(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20221007BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20221007BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10 100
A61B3/14
(21)【出願番号】P 2020135522
(22)【出願日】2020-08-11
(62)【分割の表示】P 2016176007の分割
【原出願日】2016-09-09
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 正博
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-262475(JP,A)
【文献】特開2003-126037(JP,A)
【文献】特表2016-516541(JP,A)
【文献】特開平04-341233(JP,A)
【文献】特開2014-147843(JP,A)
【文献】特開2009-291516(JP,A)
【文献】特開2000-107128(JP,A)
【文献】特開2012-196439(JP,A)
【文献】特開2012-187228(JP,A)
【文献】国際公開第2016/018487(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼のデータを取得するための光学系を含むデータ取得部と、
前記被検眼に対する前記光学系のアライメントを行うためのアライメント部と、
前記被検眼に固視標を提示する固視系と、
前記固視標の移動パターンを設定する設定部と、
前記移動パターンに基づく初期位置に前記固視標を配置するための前記固視系の制御を実行した後に、前記アライメントを行うための前記アライメント部の制御を実行し、前記アライメント部の前記制御の後に、前記データを取得するための前記データ取得部の制御と、前記移動パターンにしたがって前記光学系の光軸に直交する方向に前記固視標を移動するための前記固視系の制御とを並行して実行する制御部と
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記被検眼に対する前記光学系のフォーカス調整を行うためのフォーカス調整部を更に含み、
前記制御部は、前記固視標を前記初期位置に配置するための前記固視標の前記制御を実行した後に、前記アライメントを行うための前記アライメント部の前記制御と、前記フォーカス調整を行うための前記フォーカス調整部の制御とを実行し、前記アライメント部の前記制御及び前記フォーカス調整部の前記制御の後に、前記データを取得するための前記データ取得部の制御と、前記移動パターンにしたがって前記光学系の前記光軸に直交する方向に前記固視標を移動するための前記固視系の制御とを並行して実行する
ことを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記被検眼の動きのパターンを予測して前記移動パターンを設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記固視系は、
前記光学系の前記光軸に直交するように配置された、固視標を表示する表示装置を含み、
前記固視標を前記初期位置に配置するための前記固視系の前記制御において、前記制御部は、前記移動パターンに基づく初期画素位置に前記固視標を表示するように前記表示装置の制御を行
い、
前記移動パターンにしたがって前記光学系の前記光軸に直交する方向に前記固視標を移動するための前記固視系の前記制御において、前記制御部は、前記固視標の表示位置を変更するように前記表示装置の制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置には、被検眼の画像を得るための眼科撮影装置と、被検眼の特性を測定するための眼科測定装置とが含まれる。
【0003】
眼科撮影装置の例として、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を利用して断層像を得る光干渉断層計や、眼底を写真撮影する眼底カメラや、共焦点光学系を用いたレーザ走査により眼底の画像を得る走査型レーザ検眼鏡(SLO)などがある。
【0004】
眼科測定装置の例として、被検眼の屈折特性を測定する眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)や、眼圧計や、角膜の特性(角膜厚、細胞分布等)を得るスペキュラーマイクロスコープや、ハルトマン-シャックセンサを用いて被検眼の収差情報を得るウェーブフロントアナライザなどがある。
【0005】
多くの眼科装置には、被検眼(又は僚眼)に固視標を提示するための構成が設けられている。固視標には、被検眼の所望の部位のデータを取得するために視線を誘導する機能と、データの取得中に被検眼を固定する機能とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の眼科装置では、静止した固視標を被検者に凝視させながら撮影等が行われる。一方、撮影等には数秒程度又はそれ以上の時間が掛かるものがあり、撮影等が行われている間ずっと固視標を凝視することが被検者に求められる。しかし、静止した固視標を凝視し続けることは不自然であり、疲労やストレスを被検者に与えるおそれがある。この問題は、子供や高齢者や低視力者にとって特に顕著と考えられる。
【0008】
本発明の目的は、自然な状態の被検眼の撮影や測定が可能な眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の眼科装置は、データ取得部と、アライメント部と、固視系と、設定部と、制御部とを備える。データ取得部は、被検眼のデータを取得するための光学系を含む。アライメント部は、被検眼に対する光学系のアライメントのために用いられる。固視系は、被検眼に固視標を提示する。設定部は、固視標の移動パターンを設定する。制御部は、移動パターンに基づく初期位置に固視標を配置するための固視系の制御を実行した後に、アライメントを行うためのアライメント部の制御を実行し、アライメント部の制御の後に、被検眼のデータを取得するためのデータ取得部の制御と、移動パターンにしたがってデータ取得部の光学系の光軸に直交する方向に固視標を移動するための固視系の制御とを並行して実行する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態に係る眼科装置によれば、自然な状態の被検眼の撮影や測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の構成の例を表す概略図。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の構成の例を表す概略図。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の構成の例を表す概略図。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の動作の例を表すフローチャート。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の動作の例を表すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の動作の例を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。一の実施形態に係る眼科装置は、被検眼のデータを取得するための要素として光干渉断層計(OCT)と眼底カメラとを備える。ここで、眼底カメラの代わりに、又はそれに加えて、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡、前眼部撮影カメラ等が設けられてもよい。以下の例ではスウェプトソースOCTが適用されるが、他のタイプのOCT(スペクトラルドメインOCT、タイムドメインOCT、アンファスOCT、偏光OCT等)を適用してもよい。
【0013】
〈構成〉
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼の正面画像を取得するための光学系や機構が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構の一部が設けられている。OCTを実行するための光学系や機構の他の一部は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行する1以上のプロセッサを含む。これらに加え、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)や、OCTの対象部位を切り替えるためのレンズユニット(例えば、前眼部OCT用アタッチメント)等の任意の要素やユニットが眼科装置1に設けられてもよい。
【0014】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0015】
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。取得される眼底Efの画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、フラッシュ光を用いた静止画像である。
【0016】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0017】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(眼底Ef又は前眼部)を照明する。被検眼Eからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のフォーカスは、眼底Ef又は前眼部に合致するように調整される。
【0018】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0019】
LCD(Liquid Crystal Display)39は固視標や視力測定用視標を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
【0020】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。固視位置の例として、黄斑部を中心とする画像を取得するための固視位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑から大きく離れた部位(眼底周辺部)の画像を取得するための固視位置などがある。このような典型的な固視位置の少なくとも1つを指定するためのGUI(Graphical User Interface)等を設けることができる。また、固視位置(固視標の表示位置)をマニュアルで移動するためのGUI等を設けることができる。
【0021】
移動可能な固視標を被検眼Eに提示するための構成はLCD等の表示装置には限定されない。例えば、光源アレイ(発光ダイオード(LED)アレイ等)における複数の光源を選択的に点灯させることにより、移動可能な固視標を生成することができる。また、移動可能な1以上の光源により、移動可能な固視標を生成することができる。
【0022】
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。LED51から出力されたアライメント光は、絞り52及び53並びにリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eに投射される。アライメント光の角膜反射光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
【0023】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。フォーカス光学系60は、撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱可能である。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
【0024】
視度補正レンズ70及び71は、孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に選択的に挿入可能である。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
【0025】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用光路とOCT用光路とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0026】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用光路の長さを変更する。この光路長の変更は、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、コーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
【0027】
光スキャナ42は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、OCT用光路を通過する測定光LSを偏向する。光スキャナ42は、例えば、2次元走査が可能なガルバノスキャナである。
【0028】
OCT合焦レンズ43は、OCT用の光学系のフォーカス調整を行うために、測定光LSの光路に沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御することができる。
【0029】
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系を含む。干渉光学系により得られる検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0030】
光源ユニット101は、例えば、出射光の波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0031】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
【0032】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
【0033】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0034】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0035】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
【0036】
DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を演算制御ユニット200に送る。
【0037】
本例では、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更するための光路長変更部41と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114の双方が設けられているが、光路長変更部41とコーナーキューブ114のいずれか一方のみが設けられもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0038】
〈制御系〉
眼科装置1の制御系の構成例を
図3に示す。制御部210、画像形成部220及びデータ処理部230は、演算制御ユニット200に設けられる。
【0039】
〈制御部210〉
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。
【0040】
〈主制御部211〉
主制御部211は、プロセッサを含み、眼科装置1の各部(
図1~
図3に示された要素を含む)を制御する。なお、図示しない撮影合焦駆動部によって撮影合焦レンズ31が移動され、OCT合焦駆動部によってOCT合焦レンズが移動される。また、参照駆動部114Aはコーナーキューブ114を移動する。
【0041】
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底カメラユニット2を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、x方向(左右方向)に移動可能なxステージと、xステージを移動するx移動機構と、y方向(上下方向)に移動可能なyステージと、yステージを移動するy移動機構と、z方向(奥行き方向)に移動可能なzステージと、zステージを移動するz移動機構とを含む。各移動機構は、パルスモータ等のアクチュエータを含み、主制御部211により制御される。
【0042】
主制御部211は、LCD39を制御する。例えば、主制御部211は、LCD39の画面における予め設定された位置に固視標を表示する。また、主制御部211は、LCD39に表示されている固視標の表示位置を徐々に変更することができる(つまり、固視標を移動することができる)。固視標の表示位置や移動態様は、マニュアルで又は自動的に設定される。マニュアル設定は、例えばGUIを用いて行われる。自動設定は、例えば、後述の移動パターン設定部231により行われる。
【0043】
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像や眼底像や被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
【0044】
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、DAQ130からの出力(検出信号のサンプリング結果)に基づき画像を形成する。例えば、画像形成部220は、従来のスウェプトソースOCTと同様に、Aライン毎のサンプリング結果に基づくスペクトル分布に信号処理を施してAライン毎の反射強度プロファイルを形成し、これらAラインプロファイルを画像化してスキャンラインに沿って配列する。上記信号処理には、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などが含まれる。
【0045】
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して画像処理や解析処理を施す。例えば、データ処理部230は、ラスタースキャンデータに基づく3次元画像データ(スタックデータ、ボリュームデータ等)の作成、3次元画像データのレンダリング、画像補正、解析アプリケーションに基づく画像解析などを実行する。データ処理部230は、移動パターン設定部231と動き検知部232とを含む。
【0046】
〈移動パターン設定部231〉
移動パターン設定部231は、固視標の移動パターンを設定する。移動パターンは、固視標が移動される経路、それと同等の情報、それを導出する情報、それに対応する情報、それに関連する情報等のいずれかを表す。
【0047】
典型的な例として、移動パターンは、固視標の移動経路の形状、形状の向き、サイズ、移動方向、移動速度等を含む。形状の例として、円形、矩形、渦巻形、直線形、ランダム形状等がある。形状の向きは、形状が非対称性を有する場合に設定されてよい。移動方向としては、例えば:円形や矩形や渦巻形等の場合には、時計回り、反時計回り、これらの組み合わせなどを設定可能であり;渦巻形の場合には、中心から遠ざかる方向、中心に近づく方向、これらの組み合わせなどを設定可能であり;直線形の場合には、第1端から第2端に向かう方向、第2端から第1端に向かう方向、これらの組み合わせ(例えば、第1端と第2端の間の往復)などを設定可能である。移動速度は、例えば、低速、中速、高速等の選択肢のうちから選択可能である。また、所望の移動速度を設定可能でもよいし、移動速度を調整可能でもよい。
【0048】
ユーザインターフェイス240(GUI等)を用いて移動パターン(例えば、形状、形状の向き、サイズ、移動方向、移動速度等のうちの1以上)が指定された場合、移動パターン設定部231は、ユーザが指定した内容に対応する移動パターンを設定する。
【0049】
電子カルテ等の医療情報を参照して移動パターンを設定することが可能である。例えば、撮影等において実際に適用された移動パターンが電子カルテ等に記録される場合、移動パターン設定部231は、当該被検者の電子カルテから過去に適用された移動パターンを読み出し、この移動パターンを今回の撮影用の移動パターンとして設定することができる。他の例として、所定の情報(例えば疾患名)と移動パターンとが対応付けられた対応情報が予め作成された場合、移動パターン設定部231は、当該被検者の電子カルテから診断名(疾患名)を読み出し、この診断名に対応する移動パターンを対応情報から取得することができる。
【0050】
撮影に適用される移動パターンを決定するための予備的撮影を行うことができる。例えば、主制御部211は、1又は2以上の移動パターンにしたがって固視標を移動するようにLCD39を制御しつつ、眼底EfのOCTを眼科装置1に実行させる。2以上の移動パターンが適用される場合、これら移動パターンを順次に適用しつつ眼底EfのOCTが実行される。
【0051】
移動パターン設定部231は、このような予備的OCTにより収集されたデータ又はそれに基づく画像を評価する。典型的な例において、移動パターン設定部231は、ノイズの評価、画質の評価、コントラストの評価、鮮鋭度の評価、粒状度の評価などのうちの1以上を行うことができる。
【0052】
移動パターン設定部231は、この評価の結果が許容範囲に含まれるか否か判定する。例えば、移動パターン設定部231は、評価処理により算出された値(評価値)が既定の閾値を超えるか否か判定する。評価結果が許容範囲に含まれる場合、移動パターン設定部231は、予備的OCTにおいて適用された移動パターン(データ収集時に適用された移動パターン)を、本撮影のための移動パターンとして設定する。評価結果が許容範囲に含まれない場合(1以上の移動パターンのいずれも適当でない場合)、例えば、移動パターンを手動で設定するためのモードに移行する。
【0053】
以上のような移動パターン設定モード(手動設定モード、医療情報参照モード、予備的撮影モード等)のいずれか2以上を組み合わせたり、いずれか2以上を順次に実行したりすることが可能である。
【0054】
その一例を説明する。まず、移動パターン設定部231は、医療情報参照モードの実行の可否を判定する。例えば、移動パターン設定部231は、所定の情報(過去に適用された移動パターン等)が電子カルテ等に記録されているか否か判断する。
【0055】
所定の情報が電子カルテ等に記録されている場合、医療情報参照モードにより移動パターンが設定される。なお、この移動パターンが適当であるか否か確認するために、この移動パターンを用いた予備的撮影モードを実行することができる。
【0056】
所定の情報が電子カルテ等に記録されていない場合、予備的撮影モードに移行する。予備的撮影モードによって適当な移動パターンが決定された場合、この移動パターンが採用される。予備的撮影モードによって適当な移動パターンが決定されない場合、手動設定モードに移行する。
【0057】
なお、移動パターン設定モード(手動設定モード、医療情報参照モード、予備的撮影モード等)の組み合わせや順序は、上記の例に限定されない。
【0058】
〈動き検知部232〉
動き検知部232は、被検眼Eの動きを検知する。被検眼Eの動きを検知する手法は任意である。
【0059】
例えば、動き検知部232は、被検眼Eの動画像を解析することによって被検眼Eの動き(位置の経時的変化)を求めることができる。この動画像の例として、前眼部又は眼底Efの観察画像がある。動き検知部232は、動画像の各フレーム中の所定領域(瞳孔領域、瞳孔中心、虹彩領域、虹彩中心、黄斑領域、視神経乳頭領域、病変領域、レーザ治療斑など)を特定し、複数のフレームにおける所定領域の位置を比較することによって、被検眼Eの動きを検知することができる。この処理は、従来のオートアライメントやトラッキングにおいても利用されている。
【0060】
他の例では、被検眼Eの角膜又は眼底Efに光束を投射する投射光学系と、その反射光束をエリアセンサ等で検出する検出光学系とが設けられる。動き検知部232は、検出光学系による反射光束の検出位置の経時的変化によって、被検眼Eの動きを検知することができる。なお、被検眼Eの動きを検知する手法はこれらに限定されない。
【0061】
〈ユーザインターフェイス240〉
ユーザインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置に接続された外部装置であってよい。
【0062】
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。
【0063】
〈第1の動作例〉
第1の動作例を
図4に示す。この動作例には、OCTスキャンと固視標の移動との並行的な制御が含まれる。
【0064】
(S1:固視標の移動パターンの設定)
まず、移動パターン設定部231によって固視標の移動パターンが設定される。この処理は、前述した要領で実行される。
【0065】
(S2:固視標の提示の開始)
主制御部211は、LCD39を制御することにより、固視標の提示を開始する。例えば、主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに基づく初期位置(LCD39の画素位置)に固視標を表示する。或いは、主制御部211は、ステップS3のアライメント等のために予め設定された位置に固視標を表示する。
【0066】
(S3:アライメント・フォーカス調整)
主制御部211は、アライメント光学系50を制御してアライメント指標(2つのアライメント輝点)を被検眼Eに投影させる。従来と同様に、オートアライメント又はマニュアルアライメントが実行される。更に、主制御部211は、フォーカス光学系60を制御してスプリット指標を眼底Efに投影させる。従来と同様に、オートフォーカシング又はマニュアルフォーカシングが実行される。
【0067】
更に、撮影条件の最適化として、測定光路の光路長調整、測定光LSの偏光状態の調整、測定光LSの光量調整、測定光路のフォーカス調整などを実行することができる。最適化の完了後、検者(又は眼科装置1)は、フレア混入等の問題が観察画像に発生していないか確認することができる。
【0068】
(S4:撮影開始)
検者又は主制御部211は、撮影(OCT、眼底撮影等)開始の指示を行う。検者は、例えば、ユーザインターフェイス240を用いて撮影開始の指示のための操作を行うことができる。また、主制御部211は、例えば、アライメント及びフォーカス調整の完了を受けて、撮影条件の最適化の完了を受けて、又は、フレア混入等の問題が無いこと若しくは問題が解消されたことを受けて、撮影開始の指示を生成することができる。
【0069】
撮影開始の指示がなされると、主制御部211は、ステップS5Aの制御とステップS5Bの制御とを任意のタイミングで実行する。例えば、主制御部211は、ステップS5A及びステップS5Bを同時に開始することができる。或いは、主制御部211は、ステップS5A及びステップS5Bの一方を開始した後、所定のタイミングで他方を開始することができる。
【0070】
(S5A:固視標の移動の開始)
主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに応じた固視標の移動を開始する。
【0071】
(S5B:OCTスキャンの開始)
主制御部211は、OCTユニット100、光スキャナ42等を制御することにより、OCTを用いた眼底Efのスキャンを開始する。このスキャンは、例えば、ラスタースキャン(3次元スキャン)、OCT血管造影(OCTアンギオグラフィ)、OCT血流計測のような、比較的長い時間を要するスキャンであってよい。
【0072】
(S6A:固視標の移動の完了)
主制御部211は、所定のタイミングで固視標の移動を完了する。所定のタイミングは、例えば、検者の指示、OCTスキャンの完了などに基づく。
【0073】
(S6B:OCTスキャンの完了)
主制御部211は、所定のタイミングでOCTスキャンを完了する。所定のタイミングは、例えば、検者の指示、固視標の移動の完了などに基づく。
【0074】
主制御部211は、固視標の移動とOCTスキャンとを同時に終了することができる。或いは、主制御部211は固視標の移動及びOCTスキャンの一方を終了した後、所定のタイミングで他方を終了することができる。
【0075】
このような制御により、固視標の移動とOCTスキャンとが並行して実行される。ここで、2(又は3以上)の制御を並行して実行するとは、一の制御が実行される期間の少なくとも一部と、他の制御が実行される期間の少なくとも一部とを重複させることを意味する。本例では、固視標の移動が実行される期間の少なくとも一部と、OCTスキャンが実行される期間の少なくとも一部とが重複するように、主制御部211が双方の制御を実行する。
【0076】
(S7:OCT画像の形成)
画像形成部220は、固視標の移動及びOCTスキャンの並行的な制御によって収集されたデータに基づいて、眼底Efの画像を形成する。また、データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像を処理することができる。
【0077】
ステップS7で形成される画像は、例えば、眼底Efの3次元領域を表すボリュームデータ、そのレンダリング画像、眼底Efの血管造影画像(アンギオグラム)、眼底Efの血流画像などであってよい。
【0078】
〈第2の動作例〉
第2の動作例を
図5に示す。この動作例には、OCTスキャンと、固視標の移動と、移動機構150を用いたトラッキングとの並行的な制御が含まれる。
【0079】
(S1~S4)
ステップS1~ステップS4は、例えば第1の動作例と同様に実行される。
【0080】
ステップS4における撮影開始の指示がなされると、主制御部211は、OCTスキャンの制御と、固視標の移動制御と、移動機構150を用いたトラッキングの制御とを任意のタイミングで実行する。例えば、主制御部211は、これら3つの制御のうちの2つ又は3つを同時に開始することができる。或いは、主制御部211は、これら3つの制御のうちの第1の制御を開始し、その後の所定のタイミングで第2の制御を開始し、その後の所定のタイミングで第3の制御を開始することができる。なお、
図5では、OCTスキャンの制御と固視標の移動制御とをまとめてステップS15Aとし、トラッキングの制御をステップS15Bとしている。
【0081】
(S15A:固視標の移動・OCTスキャンの開始)
主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに応じた固視標の移動を所定のタイミングで開始し、且つ、所定のタイミングでOCTスキャンを開始する。固視標の移動の開始は第1の動作例のステップS5Aと同様であり、OCTスキャンの開始はステップS5Bと同様である。
【0082】
(S15B:移動機構によるトラッキングの開始)
主制御部211は、移動機構150によるトラッキングを所定のタイミングで開始する。本例に係るトラッキングの第1の処理例は、例えば、被検眼Eの動画像の取得と、動き検知部232による被検眼Eの動きの検知と、検知された動きに応じた移動機構150の制御とを含む。主制御部211は、眼底カメラユニット2に赤外観察画像を取得させつつ、動き検知部232が実質的にリアルタイムで検知した被検眼Eの動きに眼底カメラユニット2を追従させるように(換言すると、被検眼Eの変位をキャンセルするように)移動機構150の制御を行う。第1の処理例によれば、被検眼Eの動きに対して実質的にリアルタイムで光学系を追従させることができる。
【0083】
本例に係るトラッキングの第2の処理例は、例えば、ステップS1で設定された移動パターンに基づく移動機構150の制御を含む。主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに応じた被検眼Eの視線方向の移動に眼底カメラユニット2を追従させるように移動機構150の制御を行う。第2の処理例は、移動する固視標を被検眼Eが追うことを前提としている。
【0084】
第1の処理例と第2の処理例とを組み合わせてもよい。例えば、第2の処理例を実行しつつ、適正な視線方向と被検眼Eの実際の向き(位置)との変位を求め、この変位が既定閾値を超えたときに第1の処理例を実行することができる。
【0085】
(S16A:固視標の移動・OCTスキャンの完了)
主制御部211は、第1の動作例のステップS6Aと同様に、所定のタイミングで固視標の移動を完了する。また、主制御部211は、第1の動作例のステップS6Bと同様に、所定のタイミングでOCTスキャンを完了する。
【0086】
(S16B:移動機構によるトラッキングの完了)
主制御部211は、移動機構150によるトラッキングを所定のタイミングで完了する。所定のタイミングは、例えば、検者の指示、固視標の移動の完了、OCTスキャンの完了などに基づく。
【0087】
このような制御により、固視標の移動とOCTスキャンと移動機構150によるトラッキングとが並行して実行される。本例では、固視標の移動が実行される期間の少なくとも一部と、OCTスキャンが実行される期間の少なくとも一部と、移動機構150によるトラッキングが実行される期間の少なくとも一部とが重複するように、主制御部211が3つの制御を実行する。
【0088】
(S7:OCT画像の形成)
画像形成部220は、固視標の移動とOCTスキャンとトラッキングとの並行的な制御によって収集されたデータに基づいて、眼底Efの画像を形成する。この処理は、第1の動作例のステップS7と同様にして実行される。
【0089】
〈第3の動作例〉
第3の動作例を
図6に示す。この動作例には、OCTスキャンと、固視標の移動と、光スキャナ42を用いたトラッキングとの並行的な制御が含まれる。
【0090】
(S1~S4)
ステップS1~ステップS4は、例えば第1の動作例と同様に実行される。
【0091】
ステップS4における撮影開始の指示がなされると、主制御部211は、OCTスキャンの制御と、固視標の移動制御と、光スキャナ42を用いたトラッキングの制御とを任意のタイミングで実行する。例えば、主制御部211は、これら3つの制御のうちの2つ又は3つを同時に開始することができる。或いは、主制御部211は、これら3つの制御のうちの第1の制御を開始し、その後の所定のタイミングで第2の制御を開始し、その後の所定のタイミングで第3の制御を開始することができる。なお、
図6では、OCTスキャンの制御と固視標の移動制御とをまとめてステップS25Aとし、トラッキングの制御をステップS25Bとしている。
【0092】
(S25A:固視標の移動・OCTスキャンの開始)
主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに応じた固視標の移動を所定のタイミングで開始し、且つ、所定のタイミングでOCTスキャンを開始する。固視標の移動の開始は第1の動作例のステップS5Aと同様であり、OCTスキャンの開始はステップS5Bと同様である。
【0093】
(S25B:光スキャナによるトラッキングの開始)
主制御部211は、光スキャナ42によるトラッキングを所定のタイミングで開始する。本例に係るトラッキングの第1の処理例は、例えば、被検眼Eの動画像の取得と、動き検知部232による被検眼Eの動きの検知と、検知された動きに応じた光スキャナ42の制御とを含む。主制御部211は、眼底カメラユニット2に赤外観察画像を取得させつつ、動き検知部232が実質的にリアルタイムで検知した被検眼Eの動きに測定光LSの投射位置を追従させるように(換言すると、被検眼Eの変位をキャンセルするように)光スキャナ42の制御を行う。第1の処理例によれば、被検眼Eの動きに対して実質的にリアルタイムで測定光LSの投射位置を追従させることができる。
【0094】
本例に係るトラッキングの第2の処理例は、例えば、ステップS1で設定された移動パターンに基づく光スキャナ42の制御を含む。主制御部211は、ステップS1で設定された移動パターンに応じた被検眼Eの視線方向の移動に測定光LSの投射位置を追従させるように光スキャナ42の制御を行う。第2の処理例は、移動する固視標を被検眼Eが追うことを前提としている。
【0095】
第1の処理例と第2の処理例とを組み合わせてもよい。例えば、第2の処理例を実行しつつ、適正な視線方向と被検眼Eの実際の向き(位置)との変位を求め、この変位が既定閾値を超えたときに第1の処理例を実行することができる。
【0096】
(S26A:固視標の移動・OCTスキャンの完了)
主制御部211は、第1の動作例のステップS6Aと同様に、所定のタイミングで固視標の移動を完了する。また、主制御部211は、第1の動作例のステップS6Bと同様に、所定のタイミングでOCTスキャンを完了する。
【0097】
(S26B:光スキャナによるトラッキングの完了)
主制御部211は、光スキャナ42によるトラッキングを所定のタイミングで完了する。所定のタイミングは、例えば、検者の指示、固視標の移動の完了、OCTスキャンの完了などに基づく。
【0098】
このような制御により、固視標の移動とOCTスキャンと光スキャナ42によるトラッキングとが並行して実行される。本例では、固視標の移動が実行される期間の少なくとも一部と、OCTスキャンが実行される期間の少なくとも一部と、光スキャナ42によるトラッキングが実行される期間の少なくとも一部とが重複するように、主制御部211が3つの制御を実行する。
【0099】
(S7:OCT画像の形成)
画像形成部220は、固視標の移動とOCTスキャンとトラッキングとの並行的な制御によって収集されたデータに基づいて、眼底Efの画像を形成する。この処理は、第1の動作例のステップS7と同様にして実行される。
【0100】
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0101】
実施形態の眼科装置は、データ取得部と、固視系と、制御部とを含む。データ取得部は、被検眼のデータを取得するための光学系を含む。上記の例では、データ取得部は、OCTを実行するための光学系と、画像形成部220とを含む。固視系は、被検眼に固視標を提示する。上記の例では、固視系は、LCD39と、LCD39から出力された光を被検眼Eに導くための要素とを含む。制御部は、被検眼のデータを取得するためのデータ取得部の制御と、固視標を移動するための固視系の制御とを並行して実行する。上記の例では、制御部は主制御部211を含む。
【0102】
このような眼科装置によれば、固視標を移動させつつ撮影や測定を行うことができるので、静止した固視標の凝視が要求される従来の眼科装置と比較して、自然な状態の被検眼の撮影や測定が可能である。それにより、例えば、被検者に与える疲労やストレスを低減することができる。
【0103】
実施形態の眼科装置はトラッキング機能を備えてもよい。トラッキング機能は、例えば、データ取得部の光学系を移動する移動機構を用いて実現することができる。上記の例では、移動機構150が光学系を移動する。更に、制御部は、被検眼のデータを取得するためのデータ取得部の制御と、固視標を移動するための固視系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを並行して実行することができる。
【0104】
一つの例において、実施形態の眼科装置は、被検眼の動きを検知する検知部を備えていてよい。上記の例では、検知部は、動き検知部232を含む。更に、制御部は、検知部により検知された被検眼の動きに応じて移動機構の制御を実行することができる。
【0105】
他の例において、制御部は、所定の移動パターン(所定パターン)にしたがって固視標を移動するように固視系の制御を実行し、且つ、この所定パターンに基づいて移動機構の制御を実行することができる。
【0106】
光スキャナを利用してトラッキング機能を実現することも可能である。光スキャナは、光源からの光で被検眼をスキャンする。上記の例では、光源ユニット101からの光(測定光LS)で被検眼Eをスキャンするための光スキャナ42が利用される。
【0107】
一つの例において、実施形態の眼科装置は、被検眼の動きを検知する検知部を備えていてよい。更に、制御部は、被検眼のデータを取得するためのデータ取得部の制御において、検知部により検知された被検眼の動きに応じた光学系の制御を実行する。これにより、被検眼の動きに応じてスキャン位置の補正が実質的にリアルタイムで実行される。例えば、予め設定されたスキャンパターンで被検眼のスキャンが実行される場合、このスキャンパターンに応じた一連のスキャン位置を被検眼の動きに合わせて補正することが可能である。
【0108】
他の例において、制御部は、所定パターンにしたがって固視標を移動するように固視系の制御を実行し、且つ、被検眼のデータを取得するためのデータ取得部の制御において、所定パターンに基づく光学系の制御を実行することができる。
【0109】
以上のような機能によれば、自然な状態の被検眼の撮影・測定が可能であるとともに、被検眼の動き及び/又は固視標の移動に応じたトラッキングにより適切な位置を撮影・測定することが可能となる。
【0110】
実施形態の眼科装置は、固視標の移動パターンを設定する機能(設定部)を備えてよい。上記の例では、設定部は、移動パターン設定部231を含む。更に、制御部は、設定部により設定された移動パターンにしたがって固視標を移動するように固視系の制御を実行することができる。なお、設定部により設定された移動パターンを上記の所定パターンとして用いることができる。
【0111】
固視標の移動パターンの設定方法としては、例えば、検者が手動で設定する方法、電子カルテ等の医療情報を参照して設定する方法、移動パターンを設定するための予備的撮影(予備的測定)を利用して設定する方法、これらの任意の組み合わせなどがある。
【0112】
予備的撮影(予備的測定)は、データ取得部及び固視系(並びにトラッキング)の並行的な制御を含む本撮影(本測定)の前に実行される。その具体例において、制御部は、1以上のパターンにしたがって固視標を移動するように固視系の制御を実行しつつデータ取得部に予備的データを取得させる。設定部は、取得された予備的データに基づいて移動パターンの設定を行うことができる。
【0113】
以上の例示した移動パターン設定機能を設けることにより、被検者や被検眼に応じた固視標の移動パターンを利用することが可能となる。すなわち、固視標が移動する場合、固視標を追いやすいパターン(形状、向き、サイズ、移動方向、移動速度等)は、被検者毎、被検眼毎に異なると考えられる。よって、固視標の移動パターンを設定可能な眼科装置によれば、被検者毎、被検眼毎に好適な移動パターン(例えば、被検者に与える疲労やストレスが小さいと考えられる自然な移動パターン)を適用することが可能である。
【0114】
以上に説明した実施形態は本発明の一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内における変形(省略、置換、付加等)を任意に施すことが可能である。
【0115】
図4~
図6に示す動作例では、撮影(測定)の開始後に固視標の移動を開始しているが、固視標の移動を開始するタイミングは撮影開始後に限定されない。例えば、アライメント、フォーカス調整、撮影条件の最適化等の準備動作を行いながら固視標を移動することができる。それにより、固視標の移動パターンに応じた被検眼の動かし方を練習することや、移動パターンに慣れるよう被検者を促すことが可能である。
【0116】
本撮影(本測定)の前に、所定パターンで固視標を移動するなどして被検眼の動かし方を練習することができる。更に、所定のトリガーに対応し、トラッキングを実行しつつ所定パターンで固視標の移動を所定回数繰り返しながら、予備撮影(予備測定)を行うことができる。具体例として、トラッキングと瞬き検知処理とを開始した後、被検眼の瞬きが検知されたことに対応し、(時計回り又は反時計回りで)円形軌道に沿って3周、固視標を移動しつつ、実質的に円運動を行う眼底を撮影することができる。このような予備撮影(予備測定)で得られたデータを評価することで、固視標による視線の誘導が適当であるか判定することができる。この判定の結果に応じ、被検眼の動かし方の練習を再度行ったり、練習のための移動パターンを変更したり、本撮影(本測定)を開始したりすることが可能である。
【0117】
被検眼の動きのパターンを予測することによって固視標の移動パターンやトラッキングのパターンを設定することが可能である。被検眼の動きのパターンの予測は、例えば動き検知部232により取得されたデータに基づいて行うことができる。
【0118】
両眼視状態で撮影や測定を実行である場合、被検者の両眼に固視標を提示することができる。このとき、左眼用固視標と右眼用固視標とを同じパターンにしたがって移動するように制御を行うことが可能である。このような動作は、例えば、左眼用固視標を表示する表示デバイスと右眼用固視標を表示する表示デバイスとの同期制御によって実現される。本機能によれば、自然な両眼視状態で撮影や測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0119】
1 眼科装置
39 LCD
42 光スキャナ
100 OCTユニット
101 光源ユニット
211 主制御部
220 画像形成部
231 移動パターン設定部
232 動き検知部