(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収納装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1213 20160101AFI20221007BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221007BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20221007BHJP
H01M 8/126 20160101ALI20221007BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20221007BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/12 102C
H01M8/126
H01M8/2475
(21)【出願番号】P 2020525720
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2019023878
(87)【国際公開番号】W WO2019240297
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018114715
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018114716
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】兒井 真
(72)【発明者】
【氏名】原 章洋
(72)【発明者】
【氏名】東 昌彦
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117663(JP,A)
【文献】特許第6290471(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/12
H01M 8/04
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、
該第1電極層上に位置し、Zrを含有する固体電解質層と、
該固体電解質層上に位置し、Ce以外の希土類元素を含むCeO
2を含有する中間層と、
該中間層上に位置する第2電極層と、を備え、
前記固体電解質層と前記中間層との界面領域に、前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を有し、
前記界面領域は、前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を基点とし、該基点から前記固体電解質層側の3μmまでの範囲であり、
平面視において、前記界面領域の前記中間層の
外周部と重なる部位を第1界面領域とし、前記中間層の
中央部と重なる部位を第2界面領域としたとき、
前記第2界面領域のCe含有量が、前記第1界面領域のCe含有量より少ない、セル。
【請求項2】
前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を基点とし、該基点から前記固体電解質層側の3μmまでの範囲における前記Ceの平均モル濃度が、前記Ceと前記Zrと前記希土類元素との合計に対して10モル%以下である、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を基点とし、該基点から前記固体電解質層側の3μmまでの範囲における前記Zrの平均モル濃度が、前記Ceと前記Zrと前記希土類元素との合計に対して70モル%以上である、請求項1又は2に記載のセル。
【請求項4】
前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を基点とし、該基点から前記固体電解質層側の3μmまでの範囲における前記Zrに対する前記Ceのモル濃度比が、0.143以下である、請求項1~3のいずれかに記載のセル。
【請求項5】
前記中間層は、外周部に位置する第1中間層と、該第1中間層の内側に位置する第2中間層とを有する、請求項1~
4のいずれかに記載のセル。
【請求項6】
平面視において、前記第2中間層の一部が、前記第1中間層と重なる、請求項
5に記載のセル。
【請求項7】
請求項1乃至
6のうちいずれかに記載のセルを複数備え、該複数のセルを電気的に接続してなるセルスタックを備える、セルスタック装置。
【請求項8】
収納容器と、該収納容器内に収納された請求項
7に記載のセルスタック装置と、を備える、モジュール。
【請求項9】
外装ケースと、該外装ケース内に収納された請求項
8に記載のモジュール及び該モジュールを作動させるための補機と、を備える、モジュール収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの1種である燃料電池セルがマニホールドに複数配列されてなるセルスタック装置が提案されている。
【0003】
このような燃料電池セルとしては、導電性支持体上に、Niと希土類元素が固溶したZrO2を含有してなる燃料極層、希土類元素が固溶したZrO2を含有してなる固体電解質層、Srを含有するペロブスカイト型複合酸化物からなる空気極層とがこの順に設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1、2には、固体電解質層と空気極層との間に、Ce以外の希土類元素が固溶したCeO2からなる中間層を設けた燃料電池セルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-226653号公報
【文献】特開2008-226654号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示のセルは、第1電極層と、該第1電極層上に設けられたZrを含有する固体電解質層と、該固体電解質層上に設けられたCe以外の希土類元素を含むCeO2を含有する中間層と、該中間層上に設けられた第2電極層と、を備え、前記固体電解質層と前記中間層との界面領域に、前記Ceと前記Zrとが同じモル濃度となる点を有する。
【0007】
本開示のセルスタック装置は、上記のセルを複数備え、該複数のセルを電気的に接続してなるセルスタックを備える。
【0008】
本開示のモジュールは、収納容器と、該収納容器内に収納された上記のセルスタック装置を備える。
【0009】
本開示のモジュール収納装置は、外装ケースと、該外装ケース内に収納された上記のモジュールと、該モジュールの運転を行なうための補機とを収納してなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】セルの中間層及び固体電解質層を、エネルギー分散型X線分光により定量分析した結果の例の1つを示したグラフである。
【
図4】モジュールの例の1つを示す外観斜視図である。
【
図5】モジュール収納装置の例の1つを、一部の構成を省略して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(セル)
セルスタックを構成するセルの例の1つとして、固体酸化物形の燃料電池セルについて説明する。
【0012】
図1Aは、セルの例の1つを示す横断面図である。
図1Bは
図1Aの下面図であり、セル1の空気極層等の一部の構成を省略して示している。なお、これらの図面では、セル1の各構成の一部を拡大して示している。
【0013】
図1Aに示すセル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側方から見た形状は、例えば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向に直交する幅方向Wの長さが1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚さは1mm~5mmである。以下、セル1の厚み方向をTという場合がある。
【0014】
図1Aに示すように、セル1は、一対の対向する平坦面n1、n2を持つ中空平板状等の柱状の支持体2と、支持体2の平坦面n1上に配置された素子部aとを有している。素子部aは、燃料極層3、固体電解質層4及び空気極層5を有している。以下、第1電極層を燃料極層3、第2電極層を空気極層5として説明する。セル1の平坦面n2上にはインターコネクタ6が設けられている。
【0015】
さらに、セル1は、固体電解質層4と空気極層5との間に、中間層7を備えている。
【0016】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0017】
支持体2は、内部にガスが流れるガス流路2aを有している。ガス流路2aは、支持体2の長手方向に沿って設けられている。
図1Aに示すセル1は、6つのガス流路2aを有している。
【0018】
支持体2は、ガス透過性を有し、燃料ガスを燃料極層3まで透過する。さらに支持体2は、導電性を有し、インターコネクタ6を介して集電する。
【0019】
支持体2は、例えば、鉄族金属成分と無機酸化物とを含んでもよい。例えば、鉄族金属成分はNi及び/又はNiOであってもよい。無機酸化物は特定の希土類酸化物であってもよい。特定の希土類酸化物は、例えば、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物であってもよい。希土類酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができる。このような希土類酸化物を含む支持体2は、固体電解質層4の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する。また、支持体2の鉄族金属成分と無機酸化物との体積比は、例えばNi及び/又はNiO:希土類酸化物=35:65~65:35であってもよい。鉄族金属成分と無機酸化物との体積比をこのような範囲とすることで、支持体2の良好な導電率を維持し、かつ支持体2の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨脹係数により近づけることができる。
【0020】
また、
図1Aに示したセル1において、柱状すなわち中空平板状の支持体2は、立設方向に細長く延びる板状体であり、一対の対向する平坦面n1、n2と、平坦面n1及びn2を接続する一対の半円形状の側面mとを有する。
【0021】
支持体2は、ガス透過性を備えるために、30%以上、特に35~50%の範囲の開気孔率を有してもよい。支持体2は、300S/cm以上、特に440S/cm以上の導電率を有してもよい。
【0022】
燃料極層3は、多孔質の導電性セラミックスなど、一般的に公知のものを使用してもよい。多孔質の導電性セラミックスは、例えば希土類元素酸化物が固溶しているZrO2とNi及び/又はNiOを用いてもよい。希土類酸化物は、例えばY2O3等であってもよい。以下、希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合がある。安定化ジルコニアは、部分安定化も含む。
【0023】
固体電解質層4は、燃料極層3と空気極層5との間でイオンの橋渡しをする電解質である。固体電解質層4は、ガス遮断性も有しており、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じ難くする。固体電解質層4は、例えば3~15モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2であってもよい。希土類酸化物は、例えばY2O3等であってもよい。固体電解質層4の材料は、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いてもよい。
【0024】
空気極層5は、一般的に用いられるものであれば特に制限はない。空気極層5は、例えば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物の導電性セラミックスであってもよい。ABO3型のペロブスカイト型酸化物は、例えば、AサイトにSrとLaが共存する複合酸化物であってもよい。AサイトにSrとLaが共存する複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3等が挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。空気極層5はガス透過性を有している。空気極層5の開気孔率は、例えば20%以上、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0025】
インターコネクタ6は、例えばランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、もしくは、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物((La,Sr)TiO3系酸化物)を材料として用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガス等の燃料ガス及び空気等の酸素含有ガスと接触しても、分解されない。
【0026】
インターコネクタ6は、緻密質であり、支持体2に形成されたガス流路2aを流通する燃料ガス、及び支持体2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じ難くしている。インターコネクタ6は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0027】
セル1は、インターコネクタ6と支持体2との間に、燃料極層3と類似する組成の密着層を有していてもよい。密着層は、インターコネクタ6と支持体2との間の熱膨張係数の差を軽減する。
【0028】
中間層7は、Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体であってもよい。CeO2系焼結体は、例えば、組成式(CeO2)1-x(REO1.5)xで表される組成を有していてもよい。組成式中、REはSm、Y、Yb及びGdのうち少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数である。
【0029】
固体電解質層4と空気極層5との間において、固体電解質層4の成分と空気極層5の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が生成される場合がある。中間層7は、固体電解質層4の成分と空気極層5の成分とを反応し難くする。中間層7は、例えば、空気極層5中のSrと固体電解質層4中のZrとを反応し難くする。組成式中のREは、Sm及びGdのいずれかでもよい。REがSm及びGdのいずれかであると、固体電解質層4と空気極層5との間の電気抵抗を小さくすることができる。中間層7は、例えば10モル%~20モル%のSmO1.5又はGdO1.5が固溶したCeO2でもよい。
【0030】
固体電解質層4と空気極層5との間に中間層7を設けると、固体電解質層4と空気極層5とが反応し難くなり、電気抵抗の高い反応層が生成され難くなる。しかし、中間層7に含まれるCeO2と、固体電解質層4に含まれるZrO2との反応により電気抵抗の高い成分が生じていた。以下、電気抵抗の高い成分を単に抵抗成分という場合もある。
【0031】
本開示では、セル1の発電効率を高めるため、固体電解質層4と空気極層5との間における電気抵抗だけではなく、中間層7と固体電解質層4との間における電気抵抗の制御を図る。
【0032】
本開示のセル1は、固体電解質層4と中間層7との間の界面領域に、CeとZrとが同じモル濃度となる点を有する。
【0033】
本開示のセル1は、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、その基点から固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が、CeとZrとその他の希土類元素との合計に対して10モル%以下であってもよい。
【0034】
すなわち、本開示のセル1では、界面領域に位置する基点から固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が低く、固体電解質層4側におけるCeとZrとを含む抵抗成分の量が少なくてもよい。それにより、本開示のセル1は、固体電解質層4と中間層7との界面における抵抗値が小さく、高い発電効率を有する。
【0035】
図2は、セル1の中間層7及び固体電解質層4を、エネルギー分散型X線分光(STEM-EDS:Scanning Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)により定量分析した結果を示したグラフである。
【0036】
具体的には、セル1の空気極層5、中間層7及び固体電解質層4を含むようにFIB(Focused Ion Beam)-マイクロサンプリング法を用いて試料を作製し、その試料を用いてSTEM-EDSにより定量分析を行なった結果である。
【0037】
図2に示す例では、固体電解質層4と中間層7との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して10モル%以下である。具体的には、
図2に示す例の当該範囲におけるCeの平均モル濃度は、4モル%である。
【0038】
このようなセル1においては、固体電解質層4側におけるCeの平均モル濃度が低いことから、界面領域の固体電解質層4側におけるCeとZrとを含む抵抗成分の量を低減できる。それにより界面領域の抵抗値が増大し難くなり、発電効率を高めることができる。
【0039】
また、本開示のセル1は、固体電解質層4と中間層7との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、その基点から固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるZrの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して70モル%以上であってもよい。具体的には、
図2に示す例の当該範囲におけるZrの平均モル濃度は、77モル%である。
【0040】
このようなセル1においては、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるZrの平均モル濃度が70モル%以上である。言い換えれば、界面領域に位置する基点から固体電解質層4側3μmまでの範囲において、固体電解質層4から中間層7側へのZrの拡散が少ない。それゆえ、界面領域の中間層7側におけるCeとZrとを含む抵抗成分の量を低減できる。それにより界面領域の抵抗値が増大し難くなり、発電効率を高めることができる。
【0041】
また、本開示のセル1は、固体電解質層4と中間層7との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるZrに対するCeのモル濃度比が、0.143以下であってもよい。具体的には、
図2に示す例の当該範囲におけるZrに対するCeのモル濃度比は、0.052である。
【0042】
このようなセル1においては、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるZrに対するCeのモル濃度比が、0.143以下であることにより、CeとZrとを含む抵抗成分が生成し難くなる。したがって、界面領域の抵抗値が増大し難くなり、発電効率を高めることができる。
【0043】
このような中間層7は、例えば、パルスレーザー蒸着(PLD:Pulesd Laser Deposition)、イオンアシスト蒸着(IAD:Ion Assist Deposition)等の物理・化学蒸着方法等を用いて製膜することができる。
【0044】
中間層7は、例えば、組成式(CeO2)1-x(REO1.5)xで表される組成を有している原料を用いて製膜してもよい。組成式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数である。
【0045】
特には、Gd又はSmが固溶したCeO2を用いてもよい。例えば、(CeO2)1-x(SmO1.5)x又は(CeO2)1-x(GdO1.5)xで表される組成を有するものを用いてもよい。上記の式中、xは0<x≦0.3を満足する数である。またさらには、電気抵抗を低減するという点から、10~20モル%のGdO1.5又はSmO1.5が固溶したCeO2を用いてもよい。
【0046】
具体的には、固体電解質層4上の所定の表面に、上記したような蒸着方法を用いて中間層7を設けて、焼成することで、本開示のセル1における中間層7を設けることができる。なお、中間層7は、その厚みを3~5μmとしてもよい。
【0047】
以上、説明したセル1の製造方法について説明する。
【0048】
まず、Ni等の鉄族金属又はその酸化物粉末と、Y2O3などの希土類元素酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製する。調製した坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、支持体成形体として、支持体成形体を900℃~1000℃にて2時間~6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
【0049】
次に、例えば所定の調合組成に従いNiO、Y2O3が固溶したZrO2の素原料を秤量、混合する。以下、Y2O3が固溶したZrO2をYSZという場合もある。混合した粉体に、さらに有機バインダー及び溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
【0050】
次に、希土類元素が固溶したZrO2粉末に、トルエン、バインダー、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、7~75μmの厚さに成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極層用スラリーを塗布して燃料極層成形体を形成し、この燃料極層成形体側の面を支持体成形体に積層する。なお、燃料極層用スラリーを支持体成形体の所定位置に塗布して乾燥させた後、燃料極層用スラリーを塗布した固体電解質層成形体を支持体成形体に積層しても良よい。
【0051】
次に、例えば、LaCrO3系酸化物粉末等のインターコネクタ用材料、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーをシート状に成形して、インターコネクタ用シートを作製する。作製したインターコネクタ用シートを固体電解質層成形体が形成されていない支持体成形体の露出面に積層し積層成形体を作製する。
【0052】
次に、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1500℃~1600℃にて2時間~6時間、焼成する。
【0053】
次に、Gdを含む膜を上記した蒸着方法を用いて、固体電界質層4の表面に複数層形成して、中間層7となる膜を製膜する。
【0054】
具体的には、真空蒸着中にイオン銃で、数100eV程度のガスイオンを基板に照射し、その運動エネルギーを用いて樹枝状に成長する中間層7を壊し、圧縮することで膜を形成する。ガスイオンは、例えばAr+イオン又はO2-イオンでもよい。
【0055】
なお、中間層7の成形体を1000℃~1400℃の温度で2時間~10時間で焼き付けてもよい。
【0056】
次に、例えば、LaFeO
3系酸化物粉末等の空気極層用材料、溶媒及び増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により中間層7上に塗布する。また、インターコネクタ6の所定の位置に、必要に応じ、例えばLaFeO
3系酸化物粉末等のP型半導体層用材料と、溶媒とを含むスラリーを、ディッピング等により塗布し、1000℃~1300℃で、2時間~6時間焼き付けることにより、
図1Aに示す構造の中空平板型のセル1を製造できる。なお、セル1は、その後、内部に水素ガスを流し、支持体2及び燃料極層3の還元処理を行なう。その際、例えば750℃~1000℃にて5時間~20時間還元処理を行なってもよい。
【0057】
このようにして作製されたセル1は、固体電解質層4と中間層7との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を有し、この点を基点として、固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して10モル%以下となる。
【0058】
図3Aは、セルの他の例の1つを示す横断面図である。
図3Bは
図3Aの下面図であり、空気極層等の一部の構成を省略して示している。
【0059】
図3Aに示す本開示のセル8は、支持体2の長手方向Lにおける一端側と幅方向Wにおける両端側の固体電解質層4上に第1中間層7aを有している。また固体電解質層4と空気極層5との間に位置する第2中間層7bを有している。平面視において、第2中間層7bの一部は、第1中間層7aと重なっていてもよい。なお、本開示において、固体電解質層4と中間層7との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して10モル%以下である領域とは、固体電解質層4と第2中間層7bとの界面領域に位置する。
【0060】
第1中間層7aは、特にセル8において高い強度が必要な部分に位置してもよい。具体的には、第1中間層7aは、素子部aの周囲に位置してもよい。第1中間層7aは、例えば
図3Bに示したように、セル8の幅方向Wにおける両端部に、セル8の長手方向Lに沿って延びるように位置していてもよい。第1中間層7aは、
図3Bにおいてセル8の長手方向Lにおける上端部及び下端部の少なくともいずれかに位置してもよい。なお
図3Bには、第1中間層7aを、セル8の幅方向Wの両端部と、セル8の上端部とに設けた例を示している。言い換えれば、
図3Bには、第1中間層7aをU字状に設けた例を示している。第1中間層7aをセル8の下端部にも配置する場合は、例えば第1中間層7aを四辺形状としてもよい。
【0061】
第2中間層7bは、特にセル1の発電に影響が大きい部位に位置してもよい。すなわち、第2中間層7bは、固体電解質層4と空気極層5とが重なっている部位に位置してもよい。言い換えれば、第2中間層7bは、平面視において、第1中間層7aの内側に位置してもよい。それにより、固体電解質層4と空気極層5との間における電気抵抗を小さくすることができる。
【0062】
ここで、平面視において、中間層7の外周部すなわち第1中間層7aと重なる界面領域の部位を第1界面領域とし、中間層7の中央部すなわち第2中間層7bと重なる界面領域を第2界面領域とする。第1界面領域の少なくとも一部は、第2界面領域とはCe含有量が異なっていてもよい。ここで、界面領域のCe含有量は、界面領域のCeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、その基点から固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度であってもよい。以下、界面領域のCeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、その基点から固体電解質層4側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度を、単に界面領域のCe含有量という場合もある。
【0063】
第2界面領域のCe含有量は、第1界面領域のCe含有量より少なくてもよい。言い換えれば、固体電解質層4において、第2中間層7b近傍のCe含有量が、第1中間層7a近傍のCe含有量よりも少なくてもよい。
【0064】
第2界面領域のCe含有量が第1界面領域のCe含有量より少ないと、発電に影響の大きい第2界面領域、すなわち固体電解質層4の第2中間層7b近傍において、CeO2とZrO2とが反応して電気抵抗の高い成分が生じ難くなる。その結果、第2界面領域の電気抵抗が小さくなり、発電効率が高くなる。
【0065】
また、第1界面領域のCe含有量が、第2界面領域のCe含有量よりも多いと、固体電解質層4と第1中間層7aとの接合強度および当該部位におけるセル1の強度を高めることができる。
【0066】
第1界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度は、CeとZrと希土類元素との合計に対して10モル%より多くてもよい。
【0067】
それにより、固体電解質層4と第1中間層7aとの接合強度および当該部位におけるセル1の強度を高めることができる。
【0068】
例えば、固体電解質層4上の該当部分に異なる濃度のCeO2を塗布することにより、第1界面領域のCe含有量と、第2界面領域のCe含有量とを異ならせることができる。また、第1中間層7aの固体電解質層4へのCeO2の拡散量と、第2中間層7bの固体電解質層4へのCeO2の拡散量とが異ならせるようにしてもよい。
【0069】
第1中間層7aの固体電解質層4へのCeO2の拡散量と、第2中間層7bの固体電解質層4へのCeO2の拡散量とを異ならせるには、例えば、第1中間層7aを以下の方法で作製してもよい。第2中間層7bは、上述の方法で作製すればよい。
【0070】
第1中間層7aは、原料粉末に溶剤等を添加してスラリーを作製し、該スラリーを印刷塗布する印刷法又は転写法を用いて製造してもよい。例えば、第1中間層7aは、固体電解質層4の表面に第1中間層7aとなるスラリーを塗布し、固体電解質層4と第1中間層7aとを同時焼成することで作製してもよい。
【0071】
第2中間層7bは、固体電解質層4の第1中間層7aが設けられていない表面に、例えば上記したような蒸着方法を用いて蒸着膜として形成されてもよく、さらに形成された蒸着膜を焼成してもよい。
【0072】
なお、第2中間層7bの一部、例えば外周部は、第1中間層7aの一部、例えば内周部と重なっていてもよい。それにより、第1中間層7aと第2中間層7bとの間に隙間が形成され難くなる。第1中間層7aの第2中間層7bと重なる部位は、固体電解質層4と第2中間層7bとの間に位置してもよい。固体電解質層4との接合強度を高くできる第1中間層7aの一部が、固体電解質4と第2中間層7bとの間に位置することで、第2中間層7bが剥離し難くなる。
【0073】
なお、第1中間層7aの厚みは、0.1μm~3.0μmであってもよい。第2中間層7bの厚みは、3μm~5μmであってもよい。
【0074】
なお、
図1A及び
図1Bに示す中間層7、及び
図3A及び
図3Bに示す第2中間層7bは、複数の層を有してもよい。この場合、中間層7及び第2中間層7bの固体電解質層4に最も近い層は、上記の蒸着方法で形成され、他の層は、原料粉末に溶剤等を添加して作製したスラリーを用いて塗布し、空気極層と同時に焼成することで形成されてもよい。なお、この場合も、中間層7及び第2中間層7bの厚みは、3μm~5μmであってもよい。
【0075】
(セルスタック装置およびモジュール)
図4は、モジュール11の例の1つを示す外観斜視図である。モジュール11は、収納容器12と収納容器内に収納されたセルスタック装置15を備えている。セルスタック装置15は、本開示のセル1の複数個を図示しない集電部材を介して電気的に直列に接続したセルスタック13を備えている。
【0076】
モジュール11は、セル1にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガス、灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器16を、セルスタック13の上方に備えていてもよい。改質器16で生成された燃料ガスは、ガス流通管17を通じてマニホールド14に供給され、さらにマニホールド14を通じて、セル1の内部に設けられた燃料ガス流路5に供給される。
【0077】
このようなセルスタック装置15は、発電効率の高いセル1の複数個を電気的に直列に接続したセルスタック13を備えることから、高い発電効率を有する。
【0078】
なお、
図4は、収納容器12の一部である前壁及び後壁を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置15及び改質器16を後方に取り出した状態のモジュール11を示している。
図4に示したモジュール11においては、セルスタック装置15を、収納容器12内にスライドして収納することが可能である。なお、セルスタック装置15は、改質器16を含むものとしてもよい。
【0079】
収納容器12は、内部に酸素含有ガス導入部材18を備えていてもよい。酸素含有ガス導入部材18は、
図4においては、マニホールド14に並置されたセルスタック13の間に配置されている。酸素含有ガス導入部材18は、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、セル1の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、セル1の下端部に酸素含有ガスを供給する。セル1の燃料ガス流路5より排出された燃料ガスと、酸素含有ガスとをセル1の上端部側で燃焼させることにより、セル1の温度を上昇させることができ、セルスタック装置15の起動を早めることができる。また、セル1の上端部側にて、セル1の燃料ガス流路5から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、セル1(セルスタック13)の上方に配置された改質器16を温めることができる。それにより、改質器16で効率よく改質反応を行うことができる。
【0080】
本開示のモジュール11は、発電効率の高いセル1を含むことから、高い発電効率を有する。
【0081】
(モジュール収納装置)
図5は、モジュール収納装置19の例の1つとして、燃料電池装置の例を示す分解斜視図である。モジュール収納装置19は、外装ケースと、外装ケース内に収納された
図4で示したモジュール11及びセルスタック装置15の運転を行うための図示しない補機を備えている。なお、
図5においては一部の構成を省略して示している。
【0082】
図5に示すモジュール収納装置19の外装ケースは、支柱20と外装板21とを有する。仕切板22は、外装ケース内を上下に区画している。外装ケース内の仕切板22より上側の空間は、モジュール11を収納するモジュール収納室23であり、外装ケース内の仕切板22より下側の空間は、モジュール11を運転する補機類を収納する補機収納室24である。なお、補機収納室24に収納する補機類の記載は省略した。補機類は、例えばモジュール11に水を供給するための水供給装置、燃料ガスまたは空気を供給するための供給装置等を含む。
【0083】
仕切板22は、補機収納室24の空気をモジュール収納室23側に流すための空気流通口25を有している。モジュール収納室23を構成する外装板21の一部は、モジュール収納室23内の空気を排気するための排気口26を有している。
【0084】
このようなモジュール収納装置19は、上述したように、発電効率の高いモジュール11をモジュール収納室23に備えているため、高い発電効率を有している。
【0085】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されない。本開示のセル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収納装置は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0086】
例えば、上記において、本開示のセル1として支持体2を有する中空平板型の燃料電池セルを用いて説明したが、円筒型のセルとしてもよい。また、例えば、上記形態ではいわゆる縦縞型と呼ばれるセルを用いて説明したが、一般に横縞型と呼ばれる複数の発電素子部を支持基板上に設けてなる横縞型のセルを用いることもできる。また、上記の説明では、「セル」、「セルスタック装置」、「モジュール」及び「モジュール収納装置」の例の1つとして燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュール及び燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュール及び電解装置であってもよい。
【実施例】
【0087】
まず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径2.0μmのY2O3粉末を混合し、有機バインダーと溶媒を添加して坏土を作製した。作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性の支持体成形体を作製した。還元処理後の支持体成形体は、48体積%のNiO、及び52体積%のY2O3を含んでいた。
【0088】
次に、8mol%のY2O3が固溶したZrO2粉末に、バインダー粉末と溶媒とを混合して作製したスラリーを用いて、ドクターブレード法にて固体電解質層用シートを作製した。ZrO2粉末のマイクロトラック法による粒径は0.8μmであった。
【0089】
次に、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、Y2O3が固溶したZrO2粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して燃料極層用スラリーを作製した。固体電解質層用シート上にスクリーン印刷法にて燃料極層用スラリーを塗布し、乾燥して、燃料極層成形体を形成し、第1積層成形体とした。
【0090】
固体電解質層用シート上に燃料極層成形体を形成したシート状の第1積層成形体を、燃料極層成形体側の面を内側にして支持体成形体の所定位置に積層し、第2積層成形体とした。得られた第2積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理して、仮焼体を作製した。
【0091】
続いて、平均粒径0.7μmのLa(Mg0.3Cr0.7)0.96O3と、有機バインダーと溶媒とを混合したインターコネクタ層用スラリーを作製した。作製したインターコネクタ層用スラリーを、支持体の燃料極層及び固体電解質層が形成されていない部位、すなわち支持体が露出した部位の、固体電解質の仮焼体の両端部を除いた中央部に塗布し、第3積層成形体とした。
【0092】
この第3積層成形体を、大気中1500℃にて3時間焼成し、積層仮焼体を得た。
【0093】
次に、中間層となるGdを含む膜を、上記した蒸着方法であるIAD法を用いて、積層仮焼体の固体電界質層の表面に複数層形成して製膜した。具体的には、真空蒸着中にイオン銃で、数100eV程度のAr+イオン、O2-イオンのガスイオンを基板に照射し、その運動エネルギーを用いて樹枝状に成長する膜を壊して圧縮することで、中間層を形成した。
【0094】
次に、空気極層となる空気極層用材料であるLaFeO3系酸化物粉末と、溶媒及び増孔剤とを含有するスラリーを、ディッピング等により中間層上に塗布した。さらに、空気極層の反対側のインターコネクタの表面にP型半導体層となる材料であるLaFeO3系酸化物粉末と、溶媒とを含むスラリーをディッピングにより塗布し、1200℃にて4時間焼成することにより、セルを作製した。
【0095】
なお、中間層の蒸着条件を適宜調整することで、界面領域における各種元素のモル濃度が異なる複数のセルを作製した。
【0096】
(比較例)
比較例1として、中間層を他の方法で作製したセルを用意した。
【0097】
具体的には、上記実施例と同じ方法でインターコネクタ層となる成形体を形成した積層仮焼体又は第3積層成形体に、下記の方法で中間層を形成した。
【0098】
まず、CeO2を85モル%、GdO1.5を15モル%含む複合酸化物を、イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として用いて振動ミル又はボールミルにて解砕した。得られた解砕粉末を、900℃にて4時間仮焼した。仮焼した粉末を再度ボールミルにて解砕処理し、凝集度を調整して、中間層成形体用の原料粉末を得た。
【0099】
続いて、中間層成形体用の原料粉末にアクリル系バインダーとトルエンとを添加し、混合して中間層用スラリーを作製した。作製した中間層用スラリーを、積層仮焼体の固体電解質層仮焼体又は第3積層成形体の固体電解質層成形体上に、スクリーン印刷法にて塗布し、中間層成形体を作製した。次に、この中間層成形体を、積層仮焼体又は第3積層成形体とともに大気中1500℃にて3時間焼成した。
【0100】
続いて、上述の実施例と同じ方法で中間層上に空気極層を設け、比較例のセルを作製した。
【0101】
(評価方法)
得られたセルを用いて、発電試験を行い、実抵抗を測定した。実抵抗は交流インピーダンス解析にて測定した。
【0102】
また、得られたセルについて、空気極層、中間層及び固体電解質層を含むようにFIB(Focused Ion Beam)-マイクロサンプリング法を用いて試料を作製した。STEM-EDS定量分析により、作製した試料のCe、Zr及び希土類元素のそれぞれの含有量を測定し、固体電解質層と中間層との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度、Zrの平均モル濃度、Zrに対するCeのモル濃度比を算出し、表1~表3に示した。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
表1に示した結果より、固体電解質層と中間層との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるCeの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して10モル%以下である試料No.1~4においては、実抵抗が16.39mΩ以下であった。Ceの平均モル濃度が10モル%より多い試料No.5,6においては、実抵抗が18.45mΩ、23.89mΩと高い値を示した。この結果より、試料No.1~4は、高い発電効率を有することが確認できた。
【0107】
また、表2に示した結果より、固体電解質層と中間層との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるZrの平均モル濃度が、CeとZrと希土類元素との合計に対して70モル%以上である試料No.7~10においては、実抵抗が16.39mΩ以下であった。Zrの平均モル濃度が70モル%未満である試料No.11,12においては、実抵抗が18.45mΩ、23.89mΩと高い値を示した。この結果より、試料No.7~10は、高い発電効率を有することが確認できた。
【0108】
さらに、表3に示した結果より、固体電解質層と中間層との界面領域において、CeとZrとが同じモル濃度となる点を基点として、固体電解質層側の3μmまでの範囲におけるZrに対するCeのモル濃度比が、0.143以下である試料No.13~16においては、実抵抗が16.39mΩ以下であった。Zrに対するCeのモル濃度比が0.143より高い値を示した試料No.17,18においては、実抵抗が18.45mΩ、23.89mΩと高い値を示した。この結果より、試料No.13~16は、高い発電効率を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0109】
1、8:セル
2:支持体
3:燃料極層、第1電極層
4:固体電解質層
5:空気極層、第2電極層
6:インターコネクタ
7:中間層
11:モジュール
15:セルスタック装置
19:モジュール収納装置