酸味を効果的に緩和する観点から、コラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上である。本明細書において、上限及び下限は、いずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
一態様において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは300~5000であり、より好ましくは300~4000であり、さらに好ましくは300~3000であり、さらにより好ましくは350~2000であり、特に好ましくは400~1000であり、最も好ましくは400~800である。本発明においては、ウェランガムを配合することにより、平均分子量が上記範囲であるコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物のpH3.0~4.0としても、該組成物の酸味を効果的に緩和して、経口摂取しやすいものとすることが可能である。
【0016】
本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、重量平均分子量である。本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、中国国家標準規格(GB規格)GB/T 22729-2008 フィッシュオリゴペプチドパウダーに関する相対分子質量測定法にて測定した値を意味する。ただし、M,451及びM,189の試薬については、代替品を用いる。
本法での平均分子量は、あらかじめ分子量が既知である細胞色素C(cytochrome, M,6500)、トラジロール(aprotinin, M,12500)、バシラス菌(bacitracin, M,1450)、グリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(M,451)、グリシン-グリシン-グリシン(M,189)を同条件で測定して得られたリテンションタイムと相対分子量の対数の関係の相対分子質量較正曲線を元に算出する。本発明における平均分子量とは、この手法に従って各標準品換算で算出した重量平均分子量を言う。
【0017】
コラーゲンペプチドは市販品を用いてもよく、好ましい平均分子量のコラーゲンペプチドを使用することができる。市販品として、例えば、「イクオスHDL-30DR」(新田ゼラチン(株)製)、「コラペプPU」(新田ゼラチン(株)製)、「TYPE-S」(新田ゼラチン(株)製)、「HACP」(ゼライス(株)製)等を用いることができる。
【0018】
一態様において、本発明におけるコラーゲンペプチドは、ジペプチドであるPro-Hyp(プロリルヒドロキシプロリン(以下、PO))及び/又はHyp-Gly(ヒドロキシプロリルグリシン(以下、OG))を多く含むことが好ましく、PO及びOGを多く含むことがより好ましい。このようなジペプチドを含むコラーゲンペプチドは、有用性が高い。
【0019】
コラーゲンペプチド中のPO及びOGの合計含有量は、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%である。
上記のPO及びOGの含有量は、公知の方法で測定でき、例えば、LC/MS/MSなどの装置を用いて測定することができる。PO及びOGの合計含有量が上記範囲であるコラーゲンペプチドは、緩衝能が高く、該コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物のpHを3.0~4.0とした場合に、該組成物の酸味が特に強くなる傾向がある。本発明によれば、このようなコラーゲンペプチドを含む、pH3.0~4.0の液状経口用組成物の酸味を効果的に緩和することが可能である。
【0020】
本発明の液状経口用組成物中のコラーゲンペプチドの含有量は、600~20000mg/100mLが好ましい。コラーゲンペプチドの含有量が上記範囲であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。また、コラーゲンペプチドの含有量が20000mg/100mLを超えると、pH3.0~4.0において酸味を緩和するためにウェランガムの配合量が多くなる場合がある。その結果液状経口用組成物の粘度が高くなり、飲料とする場合に飲用しにくいものとなる場合がある。コラーゲンペプチドの含有量は、液状経口用組成物中に1000mg/100mL以上がより好ましく、2000mg/100mL以上がさらに好ましく、また、10000mg/100mL以下がより好ましく、7500mg/100mL以下がさらに好ましい。一態様において、コラーゲンペプチドの含有量は、液状経口用組成物中に1000~10000mg/100mLがより好ましく、2000~7500mg/100mLがさらに好ましい。上記含有量は、コラーゲンペプチドを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0021】
<ウェランガム>
本発明で用いられるウェランガムは、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られた多糖類を主成分とするものである。ウェランガムは、市販品を使用することができる。ウェランガムの市販品として、三栄源エフ・エフ・アイ(株)のビストップ(登録商標)W等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合することにより、pH3.0~4.0のpH領域において該組成物の酸味を緩和することができる。後記の実施例に示されるように、コラーゲンペプチドを含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物にウェランガムを配合すると、該液状経口用組成物の飲み口の酸味(口に含んだときに感じられる酸味又は先味の酸味)及び酸味の後引き(後味の酸味又は持続感)が緩和(低減)された。
【0023】
本発明の液状経口用組成物中のウェランガムの含有量は、50~400mg/100mLが好ましい。ウェランガムの含有量が上記範囲であると、液状経口用組成物の酸味をより緩和することができる。また、ウェランガムの含有量が400mg/100mL以下であると、通常、液状経口用組成物の粘度が飲用可能なものとなる。ウェランガムの含有量は、酸味緩和の観点から、液状経口用組成物中に50mg/100mL以上が好ましく、80mg/100mL以上がより好ましく、100mg/100mL以上がさらに好ましい。酸味(特に酸味の後引き)を緩和できると共に、液状経口用組成物の粘度が飲用により適したものとなる観点から、ウェランガムの含有量は、液状経口用組成物中に375mg/100mL以下がより好ましく、250mg/100mL以下がさらに好ましく、200mg/100mL以下がさらにより好ましく、170mg/100mL以下が特に好ましい。一態様において、酸味の緩和及び飲用に適した粘度の観点から、ウェランガムの含有量は、液状経口用組成物中に80~375mg/100mLがより好ましく、80~250mg/100mLがさらに好ましく、100~200mg/100mLがさらにより好ましく、100~170mg/100mLが特に好ましい。
【0024】
本発明の液状経口用組成物において、ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)は、20~100が好ましい。液状経口用組成物中のウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比が上記範囲であると、液状経口用組成物の酸味をより緩和することができる。ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比は、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは90以下であり、さらに好ましくは70以下であり、特に好ましくは50以下である。一態様において、ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比は、より好ましくは25~100、さらに好ましくは30~90であり、さらにより好ましくは30~70、特に好ましくは30~50である。
【0025】
<酸味料>
本発明の液状経口用組成物は、酸味料を含有する。酸味料としては、飲食品に使用可能な酸又はその塩が好ましく、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸及びフマル酸からなる群より選択される1以上の酸又はその塩が挙げられる。塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。酸味料は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。酸味料には、遊離の酸だけを用いてもよいし、その塩だけを用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
一態様において、酸味料は、クエン酸又はその塩を含むことが好ましく、クエン酸を含むことがより好ましい。クエン酸又はその塩は、液状経口用組成物に自然な酸味を付与することができる。一方、緩衝能が高いコラーゲンペプチドに対して、クエン酸又はその塩によってpHを3.0~4.0に調整しようとすると、クエン酸又はその塩の配合量が多く、酸味が非常に強くなる場合がある。酸味を抑えつつ効果的にpHを下げることができる観点で、リン酸又はその塩を用いることも好ましい。リン酸又はその塩を使用する場合は、クエン酸又はその塩等の他の酸味料を併用すると、液状経口用組成物に渋味やえぐみが付与されることを抑えることができるため好ましい。
本発明において、酸味料は、好ましくは、クエン酸又はその塩、及び/又は、リン酸又はその塩であり、より好ましくは、クエン酸又はその塩、及び、リン酸又はその塩であるか、又は、クエン酸又はその塩である。酸味を抑えつつ液状経口用組成物のpHを3.0~4.0にすることができ、該組成物の風味がより良好となることから、酸味料は、リン酸又はその塩、及び、クエン酸又はその塩であることがさらに好ましく、リン酸及びクエン酸が特に好ましい。
【0027】
クエン酸の塩は特に限定されないが、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸カルシウムが挙げられる。クエン酸塩を用いるときには、1種のクエン酸塩だけを用いてもよいし、複数のクエン酸塩を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
リン酸には、オルトリン酸だけでなく、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、テトラメタリン酸、ペンタメタリン酸、ヘキサメタリン酸等の縮合したリン酸が含まれる。本発明においては、これらの化合物を、単独で、又は組み合わせてリン酸として用いることができる。リン酸の塩は、特に制限は無いが、例として、ピロリン酸ナトリウム(別名、二リン酸ナトリウム水和物及び無水物(例えば、二リン酸ナトリウム十水和物、ピロリン酸四ナトリウム(無水))双方を含む。)、酸性ピロリン酸ナトリウム(別名、ピロリン酸二水素二ナトリウム)、ピロリン酸カリウム(別名、ピロリン酸四カリウム)、トリポリリン酸ナトリウム(別名、三リン酸ナトリウム)、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、ペンタメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム(別名(食品添加物公定書等において)メタリン酸ナトリウム)、酸性メタリン酸ナトリウム(別名、メタリン酸水素ナトリウム)、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、及びこれらのいずれかの混合物を挙げることができる。
リン酸又はその塩として、好ましくは、オルトリン酸又はその塩を、さらに好ましくはオルトリン酸を用いることができる。
【0029】
酸味料の含有量は、酸味料の種類等に応じて設定することができ、液状経口用組成物のpHが3.0~4.0になる量を使用すればよい。酸味料の含有量は、例えば、液状経口用組成物中に、該酸味料の遊離酸量に換算した総含有量として100~3000mg/100mLが好ましく、300~2000mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、酸味料を複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。尚、本明細書において、「遊離酸量に換算した量」、又はこれに類する表現は、ある酸が遊離酸の形態である場合にはその量を、塩の形態である場合には、当該塩のモル数に、対応する遊離酸の分子量を乗じて得られる値を意味する。
【0030】
一態様において、酸味料としてクエン酸又はその塩、及び、リン酸又はその塩を使用する場合、液状経口用組成物の酸味の緩和及び風味の観点から、クエン酸又はその塩の含有量は、遊離酸量に換算したクエン酸又はその塩の総含有量として、液状経口用組成物中に100~2000mg/100mLが好ましく、200~1500mg/100mLがより好ましく、300~1500mg/100mLがさらに好ましい。リン酸又はその塩の含有量は、遊離酸量に換算したリン酸又はその塩の総含有量として、液状経口用組成物中に100~1000mg/100mLが好ましく、120~900mg/mLがより好ましく、200~800mg/100mLがさらに好ましい。
液状経口用組成物の酸味の緩和及び風味の観点から、遊離酸量に換算したリン酸又はその塩の総重量と、遊離酸量に換算したクエン酸又はその塩の総重量との重量比(遊離酸量に換算したリン酸又はその塩の総重量:遊離酸量に換算したクエン酸又はその塩の総重量)は、1:1~1:5が好ましく、1:1~1:3がより好ましい。
別の一態様において、酸味料がクエン酸又はその塩である場合、クエン酸又はその塩の含有量は、遊離酸量に換算したクエン酸又はその塩の総重量が、液状経口用組成物中に100~2000mg/100mLが好ましく、200~1500mg/100mLがより好ましい。
【0031】
<他の成分等>
本発明の液状経口用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
本発明の液状経口用組成物は、甘味料を含むことが好ましい。甘味料を含有させると、適度な甘味を付与することができ、液状経口用組成物の酸味がより緩和され、より好ましい風味を呈するものとなる。甘味料は特に限定されず、糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられ、1種又は2種を組み合わせて用いることができる。
【0032】
糖として、単糖、二糖、三糖以上の多糖(オリゴ糖を含む)等が挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコールとして、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元パラチノース等が挙げられる。中でも、エリスリトールがより好ましい。糖及び糖アルコールの含有量は、適度な甘味が付与され、風味がより良好となることから、糖及び糖アルコールの合計含有量として、液状経口用組成物中に1000~15000mg/100mLが好ましく、3000~10000mg/100mLがより好ましい。
【0033】
高甘味度甘味料は、砂糖よりも甘味度の高い甘味料を意味し、その具体例としては、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウム、ネオテーム等が挙げられる。中でも、アセスルファムK、スクラロースが好ましい。高甘味度甘味料の含有量は、適度な甘味が付与され、風味がより良好となることから、液状経口用組成物中に、1~50mg/100mLが好ましく、3~30mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、高甘味度甘味料を複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
一態様において、本発明の液状経口用組成物は、糖又は糖アルコールと、高甘味度甘味料とを含むことが好ましく、アセスルファムK、スクラロース及びエリスリトールを含むことがより好ましい。このような甘味料を含有すると、液状経口用組成物の風味がより良好となる。一態様において、風味の観点から、液状経口用組成物は、アセスルファムK、スクラロース及びエリスリトールを上記量含むことが好ましい。
【0034】
本発明の液状経口用組成物は、コラーゲンペプチドに加えて、その他の生体内機能性を有する素材、例えば、皮膚改善効果が知られている素材を含んでもよい。皮膚改善効果が知られている素材として、例えば、プロテオグリカン、エラスチンペプチド、セラミド、植物エキス、コンドロイチン硫酸、グルコサミン類、ミネラル(カルシウム等)、ビタミン類(L-アスコルビン酸(ビタミンC)等)等が挙げられる。
【0035】
一態様においては、液状経口用組成物は、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含んでもよい。プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含むと、液状経口用組成物のpHを3.0~4.0とした場合に、酸味がより強く感じられる場合がある。本発明においては、液状経口用組成物がコラーゲンペプチドと共にプロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む場合でも、pH3.0~4.0のpH領域において液状経口用組成物の酸味を緩和することができる。
【0036】
プロテオグリカンとは、コアとしてのタンパク質に、コンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸等のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)が共有結合している化合物の総称である。これは、動物の軟骨、皮膚などの結合組織中に存在し、これらの組織の構造を維持するために必要な物質である。
本発明に用いられるプロテオグリカンの種類、由来及び製法は特に限定されない。例えば、サメ、サケ、エイ等の魚類軟骨から抽出したプロテオグリカンを使用することができる。このうち、サケ由来、特にサケの鼻軟骨由来のものが好ましく、これを単独で、又は他のプロテオグリカンと組み合わせて用いることができる。プロテオグリカンは、市販品を用いてもよい。
【0037】
本発明の液状経口用組成物中のプロテオグリカンの含有量は、1~200mg/100mLが好ましく、5~100mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、プロテオグリカンを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0038】
本発明において、エラスチンペプチドは、水溶性エラスチンペプチドを意味する。エラスチンペプチドとしては、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、魚等の動物性生体組織から抽出したものや、水溶性又は不溶性のエラスチンに酵素、酸、アルカリ等で加水分解処理等を施すことにより得られた分解物を使用することができる。また人工的に合成したエラスチンペプチドを用いてもよく、これらの1種又は2種以上を用いることもできる。
本発明において用いるエラスチンペプチドの分子量は特に限定されず、あらゆる分子量のエラスチンペプチドを用いることができる。
【0039】
エラスチンペプチドは、市販品を用いてもよく、例えば、「カツオエラスチン」(林兼産業(株)製)、「美弾エラスチンFI」(日本水産(株)製)、「マグロエラスチンHS-1」(はごろもフーズ(株)製)、「P-エラスチン」(日本ハム(株)製)等を用いることができる。
【0040】
本発明の液状経口用組成物中のエラスチンペプチドの含有量は、好ましくは10~750mg/100mL、より好ましくは50~300mg/100mLである。上記含有量は、エラスチンペプチドを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0041】
本発明の液状経口用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外に、例えば、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等を含んでいてもよい。
本発明の液状経口用組成物は水性媒体、通常水を含む。本発明の液状経口用組成物は、好ましくは水を媒体とする液状経口用組成物(水性液状経口用組成物)である。
【0042】
本発明の液状経口用組成物における「液状」とは、常温において液体の状態であることを意味する。液状の組成物として、粘度(22℃)が約500mPa・s以下である流動体が好ましい。本発明において、液状経口用組成物の粘度は、22℃における粘度であり、B型粘度計により実施例に記載の方法で測定することができる。
【0043】
本発明の液状経口用組成物は、粘度が30~500mPa・sであることが好ましい。液状経口用組成物の粘度がこの範囲であると、pH3.0~4.0のpH領域において、該組成物の酸味をより緩和することができる。また、液状経口用組成物の粘度が上記範囲であると、例えば飲料とした場合に飲用に適した粘度であることから好ましい。液状経口用組成物の粘度は、好ましくは30mPa・s以上、より好ましくは40mPa・s以上、さらに好ましくは50mPa・s以上であり、また、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは250mPa・s以下、さらに好ましくは150mPa・s以下である。一態様において、酸味の緩和及び飲用に適した粘度の観点から、液状経口用組成物の粘度は、40~250mPa・sがより好ましく、50~150mPa・sがさらに好ましい。本発明の一態様において、液状経口用組成物の粘度が上記範囲となる量のウェランガムを配合することが好ましい。
【0044】
本明細書中、pHは、25℃におけるpHである。液状経口用組成物のpHは、酸味緩和効果がより充分に発揮されることから、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.8以下であり、また、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.4以上である。一態様において、液状経口用組成物のpHは、3.2~3.9が好ましく、3.4~3.9がより好ましく、3.4~3.8がさらに好ましい。
【0045】
本発明の液状経口用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を混合する混合工程、及び、該組成物のpHを3.0~4.0に調整するpH調整工程を含むことが好ましい。
混合工程では、成分に、水性媒体を加えて混合することが好ましい。水性媒体としては、通常水が用いられる。各成分を混合する順番は特に限定されず、各成分が均一に混合されればよい。一態様において、揮発性の成分(例えば香料)や分解しやすい成分(例えば、ビタミンC等)を配合する場合、このような成分は最後に混合することが好ましい。pH調整工程は、組成物に酸味料を含有させることにより行うことができる。pH調整工程は、混合工程と同時に行ってもよく、混合工程の後で行ってもよい。液状経口用組成物の製造方法においては、粘度を調整する粘度調整工程等の工程を行ってもよい。粘度の調整は、組成物にウェランガムを含有させることにより行うことができる。粘度調整工程は、混合工程又はpH調整工程と同時に行ってもよい。ウェランガムを配合後の組成物に粉末の原料を混合する場合は、該原料を組成物中に均一に溶解させるための作業が容易となることから、該粉末の原料を溶解させた溶液を組成物に混合することが好ましい。
【0046】
本発明の液状経口用組成物は、飲料(飲料組成物)として好ましく用いられる。
本発明の液状経口用組成物は、容器詰めとすることができる。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器入り飲料(容器詰め飲料)等とすることができる。
【0047】
<酸味を緩和する方法>
本発明は、コラーゲンペプチド及び酸味料を含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物にウェランガムを配合する、上記組成物の酸味を緩和する方法も包含する。
コラーゲンペプチド、酸味料及びウェランガム並びにその好ましい態様、これらの配合量等は、上述した液状経口用組成物におけるものと同じである。液状経口用組成物には、上述した甘味料等の他の成分を配合してもよい。
ウェランガムを配合する方法及びタイミングは特に限定されない。pH3.0~4.0の液状経口用組成物が、最終的にウェランガムを含んでいればよい。例えば、コラーゲンペプチドを含む液状の組成物にウェランガムを配合した後、該組成物と酸味料とを混合してpHを3.0~4.0に調整してもよいし、コラーゲンペプチド及び酸味料を含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物とウェランガムとを混合してもよい。ウェランガムを配合した液状経口用組成物の好ましい粘度は、上述した液状経口用組成物における粘度と同じである。本発明の一態様において、液状経口用組成物の粘度が上記範囲となる量のウェランガムを配合することが好ましい。ウェランガムを含有させることにより、コラーゲンペプチド及び酸味料を含むpH3.0~4.0の液状経口用組成物の酸味を緩和することができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
コラーゲンペプチド:平均分子量500、魚由来
ウェランガム:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、ビストップ(登録商標)W
プロテオグリカン:一丸ファルコス(株)製、プロテオグリカンF(商品名)
エラスチンペプチド:林兼産業(株)製、カツオエラスチン(商品名)
ペクチン:三晶(株)製、ゲニューペクチンJM-150-J(商品名)
キサンタンガム:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンエースE-S(商品名)
特に断らない場合は、上記の原料を使用した。以下で使用したリン酸は、オルトリン酸である。
【0050】
コラーゲンペプチドの平均分子量は、中国国家標準規格(GB規格)GB/T 22729-2008 フィッシュオリゴペプチドパウダーに関する相対分子質量測定法にて測定した。ただし、M,451及びM,189の試薬については、それぞれグリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(M,451)、グリシン-グリシン-グリシン(M,189)を用いた。
上記コラーゲンペプチドは、Pro-Hyp(PO)及びHyp-Gly(OG)の合計含有量が約1.4重量%であった。
【0051】
<実施例1~5>
表1に示す配合で実施例1~5の飲料(液状経口用組成物)を製造した。媒体には水を用いた。具体的には、酸味料(クエン酸及びリン酸)以外の原料を水に加えて溶解し、酸味料にて、pH3.5となるよう調製後、水を加えて1000mLとした。表1中には、pH調整等に要した酸味料の最終配合量を示す。実施例1~5の飲料では、リン酸:クエン酸の重量比は1:2.5であった。得られた溶液50mLずつを褐色瓶に分注し密栓後、浸漬殺菌を行い、実施例1~5の飲料を得た。表1及び後掲の表3~5中の各成分の配合量は、飲料1000mL中の配合量(mg/1000mL)である。
【0052】
<比較例1~3>
原料の配合を表1に示す配合とした以外は、実施例1と同じ方法で飲料(液状経口用組成物)を製造した。比較例2及び3では、増粘剤として使用されるペクチン及びキサンタンガムをそれぞれ配合した。
【0053】
実施例1~5及び比較例1~3で得られた飲料を常温にて、風味を下記方法で官能評価した。飲料の粘度及びpHは、以下に示す方法で測定した。飲料の配合及び評価結果を、表1に示す。表中の「コラーゲンペプチド/ウェランガム」は、ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比である。
【0054】
<風味の評価>
飲料の風味を、酸味の観点で、官能にて評価した。専門のパネラー5名が、飲料の飲み口の酸味及び酸味の後引きを、表2に示す基準で評価した。飲み口の酸味は、飲料を口に含んだときに感じられる酸味(先味の酸味)であり、酸味の後引きは、飲料を飲んだ後の口に残る酸味(後味の酸味又は持続感)である。
結果は、評価の平均スコアが4.0~3.1を○、3.0~2.1を△、2.1未満を×として示した。
【0055】
<粘度測定>
サンプル(飲料)の粘度は、B型粘度計により以下の方法で測定した。
測定装置(B型粘度計):BII型粘度計(東機産業(株))、型式BMII
ローター:No.2
サンプル容器:サンプル容器:100mLサンプル瓶
サンプル量:75mL
サンプルは、22℃に保持し、回転開始から1分後の数値を読み取り、粘度とした。測定時の回転速度として60rpmで測定を行った。
【0056】
<pH測定>
pH(25℃)は、pHメーター(型式F-53、(株)堀場製作所製)で測定した。
【0057】
【表1】
【表2】
【0058】
比較例1の飲料では、飲み口の酸味及び酸味の後引きが共に強く感じられた。ペクチンを添加した比較例2でも同様であった。キサンタンガムを添加した比較例3は、飲み口の酸味は抑えられるものの、酸味の後引きは強く感じられた。ウェランガムを配合した実施例1~5の飲料では、飲み口の酸味及び酸味の後引きが共に抑えられた。実施例1~5の飲料はいずれも飲用しやすい粘度であった。
【0059】
<実施例6~7>
コラーゲンペプチドに加えて、プロテオグリカン又はエラスチンペプチドを添加した場合の酸味緩和効果を評価する目的で、実施例1と同様の方法により、表3に示す配合で実施例6~7の飲料を製造した。
実施例6~7の飲料では、リン酸:クエン酸の重量比は1:2.5であった。
【0060】
実施例6~7で得られた飲料を常温にて、風味を上記の実施例1と同じ方法で評価した。飲料の粘度及びpHを、上記方法で測定した。評価結果を、表3に示す。
実施例6~7の飲料でも、飲み口の酸味及び酸味の後引きが抑えられた。
【0061】
【表3】
【0062】
<実施例8~10>
原料の配合を表4に示す配合とした以外は、実施例1と同じ方法で実施例8~10の飲料を製造した。実施例8~10の飲料中のリン酸:クエン酸の重量比は、1:2.5であった。
【0063】
実施例8~10で得られた飲料を常温にて、風味を上記の実施例1と同じ方法で評価した。飲料の粘度及びpHを、上記方法で測定した。評価結果を、表4に示す。
比較のため、ウェランガムを配合しなかった以外は、実施例10と同様の配合でpH4.0の飲料を製造し、同様に風味を評価した。このウェランガムを含まない飲料(pH4.0)では、飲み口の酸味及び酸味の後引きを感じた。実施例8~10の飲料では、飲み口の酸味及び酸味の後引きが抑えられた。
【0064】
【表4】
【0065】
<実施例11>
原料の配合を表5に示す配合とし、クエン酸でpHを調整した以外は、実施例1と同じ方法で飲料を製造した。
【0066】
<比較例4>
原料の配合を表5に示す配合とした以外は、実施例1と同じ方法で飲料を製造した。
【0067】
実施例11及び比較例4で得られた飲料を常温にて、風味を上記の実施例1と同じ方法で評価した。飲料の粘度及びpHを、上記方法で測定した。評価結果を、表5に示す。
比較例4の飲料は、クエン酸の酸味が強く、飲み口の酸味及び酸味の後引きが強く感じられた。実施例11の飲料は、比較例4と比較して、飲み口の酸味及び酸味の後引きが抑えられた。ウェランガムを配合することにより、酸味が強いクエン酸だけを酸味料に使用した場合でも、pHが3.0~4.0の領域において酸味が緩和された。
【0068】
【表5】
【0069】
<実施例12>
コラーゲンペプチドとして、平均分子量が931のコラーゲンペプチドを使用した。実施例1と同様の方法により、表6に示す配合となるように実施例12の飲料を製造した。表6中の各成分の配合量は、飲料1000mL中の配合量(mg/1000mL)である。飲料の粘度及びpHを、上記方法で測定した。得られた飲料を用いて、実施例1と同じ方法で、常温にて風味を評価した。評価結果を表6に示す。
【0070】
<比較例5>
実施例12で用いた平均分子量が931のコラーゲンペプチドを使用した。原料の配合を表6に示す配合とした以外は、実施例12と同じ方法で飲料を製造し、同様に評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
比較例5の液状経口用組成物では、飲み口の酸味及び酸味の後引きが強く感じられた。ウェランガムを配合することにより、酸味が緩和された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、飲食品分野等において有用である。