(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】キャピラリー及びピペット
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20221007BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20221007BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20221007BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20221007BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20221007BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
B01L3/02 C
B01F23/40
B01F25/40
G01N35/10 K
G01N1/00 101K
G01N1/38
(21)【出願番号】P 2020541218
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034510
(87)【国際公開番号】W WO2020050234
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018164441
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】東別府 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮里 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲也
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-184949(JP,A)
【文献】特開2019-171329(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181023(WO,A1)
【文献】特開2016-47531(JP,A)
【文献】特開平03-131351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
G01N35/10
B01F 3/08
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーであって、
第1孔と、
前記第1孔の前記第2端側に繋がっており、その内面の撥水性が前記第1孔の内面の撥水性とは異なる第2孔と、を有している
とともに、
前記第1孔を有している中空状の第1部材と、
前記第2孔を有している中空状であり、前記第1部材と固定されている第2部材と、を有しており、
前記第1孔と前記第2孔との境界において、前記第1孔の内径が前記第2孔の内径よりも大きく、
前記第1部材は、
前記第1孔と、
前記第1孔から前記第1端とは反対側に延びており、前記第1孔よりも内径が大きい第3孔と、
前記第1孔の内径が前記第3孔の内径よりも小さいことによる段差部と、を有しており、
前記第2部材は、前記第3孔に挿入されて前記段差部に係止されている
キャピラリー。
【請求項2】
前記第1孔の内面の撥水性は、前記第2孔の内面の撥水性よりも高い
請求項1に記載のキャピラリー。
【請求項3】
前記第1孔は、前記第2孔側ほど内径が大きい
請求項1
又は2に記載のキャピラリー。
【請求項4】
前記第2部材は、前記段差部側に先端面を有しており、
前記段差部の前記先端面側の面は、前記キャピラリーの径方向の内側ほど前記先端面側に位置するように傾斜しており、前記段差部の、前記径方向の内側の角部が前記先端面に当接している
請求項
1~3のいずれか1項に記載のキャピラリー。
【請求項5】
前記第1部材は、樹脂からなり、
前記第2部材は、ガラスからなり、又は表面の少なくとも一部を除いてガラスからなる
請求項
1~4のいずれか1項に記載のキャピラリー。
【請求項6】
前記第1端の端面を第1端面とすると、
該第1端面は円形状の開口を有する環状であり、
前記第1端面の外径は0.4mm以下である
請求項1~
5のいずれか1項に記載のキャピラリー。
【請求項7】
前記第1端面の内径は0.06mm以上である
請求項
6に記載のキャピラリー。
【請求項8】
長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口しているキャピラリーであって、
第1孔と、
前記第1孔の前記第2端側に繋がっており、その内面の撥水性が前記第1孔の内面の撥水性とは異なる第2孔と、を有しているキャピラリーと、
前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、
前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を有しており、
前記キャピラリーは、前記第1端側に位置する第1管部と、前記第2端側に位置する第2管部と、を有しており、
前記第1管部は、長さ方向に貫通する前記第1孔を有しており、
前記第2管部は、長さ方向に貫通する前記第2孔を有しており、
前記制御部は、前記圧力室の容積が増減を繰り返し、これにより前記キャピラリー内の液体の少なくとも一部が前記第1孔と前記第2孔との境界を繰り返し超えて往復するように前記駆動部を制御する
ピペット。
【請求項9】
前記キャピラリーは、前記第1孔を有している中空状の第1部材と、
前記第2孔を有している中空状であり、前記第1部材と固定されている第2部材と、を有しており、
前記第1部材は、
前記第1孔と、
前記第1孔から前記第1端とは反対側に延びており、前記第1孔よりも内径が大きい第3孔と、
前記第1孔の内径が前記第3孔の内径よりも小さいことによる段差部と、を有しており、
前記第2部材は、前記第3孔に挿入されて前記段差部に係止されている
請求項8に記載のピペット。
【請求項10】
前記キャピラリーは、前記第1孔の内面の撥水性が、前記第2孔の内面の撥水性よりも高い
請求項8又は9に記載のピペット。
【請求項11】
前記制御部は、信号レベルが時間経過に対して変化して波形をなす駆動信号を前記駆動部に出力し、
前記駆動部は、前記圧力室の容積が前記信号レベルに対応した容積になるように前記信号レベルの時間経過に対する変化に追随して前記圧力室の容積を変化させ、
前記駆動信号は、
前記圧力室の容積の増加によって前記液体の少なくとも一部が前記第1孔から前記第2孔へ流れるように前記駆動部を駆動させる第1信号と、
前記圧力室の容積の減少によって前記液体の少なくとも一部が前記第2孔から前記第1孔へ流れるように前記駆動部を駆動させる第2信号と、
を交互に繰り返し含んでおり、
前記第1信号の波形と、前記第2信号の波形を時間経過が逆になるように反転させた波形とは互いに異なる
請求項
8~10
のいずれか1項に記載のピペット。
【請求項12】
前記第2信号の信号レベルの時間経過に対する変化率の絶対値は、前記第1信号の信号レベルの時間経過に対する変化率の絶対値よりも小さい
請求項
8~11
のいずれか1項に記載のピペット。
【請求項13】
前記第1孔の内面の撥水性は、前記第2孔の内面の撥水性よりも高く、
前記第2信号の信号レベルの変化量の絶対値は、前記第1信号の信号レベルの変化量の絶対値よりも大きい
請求項
8~12
のいずれか1項に記載のピペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャピラリー及びピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ作用装置を駆動させてキャピラリー内部に負圧を生じさせてキャピラリー内に液体を吸引するピペットが知られている。このようなピペットとして、複数種類の液体を吸引した後に、キャピラリー内部の液体をキャピラリーの長さ方向に往復運動させることによって液体を攪拌して混合するものも知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-62437号公報
【文献】特開2000-304754号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るキャピラリーは、長さ方向の両端である第1端及び第2端が開口している。キャピラリーは、第1孔と、前記第1孔の前記第2端側に繋がっている第2孔とを有している。前記第2孔の内面の撥水性は、前記第1孔の内面の撥水性とは異なる。上記一態様に係るキャピラリーの一例において、前記キャピラリーは、前記第1孔を有している中空状の第1部材と、前記第2孔を有している中空状であり、前記第1部材と固定されている第2部材と、を有していてよい。前記第1孔と前記第2孔との境界において、前記第1孔の内径が前記第2孔の内径よりも大きくてよい。前記第1部材は、前記第1孔と、前記第1孔から前記第1端とは反対側に延びており、前記第1孔よりも内径が大きい第3孔と、前記第1孔の内径が前記第3孔の内径よりも小さいことによる段差部と、を有していてよい。前記第2部材は、前記第3孔に挿入されて前記段差部に係止されていてよい。
【0005】
本開示の一態様に係るピペットは、上記一態様に係るキャピラリーと、前記第2端を介して前記キャピラリーの内部に通じている圧力室と、前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有している。前記キャピラリーは、前記第1端側に位置する第1管部と、前記第2端側に位置する第2管部と、を有している。前記第1管部は、長さ方向に貫通する前記第1孔を有している。前記第2管部は、長さ方向に貫通する前記第2孔を有している。前記制御部は、前記圧力室の容積が増減を繰り返し、これにより前記キャピラリー内の液体の少なくとも一部が前記第1孔と前記第2孔との境界を繰り返し超えて往復するように前記駆動部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示のピペットの具体例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本開示のピペットにおけるキャピラリーの具体例を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1制御部が出力する信号における電圧の変化の一例を模式的に示すグラフである。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)はピペットの変形例及び他の変形例を説明するための模式図である。
【
図7】キャピラリー先端の外径が液滴付着量に及ぼす影響を示す図である。
【
図8】
図7が得られたときの各種の条件を示す図表である。
【
図9】キャピラリー先端の内径が液体吸引量に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同一の部材を示す複数の図面同士においても、形状等を誇張するために、寸法比率等は互いに一致していないことがある。
【0008】
本開示において「撥水性」又は「親水性」の用語は、特性の絶対的な評価と相対的な評価とのいずれにも用いられることがあるものとする。
【0009】
例えば、「撥水性を有する」は、ピペットの吸引対象の液体の接触角が90°以上であること(絶対的な評価)を指す。また、例えば、「親水性を有する」は、ピペットの吸引対象の液体の接触角が90°未満であることを指す。なお、ピペットの吸引対象の液体が特定されない場合においては、水の接触角を用いて撥水性又は親水性の有無が判定されてよい。
【0010】
一方、例えば、「撥水性が高い」、「撥水性が低い」又は「撥水性が異なる」は、ピペットの吸引対象の液体(上記のように水とされてもよい)に触れる2つの部材同士で前記液体の接触角を比較したときに、一方の接触角が他方の接触角よりも、大きいこと、小さいこと、又は異なること(相対的な評価)を指す。従って、例えば、第1部材の撥水性が第2部材の撥水性よりも高いという場合、第1部材及び第2部材の双方、又は第2部材は、撥水性を有している必要は無く、親水性を有していてもよい。
【0011】
[ピペットの概要]
図1は、本開示の実施形態に係るピペット1の構成を模式的に示す断面図である。なお、図面には、便宜上、ピペット1に固定的な直交座標系xyを付している。+x側(紙面下方)は、ピペット1によって液体を吸引する際に下方とされる側である。
【0012】
ピペット1は、例えば、キャピラリー10と、キャピラリー10内の気圧を変化させるピペット本体20と、ピペット本体20の動作を制御する第1制御部24及び第2制御部25と、を有している。
【0013】
キャピラリー10の+x側の先端(第1端11)が液体に触れた状態で、ピペット本体20によってキャピラリー10の後端(第2端12)からキャピラリー10内が排気(減圧)されることによって、液体がキャピラリー10内に吸引される。この吸引を複数種類の液体に対して順次行うことにより、複数種類の液体がキャピラリー10内に貯留される。その後、ピペット本体20によってキャピラリー10に対して第2端12からの排気及び給気(キャピラリー10内の減圧及び増圧)が繰り返されると、複数種類の液体はキャピラリー10内をその長さ方向に沿って往復(振動)する。これにより、複数種類の液体は攪拌され、ひいては混合される。
【0014】
[キャピラリー(概要)]
キャピラリー10は、長さ方向(x方向)の両端である第1端11及び第2端12が開口した筒状の形状を有している。なお、「筒状の形状」とは、1方向に長く(該1方向の長さが他の方向の長さに比較して長く)、中空であり、且つ両端が開口した形状を意味するものであり、円筒形のみを意味するものではない。
【0015】
キャピラリー10の概略形状は、種々の形状とされてよい。例えば、キャピラリー10の横断面(長さ方向に直交する断面。以下、同様。)において、内縁(キャピラリー10の内面)及び/又は外縁(キャピラリー10の外面)の形状は、円形、楕円、卵形又は多角形等とされてよい。また、例えば、横断面(内縁及び/又は外縁)の形状及び/又は大きさは、キャピラリー10の全長に亘って一定であってもよいし、キャピラリー10の全長の少なくとも一部において長さ方向の位置によって異なっていてもよい。また、例えば、キャピラリー10の横断面において、内縁と外縁とは、互いに相似形であってもよいし、相似形でなくてもよい。また、例えば、キャピラリー10の内部空間(流路)の中心線は、第1端11から第2端12へ直線状に延びていてもよいし、少なくとも一部において曲がっていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態の説明では、便宜上、キャピラリー10の横断面(内縁及び外縁)は、長さ方向のいずれの位置においても円形であるものとする。この場合、キャピラリー10の孔の横断面の形状は、キャピラリー10の長さ方向の互いに異なる位置同士において同一又は相似(合同含む)である。キャピラリー10の長さ方向の互いに異なる位置同士において互いに内径が異なるという場合、その互いに異なる位置同士で孔の横断面の形状が相似である態様及び相似でない態様のいずれにおいても、横断面の面積が互いに異なるという意味に捉えられてよい。
【0017】
キャピラリー10の寸法は、採取する液体の量及び/又はピペット本体20への取り付け方法等の種々の事情に応じて適宜に設定されてよい。例えば、キャピラリー10の内径は、0.1mm以上0.3mm以下とされてよい。また、例えば、キャピラリー10の外径は、0.4mm以上1.2mm以下とされてよい。また、例えば、キャピラリー10の長さは、20mm以上100mm以下とされてよい。もちろん、上記の範囲外の寸法が採用されても構わない。後の説明では、キャピラリー10の第1端11における外径D1及び内径D2(
図2参照)について、上記の範囲外の値を例示する(
図7~
図9)。言うまでもなく、外径D1及び内径D2は、上記の範囲内にあってもよい。
【0018】
キャピラリー10の材料は、種々のものとされてよい。例えば、当該材料としては、ガラス、樹脂、セラミックス及び金属を挙げることができる。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、例えば、キャピラリー10は、長さ方向の一部と他部とが互いに異なる材料によって構成されていてもよいし、及び/又は径方向の一部と他部とが互いに異なる材料によって構成されていてもよい。また、例えば、キャピラリー10は、一の材料からなる部材の表面の少なくとも一部に他の材料からなる膜が形成されることにより構成されていてもよい。また、例えば、キャピラリー10の少なくも一部(すなわち一部又は全部)は、透光性を有する材料(例えば樹脂又はガラス)によって構成されてよい。
【0019】
キャピラリー10の表面の少なくとも一部(すなわち一部又は全部)は、撥水性を有していてよい。キャピラリー10の表面のうち撥水性を有する領域は適宜に設定されてよい。例えば、撥水性を有する領域は、第1端11の端面(+x方向に面している面)、キャピラリー10の内面のうち+x側の一部及びキャピラリー10の外面の+x側の一部を含んでいる。換言すれば、撥水性を有する領域は、液体に接触する領域を含んでいる。液体に接触する領域が撥水性を有していることにより、例えば、液体の付着及び/又は意図していない移動のおそれが低減され、液体の採取量の精度が向上する。
【0020】
キャピラリー10(一部又は全部)は、例えば、撥水性を有する材料からなることによって表面に撥水性を有していてもよい。また、例えば、キャピラリー10(一部又は全部)は、撥水性を有さない材料からなる部材の表面に撥水膜が形成されることによって表面に撥水性を有していてもよい。
【0021】
撥水膜としては、種々のものが用いられてよく、例えば、シランカップリング剤により形成される撥水膜、金属アルコキシド含有撥水膜、シリコーン含有撥水膜及びフッ素含有撥水膜を挙げることができる。キャピラリー10の表面への撥水膜の形成方法としては、種々の方法が用いられてよく、例えば、ドライプロセス法が用いられてもよいし、ウェットプロセス法が用いられてもよい。ドライプロセス法としては、例えば、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。前者としては、例えば、物理蒸着法及びスパッタリング法が挙げられる。後者としては、例えば、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法及び原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。ウェットプロセス法としては、例えば、ゾルゲル法、ディップコーティング法、塗布法が挙げられる。
【0022】
キャピラリー10は、例えば、使い捨てとされており、ピペット本体20に対して着脱可能とされている。着脱方法は、適宜な方法とされてよい。例えば、キャピラリー10は、ピペット本体20の孔に圧入されて固定されてもよいし、ピペット本体20に設けられた不図示の機構による締め付け又は係止によって固定されてもよい。ただし、キャピラリー10は、繰り返し使われるものとされてもよいし、さらには、ピペット本体20に着脱不可能に固定(例えば接着)されていてもよい。
【0023】
[ピペット本体]
ピペット本体20は、キャピラリー10の内部に通じている圧力室21(空洞)を有している。そして、ピペット本体20は、この圧力室21の容積を増加させることによってキャピラリー10内の減圧(排気)を行い、圧力室21の容積を減少させることによってキャピラリー10内の増圧(給気)を行う。これにより、例えば、キャピラリー10による液体の吸引及び吐出等が実現される。このような動作を実現するピペット本体20の構成は、適宜なものとされてよい。以下では、その一例を示す。
【0024】
ピペット本体20は、例えば、キャピラリー10の内部に通じている流路(圧力室21を含む)を構成している流路部材35と、圧力室21の容積を変化させるアクチュエータ40と、流路部材35の内部(流路)と外部との連通を許容及び禁止するバルブ23とを有している。
【0025】
(流路部材)
流路部材35の概略の外形及び大きさは適宜な形状とされてよい。図示の例では、流路部材35の概略の外形は、キャピラリー10に直列な軸状(x方向の長さが他の方向の長さよりも長い形状)とされている。また、その大きさは、例えば、ユーザが摘まむ、又は握ることができる大きさ(例えば最大外径が50mm以下)とされている。
【0026】
流路部材35の内部空間は、例えば、上述の圧力室21と、キャピラリー10と圧力室21とを繋ぐ連通流路27と、連通流路(別の観点では圧力室21)と外部とを繋ぐ開放流路28とを有している。
【0027】
圧力室21の形状、位置及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、圧力室21は、流路部材35において側面に位置している。また、例えば、圧力室21の概略形状は、アクチュエータ40と重なる方向(y方向)を厚さ方向とする、概ね一定の厚さの薄型形状である。ここでの薄型形状は、y方向の長さがy方向に直交する各方向の最大長さよりも短い形状である。圧力室21の平面形状(y方向に見た形状)は、円形、楕円、矩形又は菱形等の適宜な形状とされてよい。圧力室21の厚さ(y方向)は、例えば、50μm以上5mm以下である。圧力室21の径(y方向に直交する各方向における最大長さ)は、例えば、2mm以上50mm以下である。
【0028】
連通流路27及び開放流路28の形状、位置及び大きさ等も適宜に設定されてよい。例えば、流路部材35は、キャピラリー10からキャピラリー10の長さ方向(x方向)に延びている第1流路22と、第1流路22の中途から第1流路22に交差する方向に延びて圧力室21に至る第2流路26とを有している。そして、第1流路22のうちの、第2流路26との接続位置からキャピラリー10側の部分と、第2流路26とによって連通流路27が構成されている。このような流路構成によって、例えば、吸引した液体(例えばその飛沫)が圧力室21へ侵入し、アクチュエータ40に付着するおそれが低減される。ひいては、付着した液体に起因してアクチュエータ40の動作特性が変化するおそれが低減される。
【0029】
また、第1流路22は、例えば、キャピラリー10とは反対側にて流路部材35の外部へ通じている。そして、第1流路22のうちの、第2流路26との接続位置からキャピラリー10とは反対側の部分によって、開放流路28が構成されている。従って、液体が圧力室21に侵入しないように液体を逃がすための流路が、圧力室21を外部へ開放するための開放流路28に兼用されており、空間効率が向上している。
【0030】
第1流路22及び第2流路26の横断面の形状及び寸法は適宜に設定されてよい。例えば、第1流路22及び第2流路26の横断面は、直径が0.1mm以上1mm以下の円形である。また、第1流路22及び第2流路26の内径は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。第1流路22及び/又は第2流路26の横断面の形状及び大きさは、長さ方向において一定であってもよいし、変化していてもよい。
【0031】
流路部材35は、適宜な材料からなる適宜な形状の部材が組み合わされて構成されてよい。図示の例では、流路部材35は、互いに接合された第1パーツ30及び第2パーツ60を有している。第1パーツ30は、圧力室21となる貫通孔を有している。第2パーツ60は、第1流路22及び第2流路26を有している。圧力室21は、第1パーツ30、第2パーツ60及びアクチュエータ40によって囲まれた空間によって構成されている。なお、第1パーツ30及び第2パーツ60それぞれも、複数の部材の組み合わせによって構成されてよい。第1パーツ30及び第2パーツ60の材料は、例えば、金属、セラミック若しくは樹脂又はこれらのいずれかの組み合わせとされてよい。
【0032】
(アクチュエータ)
アクチュエータ40は、例えば、圧力室21の内面の一つを構成している。具体的には、例えば、アクチュエータ40は、概略板状とされており、第1パーツ30の貫通孔を第2パーツ60とは反対側から塞ぐように第1パーツ30に接合され、連通流路27が開口する内面とは反対側の内面を構成している。そして、アクチュエータ40は、圧力室21側へ撓むことによって(換言すれば圧力室21の内面を内側へ変位させることによって)、圧力室21の容積を減少させる。逆に、アクチュエータ40は、圧力室21とは反対側に撓むことによって(換言すれば圧力室21の内面を外側へ変位させることによって)、圧力室21の容積を増加させる。
【0033】
上記のような撓み変形を生じさせるアクチュエータ40の具体的構成は、適宜なものとされてよい。例えば、アクチュエータ40は、ユニモルフ型の圧電素子によって構成されている。より詳細には、例えば、アクチュエータ40は、積層された2枚の圧電セラミック層40a、40bを有している。また、アクチュエータ40は、圧電セラミック層40aを挟んで互いに対向している内部電極42及び表面電極44を有している。圧電セラミック層40aは、厚さ方向に分極されている。
【0034】
そして、内部電極42及び表面電極44によって圧電セラミック層40aに分極方向と同一方向に電圧を印加すると、圧電セラミック層40aは平面方向において収縮する。一方、圧電セラミック層40bは、そのような収縮を生じない。その結果、圧電セラミック層40aは、圧電セラミック層40b側へ撓む。すなわち、アクチュエータ40は、圧力室21側へ撓む。上記とは逆向きの電圧を印加した場合は、アクチュエータ40は、圧力室21とは反対側へ撓む。
【0035】
アクチュエータ40の形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。例えば、アクチュエータ40は、適宜な平面形状の平板状である。平面形状は、圧力室21の平面形状と相似であってもよいし、相似でなくてもよい。平面視(y方向に見て)における各方向の最大長さは、例えば、3mm以上100mm以下である。アクチュエータ40の厚さ(y方向)は、例えば、20μm以上2mm以下である。アクチュエータ40を構成する各種の部材の材料、寸法、形状及び導通方法等も適宜に設定されてよい。以下に一例を示す。
【0036】
圧電セラミック層40a、40bの厚さは、例えば、10μm以上30μm以下とされてよい。圧電セラミック層40a、40bの材料は、例えば、強誘電性を有するセラミック材料とされてよい。このようなセラミック材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、KNaNbO3系、BaTiO3系及び(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系のものを挙げることができる。圧電セラミック層40bは、圧電体以外の材料で構成されていても構わない。
【0037】
内部電極42は、例えば、圧電セラミック層40aと、圧電セラミック層40bとの間に位置しており、アクチュエータ40と略同じ大きさを有している。内部電極42の厚さは、例えば1μm以上3μm以下とされてよい。内部電極42は、例えば、圧電セラミック層40aを貫通する貫通電極48と、アクチュエータ40の表面に位置し、貫通電極48に接続されている接続電極46とによって外部から導通可能となっている。
【0038】
表面電極44は、例えば、圧電セラミック層40aの圧電セラミック層40bとは反対側(圧力室21に対して外側)に位置しており、表面電極本体44aと引出電極44bとを有している。表面電極本体44aは、例えば、圧力室21と略等しい平面形状を有しており、圧力室21と厚さ方向に重なるように設けられている。引出電極44bは、表面電極本体44aから引き出されるように形成されている。表面電極44の厚さは、例えば0.1μm以上1μm以下とされてよい。
【0039】
内部電極42、表面電極44、接続電極46及び貫通電極48の材料は、例えば、金属材料とされてよい。より具体的には、例えば、内部電極42及び貫通電極48の材料は、Ag-Pdとされてよい。表面電極44及び接続電極46の材料は、例えば、Auとされてよい。
【0040】
なお、アクチュエータ40又はアクチュエータ40の一部(例えば表面電極本体44aに重なる部分)を駆動部50ということがある。アクチュエータは、ユニモルフ型の圧電素子に限定されない。例えば、アクチュエータは、バイモルフ型の圧電素子であってもよいし、静電アクチュエータであってもよい。
【0041】
(バルブ)
バルブ23は、例えば、開放流路28が外部へ通じる位置に設けられている。バルブ23の開閉により、流路部材35の内部と外部との連通が許容又は禁止される。連通が禁止されている状態では、圧力室21の容積の変化によってキャピラリー10内の減圧及び増圧が行われる。一方、連通が許容されている状態では、圧力室21の容積を変化させても、キャピラリー10内の減圧及び増圧は行われない。この減圧又は増圧が行われない作用の利用例については後述する。
【0042】
バルブ23は、例えば、外部から入力される信号に応じて開閉動作を行う。バルブ23としては、電磁式バルブ又は圧電式バルブなど、種々のバルブを用いることができる。バルブ23は、信号が入力されないことによって閉状態となり、信号が入力されることによって開状態となるものであってもよいし、信号が入力されないことによって開状態となり、信号が入力されることによって閉状態となるものであってもよいし、閉じるための信号と開くための信号とがそれぞれ入力されるものであってもよい。
【0043】
[制御部]
第1制御部24は、アクチュエータ40と電気的に接続されており、電気信号をアクチュエータ40に与えてアクチュエータ40を変形させることにより、圧力室21の容積を変化させる。これにより、キャピラリー10への液体の吸引や、キャピラリー10からの液体の吐出などを行うことができる。圧力室21の容積が周期的に増減するようにアクチュエータ40を駆動させることにより、キャピラリー10内に吸引した液体を振動させて混合することもできる。
【0044】
第2制御部25は、バルブ23と電気的に接続されており、バルブ23に電気信号を与えることによりバルブ23を開閉する。第1流路22内に液体が流入してしまった場合に、バルブ23を開くことにより、液体をバルブ23から外部へ排出することができる。また、アクチュエータ40を変形させて液体を吸入した後に、バルブ23を開いて、その状態でアクチュエータ40の変形を元に戻し、バルブ23を閉じた後に再びアクチュエータ40を変形させることにより、多くの量の液体を吸入することができる。
【0045】
第1制御部24及び第2制御部25は、種々の集積回路を用いて構成することができる。第1制御部24及び第2制御部25は、互いに別個のIC(Integrated Circuit)によって構成され、同期が図られてもよいし、一部又は全部が同一のICに作り込まれてもよい。第1制御部24及び/又は第2制御部25は、ピペット本体20に固定的に設けられていてもよいし、ピペット本体20に対して相対移動可能に設けられていてもよいし、一部(例えばドライバ)がピペット本体20に固定的に設けられ、他の部分(例えばドライバに指令を出力する部分)がピペット本体20に対して相対移動可能に設けられていてもよい。
【0046】
[キャピラリー(詳細)]
図2は、キャピラリー10を拡大して示す断面図である。
図3は、
図2の一部拡大図である。
キャピラリー10は、第1端11側に位置する第1管部17と、第2端12側に位置する第2管部18と、を有している。第1管部17は、長さ方向に貫通する第1孔10aを有しており、第2管部18は、長さ方向に貫通する第2孔10bを有している。第2孔10bは、第1孔10aの第2端12側に繋がっている。なお、第1管部17は、キャピラリー10における第1孔10aを有する部分であり、第2管部18は、キャピラリー10における第2孔10bを有する部分である。第1管部17及び第2管部18は、一体形成された1つの部材における2つの部位であってもよいし(すなわち別部材でなくてよいし)、互いに固定される2つの部材であってもよい。
【0047】
(撥水性)
第1孔10aの内面の撥水性と、第2孔10bの内面の撥水性とは、互いに異なっている。すなわち、キャピラリー10は、内面の撥水性が互いに異なる第1孔10a及び第2孔10bを有している。これにより、例えば、液体が両者の境界14を流れるときに、撥水性の相違に起因して液体の流れに乱れが生じやすい。その結果、例えば、液体が境界14を繰り返し超えて往復するようにアクチュエータ40を駆動させると、液体が混合されやすい。なお、以下の説明では、第1孔10aの内面の撥水性を第1孔10aの撥水性と略すことがある。第2孔10bについても同様である。
【0048】
第1孔10a及び第2孔10bの撥水性は、いずれが他方に対して高くてもよい。本実施形態では、第1孔10aの撥水性が第2孔10bの撥水性よりも高い場合を例にとる。すなわち、本実施形態では、第1孔10aの接触角は、第2孔10bの接触角よりも大きい。
【0049】
第1孔10aの撥水性が第2孔10bの撥水性よりも高い場合において、第1孔10a及び第2孔10bの双方が撥水性を有していてもよいし(接触角が90°以上であってもよいし)、第1孔10aが撥水性を有するとともに第2孔10bが親水性を有していてもよいし、第1孔10a及び第2孔10bの双方が親水性を有していてもよい。本実施形態では、前記3つの態様のうち、前2つのいずれか(少なくとも第1孔10aが撥水性を有している態様)を例にとる。
【0050】
第1孔10a及び第2孔10bのそれぞれにおいて、撥水性は、キャピラリー10の長さ方向及び/又は軸回りの方向において、一様であってもよいし、変化してもよい。本実施形態では、一様の場合を例にとる。ただし、一様とは言っても、加工誤差に起因する撥水性のばらつきがあってもよいことはもちろんである。また、撥水性が変化する場合、その変化は、連続的なものであってもよいし、非連続的(段階的)なものであってもよい。ただし、第1孔10a及び第2孔10bは、その撥水性の観点から境界14を概念できるものであるから、両者の間で撥水性の変化は非連続である。
【0051】
第1孔10a及び第2孔10bの接触角の具体的な大きさは、適宜に設定されてよい。例えば、第1孔10aが撥水性を有している場合(接触角が90°以上の場合)において、接触角は、90°以上95°以下(すなわち90°に近い値)であってもよいし、95°以上150°以下であってもよいし、150°超であってもよい。なお、150°超は、いわゆる超撥水性を有しているといえる大きさである。また、第2孔10bが撥水性を有している場合において、第2孔10bの接触角は、第1孔10aの接触角よりも小さい限り、90°以上95°以下、95°以上150°以下又は150°超であってよい。また、第2孔10bが親水性を有している場合(接触角が90°未満の場合)において、第2孔10bの接触角は、85°以上(すなわち90°に近い値)であってもよいし、10°以上85°以下であってもよいし、10°未満であってもよい。なお、10°未満は、いわゆる超親水性を有しているといえる大きさである。
【0052】
また、第1孔10aの接触角と第2孔10bの接触角との差も適宜に設定されてよい。例えば、両者の差は、5°以上、10°以上、30°以上、90°以上又は140°以上とされてよい。また、この下限と矛盾しない限り、両者の差は、180°未満、140°以下、90°以下、30°以下又は10°以下とされてよい(前記の下限のいずれと組み合わされてもよい。)。例えば、両者の差は、30°以上140°以下、又は30°以上90°以下とされてよい。両者の差の範囲の下限が大きいほど、例えば、流れに乱れを生じさせる作用は強くなる。一方、両者の差の範囲の上限が大きいほど、例えば、材料の選択が困難になる。上記の範囲であれば、例えば、流れに乱れを生じさせる作用を得つつ、材料の選択が容易化される。
【0053】
(孔の形状等)
第1孔10a及び第2孔10bの形状、寸法及びこれらの孔を構成する材料等は適宜に設定されてよい。以下では、その一例を示す。
【0054】
第1孔10aは、例えば、第1端11から境界14まで延びている。第2孔10bは、例えば、境界14から第2端12まで延びている。なお、図示の例とは異なり、境界14から第1端11までを別の孔(例えば撥水性が第2孔10bの撥水性以下の孔)で構成したり、及び/又は境界14から第2端12までを別の孔(例えば撥水性が第1孔10aの撥水性以上の孔)で構成したりすることも可能である。
【0055】
境界14の位置は、第1端11から第2端12までの間の適宜な位置とされてよい。例えば、境界14は、キャピラリー10の長さ方向の中央に対して第1端11側に位置している。例えば、第1孔10aの長さは、キャピラリー10の全長の5%~30%程度の長さである。
【0056】
第1孔10aの横断面の形状及び/又は大きさと、第2孔10bの横断面の形状及び/又は大きさとは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。両者の大きさが異なっている場合において、いずれが大きくてもよい。また、第1孔10a及び第2孔10bのそれぞれにおいて、横断面の形状及び/又は大きさは、キャピラリー10の長さ方向において一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0057】
図示の例では、第1孔10aの横断面(内径)は、第2孔10b側ほど大きくなっている。一方、第2孔10bの横断面(内径)は、キャピラリー10の長さ方向において一定となっている。そして、境界14において、第1孔10aの内径は、第2孔10bの内径よりも大きくなっている。
【0058】
第1孔10aの内径と第2孔10bの内径との差の具体的な大きさ等は、適宜に設定されてよい。例えば、境界14において、第1孔10aの内径は、第2孔10bの内径に対して、1.1倍以上、1.5倍以上又は2倍以上であり、かつ5倍以下、3倍以下又は2倍以下(前者の下限値の例と後者の上限値の例とは、矛盾しない限り、いずれが組み合わされてもよい。)である。また、例えば、第1孔10aの内径と、第2孔10bの内径との差は、後述する第2部材16の厚さ(内面から外面までの径方向の長さ)の2/5以上、2/3以上又は1倍以上であり、かつ2倍未満、18/10倍以下又は2/5以下である(前者の下限値の例と後者の上限値の例とは、矛盾しない限り、いずれが組み合わされてもよい。)。また、例えば、第1孔10aの内面の第1孔10aの中心線に対する傾斜角は、1°以上、2°以上又は3°以上、かつ15°以下、10°以下又は7°以下である(前者の下限値の例と後者の上限値の例とは、いずれが組み合わされてもよい。)。
【0059】
なお、第1孔10aの第1端11における内径は、第2孔10bの内径よりも小さくてもよいし、同じでもよいし(ただし、加工誤差による差がある場合を含む)、大きくてもよい。例えば、第1孔10aの第1端11における内径は、第2孔10bの内径の1/2以上、2/3以上又は4/5以上、かつ2倍以下、1.5倍以下又は1.2倍以下である(前者の下限値の例と後者の上限値の例とは、いずれが組み合わされてもよい。)。
【0060】
ここで、第1孔10aの第1端11の端面を第1端面11aとすると、第1端面11aは円形状の開口を有する環状であってよい。そして、この場合の第1端面11aの外径D1は0.4mm以下であってよい。キャピラリー10を液体中から引き上げたときに、第1端面11aに付着した液体がキャピラリー10内に取りこまれてしまう現象を発明者が見出した。これにより、キャピラリー10内に取り込まれる液体の量は、意図的に吸引した量に対して僅かに増加する。第1端面11aの外径が大きいと、増加する液体の量も増加するため、微量の液体を吸引する場合には問題となる。第1端面11aの外径を0.4mm以下とすることにより、第1端面11aに多くの液滴が付着するのを防止でき、微量の液体を精度よく吸引できる。
【0061】
図2に示すキャピラリーにおいて各種条件を変えて第1端面11aへの液体(水)の付着量を測定した結果を
図7に示す。また、そのときの各種条件を
図8に示す。
図7において、横軸は外径D1を示している。縦軸は第1端面11aへの液体の付着量を示している。プロットは、外径D1と測定された付着量との関係を示している。
【0062】
図8に示されているように、No.1からNo.6までの6種類のキャピラリーについて液体の付着量が測定された。6種類のキャピラリーは、第1部材15の形状及び材質、外径D1並びに内径D2が互いに異なっている。第1部材15の形状の欄において、「テーパー」は、
図2に示される例のように、第1部材15の内径D2及び外径D1が第1端11側ほど小さくなっていることを示している。また、「ストレート」は、
図2の例とは異なり、第1部材15の内径D2及び外径D1が第2端12から第1端11に亘って一定であることを示している。第1部材15の材質の欄における略語の意味は、以下のとおりである。PP:polypropylene、FEP:flexible electric pipe、ETFE:ethylene tetrafluoro ethylene、PA12:polyamide 12。また、No.5の材質は、ガラスからなるキャピラリーのうちの液体に触れる部分に撥水膜が形成されたものである。
【0063】
図7によれば、第1面11aの外径D1を0.4mm以下とすることにより、他の条件に関わらず第1端面11aへの液体付着量を小さくできることがわかる。具体的には、
図7の例では、外径D1を0.4mm以下とすることによって、付着量は5.0nl以下とすることができている。また、
図7の例では、外径D1が0.4mmを超えると、外径D1の増加に対する付着量の増加の変化率が大きくなっており、この観点からも、0.4mm付近を上限値とすることについて意義が見出せる。
【0064】
このとき、第1端面11aの内径D2は0.06mm以上であってよい。第1端面11aの内径D2を小さくしすぎると流路抵抗が増加して、所定の圧力変化によって吸引できる液体の量が減少する。第1端面11aの内径D2を変化させたときの吸引される液体の量の変化を
図9に示す。この図において、横軸は内径D2を示している。縦軸は所定の圧力変化による液体吸引量を示している。プロットは、内径D2と吸引量との関係を示しており近似値を一部含んでいる。
【0065】
図9によれば、第1端面11aの内径D2を0.06mm以上とすることにより、吸引される液体の量が少なくなり過ぎるのを抑制できることがわかる。また、
図9の例では、内径D2の変化に対する吸引量の変化の態様は指数関数的であり、内径D2を0.06mm以上にすることによって、内径D2の増加によって吸引量を増加させることが容易化されている。なお、上記の説明とは逆に、内径D2を0.06mm未満とすることによって、極めて微量な吸引量を実現しても構わない。
【0066】
(第1部材及び第2部材)
キャピラリー10は、第1孔10aを構成する第1部材15と、第2孔10bを構成する第2部材16とを有している。このように、キャピラリー10を複数の部材から構成することによって、例えば、第1孔10aの撥水性と、第2孔10bの撥水性とを異ならせることが容易化される。
【0067】
第1部材15及び第2部材16は、キャピラリー10の材料として既に挙げた種々の材料によって構成されてよい。例えば、第1部材15は、その全体が樹脂によって一体的に構成されている。また、例えば、第2部材16は、その全体がガラスによって一体的に構成されている。そして、第1部材15を構成する樹脂の撥水性は、第2部材16を構成するガラスの撥水性よりも高い。
【0068】
また、第2部材16の材料は、透光性を有する材料とされ、第1部材15の材料は、透光性を有する、又は有さない材料とされてよい。換言すれば、第2部材16の透光性は、第1部材15の透光性よりも高くされてよい。この場合、例えば、第1部材15の材料として、撥水性の高い材料を選択できる。その一方で、第2部材16の材料として、液体の分析のために液体に光を照射することに適した材料を選択できる。
【0069】
第1部材15と第2部材16との固定は、適宜な方法によってなされてよい。固定方法としては、例えば、一方の部材の他方の部材への嵌合(圧入)、爪などによる係止、接着剤よる接着、及び少なくとも一方の部材を溶融させ固化させることによる溶着を挙げることができる。これらの方法の2つ以上が組み合わされてもよい。また、一方の部材を先に形成し、当該一方の部材を配置した金型内に他方の部材となる材料を充填して両者を構成してもよい。また、第1部材15と第2部材16との間には、これらよりも剛性が低い材料からなるパッキンが配置されてもよい。
【0070】
図示の例では、第2部材16が第1部材15に圧入されて両者が固定されている。具体的には、第1部材15は、第1孔10aから第1端11とは反対側に延びている第3孔15aを有している。第3孔15aは、第1孔10aよりも内径が大きい。ひいては、第1孔10aと第3孔15aとの境界には段差部15bが構成されている。一方、第2部材16は、その外径が第3孔15aの内径に対して同等とされ、又は若干大きくされている。そして、第2部材16は、第3孔15aに第1孔10aとは反対側から挿入され、先端が段差部15bに係止されている。第2部材16の第1部材15からの抜けは、両者が直接に当接していることによって生じる摩擦力によって阻止される。
【0071】
なお、このように第2部材16が第1部材15に挿入される場合においても、両者は接合されても構わない。例えば、第3孔15aの内面と第2部材16の外面との間に接着剤が配置されてもよい。この場合において、第2部材16の外径は、第3孔15aの内径に対して、若干小さくされてもよいし、同等とされてもよいし、若干大きくされてもよい。
【0072】
また、図示の例では、第3孔15a及び第2部材16それぞれは、一定の横断面でその全長に亘って延びている。ただし、これらの一方又は双方は、長さ方向の一部のみにおいて一定の横断面で延び、その一定の横断面で延びる部分においてのみ嵌合してもよい。また、第3孔15a及び第2部材16の互いに嵌合する部分は、一定の横断面で延びていなくてもよい。例えば、両者は、第2端12側ほど拡径するテーパ状とされていてもよい。また、例えば、第3孔15aの内面及び第2部材16の外面の少なくとも一方に突部が設けられ、これにより接触圧が高くされてもよい。
【0073】
段差部15bの、第2部材16側の段差面15baは、例えば、キャピラリー10の径方向の内側ほど第2部材16側へ位置するように傾斜している。一方、第2部材16の、段差部15b側の先端面16aは、例えば、キャピラリー10の長さ方向に直交する平面状である。そして、段差部15bの径方向内側の角部15bb(段差面15baの内側の縁部)が第2部材16の先端面16aに当接している。従って、段差部15bと第2部材16との当接は、線接触となっている。なお、段差部15bと第2部材16との当接は、図示の例とは異なっていてもよい。例えば、段差面15baがキャピラリー10の長さ方向に直交する面とされ、段差面15baと先端面16aとが面接触してもよい。
【0074】
第1部材15及び第2部材16の外形(外面の形状)は、適宜なものとされてよい。図示の例では、第1部材15は、その外観において、第1端11を有している第1部位15eと、第1部位15eに対して第2端12側に位置している第2部位15fとを有している。
【0075】
第1部位15eは、例えば、第1孔10aの第1端11側の一部(図示の例では大部分)を有している。また、第1部位15eは、例えば、厚さ(内面から外面までの長さ)がキャピラリー10の長さ方向の全長に亘って概ね一定とされている。そして、第1孔10aがテーパ状であることに対応して、第1部位15eの外形もテーパ状とされている。第1部位15eの厚さは、比較的薄くされており、例えば、第2部材16の厚さよりも薄くされている。
【0076】
第2部位15fは、例えば、第1孔10aの第1端11とは反対側の一部と、第3孔15aとを有している。第2部位15fは、例えば、第1部位15eよりも外径が大きくされている。また、第2部位15fの厚さは、比較的厚くされており、例えば、第1部位15eの厚さ及び第2部材16の厚さよりも厚くされている。第2部位15fの外面の形状は、例えば、キャピラリー10の長さ方向において一定とされている。
【0077】
[ピペットの一連の動作]
ピペット1の動作の一例について説明する。
図4は、第1制御部24が出力する駆動信号SgA(Sg0~Sg52)における電圧(信号レベル)の経時変化の一例を模式的に示すグラフである。
図4において、横軸tは時間を示しており、縦軸Vは電圧を示している。
図5(a)~
図5(f)は、
図4の横軸に示されるいずれかの時点におけるキャピラリー10の状態を示す模式図である。
【0078】
図4に示されているように、第1制御部24がアクチュエータ40へ出力する駆動信号SgAは、電圧が時間経過に対して変化して波形をなす。一方、アクチュエータ40は、印加された電圧に対応した変形量で撓む。ここでいう対応は、例えば、1対1対応であり、換言すれば、電圧に対して一意に変形量が規定される関係である(変形が飽和している状態は除く。)。従って、駆動信号SgAが入力されたアクチュエータ40は、圧力室21の容積が駆動信号SgAの電圧に対応した容積になるように駆動信号SgAの波形(電圧の時間経過に対する変化)に追随して圧力室21の容積を変化させる。
【0079】
なお、駆動信号SgAの電圧の変化量と圧力室21の容積の変化量との関係は比例関係とは限らない。ただし、便宜上、比例又は比例に近い関係を想定して説明する。従って、
図4は、駆動信号SgAの電圧の経時変化だけでなく、圧力室21の容積の経時変化を示していると捉えてもよい。
【0080】
内部電極42及び表面電極44は、一方に基準電位が付与され、他方に駆動信号SgAが入力される。そして、
図4の電圧は、基準電位と駆動信号SgAとの電位差を示している。換言すれば、駆動信号SgAは、不平衡信号である。ただし、駆動信号SgAは、内部電極42及び表面電極44の双方において電位を変化させ、その電位差が
図4に示される電圧となっている平衡信号とされても構わない。なお、本実施形態では、駆動信号SgAが不平衡信号である場合を例に取るから、以下では、
図4の電圧を駆動信号SgAの電位として説明することがある。
【0081】
駆動信号SgAの電圧の上昇(電位の正側への変化)は、圧力室21の容積の増加に対応していてもよいし、圧力室21の容積の減少に対応していてもよい。換言すれば、内部電極42及び表面電極44のうち駆動信号SgAが付与される電極から基準電位が付与される電極への方向と、圧電セラミック層40aの分極方向とは、逆向きであってもよいし、同一の向きであってもよい。以下では、便宜上、駆動信号SgAの電圧の上昇は、圧力室21の容積の増加(すなわち液体の吸引)に対応しているものとする。
【0082】
下記では、ピペット1自体の動作だけでなく、ピペット1のユーザ又はピペット1を利用する(若しくは含む)装置が行う動作についても説明する。ここでは、ユーザがピペット1を操作する態様を例に取って説明する。ユーザのピペット1に対する操作は、適宜に装置のピペット1に対する操作に読み替えられてよい。例えば、ユーザによるピペット1の移動は、装置によるピペット1の移動とされてよいし、ユーザによるピペット1の不図示のスイッチに対する操作は、装置によるピペット1に対する指令信号の出力とされてよい。装置は、例えば、シーケンス制御によってユーザと同様の操作をピペットに対して行ってよい。
【0083】
(時刻t0~t1:接液等)
時刻t1以前において、第1制御部24は、ユーザの不図示のスイッチに対する操作に応じて初期信号Sg0をアクチュエータ40に出力する。初期信号Sg0は、一定の電位の信号である。これにより、圧力室21の容積は所定の初期容積に維持される。初期信号Sg0の電位は、基準電位であってもよいし、基準電位とは異なっていてもよい。なお、駆動信号SgAは、初期信号Sg0を含んでいなくてもよい。すなわち、時刻t1以前は、初期信号Sg0が出力される状態ではなく、駆動信号SgAが出力されない状態とされてもよい。バルブ23は、時刻t0以降において、特に言及がない限り、閉じられている。
【0084】
ユーザは、時刻t1以前において、キャピラリー10の第1端11を第1液体L1に接触させる(接液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第1液体L1の吸引を指示する。この指示の時刻は、
図4の時刻t1に対応する。
【0085】
(時刻t1~t2:第1液体の吸引等)
第1制御部24は、第1液体L1の吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる第1吸引信号Sg1を出力する。第1吸引信号Sg1は、例えば、概略、初期信号Sg0の電位V0から所定の電位V1まで上昇し、電位V1を維持する信号である。これにより、第1液体L1は、キャピラリー10内に吸引され、キャピラリー10の第1端11付近に保持される。その吸引量は、概略、電位V0から電位V1までの電位差に対応している。換言すれば、当該電位差は、吸引量の目標値に応じて設定されている。
【0086】
ユーザは、第1液体L1の一部がキャピラリー10内に吸引されると、キャピラリー10を第1液体L1の残りから引き上げる(離液ステップを行う。)。次に、ユーザは、キャピラリー10の第1端11を第2液体L2に接触させる(接液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第2液体L2の吸引を指示する。この指示の時刻は、
図4の時刻t2に対応する。
【0087】
(時刻t2~t3:第2液体の吸引等)
第1制御部24は、第2液体L2の吸引が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる第2吸引信号Sg2を出力する。第2吸引信号Sg2は、例えば、概略、第1吸引信号Sg1の電位V1から所定の電位V2まで上昇し、電位V2を維持する信号である。これにより、第2液体L2は、キャピラリー10内に吸引され、キャピラリー10の第1端11付近に保持される。
図5(a)は、このときの状態を示している。第2液体L2の吸引量は、概略、電位V1から電位V2までの電位差に対応している。換言すれば、当該電位差は、吸引量の目標値に応じて設定されている。
【0088】
ユーザは、第2液体L2の一部がキャピラリー10内に吸引されると、キャピラリー10を第2液体L2の残りから引き上げる(離液ステップを行う。)。そして、ユーザは、ピペット1が有している不図示のスイッチに対する操作によって、ピペット1に第1液体L1と第2液体L2との混合を指示する。この指示の時刻は、
図4の時刻t3に対応する。
【0089】
(時刻t3~t4:エア吸引等)
第1制御部24は、第1液体L1と第2液体L2との混合が指示されると、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させるエア吸引信号Sg3を出力する。エア吸引信号Sg3は、例えば、概略、所定の電位V3まで上昇し、電位V3を維持する信号である。これにより、第1液体L1及び第2液体L2は、第2端12側へ移動して、キャピラリー10内の所定の位置に停止する。
図5(b)は、このときの状態を示している。第1液体L1及び第2液体L2の移動量は、概略、電位V2から電位V3までの電位差に対応している。換言すれば、当該電位差は、移動量の目標値に応じて設定されている。
【0090】
第1液体L1及び第2液体L2の停止位置は、第1液体L1及び第2液体L2の双方が境界14よりも第1端11側に位置する位置であってもよいし、第1液体L1及び第2液体L2の双方が境界14よりも第2端12側に位置する位置であってもよいし、第1液体L1及び第2液体L2のいずれかが境界14に跨る位置であってもよい。本実施形態の説明では、第1液体L1及び第2液体L2の双方が境界14よりも第1端11側に位置する場合を例に取り、以降の動作を説明する。
【0091】
なお、第1液体L1及び第2液体L2の双方が境界14の第1端11側又は第2端12側に位置する場合、液体と境界14とは離れていてもよいし、隣接していてもよい。「隣接している」は、例えば、キャピラリー10の長さ方向において、境界14と液体とが離間している距離又は重複している距離(いずれの距離も液面の中心を基準としてよい)が、第1液体L1及び第2液体L2の体積を第1孔10aの境界14における横断面の面積で割って得られる長さの1/10以下又は1/5以下の状態である。
【0092】
第2制御部25は、エア吸引信号Sg3の出力開始後、所定時間が経過したと判定すると、開放流路28を開くようにバルブ23を制御する。なお、この制御が、信号の出力及び信号の出力の停止のいずれによってなされてもよいことは既に述べたとおりである。所定時間は、エア吸引信号Sg3によって第1液体L1及び第2液体L2が目標位置まで移動するのに十分な時間とされる。
【0093】
(時刻t4~t5:圧力室の復元等)
第1制御部24は、バルブ23を開く制御を開始後、所定時間が経過したと判定すると(時刻t4)、圧力室21の容積が減少するように駆動部50を駆動させる復元信号Sg4を出力する。復元信号Sg4は、例えば、概略、所定の電位V4まで降下し、電位V4を維持する信号である。復元信号Sg4によって、圧力室21の容積は減少するが、バルブ23が開かれていることから、キャピラリー10内のうちの第1液体L1及び第2液体L2よりも第2端12側の部分の増圧は行われない。ひいては、第1液体L1及び第2液体L2の位置は変化しない。
【0094】
上記のバルブ23を開いてから時刻t4までの所定時間は、バルブ23を開くのに十分な時間とされる。電位V4は、初期電位V0に対して、及び/又は基準電位に対して、同一であってもよいし、高くてもよいし、低くてもよい。図示の例では、電位V4は初期電位V0と同一とされている。なお、電位V4が基準電位である場合においては、復元信号Sg4は、エア吸引信号Sg3を出力している状態から、出力を停止する状態へ遷移する過程に生じる立ち下がりの部分(信号として意図的に出力されたものではない部分)であってもよい。
【0095】
その後、第2制御部25は、時刻t4から所定時間が経過したと判定すると、開放流路28を閉じるようにバルブ23を制御する。なお、この制御が、信号の出力及び信号の出力の停止のいずれによってなされてもよいことは既に述べたとおりである。時刻t4からの所定時間は、復元信号Sg4によってアクチュエータ40が電位V4に対応する変位となるのに十分な時間とされる。
【0096】
(時刻t5~t8:混合等)
第1制御部24は、バルブ23を閉じる制御を開始後、所定時間が経過したと判定すると(時刻t5)、圧力室21の容積が増減を繰り返すように駆動部50を駆動させる混合信号Sg5(Sg51及びSg52)を出力する。これにより、
図5(b)(
図5(f))、
図5(c)及び
図5(d)に示される液体の第2端12側への移動と、
図5(d)、
図5(e)及び
図5(f)に示される液体の第1端11側への移動とが交互に繰り返される。ひいては、第1液体L1及び第2液体L2が攪拌され、両者が混合される。繰り返しの回数は適宜に設定されてよい。
【0097】
その後、例えば、混合された液体は、キャピラリー10内(例えば第2部材16内)に保持された状態で光が照射されてその性質が調べられる。例えば、蛍光測定、散乱測定、吸光測定及び/又は分光測定が行われる。特に図示しないが、測定に先立って、時刻t3~t4において任意の位置へ液体を移動させた動作と同様の動作により、測定に適した位置へ液体を移動させてもよい。また、混合された液体は、キャピラリー10内に保持されたまま測定に供されるのではなく、キャピラリー10から吐出されて種々の用途に利用されてもよい。
【0098】
なお、
図4では、駆動信号SgAの波形は、矩形波等の複数の直線からなる波形とされている。ただし、駆動信号SgAの波形の一部又は全部は、正弦波等の曲線からなる波形とされても構わない。
【0099】
[ピペットの混合動作]
混合信号Sg5は、圧力室21の容積が増加するように駆動部50を駆動させる第1信号Sg51と、圧力室21の容積が減少するように駆動部50を駆動させる第2信号Sg52とを交互に繰り返し含んでいる。
図5(b)(
図5(f))、
図5(c)及び
図5(d)に示されているように、圧力室21の容積の減少により、液体(第1液体L1及び第2液体L2)は、少なくとも一部が第1孔10aから第2孔10bへ流れる。同様に、
図5(d)、
図5(e)及び
図5(f)に示されているように、圧力室21の容積の増加により、液体は、少なくとも一部が第2孔10bから第1孔10aへ流れる。すなわち、液体は、少なくとも一部が境界14を繰り返し超えて往復する。
【0100】
液体(L1+L2)は、図示の例のように、その全部が境界14を繰り返し超えてもよいし、図示の例とは異なり、一部のみが境界14を繰り返し超えてもよい。液体の全部が境界14を繰り返し超える場合において、液体は、境界14を超えた後に境界14から離れ、その後、引き返してもよいし、境界14を超えて境界14に隣接している状態から引き返してもよい。「隣接している」については、エア吸引信号Sg3及び
図5(b)の説明で述べたとおりである。また、液体の全部及び一部のいずれが境界14を超えるか否か、境界14から離れるか否かは、第1孔10a側へ流れるときと、第2孔10b側へ流れるときとで異なっていてもよいし、往復を繰り返す過程で変化してもよい。
【0101】
本実施形態の説明では、第1孔10a側へ流れるときと、第2孔10b側へ流れるときとの双方において、液体(L1+L2)は、境界14を超えて境界14に隣接している状態から引き返し、かつその状態が往復を繰り返しても維持される場合を例に取る。このような場合においては、例えば、液体全体に境界14を超えさせることができ、かつ往復の周期を短くすることができる。
【0102】
第1信号Sg51及び第2信号Sg52は、上記のような動作が実現されるように適宜に設定されてよい。
【0103】
例えば、まず、本実施形態では、混合直前において、液体(L1+L2)は、エア吸引信号Sg3によって境界14に対して第1端11側に隣接している。この場合、混合信号Sg5は、例えば、最初に(時刻t5に出力が開始される信号として)、液体を第2端12側へ移動させる第1信号Sg51を含んでいる。また、第1信号Sg51の電位の変化量(圧力室21の容積の増加量)、及び第2信号Sg52の電位の変化量(圧力室21の容積の減少量)は、それぞれ、概略、液体(L1+L2)の体積に相当している。混合信号Sg5が最後に含む信号は、第1信号Sg51及び第2信号Sg52のいずれでもよく、例えば、混合信号Sg5が開始から2番目に含む信号(本実施形態では第2信号Sg52)である。
【0104】
なお、上記とは異なり、エア吸引信号Sg3によって境界14よりも第2端12側に液体を隣接させてもよい。この場合、混合信号Sg5は、例えば、最初に、液体を第1端11側へ移動させる第2信号Sg52を含んでよい。また、エア吸引信号Sg3によって液体を境界14に跨らせてもよい。この場合、混合信号Sg5は、例えば、最初に、第1信号Sg51又は第2信号Sg52の電位の変化量を低減した信号を含んでよい。逆に、エア吸引信号Sg3によって液体を境界14から離してもよい。この場合、混合信号Sg5は、例えば、最初に、第1信号Sg51又は第2信号Sg52の電位の変化量を増加させた信号を含んでよい。
【0105】
第1信号Sg51と第2信号Sg52とは、一方を時間経過に対して反転させたときに、互いに一致する波形であってもよいし、異なる波形であってもよい。換言すれば、両信号の波形は、
図4に示すグラフの縦軸に平行な不図示の対称軸に関して、線対称であってもよいし、非対称であってもよい。
図4に示す例では、両信号の波形は非対称である。
【0106】
具体的には、例えば、第1信号Sg51の電位の時間経過に対する変化率は、第2信号Sg52の電位の時間経過に対する変化率よりも大きい。図示の例では、第1信号Sg51は、急激に(立ち上がり時間が略0で)電位が上昇する信号とされており、第2信号Sg52は、時間に比例して徐々に電位が降下する信号とされている。すなわち、第1信号Sg51と、これに続く第2信号Sg52との組み合わせは、いわゆる逆のこぎり波状の信号となっている。これらの変化率の具体的な値は適宜に設定されてよい。
【0107】
また、例えば、第2信号Sg52の電位の変化量dV52(圧力室21の容積の減少量)は、第1信号Sg51の電位の変化量dV51(圧力室21の容積の増加量)よりも大きい。その差は、適宜に設定されてよく、例えば、後述する作用が奏されるように設定されてよい。なお、変化量dV52が変化量dV51よりも大きいことから、混合信号Sg5の電位は、徐々に低下していく。混合が完了したとき(混合信号Sg5の出力完了時)、混合信号Sg5の電位は、初期信号Sg0の電位V0及び/又は基準電位に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。
【0108】
以上のとおり、本実施形態では、ピペット1は、長さ方向の両端(第1端11及び第2端12)が開口しているキャピラリー10と、第2端12を介してキャピラリー10の内部に通じている圧力室21と、圧力室21の容積を変化させる駆動部50と、駆動部50を制御する制御部(第1制御部24)と、を有している。キャピラリー10は、第1端11側に位置する第1管部17と、第2端12側に位置する第2管部18と、を有している。第1管部17は、長さ方向に貫通する第1孔10aを有しており、第2管部18は、長さ方向に貫通する第2孔10bを有している。第2孔10bは、第1孔10aの第2端12側に繋がっている。第1孔10aの内面の撥水性と、第2孔10bの内面の撥水性とは、互いに異なっている。そして、第1制御部24は、圧力室21の容積が増減を繰り返し、これによりキャピラリー10内の液体の少なくとも一部が第1孔10aと第2孔10bとの境界を繰り返し超えて往復するように駆動部50を制御する。
【0109】
従って、例えば、液体が境界14を超えるときに、撥水性の相違に起因して液体の流れに乱れが生じ、ひいては液体が攪拌されやすくなる。具体的には、例えば、液体が、撥水性が低い側から高い側へ境界14を超えるとき、キャピラリー10の内面付近の液体は、キャピラリー10の内面に沿って流れにくくなる。その結果、例えば、液体の流れがキャピラリー10の内面から剥離しやすくなり、渦が生じやすくなる。この渦により、液体の攪拌が促進される。ひいては、例えば、2液の混合が促進される。
【0110】
また、本実施形態では、第1孔10aの内面の撥水性は、第2孔10bの内面の撥水性よりも高い。
【0111】
この場合、例えば、第2孔10bから第1孔10a側への流れは、その逆方向の流れよりも抵抗が大きくなりやすい。その結果、例えば、混合の際に液体が第1端11から吐出されてしまうおそれが低減される。また、第1孔10aが境界14から第1端11に至るまで延びるものである場合においては、第1端11から液体を吸引するときに、液体が第1端11に付着するおそれが低減される。その結果、例えば、圧力室21の容積の増加と液体の吸引量との対応関係が安定し、液体の計量の精度が向上する。
【0112】
また、本実施形態では、第1孔10aと第2孔10bとの境界14において、第1孔10aの内径が第2孔10bの内径よりも大きい。
【0113】
この場合、例えば、液体が境界14を超えるときに、内径の相違に起因して液体の流れに乱れが生じ、ひいては2液が混合されやすくなる。具体的には、例えば、液体が、内径が小さい側から内径が大きい側へ境界14を超えるとき、キャピラリー10の内面から流れが剥離しやすくなり、渦が生じやすくなる。この渦により、液体の攪拌が促進される。さらに、第1孔10aの撥水性が第2孔10bの撥水性よりも高い場合においては、撥水性が高くなる方向と、内径が大きくなる方向とが一致する。その結果、例えば、撥水性が高くなることによって剥離が生じやすくなる効果と、内径が大きくなることによって剥離が生じやすくなる効果とが重畳されることになる。ひいては、攪拌促進の効果が向上する。
【0114】
また、本実施形態では、第1孔10aは、第2孔10b側ほど内径が大きくなっている。
【0115】
この場合、例えば、第1孔10aの内径が一定である場合に比較して、液体の乱れが生じやすい。その結果、例えば、液体の攪拌が促進される。また、例えば、第1孔10aが第1端11まで延びている場合においては、第1端11の内径を小さくして、液体の計量の精度を向上させることができる。その一方で、境界14において第1孔10aの内径を第2孔10bの内径よりも大きくし、上述した内径の相違による混合促進の効果を得ることができる。
【0116】
また、本実施形態では、キャピラリー10は、第1部材15と、第2部材16とを有している。第1部材15は、第1孔10aを有している中空状である。第2部材16は、第2孔10bを有している中空状であり、第1部材15と固定されている。
【0117】
この場合、例えば、第1孔10aを構成する材料と第2孔10bを構成する材料とを互いに異ならせることが容易である。その結果、例えば、第1孔10aの撥水性と第2孔10bの撥水性とを互いに異ならせることが容易である。
【0118】
また、本実施形態では、第1部材15は、第1孔10aと、第1孔10aから第1端11とは反対側に延びており、第1孔10aよりも内径が大きい第3孔15aと、第1孔10aの内径が第3孔15aの内径よりも小さいことによる段差部15bと、を有している。第2部材16は、第3孔15aに挿入されて段差部15bに係止されており、また、段差部15b側に先端面16aを有している。段差部15bの先端面16a側の段差面15baは、キャピラリー10の径方向の内側ほど先端面16a側に位置するように傾斜している。段差部15bの、径方向の内側の角部15bbは、先端面16aに当接している。
【0119】
この場合、例えば、第2部材16を第1部材15に挿入する簡便な構成で、両者を連結することができる。また、例えば、第2部材16と段差部15bとの当接は、線接触であることから、面接触である場合に比較して、接触圧を確保しやすい。その結果、例えば、境界14における密閉性を向上させることができる。また、例えば、第2部材16の先端面16aと段差部15bとの間には、角部15bbの外側に空間が構成される。この空間は、例えば、第1部材15の内面と第2部材16の外面との間に接着剤を介在させたときに、余剰な接着剤を逃がすことに利用可能である。
【0120】
また、本実施形態では、第1部材15は、樹脂からなり、第2部材16は、ガラスからなる。
【0121】
この場合、例えば、第1部材15の撥水性を高くするとともに、第2部材16の撥水性を低くすることが容易である。例えば、第1部材15の接触角を95°以上とし、第2部材16の撥水性を60°以下とすることが容易である。すなわち、第1孔10aと第2孔10bとの撥水性の相違を大きくすることが容易である。その結果、例えば、撥水性の相違による混合促進の効果を向上させることが容易である。さらに、第1部材15の材料として成形が容易な樹脂が用いられることから、第1端11付近の寸法の精度を向上させ、液体の計量の精度を向上させることができる。その一方で、第2部材16の材料として透光性を確保することが容易なガラスが用いられることから、光を用いた液体の分析の精度を向上させることができる。
【0122】
また、本実施形態では、第1制御部24は、信号レベル(電圧)が時間経過に対して変化して波形をなす駆動信号SgAを駆動部50に出力する。駆動部50は、圧力室21の容積が駆動信号SgAの電圧に対応した容積になるように駆動信号SgAの電圧の時間経過に対する変化に追随して圧力室21の容積を変化させる。駆動信号SgAは、第1信号Sg51と第2信号Sg52とを交互に繰り返し含んでいる。第1信号Sg51は、圧力室21の容積の増加によって液体の少なくとも一部が第1孔10aから第2孔10bへ流れるように駆動部50を駆動させる信号である。第2信号Sg52は、圧力室21の容積の減少によって液体の少なくとも一部が第2孔10bから第1孔10aへ流れるように駆動部50を駆動させる信号である。第1信号Sg51の波形と、第2信号Sg52の波形を時間経過が逆になるように反転させた波形とは互いに異なる。
【0123】
この場合、例えば、液体が第1孔10aから第2孔10bへ流れるときと、その逆方向へ流れるときとで、それぞれに適した流れを形成することができる。例えば、第1孔10aと第2孔10bとでは撥水性、内径及び/又は第1端11に対する位置等が異なるが、この相違を考慮した流れを形成することができる。例えば、以下のとおりである。
【0124】
本実施形態では、第2信号Sg52の信号レベル(電圧)の時間経過に対する変化率の絶対値は、第1信号Sg51の電圧の時間経過に対する変化率の絶対値よりも小さい。
【0125】
この場合、上記2つの変化率の絶対値が同一の場合に比較して、第2孔10bから第1孔10aへの流れは緩やかになる。その結果、第2孔10bから第1孔10aへ液体が流出する際に、液体が細かい粒状になって飛び散る現象が生じるのを低減することができる。また、例えば、第1端11から液体が吐出されるおそれが低減される。
【0126】
また、本実施形態では、第1孔10aの内面の撥水性は、第2孔10bの内面の撥水性よりも高い。第2信号Sg52の信号レベル(電圧)の変化量dV52の絶対値は、第1信号Sg51の電圧の変化量dV51の絶対値よりも大きい。
【0127】
この場合、境界14を繰り返し超えて往復する液体を一定の範囲に留めることが容易化される。具体的には、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、原理の厳密性は無視する。液体がキャピラリー10内に位置しているとき、第1端11側の液面と、第2端12側の液面とが形成される。各液面においては、液面を縮ませようとする表面張力が作用する。この表面張力に起因して、当該表面張力の大きさと接触角の大きさとに応じた大きさで、各液面に対してキャピラリー10の長さ方向(x方向)に作用する力が生じる。液体が境界14を跨いでいる状態となっているとき、第1孔10aの撥水性が第2孔10bの撥水性よりも高いことから、第1孔10a内の液面における接触角は、第2孔10b内の液面における接触角よりも大きい。従って、第1孔10a内の液面に作用するx方向の力と、第2孔10b内の液面に作用するx方向の力とは釣り合わない。その結果、液体は、全体として、接触角が大きい側から接触角が小さい側への力を受けることになる。すなわち、液体は、第1孔10aから第2孔10b側へ流れようとする。従って、第1信号Sg51の電圧の変化量dV51の絶対値と、第2信号Sg52の電圧の変化量dV52の絶対値とが同一であると、液体の往復を繰り返す過程で、液体の位置が徐々に第2孔10b側へずれていくおそれがある。しかし、変化量dV52の絶対値を変化量dV51の絶対値よりも大きくすることによって、液体の位置を一定の範囲に維持することができる。その結果、例えば、液体の全部が境界14を超えるとともに、超えた直後に引き返すように、液体の往復を繰り返すことが容易になる。ひいては、撥水性の相違を利用した攪拌促進の効果を向上させることができる。
【0128】
[変形例]
(第2部材に係る変形例)
図6(a)は、変形例に係るキャピラリー210の構成を示す断面図である。キャピラリー210は、第2部材を構成する材料のみが実施形態のキャピラリー10と相違する。具体的には、変形例に係る第2部材216は、本体216xと、本体216xの表面のうち、少なくとも内面の一部を覆う撥水膜216yとを有している。本体216xは、例えば、ガラスからなる。撥水膜216yの材料については既に述べたとおりである。このような構成においても、第1孔210aの内面の撥水性と、第2孔210bの内面の撥水性とを異ならせることによって、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
(駆動信号に係る変形例)
図6(b)は、変形例に係る駆動信号SgBを示す図である。この図は、
図4の一部(概ね時刻t6~t8)に相当する。この変形例では、駆動信号SgBが含む第1信号Sg51及び第2信号Sg52は、曲線によって構成されている。より具体的には、図示の例では、第1信号Sg51及び第2信号Sg52それぞれは、正弦波の1/4周期分によって構成されている。このような駆動信号SgBにおいても、第2信号Sg52の変化率の絶対値は、第1信号Sg51の変化率の絶対値よりも小さくされてよい。
【0130】
ここで、第1信号Sg51及び第2信号Sg52それぞれは、その波形が曲線で構成されているということは、各信号の開始から終了までの間に、変化率が変化するということである。このような場合において、第2信号Sg52の変化率の絶対値が、第1信号Sg51の変化率の絶対値よりも大きいか否かは、両者の変化率の平均値を基準に判断してよい。すなわち、図示の例では、第1信号Sg51は、時間長さT1の間に変化量dV1が生じているから、その変化率の平均値は、dV1/T1である。同様に、第2信号Sg52は、時間長さT2の間に変化量dV2が生じているから、その変化率の平均値は、dV2/T2である。そして、|dV2/T2|>|dV1/T1|であれば、第2信号Sg52の変化率の絶対値は、第1信号Sg51の変化率の絶対値よりも大きいと判定されてよい。
【0131】
なお、特に図示しないが、圧力室21の容積の増減を繰り返すための信号は、矩形波に類似した形状であってもよい。この場合、例えば、矩形波の立ち上がり部分が第1信号であり、矩形波の立ち下がり部分が第2信号であり、その間の電位が一定の部分は、第1信号及び第2信号以外の信号である。
【0132】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0133】
例えば、ピペットは、該ピペット自体が吸引した2液を混合するものに限定されない。具体的には、例えば、内面に反応物質が予め成膜されたキャピラリーがピペット本体に取り付けられ、その後、液体(1液)がピペットによって吸引され、キャピラリーの長さ方向における往復の流れによって反応物質が液体に溶け出すようにしてもよい。また、例えば、ピペットは、2液が既に混合されている液体(1液)、溶質が既に含まれている溶媒(1液)、又は微小物質が既に分散されている液体(1液)を吸引して、混合、溶解又は分散をさらに進めるために利用されてもよい。また、ピペットは3液以上を吸引して混合するものであってもよい。
【0134】
また、例えば、上述した実施形態では、エア吸引後にバルブ23の開閉を行う例を示したが、場合によっては、バルブ23の開閉を行わなくてもよい。この場合、復元信号Sg4は不要となり、エア吸引信号Sg3に続いて混合信号Sg5が出力されるようにしてもよい。また、バルブ23および制御回路25を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…ピペット、10…キャピラリー、10a…第1孔、10b…第2孔、21…圧力室、50…駆動部、24…第1制御部(制御部)、11…第1端、12…第2端、17…第1管部、18…第2管部。