(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】水素含有ガスを得るための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20221007BHJP
B01J 8/02 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
C01B3/38
B01J8/02 C
(21)【出願番号】P 2020521399
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 RU2018000782
(87)【国際公開番号】W WO2019112480
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】517179767
【氏名又は名称】パブリチノエ アクツィオネルノエ オブスチェストヴォ “ガズプロム”
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アクシュチン, オレグ エフゲニエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】イシコフ, アレクサンドル ガヴリロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】フロプツォフ, ヴァレリー ゲンナディエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】カザリャン, バラズダット アマヤコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ストリャレフスキー, アナトリー ヤコヴレヴィッチ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0143980(US,A1)
【文献】特表2005-507137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0221157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
B01J 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁を裏張りで覆われ、連通チャンバを通じて連通する、酸化チャンバを備える反応炉の上側ケーシング、および、混合チャンバを備える反応炉の下側ケーシング
と、同軸混合器の
筒状の環状空間を形成する
同軸混合器および中心筒
と、前記同軸混合器の
筒状の環状空間に供給される蒸気-メタン混合ガスを供給するためのダクト
と、前記中心筒に供給される蒸気-空気混合ガスを供給するためのダクト
と、前記上側ケーシングの内部空間へ入る、前記中心筒の下縁に配置される点火装置への点火
電流供給装置
と、生成ガスの出口に接続される前記下側ケーシングの下方部分内の出口パイプ
と、を備え、各反応炉のケーシングは、後続の保護用球体
と、触
媒層と、支持グリッド上の支持球体を介して置かれる、ガス噴出口を備えた耐火煉瓦アーチ
と、
前記耐火煉瓦アーチの上に載っている触媒と、を備え、前記ガス噴出口は、
前記触媒がこぼれるのを防ぎ、ガスがアーチを通過する際の抵抗を減少させる鋼玉石の球体で覆われた、水素含有ガスを得るための装置。
【請求項2】
反応炉の上側ケーシングに配置された同軸混合器の
筒状の環状空間への蒸気-メタン混合ガスの供給、中心筒への蒸気-空気混合ガスの供給、および
、上側
触媒層の上方でメタン燃焼反応が起きるようにするための、前記反応炉の上側ケーシングのメタン酸化チャンバへの
点火電流の供給、に存し、この反応の結果、化学物質の流れが追加のメタンとの混合のために供給され、当該混合は、前記反応炉の上側ケーシングと下側ケーシングとの間の自由空間で起こり
、下側
触媒層の上流のメタンの含有量が、水蒸気の体積含有量の0.1~0.25の範囲内であるようにメタンが供給され、化学物質とメタンの混合流は、前記反応炉の下側ケーシングでのメタン転化のために
前記下側
触媒層に供給され、化学物質の流れの中でのガス混合物の顕熱により、さらなるメタン転化反応が起こり、生成されたガスは出口パイプを通じて排出される、水素含有ガスを得るための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有ガス、水素、水素-メタン混合物、フィッシャー・トロプシュ法で、水素、アルコール、アンモニア、ジメチルエーテル、エチレンを生成するためにH2およびCOを実質的に含む合成ガスを得るための装置および方法に関し、炭化水素ガスの処理の化学工業に使用することができ、また水素-メタン混合物の応用を含む科学技術に使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、2004年5月20日公開のロシア連邦特許第2228901号、IPC C01B3/38で、フィッシャー・トロプシュ法により水素、アルコール、アンモニア、ジメチルエーテル、エチレンを生成するためにH2およびCOを実質的に含む合成ガス用のメタン転化反応炉を開示している。H2/CO比を1.0から2.0の範囲にあらかじめ設定した合成ガスを得るための当該先行技術の反応炉は、以下の2つの段階を備える:部分酸化ステップ(A)、および、触媒上のステップ(A)の生成物で残留メタンを転化するステップ(B)。部分酸化ステップ(A)は、次の2つの段階で実行される:(a)0.76~0.84のおおよその酸素とメタンのモル比で、H2OとCH4の非平衡の含有量である生成物を得るための、酸素による天然ガスの非触媒性の部分酸化;(b)触媒上の水蒸気による残留メタンの転化にさらされる気体混合物を得るための、CO2およびH2O、または、H2OおよびCH4の修正添加物による段階(a)の反応生成物の転化。メタン転化反応炉により、CO/H2比があらかじめ設定された合成ガスを生成することができ、当該合成ガスは、水素を得るために使用されることができ、またアルコール、ジメチルエーテル、アンモニア、またはその他の基本的な化学物質のさらなる合成処理のための供給原料とすることもできる。
【0003】
しかしながら、上述のメタン転化反応炉は、いくつかの不利益があり、それは高酸素消費量(転化された天然ガスの過度の重量消費量)と関連がある、装置に対する機能的および経済的な制限であり、その酸素の生産には高電力消費量(最大で1000 kWh/tまで)および資本コスト(最大で1500 USD/kgh-1)が必要である。触媒活性が著しく減少するため、煤も重大な問題である。
【0004】
これの装置の不利益の中で、空気圧縮、中間段階の存在および副反応による消費のための低い熱学的効率もあり、これにより生成ガスの対象構成要素の内容が減少する。
【0005】
先行技術は、2014年6月27日公開のロシア連邦発明特許第2520482号で、水素-メタン混合物を得るための反応炉を開示している。当該反応炉は、原料源として低パラフィン炭化水素を含む少なくとも2つの並流を使用した同等の装置である。さらに、1つの流れは酸素含有ガスとの部分酸化のために供給され、他の流れは水蒸気と混合されいくつかの続いて起こる段階を通る。各段階は、第1の流れの部分酸化からの伝熱による熱交換器を加熱する際の加熱からなる。その後、その流れは触媒ヘッドで満たされた断熱転化反応炉を通る。この解決策の不利益は、高資本コスト、高金属消費量および原料の低利用効率である。
【0006】
先行技術は、ソビエト社会主義共和国連邦特許第1831468号、IPC 5 C01B 3/38、「炭化水素原料から合成ガスを得る方法」の発明を開示している。当該方法は、炭化水素原料を、酸化剤として酸素、酸素含有ガスまたは蒸気と混合すること、および、モノリス触媒の存在下で混合物を転化することを含む方法と同等である。反応帯での温度は、93℃以上で混合物の自己着火点よりも低く、反応帯での混合物の噴射率は、フラッシュバックプロセスの速度を上回る。先行技術の方法は、高選択性の触媒を使用する必要がある。ソビエト社会主義共和国連邦特許第1831468号に記載される発明の主な不利益は、高い触媒のコスト、局部的な過熱による触媒の損傷の可能性およびスーティング(煤煙)の可能性である。
【0007】
現在、部分メタン酸化のための反応炉が周知である。当該反応炉は以下を含む:
・第1反応ガスの通路を形成するための第1チャンバ;
・第2反応ガスの通路を形成するための第2チャンバ;
・第1チャンバと第2チャンバとを仕切る多孔質触媒膜。当該膜により、第2反応ガス(例えば酸素)が、第2チャンバから第1チャンバに入ることができる。反応炉は、天然ガス、炭層メタンまたはバイオガスの転化により、約1.8:1から約6:1のH2/CO比を有する合成ガスを得るために使用される。反応炉は、約25~200mmの厚さの炉材を有し、これは約1000℃までの温度に耐えることができる(米国特許出願第20130032762号、2013年6月2日公開)-類似物(アナログ)。この発明の不利益は、膜を使用する必要があることであり、これにより反応炉の信頼性および出力が減少し、またH2/CO比の調整の困難性もある。
【0008】
メタン転化の前途有望な方向は、<<CH4の完全酸化 + 非触媒性の二酸化炭素転化>>の2段階プロセスである。これにより、メタンの完全酸化の発熱段階が二酸化炭素転化の吸熱段階と結合された場合、複合アプローチのおかげで、自動熱プロセスの実行が可能になる。このようなアプローチは、メタンまたは天然ガスと大気酸素との燃焼チャンバ;混合器;酸化生成物および合成ガスの冷却システム;メタンおよび空気の予熱システムを含む、H2/COを用いたメタン転化のための反応炉内で実行される。さらに、燃焼チャンパは、点火装置を含み、流体チャンバの形に作られる。アンチブレイクスルーグリッドを備えた混合器がチャンバ入口に取り付けられ、メタンおよび空気の供給パイプが混合器に取り付けられる。酸化生成物を冷却し、燃焼チャンバに供給される空気を加熱する熱交換器がチャンバ出口に取り付けられる。さらに、熱交換器は、その空洞から酸化生成物を放出するためのニップルを有する。装置はまた、二酸化炭素抽出システム;二酸化炭素とメタンの混合器、および、燃焼チャンバに設置された二酸化炭素転化のためのチャンバ(ロシア特許第2361809号、2009年7月20日公開、公報No. 20-類似物(アナログ))を有する。この解決策の不利益は、装置の複雑さ、高い熱力学的損失、および、高い金属消費量である。
【0009】
現在、水素ガスおよび酸化物に富んだガスを得るためのメタン転化反応炉が周知である。当該転化反応炉は、カバーを含み、当該カバーは、加圧下で動作し、高温ガスの流れを含む水蒸気を供給する装置、および、生成物を出力する装置;カバー内壁の炉材、および、その内部に配置される改質触媒の層を有し、高温ガスの流れに含まれる水蒸気を生成するためのジェットノズルも有する。当該ジェットノズルは、ケーシングの上部に接続され、加圧下で動作する。この発明の反応炉の顕著な特徴は、触媒層が上側副層および下側副層からなることである。さらに、触媒の上側副層は、下側副層よりも触媒活性が低い(特許第2119382号、1998年9月27日公開)-類似物(アナログ)。この技術的解決策の不利益は、低パラフィン炭化水素転化の低効率であること、この方法の熱力学的効率が低いこと、資本コストおよび金属消費量が高いこと、および、生成ガスに不純物ガス(窒素、アルゴン)の含有量が高いこと、である。
【0010】
現在、水素ガスおよび酸化物に富んだガスを得るためのメタン転化反応炉が周知である(特許第2571149、2015年12月20日公開)。当該転化反応炉は、加圧下で動作し、水蒸気、メタンおよび酸素含有ガスを供給する装置、および、生成物を出力する装置;ケーシングの内壁の炉材、および、その内部に配置されるメタン転化触媒の層を含む原型(プロトタイプ)である。当該層は上側副層と下側副層とからなる。触媒副層の間には、二酸化炭素の活性ガスを供給する装置が存在する。
【0011】
この装置により、合成プロセスの酸化炭素の含有量を増加させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
請求される発明の技術的結果は、低パラフィン炭化水素転化の効率の向上、および、メタン転化反応炉の熱力学的効率の向上、そして生成ガスのH2/CO比の上昇である。
【0013】
装置に関する技術的結果は、水素含有ガスを得るための装置を使用することで達成され、当該装置は、酸化チャンバを備える反応炉の上側ケーシング、および、混合チャンバを備える反応炉の下側ケーシングであって、両ケーシングは連通チャンバを通じて連通して内壁を裏張りで覆われたもの;同軸混合器および同軸混合器の管状環を形成する中心筒;同軸混合器の中心筒に供給される蒸気-メタン混合ガス供給用ダクト;中心筒に供給される蒸気-空気混合ガス供給用ダクト;上側ケーシングの内部空間へ入る、中心筒の下縁に配置される点火装置への点火供給装置;生成ガスの出口に接続される下側ケーシングの下方部分内の出口パイプ、を含む。各反応炉のケーシングは、後続の保護用球体;触媒副層;支持グリッド上の支持球体を介して置かれる耐火煉瓦アーチ、を備える。さらに、触媒は、触媒がこぼれるのを防ぎ、ガスがアーチを通過する際の抵抗を減少させる鋼玉石の球体で覆われたガス噴出口を備える耐火煉瓦アーチの上に載っている。
【0014】
方法に関する技術的結果は、反応炉の上側ケーシングに配置された同軸混合器の管状環への蒸気-メタン混合ガスの供給;中心筒への蒸気-空気混合ガスの供給、および、触媒の上側副層の上方でメタン燃焼反応が起きるようにするための、反応炉の上側ケーシングのメタン酸化チャンバへの発火剤の供給、に存する水素含有ガスを得るための方法により達成される。さらに、この反応の結果、化学物質の流れが追加のメタンとの混合のために供給される。混合は、反応炉の上側ケーシングと下側ケーシングとの間の自由空間で起こる。さらに、触媒の下側副層の上流のメタンの含有量が、水蒸気の体積含有量の0.1~0.25の範囲内である場合に、メタンが供給される。化学物質とメタンの混合流は、反応炉の下側ケーシングでのメタン転化のために触媒の下側副層に供給され、化学物質の流れの中でのガス混合物の顕熱により、さらなるメタン転化反応が起こる。生成されたガスは出口パイプを通じて排出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、1-蒸気-メタン混合ガス供給用ダクト;2-反応炉の上側ケーシング;3-裏張り;4-混合器ケーシング;5-同軸混合器の管状環;6-蒸気-空気混合ガス供給用ダクト;7-中心筒;8-点火供給装置;9-メタン酸化チャンバ;10,20-保護用球体;11,21-触媒副層;12,22-耐火煉瓦アーチ;13,23-支持球体;14,24-支持グリッド;15-化学物質の流れ;16-連通チャンバ;17-メタン供給用ダクト;18-反応炉の下側ケーシング;19-混合チャンバ;25-出口パイプ;26-生成ガスの出口(流出)、である。
【0017】
本発明の実施形態の例は、以下に述べる水素含有ガスを得るための装置である。ここで述べる本発明の実施形態の例では、空気が酸素含有ガスとして使用される。これにより、天然ガスおよび付随ガスを処理するシステムに関する発明の実施形態の特徴を特徴づけ、要求される組成の生成ガスを得ることができる。
【0018】
水素含有ガスを得るための装置は、反応炉の上側ケーシング2;反応炉ケーシング2の内壁の裏張り3;混合ケーシングを備える同軸混合器4;同軸混合器の管状環5に供給される蒸気-メタン混合ガス供給用ダクト1;中心筒7に供給される蒸気-空気混合ガス供給用ダクト6;中心筒7の下縁に配置される点火装置(図示せず)への点火供給装置8、を含む。中心筒はメタン酸化チャンバ9へ入り、当該酸化チャンバの下段には保護用球体10が形成される。当該球体は、触媒の上側層11が過熱することから保護する。触媒の上側層11の下には、耐火煉瓦アーチ12および支持球体13の層が、支持グリッド14上に置かれて配置される。化学物質の流れ15は、グリッドを通ってメタン供給用ダクト17に入る。当該ダクトは、連通チャンバ16を介して反応炉の上側ケーシングと連通する混合チャンバ19と一緒に反応炉の下側ケーシング18内に配置される。反応炉の下側ケーシングは、保護用球体20の層;触媒の下側副層21を含み、その下には、耐火煉瓦アーチ22および支持球体23の層が支持グリッド24上に置かれて配置される。当該グリッドは、生成ガスの出口26に接続される出口パイプ25の上方に配置される。
【0019】
メタン入口は、反応炉の下側ケーシング18の外壁上のニップルに接続された固い底を有する穴の開いた円筒形状とすることができる。メタン供給用ダクト17は、加熱される側面に沿って熱交換器(図示せず)に接続されることができる。生成ガスの出口26は、加熱する側面に沿って熱交換器(図示せず)に接続されることができる。
メタン転化のための触媒の下側副層11、および、触媒の上側副層21は、耐熱煉瓦アーチ12,22と、上側および下側支持グリッド14,24上に対応して配置された鋼玉石の支持球体13,23上に載っている。グリッドは、耐火裏張り3の突出部(lug)(図示せず)上の反応炉の上側ケーシング2および下側ケーシング18内に設置される。耐火裏張りの材料の主構成要素は、0.2%以下の含有量のFe2O3を含む酸化アルミニウムである。支持球体13,23および保護用球体10,20もまた酸化アルミニウムで作ることができる。
【0020】
メタン流入は、触媒の下側副層21の上流のメタン含有量を、水蒸気の体積含有量の0.1~0.25の範囲内に維持させる方法で実行されることができる。
【0021】
水素含有ガスを得るための装置は、以下のように動作する。
【0022】
上述の本発明の実施形態の例では、天然ガス-メタンが低パラフィン炭化水素として使用され、これにより、天然ガスおよび付随ガスのメタン-水素混合ガスへの処理に関する発明の実施形態の特徴を特徴づけることができる。
【0023】
1.0 MPaの圧力の天然ガスの流れは、(硫黄化合物が天然ガスに不純物として含まれていれば)硫黄の質量濃度が0.5 mg/nm3より低い硫黄として表される脱硫、熱交換器での加熱、および、加熱水蒸気との混合、を受ける。その後、蒸気-メタン混合供給用ダクト1を通って、流れが反応器の上側ケーシング2に設置された混合ケーシングを備える同軸混合器4に供給され、かつ同軸混合器の管状環5に供給される。1.0 MPaの圧力の圧縮空気が400℃まで加熱され、過熱水蒸気と混合されて、その後、蒸気-空気混合ガス供給用ダクト6を通って中心筒7に供給される。触媒の上側副層11の上方の自由空間内のパイプの下方部分において、水蒸気存在下でのメタンと空気との燃焼反応が、中心筒7の下縁に配置された点火装置(図示せず)への点火供給装置8を使用して起こる。この反応の結果、触媒11での断熱メタン転化の反応を起こすのに必要な熱が得らえる。化学物質の流れ15が、さらなる量のメタンとの混合のために、触媒の上側副層11から混合チャンバ19に供給される。混合は、反応炉の上側ケーシング2と下側ケーシング18との間の自由空間で起こる。メタンが熱交換器(図示せず)で400℃まで加熱されると、メタンが供給される。
【0024】
触媒の下側副層21の上流のメタンの含有量が水蒸気の体積含有量の0.1~0.25の範囲内にある場合に、メタンが供給される。蒸気/ガスの比が0.25を超えると、プロセス効率が減少し、資本コストが増加する。これは、以下で特定される流れの加熱温度での低い転化度合いによりガスの再循環流を増やす必要性があるためか、あるいは触媒の上側副層11の上流の加熱温度を、1000~1200℃を上回る温度に増加させる必要があるためのどちらかであり、これらによって、より高価な反応炉のための材料を使用することを強いられるだろう。メタン/水蒸気の比を0.1未満に減少させることでも、過剰な水蒸気を生成する必要があるためにプロセス効率が低下してしまうだろう。
【0025】
化学物質とメタンの混合流は、ニッケル触媒で満たされた断熱反応炉のメタン転化触媒の下側副層21に供給され、化学物質の流れのガス混合物の顕熱によるメタン転化のさらなる反応を対象としている。生成ガスの出口26は、加熱された生成ガスが、メタンと圧縮ガスの入口流の熱により、また過熱水蒸気を得ることにより、冷えるようにして、加熱する側面に沿って熱交換器(図示せず)に接続される。冷却後、メタン-水素混合ガスを含む生成ガスが、燃料または反応混合物として使用するために供給される。顧客に供給する前に、二酸化炭素が生成ガスから除去されてもよい。二酸化炭素は、市場製品として使用するか、またはパリ協定に従って埋められる。後者では、温室効果ガス排出がない。
【0026】
メタン転化触媒として、次のものを使用することができる:コージライト、ムライト、酸化クロム、チタン酸アルミニウム、スピネル、二酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウム等の耐火性酸化物に適用される、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよびイリジウムを含む鋼玉石のラシヒリングまたは球体の顆粒層。
【0027】
断熱反応炉の触媒の下側副層21内の温度は、プロセス効率を向上するため約500℃~700℃の範囲内に維持される。触媒の下側副層21の先頭には、活性成分として以下のものから選択される金属が含まれる:ロジウム、ニッケル、白金、イリジウム、パラジウム、鉄、コバルト、レニウム、ルテニウム、銅、亜鉛、これらの混合物または化合物。ジョンソン・マッセイ社のKATALCO 25-4Q、および、KATALCO 57-4Q触媒を使用することができる。触媒NIAP-03-01もまた効果的である。可変内容物のプラチノイドの触媒組成、および、水蒸気による酸化炭素酸化(転化反応)の反応速度論に影響を与える金属の触媒組成もまた、最終生成物の水素含有量を制御することを可能にする。
【0028】
流れの圧力は0.1~9.0 MPaの範囲内で選択され、この範囲であれば装置の大きさを小さくし、圧縮に関連するガスダイナミック損失および消費を低減することができる。
【0029】
表1は断熱反応炉内のプロセスの計算を示す。
【0030】
【0031】
このように、提案される発明は新規の装置であり、低パラフィン炭化水素転化の効率、および、メタン転化反応炉の熱力学的効率を向上し、資本コストおよび金属消費量を減少させ、不純物ガス(窒素、アルゴン)の含有量を減少させ、生成ガスのH2/CO比を大きくすることができる。
【0032】
生成された製品-水素含有ガスおよびその誘導体(水素、メタン-水素混合物)は、その後、ガスおよびガス化学工業、ならびに炭化水素処理のための冶金で使用することができ、エネルギー蓄積および伝送システムでも使用することができ、輸送よび固定発電所のための燃料として使用することができる。