(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】潰瘍を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20221007BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221007BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20221007BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61K47/68
A61P7/06
A61P17/02
(21)【出願番号】P 2020031654
(22)【出願日】2020-02-27
(62)【分割の表示】P 2016572453の分割
【原出願日】2015-06-12
【審査請求日】2020-03-27
(32)【優先日】2014-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509125475
【氏名又は名称】アクセルロン ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケネス エム. アティー
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/059347(WO,A1)
【文献】Minniti, C. P. et al.,Leg ulcers in sickle cell disease,American Journal of Hematology,2010年,Vol.85, No.10,p.831-833,doi:10.1002/ajh.21838
【文献】Cappellini, M. D. et al.,An overview of current treatment strategies for β-thalassemia,Expert Opinion on Orphan Drugs,2014年05月15日,Vol.2, No.7,p.665-679
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
PubMed
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貧血を有する対象において皮膚潰瘍を処置するのに使用するための組成物であって、前記組成物は
ActRIIBポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸
25~131の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含み、前記ポリペプチドは、GDF8および/またはGDF11に結合することが可能である、組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸25~131を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号44と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号44と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号44と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号44のアミノ酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、免疫グロブリンFcドメインをさらに含む融合タンパク質である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記融合タンパク質が、前記ポリペプチドと前記免疫グロブリンFcドメインとの間に位置するリンカードメインをさらに含む、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、および脂質部分に結合体化されたアミノ酸から選択される1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、細胞ベースのアッセイにおいてGDF8によるシグナル伝達を阻害する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、細胞ベースのアッセイにおいてGDF11によるシグナル伝達を阻害する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
配列番号1の79位に対応する位置の前記酸性アミノ酸が、アスパラギン酸である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
配列番号1の79位に対応する位置の前記酸性アミノ酸が、グルタミン酸である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、GDF11に結合する、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、GDF8に結合する、請求項1~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記対象が、溶血性貧血を有する、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象が、異常ヘモグロビン症による貧血を有する、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象が、鎌状赤血球貧血を有する、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/012,109号、および2014年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/045,808号に対する優先権の利益を主張する。上記の出願のそれぞれの開示は、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
成熟した赤血球(red blood cell)、すなわちエリスロサイト(erythrocyte)は、脊椎動物の循環系において酸素の輸送を担っている。赤血球は、比較的高い酸素分圧(pO2)の肺において酸素に結合し、そして、比較的低いpO2の身体の領域へと酸素を運搬するタンパク質であるヘモグロビンを高濃度で含む。
【0003】
成熟赤血球は、赤血球生成と呼ばれるプロセスにおいて、多能性の造血幹細胞から生成される。出生後の赤血球生成は、主として、骨髄および赤脾臓において生じる。種々のシグナル伝達経路の連繋した作用により、細胞の増殖、分化、生存および死のバランスが制御される。正常な条件下では、赤血球は、身体において一定の赤血球質量を維持する速度で生成され、そして、この生成は、種々の刺激(酸素圧の増減または組織の要求を含む)に応じて増減し得る。赤血球生成のプロセスは、分化系列が決定した(lineage committed)前駆体細胞の形成から始まり、そして、一連の別個の前駆体細胞型を通って進行する。赤血球生成の最終段階は、網状赤血球が血流へと放出されるときに生じ、成熟赤血球の形態を帯びながら、そのミトコンドリアおよびリボソームを失う。血中での網状赤血球レベルの上昇、または、網状赤血球:赤血球の比の上昇は、赤血球生成速度の増加を示す。
【0004】
一般に、貧血とは、対象の血液が十分な健常な赤血球を欠くか、またはヘモグロビンの量が正常未満である場合に発症する状態である。貧血はまた、1つまたは複数のヘモグロビンサブユニットの変形から起こる可能性がある赤血球の酸素結合能の低下が存在するときに診断される場合もある。ヒト細胞は、生存のために酸素に依存することから、貧血は、例えば組織損傷を含む広範にわたる臨床合併症を結果として引き起こす可能性がある。例えば、潰瘍とは、特に、鎌状赤血球症およびサラセミアなどの溶血性貧血における慢性貧血障害の最も一般的な皮膚症状の1つであることが報告されている。例えば、Keastら(2004年)、Ostomy Wound Manage、50巻(10号)、64~70頁;Trentら(2004年)、Adv Skin Wound Care、17巻(8号)、410~416頁;J.R. Eckman(1996年)、Hematol Oncol Clin North Am.、10巻(6号)、1333~1344頁;およびRassiら(2008年)、Pediatric Annals、37巻(5号)、322~328頁を参照されたい。貧血患者における潰瘍形成の根底にある機構は、完全には明らかになっていない。しかし、例えば、虚血症、酸化窒素のバイオアベイラビリティーの低下、血管閉塞、血栓症、および低酸素症を含む貧血の複数の合併症も、潰瘍の発症に寄与すると考えられている(同上)。
【0005】
貧血患者における潰瘍の治癒は、典型的には緩慢なプロセスであり、このような患者はまた、再発性潰瘍化の危険性も高い。例えば、Keastら(2004年)、Ostomy Wound Manage.、50巻(10号)、64~70頁;Trentら(2004年)、Adv Skin Wound Care、17巻(8号)、410~416頁;J.R. Eckman(1996年)、Hematol Oncol Clin
North Am.、10巻(6号)、1333~1344頁;およびRassiら(2008年)、Pediatric Annals、37巻(5号)、322~328頁を参照されたい。さらに、ほとんどの治療は、貧血患者において生じる潰瘍の処置において限定的にしか成功していない。
したがって、貧血と関連する潰瘍を処置または予防するための、代替的な方法を提供することは本開示の目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Keastら(2004年)、Ostomy Wound Manage、50巻(10号)、64~70頁
【文献】Trentら(2004年)、Adv Skin Wound Care、17巻(8号)、410~416頁
【文献】J.R. Eckman(1996年)、Hematol Oncol Clin North Am.、10巻(6号)、1333~1344頁
【文献】Rassiら(2008年)、Pediatric Annals、37巻(5号)、322~328頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
部分的に、本開示は、ActRIIアンタゴニストを使用して、貧血を有する患者において、種々の血液パラメータ(例えば、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、鉄レベル、ビリルビンレベル、窒素レベルなど)を変化させることに加え、例えば潰瘍を含む貧血に伴う合併症を処置し得ることを実証する。特に、本開示は、本願の配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を有するActRIIBポリペプチドの可溶性形態であるGDFトラップポリペプチドの投与が、種々の種類の溶血性貧血、特に、異常ヘモグロビン症による貧血、サラセミア、および鎌状赤血球症を有する患者において、赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを高めることを実証する。驚くべきことに、種々の赤血球パラメータに直接影響を及ぼすことに加えて、開示されるActRIIアンタゴニストは、貧血と関連する他の合併症を緩和する。例えば、GDFトラップタンパク質による処置は、サラセミアを有するヒト患者においてヘモグロビンレベルを高め、皮膚(cutaneous(skin))潰瘍の創傷治癒を促進することが示された。一部の例では、これらの関連する合併症の緩和は、患者の健康および生活の質に対して、根底にある貧血の処置と同等またはこれを超える重要性を有する。したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを使用して、それを必要とする患者において赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを高める方法、およびこれらの患者において、低い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルと関連する、1つまたは複数の合併症を処置または予防する方法を提供する。特に、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置または予防するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、予防するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防することに関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置することに関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防することに関する。特に、本開示の方法は、部分的に、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防する方法に関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置する方法に関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防する方法に関する。例えば、本開示は部分的に、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置する方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防する方法に関する。ある特定の態様では、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを、潰瘍を処置もしくは予防し、かつ/または貧血を処置するための、1つまたは複数の既存の支持療法(例えば、鎌状赤血球症、サラセミアなどを処置するための支持療法)と組み合わせて使用することができる。当該分野では、このような支持療法の例が周知であり、本明細書でもまた記載する。一部の実施形態では、対象は、貧血を有する輸血依存性対象である。一部の実施形態では、対象は、貧血を有する非輸血依存性対象である。
【0008】
部分的に、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストで、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置または予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストで、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置する方法を提供する。部分的に、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストで、貧血と関連する潰瘍を予防する、特に、皮膚潰瘍を予防する方法を提供する。本開示のActRIIアンタゴニストは、例えば、ActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)に媒介されるシグナル伝達経路の活性化(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8などの細胞内メディエーターを介するシグナル伝達の活性化)を阻害し得る作用因子;1つまたは複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、Nodalなど)が、例えば、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害し得る作用因子;ActRIIリガンドおよび/またはActRII受容体の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する作用因子;ならびにActRIIシグナル伝達経路の1つまたは複数の細胞内メディエーター(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8)を阻害し得る作用因子を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする患者において赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを高める方法、およびこれらの患者において、低い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルと関連する1つまたは複数の合併症を処置または予防する方法における使用のための、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。特に、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置または予防するのに使用するためのActRIIアンタゴニストを提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置するのに使用するためのActRIIアンタゴニストを提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、予防するのに使用するためのActRIIアンタゴニストを提供する。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するのに使用するためのものである。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するのに使用するためのものである。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するのに使用するためのものである。特に、本開示のActRIIアンタゴニストは、部分的に、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するのに使用するためのものである。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するのに使用するためのものである。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するのに使用するためのものである。例えば、本開示は部分的に、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。一部の実施形態では、本開示は、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。一部の実施形態では、本開示は、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。一部の実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。一部の実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。一部の実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストに関する。ある特定の態様では、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを、潰瘍を処置もしくは予防し、かつ/または貧血を処置するための、1つまたは複数の既存の支持療法(例えば、鎌状赤血球症、サラセミアなどを処置するための支持療法)と組み合わせて使用することができる。当該分野では、このような支持療法の例が周知であり、本明細書でもまた記載する。
【0010】
部分的に、本開示は、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを提供する。一部の実施形態では、本開示は、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを提供する。部分的に、本開示は、貧血と関連する潰瘍を予防する、特に、皮膚潰瘍を予防するのに使用するための1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを提供する。本開示のActRIIアンタゴニストは、例えば、ActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)に媒介されるシグナル伝達経路の活性化(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8などの細胞内メディエーターを介するシグナル伝達の活性化)を阻害し得る作用因子;1つまたは複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、Nodalなど)が、例えば、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害し得る作用因子;ActRIIリガンドおよび/またはActRII受容体の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する作用因子;ならびにActRIIシグナル伝達経路の1つまたは複数の細胞内メディエーター(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8)を阻害し得る作用因子を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、本開示は、それを必要とする患者において赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを高めるための、およびこれらの患者において、低い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルと関連する1つまたは複数の合併症を処置または予防するための医薬の製造における、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用に関する。特に、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象であって、赤血球および/もしくはヘモグロビンのレベルが低いか、または他の形で貧血を有する対象として分類される[例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、および発作性夜間ヘモグロビン尿症]、対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を、予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、溶血性貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。特に、本開示は、部分的に、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。例えば、本開示は部分的に、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを投与することにより、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、サラセミア症候群を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、鎌状赤血球症を有する対象において潰瘍、特に、皮膚潰瘍を予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。ある特定の態様では、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストを、潰瘍を処置もしくは予防し、かつ/または貧血を処置するための、1つまたは複数の既存の支持療法(例えば、鎌状赤血球症、サラセミアなどを処置するための支持療法)と組み合わせて使用することができる。当該分野では、このような支持療法の例が周知であり、本明細書でもまた記載する。
【0012】
部分的に、本開示は、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置または予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストで、貧血と関連する潰瘍を処置する、特に、皮膚潰瘍を処置するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。部分的に、本開示は、貧血と関連する潰瘍を予防する、特に、皮膚潰瘍を予防するための医薬の製造における1つまたは複数のActRIIアンタゴニストの使用を提供する。本開示のActRIIアンタゴニストは、例えば、ActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)に媒介されるシグナル伝達経路の活性化(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8などの細胞内メディエーターを介するシグナル伝達の活性化)を阻害し得る作用因子;1つまたは複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、Nodalなど)が、例えば、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害し得る作用因子;ActRIIリガンドおよび/またはActRII受容体の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する作用因子;ならびにActRIIシグナル伝達経路の1つまたは複数の細胞内メディエーター(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、および/またはSMAD8)を阻害し得る作用因子を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用するActRIIアンタゴニストは、GDF11および/もしくはGDF8に結合し、かつ/またはこれらを阻害する作用因子(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11および/またはGDF8に媒介される活性化を阻害する作用因子)である。このような作用因子は、GDF-ActRIIアンタゴニストと総称される。任意選択で、このようなGDF-ActRIIアンタゴニストは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数をさらに阻害し得る。したがって、一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数のActRIIアンタゴニストであって、例えば、可溶性ActRIIAポリペプチド、可溶性ActRIIBポリペプチド、GDFトラップポリペプチド、抗ActRIIA抗体、抗ActRIIB抗体、抗ActRIIリガンド抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンAB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、および抗Nodal抗体)、ActRIIAの低分子阻害剤、ActRIIBの低分子阻害剤、1つもしくは複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、Nodalなど)の低分子阻害剤、ActRIIAの阻害剤ヌクレオチド、ActRIIBの阻害剤ヌクレオチド、1つもしくは複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、Nodalなど)の阻害剤ヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含むActRIIアンタゴニストを使用して、それを必要とする対象において赤血球レベルおよび/もしくはヘモグロビンレベルを高める、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防する、および/または貧血を有する対象において潰瘍、特に皮膚潰瘍を処置もしくは予防する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、アクチビンAまたはアクチビンBに結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、アクチビンAに結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、アクチビンBに結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、アクチビンAに実質的に結合しない、かつ/またはこれ(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。
【0014】
部分的に、本開示は、GDF11に結合し、かつその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、GDF11に媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達)を阻害する、改変体の細胞外(可溶性)ActRIIBドメインを含むActRIIアンタゴニストを使用して、インビボにおける赤血球レベルを高め、種々の状態/障害から生じる貧血を処置し、貧血を有する患者において皮膚潰瘍を処置し得ることを実証する。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法[例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルを高める方法、それを必要とする対象において貧血を処置する方法、それを必要とする対象において貧血の1つまたは複数の合併症(特に潰瘍)を処置または予防する方法など]に従い使用するActRIIアンタゴニストは、GDF11に結合し、かつ/またはこれ(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化)を阻害する可溶性ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIAポリペプチドまたは可溶性ActRIIBポリペプチド)である。ActRIIアンタゴニストである、可溶性ActRIIAポリペプチドおよび可溶性ActRIIBポリペプチドは、GDF11に対する拮抗以外の機構を介して、赤血球の形成および潰瘍に影響を及ぼし得るが、本開示は、これにもかかわらず、本明細書で開示される方法に照らして望ましい治療剤は、GDF11に対する拮抗もしくはActRIIに対する拮抗またはこれらの両方に基づき選択し得ることを実証する。任意選択で、このような可溶性ActRIIポリペプチドアンタゴニストは、GDF8にさらに結合することが可能であり、かつ/またはこれをさらに阻害し(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化を阻害し)得る。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8に結合し、かつ/またはこれらを阻害する、本開示の可溶性ActRIIAポリペプチドおよび可溶性ActRIIBポリペプチドは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalから選択される、1つまたは複数の追加のActRIIリガンドにさらに結合することが可能であり、かつ/またはこれらをさらに阻害し得る。
【0015】
ある特定の態様では、本開示は、改変体ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)であって、アミノ末端およびカルボキシ末端の切断ならびに/または他の配列変更(1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失、またはこれらの組み合わせ)を有するActRIIポリペプチドを含む、改変体ActRIIポリペプチドであるGDFトラップを提供する。任意選択で、本発明のGDFトラップは、GDF8(ミオスタチンともまた呼ばれる)、GDF11、Nodal、BMP6、およびBMP7(OP-1ともまた呼ばれる)など、ActRII受容体の1つまたは複数のリガンドに優先的に拮抗するようにデザインすることができる。本明細書で開示される通り、GDFトラップの例は、ActRIIBに由来する改変体であって、アクチビン、特に、アクチビンAに対するアフィニティーを大幅に減殺した改変体のセットを含む。これらの改変体は、他の組織に対する効果を低減しながら、赤血球に対する所望の効果を呈示する。このような改変体の例は、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)]を有する改変体を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法[例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルを高める方法、それを必要とする対象において貧血を処置する方法、それを必要とする対象において貧血(特に潰瘍)の1つまたは複数の合併症を処置または予防する方法など]に従い使用するGDFトラップは、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する。任意選択で、このようなGDFトラップは、GDF8にさらに結合することが可能であり、かつ/またはこれをさらに阻害し得る。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8に結合し、かつ/またはこれらを阻害する、GDFトラップは、1つまたは複数の追加のActRIIリガンド(例えば、アクチビンB、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodal)にさらに結合することが可能であり、かつ/またはこれらをさらに阻害し得る。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるGDFトラップは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれ(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。ある特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号36、37、41、44、45、50、または51のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるアミノ酸配列、および前出のいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリペプチドを含む。他の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号2、3、4、5、6、10、11、22、26、28、29、31、または49のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるアミノ酸配列、および前出のいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリペプチドを含む。さらに他の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号2、3、4、5、6、29、31、または49のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、および前出のいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリペプチドを含み、配列番号1、4、または50の79位に対応する位置は、酸性アミノ酸である。GDFトラップは、天然ActRIIポリペプチドの機能的フラグメントであって、配列番号1、2、3、4、5、6、9、10、11、もしくは49から選択される配列、または配列番号2、5、10、11、もしくは49の配列であり、C末端の1、2、3、4、5のアミノ酸、もしくは10~15アミノ酸を欠き、かつ、N末端における1、2、3、4、もしくは5のアミノ酸を欠く配列の少なくとも10、20、もしくは30アミノ酸を含む機能的フラグメントなどの機能的フラグメントを含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2または5と比べて、N末端における2~5アミノ酸、および、C末端における3アミノ酸を超えない切断を含む。一部の実施形態では、本明細書に開示の方法に従う使用のためのGDFトラップは、配列番号36のアミノ酸配列からなるか、またはこれから本質的になる。
【0016】
任意選択で、変更させたActRIIリガンド結合性ドメインを含むGDFトラップは、そのアクチビンAへの結合についてのKdの、GDF11および/またはGDF8への結合についてのKdに対する比が、野生型リガンド結合性ドメインの場合の比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、なおまたは1000倍である。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインを含むGDFトラップは、アクチビンAの阻害についてのIC50の、GDF11および/またはGDF8の阻害についてのIC50に対する比が、野生型ActRIIリガンド結合性ドメインの場合と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、100倍、なおまたは1000倍である。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインを含むGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8を、アクチビンAの阻害についてのIC50の、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、なおまたは100分の1であるIC50で阻害する。これらのGDFトラップは、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または変異体)を含む融合タンパク質であり得る。ある特定の場合には、対象の可溶性GDFトラップは、GDF8および/またはGDF11のアンタゴニスト(阻害剤)である。
【0017】
ある特定の態様では、本開示は、変更させたリガンド結合性(例えば、GDF11結合性)ドメインを含む可溶性ActRIIBポリペプチドであるGDFトラップを提供する。リガンド結合性ドメインを変更させたGDFトラップは、例えば、ヒトActRIIBのE37、E39、R40、K55、R56、Y60、A64、K74、W78、L79、D80、F82、およびF101(番号付けは、配列番号1に照らした番号付けである)などのアミノ酸残基において、1つまたは複数の変異を含み得る。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインは、GDF8/GDF11などのリガンドに対する選択性を、ActRIIB受容体の野生型リガンド結合性ドメインと比べて増大させている場合がある。例示すると、本明細書では、これらの変異:K74Y、K74F、K74I、L79D、L79E、およびD80Iが、変更させたリガンド結合性ドメインの、GDF11に対する選択性を、アクチビンに対する場合を上回って増大させる(したがって、おそらく、GDF8に対する選択性も増大させる)ことが実証される。以下の変異:D54A、K55A、L79A、およびF82Aは、逆の作用を及ぼし、アクチビンへの結合の、GDF11への結合に対する比を増大させる。全体的な(GDF11およびアクチビンへの)結合活性は、「テール」領域の組入れにより増大する場合もあり、おそらく、構造化されていないリンカー領域により増大する場合もあり、また、K74A変異の使用により増大する場合もある。リガンド結合アフィニティーの全体的な減少を引き起こした他の変異は、R40A、E37A、R56A、W78A、D80K、D80R、D80A、D80G、D80F、D80M、およびD80Nを含む。変異は、所望の効果を達成するように組み合わせることができる。例えば、GDF11への結合の、アクチビンへの結合に対する比に影響を及ぼす変異の多くは、リガンドへの結合に対して、全体的な負の作用を及ぼし、したがって、これらを、リガンドへの結合を一般に増大させる変異と組み合わせることができ、これにより、リガンドへの選択性を有する、改善された結合性タンパク質をもたらす。例示的な実施形態では、GDFトラップは、任意選択で、追加のアミノ酸の置換、付加、または欠失と組み合わせた、L79D変異またはL79E変異を含むActRIIBポリペプチドである。
【0018】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドである。一般に、このようなActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号1、4、または49のActRIIB配列に由来する部分/ドメイン、特に、配列番号1、4、または49のActRIIB配列に由来する細胞外のリガンド結合性部分/ドメインを含む、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸21~29(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり[任意選択で、配列番号1または4のアミノ酸22~25(例えば、22、23、24、または25)で始まり]、配列番号1または4のアミノ酸109~134(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~29(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり[任意選択で、配列番号1または4のアミノ酸22~25(例えば、22、23、24、または25)で始まり]、配列番号1または4のアミノ酸109~133(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~24(例えば、20、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり[任意選択で、配列番号1または4のアミノ酸22~25(例えば、22、23、24、または25)で始まり]、配列番号1または4のアミノ酸109~133(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸21~24(例えば、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸109~134(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~24(例えば、20、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸118~133(例えば、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸21~24(例えば、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸118~134(例えば、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~24(例えば、20、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸128~133(例えば、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または39のアミノ酸20~24(例えば、20、21、22、23、または24)のいずれか1つで始まり、配列番号1または39のアミノ酸128~133(例えば、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸21~29(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸118~134(例えば、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~29(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸118~133(例えば、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸21~29(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸128~134(例えば、128、129、130、131、132、133、または134)のいずれか1つで終わる配列に対応する。一部の実施形態では、ActRIIBに由来する部分は、配列番号1または4のアミノ酸20~29(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29)のいずれか1つで始まり、配列番号1または4のアミノ酸128~133(例えば、128、129、130、131、132、または133)のいずれか1つで終わる配列に対応する。驚くべきことに、配列番号1または4のアミノ酸22~25(例えば、22、23、24、または25)で始まる、ActRIIBおよびActRIIBベースのGDFトラップ構築物の活性レベルは、ヒトActRIIBの全長細胞外ドメインを有するタンパク質より高い。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号1または4のアミノ酸25位で始まり、配列番号1または4のアミノ酸131位で終わるアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。前出のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、ホモ二量体として生成することができる。前出のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、Fcドメインなど、IgG重鎖に由来する定常領域を含む異種部分をさらに含み得る。上記のActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、任意選択で、配列番号1と比べた、1つまたは複数の追加のアミノ酸の置換、欠失、または挿入と組み合わせて、配列番号1の79位に対応する位置に、酸性アミノ酸を含み得る。そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIBポリペプチド、ActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、またはアクチビンAB)に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIBポリペプチド、ActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、GDF11および/またはGDF8に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。任意選択で、そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIBポリペプチド、ActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。
【0019】
以下のポリペプチドなど、他のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドも想定される。配列番号1または4のアミノ酸29~109の配列に、少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むActRIIBポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1の64に対応する位置が、RまたはKであり、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドが、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビン、GDF8、および/またはGDF11によるシグナル伝達を阻害する、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の配列に照らした少なくとも1つの変更が、リガンド結合性ポケットの外部に位置する、ポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の配列に照らした少なくとも1つの変更が、リガンド結合性ポケット内に位置する保存的変更である、ポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の配列に照らした少なくとも1つの変更が、K74、R40、Q53、K55、F82、およびL79からなる群より選択される1つまたは複数の位置における変更である、ポリペプチド。
【0020】
以下のポリペプチドなど、他のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドも想定される。配列番号1または4のアミノ酸29~109の配列に、少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、タンパク質が、ActRIIBの内因性N-X-S/T配列以外の位置、およびリガンド結合性ポケットの外部の位置において、少なくとも1つのN-X-S/T配列を含む、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の24位に対応する位置におけるNおよび配列番号1または4の26位に対応する位置におけるSまたはTを含み、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビン、GDF8、および/またはGDF11によるシグナル伝達を阻害する、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の64位に対応する位置におけるRまたはKを含む、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の79位に対応する位置におけるDまたはEを含み、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビン、GDF8、および/またはGDF11によるシグナル伝達を阻害する、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の配列に照らした少なくとも1つの変更が、リガンド結合性ポケット内に位置する保存的変更である、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、配列番号1または4の配列に照らした少なくとも1つの変更が、K74、R40、Q53、K55、F82、およびL79からなる群より選択される1つまたは複数の位置における変更である、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドであって、1つまたは複数の異種部分をさらに含む融合タンパク質である、ActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチド。上記のActRIIBポリペプチドもしくはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれか、またはその融合タンパク質は、ホモ二量体として生成することができる。上記のActRIIB融合タンパク質またはActRIIBベースのGDFトラップ融合タンパク質のいずれかは、Fcドメインなど、IgG重鎖に由来する定常領域を含む異種部分を有し得る。
【0021】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従う使用のためのActRIIBポリペプチドは、配列番号2、3、5、6、29、31、または49のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるアミノ酸配列、および前出のいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリペプチドを含む。ActRIIBポリペプチドは、天然ActRIIBポリペプチドの機能的フラグメントであって、配列番号2、3、5、6、29、31、もしくは49から選択される配列の少なくとも10、20、もしくは30アミノ酸、または配列番号2もしくは5の配列であり、C末端の1、2、3、4、5のアミノ酸、もしくは10~15アミノ酸を欠き、かつ、N末端における1、2、3、4、もしくは5のアミノ酸を欠く配列を含む機能的フラグメントなどの機能的フラグメントを含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2または5と比べて、N末端における2~5アミノ酸、および、C末端における3アミノ酸を超えない切断を含むで。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法に従う使用のためのGDFトラップは、配列番号29のアミノ酸配列からなるか、またはこれから本質的になる。
【0022】
活性の(例えば、リガンド結合性)ActRIIAポリペプチドについての一般式は、配列番号9のアミノ酸30で始まり、アミノ酸110で終わるポリペプチドを含むポリペプチドである。したがって、本開示のActRIIAポリペプチドおよびActRIIAベースのGDFトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドを含み得るか、これからなり得るか、またはこれから本質的になり得る。任意選択で、本開示のActRIIAポリペプチドおよびActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸12~82に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドであって、任意選択で、配列番号9の1~5位(例えば、1、2、3、4、または5位)または3~5位(例えば、3、4、または5位)の範囲の位置で始まり、それぞれ、110~116位(例えば、110、111、112、113、114、115、または116位)または110~115位(例えば、110、111、112、113、114、または115位)の範囲の位置で終わり、配列番号9に照らして、リガンド結合性ポケット内に、1つ、2つ、5つ、10、または15を超えない保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合性ポケット内の40、53、55、74、79、および/または82位に、0、1つ、または複数の非保存的変更を含むポリペプチドを含むか、これからなるか、またはこれから本質的になる。前出のActRIIAポリペプチドまたはActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、ホモ二量体として生成することができる。前出のActRIIAポリペプチドまたはActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、Fcドメインなど、IgG重鎖に由来する定常領域を含む異種部分をさらに含み得る。そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIAポリペプチド、ActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、またはアクチビンAB)に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIAポリペプチド、ActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、GDF11および/またはGDF8に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。任意選択で、そのホモ二量体および/または融合タンパク質を含む、上記のActRIIAポリペプチド、ActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドのいずれかは、細胞ベースのアッセイにおいて、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF7、およびNodalのうちの1つまたは複数に結合することが可能であり、かつ/またはこれらによるシグナル伝達を阻害し得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従う使用のためのActRIIAポリペプチドおよびActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号9、10、22、26、または28のアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になるアミノ酸配列、および前出のいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリペプチドを含む。ActRIIAポリペプチドまたはActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドは、天然ActRIIAポリペプチドの機能的フラグメントであって、配列番号9、10、22、26、もしくは28から選択される配列の少なくとも10、20、もしくは30アミノ酸、または配列番号10の配列であり、C末端の1、2、3、4、5のアミノ酸、もしくは10~15アミノ酸を欠き、かつ、N末端における1、2、3、4、もしくは5のアミノ酸を欠く配列を含む機能的フラグメントなどの機能的フラグメントを含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10と比べて、N末端における2~5アミノ酸、および、C末端における3アミノ酸を超えない切断を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される方法における使用のためのActRIIAポリペプチドは、配列番号26または28のアミノ酸配列からなるか、またはこれらから本質的になる。
【0024】
本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチドは、ActRIIポリペプチドのアミノ酸配列内(例えば、リガンド結合性ドメイン内)の1つまたは複数の変更(例えば、アミノ酸の付加、欠失、置換、またはこれらの組み合わせ)を、天然に存在するActRIIポリペプチドと比べて含み得る。アミノ酸配列内の変更は、例えば、哺乳動物細胞内、昆虫細胞内、または他の真核細胞内で生成されると、ポリペプチドのグリコシル化を変更させる場合もあり、あるいは天然に存在するActRIIポリペプチドと比べて、ポリペプチドのタンパク質分解性切断を変更させる場合もある。
【0025】
任意選択で、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)およびGDFトラップポリペプチドは、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸から選択される、1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む。
【0026】
一部の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチドは、1つのドメインとしての、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチド(例えば、任意選択で、1つまたは複数の配列差異を有する、ActRII受容体のリガンド結合性ドメイン)と、1つまたは複数の追加の異種ドメインであって、薬物動態の改善、精製の容易さ、特定の組織への標的化など、望ましい特性をもたらす異種ドメインとを有する、融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボにおける安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の1つまたは複数を増強し得る。ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップ融合タンパク質は、異種ポリペプチドドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または変異体)または血清アルブミンであるが、これらに限定されない)を含み得る。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはIgG1 Fcドメインである。一部の実施形態では、IgG1 FcドメインはヒトIgG1 Fcドメインである。一部の実施形態では、IgG1
FcドメインはマウスIgG1 Fcドメインである。。ある特定の実施形態では、ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップ融合タンパク質は、比較的構造化されていないリンカーであって、Fcドメインと、ActRIIドメインまたはGDFトラップドメインとの間に位置するリンカーを含む。この構造化されていないリンカーは、ActRIIまたはGDFトラップの細胞外ドメインのC末端(「テール」)における、約15アミノ酸の構造化されていない領域に対応してもよく、3~5、15、20、30、50、またはこれを超えるアミノ酸の間の人工配列であって、比較的二次構造を含まない人工配列でもよい。リンカーは、グリシン残基およびプロリン残基に富む場合があり、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列[例えば、TG4(配列番号52)、SG4(配列番号54)、またはTG3(配列番号53)のシングレットまたはリピート]または一続きの3つのグリシンを含有し得る。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合物などの精製部分配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合物は、リーダー配列を含む。リーダー配列は、天然のActRIIリーダー配列(例えば、天然のActRIIAリーダー配列またはActRIIBリーダー配列)であってもよく、異種リーダー配列であってもよい。ある特定の実施形態では、リーダー配列は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)リーダー配列である。一部の実施形態では、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質は、式A-B-Cに示されるアミノ酸配列を含む。B部分は、本明細書で記載される、NおよびC末端短縮型ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドである。A部分およびC部分は、独立に、0、1、または1を超えるアミノ酸であることが可能であり、A部分およびC部分のいずれも、Bに対して異種である。A部分および/またはC部分は、リンカー配列を介して、B部分に付加され得る。
【0027】
任意選択で、本明細書で開示される方法に従い使用される、それらの改変体および融合タンパク質を含む、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチドは、1つまたは複数のActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、BMP7、および/またはNodal)に、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、または1nM未満のKdで結合する。任意選択で、このようなActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、ActRIIリガンドにより誘発されるActRIIAおよび/またはActRIIB細胞内シグナル伝達イベント(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達)などのActRIIシグナル伝達を阻害する。
【0028】
ある特定の態様では、本開示は、本開示のActRIIアンタゴニスト(例えば、ActRIIAポリペプチド、およびActRIIBポリペプチド、GDFトラップポリペプチド)と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬調製物または組成物を提供する。医薬調製物または組成物はまた、本明細書で記載される障害または状態を処置するのに使用される化合物など、1つまたは複数の追加の化合物(例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを高め、それを必要とする対象において貧血を処置または予防し、それを必要とする対象において潰瘍、特に皮膚潰瘍を処置または予防する、追加の化合物)も含み得る。本開示の医薬調製物または組成物は実質的に、発熱物質非含有であることが好ましい。
【0029】
一般に、ActRIIAポリペプチド、およびActRIIBポリペプチド、またはGDFトラップポリペプチドは、患者における望ましくない免疫応答の可能性を低減するために、ポリペプチドの天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株内で発現させることが好ましい。ヒト細胞株およびCHO細胞株は、首尾よく使用されており、そして、他の一般的な哺乳動物発現ベクターが有用であることが予想される。一部の実施形態では、好ましいActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、およびGDFトラップポリペプチドは、グリコシル化されており、哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞から得ることができるグリコシル化パターンを有する。
【0030】
ある特定の実施形態では、本開示は、パッケージングされた医薬であって、本明細書で記載される医薬調製物または医薬組成物を含み、哺乳動物(好ましくはヒト)において赤血球レベルを高めることおよび/もしくはヘモグロビンを増加させること、哺乳動物(好ましくはヒト)において貧血を処置もしくは予防すること、哺乳動物(好ましくはヒト)において鎌状赤血球症を処置もしくは予防すること、ならびに/または哺乳動物(好ましくはヒト)において鎌状赤血球症の1つもしくは複数の合併症(例えば、貧血、血管閉塞性クリーゼ、潰瘍(皮膚潰瘍など)など)を処置もしくは予防することのうちの1つまたは複数における使用についてのラベルが付けられた医薬を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、パッケージングされた医薬であって、本明細書で記載される医薬調製物または医薬組成物を含み、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において貧血を処置すること、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において鎌状赤血球症を処置すること、および/または哺乳動物(好ましくは、ヒト)において鎌状赤血球症の1つもしくは複数の合併症(例えば、貧血、血管閉塞性クリーゼ、潰瘍(皮膚潰瘍など)など)を処置することにおける使用についてのラベルが付された医薬を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、パッケージングされた医薬であって、本明細書で記載される医薬調製物または医薬組成物を含み、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において貧血を予防すること、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において鎌状赤血球症を予防すること、および/または哺乳動物(好ましくは、ヒト)において鎌状赤血球症の1つもしくは複数の合併症(例えば、貧血、血管閉塞性クリーゼ、潰瘍(皮膚潰瘍など)など)を処置もしくは予防することにおける使用についてのラベルが付された医薬を提供する。
【0031】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離ポリヌクレオチドは、本明細書で記載されるポリペプチドなどの可溶性ActRIIポリペプチドまたは可溶性GDFトラップポリペプチドをコードする配列を含み得る。例えば、単離核酸は、1つまたは複数の配列差異を有するActRIIポリペプチドの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合性ドメイン)を含む、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップをコードする配列と、ActRIIポリペプチドの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全部であって、膜貫通ドメイン内もしくは細胞質ドメイン内に位置するか、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に位置する、終止コドンを除く一部または全部をコードする配列とを含み得る。例えば、GDFトラップをコードする単離ポリヌクレオチドは、配列番号1、4、もしくは9などの全長ActRIIポリヌクレオチド配列または1つもしくは複数の差異を有する全長ActRIIポリヌクレオチド配列を含んでもよく、部分的な切断形を含んでもよいが、ポリヌクレオチドの翻訳により、任意選択で、全長ActRIIの切断部分に融合させた細胞外ドメインがもたらされるように、前記単離ポリヌクレオチドは、3’末端の少なくとも600ヌクレオチド前における転写終結コドンか、または他の形で位置する転写終結コドンをさらに含む。本明細書で開示される核酸は、発現のためのプロモーターに作動可能に連結することができ、本開示は、このような組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。細胞は、CHO細胞などの哺乳動物細胞であることが好ましい。
【0032】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップを作製するための方法を提供する。このような方法は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞など、適切な細胞内で、本明細書で開示される核酸(例えば、配列番号8、13、27、32、39、42、46または48)のいずれかを発現させることを含み得る。このような方法は、a)GDFトラップポリペプチドの発現に適する条件下で細胞を培養する工程であって、ここで、前記細胞は、GDFトラップの発現構築物で形質転換される工程と;b)このようにして発現させたGDFトラップポリペプチドを回収する工程とを含み得る。GDFトラップポリペプチドは、タンパク質を細胞培養物から得るための周知の技法のいずれかを使用して、粗画分、部分的に精製された画分、または高度に精製された画分として回収され得る。
【0033】
ある特定の態様では、本開示は、ActRII活性(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の阻害)に拮抗する抗体または抗体の組合せに関する。特に、本開示は、ActRIIアンタゴニスト抗体、またはActRIIアンタゴニスト抗体の組合せを使用して、例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルを高め、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または潰瘍、特に、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を処置もしくは予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIアンタゴニスト抗体、またはActRIIアンタゴニスト抗体の組合せを使用して、潰瘍、特に、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIアンタゴニスト抗体、またはActRIIアンタゴニスト抗体の組合せを使用して、潰瘍、特に、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を予防する方法を提供する。
【0034】
ある特定の実施形態では、本開示の、抗体ActRIIアンタゴニストは、少なくともGDF11に結合し、かつ/またはその活性(例えばSMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化)を阻害する抗体または抗体の組み合わせである。任意選択で、抗体または抗体の組み合わせは、特に、GDF11およびGDF8の両方に対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または1つもしくは複数の抗GDF11抗体と、1つもしくは複数の抗GDF8抗体との組み合わせの文脈において、GDF8にさらに結合し、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化)をさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8に結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、特に、複数のActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または複数の抗体(各々が、異なるActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する)の組み合わせの文脈において、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。
【0035】
部分的に、本開示は、それを必要とする患者において赤血球レベルを高める(赤血球生成を増大させる)か、または貧血を処置するのに、ActRIIアンタゴニストを、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用し(例えば、同時にまたは異なる時点においてであるが、一般に重複する薬理学的効果を達成するような様式で投与し)得ることを実証する。部分的に、本開示は、GDFトラップを、EPO受容体活性化因子と組み合わせて投与して、患者、特に、鎌状赤血球症(sickle-cell)患者において赤血球の形成を相乗的に増大させ得ることを実証する。したがって、この組み合わせ処置の効果は、それらのそれぞれの用量で個別に投与された場合の、ActRIIアンタゴニストの効果と、EPO受容体活性化因子の効果との合計を顕著に超える可能性がある。ある特定の実施形態では、この相乗作用は、赤血球の標的レベルがより低い用量のEPO受容体活性化因子で達成されること可能とし、これにより、より高いレベルのEPO受容体の活性化と関連する潜在的な有害作用または他の問題を回避するので、有利であり得る。したがって、ある特定の実施形態では、本開示の方法(例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルを高め、かつ/もしくはヘモグロビンを増加させ、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血を有する対象において潰瘍を処置もしくは予防する方法)は、それを必要とする患者に、1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、および/またはGDFトラップポリペプチド)を、1つまたは複数のEPO受容体活性化因子と組み合わせて投与する工程を含む。
【0036】
EPO受容体活性化因子は、EPO受容体に直接接触し、これを活性化させることにより、赤血球生成を刺激し得る。ある特定の実施形態では、EPO受容体活性化因子は、天然EPOの165アミノ酸配列に基づき、赤血球生成刺激因子(ESA)として一般に公知の化合物のクラスの1つであり、その例が、エポエチンアルファ、エポエチンベータ(NeoRecormon(商標))、エポエチンデルタ(Dynepo(商標))、およびエポエチンオメガである。他の実施形態では、ESAは、望ましい薬物動態特性(循環半減期の延長)を付与する非ペプチド修飾を伴う合成EPOタンパク質(SEP)およびEPO誘導体を含み、それらの例が、ダルベポエチンアルファ(Aranesp(商標))およびメトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ(Micera(商標))である。ある特定の実施形態では、EPO受容体活性化因子は、EPOポリペプチド骨格を組み込んでいないか、または一般にESAと分類されない、EPO受容体アゴニストであり得る。このようなEPO受容体アゴニストは、EPOのペプチド模倣物および非ペプチド模倣物、EPO受容体を標的化するアゴニスト性抗体、EPO模倣物ドメインを含む融合タンパク質、ならびに持続時間延長型エリスロポエチン受容体制限アゴニスト(erythropoietin receptor extended-duration limited agonist)(EREDLA)を含み得るがこれらに限定されない。
【0037】
ある特定の実施形態では、EPO受容体活性化因子は、EPO受容体自体に接触させずに、内因性EPOの生成を増強することにより、間接的に赤血球生成を刺激し得る。例えば、低酸素誘導転写因子(HIF)は、正常酸素状態下では、細胞の調節機構により抑制されている(不安定化している)、EPO遺伝子発現の内因性刺激因子である。本開示は部分的に、GDFトラップと、プロピルヒドロキシラーゼ阻害剤など、HIF安定化特性を有する間接的EPO受容体活性化因子との組み合わせ処置によって、患者における赤血球生成の増大をもたらす。
【0038】
ActRIIアンタゴニスト、特に、ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドはまた、筋肉成長を促進することおよび/または筋関連障害を処置もしくは予防すること、骨成長を促進することおよび/または骨関連障害を処置もしくは予防すること、がん(特に、多発性骨髄腫および/または乳がん)を処置または予防することなど、他の障害および状態を処置または予防するためにも使用することができる。例えば、米国特許第7,612,041号;同第8,173,601号;同第7,842,663号のほか、米国特許出願公開第U.S.2009/0074768号を参照されたい。ある特定の場合には、これらの他の治療適応のためにGDFトラップポリペプチドを投与するときに、ActRIIアンタゴニストの投与時における赤血球に対する効果をモニタリングするか、または赤血球に対する所望されない作用を低減するために、ActRIIアンタゴニストの投薬を決定もしくは調整することが望ましいと考えられる。例えば、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、またはヘマトクリットレベルの上昇は、血圧の上昇を引き起こし得る。
【0039】
特許または特許出願の提出書類は、有色で作成された少なくとも1つの図面を含有する。有色の図面を有する本特許または特許出願公報のコピーは、入手を要請し、必要な手数料を支払えば、米国特許庁により提供される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
貧血を有する対象において皮膚潰瘍を処置または予防するための方法であって、前記対象に、ActRIIアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
(項目2)
前記対象が、溶血性貧血を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記対象が、異常ヘモグロビン症による貧血を有する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記対象が、鎌状赤血球症を有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記対象が、サラセミア症候群を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記対象が、βサラセミア症候群を有する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記対象が、中間型βサラセミアを有する、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記ActRIIアンタゴニストが、ActRIIAポリペプチドである、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記ActRIIAポリペプチドが、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号9のアミノ酸30~110と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号9のアミノ酸30~110の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記ActRIIアンタゴニストが、ActRIIBポリペプチドである、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ActRIIBポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ActRIIアンタゴニストが、GDFトラップポリペプチドである、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記GDFトラップポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
e)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f)配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
g)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
h)配列番号44のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
i)配列番号45のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記GDFトラップポリペプチドが、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記ポリペプチドが、ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインに加えて、インビボ半減期、インビトロ半減期、投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および精製のうちの1つまたは複数を増強する、1つまたは複数の異種ポリペプチドドメインを含む融合タンパク質である、項目8から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンから選択される異種ポリペプチドドメインを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記免疫グロブリンFcドメインが、IgG1 Fcドメインである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記免疫グロブリンFcドメインが、配列番号15および64から選択されるアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記融合タンパク質が、前記ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインと前記免疫グロブリンFcドメインとの間に位置するリンカードメインをさらに含む、項目16から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記リンカードメインが、TGGGリンカーである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むActRIIA-Fc融合タンパク質である、項目15から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記ポリペプチドが、配列番号29のアミノ酸配列を含むか、または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むActRIIB-Fc融合タンパク質である、項目15から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むGDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質である、項目15から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記GDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質が、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸から選択される1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む、項目8から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、哺乳動物グリコシル化パターンを有する、項目8から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から得ることができるグリコシル化パターンを有する、項目8から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記ポリペプチドが、GDF11に結合する、項目8から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記ポリペプチドが、GDF8に結合する、項目8から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記ポリペプチドが、アクチビンに結合する、項目8から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記ポリペプチドが、アクチビンAに結合する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記ActRIIアンタゴニストが、抗GDF11抗体である、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記ActRIIアンタゴニストが、抗GDF8抗体である、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記ActRIIアンタゴニストが、少なくともGDF11に結合する多特異性抗体である、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記多特異性抗体が、GDF8にさらに結合する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記多特異性抗体が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBのうちの1つまたは複数にさらに結合する、項目34または35に記載の方法。
(項目37)
前記抗体が、二特異性抗体である、項目34から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記二特異性抗体が、GDF11およびGDF8に結合する、項目37に記載の方法。(項目39)
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、項目32から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記抗体が、単鎖抗体、F(ab’)2フラグメント、単鎖ダイアボディー、タンデム単鎖Fvフラグメント、タンデム単鎖ダイアボディー、または単鎖ダイアボディーおよび少なくとも一部の免疫グロブリン重鎖定常領域を含む融合タンパク質である、項目32から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
潰瘍、貧血、鎌状赤血球症、および/またはサラセミア症候群のための1つまたは複数の支持療法を施す工程をさらに含む、項目1から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記支持療法が、赤血球による輸血である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記支持療法が、1つまたは複数の鉄キレート化剤の投与を含む、項目41または42に記載の方法。
(項目44)
前記1つまたは複数の鉄キレート化剤が、
a)デフェロキサミン;
b)デフェリプロン;および
c)デフェラシロクス
から選択される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記支持療法が、EPO受容体活性化因子を投与する工程を含む、項目41から44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記EPO受容体活性化因子が、EPO、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、ダルベポエチンアルファ、メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ、および合成赤血球生成タンパク質(SEP)から選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記支持療法が、ヒドロキシウレアの投与を含む、項目41から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記支持療法が、ヘプシジンの投与を含む、項目41から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記ActRIIアンタゴニストが、局所投与される、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
貧血を有する対象における皮膚潰瘍の処置または予防に使用するための、ActRIIアンタゴニスト。
(項目51)
前記対象が、溶血性貧血を有する、項目50に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目52)
前記対象が、異常ヘモグロビン症による貧血を有する、項目50に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目53)
前記対象が、鎌状赤血球症を有する、項目50に記載のActRIIアンタゴニスト。(項目54)
前記対象が、サラセミア症候群を有する、項目50に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目55)
前記対象が、βサラセミア症候群を有する、項目54に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目56)
前記対象が、中間型βサラセミアを有する、項目54に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目57)
ActRIIAポリペプチドである、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目58)
前記ActRIIAポリペプチドが、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号9のアミノ酸30~110と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号9のアミノ酸30~110の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目57に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目59)
ActRIIBポリペプチドである、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目60)
前記ActRIIBポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目59に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目61)
GDFトラップポリペプチドである、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目62)
前記GDFトラップポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
e)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f)配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
g)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
h)配列番号44のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
i)配列番号45のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目61に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目63)
前記GDFトラップポリペプチドが、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目62に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目64)
前記ポリペプチドが、ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインに加えて、インビボ半減期、インビトロ半減期、投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および精製のうちの1つまたは複数を増強する、1つまたは複数の異種ポリペプチドドメインを含む融合タンパク質である、項目57から63のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目65)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンから選択される異種ポリペプチドドメインを含む、項目64に記載のActRIIアンタゴニスト。(項目66)
前記免疫グロブリンFcドメインが、IgG1 Fcドメインである、項目65に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目67)
前記免疫グロブリンFcドメインが、配列番号15および64から選択されるアミノ酸配列を含む、項目65に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目68)
前記融合タンパク質が、前記ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインと前記免疫グロブリンFcドメインとの間に位置するリンカードメインをさらに含む、項目65から67のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目69)
前記リンカードメインが、TGGGリンカーである、項目68に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目70)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むActRIIA-Fc融合タンパク質である、項目64から69のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目71)
前記ポリペプチドが、配列番号29のアミノ酸配列を含むか、または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むActRIIB-Fc融合タンパク質である、項目64から69のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目72)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むGDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質である、項目64から69のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目73)
前記GDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質が、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目72に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目74)
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸から選択される1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む、項目57から73のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目75)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、哺乳動物グリコシル化パターンを有する、項目57から74のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目76)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から得ることができるグリコシル化パターンを有する、項目57から74のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目77)
前記ポリペプチドが、GDF11に結合する、項目57から76のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目78)
前記ポリペプチドが、GDF8に結合する、項目57から77のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目79)
前記ポリペプチドが、アクチビンに結合する、項目57から78のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目80)
前記ポリペプチドが、アクチビンAに結合する、項目79に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目81)
抗GDF11抗体である、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目82)
抗GDF8抗体である、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目83)
少なくともGDF11に結合する多特異性抗体である、項目50から56のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目84)
前記多特異性抗体が、GDF8にさらに結合する、項目83に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目85)
前記多特異性抗体が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBのうちの1つまたは複数にさらに結合する、項目83または84に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目86)
前記抗体が、二特異性抗体である、項目83から85のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目87)
前記二特異性抗体が、GDF11およびGDF8に結合する、項目86に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目88)
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、項目81から87のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目89)
前記抗体が、単鎖抗体、F(ab’)2フラグメント、単鎖ダイアボディー、タンデム単鎖Fvフラグメント、タンデム単鎖ダイアボディー、または単鎖ダイアボディーおよび少なくとも一部の免疫グロブリン重鎖定常領域を含む融合タンパク質である、項目81から88のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目90)
前記方法が、潰瘍、貧血、鎌状赤血球症、および/またはサラセミア症候群のための1つまたは複数の支持療法を施す工程をさらに含む、項目50から89のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目91)
前記支持療法が、赤血球による輸血である、項目90に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目92)
前記支持療法が、1つまたは複数の鉄キレート化剤の投与を含む、項目90または91に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目93)
前記1つまたは複数の鉄キレート化剤が、
a)デフェロキサミン;
b)デフェリプロン;および
c)デフェラシロクス
から選択される、項目92に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目94)
前記支持療法が、EPO受容体活性化因子を投与する工程を含む、項目90から93のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目95)
前記EPO受容体活性化因子が、EPO、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、ダルベポエチンアルファ、メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ、および合成赤血球生成タンパク質(SEP)から選択される、項目94に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目96)
前記支持療法が、ヒドロキシウレアの投与を含む、項目90から95のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目97)
前記支持療法が、ヘプシジンの投与を含む、項目90から96のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目98)
局所投与される、項目50から97のいずれか一項に記載のActRIIアンタゴニスト。
(項目99)
貧血を有する対象における皮膚潰瘍の処置または予防のための医薬の製造における、ActRIIアンタゴニストの使用。
(項目100)
前記対象が、溶血性貧血を有する、項目99に記載の使用。
(項目101)
前記対象が、異常ヘモグロビン症による貧血を有する、項目99に記載の使用。
(項目102)
前記対象が、鎌状赤血球症を有する、項目99に記載の使用。
(項目103)
前記対象が、サラセミア症候群を有する、項目99に記載の使用。
(項目104)
前記対象が、βサラセミア症候群を有する、項目103に記載の使用。
(項目105)
前記対象が、中間型βサラセミアを有する、項目103に記載の使用。
(項目106)
前記ActRIIアンタゴニストが、ActRIIAポリペプチドである、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目107)
前記ActRIIAポリペプチドが、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号11のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号9のアミノ酸30~110と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号9のアミノ酸30~110の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目106に記載の使用。
(項目108)
前記ActRIIアンタゴニストが、ActRIIBポリペプチドである、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目109)
前記ActRIIBポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e)配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目108に記載の使用。
(項目110)
前記ActRIIアンタゴニストが、GDFトラップポリペプチドである、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目111)
前記GDFトラップポリペプチドが、
a)配列番号1のアミノ酸29~109と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸29~109の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸25~131と同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号1のアミノ酸25~131の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d)配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
e)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f)配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
g)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
h)配列番号44のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
i)配列番号45のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、項目110に記載の使用。
(項目112)
前記GDFトラップポリペプチドが、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目111に記載の使用。
(項目113)
前記ポリペプチドが、ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインに加えて、インビボ半減期、インビトロ半減期、投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および精製のうちの1つまたは複数を増強する1つまたは複数の異種ポリペプチドドメインを含む融合タンパク質である、項目106から112のいずれか一項に記載の使用。
(項目114)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンから選択される異種ポリペプチドドメインを含む、項目113に記載の使用。
(項目115)
前記免疫グロブリンFcドメインが、IgG1 Fcドメインである、項目114に記載の使用。
(項目116)
前記免疫グロブリンFcドメインが、配列番号15および64から選択されるアミノ酸配列を含む、項目114に記載の使用。
(項目117)
前記融合タンパク質が、前記ActRIIA、ActRIIB、またはGDFトラップのポリペプチドドメインと前記免疫グロブリンFcドメインとの間に位置するリンカードメインをさらに含む、項目114から116のいずれか一項に記載の使用。
(項目118)
前記リンカードメインが、TGGGリンカーである、項目117に記載の使用。
(項目119)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号28のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むActRIIA-Fc融合タンパク質である、項目113から118のいずれか一項に記載の使用。
(項目120)
前記ポリペプチドが、配列番号29のアミノ酸配列を含むか、または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むActRIIB-Fc融合タンパク質である、項目113から118のいずれか一項に記載の使用。
(項目121)
前記ポリペプチドが、
a)配列番号36のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b)配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチド、あるいは配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択されるポリペプチドを含むGDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質である、項目113から118のいずれか一項に記載の使用。
(項目122)
前記GDFトラップポリペプチド-Fc融合タンパク質が、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を含む、項目121に記載の使用。
(項目123)
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチニル化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸から選択される、1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む、項目106から122のいずれか一項に記載の使用。
(項目124)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、哺乳動物グリコシル化パターンを有する、項目106から123のいずれか一項に記載の使用。
(項目125)
前記ポリペプチドが、グリコシル化されており、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から得ることができるグリコシル化パターンを有する、項目106から123のいずれか一項に記載の使用。
(項目126)
前記ポリペプチドが、GDF11に結合する、項目106から125のいずれか一項に記載の使用。
(項目127)
前記ポリペプチドが、GDF8に結合する、項目106から126のいずれか一項に記載の使用。
(項目128)
前記ポリペプチドが、アクチビンに結合する、項目106から127のいずれか一項に記載の使用。
(項目129)
前記ポリペプチドが、アクチビンAに結合する、項目128に記載の使用。
(項目130)
前記ActRIIアンタゴニストが、抗GDF11抗体である、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目131)
前記ActRIIアンタゴニストが、抗GDF8抗体である、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目132)
前記ActRIIアンタゴニストが、少なくともGDF11に結合する多特異性抗体である、項目99から105のいずれか一項に記載の使用。
(項目133)
前記多特異性抗体が、GDF8にさらに結合する、項目132に記載の使用。
(項目134)
前記多特異性抗体が、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBのうちの1つまたは複数にさらに結合する、項目132または133に記載の使用。
(項目135)
前記抗体が、二特異性抗体である、項目132から134のいずれか一項に記載の使用。
(項目136)
前記二特異性抗体が、GDF11およびGDF8に結合する、項目135に記載の使用。
(項目137)
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、項目130から136のいずれか一項に記載の使用。
(項目138)
前記抗体が、単鎖抗体、F(ab’)2フラグメント、単鎖ダイアボディー、タンデム単鎖Fvフラグメント、タンデム単鎖ダイアボディー、または単鎖ダイアボディーおよび少なくとも一部の免疫グロブリン重鎖定常領域を含む融合タンパク質である、項目130から137のいずれか一項に記載の使用。
(項目139)
前記方法が、潰瘍、貧血、鎌状赤血球症、および/またはサラセミア症候群のための1つまたは複数の支持療法を施す工程をさらに含む、項目99から138のいずれか一項に記載の使用。
(項目140)
前記支持療法が、赤血球による輸血である、項目139に記載の使用。
(項目141)
前記支持療法が、1つまたは複数の鉄キレート化剤の投与を含む、項目139または140に記載の使用。
(項目142)
前記1つまたは複数の鉄キレート化剤が、
a)デフェロキサミン;
b)デフェリプロン;および
c)デフェラシロクス
から選択される、項目141に記載の使用。
(項目143)
前記支持療法が、EPO受容体活性化因子を投与する工程を含む、項目139から142のいずれか一項に記載の使用。
(項目144)
前記EPO受容体活性化因子が、EPO、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンデルタ、エポエチンオメガ、ダルベポエチンアルファ、メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ、および合成赤血球生成タンパク質(SEP)から選択される、項目143に記載の使用。
(項目145)
前記支持療法が、ヒドロキシウレアの投与を含む、項目139から144のいずれか一項に記載の使用。
(項目146)
前記支持療法が、ヘプシジンの投与を含む、項目139から145のいずれか一項に記載の使用。
(項目147)
前記ActRIIアンタゴニストが、局所投与される、項目99から146のいずれか一項に記載の使用。
(項目148)
貧血を有する対象において皮膚潰瘍を処置または予防するための方法であって、前記対象に、ActRIIアンタゴニストを投与する工程を含み、前記ActRIIアンタゴニストが、配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、方法。
(項目149)
貧血を有する対象における皮膚潰瘍の処置または予防に使用するための、ActRIIアンタゴニストであって、配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、ActRIIアンタゴニスト。
(項目150)
貧血を有する対象における皮膚潰瘍の処置または予防のための医薬の製造における、ActRIIアンタゴニストの使用であって、前記ActRIIアンタゴニストが、配列番号41のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、使用。
(項目151)
前記対象が、溶血性貧血を有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
(項目152)
前記対象が、異常ヘモグロビン症による貧血を有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
(項目153)
前記対象が、鎌状赤血球症を有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
(項目154)
前記対象が、サラセミア症候群を有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
(項目155)
前記対象が、βサラセミア症候群を有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
(項目156)
前記対象が、中間型βサラセミアを有する、項目148に記載の方法、項目149に記載のアンタゴニスト、または項目150に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、複数のActRIIBおよびActRIIAの結晶構造の合成解析に基づき、ボックスで指し示されるリガンドに直接接触することが本明細書で推定される残基を伴う、ヒトActRIIAの細胞外ドメイン(配列番号56)およびヒトActRIIBの細胞外ドメインのアラインメントを示す(配列番号57~64)。
【0041】
【
図2】
図2は、種々の脊椎動物ActRIIBタンパク質およびヒトActRIIAの多重配列アラインメントを示す。
【0042】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、CHO細胞内で発現させたActRIIA-hFcの精製を示す。タンパク質は、サイジングカラム(上のパネル)およびクーマシー染色したSDS-PAGE(下のパネル)(左レーン:分子量標準物質;右レーン:ActRIIA-hFc)により視覚化される通り、単一の、十分に明確なピークとして精製される。
【0043】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、Biacore(商標)アッセイにより測定される、ActRIIA-hFcの、アクチビンおよびGDF-11への結合を示す。
【0044】
【
図5】
図5Aおよび5Bは、雌非ヒト霊長動物(NHP)における、ActRIIA-hFcの、赤血球数に対する効果を示す。雌カニクイザル(サル5匹ずつの4群)を、プラセボ、または1mg/kg、10mg/kg、もしくは30mg/kgのActRIIA-hFcで、0日目、7日目、14日目、および21日目に処置した。
図5Aは、赤血球(RBC)数を示す。
図5Bは、ヘモグロビンレベルを示す。統計学的有意性は、各処置群についてのベースラインに対してのものである。57日目において、各群内には2匹ずつのサルが残存した。
【0045】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、雄非ヒト霊長動物における、ActRIIA-hFcの、赤血球数に対する効果を示す。雄カニクイザル(サル5匹ずつの4群)を、プラセボ、または1mg/kg、10mg/kg、もしくは30mg/kgのActRIIA-hFcで、0日目、7日目、14日目、および21日目に処置した。
図6Aは、赤血球(RBC)数を示す。
図6Bは、ヘモグロビンレベルを示す。統計学的有意性は、各処置群についてのベースラインに対してのものである。57日目において、各群内には2匹ずつのサルが残存した。
【0046】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、雌非ヒト霊長動物における、ActRIIA-hFcの、網状赤血球数に対する効果を示す。カニクイザル(サル5匹ずつの4群)を、プラセボ、または1mg/kg、10mg/kg、もしくは30mg/kgのActRIIA-hFcで、0日目、7日目、14日目、および21日目に処置した。
図7Aは、絶対網状赤血球数を示す。
図7Bは、網状赤血球の、RBCと比べた百分率を示す。統計学的有意性は、各群についてのベースラインに対してのものである。57日目において、各群内には2匹ずつのサルが残存した。
【0047】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、雄非ヒト霊長動物における、ActRIIA-hFcの、網状赤血球数に対する効果を示す。カニクイザル(サル5匹ずつの4群)を、プラセボ、または1mg/kg、10mg/kg、もしくは30mg/kgのActRIIA-hFcで、0日目、7日目、14日目、および21日目に処置した。
図8Aは、絶対網状赤血球数を示す。
図8Bは、網状赤血球の、RBCと比べた百分率を示す。統計学的有意性は、各群についてのベースラインに対してのものである。57日目において、各群内には2匹ずつのサルが残存した。
【0048】
【
図9】
図9は、実施例5に記載されるヒト臨床試験からの結果であって、ActRIIA-hFcを、静脈内(IV)投与したのか、皮下(SC)投与したのかにかかわらず、ActRIIA-hFcの曲線下面積(AUC)と、投与用量とが、直線的相関を示す結果を示す。
【0049】
【
図10】
図10は、IV投与またはSC投与された患者における、ActRIIA-hFcの血清レベルの比較を示す。
【0050】
【
図11】
図11は、ActRIIA-hFcの異なる用量レベルに応答した、骨アルカリホスファターゼ(BAP)レベルを示す。BAPとは、同化による骨成長のマーカーである。
【0051】
【
図12】
図12は、実施例5に記載されるヒト臨床試験によるヘマトクリットレベルのベースラインからの変化の中央値を描示する。ActRIIA-hFcは、表示の投与量で、静脈内(IV)投与した。
【0052】
【
図13】
図13は、実施例5に記載されるヒト臨床試験によるヘモグロビンレベルのベースラインからの変化の中央値を描示する。ActRIIA-hFcは、表示の投与量で、静脈内(IV)投与した。
【0053】
【
図14】
図14は、実施例5に記載されるヒト臨床試験によるRBC(赤血球)数のベースラインからの変化の中央値を描示する。ActRIIA-hFcは、表示の投与量で、静脈内(IV)投与した。
【0054】
【
図15】
図15は、実施例5に記載されるヒト臨床試験による網状赤血球数のベースラインからの変化の中央値を描示する。ActRIIA-hFcは、表示の投与量で、静脈内(IV)投与した。
【0055】
【
図16】
図16は、GDFトラップであるActRIIB(L79D 20~134)-hFc(配列番号38)の全長アミノ酸配列であって、TPAリーダー配列(二重下線を付す)、ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基20~134;下線を付す)、およびhFcドメインを含む全長アミノ酸配列を示す。シーケンシングにより、成熟融合タンパク質内のN末端残基であると明らかにされたグリシンと同様に、天然配列内の79位において置換されたアスパラギン酸にも二重下線を付し、強調する。
【0056】
【
図17A】
図17Aおよび17Bは、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号39は、センス鎖に対応し、配列番号40は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~420)に下線を付す。
【
図17B】
図17Aおよび17Bは、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号39は、センス鎖に対応し、配列番号40は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~420)に下線を付す。
【0057】
【
図18】
図18は、短縮型GDFトラップであるActRIIB(L79D 25~131)-hFc(配列番号41)の全長アミノ酸配列であって、TPAリーダー(二重下線を付す)、短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131;下線を付す)、およびhFcドメインを含む全長アミノ酸配列を示す。シーケンシングにより、成熟融合タンパク質内のN末端残基であると明らかにされたグルタミン酸と同様に、天然配列内の79位において置換されたアスパラギン酸にも二重下線を付し、強調する。
【0058】
【
図19A】
図19Aおよび19Bは、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号42は、センス鎖に対応し、配列番号43は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付す。また、ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)のアミノ酸配列も示す。
【
図19B】
図19Aおよび19Bは、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号42は、センス鎖に対応し、配列番号43は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付す。また、ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)のアミノ酸配列も示す。
【0059】
【
図20】
図20は、リーダーを伴わない短縮型GDFトラップであるActRIIB(L79D 25~131)-hFcのアミノ酸配列(配列番号44)を示す。短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)に下線を付す。シーケンシングにより、成熟融合タンパク質内のN末端残基であると明らかにされたグルタミン酸と同様に、天然配列内の79位において置換されたアスパラギン酸にも二重下線を付し、強調する。
【0060】
【
図21】
図21は、リーダー、hFcドメイン、およびリンカーを伴わない短縮型GDFトラップであるActRIIB(L79D 25~131)のアミノ酸配列(配列番号45)を示す。シーケンシングにより、成熟融合タンパク質内のN末端残基であると明らかにされたグルタミン酸と同様に、天然配列内の79位において置換されたアスパラギン酸にも下線を付し、強調する。
【0061】
【
図22A】
図22Aおよび22Bは、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す。配列番号46は、センス鎖に対応し、配列番号47は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付し、細胞外ドメインの野生型ヌクレオチド配列内の置換に二重下線を付し、強調する(
図19の配列番号42と比較する)。また、ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)のアミノ酸配列も示す。
【
図22B】
図22Aおよび22Bは、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す。配列番号46は、センス鎖に対応し、配列番号47は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に二重下線を付し、短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付し、細胞外ドメインの野生型ヌクレオチド配列内の置換に二重下線を付し、強調する(
図19の配列番号42と比較する)。また、ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)のアミノ酸配列も示す。
【0062】
【
図23】
図23は、
図22に示される代替的なヌクレオチド配列(配列番号46)のヌクレオチド76~396(配列番号48)を示す。
図22に表示した同じヌクレオチド置換に、本図でもまた下線を付し、強調する。配列番号48は、L79D置換を有する短縮型ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131に対応する)、例えば、ActRIIB(L79D 25~131)だけをコードする。
【0063】
【
図24】
図24は、カニクイザルにおける、ActRIIB(L79D 20~134)-hFc(グレー)またはActRIIB(L79D 25~131)-hFc(黒)による処置の、ベースラインからの赤血球濃度の絶対変化に対する効果を示す。VEH=ビヒクルである。データは、平均±SEMである。群当たりn=4~8である。
【0064】
【
図25】
図25は、カニクイザルにおける、ActRIIB(L79D 20~134)-hFc(グレー)またはActRIIB(L79D 25~131)-hFc(黒)による処置の、ベースラインからのヘマトクリットの絶対変化に対する効果を示す。VEH=ビヒクルである。データは、平均±SEMである。群当たりn=4~8である。
【0065】
【
図26】
図26は、カニクイザルにおける、ActRIIB(L79D 20~134)-hFc(グレー)またはActRIIB(L79D 25~131)-hFc(黒)による処置の、ベースラインからのヘモグロビン濃度の絶対変化に対する効果を示す。VEH=ビヒクルである。データは、平均±SEMである。群当たりn=4~8である。
【0066】
【
図27】
図27は、カニクイザルにおける、ActRIIB(L79D 20~134)-hFc(グレー)またはActRIIB(L79D 25~131)-hFc(黒)による処置の、ベースラインからの循環網状赤血球濃度の絶対変化に対する効果を示す。VEH=ビヒクルである。データは、平均±SEMである。群当たりn=4~8である。
【0067】
【
図28】
図28は、マウスにおける、エリスロポエチン(EPO)およびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる、72時間にわたる組み合わせ処置の、ヘマトクリットに対する効果を示す。データは、平均±SEM(群当たりn=4)であり、互いと有意に異なる平均(p<0.05、対応のないt検定)は、異なる文字で表示される。組み合わせ処置は、ヘマトクリットを、ビヒクルと比較して23%増大させたが、これは、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる個別の効果の合計を超える相乗作用的増大である。
【0068】
【
図29】
図29は、マウスにおける、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる、72時間にわたる組み合わせ処置の、ヘモグロビン濃度に対する効果を示す。データは、平均±SEM(群当たりn=4)であり、互いと有意に異なる平均(p<0.05)は、異なる文字で表示される。組み合わせ処置は、ヘモグロビン濃度を、ビヒクルと比較して23%増大させたが、これもまた、相乗効果であった。
【0069】
【
図30】
図30は、マウスにおける、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる、72時間にわたる組み合わせ処置の、赤血球濃度に対する効果を示す。データは、平均±SEM(群当たりn=4)であり、互いと有意に異なる平均(p<0.05)は、異なる文字で表示される。組み合わせ処置は、赤血球濃度を、ビヒクルと比較して20%増大させたが、これもまた、相乗効果であった。
【0070】
【
図31】
図31は、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる、72時間にわたる組み合わせ処置の、マウス脾臓内の赤血球生成前駆細胞の数に対する効果を示す。データは、平均±SEM(群当たりn=4)であり、互いと有意に異なる平均(p<0.01)は、異なる文字で表示される。EPO単独は、後期前駆体の成熟を犠牲にして、好塩基性赤芽球(BasoE)の数を劇的に増大させた一方で、組み合わせ処置は、後期前駆体の成熟を減殺せずに支援しながら、少ないが依然として有意な程度までBasoE数を増大させた。
【0071】
【
図32】
図32A~32Cは、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおけるRBCパラメータを、野生型(WT)マウスにおけるRBCパラメータと比較する。2~6カ月齢の非処置マウスに由来する血液試料について解析して、赤血球数(RBC;A)、ヘマトクリット(HCT;B)、およびヘモグロビン濃度(Hgb;C)を決定した。データは、平均±SEM(群当たりn=4)であり、
***はp<0.001である。Hbb
-/-マウスは、重度に貧血性であることが確認された。
【0072】
【
図33】
図33は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、RBC数に対する効果を示す。血液試料は、処置の4週間後に回収した。データは、群当たり2匹の平均であり、バーは、範囲を指し示す。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおいて存在するRBC欠損を、半分に低減した。
【0073】
【
図34】
図34は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、RBC形状に対する効果を示す。4週間にわたり処置されたマウス由来のギムザ染色した血液スメアの画像を、100倍の倍率で得た。ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスに由来する血液における、溶血、細胞破砕物、および多くの小型であるかまたは不規則な形状のRBCに注目されたい。比較すると、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置は、溶血、破砕物、および不規則な形状のRBCの発生を大幅に低減した一方で、正常な形状のRBCの数を増大させた。
【0074】
【
図35】
図35は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、RBC数に対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。データは、平均±SEM;群当たりn=7である。
**は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.01である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける平均RBC欠損を、50%を超えて低減した。
【0075】
【
図36】
図36は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、血清ビリルビンレベルに対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。データは、平均±SEMである。###は、ビヒクルで処置された野生型マウスと対比してP<0.001であり、
*は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.05である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける総ビリルビンレベルを、有意に低減した。
【0076】
【
図37】
図37は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、血清EPOレベルに対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。データは、平均±SEMである。###は、ビヒクルで処置された野生型マウスと対比してP<0.001であり、
*は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.05である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける平均循環EPOレベルを、60%を超えて低減した。
【0077】
【
図38】
図38Aおよび38Bは、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、脾腫に対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。A.1mg/kgで毎週2回、2カ月間にわたる処置の後、3カ月齢で開始したマウス由来の平均±SEMである。###は、ビヒクルで処置された野生型マウスと対比してP<0.001であり;
*は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.05である。B.1mg/kgで毎週2回、3カ月間にわたる処置の後、6~8カ月齢で開始したマウスでの別個の研究において観察された、代表的な脾臓サイズである。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける脾臓重量を、有意に低減した。
【0078】
【
図39】
図39は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、骨塩密度に対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。平均±SEMは、大腿骨解析に基づく。#は、ビヒクルで処置された野生型マウスと対比してP<0.05であり;
*は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.05である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける骨塩密度を正常化した。
【0079】
【
図40】
図40A~40Cは、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、鉄ホメオスタシスのパラメータに対する効果を示す。血清鉄(A)、血清フェリチン(B)、およびトランスフェリンの飽和度(C)についての平均±SEMである。ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比して、
*は、P<0.05であり;
**は、P<0.01である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおける鉄過剰負荷の各測定値を、有意に低減した。
【0080】
【
図41】
図41は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、組織鉄過剰負荷に対する効果を示す。脾臓(A~C)、肝臓(D~F)、および腎臓(G~I)に由来する組織切片(200μm)内の鉄レベルは、ペルルスのプルシアンブルーによる染色によって決定した。野生型脾臓(A)内の鉄染色は、赤脾髄(矢印)内では豊富であったが、白脾髄(
*)内では非存在であった。Hbb
-/-マウス(B)の、脾臓内の鉄染色の増大は、髄外赤血球生成に起因する赤脾髄領域の拡大を反映する。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcは、Hbb
-/-マウスにおいて、脾臓の赤血球生成を低下させ、脾臓鉄染色(C)の野生型パターンを回復させた。加えて、Hbb
-/-マウスの肝臓クッパー細胞(H、矢印)内および腎皮質(E、矢印)内の異常な鉄染色も、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcにより正常化された(FおよびI)。倍率:200倍。
【0081】
【
図42】
図42は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置の、肝臓内のヘプシジンmRNAレベルに対する効果を示す。平均±SEM;
*は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.05である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおけるヘプシジンmRNAの発現を、有意に増大させた。
【0082】
【
図43】
図43は、βサラセミアのHbb
-/-マウスモデルにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、活性酸素種(ROS)の循環レベルに対する効果を示し、ビヒクルを投薬された野生型マウス由来のデータは、比較のために組入れた。データは、幾何平均±SEMである。###は、ビヒクルで処置された野生型マウスと対比してP<0.001であり;
***は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと対比してP<0.001である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスにおけるROSを、有意に低減した。
【0083】
【
図44】
図44は、鎌状赤血球症(SCD)マウスにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、赤血球濃度の絶対変化に対する効果を示す。データは、平均±SEM(群当たりn=5)である。Wt=野生型マウスであり、非症候性複合ヘテロ接合体(β/β
S)マウスであった。ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置は、鎌状赤血球マウス(P≦0.001)における、対照マウス(ビヒクルを単独で投与された鎌状赤血球マウス)と比較した、赤血球レベルの有意な上昇を結果としてもたらした。
【0084】
【
図45】
図45は、鎌状赤血球マウスにおける、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、赤血球レベル、ヘマトクリットレベル、およびヘモグロビンレベルに対する効果を示す。データは、鎌状赤血球対照マウスと対比した、4週間にわたる、ベースラインからの平均の変化(±SEM)である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置は、鎌状赤血球マウスにおける、対照マウスと比較した、赤血球レベル、ヘマトクリットレベル、およびヘモグロビンレベルの有意な上昇を結果としてもたらした。
【0085】
【
図46】
図46は、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、種々の血液パラメータ(すなわち、鎌状赤血球マウスにおける、平均赤血球容量、赤血球(RDC)分布幅、網状赤血球、および反応性酸素種)に対する効果を示す。データは、鎌状赤血球対照マウスと対比した、4週間にわたる、ベースラインからの平均の変化(±SEM)である。ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置は、鎌状赤血球マウスにおける、対照マウスと比較した、平均赤血球容量、赤血球(RDC)分布幅、網状赤血球、および反応性酸素種の有意な増大を結果としてもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0086】
(発明の詳細な説明)
(1.概要)
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有する、種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方における広範な種々の細胞型に対して生物学的作用を発揮することが公知である。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生の間に、パターン形成および組織の特異化において重要な機能を果たし、そして、脂質生成、筋発生、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生および上皮細胞分化を含む種々の分化プロセスに影響を及ぼし得る。TGF-βファミリーのメンバーの活性を操作することによって、しばしば、生物において顕著な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、ウシのPiedmonteseおよびBelgian Blue品種は、GDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子に機能喪失変異を有しており、筋肉量の顕著な増加を引き起こしている。例えば、Grobetら(1997年)、Nat Genet.、17巻(1号):71~4頁を参照されたい。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増加、および、報告によれば、例外的な強度と関連している。例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682~8頁を参照されたい。
【0087】
TGF-βシグナルは、I型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体の異種複合体(heteromeric complex)によって媒介され、これらは、リガンド刺激の際に、下流のSMADタンパク質(例えば、SMADタンパク質1、2、3、5、および8)をリン酸化および活性化する。例えば、Massague、2000年、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1巻:169~178頁を参照のこと。これらのI型およびII型受容体は、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および、予測セリン/スレオニン特異性を持つ細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体は、シグナル伝達に必須である。II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
【0088】
2つの関連するII型受容体(ActRII)である、ActRIIAおよびActRIIBがアクチビンについてのII型受容体として同定されている。例えば、MathewsおよびVale(1991年)、Cell、65巻:973~982頁;ならびにAttisanoら(1992年)、Cell、68巻:97~108頁を参照されたい。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、例えば、BMP6、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含む他のいくつかのTGF-βファミリータンパク質とも生化学的に相互作用し得る。例えば、Yamashitaら(1995年)、J. Cell Biol.、130巻:217~226頁;LeeおよびMcPherron(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、98巻:9306~9311頁;YeoおよびWhitman(2001年)、Mol. Cell、7巻:949~957頁;ならびにOhら(2002年)、Genes Dev.、16巻:2749~54頁を参照されたい。ALK4は、アクチビン、特に、アクチビンAに対する主たるI型受容体であり、ALK7は、同様に他のアクチビン、特に、アクチビンBに対する受容体として機能し得る。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される1つまたは複数の阻害剤作用因子、特に、GDF11および/またはGDF8に拮抗し得る阻害剤作用因子で、ActRII受容体のリガンド(ActRIIリガンドとも呼ばれる)に拮抗することに関する。
【0089】
アクチビンとは、TGFベータスーパーファミリーに属する、二量体ポリペプチドの増殖因子である。2つの近縁のβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体(それぞれ、βAβA、βBβB、およびβAβB)である、3つの主要なアクチビン形態(A、B、およびAB)が存在する。ヒトゲノムはまた、主に肝臓内で発現する、アクチビンCおよびアクチビンEもコードし、βCまたはβEを含有するヘテロ二量体形態もまた公知である。
【0090】
TGF-βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、神経細胞の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の作用因子である。DePaoloら(1991年)、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500~512頁;Dysonら(1997年)、Curr Biol.7巻:81~84頁;およびWoodruff(1998年)、Biochem Pharmacol.55巻:953~963頁。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化作用因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった。Murataら(1988年)、PNAS、85巻:2434頁。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成を促進することが示唆されている。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンの生活性を調節し得、そして/または、アクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP、FLRGまたはFSRL3としても公知)およびα2-マクログロブリンが挙げられる。
【0091】
本明細書で記載される通り、「アクチビンA」に結合する作用因子は、単離βAサブユニットの文脈であれ、二量体の複合体(例えば、βAβAホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてであれ、βAサブユニットに特異的に結合する作用因子である。ヘテロ二量体の複合体(例えば、βAβBヘテロ二量体)の場合、「アクチビンA」に結合する作用因子は、βAサブユニット内に存在するエピトープには特異的であるが、複合体のβA以外のサブユニット(例えば、複合体のβBサブユニット)内に存在するエピトープには結合しない。同様に、「アクチビンA」に拮抗する(これを阻害する)本明細書で開示される作用因子は、単離βAサブユニットの文脈であれ、二量体の複合体(例えば、βAβAホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてあれ、βAサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性を阻害する作用因子である。βAβBヘテロ二量体の場合、「アクチビンA」を阻害する作用因子は、βAサブユニットの1つまたは複数の活性を特異的に阻害するが、複合体のβA以外のサブユニット(例えば、複合体のβBサブユニット)の活性は阻害しない作用因子である。この原則はまた、「アクチビンB」、「アクチビンC」、および「アクチビンE」に結合し、かつ/またはこれらを阻害する作用因子にも当てはまる。「アクチビンAB」に拮抗する本明細書で開示される作用因子は、βAサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性と、βBサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性とを阻害する作用因子である。
【0092】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成における機能のほか、初期胚発生における心臓および胃など、体軸構造(axial structure)の後続の組織化における機能も有する。発生しつつある脊椎動物の胚内の背側組織は主に、脊索および前索板の体軸構造に寄与する一方で、体軸構造以外の胚構造を形成するように、周囲の細胞を動員することが実証されている。Nodalは、I型受容体およびII型受容体の両方ならびにSMADタンパク質として公知の細胞内エフェクターを介して、シグナル伝達すると考えられている。研究は、ActRIIAおよびActRIIBは、NodalのII型受容体として機能するという考えを裏付ける。例えば、Sakumaら(2002年)、Genes Cells.、2002年、7巻:401~12頁を参照されたい。Nodalリガンドは、それらの補因子(例えば、Cripto)と相互作用して、アクチビンI型受容体およびアクチビンII型受容体を活性化させ、これにより、SMAD2をリン酸化することが示唆される。Nodalタンパク質は、初期脊椎動物胚に極めて重要な多くのイベントであって、中胚葉形成、前部パターン形成、および左右体軸の指定を含むイベントに関与している。実験的証拠により、Nodalシグナル伝達は、アクチビンおよびTGFベータに特異的に応答することが既に示されているルシフェラーゼレポーターである、pAR3-Luxを活性化させることが実証されている。しかし、Nodalは、骨形成性タンパク質に対して特異的に応答するレポーターである、pTlx2-Luxを誘導することは不可能である。近年の結果は、Nodalシグナル伝達は、アクチビン-TGFベータ経路のSMADである、SMAD2およびSMAD3の両方に媒介されるという直接的な生化学的証拠を提示する。さらなる証拠により、Nodalシグナル伝達には、細胞外Criptoタンパク質を要することが示されており、これにより、Nodalシグナル伝達は、アクチビンシグナル伝達またはTGFベータシグナル伝達と顕著に異なっている。
【0093】
増殖および分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体中の骨格筋において高度に発現する。遺伝子導入マウスにおけるGDF8欠失変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする。McPherronら、Nature(1997年)、387巻:83~90頁。骨格筋量の同様の増加は、ウシ[例えば、Ashmoreら(1974年)、Growth、38巻:501~507頁;SwatlandおよびKieffer(1994年)、J. Anim. Sci.、38巻:752~757頁;McPherronおよびLee(1997年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94巻:12457~12461頁;ならびにKambadurら(1997年)、Genome Res.、7巻:910~915頁を参照されたい]および、驚くべきことに、ヒト[例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682~8頁を参照されたい]におけるGDF8の天然に存在する変異において明らかである。研究は、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質の発現の増加が随伴することも示している。例えば、Gonzalez-Cadavidら(1998年)、PNAS、95巻:14938~43頁を参照されたい。加えて、GDF8は、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節することが可能であり、筋芽細胞の増殖を調節し得る。例えば、国際特許出願公開第WO00/43781号を参照されたい。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物活性を不活性化することができる。例えば、Miyazonoら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:6407~6415頁;Wakefieldら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:7646~7654頁;およびBrownら(1990年)、Growth
Factors、3巻:35~43頁を参照されたい。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質として、フォリスタチン、および、潜在的に、フォリスタチン関連タンパク質が挙げられる。例えば、Gamerら(1999年)、Dev. Biol.、208巻:222~232頁を参照されたい。
【0094】
BMP11としても公知の増殖および分化因子11(GDF11)は、分泌タンパク質である。McPherronら(1999年)、Nat. Genet.、22巻:260~264頁。GDF11は、マウス発生時に尾芽、肢芽、上顎弓および下顎弓、ならびに後根神経節において発現する。例えば、Nakashimaら(1999年)、Mech. Dev.、80巻:185~189頁を参照されたい。GDF11は、中胚葉組織および神経組織の両方のパターン形成において、固有の役割を果たす。例えば、Gamerら(1999年)、Dev Biol.、208巻:222~32頁を参照されたい。GDF11は、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋発生の負の調節因子であることが示された。例えば、Gamerら(2001年)、Dev Biol.、229巻:407~20頁を参照されたい。筋内のGDF11の発現はまた、GDF8と同様の方式での筋肉の増殖の調節におけるその役割も示唆する。加えて、脳内のGDF11の発現は、GDF11はまた、神経系の機能に関連する活性を有し得ることを示唆する。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮における神経発生を阻害することも見出された。例えば、Wuら(2003年)、Neuron、37巻:197~207頁を参照されたい。
【0095】
骨形成性タンパク質1(OP-1)とも呼ばれる骨形態発生タンパク質(BMP7)は、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。加えて、BMP7は、広範にわたる生理プロセスも調節する。例えば、BMP7は、上皮骨形成現象の一因となる、骨誘導因子であり得る。また、BMP7がカルシウムの調節および骨のホメオスタシスにおいても役割を果たすことも見出されている。アクチビンと同様に、BMP7も、II型受容体であるActRIIAおよびActRIIBに結合する。しかし、BMP7とアクチビンとは、異なるI型受容体を動員して、ヘテロマーの受容体複合体となる。観察される、BMP7の主要なI型受容体が、ALK2であったのに対し、アクチビンはもっぱら、ALK4(ActRIIB)に結合した。BMP7とアクチビンとは、顕著に異なる生体応答を誘発し、異なるSMAD経路を活性化させた。例えば、Macias-Silvaら(1998年)、J Biol Chem.、273巻:25628~36頁を参照されたい。
【0096】
本明細書で実証される通り、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)を使用して、インビボにおける赤血球レベルを高めることができる。ある特定の例では、GDFトラップポリペプチド(具体的には、改変体ActRIIBポリペプチド)は、野生型(非改変)ActRIIポリペプチドの対応する試料と比較して、固有の生体特性を特徴とすることが示される。このGDFトラップは部分的に、アクチビンAに対する結合アフィニティーの実質的な喪失を特徴とし、したがって、アクチビンA活性に拮抗する能力の有意な減殺を特徴とするが、GDF11に対する結合および阻害の野生型に近いレベルを保持する。インビボにおいて、GDFトラップは、野生型ActRIIポリペプチドと比較して、赤血球レベルを高めるのにより有効であり、例えば、鎌状赤血球症を有する患者およびサラセミアを有する患者を含む、貧血を有する患者において、有益な効果を及ぼす。例えば、本明細書では、GDFトラップ療法は、サラセミアを有するヒト患者におけるヘモグロビンレベルの上昇を結果としてもたらすことが示される。赤血球パラメータの改善に加えて、ある特定のサラセミア患者では、GDFトラップ療法の経過中に、脚部潰瘍(貧血、特に、サラセミアおよび鎌状赤血球症など、溶血性貧血の一般的な皮膚合併症である)を実質的に解消していることが観察された。これらのデータは、貧血性障害の種々の合併症の処置におけるActRIIアンタゴニストの使用が、赤血球パラメータに対する正の効果を超えてはるかに広範であることを指し示す。
【0097】
したがって、本開示の方法は一般に、本明細書で記載される、1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト因子の、任意選択で、1つまたは複数の支持療法と組み合わせた使用であって、それを必要とする対象における赤血球レベルを高め、それを必要とする対象における貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血の1つまたは複数の合併症であり、例えば、潰瘍、特に、皮膚潰瘍を含む合併症を処置もしくは予防する使用を対象とする。
【0098】
さらに、本開示のデータは、ActRIIポリペプチドの、赤血球パラメータおよび潰瘍に関して観察される生体活性が、アクチビンAの阻害に依存しないことを指し示す。しかし、アクチビンAへの結合を保持する非改変ActRIIBポリペプチドもやはり、インビボにおいて赤血球を増大させる能力を顕示することに注目されたい。さらに、より中程度の赤血球レベルの上昇が望ましく、かつ/またはある程度のレベルのオフターゲット活性が許容可能である(またはさらに望ましい)一部の適用では、アクチビンAの阻害を保持するActRIIBポリペプチドまたはActRIIAポリペプチドが、アクチビンAに対する結合アフィニティーが減殺されたGDFトラップと比較して、より適すると考えられる。
【0099】
赤血球生成は、エリスロポエチン、G-CSFおよび鉄のホメオスタシスを含む種々の因子によって調節される複雑なプロセスであることに注意すべきである。用語「赤血球レベルを増加させる」および「赤血球の形成を促進する」とは、ヘマトクリット、赤血球数およびヘモグロビン測定値のような臨床的に観察可能な測定基準(metrics)を指し、そのような変化が生じる機構に関しては中立であることが意図される。
【0100】
EPOとは、赤血球系前駆細胞のエリスロサイトへの増殖および成熟に関与する糖タンパク質ホルモンである。EPOは、胎児期には肝臓により生成され、成人期には腎臓により生成される。成人期において、腎不全の帰結として一般的に生じるEPOの生成の減少は、貧血をもたらす。EPOは、遺伝子操作法により、EPO遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞からの、タンパク質の発現および分泌に基づき生成されている。このような組換えEPOの投与は、貧血の処置において有効となっている。例えば、Eschbachら(1987年、N Engl J Med、316巻:73頁)は、慢性腎不全により引き起こされる貧血を是正するためのEPOの使用について記載している。
【0101】
EPOの効果は、サイトカイン受容体のスーパーファミリーに属し、EPO受容体と呼ばれる細胞表面受容体へのその結合、およびこの受容体の活性化により媒介される。ヒトEPO受容体およびマウスEPO受容体は、クローニングされ、発現がなされている。例えば、D’Andreaら(1989年)、Cell、57巻:277頁;Jonesら(1990年)、Blood、76巻:31頁;Winkelmanら(1990年)、Blood、76巻:24頁;および米国特許第5,278,065号を参照されたい。ヒトEPO受容体遺伝子は、およそ224アミノ酸の細胞外ドメインを含む、483アミノ酸の膜貫通タンパク質をコードし、マウスEPO受容体とおよそ82%のアミノ酸配列同一性を呈示する。例えば、米国特許第6,319,499号を参照されたい。クローニングされて哺乳動物細胞内で発現がなされた全長EPO受容体(66~72kDa)は、赤血球系前駆細胞上の天然の受容体のアフィニティーと同様のアフィニティー(KD=100~300nM)でEPOに結合する。したがって、この形態は、主要なEPO結合決定基を含有すると考えられ、EPO受容体と呼ばれる。他の近縁のサイトカイン受容体との類比によれば、EPO受容体は、アゴニストに結合すると二量体化すると考えられる。しかしながら、多量体の複合体であり得るEPO受容体の詳細な構造、およびその活性化の具体的機構は、完全には理解されていない。例えば、米国特許第6,319,499号を参照されたい。
【0102】
EPO受容体の活性化は、いくつかの生物学的効果を結果としてもたらす。これらの効果は、未成熟赤芽球の増殖の増大、未成熟赤芽球の分化の増大、および赤血球系前駆細胞におけるアポトーシスの低減を含む。例えば、Liboiら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11351~11355頁;Kouryら(1990年)、Science、248巻:378~381頁を参照されたい。増殖を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路と、分化を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路とは、異なると考えられる。例えば、Noguchiら(1988年)、Mol
Cell Biol、8巻:2604頁;Patelら(1992年)、J Biol
Chem、267巻:21300頁;およびLiboiら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11351~11355頁を参照されたい。一部の結果は、付属タンパク質が、分化シグナルの媒介に必要とされ得ることを示唆する。例えば、Chibaら(1993年)、Nature、362巻:646頁;およびChibaら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11593頁を参照されたい。しかし、恒常的な活性化形態の受容体は、増殖および分化のいずれも刺激し得るので、分化における付属タンパク質の役割については、議論が一致していない。例えば、Pharrら(1993年)、Proc Natl Acad
Sci USA、90巻:938頁を参照されたい。
【0103】
EPO受容体活性化因子として、低分子赤血球生成刺激作用因子(ESA)のほか、EPOベースの化合物が挙げられる。前者の例は、ポリエチレングリコールに共有結合的に連結された二量体のペプチドベースのアゴニスト(商標名:Hematide(商標)およびOmontys(登録商標))であり、これは、健康なボランティアならびに慢性腎疾患および内因性の抗EPO抗体の両方を有する患者において赤血球生成刺激特性を示している。例えば、Steadら(2006年)、Blood、108巻:1830~1834頁;およびMacdougallら(2009年)、N Engl J Med、361巻:1848~1855頁を参照されたい。他の例として、非ペプチドベースのESAが挙げられる。例えば、Qureshiら(1999年)、Proc Natl Acad Sci USA、96巻:12156~12161頁を参照されたい。
【0104】
EPO受容体活性化因子はまた、EPO受容体自体には接触せずに、内因性EPOの生成を増強することにより赤血球生成を間接的に刺激する化合物も含む。例えば、低酸素誘導転写因子(HIF)は、正常酸素状態下では、細胞の調節機構により抑制されている(不安定化させられている)、EPO遺伝子発現の内因性刺激因子である。したがって、HIFプロピルヒドロキシラーゼ酵素の阻害剤が、インビボにおけるEPO誘導活性について調査されている。EPO受容体の他の間接的な活性化因子として、EPO遺伝子の発現を局所的に阻害する、GATA-2転写因子の阻害剤[例えば、Nakanoら(2004年)、Blood、104巻:4300~4307頁を参照されたい]、およびEPO受容体シグナル伝達の負の調節因子として機能する、造血細胞ホスファターゼ(HCPまたはSHP-1)の阻害剤[例えば、Klingmullerら(1995年)、Cell、80巻:729~738頁を参照されたい]が挙げられる。
【0105】
本明細書中で使用される用語は、一般に、本開示の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本開示の組成物および方法、ならびに、これらの作製方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲および意味は、それらが使用される特定の文脈から明らかである。
【0106】
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて「共通する進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指し、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含む。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。
【0107】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有している場合も共有していない場合もある、核酸もしくはアミノ酸配列間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
【0108】
しかし、一般的な用法およびこの出願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
【0109】
参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に照らした「配列同一性パーセント(%)」とは、配列を決定し、必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後における、保存的置換は配列同一性の一部と考えない場合の、候補配列内のアミノ酸残基(または核酸)の百分率であって、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列内のアミノ酸残基(または核酸)と同一であるアミノ酸残基(または核酸)の百分率と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当該分野の技術の範囲内にある種々の方式で、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST-2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、配列を決定するのに適切なパラメータであって、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要とされる、任意のアルゴリズムを含むパラメータを決定することができる。しかし、本明細書の目的では、アミノ酸(核酸)配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムである、ALIGN-2を使用して生成する。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、ソースコードは、使用説明書と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここで、米国著作権登録第TXU510087号として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Calif.から一般に利用可能であるが、ソースコードからコンパイルすることもできる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含む、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム上の使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
【0110】
本明細書で使用される場合、「Xに実質的に結合しない」とは、「X」に対する作用因子のKDが、約10-7より大きい、10-6より大きい、10-5より大きい、10-4より大きい、またはそれより大きい(例えば、KDを決定するのに使用されるアッセイにより検出可能でない結合)を意味することが意図される。
【0111】
(2.ActRIIアンタゴニスト)
本明細書で提示されるデータは、ActRIIのアンタゴニスト(阻害剤)(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達のアンタゴニスト)を、インビボにおける赤血球レベルを高めるのに使用し得ることを実証する。特に、本明細書では、このようなActRIIアンタゴニストは、種々の貧血のほか、例えば、皮膚潰瘍を含む、貧血の種々の合併症(例えば、障害/状態)も処置するのに有効であることが示される。したがって、本開示は部分的に、単独で、あるいは1つもしくは複数の赤血球生成刺激因子(例えば、EPO)または他の支持療法[例えば、ヒドロキシウレアによる処置、輸血、鉄キレート化療法、および/または疼痛管理(例えば、オピオイド鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬、および/またはコルチコステロイドの1つまたは複数による処置)]と組み合わせて、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血を有する患者において皮膚潰瘍を処置もしくは予防するのに使用され得る、種々のActRIIアンタゴニスト因子を提供する。
【0112】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用するActRIIアンタゴニストは、GDF-ActRIIアンタゴニスト(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、GDFに媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達、特に、GDF11および/またはGDF8に媒介されるActRIIシグナル伝達のアンタゴニスト)である。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、ActRIIA-Fc融合タンパク質、ActRIIB-Fc融合タンパク質、およびGDFトラップ-Fc融合タンパク質など、可溶性ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIAポリペプチドおよび可溶性ActRIIBポリペプチド)およびGDFトラップポリペプチドである。
【0113】
本開示の可溶性ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドは、GDF(例えば、GDF11および/またはGDF8)の拮抗以外の機構を介して、赤血球レベルおよび/または皮膚潰瘍に影響を及ぼし得る[例えば、GDF11および/またはGDF8の阻害は、ある作用因子が、あるスペクトルの追加の作用因子であって、おそらく、TGFベータスーパーファミリーの他のメンバー(例えば、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodal)を含む作用因子の活性を阻害する傾向の指標であることが可能であり、このような集合的阻害は、例えば、造血に対する所望の効果をもたらし得る]が、例えば、抗GDF11抗体;抗GDF8抗体;抗ActRIIA抗体;抗ActRIIB抗体;GDF11、GDF8、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の生成を阻害する、アンチセンス、RNAi、またはリボザイム核酸;ならびにGDF11、GDF8、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の他の阻害剤(例えば、低分子阻害剤)、特に、GDF11-ActRIIA間の結合および/もしくはGDF8-ActRIIA間の結合、ならびに/またはGDF11-ActRIIB間の結合および/もしくはGDF8-ActRIIB間の結合を破壊する作用因子のほか、GDF11、GDF8、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の発現を阻害する作用因子を含む、他の種類のGDF-ActRIIアンタゴニストも有用であることが予測される。任意選択で、本開示のGDF-ActRIIアンタゴニストは、例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodalを含む、他のActRIIリガンドに結合することが可能であり、かつ/またはこれらの活性(または発現)を阻害し得る。任意選択で、本開示のGDF-ActRIIアンタゴニストは、例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodalを含む、1つまたは複数の追加のActRIIリガンドに結合し、かつ/またはこれらの活性(または発現)を阻害する、少なくとも1つの追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて使用することができる。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法に従い使用されるActRIIアンタゴニストは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれ(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。
A.ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップ
【0114】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIポリペプチドに関する。特に、本開示は、ActRIIポリペプチドを使用して、例えば、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、皮膚潰瘍を含む合併症を処置もしくは予防する方法を提供する。本明細書で使用される場合、用語「ActRII」は、II型アクチビン受容体のファミリーを指す。このファミリーは、アクチビン受容体IIA型およびアクチビン受容体IIB型の両方を含む。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドを使用して、それを必要とする対象において貧血を予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を予防する方法を提供する。一部の実施形態では、ActRIIポリペプチドは、ActRIIAポリペプチドである。一部の実施形態では、ActRIIポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドである。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「ActRIIB」とは、任意の種に由来するアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリーと、変異誘発または他の改変によるこのようなActRIIBタンパク質に由来する改変体とを指す。本明細書におけるActRIIBに対する言及は、現在同定されている形態のうちの任意の1つに対する言及であるものと理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチな領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび予測セリン/スレオニンキナーゼ活性を持つ細胞質ドメインから構成される、膜貫通タンパク質である。
【0116】
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを包含する。このような改変体ActRIIAポリペプチドの例は、本開示を通して提供されるほか、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO2006/012627号においても提供されている。任意選択で、本開示のActRIIBポリペプチドを使用して、対象において赤血球レベルを高めることができる。本明細書で記載される、全てのActRIIB関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、そうでないことが具体的に指示されない限りにおいて、下記で提供される、ヒトActRIIB前駆体のタンパク質配列(配列番号1)の番号付けに基づく。
【0117】
ヒトActRIIB前駆体のタンパク質配列は、以下の通りである。
【化1】
【0118】
シグナルペプチドは、一重下線で指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示し、潜在的な、内因性N-連結グリコシル化部位は、二重下線で指し示す。
【0119】
プロセシング後のヒト可溶性(細胞外)ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである。
【化2】
【0120】
一部の実施形態では、タンパク質は、N末端に「SGR・・・」配列を伴って生成することができる。細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
【化3】
【0121】
配列番号1の64位においてアラニン(A64)を有するActRIIBの形態についてはまた、文献においても報告されている。例えば、Hildenら(1994年)、Blood、83巻(8号):2163~2170頁を参照されたい。本出願人らは、A64置換を有するActRIIBの細胞外ドメインを含むActRIIB-Fc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが比較的低いことを確認した。これに対し、64位においてアルギニン(R64)を有する、同じActRIIB-Fc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが、低nM~高pMの範囲である。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIBのための「野生型」参照配列として使用する。
【0122】
64位においてアラニンを有するActRIIBの形態は、以下の通りである。
【化4】
【0123】
シグナルペプチドは、一重下線で指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示す。
【0124】
代替的なA64形態の、プロセシング後の可溶性(細胞外)ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである。
【化5】
【0125】
一部の実施形態では、タンパク質は、N末端に「SGR・・・」配列を伴って生成することができる。細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
【化6】
【0126】
ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列であって、ActRIIB前駆体のアミノ酸1~513をコードする、Genbank参照配列NM_001106.3のヌクレオチド25~1560からなる核酸配列を、下記(配列番号7)に示す。示される配列は、64位においてアルギニンを提示するが、代わりに、アラニンを提示するように改変することができる。シグナル配列に下線を付す。
【化7-1】
【化7-2】
【0127】
プロセシング後のヒト可溶性(細胞外)ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列は、以下(配列番号8)の通りである。示される配列は、64位においてアルギニンを提示するが、代わりに、アラニンを提示するように改変することができる。
【化8】
【0128】
ある特定の実施形態では、本開示は、ActRIIAポリペプチドに関する。本明細書で使用する場合、用語「ActRIIA」とは、任意の種に由来するアクチビン受容体IIA型(ActRIIA)タンパク質のファミリーと、変異誘発または他の改変によるこのようなActRIIAタンパク質に由来する改変体とを指す。本明細書におけるActRIIAへの言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIAファミリーのメンバーは一般に、システインリッチな領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
【0129】
用語「ActRIIAポリペプチド」は、ActRIIAファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドのほか、有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)を含むポリペプチドを含む。このような改変体ActRIIAポリペプチドの例は、本開示を通して提供されるほか、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO2006/012627号においても提供されている。任意選択で、本開示のActRIIAポリペプチドを使用して、対象において赤血球レベルを高めることができる。本明細書で記載される、全てのActRIIA関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、そうでないことが具体的に指示されない限りにおいて、下記で提供される、ヒトActRIIA前駆体のタンパク質配列(配列番号9)の番号付けに基づく。
【0130】
ヒトActRIIA前駆体のタンパク質配列は、以下の通りである。
【化9】
【0131】
シグナルペプチドは、一重下線で指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示し、潜在的な、内因性N-連結グリコシル化部位は、二重下線で指し示す。
【0132】
プロセシング後のヒト可溶性(細胞外)ActRIIAポリペプチド配列は、以下の通りである。
【化10】
【0133】
細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
【化11】
【0134】
ヒトActRIIA前駆体タンパク質をコードする核酸配列であって、Genbank参照NM_001616.4のヌクレオチド159~1700の核酸配列を、下記(配列番号12)に示す。シグナル配列に下線を付す。
【化12-1】
【化12-2】
【0135】
プロセシング後のヒト可溶性(細胞外)ActRIIAポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである。
【化13】
【0136】
ヒトActRIIB可溶性細胞外ドメインおよびヒトActRIIA可溶性細胞外ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを、
図1に例示する。このアラインメントは、両方の受容体内のアミノ酸残基であって、ActRIIリガンドに直接接触すると考えられるアミノ酸残基を指し示す。
図2は、種々の脊椎動物ActRIIBタンパク質およびヒトActRIIAの多重配列アラインメントを描示する。これらのアラインメントからは、リガンド結合性ドメイン内の鍵となるアミノ酸位置であって、通常のActRII-リガンドの結合活性に重要なアミノ酸位置を予測することが可能であるほか、通常のActRII-リガンドの結合活性を顕著に変更させずに、置換に対して許容性を有する可能性が高いアミノ酸位置を予測することも可能である。
【0137】
他の態様では、本開示は、GDFトラップポリペプチド(「GDFトラップ」ともまた呼ばれる)に関する。特に、本開示は、GDFトラップポリペプチドを使用して、例えば、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、それを必要とする対象において鎌状赤血球症を処置し、かつ/または貧血の1つまたは複数の合併症であって、例えば、皮膚潰瘍を含む合併症を処置もしくは予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、GDFトラップポリペプチドを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、GDFトラップポリペプチドを使用して、それを必要とする対象において貧血を予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を予防する方法を提供する。
【0138】
一部の実施形態では、本開示のGDFトラップは、可溶性の改変体ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)であって、改変体ActRIIポリペプチドが、1つまたは複数のリガンド結合活性を、対応する野生型ActRIIポリペプチドに照らして変更させているように、ActRIIポリペプチド(例えば、「野生型」ActRIIポリペプチド)の細胞外ドメイン(リガンド結合性ドメインともまた呼ばれる)内に、1つまたは複数の変異(例えば、アミノ酸の付加、欠失、置換、およびこれらの組み合わせ)を含む改変体ActRIIポリペプチドである。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、少なくとも1つの、対応する野生型ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)と同様な活性を保持する。例えば、GDFトラップは、1つまたは複数のActRIIリガンドに結合することが可能であり、かつ/またはこれらの機能を阻害(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達経路など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、ActRIIリガンドに媒介される活性化を阻害)し得る(例えば、これらの機能に拮抗し得る)。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、Nodal、GDF8、GDF11、BMP6および/またはBMP7の1つまたは複数に結合し、かつ/またはこれらを阻害する。
【0139】
ある特定の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、1つまたは複数の特異的ActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、BMP6、Nodal、および/またはBMP7)に対する結合アフィニティーを増大させている。他の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、1つまたは複数の特異的ActRIIリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、および/またはアクチビンE)に対する結合アフィニティーを減少させている。さらに他の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、1つまたは複数の特異的ActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを増大させ、1つまたは複数の異なる/他のActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを減少させている。したがって、本開示は、1つまたは複数のActRIIリガンドに対する結合特異性を変更させたGDFトラップポリペプチドを提供する。
【0140】
ある特定の実施形態では、本開示のGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8(ミオスタチンとしてもまた公知である)に、例えば、野生型ActRIIポリペプチドと比較して、優先的に結合し、拮抗するようにデザインする。任意選択で、このようなGDF11および/またはGDF8結合性トラップは、Nodal、GDF8、GDF11、BMP6および/またはBMP7の1つまたは複数にさらに結合することが可能であり、かつ/または拮抗し得る。任意選択で、このようなGDF11および/またはGDF8結合性トラップは、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、Nodal、GDF8、GDF11、BMP6および/またはBMP7の1つまたは複数にさらに結合することが可能であり、かつ/または拮抗し得る。任意選択で、このようなGDF11および/またはGDF8結合性トラップは、アクチビンA、アクチビンA/B、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、Nodal、GDF8、GDF11、BMP6および/またはBMP7の1つまたは複数にさらに結合することが可能であり、かつ/または拮抗し得る。ある特定の実施形態では、本開示のGDFトラップは、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンA/B、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE)に対する結合アフィニティーを、例えば、野生型ActRIIポリペプチドと比較して減殺している。ある特定の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、アクチビンAに対する結合アフィニティーを減殺している。
【0141】
例えば、本開示は、GDF8/GDF11に、アクチビンAと比べて優先的に結合し、かつ/または拮抗するGDFトラップポリペプチドを提供する。本開示の実施例で実証される通り、このようなGDFトラップポリペプチドは、アクチビンAに対する高い結合アフィニティーを保持するActRIIポリペプチドと比較して、インビボにおける赤血球生成の、より強力な活性化因子である。さらに、これらの非アクチビンA結合性GDFトラップポリペプチドは、他の組織に対する影響の減少を実証する。したがって、このようなGDFトラップは、アクチビンAへの結合/拮抗と関連する、潜在的なオフターゲット作用を低減しながら、対象において赤血球レベルを高めるために有用であり得る。しかし、治療効果のために、より適度の赤血球レベルの上昇が必要とされる可能性があり、ある程度のレベルのオフターゲット作用も許容可能である(またはさらに望ましい)、一部の適用では、このような選択性のGDFトラップポリペプチドは、それほど望ましくない可能性がある。
【0142】
ActRIIBタンパク質のアミノ酸残基(例えば、E39、K55、Y60、K74、W78、L79、D80、およびF101)は、ActRIIBリガンド結合性ポケット内にあり、例えば、アクチビンA、GDF11、およびGDF8を含むそのリガンドへの結合を媒介する一助となる。したがって、本開示は、ActRIIB受容体の、変更させたリガンド結合性ドメイン(例えば、GDF8/GDF11結合性ドメイン)であって、これらのアミノ酸残基において、1つまたは複数の変異を含むリガンド結合性ドメインを含むGDFトラップポリペプチドを提供する。
【0143】
任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインは、GDF11および/またはGDF8などのリガンドに対する選択性を、ActRIIB受容体の野生型リガンド結合性ドメインと比べて増大させている場合がある。例示すると、変更させたリガンド結合性ドメインの、GDF11および/またはGDF8に対する選択性を、1つまたは複数のアクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、および/またはアクチビンA)、特に、アクチビンAに対するものを上回って増大させる、1つまたは複数の変異を選択することができる。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインは、アクチビンへの結合についてのKdの、GDF11および/またはGDF8への結合についてのKdに対する比が、野生型リガンド結合性ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、なおまたは1000倍である。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインは、アクチビンの阻害についてのIC50の、GDF11および/またはGDF8の阻害についてのIC50に対する比が、野生型リガンド結合性ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、なおまたは1000倍である。任意選択で、変更させたリガンド結合性ドメインは、GDF11および/またはGDF8を、アクチビンの阻害についてのIC50の、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、100分の1、なおまたは1000分の1であるIC50で阻害する。
【0144】
具体例として、ActRIIBのリガンド結合性ドメインの、正に荷電したアミノ酸残基であるAsp(D80)を、異なるアミノ酸残基に変異させて、アクチビンではなく、GDF8に優先的に結合する、GDFトラップポリペプチドを生成することができる。好ましくは、D80残基を、配列番号1に照らして、非荷電アミノ酸残基、負荷電アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群より選択されるアミノ酸残基に変化させる。さらなる具体例として、配列番号1の疎水性残基であるL79を変更させて、アクチビン-GDF11/GDF8結合特性の変更を付与することができる。例えば、L79P置換は、GDF11への結合を、アクチビンへの結合より大幅に低減する。これに対し、L79の、酸性アミノ酸による置きかえ[アスパラギン酸またはグルタミン酸;L79D置換またはL79E置換]は、GDF11への結合アフィニティーを保持しながら、アクチビンAへの結合アフィニティーを大幅に低減する。例示的な実施形態では、本明細書で記載される方法は、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸(例えば、DまたはE)を含む改変体ActRIIBポリペプチドであって、任意選択で、1つまたは複数の追加のアミノ酸の置換、付加、または欠失と組み合わせた改変体ActRIIBポリペプチドである、GDFトラップポリペプチドを活用する。
【0145】
当業者により認識される通り、本明細書で記載される変異、改変体、または改変の大半は、核酸レベルで作製することもでき、場合によって、翻訳後修飾または化学合成により作製することもできる。このような技法は、当該分野で周知であり、それらの一部については、本明細書で記載される。
【0146】
ある特定の実施形態では、本開示は、可溶性ActRIIポリペプチドであるActRIIポリペプチド(ActRIIAおよびActRIIBポリペプチド)に関する。本明細書で記載する場合、用語「可溶性ActRIIポリペプチド」とは一般に、ActRIIタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「可溶性ActRIIポリペプチド」は、ActRIIタンパク質の任意の天然に存在する細胞外ドメインのほか、有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、フラグメント、およびペプチド模倣物形態を含む)(例えば、本明細書で記載される、GDFトラップポリペプチド)を含む。可溶性ActRIIポリペプチドの他の例は、ActRIIまたはGDFトラップタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列を含む。例えば、シグナル配列は、ActRIIAまたはActRIIBタンパク質の天然シグナル配列であってもよく、例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)シグナル配列またはミツバチメリチン(HBM)シグナル配列を含む、別のタンパク質に由来するシグナル配列であってもよい。
【0147】
部分的に、本開示は、本明細書で記載される方法の範囲内にあるActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、およびGDFトラップポリペプチドを生成し、使用するための案内として使用し得る、ActRIIポリペプチドの機能的な活性部分および改変体を同定する。
【0148】
当該分野では、ActRIIタンパク質が、構造的特徴および機能的特徴に関して、特に、リガンド結合に関して、特徴付けられている。例えば、Attisanoら(1992年)、Cell、68巻(1号):97~108頁;Greenwaldら(1999年)、Nature Structural Biology、6巻(1号):18~22頁;Allendorphら(2006年)、PNAS、103巻(20号):7643~7648頁;Thompsonら(2003年)、The EMBO Journal、22巻(7号):1555~1566頁;ならびに米国特許第7,709,605号、同第7,612,041号、および同第7,842,663号を参照されたい。
【0149】
例えば、Attisanoらは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、受容体のアクチビンに対するアフィニティーが低減されることを示した。本願配列番号1のアミノ酸20~119を含有するActRIIB-Fc融合タンパク質、「ActRIIB(20~119)-Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20~134)-Fcと比較してGDF-11およびアクチビンへの結合が減少している。例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと。しかし、ActRIIB(20~129)-Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、野生型と比較して同様だがいくらか減少した活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129(本願配列番号1に照らして)で終止するActRIIB細胞外ドメインは全て活性であると予想されるが、134または133で終止する構築物が最も活性であり得る。同様に、残基129~134(配列番号1に照らして)のいずれかにおける変異によってリガンドの結合親和性が大幅に変更されるとは予想されない。この裏付けとして、P129およびP130(配列番号1に照らして)の変異によってリガンドの結合は実質的に低下しない。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドまたはActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、早ければアミノ酸109(最後のシステイン)で終了し得るが、109~119(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118または119)で終わる形態は、リガンドの結合が減少していると予想される。アミノ酸119(本願配列番号1に照らして)は、不完全に保存されているので、容易に変更または切断される。128以後(本願配列番号1に照らして)で終わるActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップはリガンドの結合活性を保持しているはずである。119~127(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126または127)(配列番号1に照らして)で終わるActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップは、中間の結合能を有する。これらの形態はいずれも、臨床的または実験的な設定に応じて使用することが望ましい場合がある。
【0150】
ActRIIBのN末端では、アミノ酸29またはその手前(本願配列番号1に照らして)で始まるタンパク質が、リガンド結合活性を保持することが予想される。アミノ酸29は、開始システインを表す。24位(本願配列番号1に照らして)における、アラニンからアスパラギンへの変異は、リガンド結合に実質的に影響を及ぼさずに、N-連結グリコシル化配列を導入する。例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい。これにより、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域であって、アミノ酸20~29に対応する領域内の変異は、十分に許容されることが確認される。特に、20、21、22、23、および24位(本願配列番号1に照らして)で始まるActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップは、一般的なリガンド結合活性を保持し、25、26、27、28、および29位(本願配列番号1に照らして)で始まるActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップもまた、リガンド結合活性を保持するはずである。例えば、本明細書ならびに米国特許第7,842,663号において示されているデータは、驚くべきことに、22、23、24、または25で始まるActRIIB構築物は、最大の活性を有することを実証する。
【0151】
まとめると、ActRIIBの活性部分(例えば、リガンド結合活性)は、配列番号1のアミノ酸29~109を含む。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップは、例えば、ActRIIBの一部であって、配列番号1のアミノ酸20~29に対応する残基で始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29で始まり)、配列番号1のアミノ酸109~134に対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134で終わる)一部に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。他の例は、配列番号1の20~29位(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位)、または21~29位(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位)で始まり、119~134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、119~133位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133位)、129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)、または129~133位(例えば、129、130、131、132、または133位)で終わる、ポリペプチドを含む。他の例は、配列番号1の20~24位(例えば、20、21、22、23、または24位)、21~24位(例えば、21、22、23、または24位)、または22~25位(例えば、22、22、23、または25位)で始まり、109~134位(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、119~134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、または129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)で終わる構築物を含む。これらの範囲内の改変体、特に、配列番号1の対応する部分に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する改変体もまた、企図される。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップは、配列番号1のアミノ酸残基25~131に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25~131を含まないか、またはこれらからならない。
【0152】
本開示は、
図1に示されるように、合成ActRIIB構造の分析結果を含み、これは、一部において、リガンド結合ポケットが残基Y31、N33、N35、L38~T41、E47、E50、Q53~K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78~N83、Y85、R87、A92、およびE94~F101によって規定されることを実証している。これらの位置において、保存的変異は許容されると予想されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82A、およびL79位における変異と同様に良好に許容される。R40はツメガエルにおいてKであり、この位置の塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシのActRIIBではRであり、ツメガエルのActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHを含めたアミノ酸がこの位置で許容される。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドについての一般式は、配列番号1のアミノ酸29~109に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、任意選択で、20~24位(例えば、20、21、22、23、または24位)または22~25位(例えば、22、23、24、または25位)の範囲の位置で始まり、129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)の範囲の位置で終わり、リガンド結合ポケット内に、1つ、2つ、5つ、10、または15以下の保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケット内の40、53、55、74、79、および/または82位に、0、1つ、または複数の非保存的変更を含むアミノ酸配列である。可変性が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上述のように)、および42~46位および65~73位(配列番号1に照らして)を含む。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、A64バックグラウンドにおけるリガンドの結合を実際に改善し、したがって、R64バックグラウンドにおいてリガンドの結合に対する好ましくない影響を有さないと予想される。例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと。この変化により、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化が排除される可能性があり、したがって、この領域における著しい変化が許容される可能性があることが実証されている。R64A変化は許容性が乏しいが、R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基が64位において許容され得る。例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと。
【0153】
ActRIIBは、完全に保存された細胞外ドメインの大きなストレッチ(stretch)を持ち、ほぼ全ての脊椎動物にわたって良好に保存されている。ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物の生物体からのActRIIB配列を比較することにより、変更され得る残基への洞察がもたらされる。したがって、活性な、本開示の方法に従う有用なヒトActRIIB改変体ポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップは、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基と同様の残基を含み得る。以下の例は、活性なActRIIB改変体を定義するためのこのアプローチを例示している。L46は、ツメガエルのActRIIBではバリンであるので、この位置は変更され得、任意選択で、V、IまたはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性残基に変更され得る。E52は、ツメガエルではKであり、これは、この部位で、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様の変化が許容され得ることを示している。T93は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において幅広い構造的差異が許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましい。F108は、ツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性群、例えばI、VまたはLが許容されるはずである。E111は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた、荷電残基が許容されることを示している。R112は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、RおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示している。119位のAは比較的不完全に保存されており、げっ歯類ではPとして、ツメガエルではVとして現れ、したがって、この位置では本質的にいかなるアミノ酸も許容されるはずである。
【0154】
ActRIIB(R64)-Fc形態と比べて、さらなるN-連結グリコシル化部位(N-X-S/T)の付加は、十分に許容されることが既に実証されている。例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい。したがって、N-X-S/T配列は、一般に、本開示のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップにおいて
図1において定義されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。非内因性N-X-S/T配列の導入に特に適した部位としては、アミノ酸20~29、20~24、22~25、109~134、120~134または129~134(配列番号1に照らして)が挙げられる。N-X-S/T配列は、ActRIIB配列とFcドメインまたは他の融合成分との間のリンカーにも導入され得る。このような部位は、以前から存在しているSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または、以前から存在しているNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入され得る。したがって、N-連結グリコシル化部位を生じる望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(できるかぎりN65Aの変更と組み合わせる)、E105N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112T(配列番号1に照らして)である。グリコシル化されることが予測されるSはどれも、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を生じることなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるTはどれも、Sに変更され得る。したがって、S67TおよびS44T(配列番号1に照らして)の変更が企図される。同様に、A24N改変体では、S26Tの変更が使用され得る。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップポリペプチドは、上記の、1つまたは複数の追加の非内因性N-連結グリコシル化コンセンサス配列を有する改変体であり得る。
【0155】
本明細書に記載されるバリエーションは、種々の方法で組み合わせられ得る。さらに、本明細書中に記載される変異誘発プログラムの結果は、保存が多くの場合有益であるアミノ酸位がActRIIBにあることを示す。配列番号1に照らして、これらとしては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、そして特にトリプトファン)、37位(酸性、そして特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本明細書中に開示されるActRIIBポリペプチドおよびActRIIBベースのGDFトラップにおいて、本開示は保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存が望ましいと考えられる他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または荷電、特にE、D、RまたはK)、全て配列番号1に照らして。
【0156】
活性な(例えば、リガンド結合)ActRIIAポリペプチドについての一般式は、配列番号9のアミノ酸30で始まり、アミノ酸110で終わるポリペプチドを含むポリペプチドである。したがって、本開示のActRIIAポリペプチドおよびActRIIAベースのGDFトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドを含み得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIAベースのGDFトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110を含まないか、またはこれらからならない。任意選択で、本開示のActRIIAポリペプチドおよびActRIIAベースのGDFトラップポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸12~82に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドであって、任意選択で、1~5位(例えば、1、2、3、4、または5位)または3~5位(例えば、3、4、または5位)の範囲の位置で始まり、それぞれ、110~116位(例えば、110、111、112、113、114、115、または116位)または110~115位(例えば、110、111、112、113、114、または115位)の範囲の位置で終わり、リガンド結合ポケット内に、1つ、2つ、5つ、10、または15以下の保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケット内の40、53、55、74、79、および/または82位に、0、1つ、または複数の非保存的変更(配列番号9に照らして)を含むポリペプチドを含む。
【0157】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)およびGDFトラップポリペプチドの機能的に活性なフラグメントは、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチド(例えば、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、46および48)をコードする核酸の対応するフラグメントから組換えにより生成されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f-Moc化学反応またはメリフィールド固相t-Boc化学反応など、当該分野で公知の技法を使用して、化学合成することができる。フラグメントを、生成(組換えにより、または化学合成により)および試験して、ActRII受容体および/または1つまたは複数のActRIIリガンド(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7および/またはNodal)のアンタゴニスト(阻害剤)として機能し得るペプチジルフラグメントを特定し得る。
【0158】
一部の実施形態では、本開示のActRIIAポリペプチドは、配列番号9、10、11、22、26、および28から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9、10、11、22、26、および28から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9、10、11、22、26、および28から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるか、またはこれからなる。
【0159】
一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、31、および49から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、31、および49から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、31、および49から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるか、またはこれからなる。
【0160】
一部の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、30、31、36、37、38、41、44、45、49、50、および51から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む改変体ActRIIBポリペプチドである。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、30、31、36、37、38、41、44、45、49、50、および51から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、30、31、36、37、38、41、44、45、49、50、および51から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、この場合、配列番号1、4、または49のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸(Dアミノ酸残基またはEアミノ酸残基)である。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号36、37、38、41、44、45、50、および51から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号1、2、3、4、5、6、29、および31から選択されるアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
【0161】
一部の実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、配列番号9、10、11、22、26、28、29および31から選択されるアミノ酸配列に少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む改変体ActRIIAポリペプチドである。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号9、10、11、22、26、28、29および31から選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号9、10、11、22、26、28、29および31から選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列から本質的になるか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号9、10、11、22、26、28、29および31から選択されるアミノ酸配列を含まないか、またはこれからならない。
【0162】
一部の実施形態では、本開示は、治療有効性または安定性(例えば、貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強することなどの目的のために、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップの構造を改変することにより機能的改変体を作製することを企図する。改変体は、アミノ酸の置換、欠失、付加またはそれらの組み合わせによっても生成することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。本開示のポリペプチドのアミノ酸配列の変化の結果として、機能的相同体がもたらされるのかどうかは、非改変もしくは野生型ポリペプチドと比較した場合に、野生型ポリペプチドと同様の様式で細胞内の応答を生成するか、または、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6およびBMP7など、1つまたは複数のリガンドに結合する、改変体ポリペプチドの能力を評価することにより、たやすく決定することができる。
【0163】
ある特定の実施形態では、本開示は、ポリペプチドのグリコシル化を変更させるような、本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドの特異的変異を企図する。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O-連結もしくはN-連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン-X-スレオニンまたはアスパラギン-X-セリン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O-連結グリコシル化部位については)ポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、改変されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。ポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)フリーなカルボキシル基;(c)フリーなスルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)フリーなヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。ポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。ポリペプチドにおける、炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら[Meth. Enzymol.(1987年)、138巻:350頁]により記載されているように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。ポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得るからである。一般に、ヒトにおいて使用するための本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドは、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現され得るが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
【0164】
本開示はさらに、変異体、特に、本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドのコンビナトリアル変異体のセットを生成する方法のほか、短縮型変異体も生成する方法も企図する。コンビナトリアル変異体のプールは、ActRIIおよびGDFトラップ配列を同定するためにとりわけ有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、薬物動態の変更またはリガンドへの結合の変更など、特性を変更させたポリペプチド改変体を生成することであり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチドは、ActRII受容体に結合する能力、ActRIIリガンド(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、BMP6および/またはNodal)のActRIIポリペプチドへの結合を妨害する能力、または、ActRIIリガンドにより引き起こされるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングされ得る。
【0165】
ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドの活性はまた、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイでも試験することができる。例えば、赤血球生成に関与する遺伝子の発現に対するActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドの作用が評価され得る。これは、必要な場合、1または複数の組換えActRIIリガンドタンパク質(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、BMP6および/またはNodal)の存在下で行われ得、そして、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチド、そして任意選択でActRIIリガンドを生成するように細胞がトランスフェクトされ得る。同様に、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、マウスもしくは他の動物に投与され得、そして、1または複数の血液数測定値(例えば、RBC数、ヘモグロビン、または網状赤血球)または皮膚潰瘍パラメータが、当該分野で認識された方法を用いて評価され得る。
【0166】
コンビナトリアル由来の改変体であって、参照ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドと比べて選択的な効力を有するか、または一般に効力を増大させたリガンドトラップを生成することができる。このような改変体は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する非改変ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、タンパク質分解、または、非改変ポリペプチドの崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、そのポリペプチドの半減期を調節することによってActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドレベルを変更するのに利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にし得る。Fc融合タンパク質では、変異は、タンパク質の半減期を変更するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において作製され得る。
【0167】
コンビナトリアルライブラリーは、各々が潜在的なActRIIまたはGDFトラップ配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成することができる。例えば、潜在的なActRIIまたはGDFトラップポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または代替的に、大型の融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイのための)として発現可能であるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を、遺伝子配列に酵素的にライゲーションすることができる。
【0168】
潜在的な相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から生成し得る、多くの方式が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動式DNA合成器で実行することができ、次いで、合成遺伝子は、発現に適切なベクターにライゲーションすることができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当該分野で周知である。例えば、Narang, SA(1983年)、Tetrahedron、39巻:3頁;Itakuraら(1981年)、Recombinant DNA、Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules、AG Walton編、Amsterdam、Elsevier、273~289頁;Itakuraら(1984年)、Annu. Rev. Biochem.、53巻:323頁;Itakuraら(1984年)、Science、198巻:1056頁;Ikeら(1983年)、Nucleic Acid Res.、11巻:477頁を参照されたい。このような技法は、他のタンパク質の指向進化で利用されている。例えば、Scottら、(1990年)、Science、249巻:386~390頁;Robertsら(1992年)、PNAS USA、89巻:2429~2433頁;Devlinら(1990年)、Science、249巻:404~406頁;Cwirlaら、(1990年)、PNAS USA、87巻:6378~6382頁のほか、米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照されたい。
【0169】
代替的に、変異誘発の他の形態も、コンビナトリアルライブラリーを生成するのに活用することができる。例えば、本開示のActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、例えば、アラニン走査変異誘発[例えば、Rufら(1994年)、Biochemistry、33巻:1565~1572頁;Wangら(1994年)、J. Biol. Chem.、269巻:3095~3099頁;Balintら(1993年)、Gene、137巻:109~118頁;Grodbergら(1993年)、Eur. J. Biochem.、218巻:597~601頁;Nagashimaら(1993年)、J. Biol. Chem.、268巻:2888~2892頁;Lowmanら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832~10838頁;およびCunninghamら(1989年)、Science、244巻:1081~1085頁を参照されたい]を使用して、リンカー走査変異誘発(例えば、Gustinら(1993年)、Virology、193巻:653~660頁;およびBrownら(1992年)、Mol. Cell Biol.、12巻:2644~2652頁;McKnightら(1982年)、Science、232巻:316頁を参照されたい)によって、飽和変異誘発[例えば、Meyersら、(1986年)、Science、232巻:613頁を参照されたい]によって、PCR変異誘発[例えば、Leungら(1989年)、Method Cell Mol Biol、1巻:11~19頁を参照されたい]によって、または化学的変異誘発[例えば、Millerら(1992年)、A Short Course in Bacterial Genetics、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY;およびGreenerら(1994年)、Strategies in Mol Biol、7巻:32~34頁を参照されたい]を含むランダム変異誘発によって、スクリーニングすることにより、ライブラリーから生成および単離することができる。特に、コンビナトリアルの状況におけるリンカー走査変異誘発は、ActRIIポリペプチドの短縮型(生体活性)形態を同定するための魅力的な方法である。
【0170】
当該分野では、広範にわたる技法であって、点変異および短縮により作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための技法、および、このために、ある特定の特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための技法が公知である。このような技法は一般に、本開示のActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発により生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合可能である。大規模な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用される技法は典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程と、適切な細胞を結果として得られるベクターのライブラリーで形質転換する工程と、所望の活性の検出により、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる工程とを含む。一部の実施形態では、アッセイは、ActRIIリガンド(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP7、BMP6および/またはNodal)についての結合アッセイならびに/またはActRIIリガンドに媒介される細胞シグナル伝達についてのアッセイを含む。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドはさらに、ActRII(例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチド内に天然に存在する任意の翻訳後修飾に加えて翻訳後修飾を含み得る。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。結果として、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類もしくは単糖類およびホスフェイトのような非アミノ酸成分を含み得る。このような非アミノ酸成分の、リガンドトラップポリペプチドの機能に対する影響は、他のActRIIまたはGDFトラップ改変体について本明細書中に記載されるようにして試験され得る。本開示のポリペプチドの新生形態を切断することによってポリペプチドが細胞内で生成される場合、翻訳後プロセシングもまた、このタンパク質の正確な折り畳みおよび/または機能にとって重要となり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3またはHEK293)が、このような翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、そして、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。
【0172】
ある特定の態様では、本開示のActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、少なくともActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチド)またはGDFトラップポリペプチドの部分(ドメイン)と、1つまたは複数の異種部分(ドメイン)とを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖Fc領域、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望される特性を与えるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、グルタチオン-、アミラーゼ-、およびニッケル-もしくはコバルト-結合化樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィーのための適切なマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS6)融合パートナーと共に有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)のような「キット」の形態で利用可能である。別の例としては、融合ドメインは、リガンドトラップポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、「エピトープタグ」(これは、特定の抗体に利用可能な、通常は短いペプチド配列である)が挙げられる。特定のモノクローナル抗体に容易に利用可能な周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびc-mycタグが挙げられる。いくつかの場合、融合ドメインは、関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質を解放することを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。解放されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の実施形態では、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、インビボでポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)と融合される。「安定化」とは、それが、崩壊の減少によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、血清半減期を増加させる任意のものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して所望の薬物動態特性を与えることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を与え得る。選択され得る融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、筋肉成長のさらなる刺激のような付加的な生物学的機能を与えるもの)が挙げられる。
【0173】
ある特定の実施形態では、本開示は、免疫グロブリンFcドメインを含むActRIIまたはGDFトラップ融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、哺乳動物免疫グロブリンドメインである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、ヒト免疫グロブリンドメインである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、マウス免疫グロブリンドメインである。ある特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMのFcドメインである。ある特定の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、またはIgA2のFcドメインである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、ヒトIgG1Fcドメイン、またはヒトIgG2Fcドメインである。
【0174】
ある特定の実施形態では、本開示は、以下のIgG1 Fcドメイン配列を含む、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質を提供する。
【化14】
【0175】
他の実施形態では、本開示は、以下のIgG1 Fcドメインの改変体を含む、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質を提供する。
【化15】
【0176】
任意選択で、IgG1Fcドメインは、Asp-265、リジン322およびAsn-434のような残基における1または複数の変異を有する。特定の場合、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asp-265変異)を持つ変異型IgG1Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合では、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asn-434変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型IgG1Fcドメインに比べて、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
【0177】
ある特定の他の実施形態では、本開示は、以下を含む、IgG2 Fcドメインの改変体を含むActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質を提供する。
【化16】
【0178】
融合タンパク質の異なるエレメントは、所望の機能性と符合する任意の様式で配列し得ることが理解される。例えば、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFトラップポリペプチドドメインを、異種ドメインに対してC末端に配置することもでき、代替的に、異種ドメインを、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFトラップポリペプチドドメインに対してC末端に配置することもできる。ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFトラップポリペプチドドメインと、異種ドメインとは、融合タンパク質内で隣接する必要はなく、追加のドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインに対してC末端またはN末端に含めることもでき、ドメインの間に含めることもできる。
【0179】
例えば、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質は、式A-B-Cに示されるアミノ酸配列を含み得る。B部分は、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFトラップポリペプチドドメインに対応する。A部分およびC部分は、独立に、0、1、または1を超えるアミノ酸であることが可能であり、A部分およびC部分のいずれも、存在する場合、Bに対して異種である。A部分および/またはC部分は、リンカー配列を介して、B部分に付加され得る。例示的なリンカーは、例えば、Gly-Gly-Glyリンカーなど、2つ~10、2つ~5つ、2つ~4つ、2つ~3つのグリシン残基などの短いポリペプチドリンカーを含む。他の適切なリンカーについては、本明細書の上記で記載している[例えば、TGGGリンカー(配列番号53)]。ある特定の実施形態では、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質は、式A-B-Cに示されるアミノ酸配列[式中、Aは、リーダー(シグナル)配列であり、Bは、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFポリペプチドドメインからなり、Cは、インビボにおける安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製の1つまたは複数を増強するポリペプチド部分である]を含む。ある特定の実施形態では、ActRII融合タンパク質またはGDFトラップ融合タンパク質は、式A-B-Cに示されるアミノ酸配列[式中、Aは、TPAリーダー配列であり、Bは、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFポリペプチドドメインからなり、Cは、免疫グロブリンFcドメインである]を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号22、26、29、31、36、38、41、44、および51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0180】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドは、ポリペプチドを安定化させ得る1または複数の修飾を含む。例えば、このような修飾は、ポリペプチドのインビトロ半減期を増強させるか、ポリペプチドの循環半減期を増強させる、かつ/または、ポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ActRIIポリペプチドドメインまたはGDFトラップポリペプチドドメインと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の修飾(例えば、本開示のポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、本開示のポリペプチドからの炭水化物部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)を指すだけでなく、炭水化物部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性部分も含む。
【0181】
一部の実施形態では、本明細書で記載される方法に従い使用されるActRIIポリペプチドおよびGDFトラップは、単離ポリペプチドである。本明細書で使用する場合、単離タンパク質または単離ポリペプチドとは、その天然環境の成分から分離されたタンパク質またはポリペプチドである。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドを、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換HPLCまたは逆相HPLC)により決定した場合に、95%、96%、97%、98%、または99%より高い純度まで精製する。当該分野では、抗体純度を評価するための方法が周知である。例えば、Flatmanら、(2007年)、J. Chromatogr.、B848巻:79~87頁を参照されたい。
【0182】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップは、当該分野で公知の様々な技法により生成することができる。例えば、本開示のポリペプチドは、Bodansky, M.、Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年);およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)において記載されているものなどの標準的なタンパク質化学技術を使用して合成することができる。加えて、自動式ペプチド合成器も、市販されている(例えば、Advanced ChemTech 396型;Milligen/Biosearch9600を参照されたい)。代替的に、それらのフラグメントまたは改変体を含む、本開示のポリペプチドは、当該分野で周知の種々の発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を使用して、組換えにより生成することもできる。さらなる実施形態では、本開示の改変ポリペプチドまたは非改変ポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、またはPACE(paired basic
amino acid converting enzyme)の使用を介する、組換えにより生成された全長ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの消化により生成することができる。(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)コンピュータ解析を使用して、タンパク質分解性切断部位を同定することができる。代替的に、このようなポリペプチドは、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミンなど)を使用して、組換えにより生成された全長ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドから生成することができる。
【0183】
本明細書で開示されるActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、貧血を処置または予防し、貧血、例えば、皮膚潰瘍の1つまたは複数の合併症を処置または予防する、など)ことができる。一部の実施形態では、所望の効果は、貧血の1つまたは複数の合併症、例えば、皮膚潰瘍の処置である。一部の実施形態では、所望の効果は、貧血の1つまたは複数の合併症、例えば、皮膚潰瘍の予防である。例えば、本明細書で開示されるActRIIポリペプチドは、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のActRIIポリペプチド、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、および/または抗ActRIIB抗体);iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);v)本明細書で開示される、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストの1つもしくは複数(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチド;ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0184】
同様に、本明細書で開示されるGDFトラップのいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、貧血を処置または予防し、貧血の1つまたは複数の合併症、例えば、皮膚潰瘍を処置または予防する、など)ことができる。一部の実施形態では、所望の効果は、貧血の1つまたは複数の合併症、例えば、皮膚潰瘍の処置である。一部の実施形態では、所望の効果は、貧血の1つまたは複数の合併症、例えば、皮膚潰瘍の予防である。例えば、本明細書で開示されるGDFトラップは、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のGDFトラップ、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドまたはActRIIBポリペプチド);iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、および/または抗ActRIIB抗体);iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);v)本明細書で開示される、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストの1つもしくは複数(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチド;ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0185】
B.ActRIIポリペプチドおよびGDFトラップをコードする核酸
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるActRIIポリペプチドおよびGDFトラップポリペプチド(そのフラグメント、機能的改変体、および融合タンパク質を含む)をコードする、単離核酸および/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号12は、天然に存在するヒトActRIIA前駆体のポリペプチドをコードするが、配列番号13は、ActRIIAのプロセシング後の細胞外ドメインをコードする。さらに、配列番号7は、天然に存在するヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(上記のR64改変体)をコードするが、配列番号8は、ActRIIBのプロセシング後の細胞外ドメイン(上記のR64改変体)をコードする。対象核酸は、一本鎖でもよく、二本鎖でもよい。このような核酸は、DNA分子でもよく、RNA分子でもよい。これらの核酸は、例えば、本開示のActRIIベースのリガンドトラップポリペプチドを作製するための方法において使用することができる。
【0186】
本明細書で使用する場合、単離核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、その核酸分子を通常含有するが、その核酸分子が染色体外またはその天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する細胞内に含有される核酸分子を含む。
【0187】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップをコードする核酸は、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47、および48のいずれか1つの改変体である核酸を含むことが理解される。改変体ヌクレオチド配列は、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加、または欠失により異なる配列であって、対立遺伝子改変体を含む配列を含み、したがって、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47、および48のいずれか1つに表示されるヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0188】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIポリペプチドおよびGDFトラップは、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47および48に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である単離核酸配列または組換え核酸配列によりコードされる。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップは、配列番号7、8、12、13、27、および32のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列のいずれか1つを含むかまたはこれらからなる核酸配列によりコードされない。当業者は、配列番号7、8、12、13、27、32、39、42、47および48、ならびにこれらの改変体に相補的な配列に、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である核酸配列もまた、本開示の範囲内にあることを理解する。さらなる実施形態では、本開示の核酸配列は、単離核酸配列であっても、組換え核酸配列であっても、かつ/または異種ヌクレオチド配列と融合させてもよく、DNAライブラリー内の核酸配列であってもよい。
【0189】
他の実施形態では、本開示の核酸はまた、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47および48に指定されるヌクレオチド配列、配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47および48の相補配列、またはこれらのフラグメントに対して高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含む。上述のように、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーションの後に、50℃における2.0×SSCの洗浄を行い得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度と塩の両方が変更されても、温度または塩濃度が一定に保たれ、他の変数が変更されてもよい。一実施形態では、本開示は、室温における6×SSCとその後の室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0190】
遺伝子コードにおける縮重に起因して配列番号7、8、12、13、27、32、39、40、42、43、46、47および48に示される核酸と異なる単離された核酸もまた、本開示の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が1より多いトリプレットによって示される。同じアミノ酸を特定するコドンまたは同義語(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに対する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中には、本主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列の多型が存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子改変に起因して、所与の種の個体間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3~5%までのヌクレオチド)におけるこれらの改変が存在し得ることを理解する。任意およびあらゆるこのようなヌクレオチドの改変と、結果として生じるアミノ酸の多型とは、本開示の範囲内である。
【0191】
特定の実施形態では、本開示の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。種々の宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知である。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくはアクチベーター配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本開示によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1つより多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化する。
【0192】
本開示の特定の態様では、本主題の核酸は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α-接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組み合わせが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
【0193】
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
【0194】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて改変される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年)を参照のこと。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β-galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
【0195】
一部の実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のActRIIポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
【0196】
本開示はまた、1または複数の本主題のActRIIまたはGDFトラップポリペプチドのコード配列を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本開示のActRIIまたはGDFトラップポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞[例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株]において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0197】
したがって、本開示はさらに、本主題のActRIIまたはGDFトラップポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドは、ポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のポリペプチドは、タンパク質を精製するための当該分野で公知の技法であって、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫アフィニティー精製、およびActRIIまたはGDFトラップポリペプチドに融合させたドメインに結合する作用因子によるアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムを使用して、ActRII-FcまたはGDFトラップ-Fc融合タンパク質を精製することができる)を含む技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはこれらの両方から単離することができる。一部の実施形態では、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップは、その精製を容易とするドメインを含有する融合タンパク質である。
【0198】
一部の実施形態では、精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーのうちの3つまたはこれより多く、任意の順序で含む工程により達成する。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了し得る。ActRII-Fcタンパク質またはGDFトラップ-Fcタンパク質は、サイズ除外クロマトグラフィーにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができ、SDS PAGEにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができる。純度の標的レベルは、哺乳動物系、特に、非ヒト霊長動物、齧歯動物(マウス)、およびヒトにおいて、望ましい結果を達成するのに十分なレベルであるべきである。
【0199】
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えActRIIまたはGDFトラップポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製ActRIIまたはGDFトラップポリペプチドを提供し得る。例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、(1991年)PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
【0200】
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくは突出(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling-in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと。
【0201】
C.抗体アンタゴニスト
ある特定の態様では、本開示は、ActRII活性に拮抗する(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の阻害)抗体または抗体の組み合わせに関する。特に、本開示は、抗体ActRIIアンタゴニストまたは抗体ActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、例えば、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置もしくは予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、抗体ActRIIアンタゴニストまたは抗体ActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置し、かつ/または貧血を有する対象において貧血の1つもしくは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、抗体ActRIIアンタゴニストまたは抗体ActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を予防し、かつ/または貧血を有する対象において貧血の1つもしくは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を予防する方法を提供する。
【0202】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体ActRIIアンタゴニストは、少なくともGDF11に結合し、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化)を阻害する抗体または抗体の組み合わせである。任意選択で、抗体または抗体の組み合わせは、特に、GDF11およびGDF8の両方に対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または1つもしくは複数の抗GDF11抗体と、1つもしくは複数の抗GDF8抗体との組み合わせの文脈において、GDF8にさらに結合し、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化)をさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8に結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、特に、複数のActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または複数の抗体(各々が、異なるActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する)の組み合わせの文脈において、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。
【0203】
ある特定の態様では、本開示のActRIIアンタゴニストは、少なくともGDF8に結合し、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化)を阻害する抗体または抗体の組み合わせである。任意選択で、抗体または抗体の組み合わせは、特に、GDF8およびGDF11の両方に対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または1つもしくは複数の抗GDF8抗体と、1つもしくは複数の抗GDF11抗体との組み合わせの文脈において、GDF11にさらに結合し、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化)をさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF8および/またはGDF11に結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する、本開示の抗体または抗体の組み合わせは、特に、複数のActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する多特異性抗体の場合において、または複数の抗体(各々が、異なるActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを有する)の組み合わせの文脈において、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAまたはActRIIBのシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。
【0204】
別の態様では、本開示のActRIIアンタゴニストは、ActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合し、かつ/またはその活性を阻害する抗体または抗体の組み合わせである。一部の実施形態では、本開示の抗ActRII受容体抗体(例えば、抗ActRIIA受容体抗体または抗ActRIIB受容体抗体)または抗体の組み合わせは、ActRII受容体に結合し、少なくともGDF11によるActRII受容体への結合および/またはその活性化(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化)を防止する。任意選択で、本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組み合わせは、GDF8によるActRII受容体への結合および/またはその活性化をさらに防止する。任意選択で、本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組み合わせは、アクチビンAが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを実質的に阻害しない。一部の実施形態では、ActRII受容体に結合し、GDF11および/またはGDF8によるActRII受容体への結合および/またはその活性化を防止する、本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数によるActRII受容体への結合および/またはその活性化をさらに防止する。
【0205】
抗体という用語は、本明細書では、最も広い意味で使用され、それらが、所望の抗原結合活性を呈示する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、および抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない、種々の抗体構造を包摂する。抗体フラグメントとは、インタクトな抗体以外の分子であって、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む分子を指す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディー(diabody);直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むがこれらに限定されない。例えば、Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁;Plueckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編(Springer-Verlag、New York)、269~315頁(1994年);WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号;同第5,587,458号;および同第5,869,046号を参照されたい。本明細書で開示される抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、それらに付加させた、検出可能な標識を含む(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る)。一部の実施形態では、本開示の抗体は、単離された抗体である。
【0206】
ダイアボディーは、二価または二特異性であり得る、2つの抗原結合性部位を有する抗体フラグメントである。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁;およびHollingerら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444~6448頁を参照されたい。トリアボディー(triabody)およびテトラボディー(tetrabody)もまた、Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁において記載されている。
【0207】
単一ドメイン抗体とは、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または抗体の軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体フラグメントである。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい。
【0208】
抗体フラグメントは、本明細書で記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質分解性消化のほか、組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による生成を含むがこれらに限定されない種々の技法により作製することができる。
【0209】
本明細書の抗体は、任意のクラスの抗体であり得る。抗体のクラスとは、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
【0210】
一般に、本明細書で開示される方法における使用のための抗体は、その標的抗原に、好ましくは、大きな結合アフィニティーで特異的に結合する。アフィニティーは、KD値として表すことができ、内因性結合アフィニティー(例えば、アビディティー効果を最小化して)を反映する。典型的に、結合アフィニティーは、無細胞状況の場合であれ、細胞会合状況の場合であれ、インビトロにおいて測定する。本明細書で開示されるアッセイを含む、当該分野で公知の多数のアッセイであって、例えば、表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)アッセイ)、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)、およびELISAを含むアッセイのいずれかを使用して、結合アフィニティーの測定値を得ることができる。。一部の実施形態では、本開示の抗体は、それらの標的抗原(例えば、GDF11、GDF8、ActRIIA、ActRIIBなど)に、少なくとも1×10-7もしくはこれよりも強力に、1×10-8もしくはこれよりも強力に、1×10-9もしくはこれよりも強力に、1×10-10もしくはこれよりも強力に、1×10-11もしくはこれよりも強力に、1×10-12もしくはこれよりも強力に、1×10-13もしくはこれよりも強力に、または1×10-14もしくはこれよりも強力なKDで結合する。
【0211】
ある特定の実施形態では、KDは、以下のアッセイにより記載されるように、関心のある抗体のFabバージョンおよびその標的抗原で実施されるRIAにより測定される。Fabの抗原に対する溶液結合アフィニティーは、Fabを、滴定系列の非標識抗原の存在下において、最低濃度の放射性標識された抗原(例えば、125Iで標識された)と平衡化し、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する。例えば、Chenら(1999年)、J.Mol.Biol.、293巻:865~881頁を参照されたい。アッセイ条件を確立するために、マルチウェルプレート(例えば、Thermo Scientific製のMICROTITER(登録商標))を、捕捉用抗Fab抗体(例えば、Cappel Labs製)でコーティングし(例えば、一晩にわたり)、その後、好ましくは、室温(およそ23℃)において、ウシ血清アルブミンでブロッキングする。非吸着型プレートでは、放射性標識された抗原を、関心のあるFabの系列希釈液と混合する[例えば、Prestaら、(1997年)、Cancer Res.、57巻:4593~4599頁における抗VEGF抗体である、Fab-12の評価と符合する]。次いで、関心のあるFabを、好ましくは、一晩にわたりインキュベートするが、平衡に到達することを確保するように、インキュベーションは、長時間(例えば、約65時間)にわたり継続することもできる。その後、混合物を、好ましくは、室温で約1時間にわたるインキュベーションのために、捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、好ましくは、ポリソルベート20とPBSとの混合物で、複数回洗浄する。プレートを乾燥させたら、シンチレーション剤(例えば、Packard製のMICROSCINT(登録商標))を添加し、ガンマカウンター(例えば、Packard製のTOPCOUNT(登録商標))上で、プレートをカウントする。
【0212】
別の実施形態によれば、KDは、例えば、抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で固定化させた、BIACORE(登録商標)2000またはBIACORE(登録商標)3000(Biacore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。略述すると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、Biacore,Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。例えば、抗原は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(約0.2μM)まで希釈してから、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のタンパク質のカップリングを達成することができる。抗原を注入した後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。反応速度の測定のため、Fabの2倍系列希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)に、およそ25μl/分の流量で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、例えば、単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムのフィッティングを同時に行うことにより計算する。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として計算する。例えば、Chenら、(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻:865~881頁を参照されたい。オン速度が、例えば、上記の表面プラズモン共鳴アッセイで106M-1s-1を超える場合、オン速度は、徐々に増大する濃度の抗原の存在下におけるPBS中、20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(例えば、励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)であって、攪拌型キュベットを有するストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、または8000シリーズのSLM-AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計により測定した場合の、蛍光発光強度の増加または減少を測定する蛍光消光法を使用することにより決定することができる。
【0213】
本明細書で使用される抗GDF11抗体とは一般に、抗体が、GDF11を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF11に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF11抗体の、GDF11以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体のGDF11への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF11抗体は、異なる種に由来するGDF11の間で保存的な、GDF11のエピトープに結合する。ある特定の一部の実施形態では、本開示の抗GDF11抗体は、GDF11活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF11抗体は、GDF11が、同族受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを阻害することが可能であり、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSMAD2/3シグナル伝達など、GDF11に媒介される、同族受容体のシグナル伝達(活性化)を阻害し得る。一部の実施形態では、本開示の抗GDF11抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。GDF11は、GDF8との配列相同性が大きく、したがって、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する抗体はまた、場合によって、GDF8にも結合し、かつ/またはこれも阻害し得ることに注目されたい。
【0214】
抗GDF8抗体とは、抗体が、GDF8を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF8に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF8抗体の、GDF8以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体のGDF8への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF8抗体は、異なる種に由来するGDF8の間で保存的な、GDF8のエピトープに結合する。一部の実施形態では、本開示の抗GDF8抗体は、GDF8活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF8抗体は、GDF8が、同族受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを阻害することが可能であり、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSMAD2/3シグナル伝達など、GDF8に媒介される、同族受容体のシグナル伝達(活性化)を阻害し得る。一部の実施形態では、本開示の抗GDF8抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。GDF8は、GDF11との配列相同性が大きく、したがって、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する抗体はまた、多くの場合、GDF11にも結合し、かつ/またはこれも阻害し得ることに注目されたい。
【0215】
抗ActRIIA抗体とは、抗体が、ActRIIAを標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでActRIIAに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗ActRIIA抗体の、ActRIIA以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体のActRIIAへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRIIA抗体は、異なる種に由来するActRIIAの間で保存的な、ActRIIAのエピトープに結合する。一部の実施形態では、本開示の抗ActRIIA抗体は、ActRIIA活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、アクチビンA、BMP6、およびBMP7から選択される、1つもしくは複数のActRIIAリガンドが、ActRIIA受容体に結合することを阻害することが可能であり、かつ/またはこれらのリガンドの1つが、ActRIIAシグナル伝達(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8
ActRIIAシグナル伝達)を活性化させることを阻害し得る。一部の実施形態では、本開示の抗ActRIIA抗体は、GDF11が、ActRIIA受容体に結合することを阻害し、かつ/またはGDF11が、ActRIIAシグナル伝達を活性化させることを阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIA抗体は、GDF8が、ActRIIA受容体に結合することをさらに阻害し、かつ/またはGDF8が、ActRIIAシグナル伝達を活性化させることをさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンAが、ActRIIA受容体に結合することを実質的に阻害せず、かつ/またはActRIIAシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する、本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF8、BMP6、およびBMP7の1つまたは複数が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
【0216】
抗ActRIIB抗体とは、抗体が、ActRIIBを標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでActRIIBに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗ActRIIB抗体の、ActRIIB以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体のActRIIBへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRIIB抗体は、異なる種に由来するActRIIBの間で保存的な、ActRIIBのエピトープに結合する。一部の実施形態では、本開示の抗ActRIIB抗体は、ActRIIB活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、アクチビンA、BMP6、およびBMP7から選択される、1つもしくは複数のActRIIBリガンドが、ActRIIB受容体に結合することを阻害することが可能であり、かつ/またはこれらのリガンドの1つが、ActRIIBシグナル伝達(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8
ActRIIBシグナル伝達)を活性化させることを阻害し得る。一部の実施形態では、本開示の抗ActRIIB抗体は、GDF11が、ActRIIB受容体に結合することを阻害し、かつ/またはGDF11が、ActRIIBシグナル伝達を活性化させることを阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIB抗体は、GDF8が、ActRIIB受容体に結合することをさらに阻害し、かつ/またはGDF8が、ActRIIBシグナル伝達を活性化させることをさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンAが、ActRIIB受容体に結合することを実質的に阻害せず、かつ/またはActRIIBシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する、本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF8、BMP6、およびBMP7の1つまたは複数が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
【0217】
当該分野では、ヒトのGDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、BMP7、ActRIIB、およびActRIIAの核酸配列およびアミノ酸配列が周知であり、したがって、本開示に従う使用のための抗体アンタゴニストは、当該分野における知見および本明細書で提供される教示に基づき、当業者が日常的に作製することができる。
【0218】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、キメラ抗体である。キメラ抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方、重鎖および/または軽鎖の残余は異なる供給源または種に由来する抗体を指す。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851~6855頁に記載されている。一部の実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長動物に由来する可変領域)と、ヒト定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスを、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化させた「クラススイッチ」抗体である。一般に、キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
【0219】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるキメラ抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、非ヒト超可変領域(HVR)に由来するアミノ酸残基と、ヒトフレームワーク領域(FR)に由来するアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメインであり、典型的には2つの可変ドメインであって、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のHVR(例えば、CDR)に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する、可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を経た抗体を指す。
【0220】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)、Front. Biosci.、13巻:1619~1633頁において総説されており、例えば、Riechmannら、(1988年)、Nature、332巻:323~329頁;Queenら(1989年)、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、86巻:10029~10033頁;米国特許第5,821,337号;同第7,527,791号;同第6,982,321号;および同第7,087,409号;Kashmiriら、(2005年)、Methods、36巻:25~34頁[SDR(a-CDR)グラフティングについて記載する];Padlan、Mol. Immunol.、(1991年)、28巻:489~498頁(「リサーフェシング」について記載する);Dall’Acquaら(2005年)、Methods、36巻:43~60頁(「FRシャフリング」について記載する);Osbournら(2005年)、Methods、36巻:61~68頁;ならびにKlimkaら、Br. J. Cancer(2000年)、83巻:252~260頁(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載する)においてさらに記載されている。
【0221】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域[例えば、Simsら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2296頁を参照されたい];軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定の亜集団による、ヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域[例えば、Carterら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci.
USA、89巻:4285頁;およびPrestaら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2623頁を参照されたい];ヒト成熟(体細胞変異させた)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域[例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)、Front. Biosci.、13巻:1619~1633頁を参照されたい];およびFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域を含むがこれらに限定されない。例えば、Bacaら、(1997年)、J. Biol. Chem.、272巻:10678~10684頁;およびRosokら、(1996年)、J. Biol. Chem.、271巻:22611~22618頁を参照されたい。
【0222】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該分野で公知の種々の技法を使用して生成することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijkおよびvan de Winkel(2001年)、Curr. Opin. Pharmacol.、5巻:368~74頁;ならびにLonberg(2008年)、Curr. Opin. Immunol.、20巻:450~459頁において記載されている。
【0223】
ヒト抗体は、免疫原(例えば、GDF11ポリペプチド、GDF8ポリペプチド、ActRIIAポリペプチド、またはActRIIBポリペプチド)を、抗原性攻撃に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生成するように改変されたトランスジェニック動物に投与することにより調製することができる。このような動物は典型的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置きかえるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体にランダムに組み込まれた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、例えば、Lonberg(2005年)、Nat. Biotechnol.、23巻:1117~1125頁;米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載);米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)技術について記載);米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載);ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)技術について記載)を参照されたい。このような動物により生成されるインタクトな抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに改変することができる。
【0224】
本明細書で提供されるヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は記載されている。例えば、Kozbor、J. Immunol.、(1984年)、133巻:3001頁;Brodeurら(1987年)、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁、Marcel Dekker, Inc.、New York;およびBoernerら(1991年)、J. Immunol.、147巻:86頁を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Liら、(2006年)、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA、103巻:3557~3562頁において記載されている。追加の方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのヒトモノクローナルIgM抗体の生成について記載)およびNi、Xiandai Mianyixue(2006年)、26巻(4号):265~268頁(2006年)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)において記載されている方法を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、VollmersおよびBrandlein(2005年)、Histol. Histopathol.、20巻(3号):927~937頁;ならびにVollmersおよびBrandlein(2005年)、Methods Find Exp. Clin. Pharmacol.、27巻(3号):185~91頁において記載されている。
【0225】
本明細書で提供されるヒト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーより選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成することができる。次いで、このような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。ヒト抗体を抗体ライブラリーより選択するための技法については、本明細書で記載される。
【0226】
例えば、本開示の抗体は、1つまたは複数の所望の活性を有する抗体のためのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。当該分野では、ファージディスプレイライブラリーを生成し、このようなライブラリーを、所望の結合特徴を保有する抗体についてスクリーニングするための、様々な方法が公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboomら(2001年)、Methods in Molecular Biology、178巻:1~37頁、O’Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.において総説されており、例えば、McCaffertyら(1991年)、Nature、348巻:552~554頁;Clacksonら、(1991年)、Nature、352巻:624~628頁;Marksら(1992年)、J. Mol. Biol.、222巻:581~597頁;MarksおよびBradbury(2003年)、Methods in Molecular Biology、248巻:161~175頁、Lo編、Human Press、Totowa、N.J.;Sidhuら(2004年)、J. Mol. Biol.、338巻(2号):299~310頁;Leeら(2004年)、J. Mol. Biol.、340巻(5号):1073~1093頁;Fellouse(2004年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、101巻(34号):12467~12472頁;ならびにLeeら(2004年)、J. Immunol. Methods、284巻(1~2号):119~132頁においてさらに記載されている。
【0227】
ある特定のファージディスプレイ法では、Winterら(1994年)、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433~455頁において記載されているように、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換え、次いで、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的に、抗体フラグメントを、単鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントとして呈示する。免疫化された供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原(例えば、GDF11、アクチビンB、ActRIIA、またはActRIIB)に対する高アフィニティー抗体をもたらす。代替的に、ナイーブレパートリーは、Griffithsら(1993年)、EMBO J、12巻:725~734頁により記載されているように、いかなる免疫化もなく、広範にわたる非自己抗原を指向する抗体の単一の供給源をもたらし、また、広範にわたる自己抗原を指向する抗体の単一の供給源ももたらすように、クローニングすることができる(例えば、ヒトから)。最後に、ナイーブライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter(1992年)、J. Mol. Biol.、227巻:381~388頁により記載されているように、再配列されていないV遺伝子セグメントを、幹細胞からクローニングし、高度に可変的なCDR3領域をコードし、インビトロにおける再配列を達成する、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用することを介して、合成により作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載する特許公開は、例えば、米国特許第5,750,373号;ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号を含む。
【0228】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体である。多特異性抗体(典型的に、モノクローナル抗体)は、1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはこれを超える)抗原上の、少なくとも2つの(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはこれを超える)異なるエピトープに対する結合特異性を有する。
【0229】
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれを超える結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、GDF11エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodal)上および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、GDF11の2つまたはこれを超える異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、GDF11エピトープに対する結合アフィニティーを有する、本開示の多特異性抗体を使用して、GDF11活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodal)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。ある特定の実施形態では、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する、本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。任意選択で、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する、本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれを実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11およびGDF8に結合し、かつ/またはこれらを阻害する、本開示の多特異性抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodalの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。
【0230】
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれを超える結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、GDF8エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodal)上および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、GDF8の2つまたはこれを超える異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、GDF8エピトープに対する結合アフィニティーを有する、本開示の多特異性抗体を使用して、GDF8活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodal)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。ある特定の実施形態では、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する、本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。任意選択で、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する、本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれを実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF8およびGDF11に結合し、かつ/またはこれらを阻害する、本開示の多特異性抗体は、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、および/またはNodalの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。
【0231】
本明細書にはまた、3つまたはこれを超える、機能的な抗原結合性部位を有する操作抗体であって、「オクトパス抗体」を含む操作抗体も含まれる。例えば、US2006/0025576A1を参照されたい。
【0232】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、可能な改変体抗体、例えば、天然に存在する変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の生成時に発生する改変体抗体(このような改変体は、一般に少量で存在する)を除き同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的に、異なるエピトープを指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープを指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の性質を指し示し、任意の特定の方法により抗体の生成を必要とするとはみなさないものとする。例えば、本方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を活用する方法、本明細書で記載されるモノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法を含むがこれらに限定されない様々な技法により作製することができる。
【0233】
例えば、標準的なプロトコルを介して、GDF11またはGDF8に由来する免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清または抗タンパク質/抗ペプチドモノクローナル抗体を作製することができる。例えば、Antibodies: A Laboratory Manual(1988年)、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Press:1988を参照されたい。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物は、GDF11ポリペプチドもしくはGDF8ポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発することが可能である抗原性フラグメント、または融合タンパク質で免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法は、キャリアへの結合体化または当該分野で周知の他の技法を含む。GDF11ポリペプチドまたはGDF8ポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿中または血清中の抗体力価の検出によりモニタリングすることができる。免疫原を抗原とする標準的なELISAまたは他のイムノアッセイを使用して、抗体生成レベルおよび/または結合アフィニティーレベルを評価することができる。
【0234】
GDF11またはGDF8の抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、所望の場合、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を生成するために、抗体生成細胞(リンパ球)を、免疫化動物から採取し、標準的な体細胞融合手順により、骨髄腫細胞など、不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞をもたらすことができる。このような技法は、当該分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ技法[例えば、KohlerおよびMilstein(1975年)、Nature、256巻:495~497頁を参照されたい]、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法[例えば、Kozbarら(1983年)、Immunology Today、4巻:72頁を参照されたい]、およびヒトモノクローナル抗体を生成するEBVハイブリドーマ技法[Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁]が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、GDF11ポリペプチドまたはGDF8ポリペプチドと特異的に反応性である抗体、およびこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の生成について、免疫化学的にスクリーニングすることができる。
【0235】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸改変を、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)のFc領域に導入し、これにより、Fc領域改変体を生成することができる。Fc領域改変体は、1つまたは複数のアミノ酸位置において、アミノ酸改変(例えば、置換、欠失、および/または付加)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4のFc領域)を含み得る。
【0236】
例えば、本開示は、一部のエフェクター機能を保有するが、全てのエフェクター機能は保有しない抗体の改変体であって、これにより、インビボにおける抗体の半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能[例えば、補体依存性細胞傷害作用(CDC)および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)]は、不要または有害である適用に望ましい候補となる抗体の改変体を企図する。インビトロおよび/またはインビボにおける細胞傷害作用アッセイを実行して、CDC活性および/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体が、FcγR結合を欠く(よって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRnへの結合能は保持することを確保することができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、例えば、RavetchおよびKinet(1991年)、Annu. Rev. Immunol.、9巻:457~492頁にまとめられている。関心のある分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号;Hellstrom, I.ら(1986年)、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA、83巻:7059~7063頁;Hellstrom, Iら(1985年)、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA、82巻:1499~1502頁;米国特許第5,821,337号;およびBruggemann, M.ら(1987年)、J. Exp. Med.、166巻:1351~1361頁において記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法を利用することができる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害作用アッセイ;CellTechnology,Inc.、Mountain View、Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害作用アッセイ、Promega、Madison、Wis.)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、または加えて、関心のある分子のADCC活性は、インビボにおいて、例えば、Clynesら(1998年)、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA、95巻:652~656頁において開示されている動物モデルなどの動物モデルにおいて評価することができる。また、C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合できず、よって、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402における、C1q結合ELISAおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる。例えば、Gazzano-Santoroら(1996年)、J. Immunol. Methods、202巻:163頁;Cragg, M. S.ら(2003年)、Blood、101巻:1045~1052頁;ならびにCragg, M. S.およびM. J. Glennie(2004年)、Blood、103巻:2738~2743頁を参照されたい。当該分野で公知の方法を使用して、FcRnへの結合およびインビボにおけるクリアランス/半減期の決定もまた、実施することができる。例えば、Petkova, S. B.ら(2006年)、Int’l. Immunol.、18巻(12号):1759~1769頁を参照されたい。
【0237】
エフェクター機能を低減した本開示の抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数を置換した抗体を含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、アミノ酸265位、269位、270位、297位、および327位のうちの2つまたはこれより多くにおいて置換を有するFc変異体であって、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含むFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0238】
ある特定の実施形態では、システイン操作抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基をシステイン残基で置換した「チオMAb」を創出することが望ましいと考えられる。特定の実施形態では、残基の置換を、抗体の接近可能な部位に施す。システインでこれらの残基を置換することにより、反応性のチオール基が抗体の接近可能な部位に配置され、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分など、他の部分に結合体化させて、本明細書でさらに記載されるような、免疫結合体を創出するのに使用することができる。ある特定の実施形態では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1つまたは複数を、システインで置換することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号において記載されているように生成することができる。
【0239】
加えて、望ましい抗体を同定するための抗体をスクリーニングするのに使用される技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を、溶液中の抗原の結合に使用する場合、溶液中での結合について試験することが望ましいと考えられる。抗体と抗原との相互作用を試験して、特に望ましい抗体を同定するために、様々な異なる技法が利用可能である。このような技法として、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が挙げられる。
【0240】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列改変体が企図される。例えば、抗体および/または結合ポリペプチドの結合アフィニティーおよび/または他の生体特性を改善することが望ましい場合がある。抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、抗体および/または結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより調製することもでき、ペプチド合成により調製することもできる。このような改変は、例えば、抗体および/または結合性ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはこれらへの挿入、および/またはこれらの置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせは、最終的な構築物が、所望の特徴、例えば、標的への結合(GDF11、GDF8、ActRIIA、および/またはActRIIBへの結合)を保有するという条件で、最終的な構築物に到達するように施すことができる。
【0241】
変更(例えば、置換)をHVR内に施して、例えば、抗体のアフィニティーを改善することができる。このような変更は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスにおいて高頻度で変異を経るコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury(2008年)、Methods Mol. Biol.、207巻:179~196頁(2008年)を参照されたい)、および/またはSDR(a-CDR)に施すことができ、結果として得られる改変体VHまたは改変体VLを結合アフィニティーについて調べる。当該分野では、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することによるアフィニティー成熟が記載されている。例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology、178巻:1~37頁、O’Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.(2001年)を参照されたい。アフィニティー成熟の一部の実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを創出する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望のアフィニティーを有する任意の抗体改変体を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)をランダム化する、HVR指向アプローチを伴う。抗原の結合に関与するHVR残基は、例えばアラニン走査変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に同定することができる。特にCDR-H3およびCDR-L3は、しばしば標的化される。
【0242】
ある特定の実施形態では、このような変更が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限りにおいて、1つまたは複数のHVR内に置換、挿入、または欠失を施すことができる。例えば、結合アフィニティーを実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)を、HVR内に施すことができる。このような変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外部であり得る。上記で提供した改変体VH配列およびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、不変であるか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0243】
変異誘発のために標的化され得る抗体および/または結合性ポリペプチドの残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)、Science、244巻:1081~1085頁により記載されているように、「アラニン走査変異誘発」と呼ばれている。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)を同定し、中性であるかまたは負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置きかえて、相互作用が影響を受けるのかどうかを決定する。初期の置換に対して機能的な感受性を顕示するアミノ酸位置に、さらなる置換を導入することもできる。代替的に、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接点を同定することができる。このような接触残基および近傍の残基は、置換の標的化してもよく、置換の候補として消失させてもよい。改変体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定することができる。
【0244】
アミノ酸配列の挿入は、1残基~100またはこれより多くの残基を含有するポリペプチドの範囲の長さのアミノ末端融合物および/またはカルボキシル末端融合物のほか、単一または複数のアミノ酸残基の内部配列挿入も含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入改変体として、抗体のN末端もしくはC末端の、酵素(例えば、ADEPTのための)、または抗体の血清中半減期を延長するポリペプチドへの融合物が挙げられる。
【0245】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合性ポリペプチドを、当該分野で公知であり、たやすく利用可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾することができる。抗体および/または結合性ポリペプチドの誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーを含むがこれらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストラン、またはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のその安定性のために、製造において有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であることが可能であり、分枝状でもよく、非分枝状でもよい。抗体および/または結合ポリペプチドに付加させるポリマーの数は、変化させることができ、1つより多くのポリマーを付加させる場合、それらは、同じ分子でもよく、異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、抗体の誘導体および/または結合ポリペプチドの誘導体が規定の条件下での治療に使用されようと、改善する抗体および/または結合ポリペプチドの特定の特性または機能を含むがこれらに限定されない検討事項に基づき決定することができる。
【0246】
本明細書で開示されるActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、および/または抗ActRIIB抗体)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置または予防し、かつ/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する)ことができる。例えば、本明細書で開示されるActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のActRIIアンタゴニスト抗体、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよび/またはActRIIBポリペプチド)、iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);v)本明細書で開示される、1つもしくは複数の、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチド;ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0247】
D.低分子アンタゴニスト
別の態様では、本開示は、ActRII活性に拮抗する(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の阻害)低分子または低分子の組み合わせに関する。特に、本開示は、ActRIIの低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置または予防する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIの低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIの低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を予防する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を予防する方法を提供する。
【0248】
一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニストは、少なくともGDF11活性を直接的または間接的に阻害する低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせである。任意選択で、このような低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF8をさらに直接的または間接的に阻害し得る。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA活性を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11活性および/またはGDF8活性を直接的または間接的に阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数の活性をさらに直接的または間接的に阻害する。
【0249】
ある特定の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数の間接的阻害剤である。例えば、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF11の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害し得る。任意選択で、このような低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF8の発現をさらに阻害し得る。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAの発現を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8の発現を阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数の発現をさらに阻害し得る。
【0250】
他の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数の直接的阻害剤である。例えば、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、少なくともGDF11に直接結合し、かつ、その活性を直接阻害する(例えば、GDF11がActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力を阻害し;SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化を阻害する)。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、GDF8にさらに結合することが可能であり、かつ、その活性をさらに阻害し得る(例えば、GDF8がActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力を阻害し;SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化を阻害する)。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、アクチビンAに実質的に結合しないか、またはその活性(例えば、アクチビンAがActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力;SMAD2/3のシグナル伝達経路など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8に結合し、かつ、これらの活性を阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数にさらに結合し、かつ、これらの活性をさらに阻害する。
【0251】
一部の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF8に直接結合し、かつ、その活性を直接阻害する(例えば、GDF8がActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力を阻害し;SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF8に媒介される活性化を阻害する)。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF11にさらに結合することが可能であり、かつ、その活性をさらに阻害し得る(例えば、GDF11がActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力を阻害し;SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、GDF11に媒介される活性化を阻害し得る)。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAに実質的に結合しないか、またはその活性(例えば、アクチビンAがActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合する能力;SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンAに媒介される活性化)を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF8および/またはGDF11に結合し、かつ、これらの活性を阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、およびActRIIBの1つまたは複数にさらに結合し、かつ、これらの活性をさらに阻害する。
【0252】
一部の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIAに直接結合し、かつ、その活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAシグナル伝達の、ActRIIリガンドに媒介される活性化)を直接阻害する。例えば、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、ActRIIA受容体に結合し、かつ、少なくともGDF11が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する。任意選択で、このような低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF8が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害し得る。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAが、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数が、ActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
【0253】
一部の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIBに直接結合し、かつ、その活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIBシグナル伝達の、ActRIIリガンドに媒介される活性化)を直接阻害する。例えば、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、ActRIIB受容体に結合し、かつ、少なくともGDF11が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する。任意選択で、このような低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、GDF8が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害し得る。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAが、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、およびNodalの1つまたは複数が、ActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
【0254】
本開示の結合有機低分子アンタゴニストは、公知の方法を使用して、同定し、化学合成することができる(例えば、PCT公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい)。一般に、本開示の低分子アンタゴニストは、通常約2000ダルトン未満のサイズであり、代替的に、約1500、750、500、250、または200ダルトン未満のサイズであり、ここで、このような有機低分子は、本明細書で記載されるポリペプチド(例えば、GDF11、GDF8、ActRIIAおよびActRIIB)に、好ましくは、特異的に結合することが可能である。このような低分子アンタゴニストは、不要な実験を行わず、周知の技法を使用して同定することができる。これに関して、当該分野では、ポリペプチド標的に特異的に結合することが可能な分子について、有機低分子ライブラリーをスクリーニングするための技法が周知であることに留意されたい。例えば、国際特許公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい。
【0255】
本開示の結合有機低分子は、例えば、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバメート、カーボネート、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、アリールハロゲン化物、アリールスルホネート、アルキルハロゲン化物、アルキルスルホネート、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、スルホニル塩化物、ジアゾ化合物、および酸塩化物であり得る。
【0256】
本明細書で開示される低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、それを必要とする対象において赤血球レベルを高め、かつ/またはヘモグロビンを増加させ、貧血を処置または予防し、鎌状赤血球症を処置し、鎌状赤血球症の1つまたは複数の合併症を処置または予防する)ことができる。例えば、本明細書で開示される低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト)は、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加の低分子ActRIIアンタゴニスト、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよび/またはActRIIBポリペプチド)、iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体);v)本明細書で開示される、1つもしくは複数の、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチド;ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0257】
E.アンタゴニストポリヌクレオチド
別の態様では、本開示は、ActRII活性に拮抗する(例えば、SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の阻害)ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせに関する。特に、本開示は、ポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストまたはポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置または予防する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストまたはポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を処置する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストまたはポリヌクレオチドActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、それを必要とする対象において貧血を予防する、および/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を予防する方法を提供する。
【0258】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストまたはポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストの組み合わせを使用して、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の活性および/または発現を阻害することができる。ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストまたはポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニストの組み合わせは、GDF-ActRIIアンタゴニストである。
【0259】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF11の活性および/または発現(例えば、転写、翻訳、分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する。任意選択で、このようなポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、GDF8の活性および/または発現をさらに阻害し得る。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAの活性および/または発現を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはGDF8の活性および/または発現を阻害する、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の活性および/または発現をさらに阻害し得る。
【0260】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF8の活性および/または発現(例えば、転写、翻訳、分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する。任意選択で、このようなポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、GDF11の活性および/または発現をさらに阻害し得る。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAの活性および/または発現を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF8および/またはGDF11の活性および/または発現を阻害する、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の活性および/または発現をさらに阻害し得る。
【0261】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIAの活性および/または発現(例えば、転写、翻訳、分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAの活性および/または発現を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、ActRIIAの活性および/または発現を阻害する、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、および/またはActRIIBの1つまたは複数の活性および/または発現をさらに阻害し得る。
【0262】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIBの活性および/または発現(例えば、転写、翻訳、分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害する。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAの活性および/または発現を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、ActRIIBの活性および/または発現を阻害する、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、および/またはActRIIAの1つまたは複数の活性および/または発現をさらに阻害し得る。
【0263】
本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アンチセンス核酸、RNAi分子(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA))、アプタマーおよび/またはリボザイムであり得る。当該分野では、ヒトGDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIBの核酸配列およびアミノ酸配列が公知であり、したがって、本開示の方法に従う使用のためのポリヌクレオチドアンタゴニストは、当該分野における知見および本明細書で提供される教示に基づき、当業者が慣習的に作製することができる。
【0264】
例えば、アンチセンス技術は、アンチセンスDNAもしくはアンチセンスRNA、または三重螺旋形成を介して、遺伝子発現を制御するのに使用することができる。アンチセンス法は、例えば、Okano(1991年)、J. Neurochem.、56巻:560頁;Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)において論じられている。三重螺旋形成は、例えば、Cooneyら(1988年)、Science、241巻:456頁;およびDervanら、(1991年)、Science、251巻:1300頁において論じられている。方法は、ポリヌクレオチドの、相補性DNAまたはRNAへの結合に基づく。一部の実施形態では、アンチセンス核酸は、本明細書で開示される遺伝子のRNA転写物(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIB)の少なくとも一部に相補的な一本鎖RNA配列または一本鎖DNA配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、必要ではない。
【0265】
本明細書で言及される「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイズし、安定的な二重鎖を形成することが可能であるのに十分な相補性を有する配列を意味し、したがって、本明細書で開示される遺伝子(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIB)の二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの一本鎖を試験してもよく、三重鎖形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度および長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズさせる核酸が大型であるほど、それが含有し得るRNAとの塩基のミスマッチも多くなるが、なおも安定的な二重鎖(または、場合に応じて、三重鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な手順の使用により、ミスマッチの許容可能な程度を確認することができる。
【0266】
メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンまでの5’側非翻訳配列であって、AUG開始コドンを含む5’側非翻訳配列に相補的なポリヌクレオチドは、翻訳を阻害するのに最も効率的に働くはずである。しかし、mRNAの3’側非翻訳配列に対する配列相補性もまた、mRNAの翻訳を阻害するのに効果的であることが示されている。例えば、Wagner, R.、(1994年)、Nature、372巻:333~335頁を参照されたい。したがって、本開示の遺伝子(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIB)の非コード領域である、5’側または3’側の非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、内因性mRNAの翻訳を阻害するアンチセンスアプローチにおいて使用し得る。mRNAの5’側非翻訳領域に相補的なポリヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補体を含むべきである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳のそれほど効率的な阻害剤ではないが、本開示の方法に従い使用し得る。本開示のmRNA(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIBのmRNA)の5’側非翻訳領域、3’側非翻訳領域、またはコード領域のいずれにハイブリダイズするようにデザインされている場合でも、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドの長さであるべきであり、好ましくは、6~約50ヌクレオチドの範囲の長さのオリゴヌクレオチドである。具体的な態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチドである。
【0267】
一実施形態では、本開示のアンチセンス核酸(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAまたはActRIIBのアンチセンス核酸)は、外因性配列からの転写により、細胞内で生成される。例えば、ベクターまたはその一部は、転写され、本開示の遺伝子のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。このようなベクターは、所望のアンチセンス核酸をコードする配列を含有する。このようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを生成するように転写され得る限りにおいて、エピソームにとどまってもよく、染色体に組み込まれてもよい。このようなベクターは、当該分野で標準的な組換えDNA法により構築することができる。ベクターは、プラスミドベクターでもよく、ウイルスベクターでもよく、または当該分野で公知の他のベクターであって、脊椎動物細胞内の複製および発現のために使用されるベクターでもよい。本開示の所望の遺伝子またはこれらのフラグメントをコードする配列の発現は、脊椎動物細胞内、好ましくは、ヒト細胞内で作用することが当該分野で公知の任意のプロモーターによるものであり得る。このようなプロモーターは、誘導性であっても、恒常的であってもよい。このようなプロモーターとして、SV40初期プロモーター領域[例えば、BenoistおよびChambon(1981年)、Nature、29巻:304~310頁を参照されたい]、ラウス肉腫ウイルスの3’側長末端リピート内に含有されるプロモーター(例えば、Yamamotoら(1980年)、Cell、22巻:787~797頁を参照されたい)、ヘルペスチミジンプロモーター[例えば、Wagnerら(1981年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、78巻:1441~1445頁を参照されたい]、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列(例えば、Brinsterら(1982年)、Nature、296巻:39~42頁を参照されたい)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0268】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドアンタゴニストは、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIBのうちの1つまたは複数の発現を標的化する干渉RNAまたはRNAi分子である。RNAiとは、標的化されるmRNAの発現に干渉するRNAの発現を指す。具体的には、RNAiは、siRNA(低分子干渉RNA)を介する特異的mRNAとの相互作用により、標的化される遺伝子をサイレンシングする。次いで、dsRNA複合体が、細胞による分解の標的化される。siRNA分子は、10~50ヌクレオチドの長さの二本鎖RNA二重鎖であり、十分に相補的な標的遺伝子(例えば、遺伝子に少なくとも80%の同一性)の発現に干渉する。一部の実施形態では、siRNA分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0269】
追加のRNAi分子として、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられ、また、短鎖干渉ヘアピンおよびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。shRNA分子は、ループにより接続された、標的遺伝子に由来するセンス配列とアンチセンス配列とを含有する。shRNAは、核から細胞質に輸送され、mRNAと共に分解される。Pol IIIプロモーターまたはU6プロモーターを使用して、RNAiのためのRNAを発現させることができる。Paddisonら[Genes & Dev.(2002年)、16巻:948~958頁、2002年]は、RNAiを実行する手段としてヘアピンに折り畳まれた低分子RNA分子を使用している。したがって、このような短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子はまた、本明細書で記載される方法においても有利に使用される。機能的なshRNAのステムおよびループの長さは、サイレンシング活性に影響を及ぼさずに変化し、ステム長は、約25~約30ntのいずれかの範囲であることが可能であり、ループサイズは、4~約25ntの間の範囲であり得る。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、これらのshRNAは、DICER RNaseの二本鎖RNA(dsRNA)産物に相似し、いずれにせよ、特異的遺伝子の発現を阻害するための同じ能力を有すると考えられる。shRNAは、レンチウイルスベクターから発現させることができる。miRNAは、約10~70ヌクレオチドの長さの一本鎖RNAであり、「ステムループ」構造を特徴とするpre-miRNAとして最初に転写され、その後、RISCを介するさらなるプロセシングの後で、成熟miRNAにプロセシングされる。
【0270】
siRNAを含むがこれに限定せず、RNAiを媒介する分子は、インビトロで、化学合成(Hohjoh、FEBS Lett、521巻:195~199頁、2002年)、dsRNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942~9947頁、2002年)、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写(Donzeetら、Nucleic Acids Res、30巻:e46頁、2002年;Yuら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:6047~6052頁、2002年)、およびE.coli RNアーゼIIIなどのヌクレアーゼを使用する二本鎖RNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942~9947頁、2002年)によって生成することができる。
【0271】
別の態様に従うと、本開示は、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、封入型DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、封入型RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉をもたらすことが可能な分子、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドアンタゴニストを提供する。
【0272】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アプタマーである。アプタマーは、二本鎖DNA分子および一本鎖RNA分子を含む核酸分子であって、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIAおよびActRIIBのポリペプチドなど、標的分子に特異的に結合する三次構造に結合し、これを形成する核酸分子である。当該分野では、アプタマーの生成および治療的使用が、十分に確立されている。例えば、米国特許第5,475,096号を参照されたい。アプタマーについての追加の情報は、米国特許出願公開第20060148748号において見出すことができる。核酸アプタマーは、当該分野で公知の方法を使用して、例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)プロセスを介して選択される。SELEXは、例えば、米国特許第5,475,096号、同第5,580,737号、同第5,567,588号、同第5,707,796号、同第5,763,177号、同第6,011,577号、および同第6,699,843号において記載されているように、標的分子に高度に特異的に結合する核酸分子のインビトロ進化法である。アプタマーを同定する別のスクリーニング法は、米国特許第5,270,163号において記載されている。SELEXプロセスは、単量体であれ、多量体であれ、他の核酸分子およびポリペプチドを含め、事実上任意の化合物に対してリガンドとして作用する(特異的結合対を形成する)ヌクレオチド単量体内で利用可能な二次元構造および三次元構造ならびに化学的多様性を形成する核酸の能力に基づく。任意のサイズまたは組成の分子が、標的として機能し得る。SELEX法は、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択、ならびに結合、区分、および増幅の段階的反復を伴い、同じ一般的な選択スキームを使用して、所望の結合アフィニティーおよび選択性を達成する。ランダム化された配列のセグメントを含み得る核酸の混合物から始めて、SELEX法は、混合物を結合に好適な条件下で標的と接触させる工程と;非結合核酸を標的分子に特異的に結合した核酸から区分する工程と;核酸-標的複合体を解離させる工程と;核酸-標的複合体から解離させた核酸を増幅して、リガンド濃縮された核酸混合物をもたらす工程とを含む。結合させる工程と、区分する工程と、解離させる工程と、増幅する工程を、所望の回数のサイクルにわたり繰り返して、標的分子に対する高度に特異的な高アフィニティーの核酸リガンドをもたらす。
【0273】
典型的に、このような結合分子は、動物に別個に投与される[例えば、O’Connor(1991年)、J. Neurochem.、56巻:560頁を参照されたい]が、このような結合分子はまた、宿主細胞により取り込まれたポリヌクレオチドからインビボで発現させることもでき、インビボで発現させることができる。例えば、Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)を参照されたい。
【0274】
本明細書で開示される、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置または予防し、かつ/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する)ことができる。例えば、本明細書で開示される、ポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト)は、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよび/またはActRIIBポリペプチド)、iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体);v)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチド;ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0275】
F.他のアンタゴニスト
他の態様では、本明細書で開示される方法(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防する方法、および/または貧血の1つもしくは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置もしくは予防する方法)に従う使用のための作用因子は、フォリスタチンポリペプチドである。用語「フォリスタチンポリペプチド」は、フォリスタチンの任意の天然に存在するポリペプチドのほか、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)も含むポリペプチドを含み、フォリスタチンの任意の機能的な単量体または多量体もさらに含む。ある特定の実施形態では、本開示のフォリスタチンポリペプチドは、アクチビン、特に、アクチビンAに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンに媒介される活性化)を阻害する。アクチビンへの結合特性を保持する、フォリスタチンポリペプチドの改変体は、フォリスタチンとアクチビンとの相互作用に関するかつての研究に基づき同定することができる。例えば、WO2008/030367は、アクチビンへの結合に重要であることが示されている、特異的なフォリスタチンドメイン(「FSD」)について開示している。下記の配列番号18~20に示される通り、フォリスタチンのN末端ドメイン(「FSND」;配列番号18)、FSD2(配列番号20)は、フォリスタチン内の例示的なドメインであって、アクチビンへの結合に重要なドメインを表し、程度は劣るが、FSD1(配列番号19)も、フォリスタチン内の例示的なドメインであって、アクチビンへの結合に重要なドメインを表す。加えて、上記では、ActRIIポリペプチドの文脈において、ポリペプチドのライブラリーを作製し、これについて調べるための方法についても記載したが、このような方法はまた、フォリスタチンの改変体を作製し、これらについて調べることにも関する。フォリスタチンポリペプチドは、任意の公知のフォリスタチン配列に由来するポリペプチドであって、フォリスタチンポリペプチドの配列に少なくとも約80%同一である配列を有し、任意選択で、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはこれを超える同一性を有するポリペプチドを含む。フォリスタチンポリペプチドの例は、成熟フォリスタチンポリペプチド、または、例えば、WO2005/025601において記載されている、ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチド(配列番号16)の短いアイソフォームもしくは他の改変体を含む。
【0276】
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドのアイソフォームであるFST344は、以下の通りである。
【化17】
【0277】
シグナルペプチドに下線を付す;上記ではまた、このフォリスタチンアイソフォームを、下記に示される短いフォリスタチンアイソフォームであるFST317から弁別する、C末端伸長部分を表す最後の27残基にも下線を付している。
【0278】
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドのアイソフォームであるFST317は、以下の通りである。
【化18】
シグナルペプチドに下線を付す。
【0279】
フォリスタチンのN末端ドメイン(FSND)配列は、以下の通りである。
【化19】
FSD1配列およびFSD2配列は、以下の通りである。
【化20】
【0280】
他の態様では、本明細書で開示される方法(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防する方法、および/または例えば、皮膚潰瘍を含む、貧血の合併症を処置もしくは予防する方法)に従う使用のための作用因子は、フォリスタチン関連タンパク質3(FSTL3)としてもまた公知の、フォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)である。一部の実施形態では、作用因子を使用して、例えば、皮膚潰瘍を含む、貧血の合併症を処置する。一部の実施形態では、作用因子を使用して、例えば、皮膚潰瘍を含む、貧血の合併症を予防する。用語「FLRGポリペプチド」は、FLRGの任意の天然に存在するポリペプチドのほか、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)も含むポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、本開示のFLRGポリペプチドは、アクチビン、特に、アクチビンAに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、SMAD2/3のシグナル伝達など、ActRIIAおよび/またはActRIIBのシグナル伝達の、アクチビンに媒介される活性化)を阻害する。アクチビンへの結合特性を保持するFLRGポリペプチドの改変体は、FLRGとアクチビンとの相互作用についてアッセイする日常的方法を使用して同定することができる。例えば、US6,537,966を参照されたい。加えて、上記では、ActRIIポリペプチドの文脈において、ポリペプチドのライブラリーを作製し、これについて調べるための方法についても記載したが、このような方法はまた、FLRGの改変体を作製し、これらについて調べることにも関する。FLRGポリペプチドは、任意の公知のFLRG配列に由来するポリペプチドであって、FLRGポリペプチドの配列に少なくとも約80%同一である配列を有し、任意選択で、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはこれを超える同一性を有するポリペプチドを含む。
【0281】
ヒトFLRG(フォリスタチン関連タンパク質3前駆体)ポリペプチドは、以下の通りである。
【化21】
シグナルペプチドに下線を付す。
【0282】
ある特定の実施形態では、フォリスタチンポリペプチドおよびFLRGポリペプチドの機能的な改変体または改変形態は、フォリスタチンポリペプチドまたはFLRGポリペプチドの少なくとも一部を有する融合タンパク質と、例えば、ポリペプチドの単離、検出、安定化、または多量体化を容易とするドメインなど、1つまたは複数の融合ドメインとを含む。適切な融合ドメインについては、ActRIIポリペプチドに関して、上記で詳細に論じられている。一部の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子は、Fcドメインに融合させたフォリスタチンポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。別の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子は、Fcドメインに融合させたFLRGポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。
【0283】
本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドのいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置または予防し、かつ/または貧血の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する)ことができる。例えば、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドは、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のフォリスタチンポリペプチド、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよび/またはActRIIBポリペプチド)、iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体);v)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のFLRGポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0284】
同様に、本明細書で開示されるFLRGポリペプチドのいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成する(例えば、それを必要とする対象において貧血を処置または予防し、かつ/または鎌状赤血球症の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍を含む)を処置または予防する)ことができる。例えば、本明細書で開示されるFLRGポリペプチドは、i)本明細書で開示される、1つもしくは複数の追加のFLRGポリペプチド、ii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよび/またはActRIIBポリペプチド)、iii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のGDFトラップ;iv)本明細書で開示される、1つもしくは複数のActRIIアンタゴニスト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗BMP7抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体);v)本明細書で開示される、1つもしくは複数の低分子ActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数の低分子アンタゴニスト);vi)本明細書で開示される、1つもしくは複数のポリヌクレオチドのActRIIアンタゴニスト(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、BMP7、Nodal、ActRIIA、および/またはActRIIBの1つまたは複数のポリヌクレオチドアンタゴニスト);ならびに/またはvii)本明細書で開示される、1つもしくは複数のフォリスタチンポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0285】
(4.スクリーニングアッセイ)
ある特定の態様では、本開示は、対象のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチドおよびActRIIBポリペプチド)およびGDFトラップポリペプチドの使用であって、ActRIIBポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(作用因子)を同定するための使用に関する。このスクリーニングを介して同定される化合物を試験して、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/または網状赤血球レベルを調節し、ならびに皮膚潰瘍に作用するそれらの能力を評価することができる。これらの化合物は、例えば、動物モデルにおいて試験することができる。
【0286】
ActRIIのシグナル伝達(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB
SMAD2/3および/またはSMAD1/5/8シグナル伝達)を標的化することによって、赤血球またはヘモグロビンのレベルを増加させるための治療剤についてスクリーニングするための多数のアプローチが存在する。特定の実施形態では、選択された細胞株においてActRII媒介性の作用を混乱させる作用因子を同定するために、化合物のハイスループットスクリーニングが行われ得る。特定の実施形態では、アッセイは、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIリガンドなど(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)への結合を特異的に阻害または減少させる化合物をスクリーニングおよび同定するために行われ得る。あるいは、アッセイは、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIリガンドなどへの結合を増強しない化合物を同定するために使用され得る。さらなる実施形態では、化合物は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドと相互作用するその能力によって同定され得る。
【0287】
種々のアッセイ形式が十分であり、そして、本開示を考慮すれば、本明細書中に明示的に記載されない形式は、本明細書中に記載されていないにもかかわらず、当業者によって理解される。本明細書中に記載されるように、本発明の試験化合物(作用因子)は、任意の組み合わせ化学の方法によって作製され得る。あるいは、本主題の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在する生体分子であり得る。組織増殖の調節因子として作用するその能力について試験される化合物(作用因子)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって生成されても(例えば、天然の生成物)、化学的に生成されても(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、組換えにより生成されてもよい。本発明によって企図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖、ホルモンおよび核酸分子が挙げられる。ある特定の実施形態では、試験作用因子は、約2000ダルトン未満の分子量を持つ小さな有機分子である。
【0288】
本開示の試験化合物は、単一の別個の実体として提供され得るか、または、組み合わせ化学によって作製されたような、より複雑度の高いライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の分類を含み得る。試験システムに対する試験化合物の提示は、特に、最初のスクリーニング段階において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。任意選択で、化合物は、任意選択で他の化合物で誘導体化され得、そして、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有し得る。誘導体化基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化クロスリンカー、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0289】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするためには、ハイスループットアッセイが望ましい。精製もしくは半精製(semi-purified)されたタンパク質で誘導され得るような、無細胞のシステムにおいて行われるアッセイは、試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な発生と比較的容易な検出とを可能にするように作られ得るという点で、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの作用は、一般に、インビトロのシステムでは無視され得るが、その代わりに、このアッセイは主として、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとその結合パートナー(例えば、ActRIIリガンド)との間の結合親和性の変更において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の作用に焦点を当てている。
【0290】
単なる例示として、本開示の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心のある化合物は、アッセイの意図に応じて適宜、通常ActRIIBリガンドに結合し得る単離および精製されたActRIIBポリペプチドと接触させられる。その後、化合物とActRIIBポリペプチドとの混合物は、ActRIIBリガンド(例えば、GDF11)を含む組成物に加えられる。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および定量は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成の阻害(または助長)における化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価され得る。さらに、比較のためのベースラインを提供するためのコントロールアッセイもまた行われ得る。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたActRIIBリガンドは、ActRIIBポリペプチドを含む組成物に加えられ、そして、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成は、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混合され得る順序は変化し得、そして、同時に混合され得ることが理解される。さらに、適切な無細胞アッセイ系を与えるように、精製したタンパク質の代わりに、細胞の抽出物および溶解物が使用され得る。
【0291】
ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成は、種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または、酵素標識されたActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドおよび/またはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイによって、あるいは、クロマトグラフィーによる検出によって定量され得る。
【0292】
特定の実施形態では、本開示は、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を測定する、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)アッセイの使用を企図する。さらに、光導波管(waveguide)(例えば、PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号を参照のこと)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサに基づくもののような、他の検出様式が、本開示の多くの実施形態と適合性がある。
【0293】
さらに、本開示は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を妨害または助長する作用因子を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を企図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223~232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem
268巻:12046~12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920~924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693~1696頁を参照のこと。特定の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を企図する。例えば、VidalおよびLegrain(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919~29頁;VidalおよびLegrain(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374~81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと。
【0294】
特定の実施形態では、本主題の化合物は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物と、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射性標識リガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的な方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る。例えば、Jakoby WBら(1974年)、Methods in Enzymology 46巻:1頁を参照のこと。特定の場合には、化合物は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、機構ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これは、固相もしくは流体相の結合事象を含み得る。あるいは、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップポリペプチドをコードする遺伝子は、レポーターシステム(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)と共に細胞中にトランスフェクトされ、そして、好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、ライブラリーに対して、または、ライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングされ得る。他の機構ベースの結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)が使用され得る。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定されているか、または、固定された抗体によって捕捉されている標的を用いて行われ得るか、あるいは、キャピラリー電気泳動によって分離され得る。結合した化合物は通常、比色エンドポイントあるいは蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
5.例示的な治療的使用
【0295】
ある特定の態様では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において赤血球レベルを高めることができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)において貧血および/または、例えば、潰瘍(特に皮膚潰瘍)を含む貧血の1つまたは複数の合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)において貧血および/または、例えば、潰瘍(特に皮膚潰瘍)を含む貧血の1つまたは複数の合併症を処置することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)において貧血および/または、例えば、潰瘍(特に皮膚潰瘍)を含む貧血の1つまたは複数の合併症を予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、貧血を有する対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において潰瘍を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において貧血と関連する潰瘍を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において貧血と関連する潰瘍を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、貧血を有する対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において皮膚(例えば、皮膚の(skin))潰瘍を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、それを必要とする対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)を有する対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、鎌状赤血球症を有する対象(例えば、患者)、特に、齧歯動物、霊長動物、およびヒトなどの哺乳動物において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の前出の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、貧血(例えば、溶結性貧血、異常ヘモグロビン症による貧血、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)、鎌状赤血球症など)を有する対象(例えば、患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置することができる。一部の前出の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、貧血(例えば、溶結性貧血、異常ヘモグロビン症による貧血、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)、鎌状赤血球症など)を有する対象(例えば、患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を予防することができる。一部の実施形態では、貧血を有する対象は、鎌状赤血球症を有する。一部の実施形態では、貧血を有する対象は、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)を有する。一部の実施形態では、貧血を有する対象は、皮膚潰瘍を有する。一部の実施形態では、皮膚潰瘍は、皮膚の潰瘍である。一部の実施形態では、潰瘍は、脚部または足首において生じる。
【0296】
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。例えば、本開示のActRIIアンタゴニストを使用して、貧血を有する対象において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を予防することとは、貧血を有する対象であって、ActRIIアンタゴニストを施されていない対象と比べて、対象において潰瘍の発生を低減するか、または対象において潰瘍の発症を遅延させるか、もしくは重症度を軽減することを指す。
【0297】
用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。いずれの場合にも、予防または処置は、医師または他の医療提供者によって提供される診断、および、治療剤の投与の意図される結果において認識され得る。一部の実施形態では、潰瘍を処置することとは、潰瘍組織の創傷治癒を促進することを指す。
【0298】
一般に、本開示で記載されている疾患または状態の処置または予防は、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBアンタゴニスト)を、「有効量」で投与することにより達成する。作用因子の有効量とは、必要な投与量で、かつ、必要な期間にわたり、所望の治療結果または予防結果を達成するのに効果的な量を指す。本開示の作用因子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する作用因子の能力などの要因に従い変化し得る。「予防有効量」とは、必要な投与量で、かつ、必要な期間にわたり、所望の予防結果を達成するのに効果的な量を指す。
潰瘍および貧血
【0299】
潰瘍は、皮膚または粘膜における糜爛であって、組織の分解を伴う糜爛である。皮膚潰瘍は、表皮の完全な喪失を結果としてもたらす可能性があり、真皮の一部および皮下脂肪の喪失までも結果としてもたらすことが多い。皮膚潰瘍は、下肢の皮膚におけるものが最も一般的であるが、身体の他の領域においても生じる。潰瘍は、しばしば円形で、皮膚の層がただれた、開口した陥没部として現れることが典型的であり、このような病変は、非常に感染を受けやすい。潰瘍周囲の皮膚は、赤色の場合もあり、腫脹している場合もあり、かつ/または圧痛のある場合もある。一般に、潰瘍は、治癒が他の種類の皮膚傷害より遅れる傾向があり、処置に対して抵抗性である。
【0300】
潰瘍は、段階的に進行する。段階1では、皮膚は、基底組織が軟性で赤色である。第2の段階では、皮膚の発赤は、より顕著となり、腫脹が現れ、いくつかの水泡および皮膚の外層の喪失も見られる場合がある。次の段階では、皮膚は、皮膚の深部層まで壊死性となる可能性があり、下部の脂肪が露出する場合もある。最後の2つの段階では、糜爛は、より深部の脂肪の喪失および筋肉の壊死を引き起こす場合がある(重度の症例では、骨を破壊し、敗血症を引き起こすまで拡大し得る)。潰瘍病態の段階的な進行を念頭に、医師は、潰瘍を分類するのに、評定システムを採用している。Wagner Grading Systemでは、潰瘍を、5つの類型へと分類する:i)表在性潰瘍を、グレード1と称し;ii)より深部の皮下組織へと達する潰瘍であって、軟組織を露出させる潰瘍(しかし、膿瘍または骨髄炎は伴わない)を、グレード2と称し;iii)膿瘍の形成および/または骨髄炎を伴う潰瘍を、グレード3と称し;iv)組織または四肢の一部において、関連する壊疽を有する潰瘍を、グレード4と称し;v)大領域または四肢の全体へと広範囲に及ぶ壊疽を有する潰瘍を、グレード5と称する。
【0301】
潰瘍、特に、皮膚潰瘍は、多くの貧血の合併症として生じる。大半の患者では、これらの潰瘍は、脚部または足首において生じるが、身体の他の部分においても生じ得る。貧血と潰瘍形成との関係は、多因子性であるが、溶血の亢進、酸化ストレス、組織への酸素供給の不良、および血管のうっ血は全て、潰瘍の形成に寄与し得ることが一般に予測される。溶血の亢進は、血清中への遊離ヘモグロビンの放出を引き起こし、これは、酸化による損傷を引き起こし、適正な血管緊張を維持するのに必要とされる酸化窒素を消尽する。潰瘍は、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、発作性夜間ヘモグロビン尿症を含む、多くの遺伝性貧血および後天性貧血と関連する。鎌状赤血球症およびサラセミアは、おそらく、これらの疾患には、危険性因子の全てが存在するため、潰瘍を引き起こす上で、特に注目される。潰瘍は、赤血球の過剰な破壊から生じる貧血性状態と説明される、多くの溶血性貧血と関連する。溶血性貧血は、肝炎、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、腸チフス、E.coli(Escherichia coli)、マイコプラズマ肺炎、または連鎖球菌などの感染、ペニシリン、抗マラリア薬、サルファ薬、またはアセトアミノフェンなどの医薬、白血病またはリンパ腫および種々の種類の充実性腫瘍などのがん、全身性エリテマトーデス(SLE、またはループス)、関節リウマチ、ウィスコット-アルドリッチ症候群、または潰瘍性大腸炎、脾機能亢進症、ならびに体内の免疫系がそれ自身の血液細胞に対する抗体を創出する自己免疫性溶血性貧血などの自己免疫障害から生じ得る。微小血管症性溶血性貧血および血栓性血小板減少性紫斑病はまた、貧血および潰瘍形成と関連する。
【0302】
一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト因子またはActRIIアンタゴニスト因子の組合せを使用して、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性口唇状赤血球症、グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、溶血性貧血、異常ヘモグロビン症による貧血、鎌状赤血球症、サラセミア(アルファおよびベータの両方)、βサラセミア症候群、中間型βサラセミア、発作性夜間ヘモグロビン尿症、微小血管症性溶血性貧血、血栓性血小板減少性紫斑病、感染(例えば、肝炎、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、腸チフス、E.coli(Escherichia coli)、マイコプラズマ肺炎、または連鎖球菌)と関連する貧血、医薬(例えば、ペニシリン、抗マラリア薬、サルファ薬、またはアセトアミノフェン)の投与と関連する貧血、がん(例えば、白血病、リンパ腫、および種々の種類の充実性腫瘍)と関連する貧血、および自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE、またはループス)、関節リウマチ、ウィスコット-アルドリッチ症候群、または潰瘍性大腸炎、脾機能亢進症、および体内の免疫系がそれ自身の血液細胞に対する抗体を創出する自己免疫性溶血性貧血)と関連する貧血から選択される貧血を有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、溶結性貧血を有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、異常ヘモグロビン症による貧血を有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、サラセミア症候群を有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、βサラセミア症候群を有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、中間型βサラセミアを有する対象(患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはActRIIアンタゴニスト作用因子の組合せを使用して、潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)のグレード分類(例えば、Wagner Grading System)を、少なくとも1つのグレード(例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのグレード)改善することができる。
【0303】
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)は、潰瘍のための支持療法と組み合わせて使用することができる。皮膚潰瘍の従来のケアは、創傷清拭および創傷の清浄化に続く、密封包帯の適用を伴う。例えば、Marti-Carvajalら(2012年)、The Cochrane Collaboration、Wiley & Sons,
Ltd刊を参照されたい。さらなる介入は一般に、2つの主要な処置群:医薬による介入(全身用作用因子および局所用作用因子)および医薬以外による介入へと分類することができる。医薬による全身型介入として、例えば、血管薬(例えば、ペントキシフィリン、イソクスプリン塩酸塩、およびニコチン酸キサンチノール)、抗酸化剤(例えば、L-カルニチン)、EPOおよびEPO刺激剤、増殖因子(例えば、Bosentan)、無機物(例えば、硫酸亜鉛)、HbF合成のアゴニスト(例えば、酪酸アルギニン)、ならびに抗生剤が挙げられる。医薬による局所型介入として、例えば、抗生剤、消毒剤、増殖因子(例えば、GM-CSF、RGDペプチドマトリックス、Solcoseryl(登録商標))、ステロイド(例えば、コルチゾン)、および鎮痛剤(例えば、オピオイド)が挙げられる。医薬以外による介入通して、例えば、再建手術、細胞治療、レーザー治療、および高圧酸素をが挙げられる。
潰瘍および鎌状赤血球症
【0304】
多数の遺伝子が古典的鎌状赤血球症(sickle-cell disease:SCD;鎌状細胞症(drepanocytosis);鎌状赤血球貧血)に寄与する。第一に、SCDとは、β-グロビン遺伝子内の変異(コドン6における、グルタミン酸の、バリンへの変異)により引き起こされる遺伝性障害である。例えば、Kassimら(2013年)、Annu Rev Med、64巻:451~466頁を参照されたい。鎌状赤血球貧血とは、βS対立遺伝子内のホモ接合性変異(HbSS)を有するSDの最も一般的な形態を指し、SCDを有する人々の60~70%に影響を及ぼす。
【0305】
β-グロビン遺伝子内の変異のために、脱酸素化状態に置かれると露出される疎水性モチーフを有する、異常なヘモグロビン分子が生成される。例えば、Eatonら(1990年)、Adv Protein Chem、40巻:63~279頁;Steinberg, MH(1999年)、N Engl J Med、340巻(13号):1021~1030頁;およびBallasら(1992年)、Blood、79巻(8号):2154~63頁を参照されたい。露出されると、個別のヘモグロビン分子鎖は、重合化し、この結果として、赤血球膜への損傷および細胞内脱水をもたらす。膜の損傷は、エリスロサイト膜の外側リーフレット上のホスファチジルセリンの発現をもたらす、膜脂質の再分布により部分的に顕示される。例えば、(2002年)、Blood、99巻(5号):1564~1571頁を参照されたい。外在化ホスファチジルセリンは、脈管(血管)閉塞に寄与する、マクロファージおよび活性化内皮細胞の両方への接着を促進する。したがって、低酸素状態では、赤血球のヘモグロビンは、長い結晶へと沈降し、これにより、伸長が引き起こされ、「鎌状」赤血球へと形態的に切り替わる。遺伝子型ならびに脱酸素化の広がりおよび程度の両方が、ヘモグロビン多量体化の重症度に寄与する。胎児性ヘモグロビンの存在は、病理学的ヘモグロビンポリマーの量を比例的に低減し、血管閉塞性クリーゼに対して保護的であることが実証されている。
【0306】
大半の鎌状赤血球症患者は、疼痛クリーゼと呼ばれる有痛性エピソードを経験する。鎌状赤血球疼痛クリーゼとは、急性鎌状赤血球化に関連する疼痛であって、少なくとも1時間にわたり(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、または10時間にわたり)続き、任意選択で、例えば、1つまたは複数の麻酔性抗炎症剤および/または非ステロイド系抗炎症剤の投与などの疼痛管理治療を要する疼痛を指す。疼痛クリーゼは典型的に、疼痛管理治療のための患者の医療施設への入院を結果としてもたらす。SCDを有する患者における急性疼痛は一般に、虚血性の性格であり、微小血管床の閉塞から生じ得る。臨床データは、一部のSCDを有する患者が、毎年3~10回の疼痛クリーゼエピソードを経ることを指し示す。多くの患者では、疼痛クリーゼエピソードは典型的に、約1週間で消散するであろう。場合によって、重度のエピソードは、数週間なおまたは数カ月間にわたり遷延し得る。SCD疼痛管理は、1つまたは複数のオピオイド鎮痛剤(例えば、ヒドロモルホン、メペリジンなど)、非ステロイド系抗炎症薬(例えば、ケトロラクトロメタミン)、およびコルチコステロイドの投与を要することが多い。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDを有する患者において疼痛クリーゼを処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において疼痛管理(例えば、1つまたは複数の麻酔薬、非ステロイド系抗炎症薬、および/またはコルチコステロイドによる処置)の頻度を低減することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において、1つまたは複数の疼痛管理剤(例えば、麻酔薬、非ステロイド系抗炎症薬、および/またはコルチコステロイド)の投与量を低減することができる。
【0307】
血管閉塞性クリーゼは、SCDの臨床的特徴の1つである。例えば、Reesら(2010年)、Lancet、376巻:2018~2031頁を参照されたい。低酸素症、アシドーシス、炎症ストレス、および内皮細胞の活性化は、剛性の重合化した鎌状エリスロサイトおよび白血球の、小血管内の捕捉を促進する。鎌状赤血球は、毛細血管を閉塞させ、臓器への血流を制限し、虚血症、疼痛、組織壊死、および種々の臓器への損傷をもたらす。これは、組織虚血症をもたらす血管閉塞を引き起こし得る。多量体化および初期の膜損傷は当初、可逆性であるが、鎌状赤血球化エピソードの反復は、不可逆的に、鎌状エリスロサイトをもたらし、これは、様々な臓器系に影響を及ぼし、死をもたらす場合がある。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において血管閉塞性クリーゼを処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせて使用して、SCD患者において血管閉塞を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において血管閉塞の合併症を処置または予防し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において血管閉塞の疼痛を処置または予防し得る。
【0308】
血管閉塞性合併症と同様に、溶血性貧血も、SCD患者における著明な罹患率をもたらす。例えば、Pakbazら(2014年)、Hematol Oncol Clin N Am、28巻:355~374頁;Kassimら(2013年)、Annu Rev Med、64巻:451~466頁を参照されたい。複数の因子が、SCDにおける慢性貧血に寄与する。エリスロサイトが変形すると、露出された抗原に対する抗体が創出され、これにより、エリスロサイトの破壊の増大がもたらされ、平均寿命は、110~120日間ではなく、17日間となる。溶血時におけるヘモグロビンの放出は、酸化窒素によるシグナル伝達を阻害し、内皮細胞機能不全をもたらし、凝固亢進状態に寄与する。慢性溶血は、ホルモンおよびビタミンの欠損により引き起こされるエリスロサイト代償機構の機能障害と共に、貧血にも寄与する。進行性腎疾患は、SCDに一般的であり、エリスロポエチンの減少をもたらし、したがって、赤血球生成刺激の機能障害をもたらす。エリスロサイト生成による高要求量および尿による鉄喪失の増大のために、葉酸欠損および鉄欠損が一般的である。これらの因子の全ては、SCD患者における慢性貧血に寄与する。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において貧血を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、任意選択で、鎌状赤血球症を処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせて使用して、SCD患者において貧血の合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において貧血を処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において貧血の合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において貧血を予防し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において貧血の合併症を予防し得る。
【0309】
重度の場合があり、潜在的に致死性であり得る急性貧血は、SCD患者における10%~15%の死亡率と関連する。一般に、3つの主要な原因:脾臓血球貯留クリーゼ、形成不全クリーゼ、または高度溶血クリーゼにより、重度のエピソードが惹起される。例えば、Ballasら(2010年)、Am J Hematol、85巻:6~13頁を参照されたい。
【0310】
脾臓血球貯留クリーゼは、エリスロサイトによる脾臓内血管閉塞の結果として生じ、この場合、エリスロサイトの貯留により、脾臓の急速な肥大が引き起こされる。したがって、循環ヘモグロビンの減少(例えば、2g/dL減少する)および有効循環容量の減少が見られ、これにより、循環血液量減少性ショックがもたらされる場合がある。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において脾臓血球貯留クリーゼを処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において赤血球の脾臓血球貯留を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせて使用して、SCD患者において脾腫を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において脾腫を処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において脾腫を予防し得る。
【0311】
形成不全クリーゼは、赤血球生成が損なわれた場合に生じる。エリスロサイトの恒常的な過剰生成のために、形成不全クリーゼは、急速に、重度の貧血を結果としてもたらし得る。パルボウイルスB19、streptococci、salmonella、およびエプスタイン-バーウイルスなどの感染症は、赤血球生成の一過性の停止の一般的な原因である。循環エリスロサイトおよび循環網状赤血球はいずれも、形成不全クリーゼ時に減少する。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において形成不全クリーゼを処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせて使用して、SCD患者において形成不全貧血を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において形成不全クリーゼを処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において形成不全クリーゼを予防し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において形成不全貧血を処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において形成不全貧血を予防し得る。
【0312】
高度溶血は、脾臓血球貯留の証拠なしに、網状赤血球増加と共に、貧血の突然の悪化が見られる場合に生じる。高度溶血クリーゼは、複数回の輸血をなされた患者、または静脈内免疫グロブリン療法を施された患者において記録されている。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCD患者において高度溶結クリーゼを処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせて使用して、SCD患者において形成不全高度溶結貧血を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において高度溶結クリーゼを処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において高度溶結クリーゼを予防し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において高度溶結貧血を処置し得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCD患者において高度溶結貧血を予防し得る。
【0313】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの心臓合併症を処置または予防することができる。SCDにおける慢性貧血は、心拍出量の代償的増大を引き起こすことが典型的である。これは、次に左室機能不全と共に、心肥大および左室肥大をもたらす。例えば、Adebayoら(2002年)、Niger J Med、11巻:145~152頁;Sachdevら(2007年)、J Am Coll Cardiol、49巻:472~279頁;およびZilbermanら(2007年)、Am J Hematol、82巻:433~438頁を参照されたい。急性心筋梗塞は、冠動脈疾患を有さずしてなお生じる場合があり、したがって、SCDにおいて過少診断される場合がある。例えば、Pannuら(2008年)、Crit Pathw Cardio、7巻:133~138頁を参照されたい。心不整脈およびうっ血性心不全もまた、SCD患者における早期死亡と連関している。例えば、Fitzhughら(2010年)、Am J Hematol、85巻:36~40頁を参照されたい。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の心臓合併症であって、例えば、心拍出量の増大、心肥大、心筋症、左室肥大、急性心筋梗塞、不整脈、およびうっ血性心不全を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の心臓合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の心臓合併症を予防し得る。
【0314】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの肺合併症を処置または予防することができる。SCDは、高頻度で、急性肺合併症および慢性肺合併症の両方を結果としてもたらす。例えば、Rucknagel, DL(2001年)、Pediatr Pathol MOl Med、20巻:137~154頁;Haynesら(1986年)、Am J Med、80巻:833~840頁を参照されたい。急性合併症は、感染症、血栓に由来する肺塞栓、骨髄梗塞、および脂肪塞栓を含み得る。肺機能不全は、肋骨梗塞および胸骨梗塞に由来する局所的疼痛のために生じる場合もあり、低酸素血症と共に、換気過少および無気肺をもたらす。慢性合併症は、鎌状赤血球性慢性肺疾患および肺高血圧症を含む。急性胸部症候群(ACS)は、鎌状赤血球症(sickle disease)を有する人々に固有であり、頻呼吸、ぜん鳴、または咳と共に、少なくとも1つの完全な肺セグメントに及ぶ新規の肺浸潤物、胸部疼痛、および38.5℃を上回る体温により規定される。例えば、Vichinskyら(2000年)、N Engl J Med、342巻:1855~1865頁を参照されたい。肺梗塞、脂肪塞栓症、および感染症の発症は全て、ACSに寄与する場合がある。感染症は、ACS患者における罹患率および死亡率の主因である。
【0315】
肺高血圧症は現在、SCDにおける罹患率および死亡率の主因である。例えば、De Castroら(2008年)、Am J Hematol、83巻:19~25頁;Gladwinら(2004年)、N Engl J Med、350巻:886~895頁を参照されたい。肺高血圧症は、SCDを有する成人の32%において記録されており、血管閉塞性クリーゼおよび溶血に関連する[例えば、Machadoら(2010年)、Chest、137巻(補遺6号):30S~38S頁を参照されたい]。溶血に由来する無細胞ヘモグロビンは、肺血管拡張因子である一酸化窒素を減少させ、血管閉塞に寄与すると考えられる。例えば、Woodら(2008年)、Free Radic Biol Med、44巻:1506~1528頁を参照されたい。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の肺合併症であって、例えば、脂肪塞栓または骨髄塞栓、肺浮腫、鎌状赤血球性肺疾患、肺高血圧症、血栓塞栓症、および急性胸部症候群を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の肺合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の肺合併症を予防し得る。
【0316】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの肝臓合併症を処置または予防することができる。肝臓病態は、SDCにおいて一般的であり、剖検症例の約90%において、肝腫大が観察されている。例えば、Bauerら(1980年)、Am J med、69巻:833~837頁;Millsら(1988年)、Arch Pathol Lab Med、112巻:290~294頁を参照されたい。鎌状赤血球貧血の肝臓に対する効果は、近位類洞拡張(proximal sinusoidal dilation)を伴う類洞内の鎌状赤血球化、赤血球食作用を伴うクッパー細胞過形成、およびヘモシデリン沈着症を含む。剖検ではまた、巣状壊死、再生結節、および肝硬変についても記載されている。血管閉塞は、急性鎌状赤血球性肝臓クリーゼ(acute sickle hepatic crises)を結果としてもたらす、類洞閉塞および虚血症をもたらし得る。脾臓血球貯留と同様に、エリスロサイトは、肝臓内にも貯留される可能性があり、急性貧血をもたらし得る。例えば、Leeら(1996年)、Postgrad Med J、72巻:487~488頁を参照されたい。肝臓血球貯留はまた、肝臓内胆汁うっ滞ももたらし得る。例えば、Shaoら(1995年)、Am J Gastroenterol、90巻:2045~2050頁を参照されたい。鎌状赤血球化エピソードに由来する肝細胞内の虚血症はまた、エリスロサイトの膨化および細管内の胆汁うっ滞ももたらす。SCDを処置するために使用される一部の治療はまた、肝臓病態にも寄与する。例えば、高頻度の輸血は、クッパー細胞内の鉄沈着の増大をもたらし(これは、鉄過剰負荷をもたらし得る)、ウイルス性肝炎などの血液媒介性疾患を伴う感染症の危険性を増大させる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の肝臓合併症であって、例えば、肝不全、肝腫大、肝臓血球貯留、肝臓内胆汁うっ滞、胆石症、および鉄過剰負荷を含む合併症を処置または予防することができる。
【0317】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの脾臓合併症を処置または予防することができる。既に論じられている通り、脾臓血球貯留は、エリスロサイトによる脾臓内血管閉塞の結果として生じる。急性悪化は、脾腫を結果としてもたらし、場合によって、脾梗塞を結果としてもたらす。より一般には、無症状性の脾臓血球貯留は、機能的な脾臓機能低下症および無脾症をもたらす、脾臓機能の段階的喪失をもたらし得る。これは、次に、被包された細菌の結果として、敗血症への感受性の増大をもたらし得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の脾臓合併症であって、例えば、急性または慢性脾臓血球貯留、脾腫、脾臓機能低下症、無脾症、および脾梗塞を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の脾臓合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の脾臓合併症を予防し得る。
【0318】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの腎臓合併症を処置または予防することができる。SCDを有する人々のおよそ12パーセントは、腎不全を発症する。例えば、Powarsら(2205)、Medicine、84巻:363~376頁;Scheinman, JI(2009年)、Nat Clin Pract Nephrol、5巻:78~88頁を参照されたい。直細動脈の毛細血管内の血管閉塞は、微小血栓性梗塞およびエリスロサイトの、腎髄質への溢出をもたらす。血液は、低酸素圧、低pH、および高い重量オスモル濃度のために、腎髄質内で粘性を増大させ、重度の場合、虚血症、梗塞、および乳頭壊死に寄与し得る。糸球体虚血症の反復は、糸球体硬化症をもたらす。虚血性損傷の臨床的帰結は、血尿症、タンパク尿症、濃縮能の低下、尿細管性アシドーシス、近位尿細管機能の異常、急性腎不全および慢性腎不全、ならびに尿路感染症を含む。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の腎臓合併症であって、例えば、急性腎不全および/または慢性腎不全、腎盂腎炎、ならびに腎髄質癌を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の腎臓合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の腎臓合併症を予防し得る。
【0319】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの骨合併症および/または関節合併症を処置または予防することができる。骨合併症および関節合併症は、SCD患者における一般的な合併症である。例えば、Hernigouら(1991年)、J Bone Join Surg Am、73巻:81~92頁を参照されたい。手足の小さな骨の疼痛である指炎は、SCDを有する乳児において高頻度で生じる。骨髄内の血管閉塞の長期的な帰結は、梗塞、壊死、および最終的な変性性変化を含む。SCDでは、脾臓機能低下症のために、細菌感染がより一般的である。梗塞骨および梗塞骨髄は、一般的な感染部位であり、骨髄炎および化膿性関節炎をもたらす。骨梗塞および骨髄梗塞の後には、骨壊死または虚血性壊死が生じる。梗塞は、上腕骨、脛骨、および大腿骨など、長い骨において最も一般的である。慢性的な重量の支持面は、異常な大腿骨頭に対する応力を引き起こし、進行性関節破壊および進行性関節炎をもたらす。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の骨合併症および/または関節合併症であって、例えば、梗塞、壊死、骨髄炎、化膿性関節炎、骨壊死、および骨減少症を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の骨合併症および/または間接合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の骨合併症および/または間接合併症を予防し得る。
【0320】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの神経学的合併症を処置または予防することができる。SCDを有する個体のおよそ25パーセントは、神経傷害の影響を受ける。例えば、Ohene-Frempongら(1998年)、Blood、91巻:288~294頁;Verduzcoら(2009年)、Blood、114巻:5117~5125頁を参照されたい。傷害は、急性の場合もあり、慢性の場合もある。脳血管障害は、成人において最も一般的であるが、遺伝子型に依存する。HbSSを有する人は、脳血管の危険性が最も高く、45歳までに臨床的脳卒中を有する可能性が24パーセントである。虚血性脳卒中が、9歳未満の小児においてより一般的であるのに対し、出血性脳卒中は、成人においてより一般的である。虚血性脳卒中は、大型の頭蓋内動脈の閉塞のために生じ、虚血症をもたらす。虚血症は、剛性のエリスロサイトによる小血管の閉塞に続発し、慢性貧血、凝固亢進状態、および血流に関連する、動脈内皮への血行力学的傷害により悪化し、さらに、エリスロサイト接着の可能性を増大させる。これに対し、出血性脳卒中は、脳室内腔、実質内腔、およびクモ膜下腔において生じ得る。例えば、Ansonら(1991年)、J Neurosurg、75巻:552~558頁を参照されたい。脳室内出血は、前大脳動脈瘤の破裂または脳実質内出血の、側脳室もしくは第三脳室への直接的な拡大と関連し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の神経学的合併症であって、例えば、動脈瘤、虚血性脳卒中、脳実質内出血、くも膜下出血、および脳室内出血を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の神経学的合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の神経学的合併症合併症を予防し得る。
【0321】
ある特定の態様では、任意選択で、SCDの処置のための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの眼合併症を処置または予防することができる。SCDにおける眼合併症は主に、網膜に影響を及ぼす。例えば、Downesら(2005年)、Opthalmology、112巻:1869~1875頁;Fadugbagbeら(2010年)、Ann Trop Paediatr、30巻:19~26頁を参照されたい。血管閉塞性クリーゼの結果として、末梢性網膜虚血症が生じる。新血管(ウミウチワ形態)は大半が、動静脈交差の近傍で形成され、増殖性鎌状赤血球性網膜症(proliferative sickle retinopathy)として公知である。これらの新血管は、容易に出血する場合があり、牽引性網膜剥離を引き起こし、最終的に失明を引き起こす。SCDではまた、非増殖性網膜変化も、より一般的である。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子であって、任意選択で、SCDを処置するための1つもしくは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの1つまたは複数の眼合併症であって、例えば、末梢性網膜虚血症、増殖性鎌状赤血球性網膜症、硝子体出血、網膜剥離、および非増殖性網膜変化を含む合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の眼合併症を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の眼合併症合併症を予防し得る。
【0322】
ある特定の態様では、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、SCDの皮膚合併症を処置または予防することができる。SCDの一般的な皮膚合併症の1つは、潰瘍の症状である。例えば、Keastら(2004年)、Ostomy Wound Manage.、50巻(10号)、64~70頁;Trentら(2004年)、Adv Skin Wound Care、17巻(8号)、410~416頁;J.R. Eckman(1996年)、Hematol Oncol Clin North Am.、10巻(6号)、1333~1344頁;およびChungら(1996年)、Advances in Wound Care、9巻(5号)、46~50頁を参照されたい。SCD患者における潰瘍の発症の機構は、完全には解明されていないが、例えば、血管閉塞、静脈圧および毛細血管圧の増大、血液レオロジーの異常、組織の低酸素状態、静脈のうっ滞、静脈圧の増大、またはこれらの両方により引き起こされる細菌の侵襲の受けやすさの増大を含む、SCDの種々の側面の影響を受ける多因子性のプロセスであると考えられる。SCDを有する患者では、潰瘍の治癒の速度は、3~16倍遅いことが見出されている。潰瘍は、数カ月間~数年間にわたり遷延する可能性があり、SCD患者における再発率は高い。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の皮膚合併症(例えば、潰瘍)を処置または予防し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の皮膚合併症(例えば、潰瘍)を処置し得る。一部の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、SCDを処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と任意選択で組み合わせて、使用してSCDの1つまたは複数の皮膚合併症(例えば、潰瘍)を予防し得る。
【0323】
ある特定の態様では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を、それを必要とする対象に、鎌状赤血球症または鎌状赤血球症の1つもしくは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍などの皮膚合併症)の処置のための1つまたは複数の追加の作用因子(例えば、ヒドロキシウレア、EPOアンタゴニスト、EPO、オピオイド鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬、コルチコステロイド、鉄キレート化剤)または支持療法(例えば、赤血球輸血)と組み合わせて投与することができる。
【0324】
SCD患者の大半のための処置の主軸は、支持的である。鎌状赤血球症を有する患者のための現行の処置選択肢は、抗生物質、疼痛管理、静脈内補液(intravenous
fluid)、輸血、手術、およびヒドロキシウレアなどの化合物を含む。
【0325】
ヒドロキシウレア(例えば、Droxia(登録商標))は、鎌状赤血球症の処置のための承認薬である。ヒドロキシウレアは、S期細胞傷害薬であり、長期治療に使用されている。ヒドロキシウレアは、ヘモグロビンFのレベルを高め、これにより、Sポリマーの形成および鎌状赤血球化を予防すると考えられる。ヒドロキシウレアはまた、NOの生成を増大させるとも考えられる。鎌状赤血球症を有する成人におけるヒドロキシウレアについての多施設試験は、ヒドロキシウレアが、有痛性エピソードの発生率を、ほぼ半数に低減することを示した。しかし、現在、ヒドロキシウレアは、SCDの重度の合併症を患い、毎日の投与レジメに従うことが可能な患者だけにおいて使用されている。一般的な考えは、ヒドロキシウレア療法が有効なのは、服薬遵守の可能性が高い、構造化された環境において施される場合に限られるということである。残念ながら、多くのSCD患者は、ヒドロキシウレアに不応性である。一部の実施形態では、本開示の方法は、本開示のActRIIアンタゴニストと、ヒドロキシウレアとの組み合わせを投与することにより、それを必要とする対象において鎌状赤血球症を処置することに関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、本開示のActRIIアンタゴニストと、ヒドロキシウレアとの組み合わせを投与することにより、それを必要とする対象において鎌状赤血球症の1つまたは複数の合併症(例えば、皮膚潰瘍などの皮膚合併症)を処置または予防することに関する。
【0326】
定期的な赤血球輸血はまた、SCD患者のための一般的な治療でもある。しかし、複数の問題が、それらを長期にわたる使用に不適としている。定期的な輸血は、脳卒中、ACS、および血管閉塞性疼痛クリーゼを予防することが示されているが、無症候性梗塞の発症、またはある特定の動脈が収縮し、代償的な側副血管が出血する傾向にある脳循環の障害である、モヤモヤ病の進行を予防しない。例えば、Bishopら(2011年)、Blood、Cells, Molecules & Disease、47巻:125~128頁;DeBaunら(2012年)、Blood、119巻:4787~4596頁を参照されたい。さらに、SCD患者は、赤血球輸血の帰結としての鉄過剰負荷を発症する可能性があり、これは、患者自身の死亡率と関連する。定期的な赤血球輸血は、種々のドナー単位の血液への曝露を要請し、よって、同種免疫の危険性が高い。血管アクセスの困難、鉄キレート化剤の入手可能性および服薬遵守、ならびに高額な費用は、定期的輸血が、なぜ一般的治療のための最適な選択肢とならないのかという理由の一部である。Wayneら(2000年)、Blood、96巻:2369~2372頁。一部の実施形態では、本開示の方法は、本開示のActRIIアンタゴニストと、1つまたは複数の血液細胞による輸血との組み合わせを投与することにより、それを必要とする対象において鎌状赤血球症を処置することに関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、本開示のActRIIアンタゴニストと、1つまたは複数の赤血球輸血との組み合わせを投与することにより、それを必要とする対象において鎌状赤血球症の1つまたは複数の合併症を処置または予防することに関する。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニストによる処置は、SCD患者における輸血に対する必要を減殺するのに有効であり、例えば、SCDまたはSCDの1つもしくは複数の合併症を有効に処置するのに必要とされる輸血の頻度および/または量を低減する。
【0327】
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)は、SCDのための支持療法と組み合わせて使用することができる。このような治療は、貧血を処置するための赤血球または全血液による輸血を含む。SCD患者では、鉄ホメオスタシスの正常な機構が、繰り返される輸血により圧伏されており、心臓、肝臓、および内分泌腺などの死活的組織内の、毒性であり、潜在的に致死性である鉄の蓄積を最終的にもたらす。したがって、SCD患者のための支持療法はまた、1つまたは複数の鉄キレート化分子による処置であって、尿中および/または糞便中の鉄排出を促進し、これにより、組織鉄過剰負荷を予防または転導する処置も含む。有効な鉄キレート化剤は、触媒による、ヒドロキシルラジカルおよび酸化生成物の生成を介して、大半の鉄毒性の主因となる可能性が高い、非トランスフェリン結合鉄の酸化形態である第二鉄に選択的に結合し、これを中和することが可能であるべきである。例えば、Espositoら(2003年)、Blood、102巻:2670~2677頁を参照されたい。これらの作用因子は構造的に多様であるが、全てが、八面体の中和配位錯体を形成することが可能な酸素供与体原子または窒素供与体原子を保有し、個々の鉄原子は1:1(六座キレート化剤)、2:1(三座)、または3:1(二座)の当量比である。Kalinowskiら(2005年)、Pharmacol Rev、57巻:547~583頁。一般に、効果的な鉄キレート化剤はまた、比較的低分子量(例えば、700ダルトン未満)であり、水中および脂質中のいずれにおいても、罹患組織への接触を可能とする可溶性を有する。鉄キレート化分子の具体例は、毎日の非経口投与を要する、細菌由来の六座キレート化剤である、デフェロキサミン(デスフェリオキサミンB、デスフェロキサミンB、DFO-B、DFOA、DFB、またはDesferal(登録商標)としてもまた公知である)、ならびに経口活性合成因子であるデフェリプロン(Ferriprox(登録商標)としてもまた公知である)(二座)およびデフェラシロクス(ビス-ヒドロキシフェニル-トリアゾール、ICL670、またはExjade(登録商標)としてもまた公知である)(三座)を含む。2つの鉄キレート化剤の同日投与からなる組み合わせ療法は、キレート化単剤療法に対して不応性の患者において有望であり、また、デフェロキサミン(dereroxamine)単剤に対する患者の服薬遵守不良の問題の克服においても有望である。Caoら(2011年)、Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁;およびGalanelloら(2010年)、Ann NY Acad Sci、1202巻:79~86頁。
【0328】
無効赤血球生成および潰瘍
ある特定の態様では、任意選択で、1つまたは複数の因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト因子を使用して、それを必要とする対象において無効赤血球生成を処置または予防することができる。鉄動態研究に基づき、再生不良性貧血、出血、または末梢溶血とは元来識別される(Rickettsら、1978年、Clin Nucl Med、3巻:159~164頁)、無効赤血球生成は、成熟RBCの生成が、骨髄中に存在する赤芽球系前駆体(赤芽球)の数が与えられたときに予測されるより少ない、多様な貧血群を説明している(Tannoら、2010年、Adv Hematol、2010巻:358283頁)。このような貧血では、エリスロポエチンレベルの上昇にもかかわらず、成熟RBC生成の無効に起因して、組織低酸素症が遷延する。最終的には、エリスロポエチンレベルの上昇が赤芽球の大規模な増殖を駆動する悪循環が発生し、これは、髄外赤血球生成に起因する脾腫(脾臓の腫大)(Aizawaら、2003年、Am J Hematol、74巻:68~72頁)、赤芽球誘導性骨病態(Di Matteoら、2008年、J Biol Regul Homeost Agents、22巻:211~216頁)を潜在的にもたらし、治療的RBC輸血の非存在下においてもなお、組織鉄過負荷(Pippardら、1979年、Lancet、2巻:819~821頁)を潜在的にもたらす。したがって、赤血球生成の有効性を促進することにより、本開示のActRIIアンタゴニストは、前述の悪循環を打破し、根底にある貧血だけでなく、エリスロポエチンレベルの上昇、脾腫、骨病態、および組織鉄過負荷といった関連する合併症も緩和することができる。ActRIIアンタゴニストは、貧血およびEPOレベルの上昇のほか、脾腫、赤芽球誘導性骨病態、および鉄過負荷、皮膚潰瘍ならびにそれらの付随する病態などの合併症を含む、無効赤血球生成を処置することができる。脾腫に関して、このような病態は、胸痛または腹痛および網内系過形成を含む。髄外造血は、脾臓内だけでなく、潜在的には他の組織内でも、髄外造血性偽腫瘍の形態で生じる場合がある(Musallamら、2012年、Cold Spring
Harb Perspect Med、2巻:a013482頁)。赤芽球誘導性骨病態に関して、付随する病態は、低骨塩密度、骨粗鬆症、および骨疼痛を含む(Haidarら、2011年、Bone、48巻:425~432頁)。鉄過負荷に関して、付随する病態は、ヘプシジン抑制および食餌中の鉄の過剰吸収(Musallamら、2012年、Blood Rev、26巻(補遺1号):S16~S19頁)、複数の内分泌障害および肝線維症/肝硬変(Galanelloら、2010年、Orphanet J Rare Dis、5巻:11頁)、ならびに鉄過剰性心筋症(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213~218頁)を含む。
【0329】
無効赤血球生成の最も一般的な原因は、完全アルファヘモグロビン鎖の生成と完全ベータヘモグロビン鎖の生成との不均衡が赤芽球の成熟時におけるアポトーシスの増大をもたらす遺伝性異常ヘモグロビン症である、サラセミア症候群である(Schrier、2002年、Curr Opin Hematol、9巻:123~126)。サラセミアは総体として、世界中で最も高頻度の遺伝子障害であり、疫学的パターンを変化させながら、米国および全世界のいずれにおいても増大しつつある公衆衛生問題に寄与することが予測されている(Vichinsky、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:18~24頁)。サラセミア症候群は、それらの重症度に応じて命名される。したがって、αサラセミアは、軽症型αサラセミア(αサラセミア形質としてもまた公知であり、2つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)、ヘモグロビンH症(3つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)、および重症型αサラセミア(胎児水腫としてもまた公知であり、4つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)を含む。βサラセミアは、軽症型βサラセミア(βサラセミア形質としてもまた公知であり、1つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、中間型βサラセミア(2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、ヘモグロビンEサラセミア(2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、および重症型βサラセミア(クーリー貧血としてもまた公知であり、2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける結果として、β-グロビンタンパク質の完全な非存在がもたらされる)を含む。βサラセミアは、複数の機関に影響を及ぼし、無視できない罹患率および死亡率と関連し、現在のところ一生にわたるケアを必要とする。近年では、鉄のキレート化と組み合わせた定期的な輸血の使用に起因して、βサラセミアを有する患者の平均余命が延長されているが、輸血および消化管による鉄の吸収過剰の両方から生じる鉄過負荷は、心疾患、血栓症、性腺機能低下症、甲状腺機能低下症、糖尿病、骨粗鬆症、および骨減少症など、重篤な合併症を引き起こし得る(Rundら、2005年、N Engl J Med、353巻:1135~1146頁)。βサラセミアのマウスモデルに関して本明細書で実証される通り、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせた、ActRIIaアンタゴニストを使用して、サラセミア症候群を処置することができる。さらに、本明細書で開示されるデータは、GDFトラップポリペプチドを使用して、赤血球パラメータに対する正の効果(例えば、血清ヘモグロビンレベルの上昇)を促進するほか、ヒトサラセミア患者におけるサラセミアの合併症(例えば、皮膚潰瘍)を処置し得ることを実証する。
【0330】
ある特定の態様では、任意選択で、サラセミア症候群などの無効赤血球生成障害を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、無効赤血球生成の皮膚合併症を処置または予防することができる。無効赤血球生成、特に、サラセミアの一般的な皮膚合併症は、潰瘍の症状である。サラセミア患者における潰瘍の発症の機構は、完全には解明されていないが、例えば、組織の低酸素状態を含む、サラセミアの種々の側面の影響を受ける多因子性のプロセスであると考えられる。一部の実施形態では、任意選択で、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)の1つまたは複数の皮膚合併症であって、例えば、潰瘍を含む皮膚合併症を処置または予防することができる。一部の実施形態では、任意選択で、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)の1つまたは複数の皮膚合併症であって、例えば、潰瘍を含む皮膚合併症を処置することができる。一部の実施形態では、任意選択で、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、無効赤血球生成(例えば、サラセミア)の1つまたは複数の皮膚合併症であって、例えば、潰瘍を含む皮膚合併症を予防することができる。一部の実施形態では、任意選択で、βサラセミア(例えば、中間型βサラセミア)を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、βサラセミア(例えば、中間型βサラセミア)の1つまたは複数の皮膚合併症であって、例えば、潰瘍を含む皮膚合併症を処置することができる。一部の実施形態では、任意選択で、βサラセミア(例えば、中間型βサラセミア)を処置するための1つまたは複数の作用因子および/または支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、βサラセミア(例えば、中間型βサラセミア)の1つまたは複数の皮膚合併症であって、例えば、潰瘍を含む皮膚合併症を予防することができる。
他の貧血適応
【0331】
任意選択で、1つまたは複数の支持療法と組み合わせた、本開示のActRIIアンタゴニストは、サラセミア症候群に加えて、無効赤血球生成による障害を処置するために使用することができる。このような障害として、鉄芽球性貧血(遺伝性または後天性);赤血球生成異常性貧血(I型およびII型);鎌状赤血球貧血;遺伝性球状赤血球症;ピルビン酸キナーゼ欠損症;葉酸欠損症(先天性疾患、摂取量の減少、または要求量の増加に起因する)、コバラミン欠損症(先天性疾患、悪性貧血、吸収障害、膵臓機能不全、または摂取量の減少に起因する)、ある特定の薬物、または説明されていない原因などの状態により潜在的に引き起こされる巨赤芽球性貧血(先天性赤血球生成異常性貧血、不応性巨赤芽球性貧血、または赤白血病);骨髄線維症(骨髄化生)および骨髄ろうを含む骨髄ろう性貧血;先天性赤芽球性ポルフィリン症;ならびに鉛中毒が挙げられる。
【0332】
本明細書で示される通り、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)であって、任意選択で、EPO受容体活性化因子および1つもしくは複数の追加の支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、健常個体および選択された患者集団において赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、または網状赤血球レベルを高めることができる。適切な患者集団の例としては、貧血を有する患者、鎌状赤血球患者のような望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを有する患者、および、大きな外科手術またはかなりの血液喪失を生じ得る他の処置を受ける予定の患者のような、望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを生じる危険性のある患者、が挙げられる。一部の実施形態では、適切な赤血球レベルを有する患者は、赤血球レベルを増加させるために1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子で処置され、その後、血液が採血され、そして、後に輸血に使用するために保存される。
【0333】
本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)であって、任意選択で、EPO受容体活性化因子および/または他の1つもしくは複数の追加の支持療法と組み合わせたActRIIアンタゴニスト作用因子を使用して、貧血を有する患者(例えば、鎌状赤血球症患者、サラセミア患者など)において赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルを高めることができる。ヒトにおけるヘモグロビンレベルおよび/またはヘマトクリットレベルを観察する場合、個体の変動は考慮されるが、適切な年齢および性別の範疇に応じた正常なレベル未満のレベルは、貧血を示し得る。例えば、10~12.5g/dlであり、典型的に、約11.0g/dlのヘモグロビンレベルは、健常な成人において、正常な範囲内にあると考えられるが、治療の点では、標的レベルが低ければ、心血管副作用を引き起こす可能性は小さい。例えば、Jacobsら(2000年)、Nephrol Dial Transplant、15巻、15~19頁を参照されたい。代替的に、ヘマトクリットレベル(細胞により占有される血液試料の容量百分率)を、貧血の尺度として使用することができる。健常個体のヘマトクリットレベルは、成人男性では、約41~51%の範囲にあり、成人女性では、35~45%の範囲にある。ある特定の実施形態では、患者は、患者を、赤血球、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの標的レベルに戻すことが意図される投与レジメンで処置することができる。ヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットレベルは、個々人で変化するので、最適には、標的ヘモグロビンレベルおよび/または標的ヘマトクリットレベルは、各患者のために個別化することができる。
【0334】
貧血は、組織傷害、感染、および/または慢性疾患、特に、がんを有する患者において高頻度で観察される。対象によっては、貧血は、低エリスロポエチンレベルおよび/または骨髄中のエリスロポエチンに対する不適切な応答により識別される。例えば、Adamson、2008年、Harrison’s Principles of Internal Medicine、17版、McGraw Hill、New York、628~634頁を参照されたい。貧血の潜在的な原因としては、例えば、血液喪失、栄養不良(例えば、たんぱく質の食餌性摂取の低減)、薬物療法反応、骨髄に関連する種々の問題および多くの疾患が挙げられる。より具体的には、貧血は、例えば、骨髄移植、固形腫瘍(例えば、乳がん、肺がんおよび結腸がん);リンパ系の腫瘍(例えば、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫);造血系の腫瘍(例えば、白血病、骨髄異形成症候群および多発性骨髄腫);放射線治療;化学療法(例えば、白金を含むレジメン);炎症および自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、急性もしくは慢性の皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)が挙げられるがこれらに限定されない);急性もしくは慢性の腎疾患もしくは腎不全(特発性もしくは先天性の状態を含む);急性もしくは慢性の肝臓病;急性もしくは慢性の出血;患者の同種もしくは自己抗体および/または宗教上の理由(例えば、いくつかのエホバの証人(Jehovah’s Witness))に起因する赤血球の輸血が可能ではない状況;感染(例えば、マラリアおよび骨髄炎);異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病(貧血)、サラセミアを含む);薬物の使用または乱用(例えば、アルコールの誤用);輸血を回避するためのあらゆる要因から貧血を有する小児患者;ならびに老齢の患者または循環過負荷に関する問題に起因して輸血を受けることができない貧血とともに基礎心肺疾患を有する患者を含む種々の障害および状態に関連している。例えば、Adamson(2008年)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、17版、McGraw Hill、New York、628~634頁を参照されたい。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、本明細書で開示される障害または状態のうちの1つまたは複数に関連する貧血を処置もしくは予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、本明細書で開示される障害または状態のうちの1つまたは複数に関連する貧血を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、本明細書で開示される障害または状態のうちの1つまたは複数に関連する貧血を予防することができる。
【0335】
多くの因子が、がん関連の貧血に寄与し得る。いくつかは、疾患過程自体、および炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1、インターフェロンγおよび腫瘍壊死因子の生成に関連する。Bronら(2001年)、Semin Oncol 28巻(補遺8号):1~6頁。その影響の中で、炎症は重要な鉄調節ペプチドヘプシジンを誘導し、それによってマクロファージからの鉄のエクスポートを阻害し、一般に赤血球生成のための鉄の利用可能性を制限する。例えば、Ganz(2007年)、J Am Soc Nephrol 18巻:394~400頁を参照のこと。様々な経路を通しての血液喪失も、がん関連の貧血に寄与することができる。がん進行による貧血の有病率は、前立腺がんでの5%から多発性骨髄腫での90%まで、がん型によって変動する。がん関連の貧血は、倦怠および生活の質の低下、処置効力の低下および死亡率の増加を含む、重大な結果を患者にもたらす。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用してがん関連の貧血を処置もしくは予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、がん関連貧血を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、がん関連貧血を予防することができる。
【0336】
低増殖性貧血は、原発性骨髄機能障害または原発性骨髄不全から生じ得る。低増殖性貧血として、慢性疾患による貧血、腎疾患による貧血、低代謝状態に関連する貧血、およびがんに関連する貧血が挙げられる。これらの種類の各々では、内因性エリスロポエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して不適切に低い。他の低増殖性貧血として、初期鉄欠損性貧血、および骨髄への損傷により引き起こされる貧血が挙げられる。これらの種類では、内因性エリスロポエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して適切に増加している。顕著な例は、がんおよび/もしくは化学療法薬またはがんの放射線療法により引き起こされる骨髄抑制である。広範にわたる臨床試験の再検討により、軽度の貧血が、化学療法後の患者の100%で生じ得るのに対し、より重度の貧血は、このような患者の最大80%で生じ得ることが見出された。例えば、Groopmanら(1999年)、J Natl Cancer Inst、91巻:1616~1634頁を参照されたい。骨髄抑制薬には、例えば以下のものが含まれる:1)ナイトロジェンマスタード(例えば、メルファラン)およびニトロソウレア(例えば、ストレプトゾシン)などのアルキル化剤;2)葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキセート)、プリン類似体(例えば、チオグアニン)およびピリミジン類似体(例えば、ゲムシタビン)などの代謝拮抗物質;3)アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)などの細胞傷害抗生物質;4)キナーゼインヒビター(例えば、ゲフィチニブ);5)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン)などの分裂抑制剤;6)モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ);ならびに7)トポイソメラーゼインヒビター(例えば、トポテカンおよびエトポシド)。さらに、低代謝速度をもたらす多くの状態は、軽度から中等度の低増殖性貧血をもたらし得る。内分泌欠乏状態は、そのような状態の1つである。例えば、貧血は、アジソン病、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、または去勢されたかもしくはエストロゲンで処置された男性で起こることがある。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して高増殖性貧血を処置または予防することができる。
【0337】
慢性腎疾患は、場合によって、低増殖性貧血と関連し、貧血の重症度は、腎機能障害のレベルに応じて変化する。そのような貧血は、主に、エリスロポイエチンの不十分な生成および赤血球の生存の低下による。慢性腎臓疾患は、透析または腎移植が患者生存のために必要とされる末期(5期)疾患まで、数年または数十年にわたって徐々に通常進行する。貧血はしばしばこの過程の初期に発生し、疾患の進行に伴い悪化する。腎臓疾患の貧血の臨床上の結果は十分に記載されており、その例には、左心室肥大の発達、認知機能障害、生活の質の低下、および免疫機能の変化が含まれる。例えば、Levinら(1999年)、Am J Kidney Dis 27巻:347~354頁;Nissenson(1992年)、Am J Kidney Dis 20巻(補遺1号):21~24頁;Revickiら(1995年)、Am J Kidney Dis 25巻:548~554頁;Gafterら(1994年)、Kidney Int 45巻:224~231頁を参照のこと。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、急性腎疾患もしくは慢性腎疾患または急性腎不全もしくは慢性腎不全に関連する貧血を処置または予防することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、急性腎疾患もしくは慢性腎疾患または急性腎不全もしくは慢性腎不全に関連する貧血を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して、急性腎疾患もしくは慢性腎疾患または急性腎不全もしくは慢性腎不全に関連する貧血を予防することができる。
【0338】
外傷または分娩後出血からなど、十分な量の急性失血によって生じる貧血は、急性出血後貧血として公知である。急性失血は、他の血液成分と共に比例的なRBC枯渇があるので、貧血を伴わない血液量減少を最初に引き起こす。しかし、血液量減少は、血管外から血管区画へ流体を移動させる生理学的機構を急速に引き起こし、血液希釈および貧血をもたらす。慢性であれば、失血により体内に貯蔵されている鉄が徐々に枯渇し、最終的に鉄欠乏症につながる。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して急性失血によって生じる貧血を処置することができる。
【0339】
鉄欠乏性貧血は、中間段階として負の鉄均衡および鉄欠乏赤血球生成を含む、鉄欠乏増加の段階的進行の最終段階である。妊娠、不十分な食事、腸の吸収不良、急性または慢性の炎症および急性または慢性の血液喪失などの状態で例示されるように、鉄欠乏は、鉄要求の増加、鉄摂取の減少または鉄損失の増加から起こることがある。この型の軽度から中等度の貧血では、骨髄は低増殖性のままであり、RBC形態はほとんど正常である。しかし、軽度の貧血でさえ、多少の小球性淡色性RBCを生じることがあり、重度の鉄欠乏貧血への移行には、骨髄の過剰増殖およびますます増加する小球性および淡色性のRBCが付随する。例えば、Adamson(2008年)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第17版;McGraw Hill、New York、628~634頁を参照のこと。鉄欠乏性貧血のための適当な療法は、その原因および重症度によって決まり、経口用鉄製剤、非経口鉄製剤およびRBC輸血が主要な従来の選択肢である。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して慢性鉄欠乏を処置することができる。
【0340】
骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄性血球生成の無効および急性骨髄性白血病への転換の危険性を特徴とする血液学的状態の多様な集合である。MDS患者では、血液幹細胞が、健常な赤血球、白血球、または血小板に成熟しない。MDS障害として、例えば、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰な芽球を有する不応性貧血、変形した過剰な芽球を有する不応性貧血、多系列異形成を有する不応性血球減少症、および孤発性5q染色体異常と関連する骨髄異形成症候群を含む。これらの障害は、造血細胞の量および質の両方における不可逆性の欠失として顕在化するので、MDS患者の大半は慢性貧血に罹患している。したがって、MDS患者は、赤血球レベルを高めるための、輸血および/または増殖因子(例えば、エリスロポエチンまたはG-CSF)による処置を最終的に必要とする。しかし、多くのMDS患者は、このような治療の頻度に起因する副作用を発症する。例えば、高頻度の赤血球輸血を施される患者は、余剰鉄の蓄積に由来する組織損傷および臓器損傷を有し得る。したがって、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、MDSを有する患者を処置することができる。ある特定の実施形態では、MDSを患う患者は、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して処置することができる。他の実施形態では、MDSを患う患者は、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)と、MDSを処置するための1つまたは複数の追加の治療剤であって、例えば、サリドマイド、レナリドミド、アザシチジン(azacitadine)、デシタビン、エリスロポエチン、デフェロキサミン、抗胸腺細胞グロブリン、およびフィルグラスチム(filgrastrim)(G-CSF)を含む治療剤との組み合わせを使用して処置することができる。
【0341】
本明細書で使用する場合、「~と組み合わせて」または「併用投与」とは、第2療法が、体内でなおも効果的である(例えば、2つの作用因子または化合物が、患者において同時に効果的であり、これは、この2つの作用因子または化合物の相乗効果を含み得る)ような、任意の投与形態を指す。有効性は、血中、血清中、または血漿中の作用因子の測定可能な濃度と相関しない場合もある。例えば、異なる治療用作用因子または化合物は、同じ製剤において投与することもでき、別個の製剤において、共時的または逐次的に投与することもでき、異なるスケジュールで投与することもできる。したがって、このような処置を施される個体は、異なる治療の組み合わせ効果から利益を得ることができる。本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンEおよびBMP6のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)は、1つまたは複数の他の追加の作用因子または支持療法と共時的に、これらの前に、またはこれらの後に投与され得る。一般に、各治療剤は、その特定の作用因子について決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。レジメンにおいて利用する特定の組み合わせは、本開示のアンタゴニストの、治療および/または達成される所望の治療効果に対する適合性を考慮に入れる。
【0342】
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、鎌状赤血球症、特に鉄過剰負荷に関連する鎌状赤血球症合併症の処置のために、ヘプシジンまたはヘプシジンアゴニストと組み合わせて使用することができる。主に肝臓で生成される循環ポリペプチドであるヘプシジンは、吸収腸細胞、肝細胞、およびマクロファージに局在化する鉄排出タンパク質であるフェロポーチンの分解を誘導するその能力のために、鉄代謝の主要な調節因子であると考えられている。大まかに述べると、ヘプシジンは、細胞外における鉄の利用可能性を低減するので、ヘプシジンアゴニストは、鎌状赤血球症、特に鉄過剰負荷に関連する鎌状赤血球症合併症の処置において有益であり得る。
【0343】
本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)はまた、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、小型(小球性)、特大(大赤血球性)、奇形または異常な色(淡色性)のRBCを部分的に特徴とする、無秩序なRBC成熟の貧血の処置にも適当である。
【0344】
ある特定の実施形態では、本開示は、貧血を処置または予防することを必要とする個体において、個体に、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)、ならびにEPO受容体活性化因子の治療有効量を投与することにより、貧血を処置または予防する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、EPOの有害作用に感受性である患者において、これらの活性化因子の必要とされる用量を低減することができる。これらの方法は、患者の治療処理および予防処置のために使用することができる。
【0345】
本開示の1つまたは複数の本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、特により低用量範囲で、赤血球の増加を達成することができる。これは、高用量のEPO受容体活性化因子と関連する、公知のオフターゲット効果および危険性を低減するのに有益であり得る。EPOの主要な有害作用は、例えば、ヘマトクリットレベルまたはヘモグロビンレベルの過剰な上昇および多血症を含む。ヘマトクリットレベルの上昇は、高血圧症(より特定すれば、高血圧症の悪化)および血管内血栓症をもたらし得る。報告されている他のEPOの有害作用であって、それらの一部が高血圧症と関連する有害作用は、頭痛、インフルエンザ様症候群、シャントの閉塞、心筋梗塞、および血栓症に起因する脳痙攣、高血圧性脳症、および赤血球無形成である。例えば、Singibarti(1994年)、J. Clin Investig、72巻(補遺6号):S36~S43頁;Horlら(2000年)、Nephrol Dial Transplant、15巻(補遺4号):51~56頁;Delantyら(1997年)、Neurology、49巻、686~689頁;およびBunn(2002年)、N Engl J Med、346巻(7号)、522~523頁を参照されたい。
【0346】
本開示のアンタゴニストが、EPOとは異なる機構で作用するという条件で、これらのアンタゴニストは、EPOに十分に応答しない患者における赤血球レベルおよびヘモグロビンレベルを高めるために有用であり得る。例えば、本開示のActRIIアンタゴニストは、通常用量~増量用量(>300IU/kg/週)のEPOの投与が標的レベルまでのヘモグロビンレベルの増加をもたらさない患者に有益であり得る。不適切なEPO応答を有する患者は、全てのタイプの貧血について見られるが、より多い数の不応者が、がんを有する患者および末期の腎疾患を有する患者において特に頻繁に観察されている。EPOに対する不適切な応答は、構成的(EPOでの最初の処置の際に観察される)、または後天的(EPOでの反復処置の際に観察される)のいずれかであり得る。
【0347】
特定の実施形態では、本開示は、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置されているか、または処置される候補の患者を、その患者における1つまたは複数の血液学的パラメータを測定することによって管理するための方法を提供する。血液学的パラメータは、本開示のアンタゴニストを用いた処置の候補である患者に対する適切な投薬を評価するため、処置中に血液学的パラメータをモニタリングするため、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置中に投薬量を調節するかどうかを評価するため、および/または本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの適切な維持用量を評価するために使用され得る。1つまたは複数の血液学的パラメータが正常レベルの外側である場合、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いた投薬は減少、延期または終了され得る。
【0348】
本明細書中で提供される方法に従って測定され得る血液学的パラメータとしては、例えば、赤血球レベル、血圧、貯蔵鉄、および、当該分野で認識されている方法を使用する、赤血球レベルの増加と相関する体液中に見出される他の作用因子が挙げられる。そのようなパラメータは、患者からの血液試料を使用して決定され得る。赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルの増加により、血圧の上昇が引き起こされ得る。
【0349】
一実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、血液学的パラメータが自然にまたは治療介入によってのいずれかで正常または許容されるレベルに戻るまで、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の開始が延期され得る。例えば、候補の患者が高血圧または前高血圧である場合、そのときは、患者は、患者の血圧を低下させるために血圧降下剤を用いて処置され得る。個々の患者の状態に適した任意の血圧降下剤が使用され得、例えば、利尿薬、アドレナリンインヒビター(アルファ遮断薬およびベータ遮断薬を含む)、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、またはアンジオテンシンII受容体遮断薬が挙げられる。血圧は、食事および運動レジメンを使用して代替的に処置され得る。同様に、候補の患者が正常よりも低いか、または正常の低値側の貯蔵鉄を有する場合、そのときは、患者は、患者の貯蔵鉄が正常または許容されるレベルに戻るまで、適切な食事および/または鉄サプリメントのレジメンを用いて処置され得る。正常よりも高い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを有する患者に対して、そのときは、そのレベルが正常または許容されるレベルに戻るまで本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与が延期され得る。
【0350】
特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、投与の開始が延期されないことがある。しかし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投薬量または投薬の頻度は、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストが投与されると上昇する血液学的パラメータの許容されない増加リスクを低下させる量に設定され得る。あるいは、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)と、望ましくないレベルの血液学的パラメータに対処する治療剤を組み合わせた治療レジメンが患者のために開発され得る。例えば、患者の血圧が上昇している場合、治療レジメンは、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)および血圧降下剤の投与を含めて設計され得る。所望より低い貯蔵鉄を有する患者について、治療レジメンは、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)および鉄の補給を含めて開発され得る。
【0351】
一実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータについてのベースラインパラメータは、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置される候補である患者に対して確立され得、適切な投薬レジメンが、ベースライン値に基づいて患者に対して確立される。あるいは、患者の病歴に基づいて確立されたベースラインパラメータが、患者に対して適切なアンタゴニスト投薬レジメンを通知するために使用され得る。例えば、健康な患者が、規定の正常範囲を超える確立された血圧のベースライン数値を有する場合、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置の前に、その患者の血圧を一般集団について正常だとみなされる範囲に至らせる必要がないことがあり得る。患者の、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いた処置前の1つまたは複数の血液学的パラメータのベースライン値は、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置中の、血液学的パラメータの任意の変化をモニタリングするための関連性のある比較値としても使用され得る。
【0352】
特定の実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータは、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置されている患者において測定される。血液学的パラメータは、処置中の患者をモニタリングし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬または別の治療剤を用いた追加の投薬の調節または終了を可能にするために使用され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)の投与によって血圧、赤血球レベル、またはヘモグロビンレベルが上昇したか、または貯蔵鉄が減少した場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの用量は、1つまたは複数の血液学的パラメータに対する本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの作用を減少させるために、その量または頻度が減少され得る。本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)の投与によって、患者にとって不都合な1つまたは複数の血液学的パラメータの変化が生じた場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投薬は、一時的に、血液学的パラメータが許容されるレベルに戻るまでか、または永久に、のいずれかで終了され得る。同様に、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の用量または頻度を減らした後、1つまたは複数の血液学的パラメータが許容される範囲内に至らない場合、そのときは、投薬は終了され得る。本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬を減らすかまたは終了する代わりに、またはそれに加えて、患者は、血液学的パラメータの望ましくないレベルに対処する追加の治療剤、例えば、血圧降下剤または鉄のサプリメントなどが投薬され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を用いて処置されている患者の血圧が上昇している場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は同じレベルで継続され得、および処置レジメンに血圧降下剤が追加されるか、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は減らされ得(例えば、量および/または頻度について)、および処置レジメンに血液降下剤が追加されるか、または、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は終了され得、および患者は血圧降下剤を用いて処置され得る。
【0353】
(6.薬学的組成物)
ある特定の態様では、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)は、単独で投与することもでき、医薬製剤(治療用組成物または薬学的組成物とも称される)の成分として投与することもできる。医薬製剤とは、その中に含有される活性成分(例えば、本開示の作用因子)の生物活性が効果的であることを可能とするような形態にあり、製剤が投与される対象に対して許容不可能に毒性である、さらなる成分を含有しない調製物を指す。本主題のActRIIアンタゴニスト作用因子は、ヒト医療または獣医療における使用のために好都合な任意の方式における投与のために製剤化され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子は、薬学的に許容されるキャリアと共に製剤化することができる。薬学的に許容されるキャリアとは、医薬製剤中の、活性成分以外の成分であって、対象に対して一般に非毒性である成分を指す。薬学的に許容されるキャリアは、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、および/または保存剤を含むがこれらに限定されない。一般に、本開示における使用のための医薬製剤は、対象に投与されるとき、発熱物質非含有であり、生理学的に許容される形態にある。本明細書に記載のもの以外の治療的に有用な作用因子であって、任意選択で、上記の製剤中に含まれ得る作用因子を、本開示の方法における主題のActRIIアンタゴニスト作用因子と組み合わせて投与することができる。
【0354】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIアンタゴニストと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を使用して、それを必要とする対象において貧血を処置もしくは予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、皮膚潰瘍を含む合併症を処置もしくは予防する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIアンタゴニストまたはActRIIアンタゴニストの組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を使用して、それを必要とする対象において貧血を処置し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、ActRIIアンタゴニストまたはActRIIアンタゴニストの組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を使用して、それを必要とする対象において貧血を予防し、かつ/または貧血の1つもしくは複数の合併症であって、例えば、貧血を有する対象において皮膚潰瘍を含む合併症を予防する方法を提供する。一部の前出の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはアンタゴニスト作用因子の組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を使用して、貧血(例えば、溶結性貧血、異常ヘモグロビン症による貧血、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)、鎌状赤血球症など)を有する対象(例えば、患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を処置することができる。一部の前出の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子またはアンタゴニスト作用因子の組合せと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を使用して、貧血(例えば、溶結性貧血、異常ヘモグロビン症による貧血、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)、鎌状赤血球症など)を有する対象(例えば、患者)において潰瘍(例えば、皮膚潰瘍)を予防することができる。一部の実施形態では、対象は、鎌状赤血球症を有する。一部の実施形態では、対象は、サラセミア症候群(例えば、βサラセミア症候群、中間型βサラセミアなど)を有する。一部の実施形態では、対象は、皮膚潰瘍を有する貧血を有する。一部の実施形態では、皮膚潰瘍は皮膚の(skin)潰瘍である。一部の実施形態では、潰瘍は、足または足首に生じている。
【0355】
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子または薬学的組成物は、非経口投与される[例えば、静脈内(I.V.)注射、動脈内注射、骨内注射、筋内注射、髄腔内注射、皮下注射、または皮内注射により]。非経口投与に適する薬学的組成物は、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子を、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌かつ等張の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または使用直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散液へと再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み得る。注射可能な溶液または分散液は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、または製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る。本開示の医薬製剤において利用され得る、適切な水性および非水性のキャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば、オリーブ油)、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、およびこれらの適切な混合物を含む。適正な流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および、界面活性剤の使用によって維持することができる。ある特定の実施形態では、ActRIIアンタゴニスト作用因子または本開示の医薬組成物を、皮下投与(例えば、皮下注射)する。ある特定の実施形態では、ActRIIアンタゴニスト作用因子または本開示の医薬組成物を、局所投与する。
【0356】
一部の実施形態では、本開示の治療法は、インプラントもしくはデバイスから本開示の薬学的組成物を全身投与または局所投与する工程を包含する。さらに、本開示の薬学的組成物は、カプセル化され得、または、標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)へと送達するための形態で注射され得る。特定の実施形態では、本開示の薬学的組成物は、標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)に本開示の1つまたは複数の作用因子を送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、そして、最適には身体内へと再吸収され得るマトリクスを含み得る。例えば、マトリクスは、本開示の1つまたは複数の作用因子の遅速放出を提供し得る。このようなマトリクスは、他の移植医療用途に現在使用される材料から形成され得る。
【0357】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、見かけ上の様相および界面の特性のうちの1つまたは複数に基づいてもよい。本主題の組成物の特定の用途が、適切な製剤を画定する。組成物のための可能性のあるマトリクスは、生分解性でかつ化学的に画定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の可能性のある材料は、生分解性でかつ生物学的に十分に画定されたもの(例えば、骨または皮膚のコラーゲンが挙げられる)である。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクスの成分から構成される。他の可能性のあるマトリクスは、非生分解性でかつ化学的に規定されたもの(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクスが挙げられる)である。マトリクスは、上述のタイプの材料のいずれかの組み合わせ(例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、または、コラーゲンおよびリン酸三カルシウム)から構成され得る。バイオセラミクスは、組成物(例えば、カルシウム-アルミン酸-リン酸)中で変化され得、孔径、粒子径、粒子の形状および生分解性のうちの1つまたは複数を変更するように加工され得る。
【0358】
ある特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、局所投与することができる。「局所適用」または「局所」とは、医薬組成物の、例えば、皮膚、創傷部位、潰瘍部位、および粘膜を含む体表面との接触を意味する。局所用医薬組成物は、種々の適用形態を有する可能性があり、組成物を局所投与するときに、組織の近傍に配置するか、または組織と直接的に接触させるように適合させた薬物含有層を含むことが典型的である。局所投与に適する医薬組成物は、液剤、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、フォーム剤、ペースト剤、パテ剤、半固形剤、または固形剤として製剤化した、本開示の、1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト因子(例えば、GDF-ActRIIアンタゴニスト、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、GDFトラップなど)を含み得る。液体形態、ゲル形態、クリーム形態、ローション形態、軟膏形態、フォーム形態、ペースト形態、またはパテ形態の医薬組成物は、組成物を、標的組織に塗り伸ばすこと、スプレーすること、塗りつけること、軽く叩いて塗布すること、またはローラー塗布することにより適用することができる。医薬組成物また、滅菌包帯材、経皮パッチ、プラスター、および絆創膏へと含浸させることもできる。パテ形態、半固体形態、または固体形態の医薬組成物は、変形可能であり得る。それらは、弾性の場合もあり、非弾性の場合もある(例えば、可撓性の場合もあり、非可撓性の場合もある)。ある特定の態様では、医薬組成物は、複合材料の一部を形成し、繊維、微粒子、または組成が同じであるかもしくは異なる複数の層を含み得る。
【0359】
液体形態の局所用の組成物は、薬学的に許容される溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、懸濁液を含み得る。有効成分に加えて、液体剤形は、当該分野で一般に使用される、不活性の希釈剤であって、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および/または乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、または1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物]を含む希釈剤を含有し得る。
【0360】
局所用のゲル組成物、クリーム組成物、ローション組成物、軟膏組成物、半固体組成物、または固体組成物は、多糖、合成ポリマーまたはタンパク質ベースのポリマーなど、1つまたは複数の増粘剤を含み得る。本発明の一実施形態では、本明細書のゲル化剤は、適切に非毒性であり、所望の粘性をもたらすゲル化剤である。増粘剤として、ビニルピロリドン、メタクリルアミド、アクリルアミドN-ビニルイミダゾール、カルボキシビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、シリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ビニルアルコール、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸塩、マレイン酸、NN-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、Pluronic、コラーゲン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニレン、ポリケイ酸ビニル、糖で置換されたポリアクリル酸(例えば、スクロース、グルコース、グルコサミン、ガラクトース、トレハロース、マンノース、またはラクトース)、アシルアミドプロパンスルホン酸、オルトケイ酸テトラメトキシ、オルトケイ酸メチルトリメトキシ、オルトケイ酸テトラアルコキシ、オルトケイ酸トリアルコキシ、グリコール、プロピレングリコール、グリセリン、多糖、アルギン酸塩、デキストラン、シクロデキストリン、セルロース、変性セルロース、酸化セルロース、キトサン、キチン、グアー、カラギーナン、ヒアルロン酸、イヌリン、デンプン、変性デンプン、アガロース、メチルセルロース、植物ガム、ヒアルロナン(hylaronan)、ヒドロゲル、ゼラチン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、低級メトキシペクチン、架橋デキストラン、デンプン-アクリロニトリルグラフトコポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムデンプン、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、ポリビニレン、ポリエチルビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアルカノエート、ポリ乳酸、ポリラクテート、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、スルホン化ヒドロゲル、AMPS(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、SEM(メタクリル酸スルホエチル)、SPM(メタクリル酸スルホプロピル)、SPA(アクリル酸スルホプロピル)、N,N-ジメチル-N-メタクリルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン、メタクリル酸アミドプロピル-ジメチルアンモニウムスルホベタイン、SPI(イタコン酸-ビス(1-プロピルスルホン酸(sulfonizacid)-3)エステル二カリウム塩)、イタコン酸、AMBC(3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸)、ベータ-カルボキシエチルアクリレート(アクリル酸の二量体)、およびマレイン酸無水物-メチルビニルエーテルポリマー、これらの誘導体、これらの塩、これらの酸、およびこれらの組合せの、ポリマー、コポリマー、および単量体が挙げられ得る。ある特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、例えば、各々が、所定量の、本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子と、任意選択で、1つまたは複数の他の有効成分とを含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(スクロースおよびアカシアまたはトラガントなどの矯味矯臭基材を使用する)、散剤、顆粒剤、水性または非水性液体中の溶剤または懸濁剤、水中油または油中水の液体エマルジョン、エリキシル剤またはシロップ剤、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基材を使用する)、かつ/またはマウスウォッシュの形態で経口投与することができる。本開示のActRIIアンタゴニスト作用因子と、任意選択で、1つまたは複数の他の有効成分とはまた、ボーラス剤、舐剤、またはペースト剤としても投与することができる。
【0361】
経口投与のための固体投薬形態(例えば、カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤および顆粒剤)において、本開示の1または複数のActRIIアンタゴニスト作用因子は、1または複数の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア)、湿潤剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、アガー-アガー、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、溶液抑制因子(solution retarding agent)(例えば、パラフィン)、吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤およびこれらの混合物を含む)と共に混合され得る。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、医薬製剤(組成物)はまた、緩衝剤も含み得る。また、同様の種類の固形組成物も、例えば、ラクトースまたは乳糖のほか、高分子量ポリエチレングリコールを含む、1つまたは複数の賦形剤を使用して、軟充填ゼラチンカプセル中および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として利用することができる。
【0362】
本開示の薬学的組成物の経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該分野で一般に用いられる不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒が挙げられる)、可溶化剤および/または乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物]を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口用組成物はまた、例えば、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤、保存剤およびこれらの組み合わせを含む佐剤を含み得る。
【0363】
懸濁液は、活性ActRIIアンタゴニスト作用因子に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー-アガー、トラガント、およびこれらの組み合わせを含む懸濁剤を含有し得る。
【0364】
微生物の作用および/または増殖の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、およびソルビン酸フェノールを含む、種々の抗細菌剤および抗真菌剤を組み入れることにより確保することができる。
【0365】
ある特定の実施形態では、例えば、糖、または塩化ナトリウムを含む等張化剤を薬学的組成物中に組み入れることも望ましいと考えられる。加えて、注射可能な医薬形態の吸収の遅延も、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含む、吸収を遅延させる作用因子を組み入れることにより、もたらすことができる。
【0366】
投薬レジメンは、本開示の1つまたは複数の作用因子の作用を修飾する種々の要因を考慮して主治医によって決定されることが理解される。種々の要因として、患者の赤血球数、ヘモグロビンレベル、所望の標的赤血球数、患者の年齢、患者の性別、および患者の食餌、赤血球レベルの低下に寄与し得る任意の疾患の重症度、投与時間、ならびに他の臨床的要因が挙げられるがこれらに限定されない。他の公知の活性の作用因子の、最終組成物への添加もまた、投与量に影響を及ぼし得る。進行は、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、網状赤血球レベル、および造血プロセスの他の指標のうちの1つまたは複数の定期的な評価によりモニタリングすることができる。
【0367】
特定の実施形態では、本開示はまた、本開示の1つまたは複数のActRIIアンタゴニスト作用因子のインビボ産生のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、上に列挙したような障害のうち1つまたは複数を有する細胞または組織中に作用因子配列を導入することによってその治療作用を達成する。作用因子配列の送達は、例えば、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いることによって達成され得る。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数の作用因子配列の治療的送達は、標的化されたリポソームの使用である。
【0368】
本明細書中で教示されるような遺伝子治療に利用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、RNAウイルス(例えば、レトロウイルス)が挙げられる。レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリのレトロウイルスの誘導体であり得る。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多数のさらなるレトロウイルスベクターが多数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、形質導入された細胞が同定および生成され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的特異的とされ得る。一部の実施形態では、標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、本開示の1つまたは複数の作用因子を含むレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム中に挿入され得るか、または、ウイルスエンベロープに付着され得ることを認識する。
【0369】
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクション法によって、レトロウイルスの構造遺伝子(gag、polおよびenv)をコードするプラスミドを用いて直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は、次いで、関心のある遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
【0370】
本開示の1つまたは複数の作用因子のための別の標的化送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が挙げられる。特定の実施形態において、本開示のコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが、水性の内部に封入され得、そして、生物学的に活性な形態で細胞へと送達され得る。例えば、Fraleyら(1981年)、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁を参照のこと。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移入のための方法は当該分野で公知である。例えば、Manninoら(1988年)、Biotechniques、6巻:682頁、1988を参照のこと。
【0371】
リポソームの組成は通常、リン脂質の組み合わせであり、ステロイド(例えば、コレステロール)を含み得る。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。また、他のリン脂質または他の脂質であって、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンを含むリン脂質または脂質も使用することができる。例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいたリポソームの標的化もまた可能であり、当該分野で公知である。
【実施例】
【0372】
(実施例)
本発明は、ここで、一般的に記載されるが、単に特定の実施形態および本発明の実施形態を例示する目的のために含められ、本発明を限定することは意図されない以下の実施例を参照するとより容易に理解される。
【0373】
(実施例1)
ActRIIa-Fc融合タンパク質
本出願人は、間に最小限のリンカーを有する、ヒトActRIIaの細胞外ドメインを、ヒトFcドメインまたはマウスFcドメインに融合させた、可溶性ActRIIA融合タンパク質を構築した。構築物を、それぞれ、ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcと呼ぶ。
【0374】
CHO細胞株から精製されたActRIIA-hFc(Fc部分に下線を付す)を、下記(配列番号22)に示す。
【化22】
【0375】
ActRIIA-hFcタンパク質およびActRIIA-mFcタンパク質は、CHO細胞株内で発現させた。
3つの異なるリーダー配列:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号23)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号24)
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号25)
について検討した。
【0376】
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列を有する。
【化23】
【0377】
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる。
【化24-1】
【化24-2】
【0378】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcはいずれも、組換え発現に目覚ましく適した。
図3Aおよび3Bにおいて示される通り、タンパク質は、タンパク質の、単一で十分に明確なピークとして精製した。N末端のシーケンシングにより、-ILGRSETQE(配列番号34)の単一の配列を明らかにした。精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3つまたはこれ超を、任意の順序で含む工程により達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了させることができた。ActRIIA-hFcタンパク質は、サイズ除外クロマトグラフィーにより決定されるように、>98%の純度まで精製し、SDS PAGEにより決定されるように、>95%の純度まで精製した。
【0379】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcは、リガンド、特に、アクチビンAに対する高アフィニティーを示した。GDF-11またはアクチビンAは、標準的なアミンカップリング手順を使用して、Biacore(商標)CM5チップ上に固定化した。ActRIIA-hFcタンパク質およびActRIIA-mFcタンパク質を、システム上にロードし、結合を測定した。ActRIIA-hFcは、アクチビンに、5×10
-12の解離定数(K
D)で結合し、GDF11に、9.96×10
-9のK
Dで結合した。
図4Aおよび4Bを参照されたい。ActRIIA-mFcも同様に挙動した。
【0380】
ActRIIA-hFcは、薬物動態研究において極めて安定であった。ラットに、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのActRIIA-hFcタンパク質を投薬し、24、48、72、144、および168時間で、タンパク質の血漿レベルを測定した。別個の研究では、ラットに、1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgで投薬した。ラットでは、ActRIIA-hFcの血清半減期は、11~14日間であり、薬物の循環レベルは、2週間後においても極めて高かった(1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの初回投与について、それぞれ、11μg/ml、110μg/ml、または304μg/ml)。カニクイザルでは、血漿半減期は、実質的に14日間を超え、薬物の循環レベルは、1mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの初回投与について、それぞれ、25μg/ml、304μg/ml、または1440μg/mlであった。
【0381】
(実施例2)
ActRIIA-hFcタンパク質の特徴付け
ActRIIA-hFc融合タンパク質は、安定的にトランスフェクトされたCHO-DUKX B11細胞内で、pAID4ベクター(SV40 ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から、配列番号24の組織プラスミノーゲンリーダー配列を使用して発現させた。上記の実施例1で記載した通りに精製されたタンパク質は、配列番号22の配列を有した。Fc部分は、配列番号22において示される、ヒトIgG1のFc配列である。タンパク質解析は、ActRIIA-hFc融合タンパク質は、ジスルフィド結合によるホモ二量体として形成されることを明らかにする。
【0382】
(実施例3)
ActRIIA-hFcは、非ヒト霊長動物において赤血球レベルを高める
研究では、各々、雄カニクイザル5匹および雌カニクイザル5匹ずつによる4つの群を使用し、群当たり性別当たり3匹ずつを、29日目に終了するようにスケジュールにし、群当たり性別当たり2匹ずつを、57日目に終了するようにスケジュールにした。各動物に、1、8、15、および22日目において、静脈内(IV)注射を介して、ビヒクル(群I)または1、10、もしくは30mg/kg(それぞれ、群2、3、および4)の用量のActRIIA-Fcを投与した。投薬容量は、3mL/kgで維持した。赤血球レベルの種々の尺度は、初回投与の2日前、ならびに初回投与後15、29、および57日目(残りの2匹の動物について)に評価した。
【0383】
ActRIIA-hFcは、雄および雌について、全ての用量レベルおよび研究を通した全ての時点において、平均赤血球パラメータ[赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、およびヘマトクリット(HCT)]の統計学的に有意な増大を引き起こし、絶対網状赤血球数および相対網状赤血球数(ARTC;RTC)の上昇を伴った。
図5~8を参照されたい。
【0384】
統計学的有意性は、各処置群について、ベースラインにおける処置群についての平均と比べて計算した。
【0385】
とりわけ、赤血球数の増大およびヘモグロビンレベルの上昇は、大きさが、エリスロポエチンについて報告されている効果とほぼ同等である。これらの効果の発生は、ActRIIA-Fcの場合が、エリスロポエチンの場合より急速である。
【0386】
ラットおよびマウスについて同様の結果が観察された。
【0387】
(実施例4)
ActRIIA-hFcは、ヒト患者において赤血球レベルを高め、かつ骨形成のマーカーを増加させる
実施例1で記載したActRIIA-hFc融合タンパク質を、主に、健常な閉経後女性におけるタンパク質の安全性を評価するように実施された、無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究において、ヒト患者に投与した。48例の対象を、6つのコホートに無作為化して、単一用量のActRIIA-hFcまたはプラセボを施した(5つが実薬(active):1つがプラセボ)。用量レベルは、静脈内(IV)で0.01~3.0mg/kgの範囲とし、皮下(SC)で0.03~0.1mg/kgの範囲とした。全ての対象は、120日間にわたり追跡した。薬物動態(PK)解析に加えて、ActRIIA-hFcの生体活性もまた、骨形成および骨吸収についての生化学的マーカーの測定ならびにFSHレベルの測定により評価した。
【0388】
潜在的変化を見出すために、ヘモグロビン数およびRBC数を、全ての対象について、研究の経過にわたり詳細に調べ、ベースラインレベルと比較した。血小板数を、同じ時間にわたり、対照として比較した。血小板数については、時間をわたってベースライン値からの臨床的に有意な変化は見られなかった。
【0389】
ActRIIA-hFcのPK解析は、用量に対する直線的プロファイルと、およそ25~32日間の平均半減期とを明らかにした。ActRIIA-hFcの曲線下面積(AUC)は、用量に直線的に関係し、SC投薬後における吸収は、本質的に完全であった。
図9および10を参照されたい。これらのデータは、SCが、最初の数日間のIV投薬と関連する、薬物の血清濃度のスパイクを回避しながら、薬物について、同等のバイオアベイラビリティおよび血清半減期をもたらすため、投薬への望ましいアプローチであることを指し示す。
図10を参照されたい。ActRIIA-hFcは、同化による骨成長のマーカーである、骨特異的アルカリホスファターゼ(BAP)の血清レベルの、急速で持続的な用量依存性の上昇と、骨吸収のマーカーである、C末端1型コラーゲンテロペプチドレベルおよび酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5bレベルの、用量依存性の減少とを引き起こした。P1NPなど、他のマーカーが示した結果は、決定的ではなかった。BAPレベルが、薬物の最高投与量において、準飽和効果を示したことから、この骨同化バイオマーカーに対する最大半量効果は、投与量を3mg/kgまでの範囲で増大させるとき、0.3mg/kgの投与量で達成され得ることが指し示される。薬物について、薬力学効果の、AUCに対する関係として計算されるEC50は、51,465(日×ng/ml)であった。
図11を参照されたい。これらの骨バイオマーカーの変化は、被験最高用量レベルにおいて、およそ120日間にわたり持続された。また、血清FSHレベルの用量依存性の低下も見られたことは、アクチビンの阻害と符合した。
【0390】
総じて、研究の最初の1週間にわたり、薬物関連でないヘモグロビンの極めて小幅な低減であって、おそらく、IVで施される場合であれ、SCで施される場合であれ、0.01mg/kg群および0.03mg/kg群における研究のための瀉血に関連する低減が見られた。SCおよびIVによる0.1mg/kgにおけるヘモグロビンの結果は、8~15日目までに、安定するか、または適度の上昇を示した。IVによる0.3mg/kgの用量レベルでは、早くも2日目にHGBレベルの明らかな増大が見られ、しばしば、15~29日目にピークに達したが、これは、プラセボ処置対象では見られなかった。IVによる1.0mg/kgの用量およびIVによる3.0mg/kgの用量では、単回投薬に応答して、対応するRBC数およびヘマトクリットの増大と共に、1g/dlを超えるヘモグロビンの平均の増大が観察された。これらの血液学的パラメータは、投薬の約60日後においてピークに達し、120日目までに実質的な低下を示した。これは、赤血球レベルを高めることを目的とする投薬が、120日間未満の間隔で(すなわち、ベースラインに戻る前に)なされる場合により有効であり、90日間もしくはこれ未満、または60日間もしくはこれ未満の投薬間隔が望ましいと考えられることを指し示す。血液学的変化の概要については、
図12~15を参照されたい。
【0391】
総じて、ActRIIA-hFcは、赤血球数および網状赤血球数に対する用量依存性効果を示した。
【0392】
(実施例5)
貧血患者の、ActRIIA-hFcによる処置 0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1.0mg/kgという30の用量レベルで、30日ごとに投薬を行う、複数回用量のActRIIA-hFcにより患者を処置するように、臨床研究をデザインした。試験において、正常な健常患者は、一部の場合に、ヘモグロビン(Hg)およびヘマトクリット(Hct)が、正常な範囲を超えて増大することを除き、実施例4で報告した、第I相臨床試験において見られる増大と符合するヘモグロビンおよびヘマトクリットの増大を呈示した。ヘモグロビンレベルがおよそ7.5g/dLである貧血性患者にもまた、1mg/kgのレベルで2用量を施したところ、2カ月後において、およそ10.5g/dLのヘモグロビンレベルが結果としてもたらされた。患者の貧血は、慢性鉄欠損により引き起こされると考えられる、小球性貧血であった。
【0393】
ActRIIA-Fc融合タンパク質はさらに、例えば、化学療法誘導性貧血および慢性腎疾患と関連する貧血を含む、貧血の種々のモデルにおいて、赤血球レベルを高めるのに有効であることも実証されている。例えば、米国特許出願公開第2010/0028331号を参照されたい。
【0394】
(実施例6)
代替的なActRIIA-Fcタンパク質
本明細書で記載される方法に従い使用され得る、様々なActRIIA改変体は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、WO2006/012627として公開されている国際特許出願(例えば、59~60頁を参照されたい)において記載されている。代替的な構築物は、C末端テール(ActRIIAの細胞外ドメインの最後の15アミノ酸)を欠失させている場合がある。このような構築物の配列を下記(Fc部分に下線を付す)(配列番号28)に提示する。
【化25】
【0395】
(実施例7)
ActRIIB-Fc融合タンパク質の生成
本出願人は、間に最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を有する、ヒトActRIIBの細胞外ドメインを、ヒトFcドメインまたはマウスFcドメインに融合させた、可溶性ActRIIB融合タンパク質を構築した。構築物を、それぞれ、ActRIIB-hFcおよびActRIIB-mFcと呼ぶ。
【0396】
CHO細胞株から精製されたActRIIB-hFcを、下記(配列番号29)に示す。
【化26】
【0397】
ActRIIB-hFcタンパク質およびActRIIB-mFcタンパク質は、CHO細胞株内で発現させた。3つの異なるリーダー配列:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号23)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号24)
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号30)
について検討した。
【0398】
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列(配列番号31)を有する。
【化27】
【0399】
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号32)によりコードされる。
【化28】
【0400】
CHO細胞により生成された材料の、N末端のシーケンシングにより、-GRGEAE(配列番号33)の主要なポリペプチド配列を明らかにした。とりわけ、文献において報告されている他の構築物は、-SGR・・・配列で始まる。
【0401】
精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3つまたはこれ超を、任意の順序で含む工程により達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了させることができた。
【0402】
ActRIIB-Fc融合タンパク質はまた、HEK293細胞内およびCOS細胞内でも発現された。全ての細胞株および妥当な培養条件に由来する材料は、インビボにおいて筋構築活性を有するタンパク質をもたらしたが、おそらく細胞株の選択および/または培養条件に関連する、効力の変動性も観察された。
【0403】
本出願人は、ActRIIBの細胞外ドメイン内に一連の変異を生成し、これらの変異体タンパク質を、細胞外ActRIIBとFcドメインとの間の可溶性融合タンパク質として生成した。バックグラウンドのActRIIB-Fc融合物は、配列番号29の配列を有する。
【0404】
N末端およびC末端の切断を含む種々の変異を、バックグラウンドのActRIIB-Fcタンパク質に導入した。実施例1に提示したデータに基づくと、これらの構築物は、TPAリーダーとともに発現させる場合、N末端のセリンを欠くことが予想される。変異は、PCR変異誘発により、ActRIIB細胞外ドメイン内に生成した。PCRの後、フラグメントを、Qiagenカラムを介して精製し、SfoIおよびAgeIで消化し、ゲル精製した。ライゲーションすると、ヒトIgG1との融合物キメラを創出するように、これらのフラグメントを、発現ベクターであるpAID4(WO2006/012627を参照されたい)にライゲーションした。E.coli DH5アルファへと形質転換させたら、コロニーを採取し、DNAを単離した。マウス構築物(mFc)のために、マウスIgG2aで、ヒトIgG1を置換した。全ての変異体の配列を検証した。
【0405】
変異体の全ては、HEK293T細胞内で、一過性のトランスフェクションにより生成した。まとめると、500mlのスピナー内で、HEK293T細胞を、容量250mlのFreestyle(Invitrogen)培地中に1ml当たりの細胞6×105個で設定し、一晩にわたり増殖させた。翌日、これらの細胞を、最終DNA濃度を0.5ug/mlとするDNA:PEI(1:1)複合体で処理した。4時間後、250mlの培地を添加し、細胞を、7日間にわたり増殖させた。細胞をスピンダウンすることにより馴化培地を採取し、濃縮した。
【0406】
変異体を、例えば、プロテインAカラムを含む、様々な技法を使用して精製し、低pH(3.0)のグリシン緩衝液で溶出させた。中和の後、これらを、PBSに対して透析した。
【0407】
変異体はまた、同様な方法により、CHO細胞内でも生成した。
【0408】
変異体を、参照により本明細書に組み込まれる、WO2008/097541およびWO2006/012627において記載されている、結合アッセイおよび/またはバイオアッセイにおいて調べた。一部の場合には、アッセイを、精製タンパク質ではなく、馴化培地について実施した。ActRIIBの追加のバリエーションについては、米国特許第7,842,663号において記載されている。
【0409】
(実施例8)
ActRIIB-Fcは、非ヒト霊長動物における赤血球生成を刺激する
カニクイザルを、7つの群(群当たり性別当たり6匹ずつ)に割りつけ、ActRIIB(20~134)-hFcを、投与量0.6、3、または15mg/kgで、2週間ごとまたは4週間ごとに、9カ月間にわたる皮下注射として投与した。対照群(群当たり性別当たり6匹ずつ)には、ActRIIB(20~134)-hFc処置動物と同じ投薬容量(用量当たり0.5ml/kg)で、ビヒクルを施した。一般的な臨床病態パラメータ(例えば、血液学パラメータ、臨床化学パラメータ、凝固パラメータ、および尿検査パラメータ)の変化について、動物をモニタリングした。血液学パラメータ、凝固パラメータ、および臨床化学パラメータ(鉄パラメータ、リパーゼ、およびアミラーゼを含む)は、投薬を開始する前、ならびに59、143、199、227日目、および267日目(4週間ごとに投薬される群について)または281日目(2週間ごとに投薬される群について)において、2回評価した。267/281日目における評価は、最終用量を投与した2週間後に行った。
【0410】
ActRIIB(20~134)-hFcの投与は、雄ザルおよび雌ザルにおいて、血液学パラメータに対する、有害でない、用量に関連する変化を結果としてもたらした。これらの変化は、赤血球数、網状赤血球数、および赤血球の分布幅の増大、ならびに平均赤血球容量、平均赤血球ヘモグロビン量、および血小板数の減少を含んだ。雄では、RBC数は、全ての用量レベルで増大し、増大の大きさは概して、ActRIIB(20~134)-hFcを2週間ごとに投与するのであれ、4週間ごとに投与するのであれ、同等であった。平均RBC数は、59~267/281日目の間の全ての時点において(群2の雄[2週間ごとに0.6mg/kg]で、281日目においてRBC数が増大しなかったことを除き)増大した。雌では、RBC数は、2週間ごとに≧3mg/kgで増大し、変化は、143~281日目の間に生じ;4週間ごとに15mg/kgでは、平均RBC数は、59~267日目の間に増大した。
【0411】
これらの効果は、ActRIIB(20~134)-hFcの、赤血球生成の刺激に対する正の効果と符合する。
【0412】
(実施例9)
GDFトラップの生成
本出願人は、以下の通りに、GDFトラップを構築した。アクチビンAへの結合を、GDF11および/またはミオスタチンと比べて大幅に低減した(配列番号1内の79位における、ロイシンからアスパラギン酸への置換の帰結として)、改変ActRIIBの細胞外ドメイン(L79D置換を有する配列番号1のアミノ酸20~134)を有するポリペプチドを、間に最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を有する、ヒトFcドメインまたはマウスFcドメインに融合させた。構築物を、それぞれ、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcおよびActRIIB(L79D 20~134)-mFcと呼ぶ。79位にアスパラギン酸ではなく、グルタミン酸を有する代替的形態についても、同様に実施した(L79E)。下記の配列番号36に照らした226位において、バリンではなく、アラニンを有する代替的形態もまた、生成し、調べる全ての点において、同等に実施した。79位におけるアスパラギン酸(配列番号1に照らした;または配列番号36に照らした60位)は、下記で二重下線により指し示す。配列番号36に照らした226位におけるバリンもまた、下記で二重下線により指し示す。
【0413】
CHO細胞株から精製されたGDFトラップであるActRIIB(L79D 20~134)-hFcを、下記(配列番号36)に示す。
【化29】
【0414】
GDFトラップのActRIIBに由来する部分は、下記(配列番号37)に示されるアミノ酸配列を有し、この部分は、単量体として使用することもでき、単量体、二量体またはより高次の複合体としての非Fc融合タンパク質として使用することもできるであろう。
【化30】
【0415】
GDFトラップタンパク質は、CHO細胞株内で発現させた。3つの異なるリーダー配列:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号23)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号24)
(iii)天然:MTAPWVALALLWGSLCAGS(配列番号30)
について検討した。
【0416】
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列を有する。
【化31】
【0417】
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号39)によりコードされる。
【化32】
【0418】
精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3つまたはこれ超を、任意の順序で含む工程により達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了させることができた。精製スキームの例では、細胞培養培地を、プロテインAカラムに通し、150mMのトリス/NaCl(pH8.0)中で洗浄し、次いで、50mMのトリス/NaCl(pH8.0)中で洗浄し、0.1Mのグリシン、pH3.0で溶出させる。低pHの溶出物は、ウイルス除去工程として、室温で30分間にわたり保持する。次いで、溶出物を中和させ、Qセファロースイオン交換カラムに通し、50mMのトリス、pH8.0、50mMのNaCl中で洗浄し、150mM~300mMの間の濃度のNaClを伴う、50mMのトリス、pH8.0中で溶出させる。次いで、溶出物を、50mMのトリス、pH8.0、1.1Mの硫酸アンモニウムへと交換し、フェニルセファロースカラムに通し、洗浄し、150~300mMの間で硫酸アンモニウムを伴う、50mMのトリス、pH8.0で溶出させる。使用のために、溶出物を透析し、濾過する。
【0419】
追加のGDFトラップ(アクチビンAへの結合の、ミオスタチンまたはGDF11への結合と比べた比を低減するように改変されたActRIIB-Fc融合タンパク質)は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2008/097541およびWO2006/012627において記載されている。
【0420】
(実施例10)
GDF-11およびアクチビンに媒介されるシグナル伝達についてのバイオアッセイ
A-204レポーター遺伝子アッセイを使用して、ActRIIB-Fcタンパク質およびGDFトラップの、GDF-11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対する効果を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉に由来する)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennlerら、1998年、EMBO、17巻:3091~3100頁において記載されている)。CAGA12モチーフは、TGFベータ応答性遺伝子(例えば、PAI-1遺伝子)内に存在するので、このベクターは、SMAD2およびSMAD3を介してシグナル伝達する因子のために一般的に使用される。
1日目:A-204細胞を、48ウェルプレートに分ける。
2日目:A-204細胞に、10ugのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10ug)+pRLCMV(1μg)およびFugeneをトランスフェクトする。
3日目:因子(培地+0.1%のBSA中に希釈された)を添加する。細胞に添加する前に、1時間にわたり、阻害剤を、因子と共に、あらかじめインキュベートする必要がある。6時間後、細胞を、PBSですすぎ、溶解させた。
【0421】
これに続いて、ルシフェラーゼアッセイを行う。いかなる阻害剤も存在しない下で、アクチビンAは、レポーター遺伝子発現に対する10倍の刺激およびED50約2ng/mlを示した。GDF-11:16倍の刺激、ED50:約1.5ng/mlを示した。
【0422】
このアッセイでは、ActRIIB(20~134)は、アクチビンA、GDF-8、およびGDF-11の活性の強力な阻害剤である。下記で記載される、ActRIIB改変体もまた、このアッセイで調べた。
【0423】
(実施例11)
ActRIIB-Fc改変体の細胞ベースの活性
ActRIIB-Fcタンパク質およびGDFトラップの活性を、上記で記載した細胞ベースのアッセイで調べた。結果を、下記の表にまとめる。一部の改変体を、異なるC末端切断構築物で調べた。上記で論じた通り、5または15アミノ酸の切断は、活性の低減を引き起こした。GDFトラップ(L79D改変体およびL79E改変体)は、GDF-11の野生型阻害をほとんど保持しながら、アクチビンA阻害の実質的な喪失を示した。
【表1-1】
【表1-2】
+ 不十分な活性(約1×10
-6K
I)
++ 中程度の活性(約1×10
-7K
I)
+++ 良好な(野生型の)活性(約1×10
-8K
I)
++++ 野生型を超える活性
【0424】
いくつかの改変体は、ラットにおける血清半減期について評価されている。ActRIIB(20~134)-Fcの血清半減期は、およそ70時間である。ActRIIB(A24N 20~134)-Fcの血清半減期は、およそ100~150時間である。A24N改変体の、細胞ベースのアッセイ(上記)およびインビボアッセイ(下記)における活性は、野生型分子と同等である。より長い半減期と併せて、これは、時間をわたって、A24N改変体は、タンパク質単位当たりで、野生型分子より大きな効果をもたらすことを意味する。A24N改変体、および上記で調べた他の改変体のいずれかは、L79D改変体またはL79E改変体など、GDFトラップ分子と組み合わせることができる。
【0425】
(実施例12)
GDF-11およびアクチビンAへの結合
ある特定のActRIIB-Fcタンパク質およびGDFトラップの、リガンドへの結合について、Biacore(商標)アッセイで調べた。
【0426】
ActRIIB-Fc改変体または野生型タンパク質を、抗hFc抗体を使用するシステム上に捕捉した。リガンドを注入し、捕捉された受容体タンパク質上に流した。結果を、下記の表にまとめる。
【0427】
【0428】
無細胞アッセイから得られたこれらのデータにより、細胞ベースのアッセイによるデータが確認され、A24N改変体は、ActRIIB(20~134)-hFc分子のリガンド結合活性と同様なリガンド結合活性を保持し、L79D分子またはL79E分子は、ミオスタチンおよびGDF11への結合を保持するが、アクチビンAへの結合の顕著な減殺(定量化不可能な結合)を示すことが実証される。
【0429】
他の改変体も、WO2006/012627(参照によりその全体において本明細書に組み込まれる)で報告される通りに生成され、調べられている。例えば、デバイスにカップリングさせたリガンドを使用し、カップリングさせたリガンド上に受容体を流す、59~60頁を参照されたい。とりわけ、K74Y、K74F、K74I(および、おそらく、K74Lなど、K74における他の疎水性置換)およびD80Iは、アクチビンA(ActA)への結合の、GDF11への結合に対する比の、野生型K74分子と比べた減少を引き起こす。これらの改変体に関するデータの表を、下記に再掲載する。
【表3-1】
【表3-2】
* 結合が観察されない
-- <WTの5分の1の結合
- WTの約2分の1の結合
+ WT
++ <2倍の結合
+++ 約5倍の結合
++++ 約10倍の結合
+++++ 約40倍の結合
【0430】
(実施例13)
GDFトラップは、インビボにおける赤血球レベルを高める
12週齢の雄C57BL/6NTacマウスを、2つの処置群(N=10)の1つに割り当てた。マウスに、ビヒクルまたは改変体ActRIIBポリペプチド(「GDFトラップ」)[ActRIIB(L79D 20~134)-hFc]を、皮下注射(SC)により、10mg/kgで、毎週2回ずつ、4週間にわたり投薬した。研究終了時において、全血液を、心臓穿刺により、EDTAを含有する管へと回収し、HM2血液解析器(Abaxis,Inc)を使用して、細胞分布について解析した。
【表4】
【0431】
GDFトラップによる処置は、白血球(WBC)数に対して、ビヒクル対照と比較して、統計学的に有意な効果を及ぼさなかった。赤血球(RBC)数は、処置群において、対照と比べて増大した(下記の表を参照されたい)。ヘモグロビン含量(HGB)およびヘマトクリット(HCT)の両方もまた、追加の赤血球に起因して増大した。平均赤血球分布幅(RDWc)が、処置動物において大きかったことから、未成熟赤血球プールの増大が指し示される。したがって、GDFトラップによる処置は、白血球集団に弁別可能な影響を及ぼさずに、赤血球の増大をもたらす。
【表5】
【0432】
(実施例14)
GDFトラップは、インビボにおける赤血球レベルを高めるのに、ActRIIB-Fcより優れている
19週齢の雄C57BL/6NTacマウスを、3つの群の1つに無作為に割り当てた。マウスに、ビヒクル(10mMのトリス緩衝生理食塩液、TBS)、野生型ActRIIB(20~134)-mFc、またはGDFトラップであるActRIIB(L79D
20~134)-hFcを、皮下注射により、毎週2回ずつ、3週間にわたり投薬した。血液は、ベースラインおよび3週間の投薬後における回収頬部採血であり、、血液解析器(HM2、Abaxis,Inc.)を使用して、細胞分布について解析した。
【0433】
ActRIIB-FcまたはGDFトラップによる処置は、白血球(WBC)数に対して、ビヒクル対照と比較して、有意な効果を及ぼさなかった。赤血球(RBC)数、ヘマトクリット(HCT)レベル、およびヘモグロビンレベルは全て、GDFトラップで処置されたマウスにおいて、対照または野生型構築物と比較して上昇した(下記の表を参照されたい)。したがって、直接的な比較では、GDFトラップは、赤血球の増大を、野生型ActRIIB-Fcタンパク質より有意に大きな程度まで促進する。実際、この実験では、野生型ActRIIB-Fcタンパク質は、赤血球の統計学的に有意な増大を引き起こさなかったことから、この効果を顕示するには、より長期またはより高用量の投薬が必要とされることが示唆される。
【表6】
【0434】
(実施例15)
短縮型ActRIIB細胞外ドメインを含むGDFトラップの生成
実施例9で記載した通り、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcと呼ばれるGDFトラップを、N末端における、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1内の残基79における)を含有するActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1内の残基20~134)への融合と、C末端における、ヒトFcドメインの、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)による融合とにより生成した(
図16)。この融合タンパク質に対応するヌクレオチド配列を、
図17Aおよび17Bに示す。
【0435】
ActRIIB(L79D 25~131)-hFcと呼ばれる短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップを、N末端における、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1内の残基79における)を含有する短縮型細胞外ドメイン(配列番号1内の残基25~131)への融合と、C末端における、ヒトFcドメインの、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)による融合とにより生成した(
図18)。この融合タンパク質に対応するヌクレオチド配列を、
図19Aおよび19Bに示す。
【0436】
(実施例16)
二重短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップによる選択的リガンド結合
GDFトラップおよび他のActRIIB-hFcタンパク質の、いくつかのリガンドに対するアフィニティーを、インビトロにおいて、Biacore(商標)装置により評価した。結果を、下記の表にまとめる。Kd値は、複合体の会合および解離が極めて急速であり、k
onおよびk
offの正確な決定が妨げられるために、定常状態アフィニティーの当てはめにより得た。
【表7】
【0437】
短縮型細胞外ドメインを有するGDFトラップである、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcは、より長い改変体である、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcにより示されるリガンドへの選択性に匹敵するかまたはこれを凌駕し、アクチビンAへの結合の顕著な喪失、アクチビンBへの結合の部分的喪失、およびL79D置換を欠くActRIIB-hFc対応物と比較してほぼ完全なGDF11への結合の保持を伴った。短縮単独(L79D置換を有さない)では、本実施例で示されるリガンド間の選択性を変更しなかった[ActRIIB(L79 25~131)-hFcを、ActRIIB(L79 20~134)-hFcと比較する]ことに注目されたい。
【0438】
(実施例17)
代替的なヌクレオチド配列によるActRIIB(L79D 25~131)-hFcの生成
ActRIIB(L79D 25~131)-hFcを生成するために、天然の79位(配列番号1)においてアスパラギン酸置換を有し、N末端およびC末端を短縮した(配列番号1内の残基25~131)ヒトActRIIB細胞外ドメインを、N末端において、天然のActRIIBリーダーの代わりに、TPAリーダー配列と融合させ、C末端において、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)を介して、ヒトFcドメインと融合させた(
図18)。この融合タンパク質をコードする1つのヌクレオチド配列を、
図19(配列番号42)に示し、正確に同じ融合タンパク質をコードする代替的なヌクレオチド配列を、
図22Aおよび22B(配列番号46)に示す。このタンパク質は、実施例9で記載した方法を使用して、発現させ、精製した。
【0439】
(実施例18)
短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップは、マウスにおける赤血球系前駆細胞の増殖を高める
ActRIIB(L79D 25~131)-hFcを、評価して、赤血球系前駆細胞の増殖に対するその効果を決定した。雄C57BL/6マウス(8週齢)を、1および4日目において、ActRIIB(L79D 25~131)-hFc(10mg/kg、s.c.;n=6)またはビヒクル(TBS;n=6)で処置し、次いで、8日目に、脾臓、脛骨、大腿骨、および血液を回収するために安楽死させた。脾臓および骨髄の細胞を単離し、5%のウシ胎仔血清を含有するIscoveによる改変ダルベッコ培地中で希釈し、特製のメチルセルロースベースの培地中に懸濁させ、2または12日間にわたり培養して、それぞれ、コロニー形成単位赤芽球(CFU-E)期およびバースト形成単位赤芽球(BFU-E)期にあるクローン生成性前駆細胞のレベルを評価した。BFU-Eを決定するためのメチルセルロースベースの培地(MethoCult M3434、Stem Cell Technologies)は、CFU-Eを決定するためのメチルセルロース培地(MethoCult M3334、Stem Cell Technologies)中には存在しない、組換えマウス幹細胞因子、インターロイキン3、およびインターロイキン6を含む一方、いずれの培地も、他の成分の中でもとりわけ、エリスロポエチンを含有した。BFU-EおよびCFU-Eのいずれについても、各組織試料に由来する、二連の培養プレート内でコロニー数を決定し、結果についての統計学的解析は、処置群当たりのマウスの数に基づいた。
【0440】
ActRIIB(L79D 25~131)-hFcで処置されたマウスからの脾臓由来の培養物のCFU-Eコロニー数は、対照マウスに由来する対応する培養物の2倍であった(P<0.05)が、BFU-Eコロニー数は、インビボにおける処置により有意には異ならなかった。骨髄培養物に由来するCFU-EコロニーまたはBFU-Eコロニーの数もまた、処置により有意には異ならなかった。予想される通り、脾臓由来の培養物中のCFU-Eコロニー数の増大は、安楽死時のActRIIB(L79D 25~131)-hFcで処置されたマウスにおいて、対照と比較して、赤血球レベルの高度に有意な(P<0.001)変化(11.6%の増大)、ヘモグロビン濃度(12%の増大)、およびヘマトクリットレベル(11.6%の増大)をともなった。これらの結果は、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップのインビボ投与は、赤血球レベルを高めるその全体的な効果の一部として、赤血球系前駆細胞の増殖を刺激し得ることを指し示す。
【0441】
GDFトラップ融合タンパク質は、例えば、化学療法誘導性貧血、腎摘出術誘導性貧血、および失血性貧血を含む、種々の貧血モデルにおいて赤血球レベルを高めるのに有効であることもさらに実証されている。例えば、国際特許出願公開第WO2010/019261号を参照されたい。
【0442】
(実施例19)
短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップは、非ヒト霊長動物において赤血球レベルを高める
2つのGDFトラップである、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcを、カニクイザルにおける赤血球生成を刺激するそれらの能力について評価した。サルを、GDFトラップ(10mg/kg;n=4匹の雄/4匹の雌)、またはビヒクル(n=2匹の雄/2匹の雌)で、1および8日目に、皮下処置した。血液試料は、1(処置前のベースライン)、3、8、15、29、および44日目に回収し、赤血球レベル(
図24)、ヘマトクリット(
図25)、ヘモグロビンレベル(
図26)、および網状赤血球レベル(
図27)について解析した。ビヒクルで処置されたサルは、全ての処置後時点において、反復した血液サンプリングの予想される効果である、赤血球、ヘマトクリット、およびヘモグロビンのレベルの低下を呈示した。これに対し、ActRIIB(L79D 20~134)-hFcまたはActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる処置は、最初の処置後時点(3日目)までに、これらのパラメータを増大させ、それらを、実質的に上昇したレベルで、研究期間にわたり維持した(
図24~26)。ActRIIB(L79D 20~134)-hFcまたはActRIIB(L79D 25~131)-hFcで処置されたサルにおける網状赤血球レベルが、8、15、および29日目において、ビヒクルと比較して実質的に上昇した(
図27)ことは、重要である。この結果は、GDFトラップによる処置が、赤血球前駆体の生成を増大させ、赤血球レベルの上昇を結果としてもたらすことを実証する。
【0443】
まとめると、これらのデータは、短縮型GDFトラップのほか、全長改変体も、インビボにおける赤血球の形成を増大させるのに、GDF11および潜在的に関連するリガンドの選択的アンタゴニストとして使用し得ることを実証する。
【0444】
(実施例20)
ActRIIB5に由来するGDFトラップ
他の研究者らも、ActRIIBの膜貫通ドメインを含むエクソン4が、異なるC末端配列により置きかえられた、ActRIIBの代替的な可溶性形態(ActRIIB5と表記される)について報告している。例えば、WO2007/053775を参照されたい。
【0445】
そのリーダーを有さない天然ヒトActRIIB5の配列は、以下の通りである。
【化33】
【0446】
記載される通りに、ロイシンからアスパラギン酸への置換、または他の酸性置換を、天然の79位(下線を付す)に施して、以下の配列を有する、改変体ActRIIB5(L79D)を構築することができる。
【化34】
【0447】
この改変体を、TGGGリンカー(一重下線)により、ヒトFc(二重下線)に接続して、以下の配列を有するヒトActRIIB5(L79D)-hFc融合タンパク質を生成することができる。
【化35】
この構築物は、CHO細胞内で発現させることができる。
【0448】
(実施例21)
マウスにおける、EPOおよび短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップによる組み合わせ処置の効果
EPOが、赤血球系前駆体の増殖を増大させることにより、赤血球の形成を誘導するのに対し、GDFトラップは、EPOの効果を補完または増強する形で、赤血球の形成に潜在的に影響を及ぼし得る。したがって、本出願人らは、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる組み合わせ処置の、赤血球生成パラメータに対する効果について探索した。雄C57BL/6マウス(9週齢)に、組換えヒトEPO単独(エポエチンアルファ、1800単位/kg)、ActRIIB(L79D 25~131)-hFc単独(10mg/kg)、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcの両方、またはビヒクル(トリス緩衝生理食塩液)の単回i.p.注射を施した。血液、脾臓、および大腿骨を回収するために、マウスを、投薬の72時間後に安楽死させた。
【0449】
脾臓および大腿骨を加工して、フローサイトメトリー解析のための赤血球系前駆細胞を得た。摘出後、脾臓を、5%のウシ胎仔血清を含有するIscoveによる改変ダルベッコ培地中で細かく刻み、1mLの滅菌シリンジのプランジャーで、70μmの細胞ストレーナーを介して押し込むことにより、機械的に解離させた。大腿骨から、あらゆる残存する筋肉または結合組織を除去し、残る骨幹部を、3mLのシリンジに接続された21ゲージの注射針を介して、5%のウシ胎仔血清を含有するIscoveによる改変ダルベッコ培地フラッシングすることによる、骨髄の回収を許容するように、端部を切除した。細胞懸濁液を遠心分離し(2000rpmで10分間にわたる)、細胞ペレットを、5%のウシ胎仔血清を含有するPBS中に再懸濁させた。各組織に由来する細胞(106個)を、抗マウスIgGと共にインキュベートして、非特異的結合をブロッキングし、次いで、マウス細胞表面マーカーであるCD71(トランスフェリン受容体)およびTer119(細胞表面グリコフォリンAと関連する抗原)に対する蛍光標識抗体と共にインキュベートし、洗浄し、フローサイトメトリーにより解析した。試料中の死細胞は、ヨウ化プロピジウムによる対比染色を介して、解析から除外した。脾臓内または骨髄内の赤血球系分化は、分化の経過にわたり低下する、CD71標識化の程度、および前赤芽球期により始まる終末赤血球系分化(terminal erythroid differentiation)の間に増大する、Ter119標識化により評価した(Socolovskyら、2001年、Blood、98巻:3261~3273頁;Yingら、2006年、Blood、108巻:123~133頁)。こうして、記載される通りに、フローサイトメトリーを使用して、前赤芽球(CD71highTer119low)、好塩基性赤芽球(CD71highTer119high)、多染性赤芽球+正染性赤芽球(CD71medTer119high)、および後期正染性赤芽球+網状赤血球(CD71lowTer119high)の数を決定した。
【0450】
EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる組み合わせ処置は、驚くべき程度に活発な赤血球の増大をもたらした。この実験の72時間にわたる時間枠では、EPOも、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcも、単独では、ヘマトクリットを、ビヒクルと比較して有意には増大させなかったのに対し、2つの作用因子による組み合わせ処置は、ヘマトクリットのほぼ25%の増大をもたらし、これは、予想外に相乗作用的であり、すなわち、それらの別個の効果の合計を超えた(
図28)。この種類の相乗作用は一般に、個別の作用因子が、異なる細胞機構を介して作用している証拠であると考えられる。同様の結果はまた、ヘモグロビン濃度(
図29)および赤血球濃度(
図30)についても観察され、これらの各々もまた、組み合わせ処置により相乗作用的に増大した。
【0451】
赤血球系前駆体レベルの解析は、より複雑なパターンを明らかにした。マウスでは、脾臓は、誘導的(「ストレス」性)赤血球生成を担う主要な臓器であると考えられる。72時間での脾臓組織のフローサイトメトリー解析は、EPOにより、赤血球生成性前駆体プロファイルが、ビヒクルと比較して顕著に変更され、好塩基性赤芽球数を、170%を超えて増大させたが、後期前駆体(後期正染性赤芽球+網状赤血球)は増大させず、3分の1超減少させた(
図31)ことを明らかにした。組み合わせ処置が、好塩基性赤芽球を、EPO単独より程度は劣るが、ビヒクルと比較して有意に増大させる一方で、後期前駆体の成熟を減殺せずに支援した(
図31)ことは重要である。したがって、EPOおよびActRIIB(L79D 25~131)-hFcによる組み合わせ処置は、前駆体の増殖と成熟との調和ある増強を介して、赤血球生成を増大させた。脾臓とは対照的に、組み合わせ処置後における骨髄内の前駆体細胞プロファイルは、EPO単独処置後におけるプロファイルと、認識可能には異ならなかった。本出願人らは、脾臓前駆体プロファイルから、実験を、72時間を超えて延長した場合、組み合わせ処置は、網状赤血球レベルの上昇をもたらし、成熟赤血球レベルの持続的な上昇を随伴することを予測する。
【0452】
まとめると、これらの知見は、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップを、EPOと組み合わせて投与して、インビボにおける赤血球の形成を相乗作用的に増大させ得ることを実証する。補完的であるが規定されていない機構を介して作用するGDFトラップは、EPO受容体活性化因子単独の強力な増殖性効果を緩和し、かつ、より低い用量のEPO受容体活性化因子で達成される赤血球の標的レベルをなおも可能とし、これにより、より高いレベルのEPO受容体の活性化と関連する、潜在的な有害作用または他の問題を回避することが可能である。
(実施例22)
βサラセミアのマウスモデルにおける、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップの、RBCのレベルおよび形態に対する効果
【0453】
無効赤血球生成の最も一般的な原因を代表する、サラセミア症候群では、α-グロビン鎖とβ-グロビン鎖との発現の不均衡の結果として、赤芽球の成熟時におけるアポトーシスの増大に起因する貧血がもたらされる。RBCの輸血は、現在のところ、サラセミアにおける鍵となる維持治療であるが、時間経過と共に、ある特定の組織において潜在的に致死性の鉄蓄積を引き起こす(Tannoら、2010年、Adv Hematol、2010巻:358283)。例えば、鉄過剰負荷と関連する心疾患は、重症型サラセミアを有する患者における死亡率の50%を占め得る(Borgna-Pignattiら、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:40~47頁)。重要なことは、内因性EPOレベルが典型的に高まり、サラセミア症候群のほか、無効赤血球生成の他の障害における病因にも寄与し、したがって、組換えEPOの治療的使用が、不適切であり得ることである。したがって、サラセミアおよび無効赤血球生成の他の障害のための代替的な療法であって、慢性輸血に随伴する鉄過剰負荷を伴わずに、RBCレベルを高める療法に対する必要が存在する。
【0454】
本出願人らは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、β-主要グロビンコード遺伝子のコード領域の全体を欠失させた中間型βサラセミアのマウスモデルにおけるRBCの形成に対する効果を調査した。このHbb
th-1対立遺伝子についてホモ接合性であるマウスは、循環RBC内に高比率で封入体を伴う、低色素性で小赤血球性の貧血を呈示する(Skowら、1983年、Cell、1043巻:1043~1052頁)。予備実験では、2~5カ月齢のHbb
-/-βサラセミアマウス(C57BL/6J-Hbb
d3th/J)を無作為に割り当てて、毎週2回の皮下注射により、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc(10mg/kg)またはビヒクル(トリス緩衝生理食塩液)を施した。ビヒクルを投薬する野生型同腹仔を、さらなる対照として用いた。血液試料(100μl)を、CBC解析のために投薬の開始前およびその後の定期的な間隔で頬部採血により回収した。ベースラインにおける血液学的パラメータの特徴付けにより、Hbb
-/-βサラセミアマウスは、重度に貧血性であることを確認し(
図32A~C)、4週間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFcによるHbb
-/-マウスの処置は、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと比較して顕著にRBC数を増大させ、これにより、このモデルにおいて観察される貧血は半分に低減された(
図33)。また、ヘマトクリットおよびヘモグロビン濃度の処置に関連する増大も見られた。重要なことは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによるHbb
-/-マウスの処置がまた、ビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスと比較して、RBC形状の改善、ならびに溶血およびエリスロサイト破砕物の低減も結果としてもたらし(
図34)、したがって、赤血球生成の根本的な改善を指し示すことである。よって、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップポリペプチドは、RBC数を増大させること、およびRBC形状の両方により、βサラセミアのマウスモデルにおける貧血に対する治療的利益をもたらし得る。貧血を軽減しながら、赤芽球の成熟を促進することにより、GDFトラップポリペプチドは、無効赤血球生成を処置し得る。本来的に外因性鉄の供給源である輸血と異なり、GDFトラップポリペプチドは、赤血球生成を介する内因性鉄貯蔵の使用を促進することによりRBCレベルを高めることができ、これにより、鉄過剰負荷およびその負の帰結を回避する。
(実施例23)
βサラセミアのマウスモデルにおける、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップの、EPOレベル、脾腫、骨密度、および鉄過剰負荷に対する効果
【0455】
無効赤血球生成と関連する低酸素症は、骨髄の内部および外部の両方の赤芽球の大規模な拡大を駆動し得るEPOレベルの上昇を引き起こすことから、治療的RBCの輸血の非存在下であってもなお、脾腫(脾臓の腫大)、赤芽球誘導性骨病態、および組織鉄過剰負荷をもたらす。非処置の鉄過剰負荷は、組織鉄沈着、複数の臓器機能不全、および若年死亡をもたらし(Borgna-Pignattiら、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:40~47頁;Borgna-Pignattiら、2011年、Expert Rev Hematol、4巻:353~366頁)、サラセミアの重症の形態における心筋症に起因することが最も多い(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213~218頁)。赤血球生成の有効性を増大させることにより、GDFトラップポリペプチドは、根底にある貧血およびEPOレベルの上昇だけでなく、関連する合併症である、脾腫、骨病態、および鉄過剰負荷も緩和し得る。
【0456】
本出願人らは、実施例21で研究した同じ中間型βサラセミアのマウスモデルにおいて、GDFトラップポリペプチドの、これらのパラメータに対する効果を調査した。3カ月齢のHbb-/-βサラセミアマウス(C57BL/6J-Hbbd3th/J)を無作為に割り当てて、2カ月間にわたる毎週2回の皮下注射により、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc(1mg/kg、n=7)またはビヒクル(トリス緩衝生理食塩液、n=7)を施した。ビヒクル(n=13)を投薬する野生型同腹仔を、さらなる対照として用いた。血液試料(100μl)を、CBC解析のために、研究終了時において回収した。研究終了時には、骨塩密度を、二重エネルギーx線吸収測定(DEXA)により決定し、血清EPOレベルを、ELISAにより決定し、活性酸素種(ROS)を、2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸およびフローサイトメトリーにより定量化し(Suraganiら、2012年、Blood、119巻:5276~5284頁)、ヘプシジンmRNAレベルを、定量的ポリメラーゼ連鎖反応により決定した。
【0457】
このGDFトラップポリペプチドは、無効赤血球生成の緩和と符合する複数の血液学的効果を及ぼした。2カ月間にわたる、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによるHbb
-/-マウスの処置は、RBC数を、ビヒクルを投薬されたHbb
-/-マウスと比較して、25%増大させた(
図35)。Hbb
-/-マウスでは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置はまた、2カ月後において、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットも、ビヒクル対照と比較して、有意に増大させた。これらの変化は、循環網状赤血球のレベルの低減(これは、貧血の緩和と符合する)を伴った(ActRIIB(L79D 25~131)-mFcまたはビヒクルで処置されたHbb
-/-マウスについて、それぞれ、31.3±2.3%対44.8±5.0%)。実施例21における通り、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによるHbb
-/-マウスの処置は、ビヒクルを投薬されたHbb
-/-マウスと比較して、RBC形状の改善と、エリスロサイト破砕物の低減とを結果としてもたらした。健常な個体と比較して、サラセミアを有する患者は、RBC破壊の速度の増大と、ヘム異化の産物であり、溶血のマーカーであるビリルビンの血清レベルの上昇とを呈示する(Orten、1971年、Ann Clin Lab Sci、1巻:113~124頁)。Hbb
-/-マウスでは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、血清ビリルビンレベルを、2カ月後において、ビヒクルと比較して、ほぼ半分に低減した(
図36)。これにより、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcは、RBCの形成を促進するので、成熟RBCの構造的/機能的完全性を予測外に改善し得るという証拠をもたらす。重要なことは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによるHbb
-/-マウスの処置は、2カ月後において、血清EPOレベルを、同じモデルにおけるビヒクルと比較して、60%を超えて低減したことである(
図37)。EPOレベルの上昇は、βサラセミアにおける無効赤血球生成の顕徴であるので、本実施例におけるこのようなレベルの低減は、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcが、サラセミアのこのマウスモデルにおいて、無効赤血球生成が引き起こす貧血だけでなく、それ自体を緩和するという強力な証拠である。
【0458】
このGDFトラップポリペプチドはまた、無効赤血球生成の主要な合併症を表すエンドポイントにおいて有益な変化ももたらした。サラセミア患者では、EPOに刺激される赤芽球系過形成および髄外赤血球生成により、脾腫および骨劣化の両方が引き起こされる。Hbb
-/-マウスでは、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置が、脾臓重量を、ビヒクルと比較して有意に低減し(
図38Aおよび38B)、骨塩密度を野生型の値へと完全に回復させた(
図39)。このGDFトラップポリペプチドによる処置ではまた、鉄ホメオスタシスも顕著に改善された。血清鉄は、非結合(遊離)鉄、および循環中の鉄元素の輸送に特化したタンパク質であるアポトランスフェリンへと結合した鉄(トランスフェリンを形成する)の両方からなる。血清鉄が、全身鉄の比較的少量で不安定な成分を構成するのに対し、主に細胞内に見出される鉄貯蔵の別の形態であるフェリチンの血清レベルは、より大量でそれほど不安定でない成分を表す。鉄負荷の第3の測定値は、トランスフェリンの鉄結合能が占有される程度である、トランスフェリンの飽和度である。Hbb
-/-マウスでは、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置は、これらの鉄過剰負荷の指標の各々を、ビヒクルと比較して有意に低減した(
図40A~C)。これらの多様な鉄ホメオスタシスのパラメータに対するその効果に加えて、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcは、脾臓、肝臓、および腎臓における組織化学的解析により決定される通り、Hbb
-/-マウスにおける組織鉄過剰負荷も正常化させた(
図41)。さらに、このGDFトラップポリペプチドは、鉄ホメオスタシスの主要な調節因子であると考えられ、そのレベルは食餌による鉄の取込みと反比例して変化する肝臓タンパク質である、ヘプシジンの発現に対して有益な効果を及ぼした(Gantz、2011年、Blood、117巻:4425~4433頁)。ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、Hbb
-/-マウスの肝臓におけるヘプシジンの異常に低い発現を逆転させた(
図42)。最後に、同様のデザインを有する別の研究を実施して、鉄過剰負荷の毒性効果の多くを媒介すると考えられる活性酸素種(ROS)に対する、このGDFトラップの効果を決定した(Rundら、2005年、N Engl J Med、353巻:1135~1146頁)。3カ月齢のHbb
-/-マウスでは、1mg/kgでの毎週2回、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる処置は、ROSレベルをほぼ正常化させた(
図43)ので、サラセミアおよび無効赤血球生成によって特徴付けられる他の疾患において、ROSにより媒介される組織損傷を大幅に低減すると予測される。
【0459】
まとめると、上記の知見は、GDFトラップポリペプチドが、貧血およびEPOレベルの上昇のほか、脾腫、赤芽球誘導性骨病態、および鉄過剰負荷、ならびにそれらの付随する病態などの合併症を含む、無効赤血球生成を処置し得ることを実証する。脾腫では、このような病態として、胸痛または腹痛および網内系過形成が挙げられる。髄外造血は、脾臓だけでなく、潜在的には他の組織においても、髄外造血性偽腫瘍の形態で生じ得る(Musallamら、2012年、Cold Spring Harb Perspect
Med、2巻:a013482)。赤芽球誘導性骨病態では、付随する病態として、低骨塩密度、骨粗鬆症、および骨疼痛が挙げられる(Haidarら、2011年、Bone、48巻:425~432頁)。鉄過剰負荷では、付随する病態として、ヘプシジン抑制および食餌による鉄の過剰吸収(Musallamら、2012年、Blood Rev、26巻(補遺1号):S16~S19頁)、複数の内分泌障害および肝線維症/肝硬変(Galanelloら、2010年、Orphanet J Rare Dis、5巻:11頁)、ならびに鉄過剰負荷性心筋症(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213~218頁)が挙げられる。無効赤血球生成のための既存の療法とは対照的に、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcなどのGDFトラップポリペプチドは、RBCレベルを同時に高めながら、マウスモデルにおける鉄過剰負荷を低減することが可能である。この新規の能力は、GDFトラップポリペプチドを、貧血処置の経過にわたり身体に外因性鉄の負荷をかけ、しかも、無効赤血球生成の根底にある状態を緩和することなく外因性鉄の負荷をかけることが本来的である、輸血から区別する。
(実施例24)
GDFトラップは、サラセミア患者においてヘモグロビンレベルを高め、皮膚潰瘍を実質的に消失させる
【0460】
ActRIIB(L79D 25~131)-hFcの複数回の投薬により、サラセミア患者(中間型βサラセミア患者および重症型βサラセミア患者)を処置する臨床研究をデザインした。研究は、非輸血依存性患者(<4単位/8週間、ヘモグロビン<10g/dL)および輸血(血液)依存性患者(≧4単位/8週間、6カ月間にわたり確認)の両方を含んだ。患者を、4つの処置群:i)3週間ごとに皮下注射によって0.2mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcを投与;ii)3週間ごとに皮下注射によって0.4mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcを投与;iii)3週間ごとに皮下注射によって0.6mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcを投与;およびiv)3週間ごとに皮下注射によって0.8mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcを投与、のうちの1つへと分けた。3カ月間の処置の経過にわたり、患者は、ヘモグロビンレベルが用量依存的に顕著に増大していることが観察された。さらに、ActRIIB(L79D 25~131)-hFc処置は、輸血依存性の低下に効果的であった、すなわち、全ての輸血依存性患者は、研究の経過中に、輸血の負荷が、>50%低減された。
【0461】
ベースラインのヘモグロビンレベルがおよそ9.2g/dLである1名の患者に、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcの4回にわたる投薬を、0.4mg/kgのレベルで施した結果として、処置の3カ月後において、およそ10.6g/dLのヘモグロビンレベルがもたらされた。患者のサラセミアは、中間型βサラセミアであり、患者は、非輸血依存性であった。この研究以前のおよそ3年間にわたり、この患者は、下肢において、再発性皮膚潰瘍に罹患していた。このような潰瘍は、サラセミアの一般的な皮膚合併症である。例えば、Rassiら(2008年)、Pediatric Annals、37巻(5号)、322~328頁を参照されたい。ActRIIB(L79D 25~131)-hFc処置の前に、この患者は、脚部潰瘍を有すると診断された。潰瘍の治癒は、1回目のActRIIB(L79D 25~131)-hFcの用量の投与の2週間後に観察された。ActRIIB(L79D 25~131)-hFc処置の6週間後において、脚部潰瘍は、実質的に消失したと決定された。脚部潰瘍を伴う、第2の非輸血依存性患者についての研究も開始した。脚部潰瘍は、1.25mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcでの複数回にわたる投薬による処置の後に、実質的に消失した。加えて、左足首に潰瘍を有する輸血依存性患者についての研究も開始した。1.0mg/kgのActRIIB(L79D 25~131)-hFcでの5回にわたる投薬の後、潰瘍は、実質的に消失し、研究期間にわたり、これが維持された。したがって、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcを使用して、非輸血依存性および輸血依存性サラセミア患者において顕在化している潰瘍を効果的に処置することができる。
【0462】
したがって、これらのデータは、ActRIIB(L79D 25~131)-hFc処置は、ヘモグロビンレベルを高めるのに効果的であり、ヒトサラセミア患者における輸血依存性を低減するのに使用され得ることを実証する。疾患の貧血の側面に対する正の効果に加えて、脚部潰瘍の治癒における顕著な改善は、ActRIIB(L79D 25~131)-hFcを使用して、サラセミアの貧血以外の他の合併症を効果的に処置し得ることを指し示し、これは、上で記載したβサラセミアについてのマウスモデルからのデータと符合する。
【0463】
(実施例25)
GDFトラップは、鎌状赤血球症モデルにおいて赤血球レベルを高め、赤血球形状を改善する
本出願人らは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcの、鎌状赤血球症(SCD)のマウスモデルであって、マウスヘモグロビン遺伝子(α/αおよびβ/β)を、ヒト鎌状赤血球ヘモグロビン遺伝子(α/α、γ/γ、およびβS/βS)により置きかえたマウスモデルにおける赤血球(RBC)形成に対する効果について探索した。ヒトβS対立遺伝子についてホモ接合性のマウスは、SCDを有するヒトにおいて見出される主要な特徴(例えば、重度の溶血性貧血、不可逆的に鎌状赤血球化した赤血球、脈管(血管)閉塞、および多臓器病態)を呈示する。例えば、Wuら、(2006年)、Blood、108巻(4号):1183~1188頁;Ryanら(1997年)、Science、278巻:873~876頁を参照されたい。
【0464】
3カ月齢のSCDマウス(βS/βS)を、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc(1mg/kg)またはビヒクル[トリス緩衝生理食塩液(TBS)]を、皮下注射により、毎週2回施されるように、無作為に割り当てた。ビヒクルを投薬される非症候性複合ヘテロ接合体(β/βS)同腹仔を、追加の対照(Wt動物)として用いた。ベースラインにおいて、SCDマウスは、複合ヘテロ接合体マウスと比較して、RBCレベル(-28%、P<0.01)およびヘモグロビンレベル(-14.5%、P<0.05)が低減され、網状赤血球レベル(+50%、P<0.001)が上昇したことから、SCDマウスは、重度に貧血性であることが実証された。
【0465】
1カ月の処置後において、対象を、種々の赤血球パラメータの変化について評価した。SCDマウスの、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる、4週間にわたる処置は、RBCレベルを、ビヒクルで処置されたSCDマウスと比較して、顕著に上昇させ(+15.2%、p<0.01)、これにより、このモデルにおいて観察される貧血を低減した(
図44および45)。ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置に関連するヘマトクリット濃度およびヘモグロビン濃度の増大もまた観察された(
図45)ほか、平均赤血球容量、RBC分布幅、網状赤血球数、および活性酸素種も有意に減少した(
図46)ことは全て、赤血球半減期の改善と符合する。驚くべきことに、SCDマウスの、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる、6週間にわたる処置は、スクランブラーゼ酵素アッセイおよびアネキシンVアッセイにより決定される通り、末梢血細胞におけるホスファチジルセリン(PS)曝露の実質的な減少(-14%、P=0.08)を結果としてもたらしたことから、ビヒクルで処置された対象と比較して、膜リン脂質の非対称性の改善への傾向が指し示される。
【0466】
3カ月の処置後において、対象は、追加の血液化学パラメータが改善されていることが観察された。特に、SCDマウスの、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcによる、12週間にわたる処置は、ビヒクルで処置されたSCDマウスと比較して、(総)ビリルビンレベル(-17.0%、p<0.05)、血中尿素窒素レベル(-19.2%、p<0.05)、および無細胞ヘモグロビン(-30.7%、p=0.06)を有意に低下させた。これらのデータは、GDFトラップで処置された対象が、ビヒクルで処置された対象と比較して、赤血球溶血のレベルを低下させたことを指し示し、これは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc療法を開始した1カ月後において早くも観察された、赤血球レベルの観察された上昇と符合する。アネキシンVアッセイは、3カ月の治療後において、末梢血細胞におけるホスファチジルセリン(PS)曝露が、ビヒクルで処置された対象と比較して、有意に減少する(-13.4%、p=0.06)ことを実証した。さらに、3カ月の処置後において実施された血液スメアは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置マウスでは、ビヒクル単独で処置されたマウスと比較して、不可逆的に鎌状赤血球形成した赤血球が少ない(-66.5%、p<0.0001;群当たりの細胞およそ2000個から数え上げられた)ことを示した。これらのデータは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFc処置後における、赤血球形状の定性的改善を指し示し、これは、1カ月および3カ月のActRIIB(L79D
25~131)-mFc処置後において得られた、スクランブラーゼ酵素アッセイおよびアネキシンVアッセイによるデータと符合する。さらに、SCDマウスの、GDFトラップによる、3カ月間にわたる処置はまた、脾臓重量の、ビヒクルで処置されたSCDマウスと比較して有意な減少(-20.5%、p<0.05)も結果としてもたらした。これらのデータは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcが、例えば、脾臓血球貯留クリーゼおよび/または脾腫を結果としてもたらし得る、赤血球の脾臓血球貯留を含む、SCDと関連する他の合併症の処置においても有用であり得ることを指し示す。
【0467】
まとめると、これらのデータは、短縮型ActRIIB細胞外ドメインを含むGDFトラップが、SCDのマウスモデルにおいて、種々の治療的利益をもたらし得ることを指し示す。RBCレベルを高め、種々の血液パラメータを改善することに加えて、データは、RBC形状の改善も実証する。この、観察されたRBC形状の改善は、GDFトラップ処置を使用して、貧血に加えて、SCDの種々の他の合併症(例えば、血管閉塞から生じる合併症)も処置または予防し得ることを指し示す。これは、ActRIIB(L79D 25~131)-mFcで処置された対象において観察された脾臓サイズの減少によりさらに裏付けられる。
【0468】
したがって、本明細書で提示されるデータは、GDFトラップポリペプチドを使用して、貧血のほか、鎌状赤血球症の種々の合併症も処置し得ることを示唆する。本来の外因性鉄の供給源である赤血球輸血と異なり、GDFトラップポリペプチドは、赤血球生成を介して、内因性鉄貯蔵の使用を促進することにより、RBCレベルを高めることが可能であり、したがって、鉄過剰負荷およびその負の帰結を回避し得る。
【0469】
サラセミア患者において観察されたように、皮膚潰瘍は、鎌状赤血球症の最も一般的な皮膚合併症の1つである。例えば、Keastら(2004年)、Ostomy Wound Manage.、50巻(10号)、64~70頁;Trentら(2004年)、Adv Skin Wound Care、17巻(8号)、410~416頁;およびJ.R. Eckman(1996年)、Hematol Oncol Clin North Am.、10巻(6号)、1333~1344頁を参照されたい。貧血患者における潰瘍形成の根底にある機構については、完全には規定されていない。しかし、例えば、虚血症、酸化窒素のバイオアベイラビリティーの低下、血管閉塞(特に、鎌状赤血球貧血およびサラセミアの場合)、血栓症、循環網状赤血球レベルの上昇、および低酸素症を含む、貧血の複数の合併症は、潰瘍の発症に寄与すると考えられている(同上)。上記で論じた通り、本開示は、ActRIIB(L79D 25~131)-Fc処置が、鎌状赤血球症と関連するこれらの状態の多くを緩和することを実証する。したがって、本明細書で開示されるデータは、上で記載したサラセミア患者において観察されたように、ActRIIアンタゴニストを、鎌状赤血球症を有する患者における潰瘍の処置および予防に使用し得ることを示唆する。
【0470】
(参考としての援用)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0471】
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。
【配列表】