(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】洪水バリアの地面封着構成体
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20221007BHJP
E02B 7/22 20060101ALI20221007BHJP
E06B 9/00 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E02B7/22
E06B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020544106
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018077363
(87)【国際公開番号】W WO2019086210
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-15
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520153006
【氏名又は名称】アクアフェンス・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレッド・シャンドルフ・ダール
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ルジアーノ・ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】リハーズ・ロジンス
(72)【発明者】
【氏名】マルティンス・ヴァスクス
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-218415(JP,A)
【文献】特開2016-125238(JP,A)
【文献】米国特許第6692188(US,B1)
【文献】特表2001-525025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0045243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E02B 7/22
E06B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型の洪水バリア用の地面封着構成体(3)であって、前記洪水バリアは、前記地面封着構成体(3)および垂直壁部(2)を備え、前記垂直壁部(2)は、前記洪水バリアを形成するように、前記地面封着構成体(3)の第1のエッジに沿って前記地面封着構成体(3)に対して実質的に垂直方向に
配置されるように構成され、前記地面封着構成体(3)は、地面上に位置決めされるように構成され、
前記地面封着構成体(3)は、
前記地面封着構成体(3)の本体を形成する主封着層(32)であって、水に対して不透過性である主封着層(32)と、
前記主封着層(32)の地面側下面上に配置された底部封着層(33)であって、前記底部封着層(33)は、前記地面封着構成体の前記第1のエッジから最も遠位に位置する前記主封着層(32)の周囲エッジから距離Lをおいて前記主封着層(32)に対して装着され、それにより、前記底部封着層(33)は、前記主封着層(32)および前記底部封着層(33)が互いに対して実質的に平行である場合に、前記底部封着層(33)が前記主封着層(32)に対して装着される箇所から前記主封着層(32)の前記周囲エッジ(2a)に向かって延在する自由端部(3a)を有し、前記底部封着層(33)は、高い可撓性および/または粘着性を有する材料を含み、前記材料は、伸縮性を有し、水で湿らされた場合に地面に対して付着することにより、前記地面封着構成体(3)と前記地面との間における水の通過を防止するバリアを形成する、底部封着層(33)と
を備える、地面封着構成体(3)。
【請求項2】
前記底部封着層(33)は、ゴムラテックスから作製される、請求項1に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項3】
前記主封着層(32)は、キャンバスから作製される、請求項1または2に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項4】
前記地面封着構成体は、
前記主封着層(32)の上に配置されたおもり層(31)であって、前記主封着層(32)および前記底部封着層(33)に対して力を印加して、前記主封着層(32)および前記底部封着層(33)を前記地面に向かって押し付けることにより、前記主封着層(32)および前記底部封着層(33)が水面上に浮かぶのを防止する、おもり層(31)
をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項5】
前記おもり層(31)は、前記主封着層(32)の自由端部および前記底部封着層(33)の自由端部が前記地面に対して押し付けられるように、前記地面封着構成体の前記第1のエッジから最も遠位に位置する前記主封着層(32)の前記周囲エッジに配置される、請求項4に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項6】
前記おもり層(31)は、LEDグレインで充填されたキャンバスチューブにより形成される、請求項5に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項7】
前記おもり層(31)は、前記主封着層(32)に対して溶接されている、請求項4から6のいずれか一項に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項8】
前記おもり層(31)は、前記主封着層(32)に対して脱着可能に連結されている、請求項4から6のいずれか一項に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項9】
前記地面封着構成体(3)は、穿孔された上方の層を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の地面封着構成体(3)。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の地面封着構成体(3)を備える洪水バリア。
【請求項11】
前記垂直壁部(2)は、前記地面封着構成体(3)上に除去可能に配置される、請求項10に記載の洪水バリア。
【請求項12】
前記垂直壁部(2)は、前記垂直壁部(2)が前記地面封着構成体(3)の方へと折り畳まれるかまたは前記地面封着構成体(3)から離れる方へと折り畳まれるように構成されるように、前記地面封着構成体(3)上に傾斜可能に配置される、請求項10または11に記載の洪水バリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における実施形態は、氾濫水に対する局所的バリアを形成するために、地面封着構成体と地面との間にシールを形成するための封着手段を有する地面封着構成体を備える洪水バリアに関する。
【背景技術】
【0002】
融雪、暴風、または豪雨により引き起こされる洪水は、資産に対する大きな損害を毎年引き起こし、時としてはさらに人身傷害を引き起こす。
【0003】
一部の都市部地域では、豪雨による突発性洪水が特に発生しやすい。これらの洪水は、突発的に発達し、例えば地下へ余剰水を送る内水排除システムなどによる水はけを行うまで数時間にわたり継続する。突発性洪水事象の発生時には、短時間の洪水期間でも、一階部分に位置する企業に対して深刻な資産損害を、ならびに清掃および修復のために施設が閉鎖される場合には収益損失を与えるためには十分である。
【0004】
様々なタイプのバリケードが、洪水バリアとして使用される。一例のバリケードは、土嚢バリケードである。しかし、かかる土嚢バリケードは、構築に時間がかかり、また構築に多大な労力を必要とする。さらに撤去に多大なコストがかかり面倒である。
【0005】
非使用時には管理条件下において保管され得る洪水バリアが知られている。例えば、SE507121は、氾濫水に対するバリアを形成するために地面上に配置される可搬型の洪水バリアセクションについて記載している。この可搬型の洪水バリアは、垂直壁部を備え、この垂直壁部は、支持プレートに対して下方エッジに沿って装着される。支持プレートから壁部の洪水側の壁部まで延在する係留紐が、氾濫水の圧力に対して壁部が押し倒されるのを防ぐ。折畳み構成では、壁部と支持プレートとは分離することが可能であり、支持プレートは壁部を固定するための溝を有する。可撓性防水シートが、壁部と支持プレートとの間の連結部を介した漏れを防止する。
【0006】
SE507121に記載の洪水バリアの主な欠点は、支持プレートの下方から水が漏れ得る点である。米国特許出願公開第2003433176A号は、弾性、変形可能、かつ不透過性のパーツによる洪水バリアと、壁部および表面に対接して封着する封着機構とによりこの問題の解決を試みている。封着機構は、流体静力学的な力に基づいている。米国特許出願公開第2003433176A号の解決策が地面まで進む方法は、チャンバを介したものであり、可撓性部分は、このチャンバから壁部に対して垂直方向にさらに延在し、地面上において非固定にならないように数本のスティックを介して固定される。この場合に、流体静力学的な力のみが、洪水バリアを地面に対して封着させるために利用され、すなわち氾濫水の少なくとも一部が静止している状態となる。
【0007】
既述のように、米国特許出願公開第2003433176A号は、永久固定を利用する。バリアが歩道などの公共エリアに配置されなければならない場合には、地面アンカリングは不可能となり得る。建築物の正面が維持されなければならない場合には、壁部アンカーは永久陳列するには許容しがたいものとなり得る。アンカーまたは固定物の設置は、高額な追加コストとなり得る技能労働者が必要となり得る。いくつかの例では、アンカリングおよび永久固定は、とりわけ切迫した洪水などの高ストレス状況では、供給業者の意図するような使用が困難である。
【0008】
さらに、米国特許出願公開第2003433176A号は、平らではない地面には対応しておらず、例えば幾分か傾斜したまたは湾曲した歩道上で使用される場合などに滲出の著しい増加を被る。
【0009】
したがって、使用が容易であり漏水を減少させる、改良された洪水バリアが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】SE507121
【文献】米国特許出願公開第2003433176A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記を鑑み、本開示の目的は、先行技術の洪水バリアに関連する欠点の少なくとも一部を解消するまたは少なくとも緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項に記載の第1の態様においては、可搬型の洪水バリア用の地面封着構成体により達成される。洪水バリアは、地面封着構成体および垂直壁部を備える。垂直壁部は、前記洪水バリアを形成するように、地面封着構成体の第1のエッジに沿って地面封着構成体に対して実質的に垂直方向に地面封着構成体上に配置可能である。地面封着構成体は、地面上に位置決めされるように構成される。地面封着構成体は、地面封着構成体の本体を形成する主封着層を備える。主封着層は、水に対して不透過性である。地面封着構成体は、主封着層の地面側下面上に配置された底部封着層をさらに備える。底部封着層は、地面封着構成体の第1のエッジから最も遠位に位置する主封着層の周囲エッジから距離Lをおいて主封着層に対して装着される。底部封着層は、主封着層および底部封着層が互いに対して実質的に平行である場合に、底部封着層が主封着層に対して装着される箇所から主封着層の周囲エッジに向かって延在する自由端部を有するように、主封着層に対して装着される。底部封着層は、高い可撓性および/または粘着性を有する材料を含み、この材料は、伸縮性を有し、水で湿らされた場合に地面に対して付着することにより、地面封着構成体と地面との間における水の通過を防止するバリアを形成する。
【0013】
本明細書における実施形態の第2の態様によれば、上記目的は、実施形態の第1の態様による地面封着構成体を備える洪水バリアにより達成される。
【0014】
地面封着構成体の様々な実施形態が、従属請求項により定義される。
【0015】
換言すれば、本開示は、洪水バリア用の改良された地面封着構成体であって、この地面封着構成体が、管理可能なレベルにまで洪水バリアの下方における漏水を実質的に防止または少なくとも緩和し、それにより洪水バリアの性能を劇的に改善する、地面封着構成体を提供する。この地面封着構成体は、可撓性および軽量性を有し、それにより迅速な折畳みおよび開きが可能となり、非使用時の保管および搬送が容易となるため、使用がさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願による地面封着構成体を備える洪水バリアの斜視図である。
【
図2】本願による地面封着構成体を有する洪水バリアのための地面封着構成体の一例の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、改良された地面封着構成体を備える可搬型の洪水バリアの実施形態を説明する。
【0018】
本明細書における一例の実施形態による地面封着構成体を備える洪水バリアが
図1に示される。この洪水バリアは、以下の構成要素、すなわち、洪水バリアの保管中に利用される折畳み状態において洪水バリアを保管するためのバッグと、洪水バリアの使用時に対象物に対して洪水バリアを固定するためのアンカーと、主バリア1と、主バリア1と洪水バリアの使用時に保護されるべき対象物との間の間隙を封鎖するための少なくとも1つの側部クロージャとを備え得る。
【0019】
当該の洪水バリアは、数秒以内に建築物の進入箇所を保護するためにとりわけ適合化され得る。洪水バリアの初回使用の前に、アンカーは建築物上に取り付けられてもよく、この場合には、これらのアンカーは建築物に対して洪水バリアをアンカリングするために使用され得る。アンカーは、例えば該当する進入箇所の近傍に取り付けられてもよく、例えば該当する進入箇所のドアフレーム上、または前記進入箇所に隣接する壁部もしくは窓の上に取り付けられ得る。アンカーは、離散レールまたは小バケツであってもよく、将来的な利用のために建築物上に永久的に配置されたままにされ得る。
【0020】
主バリア1は、折り畳まれた非作動状態において、バッグ内に保管され得る。洪水バリアが必要な場合には、主バリア1は、開かれ、例えばドアなどの進入箇所の正面に、および例えばドアフレームなどの進入箇所の周囲環境と同一平面をなして位置決めされ得る。例えば前記建築物のドアフレーム、壁部、または窓などである建築物と、主バリア1との間に残された間隙は、少なくとも1つの側部クロージャを装着することにより封鎖され得る。主バリア1は、地面上に水平に配置されるように構成された地面封着構成体3と、主バリア1の立設状態において地面封着構成体3に対して垂直に配置される垂直壁部2とを備える。いくつかの実施形態では、垂直壁部2は、主バリア1の保管を容易にするために地面封着構成体3から分解され得るまたは地面封着構成体3の方へと折り畳まれ得るように、除去可能および/または傾斜可能に地面封着構成体3上に配置され得る。
【0021】
本例の実施形態による地面封着構成体3は、主バリア1の下方における漏水を劇的に減少させ、また同時に上述のような可搬型の洪水バリアの利点を保持する。
【0022】
安定性および封着性のために水の重量のみを利用する発想は、低水位の水に対してはあまり効率的ではない。なぜならば、低水位の水は、地面に対して主バリア1の地面封着構成体3を押し付けるのに十分な重量をもたらさないからである。むしろ、低水位の氾濫水は、地面封着構成体3を水面上に浮上させてしまい得ることにより、主バリア1の下方において水を通過させ得る。この問題を解消するためには、非常に高重量のおもりが、低水位の場合の水重量の代替を果たし得る。しかしこれは、バリアの全重量を法外に増加させる。
【0023】
地面に対する固着能力を、およびしたがって水に対するバリアを形成し、それにより地面封着構成体3の下方における水の滲出を防止する能力を有する、主バリア1の地面封着構成体3のエッジに配置された底部層が、この問題を解決することに本発明者らは気づいた。また、本明細書では、この底部封着層33は、粘着層またはラテックス層とも呼ばれる場合がある。前記底部封着層33を形成する材料の特徴は、薄くあるべきであり、例えば主層よりも薄く、少なくとも水がしみ込んだ場合には伸縮層および粘着性を有するべきである。したがって、この材料は、地面封着層の下方において滲出する局所的水流中に吸引され得ることにより、可搬型の洪水バリアの下方に形成される水流に対して適合してこの水流を封鎖する。また、材料の粘着性特徴により、この材料が地面に対して固着することによって、主層と地面との間にバリアが形成され、したがって漏水が防止または減少される。
【0024】
いくつかの実施形態では、地面封着構成体3は、主バリア1の地面封着構成体3の本体を形成しさらに地面封着構成体3のエッジを形成する中間層または主封着層を備え得る。この中間層は、いくつかの実施形態ではキャンバス層であってもよい。
【0025】
さらなる実施形態では、地面封着構成体3は、底部層の浮遊を防止する上方おもり層をさらに備え得る。このおもり層は、底部層に対して追加的な安定性および重量を付加し、それにより底部層は、地面に対して押し付けられて表面の粗度および平らでないことに対して適合し、水を封鎖する。さらに、低水位の場合には、粘着層は、地面封着層の下方において滲出する局所的水流中に吸引され、したがってこの滲出を低減させる。
【0026】
図2は、本明細書における実施形態による洪水バリアのための地面封着構成体を開示する。以降では、改良された地面封着制を有する地面封着構成体の例示の実施形態に関して論じる。地面封着構成体は、主封着層32および底部封着層33を備える。地面封着構成体は、おもり層31をさらに備え得る。これらの実施形態では、底部封着層33は、粘着層またはラテックス層とも呼ばれる場合もあり、主封着層は、キャンバス層と呼ばれる場合もある。
【0027】
主封着層
主封着層32は、バリアの本体、およびさらには洪水バリアの水平セクション上のエッジを形成し、洪水バリアの地面封着構成体と呼ぶこともできる。十分な水量が主封着層32の上に位置する場合には、水重量が、地面に対して下方へと主封着層32を押し付ける。主封着層32は、例えばキャンバスなどの可撓性材料から作製される。この可撓性により、主封着層32は、地表面の形状に対して非常に良好に適合する。しかし、この効果は、推移がある特定レベルに達する場合、例えば水位が150mm超まで上昇する場合に最も顕著となる。この水位を超える場合には、主封着層32は、平らでない表面上でも良好に機能する水封着機構を単独で実現する。主封着層32の重要な特徴は、軽量性、可撓性、および高い引張強度である。可撓性は、主封着層32を地面に対して適合させるために重要である。軽量性および高い引張強度は、地面封着ではなくシステム全体にとっての要件である。地面封着構成体は、支持プレート34をさらに備え、この支持プレート34は、主封着層32により囲まれ得る。支持プレート34は、例えば氾濫水の圧力に対抗して壁部を支持するために、垂直壁部および/または支持プレートと垂直壁部との間に延在する1つまたは複数の係留ロッドに対して連結するように構成されてもよい。
【0028】
底部封着層
粘着層と呼ばれる場合もある底部封着層33は、底部地面封着層である。底部封着層33は、伸縮性をすなわち最大1000%の伸張性を有し容易に伸長し、材料が湿状態にある場合に地面に対するある度合いの摩擦力を提供する、高い可撓性および/または粘着性を有する材料を含み、それにより地面に対して粘着し、主封着層32と地面との間にシールを形成する。また、この底部封着層33は、粘着性を有する材料とも呼ぶことができる。これにより、水が地面封着構成体と地面との間を流れることが防止される。底部封着層33は、主封着層32の地面側下面に対して装着される。底部封着層33は、垂直壁部から最も遠位に位置する主封着層32の周囲エッジから距離Lの位置において主封着層32に対して装着され、それにより底部封着層33および主封着層32の長手方向エッジは、互いに対して実質的に平行となる。本明細書においては、垂直壁部から最も遠位に位置する主封着層32の周囲エッジは、主封着層32の遠位エッジと呼ぶこともできる。
【0029】
底部封着層は、主封着層32および底部封着層33が互いに対して実質的に平行である場合に、主封着層32に対する装着箇所から主封着層32の遠位エッジの方向へと延在する自由端部を有するようにさらに構成される。これにより、底部封着層33は、主封着層32の遠位エッジに向かって自由突出するフラップを形成する。底部封着層33は、主封着層32の実質的に全長にわたり延在する。フラップと呼ばれる場合もある底部封着層33の自由端部は、距離Lと実質的に同一の長さを有し得る。
【0030】
底部封着層33は、いくつかの実施形態では、ストリップとして形成されてもよく、このストリップは、ストリップの長手方向エッジの1つに沿って主封着層32の地面側下面に対して装着される。ストリップの自由長手方向エッジは、主封着層32および底部封着層33が互いに対して実質的に平行である場合に、主封着層32に対して装着されるストリップの長手方向エッジよりも主封着層32の遠位エッジに対してより近くに配置される。いくつかの実施形態では、ストリップは、150mm幅および0.3mm厚さを有するものであってもよいが、ストリップのこれらの寸法は、これに限定されない。底部封着層33は、主封着層32のエッジに沿っておよびその下方に延在してもよく、主封着層32の遠位エッジから距離Lの位置において主封着層32に対して連結され得る。距離Lは、500mm未満の小ささであり、好ましくは100~200mmの範囲内である。いくつかの好ましい実施形態では、距離Lは、150mmであってもよい。好ましい一実施形態では、底部封着層33の材料は、上記で論じた特性を備えるゴムラテックスであってもよい。ラテックスは、高い引張強度および高い伸張性を有し、したがって可撓性および抗引裂き性の両方を有する。また、粘着性ラテックスゴムは、湿潤状態にある場合には良好な摩擦性を有し、吸着カップと同様に平滑表面上に付着することにより、ラテックスゴムは粘着性を有するものとなっている。
【0031】
ラテックスは、水中において浮遊し得るが、おもり層が、主封着層32エッジと底部封着層33エッジの両者と同一平面をなすように、主封着層32および底部封着層33の上に付与されてもよく、これにより、これらの両層エッジの浮上が防止される。
【0032】
水が水平セクションと呼ばれる場合もある地面封着構成体のエッジの下方から滲出する場合に、水圧が、これらの水流において局所的に低下する。底部封着層33は容易に伸長するため、底部封着層33は、水流中に吸引され、この水流を封鎖する。材料が粘着性を有するため、地面に対して付着し、それにより主封着層と地面との間に延在するバリアを形成する。したがって、地表面が例えば古アスファルトなどのように非常に粗い場合でも、地面封着が実現される。そのため、底部封着層33は、高重量を利用することなく、他の場合であれば封鎖が困難である溝および他の小さな形状部の中に吸引される。したがって、地面封着構成体の下方における水流からの流体静力学的な力が、底部封着層33と相互作用し、底部封着層33の地面封着効果を上昇させ、さらに地面封着構成体の下方における水の滲出を低減させる。したがって、地面封着構成体の下方における初期水滲出は、さらなる水の滲出を防止または低減させる地面封着構成体の封着性能を改善するために利用される。水位が上昇しおよび水重量が増加すると、底部封着層33は、水の流体静力学的な圧力により地面に向かってさらに押し付けられ、底部封着層33が可撓性であることは、地面の表面中の平らでない部分または粗面に対してこの底部封着層33が適合するのを大幅に支援する。
【0033】
おもり層
例えば水位が150mm超に上昇する場合など、推移がある特定のレベルに到達すると、地面封着構成体に対して作用する水からの重量が洪水バリアを安定させる。しかし、水位がゼロに近い場合は、安定化に寄与する水重量の多くが失われるため、洪水バリアはより脆弱になる。したがって、追加のおもりが、低水位における洪水バリアの安定性および摩擦力を上昇させるために洪水バリアの地面部分のエッジに対して付加されてもよい。また、キャンバスは水中で若干浮上する場合があり、その防止のために、特に主封着層32がキャンバスから作製される場合には、おもりが主封着層32の遠位エッジの上に直接付加されてもよい。これらの洪水バリアの主要な利点の1つが、バリアの可搬性および折畳み可能である点であるため、おもりは、軽量かつ可撓性を有するものであるべきである。しかし、可撓性は、おもり層31が地面の形状に対して適合するのをさらに補助する。そのため、おもり層31は、主封着層32の遠位エッジに対して可能な限り低い剛直性を付与するように構成される。例えば、主封着層32の遠位エッジの上におもりチューブを溶接することにより、この遠位エッジの可撓性が阻害されるため、平らでない表面上での封着にとっては次善的なものとなり得る。したがって、おもり層31は、好ましくは、キャンバスチューブが約1kg/mの重量を有するようにLEDグレイン(led grains)で充填された例えば約12mmの直径を有するキャンバスチューブとして形成される。キャンバスチューブは、主封着層32の遠位エッジから約150mmのオフセットを有しつつ、主封着層32上に溶接され得る。例えば、このオフセットは、例えば約150mm幅を有し得るキャンバスシートの一方のエッジにおもりチューブを配置し、例えば主封着層32のエッジから150mmなどの位置において主封着層32に対してキャンバスシートの他方のエッジを溶接することによって生じさせてもよい。これにより、おもりチューブおよびキャンバスシートは、主封着層32のエッジの上に「自由な状態で」載置され、したがってこのセクションに対して非常にわずかな追加の剛直性が与えられる。
【0034】
空気が層31、32、33のいずれかの間に捕獲されると、これによりこれらの層は、意図したように地面形状に対して適合することを妨げられる恐れがある。これを克服するために、上方の層31、32は、捕獲された空気が逃げられるのを確保するために穿孔されてもよい。これにより、これらの層およびしたがって地面封着構成体の不要な浮力が防止され得る。
【0035】
主封着層32へのLEDグレインの組込みではなく、三層を用いて地面封着を実現することの利点の1つは、展開ミス、または例えば何者かがバリアを蹴った場合など水平セクションすなわち地面封着構成体のエッジの巻上がりに至る何らかの状況がある場合に、三層型地面封着構成体が、良好に機能する地面封着を実現し続ける点である。おもりチューブが、主封着層32のエッジ上に自由な状態に載置されるのではなく巻き上がった場合には、これは、主封着層32および底部封着層33に対してわずかな影響しか有さず、主封着層32および底部封着層33は意図されたように封着を継続する。
【0036】
第1の層が主封着層に一体化されたLED球(led balls)を備え、第2の層が底部封着層である、2つの地面封着層を有する地面封着構成体を用いた試験によれば、かかるおもりチューブが意図しない状態へと強制的に巻き上げられると、地面封着構成体の下方における水の滲出が2倍に増加することが判明している。おもりチューブ31から主封着層32を切り離した状態にすることにより、接地ミスおよび地面封着セクションに影響を及ぼす他の予測しない状況に対して、地面封着がより確実なものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 主バリア
2 垂直壁部
3 地面封着構成体
31 おもり層、おもりチューブ
32 主封着層
33 底部封着層
34 支持プレート