(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】マシニングセンタ及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20221007BHJP
B23Q 1/58 20060101ALI20221007BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20221007BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
B23Q1/00 Z
B23Q1/58 Z
G05B19/404 G
G05B19/18 C
(21)【出願番号】P 2020554627
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2018040181
(87)【国際公開番号】W WO2020089982
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕児
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184077(JP,A)
【文献】特開2011-215798(JP,A)
【文献】特開平04-365529(JP,A)
【文献】特開2001-009652(JP,A)
【文献】特開2008-238374(JP,A)
【文献】特開2013-126700(JP,A)
【文献】特開2001-105279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0181134(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0642868(EP,A1)
【文献】国際公開第2009/098931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76
B23Q 15/00-15/28
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと回転する工具とを相対的に移動させて、ワークを加工するマシニングセンタにおいて、
基台と、
ワークを支持するテーブルと、
工具を主軸の回転軸線周りに回転させる主軸頭と、
テーブルを主軸の回転軸線に対して平行なZ軸に沿って基台に対して移動させるZ軸駆動装置と、
主軸頭を主軸の回転軸線に対して平行なW軸に沿って基台に対して移動させるW軸駆動装置と、
主軸頭を主軸の回転軸線に対して垂直なY軸に沿って基台に対して移動させるY軸駆動装置と、
テーブルをY軸に対して平行な回転軸線周りのB軸に沿って回転させるB軸駆動装置と、
主軸頭を主軸の回転軸線及びY軸の双方に対して垂直なX軸に沿って基台に対して移動させるX軸駆動装置と、
テーブルと主軸頭とをそれぞれ
X軸、Y軸、Z軸
、B軸、並びにW軸に沿って移動させて、これによって、回転する工具がワークを加工するように、
X軸駆動装置、Y軸駆動装置、Z軸駆動装置
、B軸駆動装置、並びにW軸駆動装置とを制御する、制御装置と、
を備え
、
制御装置が、Z軸とW軸との間の平行度誤差を相殺する方向にテーブルのB軸に沿って回転し、平行度誤差が含む成分に応じてX軸に沿って移動することによって、平行度誤差を補正するようにX軸駆動装置及びB軸駆動装置を制御することを特徴としたマシニングセンタ。
【請求項2】
制御装置が、Z軸とW軸との間の平行度誤差に基づいて、
更に主軸頭のY軸に沿った移
動によって平行度誤差を補正するように、Y軸駆動装
置を制御する、
請求項1に記載のマシニングセンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、マシニングセンタ及びワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタは、工具を回転させ、且つ、工具の回転軸線と平行な方向に工具とワークとを相対移動させながら、ワークを加工することができる(例えば、穴加工等)。例えば、特許文献1は、2つの工具、すなわち、大径の穴を加工するための工具と、小径の穴を加工するための工具と、を保持することが可能な5軸複合工作機械を開示している。この工作機械では、刃物台が、刃物台案内部上を鉛直方向に移動する。刃物台には、工具取付部が設けられている。工具取付部は、大径の穴を加工するための工具を保持する。工具取付部に保持された工具は、刃物台の移動によって鉛直方向に移動するように構成されている。さらに、この工作機械では、ラムが、上記の刃物台上を鉛直方向に移動する。ラムは、小径の穴を加工するための工具を保持する。ラムは、刃物台に対するラムの移動、及び、刃物台案内部に対する刃物台の移動の双方によって、2つの方法で鉛直方向に移動可能に構成されている。ラムは、ワークへのアプローチの際には刃物台の移動によって移動するように、且つ、穴への進入又は退出の際にはラムの移動によって移動するように、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マシニングセンタの分野では、より高速にワークを加工することが望まれている。しかしながら、例えば、深い穴をワークに形成する場合には、長い送りが必要となり、長い加工時間が必要とされる。よって、本願は、より高速にワークを加工することができるマシニングセンタ及びワーク加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ワークと回転する工具とを相対的に移動させて、ワークを加工するマシニングセンタにおいて、基台と、ワークを支持するテーブルと、工具を主軸の回転軸線周りに回転させる主軸頭と、テーブルを主軸の回転軸線に対して平行なZ軸に沿って基台に対して移動させるZ軸駆動装置と、主軸頭を主軸の回転軸線に対して平行なW軸に沿って基台に対して移動させるW軸駆動装置と、主軸頭を主軸の回転軸線に対して垂直なY軸に沿って基台に対して移動させるY軸駆動装置と、テーブルをY軸に対して平行な回転軸線周りのB軸に沿って回転させるB軸駆動装置と、主軸頭を主軸の回転軸線及びY軸の双方に対して垂直なX軸に沿って基台に対して移動させるX軸駆動装置と、テーブルと主軸頭とをそれぞれX軸、Y軸、Z軸、B軸、並びにW軸に沿って移動させて、これによって、回転する工具がワークを加工するように、X軸駆動装置、Y軸駆動装置、Z軸駆動装置、B軸駆動装置、並びにW軸駆動装置とを制御する、制御装置と、を備え、
制御装置が、Z軸とW軸との間の平行度誤差を相殺する方向にテーブルのB軸に沿った回転し、平行度誤差が含む成分に応じてX軸に沿った移動をすることによって、平行度誤差を補正するようにX軸駆動装置及びB軸駆動装置を制御するマシニングセンタである。
【0006】
本開示の一態様に係るマシニングセンタでは、テーブルと主軸頭とが平行なZ軸及びW軸に沿ってそれぞれ移動し、これによって、工具がワークを加工する。したがって、ワークと工具との間の送りが、テーブル及び主軸頭の双方の移動によって達成される。このため、ワーク及び工具の一方のみが送られる場合に比して、より高速にワークを加工することができる。
【0007】
マシニングセンタは、主軸頭を主軸の回転軸線に対して垂直なY軸に沿って基台に対して移動させるY軸駆動装置と、テーブルをY軸に対して平行な回転軸線周りのB軸に沿って回転させるB軸駆動装置と、を更に備えてもよく、制御装置が、Z軸とW軸との間の平行度誤差に基づいて、主軸頭のY軸に沿った移動及びテーブルのB軸に沿った回転の少なくとも一方によって平行度誤差を補正するように、Y軸駆動装置及びB軸駆動装置の少なくとも一方を制御してもよい。本開示の一態様に係るマシニングセンタでは、ワークと工具との間の送りが、Z軸及びW軸に沿った移動の双方によって達成されるため、Z軸とW軸との間の平行度誤差が加工精度に影響を及ぼす可能性がある。そこで、制御装置が、平行度誤差を補正するように、主軸頭のY軸に沿った移動及びテーブルのB軸に沿った回転の少なくとも一方を制御することによって、平行度誤差の影響を低減することができる。したがって、ワークを高精度に加工することができる。
【0008】
同様に、マシニングセンタは、主軸頭を主軸の回転軸線に対して垂直なY軸に沿って基台に対して移動させるY軸駆動装置と、主軸頭を主軸の回転軸線及びY軸の双方に対して垂直なX軸に沿って基台に対して移動させるX軸駆動装置と、を更に備えてもよく、制御装置が、Z軸とW軸との間の平行度誤差に基づいて、主軸頭のY軸に沿った移動及び主軸頭のX軸に沿った移動の少なくとも一方によって平行度誤差を補正するように、Y軸駆動装置及びX軸駆動装置の少なくとも一方を制御してもよい。この場合にも、制御装置が、平行度誤差を補正するように、主軸頭のY軸に沿った移動及びX軸に沿った移動の少なくとも一方を制御することによって、平行度誤差の影響を低減することができる。したがって、ワークを高精度に加工することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、より高速にワークを加工することができるマシニングセンタ及びワーク加工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るマシニングセンタを含むシステムを示す概略側面図である。
【
図2】ワークに穴を形成しているときの
図1のマシニングセンタを示す概略側面図である。
【
図3】
図1のマシニングセンタの概略上面図である。
【
図4】テーブルと主軸頭とが接近しているときの
図1のマシニングセンタを示す概略側面図である。
【
図5】テーブルと主軸頭とが離れているときの
図1のマシニングセンタを示す概略側面図である。
【
図6】Z軸とW軸との間の平行度誤差を示す概略上面図である。
【
図7】平行度誤差を補正するための一例を示す概略上面図である。
【
図8】
図1のシステムにおけるワーク交換操作を示す概略側面図である。
【
図11】ワーク交換操作の際のマシニングセンタ及びロボットの操作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るマシニングセンタ及びワーク加工方法を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合があり、さらに、ある図に示されている構成要素は、他の図面においては省略されている場合がある。
【0013】
図1は、実施形態に係るマシニングセンタ100を含むシステム300を示す概略側面図である。システム300は、例えば、マシニングセンタ100と、ロボット200と、を含むことができる。システム300は、他の構成要素を更に有してもよい。システム300では、例えば、ロボット200が所定の経路(不図示)に沿って移動することができ、マシニングセンタ100を含む複数の加工機が、ロボット200の経路に沿って配置されることができる。なお、
図1では、明確さのために、1つの加工機のみ(すなわち、マシニングセンタ100のみ)が示されていることに留意されたい。例えば、ロボット200は、隣接する加工機(不図示)からマシニングセンタ100にワークWRを搬送することができる、又は、マシニングセンタ100から隣接する加工機にワークWRを搬送することができる。
【0014】
図2は、ワークWRに穴を形成しているときの
図1のマシニングセンタ100を示す概略側面図である。マシニングセンタ100は、例えば、横形であることができ、主軸6の回転軸線Osが水平方向に設定されている。マシニングセンタ100は、例えば、立形であってもよい。マシニングセンタ100は、工具Tを回転させ、且つ、工具Tの回転軸線と平行な方向に工具TとワークWRとを相対移動させながら、ワークWRを加工することができる(例えば、穴、溝、ポケット、貫通孔又は段部等)。マシニングセンタ100は、例えば、ベッド(基台)1と、テーブル2と、コラム3と、主軸頭台4と、主軸頭5と、主軸6と、NC装置(制御装置)7と、自動工具交換装置50(
図3参照)と、を備えることができる。マシニングセンタ100は、他の構成要素を更に有してもよい。
【0015】
マシニングセンタ100の機械座標系に関して、回転軸線Osに平行な方向がZ軸方向(前後方向とも称される)である。コラム3に対してテーブル2が在る側が前であり、反対側が後である。鉛直方向がY軸方向(上下方向とも称される)であり、Z軸及びY軸の双方に垂直な方向がX軸方向(左右方向とも称される)である。
【0016】
図2を参照して、ベッド1は、例えば工場の床に設置されることができる。テーブル2は、ワークWRを支持する。ワークWRは、冶具によって直接的にテーブル2に取り付けられることができ、又は、他の実施形態では、ワークWRは、パレットを介して間接的にテーブル2に取り付けられてもよい。テーブル2は、テーブル台21を介してベッド1上に移動可能に配置されている。
【0017】
図3は、
図1のマシニングセンタ100の概略上面図である。マシニングセンタ100は、テーブル台21をベッド1に対してZ軸に沿って移動させるZ軸駆動装置11を備えている。Z軸駆動装置11は、Z軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL1を有しており、テーブル台21がリニアガイドL1のレール上を移動する。Z軸駆動装置11は、テーブル台21に連結されたボールねじB1と、ボールねじB1を回転させるためのモータM1と、を更に有している。Z軸駆動装置11は、テーブル台21のZ軸座標値を測定するためのスケールを更に有することができる。Z軸駆動装置11によるテーブル台21のZ軸方向の送りは、NC装置7によって制御される。
【0018】
図2を参照して、マシニングセンタ100は、テーブル2をY軸に対して平行な回転軸線Ob周りのB軸に沿って回転させるB軸駆動装置12を備えている。B軸駆動装置12は、例えば、テーブル2をテーブル台21に回転可能に結合するクロスローラベアリングCRと、テーブル2を回転させるモータM2と、を有することができる。B軸駆動装置12は、他の構成であってもよい。モータM2は、例えば、回転軸線Ob周りのテーブル2の回転位置を測定するためのエンコーダ等を含むことができる。B軸駆動装置12によるテーブル2のB軸方向の送りは、NC装置7によって制御される。
【0019】
コラム3は、Z軸方向においてテーブル2と対向するように、ベッド1上に移動可能に配置されている。マシニングセンタ100は、コラム3をX軸に沿って移動させるX軸駆動装置13を備えている。X軸駆動装置13は、X軸に沿ってベッド1上に配置された一対のリニアガイドL3を有しており、コラム3がリニアガイドL3のレール上を移動する。本実施形態では、後方のリニアガイドL3が、前方のリニアガイドL3よりも高く位置付けされており、後方のリニアガイドL3と前方のリニアガイドL3とを結ぶ仮想平面が水平方向に対して傾斜している。このような構成によって、ベッド1が加工反力を効率よく受け止めることができる。
【0020】
X軸駆動装置13は、コラム3に連結されたボールねじB3と、ボールねじB3を回転させるためのモータM3(
図3)と、を更に有している。X軸駆動装置13は、コラム3のX軸座標値を測定するためのスケールを更に有することができる。X軸駆動装置13によるコラム3のX軸方向の送りは、NC装置7によって制御される。
【0021】
図4は、テーブル2と主軸頭5とが接近しているときの
図1のマシニングセンタ100を示す概略側面図である。主軸頭台4は、コラム3に移動可能に配置されている。主軸頭台4は、コラム3の前面から後面まで貫通している。マシニングセンタ100は、主軸頭台4をY軸に沿って移動させるY軸駆動装置14を備えている。Y軸駆動装置14は、Y軸に沿ってコラム3の前面に配置されたリニアガイドL4を有しており、主軸頭台4がリニアガイドL4のレール上を移動する。Y軸駆動装置14は、主軸頭台4に連結されたボールねじ(不図示)と、当該ボールねじを回転させるためのモータM4と、を更に有している。Y軸駆動装置14は、主軸頭台4のY軸座標値を測定するためのスケールを更に有することができる。Y軸駆動装置14による主軸頭台4のY軸方向の送りは、NC装置7によって制御される。
【0022】
主軸頭5は、主軸6の回転軸線Os周りに工具Tを回転させる。主軸頭5は、主軸頭台4に移動可能に配置されている。マシニングセンタ100は、主軸頭5を主軸6の回転軸線Osに平行なW軸に沿って移動させるW軸駆動装置15を備えている。なお、主軸頭5と主軸6とは同心に配置されているため、
図4では、主軸6の回転軸線Osと主軸頭5のW軸とが互いに一致しているように示されていることに留意されたい。W軸駆動装置15は、W軸に沿って主軸頭台4の内部に配置されたリニアガイドL5を有しており、主軸頭5がリニアガイドL5のレールRの下を移動する。本実施形態では、リニアガイドL5のレールRが主軸頭台4に固定され、ブロックBLが主軸頭5に固定されており、主軸頭5が主軸頭台4に吊られている。このような構成によって、上述のように、X軸駆動装置13の後側のリニアガイドL3が高い位置に配置されていても、W軸駆動装置15を含むコラム3をコンパクトに構成することができる。W軸駆動装置15は、主軸頭5に連結されたボールねじB5と、ボールねじB5を回転させるためのモータM5と、を更に有している。W軸駆動装置15は、主軸頭5のZ軸座標値を測定するためのスケールを更に有することができる。W軸駆動装置15による主軸頭5のW軸方向の送りは、NC装置7によって制御される。
【0023】
図5は、テーブル2と主軸頭5とが離れているときの
図1のマシニングセンタを示す概略側面図である。
図4及び
図5を参照して、W軸駆動装置15は、主軸頭5を、
図4に示されるような最も前側の第1の位置P1と、
図5に示されるような最も後側の第2の位置P2と、の間をW軸に沿って移動させる。マシニングセンタ100では、例えば、最も前側の第1の位置P1(
図4)がW軸の原点として設定されることができ、最も後側の第2の位置P2(
図5)がW軸の最大ストローク位置として設定されることができる。なお、
図4では、テーブル2は、最も前側の位置に位置し、
図5では、最も後側の位置に位置することに留意されたい。
【0024】
主軸6は、主軸頭5の内部に回転可能に配置されている。主軸6は、工具Tを保持する。主軸6の回転は、NC装置7によって制御される。
【0025】
図2を参照して、NC装置7は、NCプログラムに基づいて、上記のX軸駆動装置13、Y軸駆動装置14、Z軸駆動装置11、W軸駆動装置15、及び、B軸駆動装置12を制御するように構成されている。NC装置7は、例えば、プロセッサ71と、メモリ72と、入力装置73と、表示装置74と、インターフェース75と、を有することができ、これらの構成要素は例えばバス等によって互いに接続されている。NC装置7は、他の構成要素を更に有してもよい。
【0026】
プロセッサ71は、例えば、1つ又は複数のCPU(Central Processing unit)であることができる。メモリ72は、例えば、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、及び、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含むことができる。メモリ72は、プロセッサ71が実行する様々なプログラムを記憶することができる。入力装置73は、例えば、マウス、キーボード及び機械式のボタン等を含むことができ、表示装置74は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含むことができる。入力装置73及び表示装置74として、タッチパネルが使用されてもよい。インターフェース75は、NC装置7を外部装置に接続するためのインターフェース回路を有することができる。例えば、インターフェース75は、NCプログラムに基づいて上記の駆動装置11~15のモータM1~M5へ電流値を出力するためのモータ制御部を有することができ、モータ制御部には上記の駆動装置11~15が有するスケール及びエンコーダから位置を示す信号がフィードバックされる。
【0027】
NC装置7は、テーブル2と主軸頭5とを互いに同期してそれぞれZ軸及びW軸に沿って互いに近づくように移動させ、これによって、回転する工具TがワークWRを加工するように、Z軸駆動装置11とW軸駆動装置15とを制御可能に構成されている(詳しくは後述)。
【0028】
図3を参照して、自動工具交換装置50は、例えば、主軸6の左側のスペースに配置されている。なお、自動工具交換装置50は、例えば、主軸6の右側又は上側等のスペースに配置されてもよいことに留意すべきである。自動工具交換装置50は、例えば、複数の工具Tを収容可能な工具マガジンを備えることができる。自動工具交換装置50は、公知の様々なタイプであることができるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
図1を参照して、ロボット200は、例えば、多軸多関節型ロボットであることができる。ロボット200は、例えば、第1のハンドH1及び第2のハンドH2を有することができる。システム300では、ロボット200のマシニングセンタ100への1回のみの進入によって、ロボット200が保持するワークWRとマシニングセンタ100のテーブル2上のワークWRとを交換することができる(詳しくは後述)。例えば、ロボット200は、NC装置7とは別の制御装置によって操作されることができ、ワークWRを交換する際には、マシニングセンタ100のNC装置7とロボット200の制御装置とが互いに通信して協働することができる。
【0030】
次に、マシニングセンタ100の動作について説明する。
【0031】
図2を参照して、上述のように、テーブル2と主軸頭5とを互いに同期して移動させながらワークWRを加工する場合、プロセッサ71は、NCプログラムに基づいて、先ず、工具Tを回転させるように、主軸6を回転させるためのモータに信号を送る。続いて、プロセッサ71は、NCプログラムに基づいて、テーブル2と主軸頭5とを互いに同期してそれぞれZ軸及びW軸に沿って移動させるように、Z軸駆動装置11のモータM1とW軸駆動装置15のモータM5とに信号を送る。例えば、
図2に示されるように、ワークWRに深い穴を形成するときに、テーブル2のみがZ軸に沿って移動される場合、加工時間が長くなる可能性がある。また、テーブル2が高重量のワークWRを支持する場合には、テーブル2の移動が遅くなる可能性があり、このことも長い加工時間に繋がり得る。マシニングセンタ100は、テーブル2をZ軸に沿って移動させることに加えて、ワークWRの重量に依存しない主軸頭5を同時にW軸に沿って移動させることができるので、より高速に深い穴を形成することができる。
【0032】
なお、上記のように、マシニングセンタ100は、テーブル2と主軸頭5とを互いに同期して移動させながらワークWRを加工することができる一方で、マシニングセンタ100は、同様に、例えば加工の種類(例えば、浅い穴)等に応じて、テーブル2及び主軸頭5の一方を移動させ他方を静止させたままでワークWRを加工することもできることに留意すべきである。
【0033】
次に、マシニングセンタ100による工具交換について説明する。
図3を参照して、例えばワークWRに深い穴を形成する場合、長い工具Tが使用され得る。長い工具Tが使用される場合、主軸6を自動工具交換装置50に対してX軸に沿って(又は、自動工具交換装置50が主軸6の上方にある場合にはY軸に沿って)移動させるだけでは、工具TとワークWRとが互いに干渉してしまう可能性がある。
【0034】
この場合、例えば、以下のような操作によって工具Tを交換することができる。主軸6と自動工具交換装置50との間で工具Tを交換した後に、工具TをワークWRの穴に挿入する場合、先ず、主軸頭5を、最も後側の第2の位置P2(
図5)までW軸に沿って引っ込める。続いて、工具TがワークWRの穴と対向するように、主軸頭5をX軸に沿って(又は、Y軸に沿って)移動させる。続いて、主軸頭5を、最も後側の第2の位置P2から所望の位置までW軸に沿って前進させる。以上の操作によって、工具TをワークWRの穴に挿入することができる。加工後に工具Tを自動工具交換装置50に戻す場合には、以上の操作を逆の順番で実行することができる。以上のように、マシニングセンタ100では、テーブル2を移動させずに、主軸頭5のみを移動させることによって、工具Tを交換することができる。テーブル2は高重量のワークWRを支持する場合があるので、マシニングセンタ100がより軽重量の主軸頭5のみを移動させることで工具Tを交換できることは、有利である。
【0035】
なお、工具Tが長尺でない場合には、マシニングセンタ100は、主軸頭5を最も後側の第2の位置P2まで引っ込めることなく、主軸頭5をX軸又はY軸に沿って移動させることによって、工具Tを交換し得ることに留意されたい。この場合、工具Tをより迅速に交換することができ、且つ、加工を迅速に開始することができる。
【0036】
次に、マシニングセンタ100における平行度誤差δの補正について説明する。
図6は、Z軸とW軸との間の平行度誤差を示す概略上面図である。
図6の例では、主軸頭5のW軸は設計通りに設定されている一方で、テーブル2のZ軸は設計からY軸周りに誤差δ(度)だけ逸れている。なお、他の例では、主軸頭5のW軸が設計から逸れ得る一方で、テーブル2のZ軸が設計通りに設定され得ることに留意されたい。
図6の例では、ワークWRはほぼ立方体であり、側面S1に垂直に穴が開けられることが意図されている。この場合、ワークWRは、側面S1が主軸6の回転軸線Os(すなわち、主軸頭5のW軸)に対して垂直になるように、テーブル2上に配置されることが想定される。
【0037】
マシニングセンタ100では、上述のように、ワークWRと工具Tとの間の送りが平行なZ軸及びW軸に沿った移動の双方によって達成されるため、Z軸とW軸との間に平行度誤差δ(度)が発生し得る。このような平行度誤差δは、例えば、マシニングセンタ100の組み立ての際、及び/又は、マシニングセンタ100を長期に使用した後等に発生し得る。平行度誤差δは、加工の種類によっては、加工精度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、
図6に示されるようにワークWRの側面S1に垂直に穴を開ける際に、側面S1が主軸頭5のW軸に対して垂直になるようにワークWRが配置された場合、平行度誤差δに起因して、側面S1がテーブル2のZ軸(すなわち、ワークWRの移動方向)に対して垂直とならない可能性がある。この場合、ワークWRの側面S1に垂直に穴を形成できない可能性がある。そこで、マシニングセンタ100は、平行度誤差δを補正するように構成されている。
【0038】
具体的には、補正に先立って、平行度誤差δを測定する。平行度誤差δは、例えば、以下の操作によって測定されることができる。先ず、主軸6に、測定プローブ(不図示)を取り付ける。NC装置7は、測定プローブがテーブル2又はテーブル2上のオブジェクト(例えば、標準器)に接触したときに、測定プローブから出力されるスキップ信号と、駆動装置11~15のスケール及びエンコーダから出力される位置信号と、を受信し、これによって、測定プローブの座標値を測定するように構成されることができる。
【0039】
次に、主軸頭5が最も前側の第1の位置P1(
図4)にあるときに、測定プローブをテーブル2又はテーブル2上のオブジェクトの所定の部位に接触させ、第1の位置P1における測定プローブの座標値を測定する。次に、テーブル2及び主軸頭5をそれぞれZ軸及びW軸に沿って後側に移動させ、主軸頭5が最も後側の第2の位置P2(
図5)にあるときに、測定プローブをテーブル2又はテーブル2上のオブジェクトの同じ所定の部位に接触させ、第2の位置P2における測定プローブの座標値を測定する。次に、測定プローブの第1の位置P1及び第2の位置P2における座標値に基づいて、Z軸とW軸との間の平行度誤差δ(度)を計算することができる。以上の操作の一部又は全部は、オペレータによって入力装置73を介して手動で実施されてもよいし、又は、メモリ72に記憶されたプログラムに従ってプロセッサ71によって自動的に実施されてもよい。算出された平行度誤差δは、例えば、メモリ72に記憶されることができる。
【0040】
図6を参照して、上述のようにワークWRの側面S1に垂直に穴を開ける場合、NC装置7のプロセッサ71は、メモリ72に記憶されたプログラムに従って、メモリ72に記憶されている平行度誤差δを相殺する方向にテーブル2をB軸に沿って回転させるように、B軸駆動装置12を制御する。
【0041】
図7は、平行度誤差を補正するための一例を示す概略上面図であり、テーブル2が平行度誤差δを相殺する方向に回転されている。
図7に示されるように、テーブル2の回転によって、ワークWRは、側面S1がテーブル2のZ軸に対して垂直となるように配置される。このような構成によって、側面S1をテーブル2の移動方向に対して垂直に維持したまま、ワークWRをZ軸方向に移動させることができる。
【0042】
上記の実施形態では、平行度誤差δがY軸周りの成分のみを含んでいるため、NC装置7は、テーブル2を回転させるためにB軸駆動装置12のみを制御している。代替的に又は追加的に、平行度誤差δが含む成分に応じて、NC装置7は、主軸頭5をY軸に沿って上昇又は下降させるためにY軸駆動装置14を制御してもよい。さらに、代替的に又は追加的に、平行度誤差δが含む成分に応じて、NC装置7は、主軸頭5をX軸に沿って移動させるためにX軸駆動装置13を制御してもよい。
【0043】
次に、ロボット200によるワークWRの交換について説明する。
【0044】
図1を参照して、上述のように、システム300では、ロボット200のマシニングセンタ100への1回のみの進入によって、ロボット200が保持するワークWRとマシニングセンタ100のテーブル2上のワークWRとを交換することができる。
図1の例では、ハンドH1が空であり、ハンドH2がワークWRを保持している。
図8~
図10は、
図1のシステム300におけるワークWRの交換操作を示す概略側面図であり、
図11は、この際のマシニングセンタ100及びロボット200の操作を示すタイミングチャートである。
【0045】
図1及び
図11を参照して、システム300では、先ず、マシニングセンタ100のドア(不図示)が開けられ、テーブル2が所定のワーク交換位置までZ軸に沿って移動する。続いて、
図8及び
図11を参照して、時刻T1において、ロボット200のアームが伸び始めて、マシニングセンタ100内の上記のワーク交換位置の上方の位置まで進入する。続いて、時刻T2において、空のハンドH1がテーブル2上のワークWRを囲うようにロボット200のアームが下降し、ハンドH1が閉じてワークWRを保持する。
【0046】
図9及び
図11を参照して、時刻T3において、ロボット200のアームが上昇する。続いて、時刻T4において、テーブル2が、ハンドH2に保持されたワークWRの下方までZ軸に沿って移動する。続いて、時刻T5において、ハンドH2に保持されたワークWRがテーブル2上に置かれるように、ロボット200のアームが下降する。
【0047】
続いて、
図10及び
図11を参照して、時刻T6において、ハンドH2が開き、ワークWRがテーブル2によって支持される。続いて、時刻T7において、ロボット200のアームがマシニングセンタ100から退出すると共に、マシニングセンタ100のテーブル2上の冶具(不図示)がワークWRをクランプする。続いて、テーブル2が加工開始位置までZ軸に沿って移動し、ドアが閉まる。以上の一連の動作によって、ロボット200のマシニングセンタ100への1回のみの進入によって、ロボット200が保持するワークWRとマシニングセンタ100のテーブル2上のワークWRとが交換される。したがって、ワークWRを迅速に交換することができる。
【0048】
なお、
図8において、マシニングセンタ100は、主軸頭5を突出させた状態でワークWRを交換しているが、ワークWRがより大型のワークであった場合には、マシニングセンタ100が、主軸頭5をW軸に沿って後側の第2の位置P2まで引っ込めることで、システム300は、大型のワークを工具Tと衝突させることなく、大型のワークの交換をすることができる。
【0049】
以上のような実施形態に係るマシニングセンタ100及びワーク加工方法では、テーブル2と主軸頭5とがそれぞれZ軸及びW軸に沿って移動し、これによって、工具TがワークWRを加工するように、Z軸駆動装置11とW軸駆動装置15とが制御される。したがって、ワークWRと工具Tとの間の送りが、テーブル2及び主軸頭5の双方の移動によって達成される。このため、ワークWR及び工具Tの一方のみが送られる場合に比して、より高速にワークWRを加工することができる。
【0050】
また、マシニングセンタ100では、NC装置7が、テーブル2のZ軸と主軸頭5のW軸との間の平行度誤差δに基づいて、主軸頭5のY軸に沿った移動及びテーブル2のB軸に沿った回転の少なくとも一方によって平行度誤差δを補正するように、Y軸駆動装置14及びB軸駆動装置12の少なくとも一方を制御する。したがって、平行度誤差δの影響を低減することができる。したがって、ワークWRを高精度に加工することができる。
【0051】
同様に、マシニングセンタ100では、NC装置7が、テーブル2のZ軸と主軸頭5のW軸との間の平行度誤差δに基づいて、主軸頭5のY軸に沿った移動及びX軸に沿った移動の少なくとも一方によって平行度誤差δを補正するように、Y軸駆動装置14及びX軸駆動装置13の少なくとも一方を制御することもできる。この場合にも、平行度誤差δの影響を低減することができる。したがって、ワークWRを高精度に加工することができる。
【0052】
マシニングセンタ及びワーク加工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。また、当業者であれば、上記の方法の工程は、矛盾が生じない限り、上記と異なる順番で実施されてもよいことを理解するだろう。
【符号の説明】
【0053】
1 ベッド(基台)
2 テーブル
5 主軸頭
6 主軸
7 NC装置(制御装置)
11 Z軸駆動装置
12 B軸駆動装置
13 X軸駆動装置
14 Y軸駆動装置
15 W軸駆動装置
100 マシニングセンタ
Ob テーブルの回転軸線
Os 主軸の回転軸線
T 工具
WR ワーク
δ 平行度誤差