(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】混油防止装置
(51)【国際特許分類】
B67D 7/32 20100101AFI20221007BHJP
【FI】
B67D7/32 C
(21)【出願番号】P 2020025785
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(73)【特許権者】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木尚彦
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-114589(JP,A)
【文献】特開2019-206973(JP,A)
【文献】特開2019-206352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下タンクに通じる注油管に配設され燃料油の流入路を開閉する弁体と、
該弁体の上流側に燃料油を判別する検出部とを備えた注油口と、
該注油口の検出部からの出力に基づいて油種を判断する油種判定手段とを備え
、
前記弁体の上流側の上部にはベーパ排気口が形成され、該ベーパ排気口にはフロート弁を介して貯油タンクの空間又はベーパ排気管に連通するベーパ回収管が接続され、また前記弁体の上流側の下部には前記油種判定手段での油種の一致が確認できない場合に前記弁体の上流側の燃料油を排出するドレン管が止弁を介して接続され、さらに前記フロート弁は燃料油が流入すると上昇し、気体が通過するときには降下するフロートの移動を棹により弁部に伝達して弁座に接離する混油防止装置。
【請求項2】
前記弁体の開閉を検知するための開閉検出手段を有する請求項1に記載の混油防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
給油所の地下タンク等の貯油タンクへの燃料油の補給時に油種を判定し、異る油種の注油を防止できる装置を提供することである。
【背景技術】
【0002】
タンクローリに搭載されているタンクは複数のハッチに区画され、給油所の注文に応じて所定油種の燃料油が各ハッチに荷積みされ、タンクローリにより給油所に配送される。
そして特許文献1にみられる給油所では荷積みされた燃料油は、荷卸ホースを介して混油を防止しつつ地下に埋設された各地下タンクに荷卸される。
【0003】
ところで地下タンクに荷卸するべき燃料油には複数の種類があり、地下タンク内の燃料油と異なる種類の燃料油を荷卸してしまう事故、例えばガソリン又はガソリンの混じった灯油を誤って灯油用の地下タンクへ荷卸してしまうと、当該地下タンク内の燃料油は使用できなくなり、経済的に大きな損失を生じる。
【0004】
そればかりでなくガソリンは灯油に比べて気化しやすく爆発的に燃えるため、このガソリンが混入した灯油をストーブ等で使用した場合は、火災等の大事故に繋がる。
【0005】
このため特許文献1に見られるように貯油タンク毎の容量及び油種を記憶し、貯油タンクに設けられた油面計の液位信号から演算された油量、及びキーボードから入力された注文量を記憶する記憶部と、タンク番号、油種、及び注文量を含む注文データを出力する制御部とを有する給油所側の油量管理装置と、ハッチ毎の油種及び油量を含む積み荷データを記憶し、入力した注文データを記憶する記憶部と、積み荷データ、注文データ、及び荷卸されるタンク番号に基づいて荷卸しを制御する制御部とを有するタンクローリ側の荷卸し制御装置とより構成されたものが提案されている。
しかしタンクローリの底弁が開弁されてしまった場合には異種の燃料油が貯油タンクに流れ込んでしまい混油を確実には防止することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、荷卸ホースを地下タンクの注油管に接続した時に油種の一致が確認できるまでは地下タンクへの燃料油の流入を確実に阻止して混油判断を行うことができる混油防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明は、地下タンクに通じる注油管に配設され燃料油の流入路を開閉する弁体と、該弁体の上流側に燃料油を判別する検出部とを備えた注油口と、該注油口の検出部からの出力に基づいて油種を判断する油種判定手段とを備え、
前記弁体の上流側の上部にはベーパ排気口が形成され、該ベーパ排気口にはフロート弁を介して貯油タンクの空間又はベーパ排気管に連通するベーパ回収管が接続され、また前記弁体の上流側の下部には前記油種判定手段での油種の一致が確認できない場合に前記弁体の上流側の燃料油を排出するドレン管が止弁を介して接続され、さらに前記フロート弁は燃料油が流入すると上昇し、気体が通過するときには降下するフロートの移動を棹により弁部に伝達して弁座に接離する
.
【発明の効果】
【0010】
燃料油が注油管に流れ込む前に弁体で堰き止めて油種判定を実行し、油種が一致した場合にのみ弁体を開弁して地下タンクに荷卸しを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の混油防止装置の一実施例を閉弁状態で示す断面図。
【
図4】フ口ート弁の一実施例を示す開弁状態で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例にもとづいて説明する。
図1は、本発明の混油防止装置の一実施例を示すものであって荷卸ホース1の吐出口2に接続される注油管3の接続口、つまり注油口4の直近下流側に弁体5、この実施例ではバタフライ弁が配置されている。
【0013】
弁体5の上流側で、流路の上部にはベーパ排気口6が、また下部には廃油回収口7がそれぞれ形成されている。ベーパ排気口6にはフ口ート弁8を介してベーパ回収管9が、また廃油回収口7には止弁11を介して連通するドレン管12が接続されていて燃料油回収容器もしくは該当油種の地下タンクの管13に連通されている。ベーパ回収管9は貯油タンクの空間やベーパ排気管に連通させたり大気に開放することもできる。
【0014】
また、弁体5の上流側には液分析センサ14、この実施例では、例えば特許文献2に記載されているような光学式センサが配置されている。すなわち、バタフライ弁5の弁板15の上流側の面にはこれに垂直となるように遮光板16が設けられていて、ここには光学式センサ14の光路Lに位置するように光通過用の通孔17が穿設されている。
【0015】
液分析センサ14である光学式センサを構成する発光手段18と受光手段19とは、
図2に示したようにバタフライ弁5が確実に閉弁したとき遮光板16の通孔17に対向して受光関係を形成するように配置されている。
これにより、弁体5の開閉を確実に検知することができて、地下タンクに荷卸される前に注油口内の弁体5が閉じていることを確認してから荷卸しが行われるので、タンクローリ側の底弁を誤って開けても油種判定前に荷卸されてしまうのを防止することができる。
【0016】
この実施例において、燃料油を補給すべき地下タンクの注油管3の弁体5、及び廃油回収口7の弁11が確実に閉弁してることを確認してから荷卸ホース1を注油管3の接続口である注油口4に接続する。そして開始ボタンにより起動を指令する。
【0017】
この実施例では閉弁状態では
図2に示したように発光手段18の光路Lに遮光板16の通孔17が対向しており、また
図3に示したように弁板15の位置が完全な閉弁状態からずれている場合は通孔17が光学式センサの光路Lから外れるので遮光板16で遮光される。これによりバタフライ弁5の開閉状態に応じて受光手段19の出力に大きな変化が生じる。
なお受光手段19の信号によりバタフライ弁5の閉弁状態の判定や油種の判定は図示しない油種判定手段を構成するマイク口コンピュータにより構成することができる。
【0018】
油種の確認を終えた後、タンクローリの底弁を開弁すると、タンクローリの燃料油が荷卸ホース1を介して注油管3の注油口4に流れ込みここに存在する空気やベーパなどの気体が上部のベーパ排気口6からフ口ート弁8、ベーパ回収管9を介して排出される。
【0019】
すなわち、ベーパなどの気体だけがベーパ排気口6を通過している間は
図4に示したように、フ口ート20は降下していて弁部21が弁座22から離れていて連通状態を維持できるが、燃料油が流入すると
図5に示したようにフ口ート20が上昇して弁座22に弁部21が当接して通路を閉鎖する。これにより燃料油を漏出させることなく液分析センサ14の光路を確実に燃料油内を通過させて
正確に油種判定を行うことができる。
【0020】
すなわち弁体5の上流側に燃料油を溜めて液分析センサー14を作動させて油種の判定を実行する。油種の一致が確認できた場合にはレバー23を介して弁体5を開放して荷卸しを実行する。
【0021】
一方、油種の一致が確認できない場合には、タンクローリの底弁を閉弁してから放出弁11を開放してタンクローリと注油管との間にたまっている燃料油を燃料油回収容器に連通する管12に排出する。
また、前記油種が例えば純粋なレギュラーガソリンの場合は該当する地下タンクに通じる注油管13へ排出する。
これにより、荷卸ホース1を外すこと無く安全にローリの底弁より下流側の配管内及び荷卸ホース1内に溜まった異種燃料油を回収できる。
【0022】
なお、上述の実施例では注油管3の荷卸ホースとの接続口にバタフライ弁を使用しているが他の形式の弁、例えばボール弁を使用することもできることは明らかである。
また、上述の実施例では、液分析センサを利用して弁開閉の検出を行っているが弁開閉検出手段と独立して設けても同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
タンクローリの底弁を油種判定前に誤って開放しても地下タンクの注油管で阻止できるばかりでなく、注油管に溜まった異油種の燃料油を確実に回収できる。さらには弁体の開閉をセンサで検知できるので油種判定手段からの出力に反して弁体5を開にすると報知することもできる。
【0024】
つまり、油種判定で異種と判定された後に作業者の錯誤で弁体5を開弁操作すると、報知することも可能であるため混油に起因する火災事故を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0025】
1 荷卸ホース 2 荷卸ホースの吐出口 3 注油管 4 注油口 5 弁体 6 ベーパ排気口 7 廃油回収口 8 フ口ート弁 9 ベーパ回収管 11 止弁 12 燃料油回収容器に連通する管 14 液分析センサ 15 弁板 16 遮光板 17 通孔