(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221007BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20221007BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20221007BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221007BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20221007BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20221007BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20221007BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01G11/78
H01G11/84
H01G11/26
H01M50/103
H01M50/538
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/55 101
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
(21)【出願番号】P 2020185189
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144135(JP,A)
【文献】特開2015-153454(JP,A)
【文献】特開2017-120743(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057012(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/185867(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/159433(WO,A1)
【文献】特開2015-210980(JP,A)
【文献】特開2010-021067(JP,A)
【文献】特開2018-010713(JP,A)
【文献】特開2012-174411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0587
H01M 6/10
H01G 11/78
H01G 11/84
H01G 11/26
H01G 4/32
H01M 50/538
H01M 50/586
H01M 50/593
H01M 50/409-451
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、前記底壁に対向する開口と、を有する外装体と、
前記外装体の前記開口を封口する封口板と、
帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回されてなる1つまたは複数の捲回電極体と、
前記捲回電極体の捲回軸方向の端部に設けられた複数の正極タブを含み、前記正極と電気的に接続された正極タブ群と、
前記捲回電極体の前記捲回軸方向の端部に設けられた複数の負極タブを含み、前記負極と電気的に接続された負極タブ群と、
を備え、
前記捲回電極体は、外表面が湾曲している一対の湾曲部と、一対の前記湾曲部を連結し外表面が平坦な平坦部と、を有する扁平形状であり、一方の前記湾曲部が前記封口板と対向し、他方の前記湾曲部が前記外装体の前記底壁と対向するように前記外装体に収容されており、
ここで、前記捲回電極体の前記捲回軸に対して垂直で、かつ、前記底壁に対して垂直な直線を直線L1としたときに、
一対の前記湾曲部の少なくとも一方において、前記負極の最外周に位置する部分が、前記直線L1上で、前記セパレータを介し、かつ前記正極を介さずに、前記負極の捲回内周側に位置する部分と対向している、
電池。
【請求項2】
前記封口板と前記捲回電極体との間に配置されたスペーサを備え、
前記負極の最外周に位置する部分が、前記直線L1上で、前記セパレータを介し、かつ前記正極を介さずに、前記負極の捲回内周側に位置する部分と対向している、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記封口板に取り付けられ、前記正極タブ群または前記負極タブ群と電気的に接続された端子と、
前記正極タブ群または前記負極タブ群と、前記端子と、を電気的に接続する集電部と、
前記封口板と前記集電部とを絶縁し、かつ、前記封口板の側から前記捲回電極体の側に突出する突出部を有する絶縁部材と、
を備え、
前記絶縁部材の前記突出部が前記スペーサを構成している、
請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記スペーサが、前記捲回電極体に当接していない、
請求項2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記捲回電極体が、複数である、
請求項1から4のいずれか1つに記載の電池。
【請求項6】
前記セパレータは、樹脂製の基材部と、前記基材部の上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層と、を備え、
一対の前記湾曲部の少なくとも一方において、前記捲回電極体の前記外表面が前記耐熱層で覆われている、
請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項7】
底壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、前記底壁に対向する開口と、を有する外装体と、
前記外装体の前記開口を封口する封口板と、
帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回されてなる1つまたは複数の捲回電極体と、
前記捲回電極体の捲回軸方向の端部に設けられた複数の正極タブを含み、前記正極と電気的に接続された正極タブ群と、
前記捲回電極体の前記捲回軸方向の端部に設けられた複数の負極タブを含み、前記負極と電気的に接続された負極タブ群と、
前記封口板と前記捲回電極体との間に配置されたスペーサと、
を備え、
前記捲回電極体は、外表面が湾曲している一対の湾曲部と、一対の前記湾曲部を連結し外表面が平坦な平坦部と、を有する扁平形状であり、一方の前記湾曲部が前記封口板と対向し、他方の前記湾曲部が前記外装体の前記底壁と対向するように前記外装体に収容されている、電池の製造方法であって、
前記スペーサで前記捲回電極体を前記外装体の内部に押し込む挿入工程と、
前記外装体の前記開口を前記封口板で封口する封口工程と、
を有し、
前記挿入工程では、前記捲回電極体における前記スペーサにより押圧される領域の少なくとも一部において、前記負極の最外周に位置する部分が、前記セパレータを介し、かつ前記正極を介さずに、前記負極の捲回内周側に位置する部分と対向しているようにする、
電池の製造方法。
【請求項8】
前記捲回電極体の前記捲回軸に対して垂直で、かつ、前記底壁に対して垂直な直線を直線L1としたとき、前記挿入工程では、少なくとも、前記捲回電極体において前記直線L1上に位置する外表面が押圧される、
請求項7に記載の電池の製造方法。
【請求項9】
前記封口工程の後、前記スペーサが前記捲回電極体に当接していない、
請求項7または8に記載の電池の製造方法。
【請求項10】
前記封口工程の後、前記捲回電極体と前記スペーサとの最短距離が、5mm以下である、
請求項7から9のいずれか1つに記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極集電体の上に正極活物質層を備える帯状の正極と、負極集電体の上に負極活物質層を備える帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回されてなる捲回電極体を備えた電池が知られている(特許文献1、2参照)。例えば特許文献1には、捲回軸方向の一方の端部に、正極集電体の一部であるタブ(リード取出し部)が複数突出し、他方の端部に、負極集電体の一部であるタブが複数突出した捲回電極体が開示されている。特許文献1において、捲回電極体の外表面は、セパレータで覆われている。複数のタブは1つに束ねられ、集電用のリードと溶接接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5100441号
【文献】特開2017-010878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、複数のタブは、集電体から突出した方向と交差する方向に移動可能な遊びを有する。このため、電池の使用時等に外部から振動や衝撃等が加わると、捲回電極体が電池ケースや電池ケースに取り付けられた部品に接触するおそれがある。その結果、捲回電極体の外表面を覆うセパレータが損傷して、正極と負極とが短絡するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、正極と負極との短絡が抑制され、信頼性の向上した電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、底壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、上記底壁に対向する開口と、を有する外装体と、上記外装体の上記開口を封口する封口板と、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回されてなる1つまたは複数の捲回電極体と、上記捲回電極体の捲回軸方向の端部に設けられた複数の正極タブを含み、上記正極と電気的に接続された正極タブ群と、上記捲回電極体の上記捲回軸方向の端部に設けられた複数の負極タブを含み、上記負極と電気的に接続された負極タブ群と、を備える電池が提供される。上記捲回電極体は、外表面が湾曲している一対の湾曲部と、一対の上記湾曲部を連結し外表面が平坦な平坦部と、を有する扁平形状であり、一方の上記湾曲部が上記封口板と対向し、他方の上記湾曲部が上記外装体の上記底壁と対向するように上記外装体に収容されている。ここで、上記捲回電極体の上記捲回軸に対して垂直で、かつ、上記底壁に対して垂直な直線を直線L1としたときに、一対の上記湾曲部の少なくとも一方において、上記負極の最外周に位置する部分が、上記直線L1上で、上記セパレータを介し、かつ上記正極を介さずに、上記負極の捲回内周側に位置する部分と対向している。
【0007】
上記電池の捲回電極体は、湾曲部が外装体の底壁および/または封口板と対向するように上記外装体に収容され、外装体の底壁および/または封口板と対向する湾曲部において、負極の最外周に位置する部分が、直線L1上で、正極を介さずに捲回内周側に位置する部分と対向している。これにより、湾曲部が、底壁および/または封口板、ならびに、これらに設けられた部品に接触してセパレータが損傷することがあったとしても、負極の最外周に位置する部分が正極と短絡することを抑制できる。したがって、電池の信頼性を向上できる。
【0008】
ここに開示される電池の好適な一態様では、上記封口板と上記捲回電極体との間に配置されたスペーサを備え、上記負極の最外周に位置する部分が、上記直線L1上で、上記セパレータを介し、かつ上記正極を介さずに、上記負極の捲回内周側に位置する部分と対向している。このような構成により、捲回電極体が封口板に近づく方向に大きく移動しにくくなる。そのため、捲回電極体が封口板に接触してセパレータが損傷することを抑制できる。これにより、正極と負極とが短絡することを効果的に抑制できる。また、正極タブ群および/または負極タブ群への負荷を軽減することができ、電気的な接続を安定して保つことができる。これにより、電池の導通信頼性を向上できる。
【0009】
ここに開示される電池の好適な一態様では、上記封口板に取り付けられ、上記正極タブ群または上記負極タブ群と電気的に接続された端子と、上記正極タブ群または上記負極タブ群と、上記端子と、を電気的に接続する集電部と、上記封口板と上記集電部とを絶縁し、かつ、上記封口板の側から上記捲回電極体の側に突出する突出部を有する絶縁部材と、を備え、上記絶縁部材の上記突出部が上記スペーサを構成している。このような構成により、湾曲部が底壁および/または封口板に接触しても、湾曲部にかかる応力を緩和できる。これにより、セパレータが損傷しにくくなり、正極と負極とが短絡することを効果的に抑制できる。
【0010】
ここに開示される電池の好適な一態様では、上記スペーサが、上記捲回電極体に当接していない。スペーサが電極体と離間した位置に配置されていると、捲回電極体が封口板に近づく方向に移動しても、湾曲部とスペーサとが擦れることを抑制できる。これにより、セパレータが損傷しにくくなり、正極と負極とが短絡することを効果的に抑制できる。
【0011】
ここに開示される電池の好適な一態様では、上記捲回電極体が、複数である。複数の捲回電極体を備える電池は、とりわけ正極と負極との短絡を抑制して信頼性を高めることが求められる。したがって、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
【0012】
ここに開示される電池の好適な一態様では、上記セパレータは、樹脂製の基材部と、上記基材部の上に設けられ、無機フィラーを含む耐熱層と、を備え、一対の上記湾曲部の少なくとも一方において、上記捲回電極体の上記外表面が上記耐熱層で覆われている。このような構成により、湾曲部が底壁および/または封口板に接触しても、湾曲部にかかる応力を緩和できる。これにより、セパレータが損傷しにくくなり、正極と負極とが短絡することを効果的に抑制できる。
【0013】
また、本発明により、底壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、上記底壁に対向する開口と、を有する外装体と、上記外装体の上記開口を封口する封口板と、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回されてなる1つまたは複数の捲回電極体と、上記捲回電極体の捲回軸方向の端部に設けられた複数の正極タブを含み、上記正極と電気的に接続された正極タブ群と、上記捲回電極体の上記捲回軸方向の端部に設けられた複数の負極タブを含み、上記負極と電気的に接続された負極タブ群と、上記封口板と上記捲回電極体との間に配置されたスペーサと、を備え、上記捲回電極体は、外表面が湾曲している一対の湾曲部と、一対の上記湾曲部を連結し外表面が平坦な平坦部と、を有する扁平形状であり、一方の上記湾曲部が上記封口板と対向し、他方の上記湾曲部が上記外装体の上記底壁と対向するように上記外装体に収容されている、電池の製造方法が提供される。かかる製造方法は、上記スペーサで上記捲回電極体を上記外装体の内部に押し込む挿入工程と、上記外装体の上記開口を上記封口板で封口する封口工程と、を有する。上記挿入工程では、上記捲回電極体における上記スペーサにより押圧される領域の少なくとも一部において、上記負極の最外周に位置する部分が、上記セパレータを介し、かつ上記正極を介さずに、上記負極の捲回内周側に位置する部分と対向しているようにする。
【0014】
上記製造方法では、捲回電極体の湾曲部をスペーサで押圧することにより、捲回電極体が外装体の内部に押し込まれる。このとき、負極の最外周に位置する部分が、上記セパレータを介し、かつ上記正極を介さずに、上記負極の捲回内周側に位置する部分と対向しているようにすることで、湾曲部がスペーサで強く押されても、負極の最外周に位置する部分が正極と短絡することを回避できる。また、スペーサを用いることで、捲回電極体が封口板や封口板に取り付けられた部品に接触し、セパレータが損傷することを抑制できる。したがって、捲回電極体を安定して外装体に挿入し、電池を作製することができる。
【0015】
上記捲回電極体の上記捲回軸に対して垂直で、かつ、上記底壁に対して垂直な直線を直線L1としたとき、上記挿入工程では、少なくとも、上記捲回電極体において上記直線L1上に位置する外表面が押圧される。これにより、セパレータの損傷を抑制しながら、捲回電極体を安定して外装体に挿入することができる。
【0016】
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記封口工程の後、上記スペーサが上記電極体に当接していない。これにより、捲回電極体が封口板に近づく方向に移動しても、湾曲部とスペーサとが擦れてセパレータが損傷することを抑制できる。
【0017】
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記封口工程の後、上記電極体と上記スペーサとの最短距離が、5mm以下である。これにより、電極体を押し込むときに、電極体とスペーサとをより良く当接させることができ、電極体をより安定して外装体に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
【
図6】正極第2集電部および負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図3の捲回電極体の上端部の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図9】
図2の正極端子の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図10】正極端子と負極端子と正極第1集電部と負極第1集電部と正極絶縁部材と負極絶縁部材とが取り付けられた封口板を模式的に示す斜視図である。
【
図12】一実施形態に係る電池の挿入工程を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0021】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。長辺方向は、捲回軸方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0022】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極絶縁部材70と、負極絶縁部材80と、を備えている。詳しくは後述するが、電極体群20は、捲回電極体20a、20b、20c(
図3参照)を有している。正極絶縁部材70は、ベース部70aと複数の突出部70bとを有している。負極絶縁部材80は、ベース部80aと複数の突出部80bとを有している。正極絶縁部材70の突出部70bおよび負極絶縁部材80の突出部80bは、封口板14と捲回電極体20a、20b、20cとの間に配置されるスペーサの一例である。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。電池100は、捲回電極体20a、20b、20cを備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。
【0023】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。
【0024】
外装体12は、
図1に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12hと対向している。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。長側壁12bおよび短側壁12cは、ここに開示される第1側壁および第2側壁の一例である。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0025】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後に電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0026】
正極端子30および負極端子40は、それぞれ封口板14に固定されている。正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側(
図1、
図2の左側)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側(
図1、
図2の右側)に配置されている。
図1に示すように、正極端子30および負極端子40は、封口板14の外側の表面に露出している。
図2に示すように、正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(
図2の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0027】
図2に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で、正極集電部50を介して電極体群20の正極22(
図7参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部60を介して電極体群20の負極24(
図7参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、正極絶縁部材70およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、負極絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。正極端子30および負極端子40は、ここに開示される端子の一例である。
【0028】
正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子40は、2つの導電部材が接合され一体化されて構成されていてもよい。例えば、負極集電部60と接続される部分が銅または銅合金からなり、封口板14の外側の表面に露出する部分がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。
【0029】
図1に示すように、封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の電池100を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0030】
図5は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。電極体群20は、ここでは3つの捲回電極体20a、20b、20cを有する。ただし、1つの外装体12の内部に配置される捲回電極体の数は特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。電極体群20は、樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図3参照)に覆われた状態で、外装体12の内部に配置されている。
【0031】
図6は、捲回電極体20aを模式的に示す斜視図である。捲回電極体20aは、捲回軸WLが長辺方向Yと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。言い換えれば、捲回電極体20aは、捲回軸WLが底壁12aと平行になり、短側壁12cと直交する向きで、外装体12の内部に配置されている。捲回電極体20aの端面(言い換えれば、正極22と負極24とが積層された積層面、
図7の長辺方向Yの端面)は、短側壁12cと対向している。
【0032】
図7は、捲回電極体20aの構成を示す模式図である。捲回電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。捲回電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されて構成されている。捲回電極体20aは、扁平形状を有している。
【0033】
正極22は、
図7に示すように、正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0034】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(
図7の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の正極タブ22tは、正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、ここでは正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。正極タブ22tは、ここではそれぞれ台形状である。正極タブ22tは、正極集電体22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(集電体露出部)である。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。また、正極タブ22tは、長辺方向Yの他方の端部(
図7の右端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0035】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(
図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。複数の正極タブ22tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。複数の正極タブ22tは、折り曲げられ、正極端子30と電気的に接続されていることが好ましい。正極タブ群23には、後述する正極第2集電部52が付設されている。複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yの長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図7参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の正極タブ22tは、ここでは湾曲させたときに外方側の端が揃うように相互にサイズが異なっている。
【0036】
正極活物質層22aは、
図7に示すように、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0037】
正極保護層22pは、
図7に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、長辺方向Yの両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0038】
負極24は、
図7に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0039】
負極集電体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図7の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(
図7の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。複数の負極タブ24tは、ここではそれぞれ台形状である。負極タブ24tは、ここでは、負極集電体24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(集電体露出部)である。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。また、負極タブ24tは、長辺方向Yの他方の端部(
図7の左端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。
【0040】
図4に示すように、複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(
図6の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。複数の負極タブ24tは、外方側の端が揃うように折り曲げられて湾曲している。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。複数の負極タブ24tは、折り曲げられ、負極端子40と電気的に接続されていることが好ましい。負極タブ群25には、後述する負極第2集電部62が付設されている。複数の負極タブ24tのサイズ(長辺方向Yの長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図7参照)は、負極集電部60に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の負極タブ24tは、ここでは湾曲させたときに外方側の端が揃うように相互にサイズが異なっている。
【0041】
負極活物質層24aは、
図7に示すように、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0042】
セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、捲回電極体20aの外表面を構成している。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、ここでは、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に形成された耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有する。耐熱層は、典型的には無機フィラーとバインダとを含む層である。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。バインダとしては、例えば、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0043】
図3に示すように、捲回電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の長側壁12bに対向する平坦部20fと、を有している。一方(
図3の上側)の湾曲部20rは、ここでは、後述する正極第1集電部51、負極第1集電部61、正極絶縁部材70、および負極絶縁部材80等を介して、間接的に封口板14と対向している。他方(
図3の下側)の湾曲部20rは、ここでは、電極体ホルダ29を介して間接的に底壁12aと対向している。なお、以下では捲回電極体20aを例として詳しく説明するが、捲回電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0044】
図8は、
図3の捲回電極体20aの上端部の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
図8において、捲回電極体20aの捲回軸WLに対して垂直で、かつ、底壁12aに対して垂直な直線は、直線L1として示されている。なお、捲回電極体20aの一対の湾曲部20rの各頂点(
図3の捲回電極体20aの上端および下端)が潰れていない場合は、これら一対の頂点同士を結ぶ直線を直線L1とすることがより好ましい。
【0045】
封口板14と対向する方の湾曲部20rにおいて、直線L1上では、負極24の最外周部に位置する部分24оが、セパレータ26を介して、負極24の捲回内周側に位置する部分24iと対向している。負極24の最外周部に位置する部分24оは、正極22と対向していない。これにより、捲回電極体20aが外装体12の底壁12aに直接ないし電極体ホルダ29等の他の部材を介して強く押圧され、セパレータ26が損傷することがあったとしても、負極24の最外周部に位置する部分24оが捲回内周側に位置する正極22と短絡することを抑制できる。また、後述する挿入工程において、捲回電極体20aの湾曲部20rが正極絶縁部材70の突出部70bで強く押圧され、セパレータ26が損傷することがあったとしても、負極24の最外周部に位置する部分24оが捲回内周側に位置する正極22と短絡することを抑制できる。なお、直線L1上には、後述する正極絶縁部材70の突出部70b(スペーサ)が位置することが特に好ましい。これにより、捲回電極体20aの外装体12への挿入性を向上できる。また、捲回電極体20aが封口板14に近づく方向に移動することをより良く抑制できる。
【0046】
湾曲部20rにおいて、正極絶縁部材70の突出部70bに最も近い部分は、直線L1と交差している。湾曲部20rの突出部70bに最も近い部分において、直線L1上では、負極24の最外周部に位置する部分24оが、セパレータ26を介して、負極24の捲回内周側に位置する部分24iと対向している。負極24の最外周部に位置する部分24оは、正極22と対向していない。これにより、捲回電極体20aが封口板14に近づく方向に大きく移動しにくくなる。そのため、捲回電極体20aが封口板14に接触してセパレータ26が損傷することを抑制できる。これにより、正極22と負極24とが短絡することを効果的に抑制できる。また、正極タブ群23および/または負極タブ群25への負荷を軽減することができ、正極端子30および/または負極端子40との電気的な接続を安定して保つことができる。これにより、電池の導通信頼性を向上できる。
【0047】
正極22の捲回終端22eは、捲回軸WLに直交する捲回方向において、負極24の捲回終端24eよりも内周側に配置されている。正極22の捲回終端22eは、一方の湾曲部20rに位置することが好ましい。正極22の捲回終端22eは、ここでは封口板14と対向する方の湾曲部20rに位置している。このような構成であると、捲回電極体20aの平坦部20fにおいて、捲回終端22eに対応する位置に段差が生じることを抑制できる。これにより、平坦部20fに局所的に大きな圧力が加わったときにも、金属リチウム(デンドライト)が析出して正極と負極とが微短絡すること等を抑制できる。
【0048】
正極22の捲回終端22eは、ここでは直線L1よりも捲回内周側に配置されている。
図8において、正極22の捲回終端22eから直線L1までの長さは、Laで示されている。長さLaは、0.1mm~20mmであることが好ましく、0.1mm~9mmであることがより好ましく、3mm~7mmであることが更に好ましい。長さLaは、5mm以上であってもよい。これにより、正極22と負極24との短絡をより効果的に抑制できる。
【0049】
負極24の捲回終端24eは、正極22の捲回終端22eよりも捲回外周側に配置されている。負極24の捲回終端24eは、一方の湾曲部20rに位置することが好ましい。負極24の捲回終端24eは、ここでは封口板14と対向する方の湾曲部20rに位置している。このような構成であると、捲回電極体20aの平坦部20fにおいて、捲回終端24eに対応する位置に段差が生じることを抑制できる。これにより、平坦部20fに局所的に大きな圧力が加わったときにも、金属リチウム(デンドライト)が析出して正極と負極とが微短絡すること等を抑制できる。
【0050】
負極24の捲回終端24eは、ここでは直線L1よりも捲回外周側(言い換えれば、直線L1を超えた位置)に配置されている。
図8において、直線L1から負極24の捲回終端24eまでの長さは、Lbで示されている。長さLbは、0.1mm~20mmであることが好ましく、0.1mm~9mmであることがより好ましく、3mm~7mmであることが更に好ましい。これにより、正極22と負極24との短絡をより効果的に抑制できる。ただし、負極24の捲回終端24eは、直線L1上に配置されていてもよい。長さLbは、0mmであってもよい。
【0051】
図8において、正極22の捲回終端22eから負極24の捲回終端24eまでの長さは、La+Lbで示されている。負極24の捲回終端24eは、正極22の捲回終端22eよりも捲回方向に長さLa+Lbの分、進行した位置に配置されている。長さLa+Lbは、0.1mm以上であることが好ましく、0.1~18mmであることがより好ましく、6~14mmであることが更に好ましい。これにより、正極22と負極24との短絡をより効果的に抑制できる。
【0052】
セパレータ26の捲回終端26eは、正極22の捲回終端22eおよび負極24の捲回終端24eよりも捲回外周側に配置されている。セパレータ26の捲回終端26eは、負極24の捲回終端24eよりも捲回方向に進行した位置に配置されている。セパレータ26の捲回終端26eには巻止めテープ28が貼り付けられている。巻止めテープ28は、その全域が湾曲部20rにかからないように平坦部20fに配置されている。
【0053】
セパレータ26の捲回終端26eは、平坦部20fに位置することが好ましい。このような構成であると、複数の捲回電極体20a、20b、20cの厚み(
図8の短辺方向Xの長さ)にバラつきが生じることを効果的に抑制できる。その結果、複数の捲回電極体20a、20b、20cをバランスよく充放電させることができる。なお、セパレータ26の捲回終端26eを一方の湾曲部20rに配置すると、巻止めテープ28の一部が平坦部20fに配置される場合と配置されない場合とが生じることがあり、捲回電極体20aの厚みにバラつきを生じる原因となり得る。
【0054】
封口板14と対向する方の湾曲部20rには、凹部20dが形成されている。凹部20dは、後述する挿入工程において、正極絶縁部材70の突出部70bおよび/または負極絶縁部材80の突出部80bで捲回電極体20aが押圧された際に形成されるものである。凹部20dは、ここでは、正極22の捲回終端22eから負極24の捲回終端24eまでの間(すなわち、長さLa+Lbの範囲内)に形成されている。凹部20dでは、負極24の最外周部に位置する部分24оとセパレータ26とが、負極24の捲回内周側に位置する部分24iに近づくように拉げられている。
【0055】
図示は省略するが、捲回電極体20a、20b、20cの最外周において、セパレータ26は、基材部よりも外表面側に耐熱層が配置されている。捲回電極体20a、20b、20cの外表面は、セパレータ26の耐熱層で覆われている。一対の湾曲部20rの少なくとも一方において、捲回電極体20a、20b、20cの外表面が耐熱層で覆われていることにより、湾曲部20rが底壁12aおよび/または封口板14に接触しても、湾曲部20rにかかる応力を緩和できる。これにより、セパレータ26が損傷しにくくなる。また、セパレータ26が損傷することがあったとしても、負極24の最外周部に位置する部分24оが捲回内周側に位置する正極22と短絡することを抑制できる。
【0056】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0057】
正極集電部50は、複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と、正極端子30と、を電気的に接続する導通経路を構成している。
図2に示すように、正極集電部50は、正極第1集電部51と、正極第2集電部52と、を備えている。正極第1集電部51および正極第2集電部52は、正極集電体22cと同じ金属種、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0058】
図9は、
図2の正極端子30の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
図10は、封口板14を模式的に示す斜視図である。
図11は、
図10の封口板を裏返した斜視図である。
図11は、封口板14の外装体12の側(内側)の面を示している。
図9~
図11に示すように、正極第1集電部51は、封口板14の内側の面に取り付けられている。正極第1集電部51は、ここに開示される集電部の一例である。正極第1集電部51は、第1領域51aと、第2領域51bと、を有する。正極第1集電部51は、一つの部材を例えばプレス加工等によって折り曲げることで構成されてもよく、複数の部材を溶接接合等によって一体化することで構成されてもよい。正極第1集電部51は、ここでは、かしめ加工によって、封口板14に固定されている。
【0059】
第1領域51aは、封口板14と電極体群20との間に配置される部位である。第1領域51aは、長辺方向Yに沿って延びている。第1領域51aは、封口板14の内側の表面に沿って水平に広がっている。封口板14と第1領域51aとの間には、正極絶縁部材70が配置されている。第1領域51aは、正極絶縁部材70によって封口板14と絶縁されている。第1領域51aは、ここでは、かしめ加工により、正極端子30と電気的に接続されている。第1領域51aにおいて、封口板14の端子引出孔18に対応する位置には、上下方向Zに貫通した貫通孔51hが形成されている。第2領域51bは、外装体12の短側壁12cと電極体群20との間に配置される部位である。第2領域51bは、第1領域51aの長辺方向Yの一方側の端(
図9の左端)から外装体12の短側壁12cに向かって延びている。第2領域51bは、上下方向Zに沿って延びている。
【0060】
正極第2集電部52は、外装体12の短側壁12cに沿って延びている。正極第2集電部52は、
図6に示すように、集電板接続部52aと、傾斜部52bと、タブ接合部52cと、を有する。集電板接続部52aは、正極第1集電部51と電気的に接続される部位である。集電板接続部52aは、上下方向Zに沿って延びている。集電板接続部52aは、捲回電極体20a、20b、20cの捲回軸WLに対して略垂直に配置されている。集電板接続部52aには、その周囲よりも厚みが薄い凹部52dが設けられている。凹部52dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔52eが設けられている。貫通孔52eには、正極第1集電部51との接合部が形成されている。接合部は、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。正極第2集電部52には、ヒューズを設けてもよい。
【0061】
タブ接合部52cは、正極タブ群23に付設され、複数の正極タブ22tと電気的に接続される部位である。
図5に示すように、タブ接合部52cは、上下方向Zに沿って延びている。タブ接合部52cは、捲回電極体20a、20b、20cの捲回軸WLに対して略垂直に配置されている。タブ接合部52cの複数の正極タブ22tと接続される面は、外装体12の短側壁12cと略平行に配置されている。
図4に示すように、タブ接合部52cには、正極タブ群23との接合部Jが形成されている。接合部Jは、例えば、複数の正極タブ22tを重ねた状態で、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。溶接接合部は、複数の正極タブ22tを捲回電極体20a、20b、20cの短辺方向Xの一方側に寄せて配置されている。これにより、複数の正極タブ22tをより好適に折り曲げて、
図4に示すような湾曲形状の正極タブ群23を安定して形成することができる。
【0062】
傾斜部52bは、集電板接続部52aの下端とタブ接合部52cの上端とを連結する部位である。傾斜部52bは、集電板接続部52aとタブ接合部52cとに対して傾斜している。傾斜部52bは、長辺方向Yにおいて、集電板接続部52aがタブ接合部52cよりも中央側に位置するように、集電板接続部52aとタブ接合部52cとを連結している。これにより、電極体群20の収容空間を広げて、電池100の高エネルギー密度化を図ることができる。傾斜部52bの下端(言い換えれば、外装体12の底壁12aの側の端部)は、正極タブ群23の下端よりも下方に位置することが好ましい。これにより、複数の正極タブ22tをより好適に折り曲げて、
図4に示すような湾曲形状の正極タブ群23を安定して形成することができる。
【0063】
負極集電部60は、複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と、負極端子40と、を電気的に接続する導通経路を構成している。
図2に示すように、負極集電部60は、負極第1集電部61と、負極第2集電部62と、を備えている。負極第1集電部61は、ここに開示される集電部の一例である。負極第1集電部61および負極第2集電部62は、負極集電体24cと同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。負極第1集電部61および負極第2集電部62の構成は、正極集電部50の正極第1集電部51および正極第2集電部52と同等であってよい。
【0064】
負極第1集電部61は、
図11に示すように、第1領域61aと、第2領域61bと、を有する。封口板14と第1領域61aとの間には負極絶縁部材80が配置されている。第1領域61aは、負極絶縁部材80によって封口板14と絶縁されている。第1領域51aにおいて、封口板14の端子引出孔19に対応する位置には、上下方向Zに貫通した貫通孔61hが形成されている。負極第2集電部62は、
図6に示すように、負極第1集電部61と電気的に接続される集電板接続部62aと、傾斜部62bと、負極タブ群25に付設され、複数の負極タブ24tと電気的に接続されるタブ接合部62cと、を有する。集電板接続部62aは、タブ接合部62cと連結される凹部62dを有する。凹部62dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔62eが設けられている。
【0065】
正極絶縁部材70は、封口板14と正極第1集電部51とを絶縁する部材である。なお、以下では正極絶縁部材70を例として詳しく説明するが、負極絶縁部材80についても同様の構成とすることができる。正極絶縁部材70は、使用する電解液に対する耐性と電気絶縁性とを有し、弾性変形が可能な樹脂材料からなり、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等からなることが好ましい。
【0066】
正極絶縁部材70は、
図2に示すように、ベース部70aと、複数の突出部70bと、を有する。ベース部70aと突出部70bとは、ここでは一体成型されている。正極絶縁部材70は、ここでは上記したような樹脂材料を一体成型してなる一体成型品である。これにより、ベース部70aと突出部70bとを別部材とする場合と比べて、使用する部材の数を削減することができ、低コスト化を実現できる。また、より簡易に正極絶縁部材70を用意できる。
【0067】
ベース部70aは、上下方向Zにおいて、封口板14と、正極第1集電部51の第1領域51aと、の間に配置される部位である。ベース部70aは、正極第1集電部51の第1領域51aに沿って水平に広がっている。
図9に示すように、ベース部70aは、上下方向Zに貫通した貫通孔70hを有する。貫通孔70hは、封口板14の端子引出孔18と対応する位置に形成されている。
【0068】
複数の突出部70bは、それぞれ、ベース部70aよりも電極体群20の側に突出している。
図11に示すように、長辺方向Yにおいて、複数の突出部70bは、ベース部70aよりも封口板14の中央側(
図11の右側)に設けられている。複数の突出部70bは、短辺方向Xに並んで配置されている。
図3に示すように、複数の突出部70bは、ここでは電極体群20を構成する捲回電極体20a、20b、20cの湾曲部20rと対向している。これにより、捲回電極体20a、20b、20cの端面が突出部70bで押圧されて損傷することを回避できる。
【0069】
突出部70bの数は、ここでは電極体群20を構成する捲回電極体20a、20b、20cの数と同数である。すなわち、3つである。これにより、捲回電極体20a、20b、20cと突出部70bとをより確実に対向させることができ、ここに開示される技術の効果をより良く発揮できる。また、後述する挿入工程において、捲回電極体20a、20b、20cと突出部70bとをバランスよく当接させることができる。ただし、突出部70bの数は、電極体群20を構成する電極体の数と異なっていてもよく、例えば1つであってもよい。
【0070】
図3に示すように、突出部70bは、断面略コの字状に形成されている。突出部70bは、上下方向Zにおいて、第1領域51aの電極体群20の側の面よりも電極体群20の側に突出していることが好ましい。突出部70bは、電極体群20を構成する捲回電極体20a、20b、20cに当接していないことが好ましい。複数の突出部70bは、捲回電極体20a、20b、20cと離間した位置に配置されていることが好ましい。上下方向Zにおいて、捲回電極体20aの長さHaは、突出部70bの下端から外装体12の底壁12aまでの距離Hbよりも小さい(すなわち、Ha<Hb)ことが好ましい。これにより、捲回電極体20a、20b、20cが封口板14に近づく方向に移動しても、湾曲部20rと突出部70bとが擦れることを抑制できる。したがって、セパレータ26が損傷しにくくなり、正極22と負極24とが短絡することを効果的に抑制できる。突出部70bと捲回電極体20a、20b、20cとの最短距離Dは、概ね0.1mm以上であってもよい。
【0071】
突出部70bと捲回電極体20a、20b、20cとの最短距離Dは、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。これにより、湾曲部20rと突出部70bとが擦れることをより効果的に抑制できる。ただし、他の実施形態において、突出部70bと捲回電極体20a、20b、20cとは当接していてもよい。
【0072】
特に限定されるものではないが、突出部70bにおいて、捲回電極体20aと最短距離Dにある領域71の面積は、捲回電極体20aの上面視での面積を100%としたときに、概ね1~20%であることが好ましく、1~10%であることがより好ましく、1~5%であることが更に好ましい。これにより、後述する挿入工程で突出部70bが捲回電極体20aに接触しても、正極22と負極24とが短絡することを効果的に抑制できる。捲回電極体20aと最短距離Dにある領域71は、ここでは捲回電極体20a、20b、20cの側の面が平坦である。ただし、領域71は、捲回電極体20a、20b、20cの外面(上面)に沿った形状、具体的には湾曲部20rに沿った曲線状としてもよい。
【0073】
負極絶縁部材80は、
図2に示すように、電極体群20の長辺方向Yの中央CLに対して、正極絶縁部材70と対称に配置されている。負極絶縁部材80の構成は、正極絶縁部材70と同様であってよい。負極絶縁部材80は、ここでは正極絶縁部材70と同様に、封口板14と負極第1集電部61との間に配置されるベース部80aと、複数の突出部80bと、を有する。
【0074】
電池100は、正極絶縁部材70および負極絶縁部材80をいずれも備えることが好ましい。これにより、電池100の使用時に振動や衝撃等が加わっても、電極体群20と封口板14とを、平行に(
図2の状態に)維持しやすくなる。また、後述する挿入工程において、電極体群20と突出部70bとをより良く(例えば長辺方向Yにバランスよく)当接させることができ、電極体群20を安定して突出部70bで押圧して外装体12に挿入することができる。
【0075】
<電池100の製造方法>
電池100の製造方法は、上記したような捲回電極体20a、20b、20cを用いることで特徴付けられる。それ以外の製造プロセスは従来同様であってよい。電池100は、正極絶縁部材70と負極絶縁部材80とに加えて、上記したような電池ケース10(外装体12および封口板14)と、電極体群20(捲回電極体20a、20b、20c)と、電解液と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50(正極第1集電部51および正極第2集電部52)と、負極集電部60(負極第1集電部61および負極第2集電部62)と、を用意し、例えば、第1取付工程と、第2取付工程と、挿入工程と、封口工程と、をこの順に含む製造方法によって製造することができる。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0076】
第1取付工程では、
図10、
図11に示すような第1合体物を作製する。具体的にはまず、封口板14に、正極端子30と、正極第1集電部51と、正極絶縁部材70と、負極端子40と、負極第1集電部61と、負極絶縁部材80と、を取り付ける。
【0077】
正極端子30と正極第1集電部51と正極絶縁部材70とは、例えば、かしめ加工(リベッティング)によって封口板14に固定する。かしめ加工は、
図9に示すように、封口板14の外側の表面と正極端子30との間にガスケット90を挟み、さらに封口板14の内側の表面と正極第1集電部51との間に正極絶縁部材70を挟んで行われる。なお、ガスケット90の材質は、正極絶縁部材70と同様であってもよい。詳しくは、かしめ加工前の正極端子30を、封口板14の上方から、ガスケット90の貫通孔90hと、封口板14の端子引出孔18と、正極絶縁部材70の貫通孔70hと、正極第1集電部51の貫通孔51hと、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように正極端子30の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、正極端子30の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部30cを形成する。
【0078】
このようなかしめ加工によって、ガスケット90と封口板14と正極絶縁部材70と正極第1集電部51とが封口板14に一体に固定されるとともに、端子引出孔18がシールされる。なお、かしめ部30cは、正極第1集電部51に溶接接合されていてもよい。これにより、導通信頼性をさらに向上できる。
【0079】
負極端子40と、負極第1集電部61と、負極絶縁部材80との固定は、上記した正極側と同様に行うことができる。すなわち、かしめ加工前の負極端子40を、封口板14の上方から、ガスケットの貫通孔と、封口板14の端子引出孔19と、負極絶縁部材80の貫通孔と、負極第1集電部61の貫通孔と、に順番に挿入して、封口板14の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように負極端子40の封口板14よりも下方に突出した部分をかしめる。これにより、負極端子40の先端部(
図2の下端部)に、かしめ部40cを形成する。
【0080】
次に、封口板14の外側の表面に、外部絶縁部材92を介して、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付ける。なお、外部絶縁部材92の材質は、正極絶縁部材70と同様であってもよい。また、正極外部導電部材32と負極外部導電部材42とを取り付けるタイミングは、挿入工程の後(例えば注液孔15を封止した後)であってもよい。
【0081】
第2取付工程では、第1取付工程で作製した第1合体物を用いて、
図5に示すような第2合体物を作製する。具体的にはまず、
図6に示すように、正極第2集電部52および負極第2集電部62の付設された捲回電極体20aを3つ用意し、捲回電極体20a、20b、20cとして、短辺方向Xに並べて配置する。このとき、捲回電極体20a、20b、20cは、いずれも、正極第2集電部52が長辺方向Yの一方側(
図5の左側)に配置され、負極第2集電部62が長辺方向Yの他方側(
図5の右側)に配置されるように、並列に並べてもよい。
【0082】
次に、
図4に示すように複数の正極タブ22tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された正極第1集電部51(詳しくは第2領域51b)と、捲回電極体20a、20b、20cの正極第2集電部52(詳しくは集電板接続部52a)と、をそれぞれ接合する。また、負極タブ群25の複数の負極タブ24tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された負極第1集電部61と、捲回電極体20a、20b、20cの負極第2集電部62と、をそれぞれ接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接を用いることができる。特に、レーザ等の高エネルギー線の照射による溶接を用いることが好ましい。このような溶接加工によって、正極第2集電部52の凹部52dおよび負極第2集電部62の凹部62dに、それぞれ接合部を形成する。
【0083】
挿入工程では、封口板14と一体化された電極体群20を、外装体12の内部空間に収容する。
図12は、挿入工程を説明する模式的な断面図である。具体的には、まず、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げて、電極体ホルダ29を用意する。次に、電極体ホルダ29に電極体群20を収容する。そして、電極体ホルダ29で覆われた電極体群20を、外装体12に挿入する。電極体群20の重量が重い場合、概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合には、
図12に示すように、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体群20を外装体12に挿入するとよい。
【0084】
電極体群20を構成する捲回電極体20a、20b、20cの湾曲部20rは、それぞれ、スペーサとしての正極絶縁部材70の突出部70bおよび/または負極絶縁部材80の突出部80bで押圧され、外装体12の内部に押し込まれる。突出部70bおよび/または突出部80bで電極体群20を押し込むことにより、正極タブ群23および/または負極タブ群25への負荷を軽減できる。スペーサとしての突出部70bおよび/または突出部80bは、電極体群20を外装体12に組み付けるときに、正極タブ群23および/または負極タブ群25への負荷を軽減する緩衝材として機能し得る。
【0085】
このとき、突出部70bおよび/または突出部80bは、捲回電極体20a、20b、20cの一方の湾曲部20rに入り込む状態で、捲回電極体20a、20b、20cを押し込むことが好ましい。これにより、正極絶縁部材70および/または負極絶縁部材80をしっかりと捲回電極体20a、20b、20cに当接させて、正極絶縁部材70および/または負極絶縁部材80が捲回電極体20a、20b、20cに対して滑ることを抑制できる。このように押し込むことで、捲回電極体20a、20b、20cの突出部70bおよび/または突出部80bと対向する部分に、凹部20dが形成される。
【0086】
正極タブ群23および/または負極タブ群25は、突出した方向と交差する方向に移動可能な遊びを有する。このため、電極体群20を外装体12に挿入した後、封口板14が上方にくるように外装体12を起こすと、電極体群20は重力によって僅かに下方に移動する。これにより、
図3に示すように、正極絶縁部材70の突出部70bと捲回電極体20a、20b、20cとが離間した位置に配置される。また、負極絶縁部材80の突出部80bと捲回電極体20a、20b、20cとが離間した位置に配置される。
【0087】
封口工程では、外装体12の開口12hの縁部に封口板14を接合して、開口12hを封止する。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。その後、注液孔15から電解液を注入し、注液孔15を封止部材16で塞ぐことによって、電池100を密閉する。
以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0088】
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。電池100は、複数の電池100を所定の配列方向に複数個並べて、配列方向から拘束機構で荷重を加えてなる組電池としても好適に用いることができる。拘束機構で荷重を加えた状態においても、正極絶縁部材70の突出部70bおよび/または負極絶縁部材80の突出部80bと、捲回電極体20a、20b、20cと、は当接していないことが好ましい。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0090】
例えば、上記した実施形態では、負極24の捲回終端24eが捲回電極体20aの湾曲部20rに配置されていた。しかし、これには限定されない。負極24の捲回終端24eは、平坦部20fに配置されていてもよい。このような構成であると、湾曲部20rの外表面の形状が安定化する。これにより、湾曲部20rにおいて、正極22の捲回終端22e近傍と対向する負極24との間に隙間が生じにくくなる。その結果、金属リチウム(デンドライト)が析出して正極と負極とが微短絡すること等を抑制できる。
【0091】
例えば、上記した実施形態では、正極絶縁部材70が複数の突出部70bを備え、それぞれの突出部70bが、略コの字状の断面を有していた。しかし、これには限定されない。突出部70bの数は1つであってもよい。また、突出部70bは任意の形状とすることができる。突出部70bは、例えば、長方形状の断面を有していてもよい。突出部70bは、長方形状の長方形状部と、当該長方形状部から捲回電極体20a、20b、20c側に突出した1つまたは複数の突出リブ部と、を有していてもよい。突出部70bは、ロ字状またはコ字状の断面を有していてもよい。
【符号の説明】
【0092】
12 外装体
14 封口板
20 電極体群
20a、20b、20c 捲回電極体
20f 平坦部
20r 湾曲部
23 正極タブ群
25 負極タブ群
70 正極絶縁部材(絶縁部材)
70b 突出部(スペーサ)
80 負極絶縁部材(絶縁部材)
80b 突出部(スペーサ)
100 電池