(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】医療デバイスのためのレンチキュラーラベル
(51)【国際特許分類】
G16H 40/00 20180101AFI20221007BHJP
A61M 5/178 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
G16H40/00
A61M5/178
(21)【出願番号】P 2020507098
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2018071796
(87)【国際公開番号】W WO2019030394
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コーラー, レミー
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527414(JP,A)
【文献】特表2001-513371(JP,A)
【文献】特表2018-516151(JP,A)
【文献】米国特許第6995914(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第2060284(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/152040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 40/00
A61M 5/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ構造を有する第1の面、および、複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)の組成から得られるレンチキュラーグラフィックを含む第2の面を有する、プリセット配向(αe,αf,αg)で使用される医療デバイス(1)の表面に対する取り付けたのめのレンチキュラーラベル(2)において、前記レンチキュラーグラフィックは、前記複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)のうちの異なる画像が、前記レンチキュラーグラフィックが前記第1の面に関してそこから観察される観察角度(αa,αb,αc,αd,αe,αf,αg)を変更することによって目に見えるように前記レンズ構造と整列する、レンチキュラーラベル(2)であって、
前記複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)はコンプライアンス画像(2e,2f,2g)を含み、
前記レンズ構造は、レンチキュラーラベル(2)が前記医療デバイス(1)に取り付けられ、前記医療デバイス(1)が前記プリセット配向にあるときに、前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)が前記医療デバイス(1)のユーザーによって目に見えるように配置されることを特徴とする、レンチキュラーラベル(2)。
【請求項2】
前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)以外の前記複数の画像(2a,2b,2c,2d)の少なくとも1つの画像は、前記医療デバイス(1)を前記プリセット配向にする調整方向を示す、請求項1に記載のレンチキュラーラベル(2)。
【請求項3】
前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)以外の前記複数の画像(2a,2b,2c,2d)の少なくとも1つの画像は、前記医療デバイス(1)を前記プリセット配向にするために前記観察角度(αa,αb,αc,αd)がそこまで調整される必要がある程度の指示を示す、請求項1または2に記載のレンチキュラーラベル(2)。
【請求項4】
前記複数の画像(2a,2b,2c,2d)のうちの複数の画像は、前記医療デバイス(1)を前記プリセット配向にするための調整ステップのシーケンスを示す、請求項3に記載のレンチキュラーラベル(2)。
【請求項5】
前記観察角度(αa,αb,αc,αd)が所与の閾値角度より大きいとき、レンチキュラーラベル(2)は、前記コンプライアンス画像以外の前記複数の画像(2a,2b,2c,2d)の少なくとも1つの画像を前記医療デバイス(1)の前記ユーザー(100)に示すように構成され、
前記観察角度(αa,αb,αc,αd)が所与の閾値角度以下であるとき、レンチキュラーラベル(2)は、前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)を前記医療デバイス(1)の前記ユーザー(100)に示すように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のレンチキュラーラベル(2)。
【請求項6】
前記所与の閾値角度が約130°~約90°の範囲に含まれ、前記閾値角度が、好ましくは、約130°、約120°、約110°、約100°、または約90°であるように構成される、請求項5に記載のレンチキュラーラベル(2)。
【請求項7】
レンズ構造を有する第1の面、および、複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)の組成から得られるレンチキュラーグラフィックを含む第2の面を有するレンチキュラーラベル(2)を備える、プリセット配向で使用される医療デバイス(1)において、前記複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)は、前記複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)のうちの異なる画像が、前記レンチキュラーグラフィックが前記第1の面に関してそこから観察される観察角度(αa,αb,αc,αd,αe,αf,αg)を変更することによって目に見えるように前記レンズ構造と整列する、医療デバイス(1)であって、
前記複数の画像(2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g)はコンプライアンス画像(2e,2f,2g)を含み;
前記レンズ構造は、
前記医療デバイス(1)が前記プリセット配向にあるときに、前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)が前記医療デバイス(1)のユーザー(100)によって目に見えるように;
そうでないとき、前記コンプライアンス画像(2e,2f,2g)以外の画像(2a,2b,2c,2d)が目に見えるように
配置されることを特徴とする、医療デバイス(1)。
【請求項8】
前記レンチキュラーラベル(2)は、医療デバイス(1)と一体である、または、医療デバイス(1)の外部または内部表面に固着される、請求項7に記載の医療デバイス(1)。
【請求項9】
前記レンチキュラーラベル(2)は、医療デバイス(1)のコンポーネント内に目に見えるように埋め込まれる、請求項7または8に記載の医療デバイス(1)。
【請求項10】
医療デバイス(1)は投薬デバイスおよび/または注入デバイスであり、前記レンチキュラーラベル(2)は、医療デバイス(1)が正しい投薬配向にあるか否かを信号で示すように構成される、請求項7~9のいずれか一項に記載の医療デバイス(1)。
【請求項11】
前記レンチキュラーラベル(2)は、投薬アクティベータコンポーネント(3)の表面に対して、前記投薬アクティベータコンポーネント(3)に係合可能である医療デバイス(1)の注入コンポーネント(4)の表面に対して、または、前記投薬アクティベータコンポーネント(3)および前記注入コンポーネント(4)のアセンブリに対して一体に形成される、請求項10に記載の医療デバイス(1)。
【請求項12】
前記レンチキュラーラベル(2)がそれと一体に形成される医療デバイス(1)の配向をユーザー(100)に視覚的に示すまたは信号で示すための請求項1~6のいずれか一項に記載の前記レンチキュラーラベル(2)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルによる、医療デバイスの表面に対する取り付けのためのレンチキュラーラベルに関し、より詳細には、レンズ構造、および、複数の画像がその中にインターレースされるレンチキュラーグラフィックを有するレンチキュラーラベルに関する。画像およびレンズ構造は、観察角度を変更することによって異なる視覚的印象が得られるように整列される。
【0002】
本発明は、同様に、上記で導入したレンチキュラーラベルを備える、プリセット配向で使用される医療デバイスならびにそのような医療デバイスの使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体または他の流体をコンテナから外に送出することは、多くの医療用途で必要とされ、複数の異なる方法で実施される。特に、液体がかなり精密に提供されることが必須である場合、特定のデバイスが一般に使用される。例えば、液体医薬物質は、しばしば、ガラスまたはプラスチックバイアル内に設けられ、ガラスまたはプラスチックバイアルは、隔壁またはゴムプラグおよびその周りにクランプされるキャップまたは別の同様のシールカバーによって閉鎖される。従来、医薬物質をバイアルから外に送出するために、シリンジが使用され得る。それにより、シリンジの針が、隔壁またはカバーに貫入し、医薬物質は、その針を通してシリンジ内に引き込まれる。シリンジ内に移送されると、医薬物質は適切な方法で送出される。例えば、医薬物質は、例えば、皮下にまたは筋肉内に注入され得る、または、医薬物質は、経口的に投与され得る、または、例えば、患者の目または鼻内に、液滴として提供され得る。
【0004】
シリンジによってバイアルまたはコンテナから液体を送出することは、通常、かなり難しい。これは、通常、医師または看護師などの教育を受けた人が関わることを必要とする。特に、送出される液体の投薬量がかなり精密でなければならない場合、例えば、10マイクロリットル~約1ミリリットルの範囲の場合のようなかなり小さい容積が関与するとき、患者は、通常、シリンジまたは同様のデバイスを使用するとき、自分自身で送出を実施することは可能でない、すなわち、自己投与(self-administration)はユーザーにとって難題であり得る。しかしながら、液体または薬剤の自己投与は多くの治療用途において有益であり、なぜならば、患者についての労力および治療のコストが大幅に低減され得るからである。
【0005】
この状況を改善するために、かなり精密な容積の液体をより簡便に送出することを可能にする、使用されるデバイスが存在する。例えば、患者自身によって投与され得る薬剤を事前充填式シリンジ内に設けることが知られている。しかし、シリンジによる手作業の注入は、特定の技量を必要として、その技量を磨くには、学習プロセスが必要であり、通常、そのような技量を有するのは、看護師などの専門作業員である。多くの患者は、実質的に通常のシリンジを使用して自分自身で注入することに不安を抱いている。
【0006】
したがって、自動注入器デバイスなどの自動薬剤送出デバイスが開発されており、自動注入器デバイスは、注入をより単純かつより管理可能にすることによって、患者の自己信頼(self-reliance)および服薬アドヒアランスを改善するのに役立つ。
【0007】
しかしながら、既存の自動送出デバイスは、或る程度の取り扱い技量を依然として必要とし、ユーザーによる正しい操作は、例えば、バイアルから送出デバイスの専用投薬量チャンバ内への予め規定された量の薬剤を投薬する、例えば、移送するとき、および、投薬される量の薬剤を送出する、例えば、注入するときの両方において最重要であり得る。
【0008】
実際には、知られている(半)自動送出デバイスの正しい使用は、患者などの比較的訓練を受けていないユーザーが推定することが難しいパラメータの評価を含む。例えば、正確な投薬のために、知られている送出デバイスのそれぞれの機構は、デバイスが正しい配向にあることを必要とする。特に、かなり少ない量を投薬するとき、医療デバイスの不適切な配向は投薬に影響を及ぼし得る。例えば、投薬機構は、投薬されている間、薬剤がバイアルのキャップに隣接することを必要とする場合がある。そのような実施形態において、送出デバイスをひっくり返すことは、投薬を全くうまく働かなくさせる可能性がある。同様に、送出中に、送出デバイスの配向が重要であり得る。
【0009】
したがって、適切な投薬および投与のために医療デバイスが正しく操作され配向されるという要件をユーザーが容易にかつ自信をもって遵守できるように、所定の用量の薬剤を自己投与する必要のあるユーザーのための効果的な手引きを提供することができる、医療デバイスまたはそのようなデバイスのための補助物についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、この必要性は、レンチキュラーラベルであって、独立請求項1の特徴によって定義されるレンチキュラーラベルによって、また、医療デバイスであって、従属請求項7の特徴によって定義される医療デバイスによって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【0011】
特に、本発明は、正しい使用のためにプリセット配向で使用されることを意味される、例えば、薬剤の(自己)投与のための医療送出デバイスなどの医療デバイスの表面に対する取り付けのためのレンチキュラーラベルを扱う。本発明のコンテキストにおいて、用語「取り付け」によって、医療デバイスに対する(その外部表面またはその内部表面に対する)、レンチキュラーラベルの任意の種類の固着が意味される。取り付けは、好ましくは、医療デバイスの移動がレンチキュラーラベルの比例移動に対応する方法で、レンチキュラーラベルを医療デバイスと一体に形成することなどである。用語「医療デバイス(medical device)」は、その配向が適用の任意のステップにおいて重要である医療用途において使用される任意のデバイスに関係し得る。述べたように、医療デバイスは、特に、自己注入器または同様なものなどの医療送出デバイスであり得る。
【0012】
レンチキュラーラベルは、レンズ構造を有する第1の面、例えば前面を有する。レンズ構造は、例えば、ラベル上に成形され、レンチキュラー状に形成される領域にわたって延在することができる薄いレンズのアレイまたはシリーズの形態をとり得る。
【0013】
レンチキュラーラベルは、例えば、ラベルの背側に、レンチキュラーグラフィックを含む第2の面を同様に有する。レンチキュラーグラフィックは、複数の画像がレンチキュラーグラフィックに対してインターレースされることによってなどで、複数の画像の組成から得られる。したがって、レンチキュラーグラフィックは、好ましくは、レンチキュラーグラフィックを構成する複数の画像からのインターリーブされた線または他の幾何学的要素を備える。第1および第2の面は、好ましくは、実質的に平行であるが、必ずしもそうであるわけではない。
【0014】
レンチキュラーグラフィックは、レンズ構造に対して整列するため、複数の画像の異なる画像は、レンチキュラーグラフィックが第1の面に関してそこから観察される観察角度を変更することによって目に見える。換言すれば、複数の画像のそれぞれに実質的に対応する異なる視覚的印象が、所与のまたは現在の観察角度に応じて連続的に目に見えるようになる。
【0015】
観察角度は、ユーザーまたは患者の視方向とレンチキュラーラベルの第1の面との間の角度によって規定され得る。それにより、用語「視方向(direction of vision)」は、ユーザーまたは患者の目が、レンチキュラーラベルを見るときに配向するまたは焦点を結ぶ、方向、平面、または軸に関係し得る。観察角度は、好ましくは、レンチキュラーラベルが取り付けられる医療デバイスがユーザーによって保持される保持角度に相関する。
【0016】
複数の画像はコンプライアンス(compliance)画像を含む。レンズ構造は、レンチキュラーラベルが医療デバイスに取り付けられ、医療デバイスがプリセット配向にあるときに、コンプライアンス画像が医療デバイスのユーザーによって目に見えるように配置される。
【0017】
用語「プリセット配向」は、適切かつ正確な機能が達成され得るために医療デバイスが整列する予め規定された配向に関する。プリセット配向は、実質的に、医療デバイスの正しい使用を、例えば、バイアルから医療デバイスの投薬チャンバ内への薬剤の投薬の正しい実行の点でおよび/または薬剤送出の正しい実行の点で保証する配向であり得る。
【0018】
レンズ構造が特別な配置構成になっているため、観察角度の大きさに基づいて、本発明によるレンチキュラーラベルは、レンチキュラーラベルが取り付けられている医療デバイスを取り扱い、これに注目しているユーザーに対して、その医療デバイスがプリセット配向にある否かを視覚的に示すように設計されている。これにより、医療デバイスの正しい使用または正確な投薬を保証することができる。また、レンチキュラーラベルは、当該医療デバイスが、プリセット配向になるように動かさなければならないことを示すことができる。
【0019】
そのため、医療デバイスのユーザーに瞬時に示される視覚的ガイダンスは、即座に解釈され、また実際に、コンプライアンス画像を示すことで、医療デバイスがいつでも使用可能であることを明確に示すことができる。または、レンチキュラーラベルにコンプライアンス画像以外の画像を表示するだけで、迅速にプリセット配向に調整することができる。
【0020】
好ましくは、コンプライアンス画像の表現は、本発明のレンチキュラーラベルと一体の医療デバイスが、所望の医療デバイス機能を正しく実施するのに適したプリセット配向にあるというメッセージを概略的にかつ直感的に伝える。例えば、コンプライアンス画像は、「OK」のような頭字語、親指を立てる合図、または同様なものを含み得る。
【0021】
好ましくは、コンプライアンス画像以外の複数の画像の少なくとも1つの画像は、医療デバイスをプリセット配向にするための調整方向を示す。これは、好ましくは、例えば、観察角度が所与の閾値角度より大きい場合にこのような状況が発生しうる。
【0022】
それに加えて、好ましくは、コンプライアンス画像以外の複数の画像の少なくとも1つは、医療デバイスをプリセット配向にするために観察角度が調整する必要がある範囲を示す。観察角度が所与の閾値角度より大きい場合には、どの信号によって観察角度が下げられるかが示されることがある。
【0023】
本発明によるレンチキュラーラベルが連結される医療デバイスの正しい位置決めを達成するときのより連続的なガイダンスの場合、複数の画像は、医療デバイスをプリセット配向にするために、観察角度の調整ステップのシーケンスを示すことが望ましい。これらの各ステップは、調整プロセスにおける中間ステータスを示すことができ、シーケンスの各調整ステップについて、医療デバイスをプリセット配向にするために観察角度がそこまで調整される必要がある範囲を示すことができる。
【0024】
レンチキュラーラベル上に描かれ、それぞれの観察角度を示す調整ステップのシーケンスは、例えば、医療デバイスのそれぞれの配向に対応する、例えば4~10までの7つの異なる画像を含み得る。
【0025】
コンプライアンス画像は、許容可能な観察角度で同じままにしておくことができる。これにより、医療デバイスが所望のオペレーションを実施するのに適したプリセット構成にあることが保証される。
【0026】
好ましくは、観察角度が所与の閾値角度より大きい場合、レンチキュラーラベルは、コンプライアンス画像以外の複数の画像のうちの1つを医療デバイスのユーザーに示すように構成され、示される画像は医療デバイスの現在の配向に対応する。代わりに、観察角度が所与の閾値角度以下である場合、レンチキュラーラベルは、好ましくは、コンプライアンス画像を医療デバイスのユーザーに示すように構成される。
【0027】
レンチキュラーラベルは、所与の閾値角度が[90°+δ,90°,90°-δ]の範囲に含まれるように構成することができる。この場合、医療デバイスユーザーの観察方向または軸と、医療デバイスに取り付けられたレンチキュラーレンズの第1の面との間に形成される観察角度であって、[90°+δ,90°,90°-δ]の範囲に含まれる、観察角度について、レンチキュラーレンズはコンプライアンス画像を示す。
【0028】
本発明は、上述したレンチキュラーラベルを備える、プロセット配向で使用される医療デバイスに同様に関する。医療デバイスと一体化されたレンチキュラーラベルは、レンズ構造を有する第1の面、および、複数の画像の組成から得られるレンチキュラーグラフィックを含む第2の面を有する。
【0029】
レンチキュラーグラフィックは、レンチキュラーグラフィックが第1の面に関してそこから観察される観察角度を変更することによって、複数の画像のうちの異なる画像が目に見える、または、異なる視覚的印象が得られるようにレンズ構造と整列する。
【0030】
複数の画像はコンプライアンス画像を含む。レンズ構造は、医療デバイスがプリセット配向にあるとき、コンプライアンス画像が医療デバイスのユーザーによって目に見え、そうでなければ、コンプライアンス画像以外の画像が目に見えるように配置される。
【0031】
好ましくは、レンチキュラーラベルは、医療デバイスと一体である、または、医療デバイスの外部または内部表面に固着される。レンチキュラーラベルは、接着剤および/または機械的締結手段によって、および/または、レンチキュラーラベルを医療デバイスコンポーネントの材料内にしっかり固定する何らかの埋め込みプロセスによって医療デバイスと一体に形成することができる。後者の場合、レンチキュラーラベルは、医療デバイスのコンポーネント内に目に見えるように埋め込むことができ、コンポーネントは、好ましくは、レンチキュラーラベルがそれを通して見せる実質的に透明な材料の面を有する。
【0032】
本発明による医療デバイスは、投薬デバイスおよび/または注入デバイスであることができる。この場合、レンチキュラーラベルは、好ましくは、医療デバイスが正しい投薬配向にあるか否かを信号で示すように構成される。または代替的に、レンチキュラーラベルは、医療デバイスが、例えば薬剤の注入に適した、正しい送出位置にあるか否かを信号で示すように設計することができる。
【0033】
これらの目的で、レンチキュラーラベルは、好ましくは、投薬アクティベータコンポーネントの表面に対して、投薬アクティベータコンポーネントに係合する医療デバイスの注入コンポーネントの表面に対して、または、投薬アクティベータコンポーネントおよび注入コンポーネントのアセンブリに対して一体に形成される。
【0034】
いずれにしても、本発明によるレンチキュラーラベルの位置および配置構成は、好ましくは、所与の観察角度で得られる視覚的印象が、実質的に瞬時に、レンチキュラーラベルがそれと一体である医療デバイスの現在の配向を反映するようなものである。述べたように、本発明のコンテキストにおいて、観察角度は、レンチキュラーグラフィックがその第1の面に関してそこからユーザーによって観察される角度である。所与の観察軸にしたがってユーザーが医療デバイスを見る所与の観察位置について、医療デバイスの配向は、ユーザーが医療デバイスをそこで保持する角度に実質的に対応し、好ましくは、上記観察角度によって一義的に定義される。
【0035】
本発明は、レンチキュラーラベルがそれと一体に形成される医療デバイスの配向をユーザーに視覚的に示すまたは信号で示すための、上述したレンチキュラーラベルの使用法に同様に関する。特に、述べたレンチキュラーラベルは、有利には、レンチキュラーラベルがそれと一体に形成される医療デバイスの現在の配向に対応する表現を視覚的にレンダリングするために使用され得る。
【0036】
したがって、そのような表現は、取り扱われる医療デバイスが、手順を適切に実施するために必要な、プリセット配向にしたがって実際に位置決めされるか、またはむしろ、安全な手順のためにプリセット配向に移動されるべきであるかをユーザーが確立するための有効なガイドとなる。具体的には、医療デバイスがプリセット配向にあるときに、レンチキュラーレンズによって適合画像が示される。
【0037】
本発明によるレンチキュラーラベルおよび本発明によるレンチキュラーラベルを備える医療デバイスは、本明細書において以下で、例示的な実施形態として、また、添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1l】本発明によるレンチキュラーラベルが取り付けられる医療デバイスを、7つの異なる配向の4つの配向で保持するユーザーを概略的に示す図である。
【
図1s】本発明によるレンチキュラーラベルが取り付けられる医療デバイスを、7つの異なる配向の3つの配向で保持するユーザーを概略的に示す図である。
【
図2】医療デバイスがとる7つの異なる配向のそれぞれに関連する、
図1lおよび
図1sのレンチキュラーラベル上に示す、視覚的印象または画像のシーケンスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の説明において、或る用語は、便宜のために使用され、本発明を制限することを意図されない。用語「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下(under)」、および「上(above)」は、図における方向を指す。用語集は、明示的に述べた用語、ならびに、その派生語および同様の意味を有する用語を含む。同様に、空間的に相対的な用語、例えば、「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、および同様なものは、図に示すように、1つの要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を述べるために使用することができる。これらの空間的に相対的な用語は、図に示す位置および配向に加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる位置および配向を包含することが意図される。例えば、図のデバイスが反転された場合、他の要素または特徴の「下(beneath)」または「下(below)」として述べられる要素は、他の要素または特徴の「上(above)」または「上(over)」であることになる。そのため、例示的な用語「下(below)」は、上(above)および下(below)の位置と配向の両方を包含し得る。デバイスは、その他の方法で(90度回転してまたは他の配向で)配向することができ、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子を相応して解釈することができる。同様に、種々の軸に沿うまた種々の軸のまわりの移動の記述は、種々の特別なデバイス位置および配向を含む。
【0040】
種々の態様および例証的な実施形態の図および説明の反復を回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。説明または図からの態様の省略は、その態様が、その態様を組み込む実施形態から抜けていることを示唆しない。代わりに、態様は、明確にするため、また、冗長な説明を回避するために省略されている場合がある。このコンテキストにおいて、以下がこの説明の残りの部分に当てはまる:図面を明確にするために、説明の直接関連する部分(part)で説明されない参照符号を図が含む場合、それは、直前のまたは以下の説明セクションに対して参照される。さらに、明快さのために、図面において、或る部分の全ての特徴が参照符号を備えるわけではない場合、それは、同じ部分を示す他の図面に対して参照される。2つ以上の図の同様の数字は、同じまたは同様の要素を示す。
【0041】
図1lおよび
図1sの実施形態を参照すると、本発明によるレンチキュラーラベル2を一体化する本発明による医療デバイス1の使用の態様が概略的に示される。ユーザー100は、本発明によるレンチキュラーラベル2が取り付けられる医療デバイス1を、全部で7つの異なる配向で保持する。より具体的には、所与の観察軸200にしたがって医療デバイス1を見る医療デバイス1のユーザーがとる所与の観察位置について、医療デバイス1が保持される保持角度が、レンチキュラーラベル2のレンチキュラーグラフィックがラベルの第1の面に関してそこから観察される観察角度αにどのように相関するかが示される。
【0042】
図1lにおいて、医療デバイス1がユーザー100によって保持される4つの別個の位置a、b、c、dが示される。位置a、b、c、およびdのそれぞれについて、ユーザーは、医療デバイス1を異なる保持角度で保持する、すなわち、医療デバイスは異なって配向する。医療デバイス1のそのような保持角度、またはそうでなければ、医療デバイス1の上記のそのような配向は、観察軸200と、医療デバイス1内に一体化されたレンチキュラーラベル2の第1の面との間で形成される、それぞれの4つの観察角度αa、αb、αc、αdに相関される。レンチキュラーラベル2の第1の面(すなわち、本事例において、ユーザー100の目に向かって配向する前面)は、レンズ構造を備える。
【0043】
そのため、医療デバイス1の配向は、ユーザーが医療デバイス1を保持する角度に実質的に対応し、
図1lにおいて、上記観察角度αa、αb、αc、αdによって一義的に定義される。
【0044】
医療デバイス1は、医療デバイスの正しい使用を、例えば、医療デバイス1の投薬チャンバ内への薬剤の投薬の正しい実行の点で、および/または、薬剤送出の正しい実行の点で保証するプリセット配向で使用されることを意味される。
【0045】
図1sにおいて、医療デバイス1がユーザー100によって保持される3つのさらなる別個の位置e、f、およびgが示される。位置e、f、およびgのそれぞれについて、ユーザーは、医療デバイス1を異なる保持角度で保持する、すなわち、医療デバイスは、必要な変更を加えて、
図1lについて既に説明したことと同様に、異なって配向する。そのため、
図1sの医療デバイス1の配向は、観察角度αe、αf、およびαgによって一義的に定義される。
【0046】
レンチキュラーラベル2の第1の面はレンズ構造を備える。
【0047】
レンチキュラーラベル2の第2の面(例えば、ユーザー100の目と反対に配向する裏側)は、複数の画像がその中にインターレースされるレンチキュラーグラフィックを含む、すなわち、レンチキュラーグラフィックは、そのような複数の画像の組成から得られる。第2の面上の画像は、第1の面上のレンズ構造と整列するため、レンチキュラーグラフィックが第1の面に関してそこから観察される観察角度αを変更することによって、異なる視覚的印象が得られる。
【0048】
観察角度αa、αb、αc、αd、αe、αf、およびαgは、レンチキュラーグラフィックが第1の面に関してそこから観察される角度に実質的に対応する。
【0049】
図2は、7つの画像2a、2b、2c、2d、2e、2f、2gのそれぞれの画像によって観察者または医療デバイスユーザー100にそれぞれ提供される視覚的印象が、観察角度αa、αb、αc、αd、αe、αf、およびαgに対応して、現在の医療デバイス配向を即座に伝えるように、レンチキュラーラベル2のレンチキュラーグラフィック内にインターレースされ得る7つの画像のシーケンスを示す。
【0050】
図2の画像のそれぞれにおいて、現在の医療デバイス配向と、所望の医療デバイス機能を正しく実施するのに適したプリセット配向との間の相関が同様に示される。
【0051】
位置a~dのレンチキュラーラベル2の画像2a、2b、2c、2dは、医療デバイス1をプリセット配向にするための調整方向を示す。観察角度αa、αb、αc、αdについてそうであるように、観察角度が所与の閾値角度より大きい場合、それぞれの画像2a、2b、2c、2dは、医療デバイスが所望の医療デバイス機能を正しく実施するのに適したプリセット配向にない非コンプライアンス状況を示す。コンプライアンス状況からのずれは、医療デバイス1をプリセット配向にするようにユーザー100が導かれるにつれて、画像2aの表現から画像2dの表現まで徐々に減少するように表示される。さらなる手引きとして、2a~2dのレンチキュラーラベル2の画像は、医療デバイス1をプリセット配向にするために観察角度αa、αb、αc、αdがそこまで調整される必要がある程度の指示を同様に示す。本事例において、矢印の形態の指示は観察角度を減少させるように合図し、それは、医療デバイス1の把持および保持位置をユーザー100が修正することを伴う。2a~2dの画像のそれぞれは、調整プロセスの中間ステータスを示す。
【0052】
レンチキュラーラベル2の画像2e、2f、および2gは、医療デバイス1が所望の医療デバイス機能を正しく実施するのに適したプリセット配向にあるというメッセージを概略的にかつ直感的に伝える同じコンプライアンス画像を示す。画像2e、2f、および2gに示すコンプライアンス画像は、医療デバイス1がプリセット配向にあるという、チックマークシンボルの形態の確認符号、プラス、実質的に直立の位置にある医療デバイス1の表現であって、この場合、プリセット配向の表現と想定される、医療デバイス1の表現を含む。
【0053】
この場合、コンプライアンス画像は、医療デバイス1が所望のオペレーションを実施するのに適したプリセット構成にあることを保証する或る範囲の許容可能な観察角度αe、αf、αgについて同じままである。観察角度αe、αf、およびαgは所与の閾値角度以下である:そのような状況では、レンチキュラーラベル2は、医療デバイス1のユーザー100にコンプライアンス画像を示すように構成される。
【0054】
レンチキュラーラベル2は、所与の閾値角度が約130°~約90°の範囲に含まれ、閾値角度が、好ましくは、約130°、約120°、約110°、約100°、または約90°であるように構成される。
【0055】
図2の画像内の医療デバイス1の簡略化された表現を参照すると、レンチキュラーラベル2は、投薬アクティベータコンポーネント3の表面に対して、投薬アクティベータコンポーネント3に係合する医療デバイス1の注入コンポーネント4の表面に対して、または、投薬アクティベータコンポーネント3および注入コンポーネント4のアセンブリに対して一体に形成され得る。
【0056】
本説明、および、本発明の態様および実施形態を示す添付図面は、保護される発明を規定する特許請求項を制限するものと解釈されるべきでない。換言すれば、本発明は、図面および上記説明において詳細に示され述べられたが、そのような例証および説明は、例証的または例示的であり、制限的でないと考えられる。種々の機械的、組成的、構造的、電気的、および動作的変更を、本説明および特許請求項の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。幾つかの事例において、よく知られている回路、構造、および技法は、本発明を曖昧にしないために詳細に示されていない。そのため、添付特許請求項の範囲および趣旨内で、変更および修正を当業者が行うことができることが理解される。特に、本発明は、上記で述べるまた以下で述べる異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを有するさらなる実施形態をカバーする。
【0057】
本開示は、図に個々に示す全てのさらなる特徴を同様にカバーするが、それらは、上記のまたは以下の説明において述べられていない場合がある。同様に、図および説明で述べる実施形態の単一の代替およびその特徴の単一の代替は、本発明の主題または開示される主題から否認され得る。本開示は、特許請求項または例示的な実施形態によって定義される特徴からなる主題ならびに上記特徴を含む主題を含む。
【0058】
さらに、特許請求項において、語「備える(comprising)」は他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数を排除しない。単一ユニットまたはステップは、特許請求項で挙げられる幾つかの特徴の機能を果たすことができる。或る対策が互いに異なる従属請求項で挙げられるという単なる事実は、これらの対策の組み合わせを有利に使用することができないことを示さない。属性または値に関連する用語「本質的に(essentially)」、「約(about)」、「およそ(approximately)」、および同様なものは同様に、正確にその属性を、または、正確にその値をそれぞれ規定する。所与の数値または範囲のコンテキストにおける用語「約」は、所与の値または範囲の、例えば、20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指す。結合されたまたは接続されたとして述べられるコンポーネントは、電気的にまたは機械的に直接結合することができる、または、それらは、1つまたは複数の中間コンポーネントを介して間接的に結合することができる。特許請求項における任意の参照符号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。