(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】スペクトル制御装置及びスペクトル制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/11 20200101AFI20221007BHJP
H05B 47/18 20200101ALI20221007BHJP
H05B 47/195 20200101ALI20221007BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20221007BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20221007BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B47/18
H05B47/195
H01L33/00 L
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020563344
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050824
(87)【国際公開番号】W WO2020138169
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018242955
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】中山 信義
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀崇
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526414(JP,A)
【文献】特開2012-159945(JP,A)
【文献】特開2004-166511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/10
H05B 47/00-47/29
H01L 33/00-33/64
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光のスペクトル情報を取得する制御部を備え、
前記制御部は、
前記スペクトル情報に基づいて、発光装置が射出する光のスペクトル、及び、画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御
し、
前記スペクトル情報と、前記スペクトル情報で特定される光で照らされる環境を特定する環境情報とを対応づけたスペクトルデータを取得し、前記スペクトルデータに基づいて、前記発光装置が射出する光のスペクトル、及び、前記画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御し、
前記環境情報として前記被測定光のスペクトル測定結果が測定された環境を特定する測定環境情報を取得し、前記スペクトル情報としての前記被測定光のスペクトル測定結果と、前記測定環境情報とを対応付けて前記スペクトルデータを生成し、
撮影スペクトル情報で特定される光で照らされている被写体を撮影した画像の画像光のスペクトルを、前記撮影スペクトル情報と、再現環境を特定する情報と、前記スペクトルデータとに基づいて変換した画像を生成する、スペクトル制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スペクトル情報として、被測定光のスペクトル測定結果を取得する、請求項1に記載のスペクトル制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被測定光のスペクトル測定結果に基づいて、前記発光装置に前記被測定光のスペクトルを有する光を射出させる、請求項2に記載のスペクトル制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被測定光で照らされている被写体が撮影されている画像の画像光のスペクトルを、前記被測定光のスペクトル測定結果と、前記被測定光と異なるスペクトルを特定する情報とに基づいて変換した画像を生成する、請求項2又は3に記載のスペクトル制御装置。
【請求項5】
前記測定環境情報は、前記スペクトル測定結果が測定された時期を特定する情報を含む、請求項
1から4までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項6】
前記スペクトル測定結果が測定された時期は、日付、時刻及び季節の少なくとも1つによって特定される、請求項
5に記載のスペクトル制御装置。
【請求項7】
前記測定環境情報は、前記スペクトル測定結果が測定された場所を特定する情報を含む、請求項
1から
6までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項8】
前記スペクトル測定結果が測定された場所は、屋外であるか屋内であるかによって特定される、請求項
7に記載のスペクトル制御装置。
【請求項9】
前記スペクトル測定結果が測定された場所は、地域、高度、緯度及び経度の少なくとも1つによって特定される、請求項
7又は
8に記載のスペクトル制御装置。
【請求項10】
前記測定環境情報は、前記スペクトル測定結果の測定時における天気を特定する情報を含む、請求項
1から
9までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、再現環境を特定する情報と前記スペクトルデータとに基づいて、前記再現環境を照らす光を前記発光装置に射出させる、請求項
1から
10までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項12】
前記再現環境を特定する情報は、時期を特定する情報、場所を特定する情報、及び天気を特定する情報の少なくとも1つの情報を含む、請求項
1から11までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記発光装置が射出する光のスペクトルの測定結果に基づいて、前記測定結果を前記スペクトル情報で特定されるスペクトルに近づける、請求項1から
12までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項14】
前記発光装置は、第1発光装置と第2発光装置とを含み、
前記制御部は、前記第1発光装置が射出する光と前記第2発光装置が射出する光とを合成した光のスペクトルが前記スペクトル情報に基づくスペクトルになるように、前記第1発光装置及び前記第2発光装置それぞれが射出する光のスペクトルを制御する、請求項1から
13までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項15】
前記発光装置は、
360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を発光する発光素子と、
前記発光素子が発光する光を、360nm~780nmの波長領域にピーク波長を有する光に変換する波長変換部材と
を備える、請求項1から
14までのいずれか一項に記載のスペクトル制御装置。
【請求項16】
プロセッサに、
スペクトル情報を取得するステップと、
前記スペクトル情報に基づいて、発光装置が射出する光のスペクトル、及び、画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御するステップと
、
前記スペクトル情報と、前記スペクトル情報で特定される光で照らされる環境を特定する環境情報とを対応づけたスペクトルデータを取得し、前記スペクトルデータに基づいて、前記発光装置が射出する光のスペクトル、及び、前記画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御するステップと、
前記環境情報として前記被測定光のスペクトル測定結果が測定された環境を特定する測定環境情報を取得し、前記スペクトル情報としての前記被測定光のスペクトル測定結果と、前記測定環境情報とを対応付けて前記スペクトルデータを生成するステップと、
撮影スペクトル情報で特定される光で照らされている被写体を撮影した画像の画像光のスペクトルを、前記撮影スペクトル情報と、再現環境を特定する情報と、前記スペクトルデータとに基づいて変換した画像を生成するステップと
を実行させるスペクトル制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国特許出願2018-242955号(2018年12月26日出願)の優先権を主張するものであり、当該出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、スペクトル制御装置、スペクトル制御プログラム及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽光に近いスペクトルを有する光を射出する照明で視認対象を照らすことによって、観察者が視認対象の色合いをより正確に識別できる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態に係るスペクトル制御装置は、被測定光のスペクトル測定結果を取得する制御部を備える。前記制御部は、前記スペクトル測定結果に基づいて、発光装置が射出する光のスペクトル、及び、画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御する。
【0006】
本開示の一実施形態に係るスペクトル制御プログラムは、プロセッサに、被測定光のスペクトル測定結果を取得するステップを実行させる。前記スペクトル制御プログラムは、前記プロセッサに、前記スペクトル測定結果に基づいて、発光装置が射出する光のスペクトル、及び、画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御するステップを実行させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係るデータ構造は、プロセッサが発光装置を制御するために用いられる。前記データ構造は、被測定光のスペクトル測定結果と、前記スペクトル測定結果が測定された環境を特定する測定環境情報とを対応づけたスペクトルデータを含む。前記プロセッサは、前記スペクトルデータに基づいて、発光装置が射出する光のスペクトル、及び、画像を形成する画像光のスペクトルの少なくとも一方のスペクトルを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るスペクトル制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】スペクトル測定結果に基づいて発光装置に射出させる光のスペクトルを制御する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】スペクトル測定結果に基づいて撮影画像の画像光のスペクトルを変換する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係るデータ構造の一例を示す表である。
【
図5】スペクトルデータベースを生成する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】再現環境情報に基づいてスペクトルを制御する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】近紫外光のスペクトルを表すグラフである。
【
図11】青、青緑、緑及び赤の蛍光のスペクトルを表すグラフである。
【
図12】近赤外の蛍光のスペクトルを表すグラフである。
【
図13】スペクトルを測定する装置の感度曲線の一例を表すグラフである。
【
図14】
図13の感度曲線を有する装置によるスペクトルの測定値と、感度曲線に基づく補正後のスペクトルとの一例を表すグラフである。
【
図15】表示装置を備えるスペクトル制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図16】表示装置に表示される画像に基づいてスペクトルを制御する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】表示装置が実行する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図18】端末装置を備えるスペクトル制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図19】端末装置の構成例を示すブロック図である。
【
図20】端末装置同士で実行されるビデオ通話に基づいてスペクトルを制御する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
太陽光のスペクトルは、種々の条件の下で異なる。例えば、異なる地域における太陽光のスペクトルは互いに異なる。観察者は、太陽光のスペクトルに限られず、種々の異なるスペクトルの光で照らされた視認対象を観察する場合に、視認対象の色合いに違和感を覚えることがある。種々の異なるスペクトルの光で照らされた環境の提供が求められる。
【0010】
本開示の目的は、種々の異なるスペクトルの光で照らされた環境又は生成された画像を提供しうるスペクトル制御装置、スペクトル制御プログラム及びデータ構造を提供することにある。
【0011】
図1に示されるように、一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、スペクトル制御装置20と、測定装置30とを備える。スペクトル制御装置20は、測定装置30を含んでもよい。スペクトル制御システム1は、発光装置10をさらに備えてもよい。スペクトル制御装置20は、発光装置10を含んでもよい。スペクトル制御システム1は、カメラ40をさらに備えてもよい。スペクトル制御装置20は、カメラ40を含んでもよい。スペクトル制御装置20は、測定装置30、発光装置10及びカメラ40と通信可能に接続されている。
【0012】
スペクトル制御装置20は、制御部22と、記憶部24と、インタフェース26とを備える。
【0013】
制御部22は、スペクトル制御装置20の各構成部に制御指示を出力したり、各構成部から種々の情報を取得したりする。制御部22は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。プロセッサは、制御部22の種々の機能を実現するプログラムを実行しうる。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。
【0014】
記憶部24は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んでよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んでもよい。記憶部24は、各種情報及び制御部22で実行されるプログラム等を格納する。記憶部24は、制御部22のワークメモリとして機能してよい。記憶部24の少なくとも一部は、制御部22に含まれていてもよい。
【0015】
インタフェース26は、接続されている測定装置30又は発光装置10等の構成から信号の入力を受け付け、入力された信号に基づく情報を制御部22に出力する。インタフェース26は、制御部22から入力された情報に基づく信号を、接続されている構成に出力する。インタフェース26は、有線又は無線によって他の構成と通信可能に接続されていてよい。インタフェース26は、LAN(Local Area Network)等の通信インタフェースを含んでよい。インタフェース26は、4G(4th Generation)若しくは5G(5th Generation)又はLTE(Long Term Evolution)等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。インタフェース26は、赤外線通信又はNFC(Near Field communication)通信等の非接触通信の通信インタフェースを備えてもよい。インタフェース26は、RS232C又はRS485等のシリアル通信規格に基づく信号を入出力可能なポートを含んでもよい。
【0016】
スペクトル制御装置20は、スマートフォン若しくはフィーチャフォン等の通信端末、又は、タブレットPC(Personal Computer)若しくはノートPC等のモバイルPC等の機能の一部として実現されてもよい。
【0017】
測定装置30は、自機が位置する環境を照らしている光のスペクトルを測定する。測定装置30は、光の波長毎のエネルギーを測定できるスペクトロメータを含んでよい。光のスペクトルは、各波長の相対強度によって特定される。つまり、光のスペクトルは、波長毎の光の強度の分布として表される。光の相対強度が最大となる波長は、その光のピーク波長と称される。相対強度は、ピーク波長の強度に対する強度の比として表される。
【0018】
測定装置30の測定対象となる光は、被測定光とも称される。被測定光で照らされている環境は、測定環境とも称される。測定装置30によって測定された被測定光のスペクトルは、スペクトル測定結果とも称される。スペクトル測定結果は、光のスペクトルを特定するスペクトル情報に含まれる。スペクトル測定結果は、被測定光のスペクトルを特定するスペクトル情報に対応する。測定装置30は、被測定光に含まれる種々の波長の光の放射エネルギーを波長毎に測定し、各波長の光の相対強度を算出する。測定装置30は、被測定光の全波長帯域にわたって放射エネルギーを測定してもよい。本実施形態において、測定装置30は、360nm~780nmの波長領域に含まれる各波長の光の放射エネルギーを測定し、各波長の光の相対強度を算出すると仮定する。360nm~780nmの波長領域にピーク波長を有する光は、可視光とも称される。360nm~780nmの波長領域は、可視光領域とも称される。スペクトル測定結果は、可視光領域の各波長の光の相対強度を含む。測定装置30は、制御部22にスペクトル測定結果を出力する。制御部22は、測定装置30からスペクトル測定結果をスペクトル情報として取得する。測定装置30は、被測定光の照度を測定し、制御部22に出力してもよい。
【0019】
測定装置30は、通信端末又はモバイルPC等に搭載されていてもよい。
【0020】
カメラ40は、被写体を撮影し、撮影した画像を制御部22に出力する。カメラ40が被写体を撮影した画像は、撮影画像とも称される。カメラ40は、撮像素子を含んでよい。撮像素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)等を含んでよい。
【0021】
撮影画像は、被写体を照らしている光のスペクトルに関する情報を含んでいる。制御部22は、撮影画像に基づいて、撮影画像に写っている被写体を照らしている光のスペクトルを算出してもよい。
【0022】
撮影画像に写っている被写体の色彩は、複数の異なる原色の強度の比率によって表されうる。被写体の色彩は、例えばRGB(Red Green Blue)の3つの原色それぞれの強度の比率によって表される。制御部22は、被写体の色彩を表す各原色の強度の比率に基づいて、被写体を照らしている光のスペクトルを算出してよい。制御部22は、撮影画像に写っている被写体のうち、各原色の光の反射率が既知である被写体を、スペクトルを算出するために用いてよい。制御部22は、例えば、各原色の光を同一の反射率で反射する被写体を撮影画像から抽出し、その被写体の色彩を表す各原色の強度の比率に基づいて、その被写体を照らしている光のスペクトルを算出してよい。
【0023】
制御部22は、撮影画像に写っている被写体を照らしている光を被測定光とみなすとともに、撮影画像に基づいて算出したスペクトルをスペクトル測定結果とみなしてもよい。
【0024】
<発光装置のスペクトル制御>
発光装置10は、後述するように、種々のスペクトルを有する光を射出できる。制御部22は、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御するための制御情報を生成し、出力してよい。制御部22は、被測定光のスペクトル測定結果に基づいて、発光装置10に被測定光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を射出させるための制御情報を生成し、出力してよい。被測定光のスペクトル測定結果に基づいて生成された、発光装置10に被測定光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を射出させるための制御情報は、発光制御情報とも称される。つまり、制御部22が発光制御情報を発光装置10に出力することによって、発光装置10は、被測定光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を射出できる。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、被測定光で照らされる環境と同一又は類似の環境を再現できる。
【0025】
制御部22は、所定の地点に位置する測定装置30からその地点を照らしている光のスペクトル測定結果を取得し、他の地点に位置する発光装置10に発光制御情報を出力してよい。発光装置10は、発光制御情報に基づいて、測定装置30が位置する地点を照らしている光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を射出できる。制御部22は、所定の地点に位置するカメラ40で撮影された撮影画像に基づいて、その地点を照らしている光のスペクトルを、スペクトル測定結果として算出してもよい。制御部22が所定の地点を照らしている光のスペクトル測定結果を取得することによって、スペクトル制御システム1は、ある地点を照らしている光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を、他の地点で再現できる。以下、スペクトル制御システム1が発光装置10に再現させることができる光のスペクトルは、スペクトル測定結果で特定されるスペクトルと同一のスペクトルに限られず、類似のスペクトルも含んでよいとする。
【0026】
2つの光のスペクトルが類似の関係にあるか否かは、種々の条件によって決定されてよい。2つの光のスペクトルが類似の関係であるための条件は、例えば、2つの光のスペクトル同士で各波長の相対強度を比較した場合に、各波長における差が所定範囲内であることを含んでよい。2つの光のスペクトルが類似の関係であるための条件は、例えば、2つの光のスペクトルにそれぞれ含まれるピーク波長の差が所定範囲内であることを含んでもよい。2つの光のスペクトルが類似の関係であるための条件は、これらの例に限られず種々の条件を含んでもよい。
【0027】
測定装置30が通信端末又はモバイルPC等に搭載されている場合、測定装置30は、通信端末又はPC等の所持者がビジネス又は観光等で移動した場合に、その所持者の行き先における環境光のスペクトルを測定し、スペクトル測定結果として出力してもよい。制御部22は、そのスペクトル測定結果を測定装置30から取得してよい。制御部22は、取得したスペクトル測定結果に基づく発光制御情報を発光装置10に出力し、発光装置10に所持者の行き先の環境光を射出させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、各地の環境光を他の地点で容易に再現できる。
【0028】
カメラ40が通信端末又はモバイルPC等に搭載されている場合、制御部22は、通信端末又はPC等の所持者がビジネス又は観光等で移動した場合に、その所持者の行き先においてカメラ40で撮影された撮影画像を取得してよい。制御部22は、各地における撮影画像に基づいて各地の光のスペクトルを算出し、算出したスペクトルをスペクトル測定結果とみなしてよい。制御部22は、算出したスペクトル測定結果に基づく発光制御情報を発光装置10に出力し、発光装置10に所持者の行き先の環境光を射出させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、各地の環境光を他の地点で容易に再現できる。
【0029】
制御部22は、発光装置10に対して、スペクトル測定結果を取得したタイミングで発光制御情報を出力してもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、ある地点を照らしている光を、他の地点でリアルタイムに再現できる。
【0030】
制御部22は、スペクトル測定結果を記憶部24に格納しておき、発光装置10に対して、任意のタイミングで発光制御情報を出力してもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、ある地点を照らしている光を、他の地点でいつでも再現できる。
【0031】
スペクトル制御装置20が通信端末又はモバイルPC等の機能の一部として実現されている場合、制御部22は、自機に搭載されている測定装置30で測定した、所持者の行き先の環境光のスペクトル測定結果を記憶部24に格納しておいてよい。制御部22は、自機に搭載されているカメラ40で撮影した撮影画像に基づいて、所持者の行き先の環境光のスペクトルを算出し、スペクトル測定結果として記憶部24に格納しておいてよい。このようにすることで、所持者自身が行ったことのある地点の環境光が容易に再現されうる。
【0032】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、例えば、エーゲ海の太陽光、又は、カリフォルニアの太陽光等の、特定の地域で体験できる環境光を、発光装置10に再現させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、利用者に対して、まるで特定の地域に来たように感じさせることができる。スペクトル制御システム1は、例えば、病気又は障碍等に起因して旅行等の外出が困難な人に対して、高いリアリティを有する旅行体験を提供してもよい。
【0033】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、例えば、ダイビングしている人を海中で照らす太陽光、又は、登山している人を山の上で照らす太陽光等の、特定の活動で体験できる環境光を、発光装置10に再現させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、利用者に対して提供する種々の活動の体験のリアリティを向上できる。
【0034】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、例えば劇場又はホール等において公演される演劇、ショー又はパフォーマンス等の照明として、種々の環境光を発光装置10に再現させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、演劇、ショー又はパフォーマンス等のリアリティを向上できる。
【0035】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、例えば自動車等の工業製品の色合い等の見え方を確認する工程における照明として、種々の環境光を発光装置10に再現させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、自動車が各地の太陽光で照らされている状態を再現できる。自動車が各地で販売される場合、仮に、自動車の製造者が自動車を各地で販売するために、各地の太陽光の下で色合い等の見え方を確認する場合、自動車を各地に移動させるコストが発生する。スペクトル制御システム1が各地の太陽光を再現することによって、自動車の見え方の確認にかかるコストが減らされうる。その結果、スペクトル制御システム1の利用者である自動車の製造者にとっての利便性が向上する。
【0036】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、衣服若しくはアクセサリ、又は、小物等のファッションアイテムの色合い等の見え方を確認するための照明として、種々の環境光を発光装置10に再現させてもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、ファッションアイテムが各地の太陽光で照らされている状態を再現できる。ファッションアイテムが各地で販売される場合、仮に、ファッションアイテムの製造者又は販売者が商品を各地で販売するために、各地の太陽光の下で色合い等の見え方を確認する場合、商品を各地に移動させるコストが発生する。スペクトル制御システム1が各地の太陽光を再現することによって、ファッションアイテムの見え方の確認にかかるコストが減らされうる。その結果、スペクトル制御システム1の利用者であるファッションアイテムの製造者又は販売者にとっての利便性が向上する。
【0037】
制御部22は、発光制御情報を生成することによって、ファッションアイテムの販売店に設けられている試着室等における照明として、種々の環境光を発光装置10に再現させてもよい。例えば、スペクトル制御システム1は、顧客がビジネス又は観光等で各地に移動する場合に、試着室において顧客の行き先の環境光を再現してもよい。顧客は、行き先の環境光の下での色合い等の見え方を確認し、商品の購入を決定できる。このようにすることで、顧客は、移動先の各地において、商品の色合い等の見え方に不満を感じにくくなる。また、ファッションアイテムの販売者は、顧客に対して自信を持って商品の購入をすすめることができる。その結果、顧客及び販売者にとっての利便性が向上する。
【0038】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1及びスペクトル制御装置20は、スペクトル測定結果に基づいて発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御することによって、利用者に適した照明環境を構築できる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0039】
<<フローチャート>>
一実施形態に係るスペクトル制御装置20は、
図2に例示されるフローチャートの手順を制御部22に実行させることによって、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御してよい。制御部22に実行させる制御の手順は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0040】
制御部22は、スペクトル測定結果を取得する(ステップS1)。制御部22は、測定装置30からスペクトル測定結果を取得してもよい。制御部22は、カメラ40の撮影画像に基づいて、被写体を照らしている光のスペクトルを算出し、算出したスペクトルをスペクトル測定結果とみなしてもよい。制御部22は、取得したスペクトル測定結果を記憶部24に格納してもよい。
【0041】
制御部22は、スペクトル測定結果に基づいて、発光装置10を制御する(ステップS2)。制御部22は、スペクトル測定結果に基づいて、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御する。制御部22は、スペクトル測定結果に基づいて、発光制御情報を生成し、出力してよい。制御部22は、スペクトル測定結果を取得したタイミングで発光制御情報を生成し、出力してもよい。制御部22は、スペクトル測定結果を取得してから所定時間が経過した後に、記憶部24に格納したスペクトル測定結果に基づいて発光制御情報を生成し、出力してもよい。発光装置10は、制御部22から発光制御情報を取得し、発光制御情報に基づいて、被測定光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光を射出できる。制御部22は、ステップS2の手順を実行した後、
図2のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0042】
本実施形態に係るスペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、スペクトル測定結果に基づいて発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御できる。
【0043】
<画像光のスペクトル制御>
スペクトル制御装置20は、カメラ40の撮影画像の画像光のスペクトルを制御することによって、新たな画像を生成してもよい。
【0044】
カメラ40は、測定装置30が光のスペクトルを測定している環境で、被写体を撮影してもよい。つまり、カメラ40と測定装置30とは、同じ環境で用いられてもよい。この場合、測定装置30は、カメラ40が被写体を撮影するときに、被写体を照らしている光を被測定光としてスペクトルを測定してもよい。言い換えれば、カメラ40は、被測定光で照らされている被写体を撮影してもよい。
【0045】
カメラ40は、測定装置30とともに、通信端末又はモバイルPC等に搭載されていてよい。カメラ40は、測定装置30を含んでもよい。この場合、カメラ40が被写体を撮影するときに、スペクトル測定結果が得られやすくなる。つまり、撮影画像とスペクトル測定結果とがあわせて取得されやすくなる。被写体を照らしている光を被測定光として測定することによって得られたスペクトル測定結果は、撮影スペクトル情報とも称される。
【0046】
制御部22は、カメラ40から撮影画像を取得するとともに、測定装置30から撮影スペクトル情報を取得する。制御部22は、撮影画像と撮影スペクトル情報とに基づいて、新たな画像を生成できる。制御部22は、カメラ40から取得した撮影画像に基づいて、被写体を照らしている光のスペクトルを算出してよい。制御部22は、撮影画像に基づいて算出したスペクトルを、被写体を照らしている光のスペクトル測定結果とみなしてよい。つまり、制御部22は、撮影画像に基づいて算出したスペクトルを、撮影スペクトル情報とみなしてよい。
【0047】
例えば、制御部22は、撮影画像の画像光のスペクトルを撮影スペクトル情報に基づいて解析することによって、被写体が白色光で照らされていると仮定した画像を生成できる。白色光は、可視光領域の全波長における相対強度が1となっている光であるとする。被写体が白色光で照らされていると仮定した画像は、白色光画像とも称される。制御部22は、被測定光の各波長の相対強度に基づいて、撮影画像から白色光画像を生成できる。
【0048】
制御部22は、白色光画像に基づいて、被測定光のスペクトルとは異なる所定のスペクトルを有する光で被写体が照らされていると仮定した画像を生成できる。被測定光のスペクトルとは異なる所定のスペクトルを有する光で被写体が照らされていると仮定した画像は、変換画像とも称される。制御部22は、所定のスペクトルを有する光の各波長の相対強度に基づいて、白色光画像から変換画像を生成できる。
【0049】
制御部22は、被測定光の各波長の相対強度と、所定のスペクトルを有する光の各波長の相対強度との比率に基づいて、撮影画像から変換画像を生成してもよい。この場合、制御部22は、白色光画像を生成しなくてもよい。
【0050】
このようにすることで、制御部22は、被写体が任意の光で照らされているように見える画像を生成できる。制御部22は、撮影画像から白色光画像又は変換画像を生成するために、撮影画像の画像光を制御しているといえる。
【0051】
制御部22は、例えば、蛍光灯の下で撮影された撮影画像と、蛍光灯の光のスペクトル測定結果とに基づいて、被写体が屋外で太陽光に照らされている状態で撮影されたように見える画像を生成してもよい。制御部22は、例えば、天気が雨又は曇りであるときに撮影された撮影画像と、その天気における被測定光のスペクトル測定結果とに基づいて、天気が快晴のときに被写体が撮影されたように見える画像を生成してもよい。制御部22は、例えば、日本のある地点で撮影された撮影画像と、その地点における被測定光のスペクトル測定結果とに基づいて、被写体が海外のリゾート地で撮影されたように見える画像を生成してもよい。
【0052】
被写体は、例えば自動車等の工業製品であってもよい。制御部22は、自動車が各地の太陽光で照らされている状態で撮影されたように見える画像を生成してよい。このようにすることで、自動車の販売者は、自動車を各地で販売する際に、各地の太陽光の下で自動車がどのように見えるかを顧客に伝えやすくなる。顧客は、実際に購入した後に、自動車の色合い等の見え方に不満を感じにくくなる。その結果、販売者及び顧客の双方にとっての利便性が向上する。
【0053】
被写体は、例えばファッションモデルであってもよい。制御部22は、ファッションモデルが各地の太陽光で照らされている状態で撮影されたように見える画像を生成してよい。このようにすることで、ファッションモデルが着用している衣服若しくはアクセサリ、又は、ファッションモデルが所持している小物等の販売者は、衣服、アクセサリ又は小物等が各地の太陽光の下でどのように見えるかを顧客に伝えやすくなる。顧客は、購入した衣服若しくはアクセサリを実際に各地で着用したり、小物を実際に各地で所持したりした場合に、衣服、アクセサリ又は小物等の見え方に不満を感じにくくなる。その結果、販売者及び顧客の双方にとっての利便性が向上する。
【0054】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1及びスペクトル制御装置20は、被写体を照らしている光のスペクトル測定結果に対応する撮影スペクトル情報に基づいて画像光のスペクトルを制御する。このようにすることで、被写体が種々のスペクトルを有する光に照らされている状態で撮影されたように見える画像を生成できる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0055】
<<フローチャート>>
一実施形態に係るスペクトル制御装置20は、
図3に例示されるフローチャートの手順を制御部22に実行させることによって、カメラ40の撮影画像の画像光のスペクトルを制御することによって、撮影画像を新たな画像に変換してよい。制御部22に実行させる制御の手順は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0056】
制御部22は、撮影スペクトル情報と、カメラ40の撮影画像とを取得する(ステップS3)。制御部22は、測定装置30で測定した、撮影画像の被写体を照らしている光のスペクトル測定結果を撮影スペクトル情報として取得してよい。制御部22は、カメラ40の撮影画像に基づいて、撮影画像に写っている被写体を照らしている光のスペクトルを算出し、算出したスペクトルを撮影スペクトル情報とみなしてよい。制御部22は、取得した撮影スペクトル情報と撮影画像とを記憶部24に格納してもよい。
【0057】
制御部22は、撮影スペクトル情報に基づいて撮影画像を変換する(ステップS4)。制御部22は、被測定光で照らされている被写体を撮影した撮影画像を、被測定光とは異なる光で被写体が照らされているように見える画像を新たな画像として生成してよい。この場合、制御部22は、被測定光とは異なる光のスペクトルを特定する情報と、撮影スペクトル情報とに基づいて、撮影画像の画像光のスペクトルを制御する。制御部22は、ステップS4の手順を実行した後、
図3のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0058】
本実施形態に係るスペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、被写体を照らしている光のスペクトル測定結果に対応する撮影スペクトル情報に基づいて撮影画像の画像光のスペクトルを制御できる。このようにすることで、スペクトル制御装置20は、被写体が種々のスペクトルを有する光に照らされているように見える画像を生成できる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0059】
以上述べてきたように、一実施形態に係るスペクトル制御システム1及びスペクトル制御装置20は、スペクトル測定結果に基づいて、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御したり、画像光のスペクトルを制御したりできる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0060】
<測定環境情報>
制御部22は、測定装置30から取得したスペクトル測定結果とともに、スペクトル測定結果が測定された測定環境を特定する情報を取得してもよい。測定環境を特定する情報は、測定環境情報とも称される。制御部22は、測定装置30から測定環境情報そのものを取得してもよいし、測定装置30から取得する情報に基づいて測定環境情報を生成してもよい。測定環境は、後述するように種々の情報によって特定されてよい。
【0061】
測定環境は、被測定光のスペクトルが測定された時期によって特定されてもよい。つまり、測定環境情報は、スペクトル測定結果が測定された時期を特定する情報を含んでよい。スペクトル測定結果が測定された時期は、測定時期とも称される。測定時期は、時刻又は日付によって特定されてもよいし、朝、昼、夕方又は夜等として表される時間帯によって特定されてもよい。測定時期は、夏又は冬等として表される季節によって特定されてもよい。測定装置30は、被測定光のスペクトルを測定した時刻を取得する時計を備えてもよい。測定装置30は、被測定光のスペクトルを測定した時刻を、測定環境情報として制御部22に出力してもよい。制御部22は、測定装置30からスペクトル測定結果を取得した時刻を、測定装置30が被測定光のスペクトルを測定した時刻とみなしてもよい。
【0062】
測定環境は、被測定光のスペクトルが測定された場所によって特定されてもよい。つまり、測定環境情報は、スペクトル測定結果が測定された場所を特定する情報を含んでよい。スペクトル測定結果が測定された場所は、測定場所とも称される。測定場所は、測定装置30の位置情報によって特定されてよい。測定装置30の位置情報は、緯度若しくは経度、又は高度に関する情報を含んでよい。測定装置30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)技術等に基づいて、自機の位置情報を取得してよい。GNSS技術は、GPS(Global Positioning System)、GLONASS、Galileo、又は準天頂衛星(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)等の衛星測位システムを含んでよい。測定装置30は、自機の位置情報を、測定環境情報として制御部22に出力してもよい。
【0063】
制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が屋外に位置するか屋内に位置するか特定してもよい。つまり、測定環境情報は、測定場所が屋外に位置するか屋内に位置するか特定する情報を含んでよい。測定場所が屋外である場合、被測定光は太陽光であるとみなされてよい。測定場所が屋内である場合、被測定光は、白熱電球、蛍光灯又はLED(Light Emission Diode)等の照明器具による照明光であるとみなされてよい。
【0064】
被測定光として太陽光が測定される場合、太陽光のスペクトルは、太陽の高度に基づいて決定されうる。したがって、測定環境は、太陽の高度に基づいて特定されてもよい。太陽の高度は、緯度に基づいて決定される。太陽の高度は、時刻にさらに基づいて決定されうる。つまり、緯度に関する情報、又は、時刻に関する情報は、被測定光として太陽光が測定された場合のスペクトル測定結果と相関関係を有しうる。
【0065】
太陽光のスペクトルと太陽の高度との関連は、以下のように説明されうる。太陽光は、地表に到達するまでの間に大気によって散乱される。太陽光が測定環境に到達するまでに通過する大気層の距離は、太陽が天頂の近くに位置する場合よりも、測定環境から見て太陽が地平線又は水平線の近くに位置する場合において長い。つまり、測定環境から見た太陽の高度が低いほど、測定環境に到達する太陽光が通過する大気層の距離が長い。太陽光のスペクトルのうち青色等の短い波長の成分は、赤色等の長い波長の成分よりも大気中において散乱されやすい。つまり、太陽光が通過する大気側の距離が長いほど、青色等の短い波長の成分は、赤色等の長い波長の成分よりも大気中での散乱によって測定環境に到達しにくい。例えば、測定環境から見た太陽の高度が低いほど、太陽光のスペクトルのうち、青色等の短い波長の成分に対する赤色等の長い波長の成分の比率が増大しうる。
【0066】
制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が山間部に位置するか臨海部に位置するか特定してもよい。制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が都市部に位置するか農村部に位置するか特定してもよい。制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が砂漠地帯、草原地帯又は湖沼地帯等に位置すると特定してもよい。つまり、測定環境情報は、測定場所の地勢を表す情報を含んでもよい。被測定光は、太陽光だけでなく地表面からの反射光を含みうる。よって、測定場所の地勢を表す情報は、スペクトル測定結果と相関関係を有しうる。
【0067】
制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が位置する市区町村名又は都道府県名等の地名を特定してもよい。制御部22は、測定装置30の位置情報に基づいて、測定場所が位置する、日本等の国名を特定してもよいし、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、又はオセアニア等の地域名を特定してもよい。つまり、測定環境情報は、測定場所が位置する地名、国名又は地域名を特定する情報を含んでもよい。
【0068】
制御部22は、地図情報と測定装置30の位置情報とに基づいて、測定場所に関する情報を特定してもよい。
【0069】
測定環境は、被測定光のスペクトルが測定されたときの天気によって特定されてもよい。つまり、測定環境情報は、スペクトル測定結果の測定時における天気を特定する情報を含んでよい。上述の通り、太陽光は、大気中で散乱される。被測定光としての太陽光は、太陽からの直射日光だけでなく、全天で散乱された光も含みうる。天気は、大気の状態を表しており、地球の表面に到達する太陽光のスペクトルに影響を及ぼしうる。天気は、例えば、晴れ、曇り又は雨若しくは雪等として特定されてよい。天気は、太陽が雲に隠れているか否かによって特定されてもよい。天気は、全天に占める雲の割合を表す雲量によって特定されてもよい。制御部22は、気象庁又は民間の気象サービス事業者等によって提供されている天気の情報に関するデータベースから、スペクトル測定結果を測定した時刻及び位置における天気を特定する情報を取得してもよい。
【0070】
測定装置30は、測定装置30の操作者から情報の入力を受け付ける入力部を備えてよい。入力部は、タッチパネル、キーボード又はマウス等の入力デバイスを含んでよい。測定装置30の操作者は、スペクトル測定結果を測定する時期若しくは位置に関する情報、又は、スペクトル測定結果の測定時における天気に関する情報等を入力してもよい。測定装置30は、操作者が入力した情報を測定環境情報として出力してもよい。
【0071】
<スペクトルデータベース>
制御部22は、スペクトル測定結果と、スペクトル測定結果に対応する測定環境情報とを含むスペクトルデータ110(
図4参照)を生成する。スペクトルデータ110は、スペクトル測定結果と測定環境情報との対応を特定する。制御部22は、スペクトルデータ110を記憶部24に格納してよい。制御部22は、複数のスペクトルデータ110をスペクトルデータベース100(
図4参照)として記憶部24に格納してもよい。スペクトルデータベース100は、データ要素として、スペクトル測定結果と、スペクトル測定結果に対応する測定環境情報とを含むデータ構造によって管理される。つまり、スペクトルデータベース100を構成する各スペクトルデータ110は、データ要素として、スペクトル測定結果と、スペクトル測定結果に対応する測定環境情報とを含むデータ構造を有する。
【0072】
一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、
図4に例示されるデータ構造を有するスペクトルデータベース100を生成してよい。スペクトルデータベース100は、複数のスペクトルデータ110を含んでよい。スペクトルデータ110は、スペクトル測定結果と、そのスペクトル測定結果に対応する測定環境情報とを含む。スペクトル測定結果は、S_1~S_N(N:自然数)として表されている。各スペクトル測定結果は、被測定光の可視光領域内の各波長の相対強度を含む。各スペクトル測定結果は、可視光領域外の波長の相対強度を含んでもよい。測定環境情報は、スペクトルを測定した年月日を特定する測定日と、スペクトルを測定した時刻を特定する測定時刻と、スペクトルを測定した位置を経度及び緯度によって特定する測定位置と、スペクトルを測定したときの天気とを含むとする。測定環境情報は、例示した情報の一部を含んでもよいし、他の情報を含んでもよい。スペクトルデータ110は、スペクトル測定結果と、そのスペクトル測定結果に対応する測定環境情報とを一対一で対応づけるとする。スペクトルデータベース100は、複数のスペクトルデータ110をテーブルの形式で含んでいてよい。
【0073】
制御部22は、スペクトルデータベース100の中から、スペクトル測定結果及び測定環境情報のうちの一方の情報に基づいて、スペクトルデータ110を抽出できる。つまり、制御部22は、スペクトル測定結果及び測定環境情報のうちの一方の情報をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索することによって、インデックスとして用いた情報に対応する他方の情報を特定できる。制御部22は、測定環境情報をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索する場合、測定環境情報に含まれる一部の情報をインデックスとしてもよい。制御部22は、例えば測定位置及び測定時刻をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索してもよい。制御部22は、例えば測定場所の地勢を表す情報をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索してもよい。
【0074】
制御部22は、スペクトルデータベース100を検索するためのインデックスを特定する情報を利用者の入力によって取得してもよい。スペクトル制御装置20は、利用者からの情報の入力を受け付ける入力部を備えてもよい。入力部は、タッチパネル、キーボード又はマウス等の入力デバイスを含んでよい。入力部は、インタフェース26に含まれていてもよい。制御部22は、利用者が入力部に入力した情報に基づいて、インデックスを特定する情報を取得してもよい。
【0075】
制御部22は、インデックスと一致する情報を含むスペクトルデータ110を抽出してもよいし、インデックスに類似の情報を含むスペクトルデータ110を抽出してもよい。制御部22は、例えば測定位置をインデックスとする場合、インデックスとして指定した位置情報と一致する位置情報に対応づけられているスペクトルデータ110を抽出してもよい。制御部22は、インデックスとして指定した位置情報で特定される位置から、所定の距離以内の位置を特定する位置情報に対応づけられているスペクトルデータ110を抽出してもよい。制御部22は、例えば測定場所の地勢を表す情報として測定場所が海岸であることをインデックスとしてスペクトルデータ110を抽出してもよい。この場合、制御部22は、海岸で測定されたスペクトル測定結果を含むスペクトルデータ110を抽出できる。制御部22は、これらの例に限られず、種々の情報をインデックスとしてスペクトルデータ110を抽出してよい。
【0076】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1及びスペクトル制御装置20は、スペクトルデータベース100を生成することによってスペクトルデータ110を管理できる。測定環境情報をインデックスとしてスペクトルデータベース100が検索されることによって、スペクトル測定結果が抽出されやすくなる。利用者の入力に基づいてスペクトルデータベース100が検索されることによって、利用者にとっての利便性が向上する。
【0077】
スペクトルデータベース100に新たなスペクトルデータ110が追加されることによって、スペクトルデータベース100で検索できる情報が増加する。制御部22は、新たなスペクトルデータ110を無条件でスペクトルデータベース100に追加してもよい。
【0078】
制御部22は、既にスペクトルデータベース100に含まれているスペクトルデータ110と、新たなスペクトルデータ110との比較に基づいて、新たなスペクトルデータ110をスペクトルデータベース100に追加するか決定してもよい。既にスペクトルデータベース100に含まれているスペクトルデータ110は、既存データとも称される。新たなスペクトルデータ110は、新データとも称される。
【0079】
制御部22は、新データの追加可否を決定するために、新データに含まれている測定環境情報の少なくとも一部をインデックスとして既存データを検索し、インデックスと同一又は類似の情報に対応づけられている既存データを抽出してよい。制御部22は、例えば、新データの測定日及び測定時刻に対して所定時間内の日時に測定され、且つ、新データの測定位置から所定距離内の位置で測定された既存データを抽出してよい。
【0080】
制御部22は、新データのスペクトル測定結果と、抽出された既存データのスペクトル測定結果との差が所定範囲内である場合、新データをスペクトルデータベース100に追加すると決定してよい。制御部22は、新データのスペクトル測定結果と、抽出された既存データのスペクトル測定結果との差が所定範囲外である場合、新データをスペクトルデータベース100に追加しないと決定してよい。
【0081】
制御部22が新データの追加可否を決定することによって、スペクトルデータベース100に異常なデータが追加されにくくなる。スペクトルデータベース100に含まれるデータの異常が少ないほど、検索によって抽出されたスペクトル測定結果の信頼度が高まるとともに、抽出されたスペクトル測定結果に基づく環境光の再現度が高まる。その結果、スペクトルデータベース100の有用性が高まる。
【0082】
<<フローチャート>>
一実施形態に係るスペクトル制御装置20は、
図5に例示されるフローチャートの手順を制御部22に実行させることによって、スペクトルデータベース100を生成してよい。制御部22に実行させる制御の手順は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0083】
制御部22は、スペクトル測定結果と、そのスペクトル測定結果を測定した環境を特定する測定環境情報とを取得する(ステップS11)。
【0084】
制御部22は、スペクトル測定結果と測定環境情報とを対応づけたスペクトルデータ110を新データとして生成する(ステップS12)。
【0085】
制御部22は、新データに含まれている測定環境情報の少なくとも一部をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索し、インデックスと同一又は類似の情報に対応づけられている既存データを抽出する(ステップS13)。
【0086】
制御部22は、新データのスペクトル測定結果と、抽出した既存データのスペクトル測定結果とを比較し、その差が所定範囲内か判定する(ステップS14)。制御部22は、スペクトル測定結果の差が所定範囲内でないと判定した場合(ステップS14:NO)、
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0087】
制御部22は、差が所定範囲内であると判定した場合(ステップS14:YES)、新データをスペクトルデータベース100に追加する(ステップS15)。制御部22は、ステップS15の手順を実行した後、
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0088】
本実施形態に係るスペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、スペクトルデータベース100を生成できる。スペクトルデータベース100は、スペクトルデータ110の管理を容易にできる。スペクトルデータベース100は、例えば、測定環境情報をインデックスとしたスペクトルデータベース100の検索を可能にする。このようにすることで、スペクトル測定結果が抽出されやすくなる。スペクトルデータベース100は、利用者の入力に基づくスペクトルデータベース100の検索を可能にする。このようにすることで、利用者にとっての利便性が向上する。
【0089】
スペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、新データの追加可否を決定できる。このようにすることで、スペクトルデータベース100の有用性が高まる。
【0090】
<<スペクトルデータベースの補完>>
スペクトルデータベース100は、制御部22が検索に用いるインデックスと一致又は類似する情報に対応づけられているスペクトルデータ110を含まないことがある。この場合、制御部22は、他のスペクトルデータ110に基づいて、インデックスと一致又は類似する情報に対応づけられるスペクトルデータ110を生成してもよい。制御部22は、生成したスペクトルデータ110を検索結果として用いてもよい。つまり、制御部22は、スペクトルデータベース100に含まれていないスペクトルデータ110を補完してもよい。このようにすることで、スペクトルデータベース100の有用性が高まる。
【0091】
例えば、制御部22は、スペクトルデータベース100から、第1地点と称される地点において第1時刻に測定されたスペクトル測定結果を検索すると仮定する。スペクトルデータベース100は、第1地点において第1時刻又は第1時刻から所定時間以内の時刻に測定されたスペクトル測定結果を含まないものの、第1時刻から所定時間以上異なる第2時刻に測定されたスペクトル測定結果を含むと仮定する。この場合、制御部22は、第1地点で第2時刻に測定されたスペクトル測定結果に基づいて、第1地点で第1時刻に測定されると予測されるスペクトル測定結果を生成してよい。制御部22は、複数の第2時刻に測定されたスペクトル測定結果を用いてもよい。
【0092】
例えば、制御部22は、スペクトルデータベース100から、第1地点において春に測定されたスペクトル測定結果を検索すると仮定する。スペクトルデータベース100は、第1地点において春に測定されたスペクトル測定結果を含まないものの、夏及び冬に測定されたスペクトル測定結果を含むと仮定する。この場合、制御部22は、第1地点で夏及び冬に測定されたスペクトル測定結果に基づいて、第1地点で春に測定されると予測されるスペクトル測定結果を生成してよい。
【0093】
例えば、制御部22は、スペクトルデータベース100から、第1地点において第1時刻に測定されたスペクトル測定結果を検索すると仮定する。スペクトルデータベース100は、第1地点又は第1地点から所定範囲内の地点において第1時刻に測定されたスペクトル測定結果を含まないものの、第1地点から所定範囲外の第2地点において第1時刻に測定されたスペクトル測定結果を含むと仮定する。この場合、制御部22は、第2地点で第1時刻に測定されたスペクトル測定結果に基づいて、第1地点で第1時刻に測定されると予測されるスペクトル測定結果を生成してよい。制御部22は、複数の第2地点で測定されたスペクトル測定結果を用いてもよい。
【0094】
<スペクトルデータに基づく環境の再現>
スペクトル制御システム1は、利用者が再現を求める環境を特定する情報に基づいて、その環境を照らす光のスペクトルを再現できる。利用者が再現を求める環境は、再現環境とも称される。再現環境を特定する情報は、再現環境情報とも称される。制御部22は、再現環境情報を、利用者が入力部に入力した情報に基づいて取得してもよい。制御部22は、再現環境情報を、他の装置から取得してもよい。
【0095】
制御部22は、再現環境情報に基づいてスペクトルデータベース100を検索し、再現環境情報と同一又は類似の測定環境情報と対応づけられているスペクトルデータ110を抽出する。抽出されたスペクトルデータ110は、再現環境における光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを特定するスペクトル測定結果を含みうる。再現環境の光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを特定するスペクトル測定結果は、スペクトル再現情報とも称される。
【0096】
スペクトル再現情報は、例えば、エーゲ海の太陽光、又は、カリフォルニアの太陽光等の、特定の地域で体験できる環境光のスペクトルを特定する情報を含んでもよい。スペクトル再現情報は、例えば、ダイビングしている人を海中で照らす太陽光、又は、登山している人を山の上で照らす太陽光等の、特定の活動で体験できる環境光のスペクトルを特定する情報を含んでもよい。スペクトル再現情報は、種々の天気における太陽光のスペクトルを特定する情報を含んでもよい。スペクトル再現情報は、例えば自動車等の工業製品の色合い等の見え方を確認する工程における照明として用いられる各地の環境光のスペクトルを特定する情報を含んでもよい。スペクトル再現情報は、試着室等の照明として用いられる種々の環境光のスペクトルを特定する情報を含んでもよい。
【0097】
<<発光装置のスペクトル制御>>
スペクトル制御システム1は、抽出したスペクトルデータ110に含まれるスペクトル再現情報に基づいて、再現環境における光を発光装置10に再現させることができる。制御部22は、スペクトル再現情報に基づいて発光装置10に再現環境の光を射出させる制御情報を生成し、発光装置10に出力する。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、発光装置10に、再現環境の光を容易に再現させることができる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0098】
<<撮影画像のスペクトル制御>>
スペクトル制御システム1は、スペクトル再現情報と、撮影画像が撮影された環境の光のスペクトルを特定する撮影スペクトル情報とに基づいて、被写体が再現環境における光で照らされているように見える画像を生成できる。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、1枚の撮影画像から、種々の環境で撮影された画像を再現できる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0099】
<<フローチャート>>
一実施形態に係るスペクトル制御装置20は、
図6に例示されるフローチャートの手順を制御部22に実行させることによって、再現環境情報に基づいてスペクトルを制御してよい。制御部22に実行させる制御の手順は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0100】
制御部22は、再現環境情報を取得する(ステップS21)。制御部22は、利用者が入力した情報に基づいて再現環境情報を取得してもよいし、他の装置から取得してもよい。
【0101】
制御部22は、再現環境情報に基づいてスペクトルデータ110を抽出する(ステップS22)。制御部22は、再現環境情報の少なくとも一部をインデックスとしてスペクトルデータベース100を検索してよい。制御部22は、インデックスとして用いられる情報と同一又は類似の情報を含む測定環境情報に対応づけられているスペクトルデータ110を抽出する。抽出されたスペクトルデータ110に対応づけられているスペクトル測定結果は、スペクトル再現情報でありうる。
【0102】
制御部22は、ステップS22における抽出結果に基づいて、光のスペクトルを制御する(ステップS23)。抽出結果は、スペクトル再現情報を含みうる。
【0103】
制御部22は、抽出結果としてのスペクトル再現情報に基づいて発光装置10を制御してもよい。制御部22は、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御するための制御情報を生成し、発光装置10に出力してもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、発光装置10によって、再現環境の光を射出させることができる。
【0104】
制御部22は、カメラ40の撮影画像と撮影スペクトル情報とを取得し、撮影スペクトル情報と、抽出結果としてのスペクトル再現情報とに基づいて撮影画像の画像光を制御してもよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、被写体が再現環境の光で照らされているように見える画像を生成できる。
【0105】
制御部22は、ステップS23の手順を実行した後、
図6のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0106】
本実施形態に係るスペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、再現環境情報に基づいて、発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御できる。このようにすることで、再現環境の光を発光装置10に再現させることができる。また、スペクトル制御装置20は、スペクトル制御プログラムを実行することによって、撮影画像の画像光のスペクトルを制御できる。このようにすることで、被写体が再現環境の光で照らされているように見える画像を生成できる。その結果、利用者にとっての利便性が向上する。
【0107】
<発光装置の構成例>
図7、
図8及び
図9に示されるように、発光装置10は、発光素子3と、波長変換部材6とを備える。発光装置10は、素子基板2と、枠体4と、封止部材5とをさらに備えてもよい。
【0108】
発光素子3は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を射出する。発光素子3は、例えば
図10にグラフとして示されているスペクトルを有する光を射出できる。
図10のグラフにおいて、横軸及び縦軸はそれぞれ、発光素子3が発光する光の波長及び相対強度を表している。相対強度は、ピーク波長の強度に対する強度の比として表される。
図10のグラフによれば、発光素子3は、λxで表される波長をピーク波長として有する光を射出する。λxで表される波長は、360nm~430nmの波長領域に含まれる。つまり、発光素子3は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を射出する。360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光は、近紫外光とも称される。360nm~430nmの波長領域は、近紫外光領域とも称される。
【0109】
波長変換部材6は、発光素子3から波長変換部材6に入射してきた光を、可視光領域にピーク波長を有する光に変換し、変換した光を射出する。可視光は、近紫外光を含むとする。可視光領域は、近紫外光領域を含むとする。
【0110】
発光装置10は、複数の波長変換部材6を有してよい。複数の波長変換部材6は、それぞれ異なるピーク波長を有する光を射出してよい。発光装置10は、各波長変換部材6が射出する光の強度を制御することによって、種々のスペクトルを有する光を射出できる。発光装置10は、例えば、太陽からの直射日光のスペクトル、海中の所定の深さまで到達した日光のスペクトル、ろうそくの光のスペクトル、又は、蛍の光のスペクトル等を有する光を射出できる。
【0111】
素子基板2は、例えば、絶縁性を有する材料で形成されてよい。素子基板2は、例えば、アルミナ若しくはムライト等のセラミック材料、ガラスセラミック材料、又は、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料等で形成されてよい。素子基板2は、熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂材料等で形成されてもよい。
【0112】
素子基板2は、素子基板2の主面2A又は素子基板2の内部に、素子基板2に実装している発光素子3等の部品を電気的に導通する配線導体を備えてよい。配線導体は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、又は銅等の導電材料で形成されてよい。配線導体は、例えば、タングステンの粉末に有機溶剤が添加された金属ペーストを、素子基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層して、焼成することにより形成されてよい。配線導体は、酸化防止のために、その表面に、例えば、ニッケル又は金等のめっき層が形成されてよい。
【0113】
素子基板2は、発光素子3が発光する光を効率良く外部へと放出させるため、配線導体、及びめっき層と間隔を空けて、金属反射層を備えてもよい。金属反射層は、例えば、アルミニウム、銀、金、銅又はプラチナ等の金属材料で形成されてよい。
【0114】
本実施形態において、発光素子3は、LEDであるとする。LEDは、P型半導体とN型半導体とが接合されたPN接合中で、電子と正孔とが再結合することによって、外部へと光を発光する。発光素子3は、LEDに限られず、他の発光デバイスであってもよい。
【0115】
発光素子3は、素子基板2の主面2A上に実装される。発光素子3は、素子基板2に設けられる配線導体の表面に被着するめっき層上に、例えば、ろう材又は半田等を介して、電気的に接続される。素子基板2の主面2A上に実装される発光素子3の個数は、特に限定されるものではない。
【0116】
発光素子3は、透光性基体と、透光性基体上に形成される光半導体層とを含んでよい。透光性基体は、例えば、有機金属気相成長法、又は分子線エピタキシャル成長法等の化学気相成長法を用いて、その上に光半導体層を成長させることが可能な材料を含む。透光性基体は、例えば、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコン、又は二ホウ化ジルコニウム等で形成されてよい。透光性基体の厚みは、例えば、50μm以上1000μm以下であってよい。
【0117】
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とを含んでよい。第1半導体層、発光層、及び第2半導体層は、例えば、III族窒化物半導体、ガリウム燐若しくはガリウムヒ素等のIII-V族半導体、又は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム若しくは窒化インジウム等のIII族窒化物半導体等で形成されてよい。
【0118】
第1半導体層の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下であってよい。発光層の厚みは、例えば、25nm以上150nm以下であってよい。第2半導体層の厚みは、例えば、50nm以上600nm以下であってよい。
【0119】
枠体4は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウム等のセラミック材料で形成されてよい。枠体4は、多孔質材料で形成されてよい。枠体4は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウム等の金属酸化物を含む粉末を混合した樹脂材料で形成されてよい。枠体4は、これらの材料に限られず、種々の材料で形成されてよい。
【0120】
枠体4は、素子基板2の主面2Aに、例えば、樹脂、ろう材又は半田等を介して、接続される。枠体4は、発光素子3と間隔を空けて、発光素子3を取り囲むように素子基板2の主面2A上に設けられる。枠体4は、内壁面が、素子基板2の主面2Aから遠ざかる程、外方に向かって広がるように傾斜して設けられている。内壁面は、発光素子3が発光する光を反射させる反射面として機能する。内壁面は、例えば、タングステン、モリブデン、又はマンガン等の金属材料で形成される金属層と、金属層を被覆し、ニッケル又は金等の金属材料で形成されるめっき層とを含んでよい。めっき層は、発光素子3が発光する光を反射する。
【0121】
枠体4の内壁面の形状は、平面視において、円形状であってよい。内壁面の形状が円形状であることによって、枠体4は、発光素子3が発光する光を略一様に、外方に向かって反射させることができる。枠体4の内壁面の傾斜角度は、素子基板2の主面2Aに対して、例えば、55度以上70度以下の角度に設定されていてよい。
【0122】
封止部材5は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間に、枠体4で囲まれる内側の空間の上部の一部を残して充填されている。封止部材5は、発光素子3を封止するとともに、発光素子3が発光する光を透過させる。封止部材5は、例えば、光透過性を有する材料で形成されてよい。封止部材5は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂若しくはエポキシ樹脂等の光透過性を有する絶縁樹脂材料、又は光透過性を有するガラス材料、等で形成されてよい。封止部材5の屈折率は、例えば、1.4以上1.6以下に設定されていてよい。
【0123】
発光装置10が封止部材5を備える場合、発光素子3から射出された近紫外光は、封止部材5を通過して波長変換部材6に入射する。上述したように、波長変換部材6は、発光素子3から入射してきた近紫外光を、可視光領域に含まれる種々のピーク波長を有する光に変換する。発光素子3は、射出した近紫外光が波長変換部材6に入射するように位置する。言い換えれば、波長変換部材6は、発光素子3から射出された光が入射してくるように位置する。
図7から
図9に例示されている構成において、波長変換部材6は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間の上部の一部に、封止部材5の上面に沿って位置している。この例に限定されることなく、例えば、波長変換部材6は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間の上部からはみ出すように位置してもよい。
【0124】
図9に示されるように、波長変換部材6は、透光性を有する透光部材60と、第1蛍光体61、第2蛍光体62、第3蛍光体63、第4蛍光体64及び第5蛍光体65とを備えてよい。第1蛍光体61、第2蛍光体62、第3蛍光体63、第4蛍光体64及び第5蛍光体65は、単に蛍光体とも称される。蛍光体は、透光部材60の内部に含有されているとする。蛍光体は、透光部材60の内部で略均一に分散されていてよい。蛍光体は、波長変換部材6に入射してきた近紫外光を、360nm~780nmの波長領域に含まれるピーク波長を有する光に変換し、変換した光を射出する。
【0125】
透光部材60は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂若しくはエポキシ樹脂等の透光性を有する絶縁樹脂、又は透光性を有するガラス材料等で形成されていてよい。
【0126】
蛍光体は、入射してきた近紫外光を種々のピーク波長を有する光に変換する。
図11及び
図12のグラフに、蛍光体の蛍光スペクトルの一例が示されている。
図11及び
図12のグラフにおいて、横軸及び縦軸はそれぞれ、蛍光体が射出する光の波長及び相対強度を表している。
【0127】
第1蛍光体61は、
図11のグラフでλ1として表されている第1ピーク波長を有してよい。第1ピーク波長は、400nm~500nmの波長領域内の波長であるとする。第1蛍光体61は、例えば青色の光を射出する。第1蛍光体61は、例えば、BaMgAl
10O
17:Eu、又は(Sr,Ca,Ba)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu,(Sr,Ba)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu等を用いることができる。
【0128】
第2蛍光体62は、
図11のグラフでλ2として表されている第2ピーク波長を有してよい。第2ピーク波長は、450nm~550nmの波長領域内の波長であるとする。第2蛍光体62は、例えば青緑色の光を射出する。第2蛍光体62は、例えば、(Sr,Ba,Ca)
5(PO
4)
3Cl:Eu,Sr
4Al
14O
25:Eu等を用いることができる。
【0129】
第3蛍光体63は、
図11のグラフでλ3として表されている第3ピーク波長を有してよい。第3ピーク波長は、500nm~600nmの波長領域内の波長であるとする。第3蛍光体63は、例えば緑色の光を射出する。第3蛍光体63は、例えば、SrSi
2(O,Cl)
2N
2:Eu、(Sr,Ba,Mg)
2SiO
4:Eu
2+、又はZnS:Cu,Al、Zn
2SiO
4:Mn等を用いることができる。
【0130】
第4蛍光体64は、
図11のグラフでλ4として表されている第4ピーク波長を有してよい。第4ピーク波長は、600nm~700nmの波長領域内の波長であるとする。第4蛍光体64は、例えば赤色の光を射出する。第4蛍光体64は、例えば、Y
2O
2S:Eu、Y
2O
3:Eu、SrCaClAlSiN
3:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu、又はCaAlSi(ON)
3:Eu等を用いることができる。
【0131】
第5蛍光体65は、
図12のグラフでλ5として表されている第5ピーク波長、及び、λ6として表されている第6ピーク波長を有してよい。第5ピーク波長及び第6ピーク波長は、680nm~800nmの波長領域内の波長であるとする。第5蛍光体65は、例えば近赤外光を射出する。近赤外光は、680~2500nmの波長領域の光を含んでよい。第5蛍光体65は、例えば、3Ga
5O
12:Cr等を用いることができる。
【0132】
波長変換部材6が含有する蛍光体の種類の組み合わせは、特に限定されない。
図8及び
図9の領域Xに示されるように、波長変換部材6は、第1蛍光体61、第2蛍光体62、第3蛍光体63、第4蛍光体64及び第5蛍光体65を有してよい。波長変換部材6は、他の種類の蛍光体を有してもよい。
【0133】
発光装置10は、複数の波長変換部材6を備えてよい。各波長変換部材6は、蛍光体の組み合わせが異なっていてもよい。発光装置10は、各波長変換部材6に対して近紫外光を射出する発光素子3を備えてよい。発光装置10は、各波長変換部材6に入射する近紫外光の強度を制御することによって、種々のスペクトルを有する光を射出できる。発光装置10は、例えば、太陽からの直射日光のスペクトルに類似のスペクトルを有する光を射出できる。発光装置10は、スペクトル制御装置20から取得した制御情報に基づいて、種々の環境を再現するための光を射出できる。
【0134】
<複数の発光装置を備えるスペクトル制御システムの構成例>
一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、複数の発光装置10を備えてもよい。スペクトル制御装置20は、各発光装置10が射出する光のスペクトルをそれぞれ独立に制御してもよい。スペクトル制御装置20は、各発光装置10が射出する光のスペクトルを関連づけて制御してもよい。スペクトル制御装置20は、各発光装置10が射出する光のスペクトルを関連づけて制御することによって、各発光装置10が射出する光を合成した光のスペクトルを制御してもよい。各発光装置10が射出する光を合成した光は、合成光とも称される。
【0135】
発光装置10は、第1発光装置と第2発光装置とを含んでもよい。スペクトル制御装置20は、第1発光装置が射出する光のスペクトル、及び、第2発光装置が射出する光のスペクトルそれぞれを独立に制御してもよいし、関連づけて制御してもよい。スペクトル制御装置20は、第1発光装置が射出する光と第2発光装置が射出する光とを合成した合成光のスペクトルを制御してもよい。
【0136】
スペクトル制御装置20は、例えば、スペクトル測定結果に基づいて合成光のスペクトルを制御することによって、被測定光と同一又は類似のスペクトルを有する光を合成光として再現してもよい。スペクトル制御装置20は、例えば、スペクトル再現情報に基づいて合成光のスペクトルを制御することによって、再現環境における光を合成光として再現してもよい。
【0137】
各発光装置10は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を射出するとともに、360nm~780nmの波長領域にピーク波長を有する光を射出してよい。各発光装置10は、合成光が360nm~780nmの波長領域にピーク波長を有するように、360nm~780nmの波長領域にピーク波長を有する光を射出してよい。
【0138】
<スペクトル情報の取得>
スペクトル制御装置20は、スペクトル情報としてスペクトル測定結果を取得するだけでなく、他の方法でスペクトル情報を取得してもよい。例えば、スペクトル制御装置20は、外部のサーバ等の情報処理装置に格納されているスペクトルデータ110を取得し、スペクトルデータ110に対応付けられているスペクトル情報を取得してよい。情報処理装置に格納されているスペクトルデータ110は、スペクトル測定結果を含むスペクトル情報と、環境情報との対応を特定する。環境情報は、測定環境情報又は再現環境情報を含む。スペクトルデータ110は、環境情報によって環境を特定するとともに、スペクトル情報によってその環境を照らしている光のスペクトルを特定する。逆に言えば、スペクトルデータ110は、スペクトル情報によってある環境を照らしている光のスペクトルを特定するとともに、環境情報によってその光で照らされる環境を特定する。
【0139】
<フィードバック制御を実行するスペクトル制御システムの構成例>
一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、発光装置10が射出した光のスペクトルの測定結果を発光装置10の制御にフィードバックする。スペクトル制御装置20の制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルをスペクトル情報に基づいて制御しつつ、発光装置10が射出した光のスペクトルの測定結果を取得して、発光装置10の制御に光のスペクトルの測定結果をフィードバックする。例えば、制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルの測定結果がスペクトル情報で特定されるスペクトルに近づくように、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してよい。つまり、制御部22は、測定装置30の測定結果をフィードバックして発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してよい。
【0140】
制御部22は、例えば、発光装置10が射出する光のスペクトルのうち、ある1つの波長の強度に基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してもよい。制御部22は、例えば、赤色の光の強度に基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してもよい。制御部22は、発光装置10が射出する光のうち赤色の光の強度の測定値を取得し、その測定値が所定の強度に近づくように発光装置10を制御してよい。制御部22は、発光装置10が射出する光のうち赤色の光の強度の測定値が所定の強度より小さい場合、赤色の光の強度を増加させるように発光装置10を制御する。逆に、制御部22は、発光装置10が射出する光のうち赤色の光の強度の測定値が所定の強度より大きい場合、赤色の光の強度を減少させるように発光装置10を制御する。このようにすることで、制御部22は、発光装置10が射出する光のうち赤色の光の強度を所定の強度に近づけることができる。つまり、制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルの制御に、発光装置10が射出する光の強度の測定値をフィードバックできる。
【0141】
制御部22は、赤色に限られず、緑色又は青色等の他の色の光の強度に基づいて、発光装置10が射出する光に含まれる各色の強度を制御してもよい。制御部22は、発光装置10が射出する光が有するピーク波長の強度の測定値に基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してもよい。制御部22は、発光装置10が射出する光が有するピーク波長と異なる波長の強度の測定値に基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してもよい。例えば、発光装置10が射出する光が赤色のピーク波長を有する場合、制御部22は、発光装置10が射出する光のうち、赤色に近い橙色の光の強度の測定値に基づいて、発光装置10が射出する赤色の光の強度を制御してもよい。例えば、発光装置10が射出する光が緑色のピーク波長を有する場合、制御部22は、発光装置10が射出する光のうち、緑色に近い黄緑色の光の強度の測定値に基づいて、発光装置10が射出する緑色の光の強度を制御してもよい。
【0142】
制御部22は、発光装置10が射出する光のうち所定の波長の強度の測定値を取得すると仮定する。発光装置10が射出する光のピーク波長と所定の波長とが一致するか異なるかにかかわらず、制御部22は、発光装置10が射出する光の所定の波長の強度の測定値に基づいて、発光装置10が射出する光のピーク波長の強度を制御してよい。この場合、制御部22は、所定の波長の強度の測定値と、ピーク波長の強度との間の関係を表すテーブル又は数式に基づいて、発光装置10を制御してよい。制御部22は、テーブル又は数式をあらかじめ取得してよい。テーブル又は数式は、検量線に対応してよい。
【0143】
発光装置10が射出する光のスペクトル、又は、発光装置10が射出する光の所定の波長の強度は、スペクトル制御システム1が備える測定装置30によって測定されてもよい。制御部22は、測定装置30から取得した測定値に基づいて、発光装置10を制御してもよい。発光装置10が射出する光のスペクトル、又は、発光装置10が射出する光の所定の波長の強度は、スペクトル制御システム1に含まれない装置によって測定されてもよい。
【0144】
制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルの測定値を、測定する装置の感度に基づいて補正してよい。制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルの補正値に基づいて、発光装置10を制御してもよい。ここで、発光装置10が射出する光のスペクトルを測定する装置が、
図13に例示されるグラフで特定される感度曲線を有すると仮定する。
図13のグラフの横軸及び縦軸はそれぞれ、波長、及び、各波長における感度を表す。制御部22は、
図13の感度曲線を有する装置からスペクトルの測定値を取得する。取得した測定値は、
図14で破線のグラフとして例示される。
図14のグラフの横軸及び縦軸はそれぞれ、波長、及び、各波長の強度を表す。制御部22は、
図13の感度曲線に基づいて、
図14で実線のグラフとして例示されるスペクトルに補正する。
図14の破線のグラフは、補正前のスペクトルに対応する。
図14の実線のグラフは、補正後のスペクトルに対応する。制御部22は、補正後のスペクトルに基づいて、発光装置10を制御してよい。
【0145】
制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルの測定値をフィードバックする処理を、常に実行してもよいし、所定の条件が満たされた場合に実行してもよい。所定の条件は、例えば、所定の波長において、発光装置10が射出する光の強度の測定値と、スペクトル情報で特定される光の強度との差が所定値以上である場合に満たされることにされてよい。この場合、所定の波長は、スペクトルを測定する装置における測定感度が高い波長であってよい。所定の条件は、例えば、カラーフィルタの半値の閾値に基づく条件を含んでもよい。
【0146】
<スペクトルデータのグループ化>
上述したように、スペクトル制御システム1は、再現環境情報に基づいて、その環境を照らす光のスペクトルを再現できる。スペクトル制御システム1は、再現環境情報と同一又は類似の測定環境情報に対応付けられているスペクトルデータ110を抽出する。スペクトル制御システム1は、抽出したスペクトルデータ110に関連付けられているスペクトル情報で特定される光を発光装置10に射出させる。
【0147】
スペクトル制御装置20の制御部22は、再現環境情報を、利用者が入力部に入力した情報に基づいて取得してもよい。制御部22は、利用者に対して、スペクトルデータ110に対応付けられている環境情報の候補を提示してよい。スペクトル制御装置20は、利用者に提示する候補を出力する出力部を更に備えてもよい。出力部は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)若しくは無機ELディスプレイ、又はLED(Light Emission Diode)ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。出力部は、インタフェース26に含まれていてもよい。出力部は、タッチパネルとして構成されることによって、入力部と一体に構成されてもよい。制御部22は、提示した候補の中から利用者に選択させることによって、利用者に再現環境情報を入力させてもよい。制御部22は、利用者から入力されたキーワードに基づいて、スペクトルデータ110に対応付けられている環境情報の候補を生成してよい。
【0148】
制御部22は、利用者に再現環境情報の候補を提示する際に、各候補に関連づけられるスペクトル情報で特定される光を出力部に表示したり、発光装置10に射出させたりしてもよい。このようにすることで、利用者が再現環境情報を選択しやすくなる。
【0149】
スペクトルデータ110は、グループ化されてよい。グループ化されたスペクトルデータ110は、どのグループに属するか特定するためのタグが対応付けられてもよい。スペクトルデータ110がグループ化されることによって、制御部22は、キーワードに関連するグループを検索して、そのグループに属するスペクトルデータ110に関連付けられている環境情報を抽出できる。このようにすることで、利用者に提示する環境情報の候補が容易に生成され得る。
【0150】
<<環境情報に基づくグループ化>>
スペクトルデータ110は、環境情報に基づいてグループ化されてよい。スペクトルデータ110は、環境情報に基づいてグループ化された場合、属するグループの名称又は特徴を表すタグに対応付けられてよい。環境情報がタグに対応付けられてもよい。スペクトルデータ110は、上述した測定環境情報に関する説明の中で例示されている位置又は時期等に基づいてグループ化されてよい。スペクトルデータ110は、環境情報で特定される位置が、温帯、乾燥帯、熱帯、亜熱帯、寒帯、又は亜寒帯等のどの気候帯に含まれるかによってグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、環境情報で特定される位置が、例えば、四季を有する気候帯に含まれるか、乾季と雨季とを有する気候帯に含まれるかによってグループ化されてもよい。
【0151】
例えば、利用者が「京都の春」というキーワードを入力した場合、制御部22は、「京都」というキーワードに基づいて、京都府又は京都市に含まれる地点に関連づけられる環境情報を抽出してよい。制御部22は、「京都」という名称又は特徴のタグが対応付けられているスペクトルデータ110の環境情報を抽出してもよい。さらに、制御部22は、「春」というキーワードに基づいて、3月から5月までの時期に関連づけられる環境情報に絞り込んで抽出してよい。制御部22は、「春」という名称又は特徴のタグが対応付けられているスペクトルデータ110の環境情報を抽出してもよい。制御部22は、抽出した環境情報を利用者に提示し、利用者に選択させることによって再現環境情報を取得してよい。
【0152】
制御部22は、例えば、「春」という季節に特徴的な、桜が満開になっている地点を特徴づけるタグ、又は、新緑に囲まれている地点を特徴づけるタグが対応付けられているスペクトルデータ110の環境情報を抽出してもよい。
【0153】
制御部22は、例えば、「春」という季節の特徴、又は、「京都」という場所の特徴をスコア化し、高いスコアとなる環境情報を優先的に利用者に提示してもよい。制御部22は、他の利用者が選択した環境情報に関するデータを取得し、多くの利用者に選択された環境情報を優先的に利用者に提示してもよい。制御部22は、優先的に提示する内容を、出力部の目立つ位置に表示したり、出力部に強調して表示したりしてよい。
【0154】
制御部22は、キーワードに「春」という季節を表す文言が含まれている場合、「夏」、「秋」又は「冬」等の他の季節を特徴づけるタグが対応付けられている環境情報をあわせて利用者に提示してもよい。制御部22は、「京都」以外で、「春」という季節に特徴的な風景が見られる地点を特徴づけるタグが対応付けられている環境情報を利用者に提示してもよい。
【0155】
制御部22は、「京都の春」というキーワードに基づいて、季節の移り変わりがある地点、例えば、温帯に含まれる地点を特徴づけるタグが対応付けられている環境情報を利用者に提示してもよい。
【0156】
制御部22は、キーワードに「京都」という場所を表す文言が含まれている場合、例えば、「京都」に類似の印象を連想させる「鎌倉」、「金沢」若しくは「奈良」等の他の場所の名対応付けられている環境情報をあわせて利用者に提示してもよい。制御部22は、キーワードに「ハワイ」という場所を表す文言が含まれている場合、例えば、「ハワイ」に類似の印象を連想させる「沖縄」若しくは「グアム」等の他の場所の名称、又は、特徴づけるタグが対応付けられている環境情報をあわせて利用者に提示してもよい。
【0157】
制御部22は、利用者が入力したキーワードに基づいて、取得する再現環境情報を自動的に決定してもよい。制御部22は、自動的に決定して取得した再現環境情報に基づいて、発光装置10にその環境を再現する光を射出させてよい。制御部22は、例えば、キーワードに「春」という季節を表す文言が含まれていることに基づいて、自動的に「春」の環境を再現する光を発光装置10に射出させてもよい。制御部22は、発光装置10に射出させる光を、春夏秋冬それぞれの環境を再現する光に変化させることによって、四季の移り変わりを再現してもよい。
【0158】
<<スペクトル情報に基づくグループ化>>
スペクトルデータ110は、スペクトル情報に基づいてグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、スペクトル情報に基づいてグループ化された場合、属するグループの名称又は特徴を表すタグに対応付けられてよい。スペクトル情報がタグに対応付けられてもよい。
【0159】
スペクトルデータ110は、例えば、類似の色の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。この場合、スペクトルデータ110又はスペクトル情報に対応付けられるタグは、色の名称を含んでもよい。スペクトルデータ110は、例えば、原色の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。原色は、例えば、赤、緑又は青等のいわゆる光の三原色を含んでよい。
【0160】
スペクトルデータ110は、例えば、季節を連想させる色を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。春を連想させる色は、ピンク、黄色又は若草色等を含んでよい。夏を連想させる色は、青又は緑等を含んでよい。秋を連想される色は、赤又は黄等を含んでよい。冬を連想させる色は、白、又は、イルミネーションで用いられるLEDの発光色等を含んでよい。
【0161】
スペクトルデータ110は、例えば、神社仏閣又は教会若しくはモスク等の雰囲気を連想させる色を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、例えば、ろうそく又は提灯若しくは灯篭等の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、例えば、仏像又は仏具等が並んでいるお堂の中、又は、神具等が並んでいる本殿の中の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、教会のステンドグラスから漏れる光、又は、天窓から差し込む光等を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、モスクを照らすランプの光等を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。
【0162】
スペクトルデータ110は、例えば、海辺のリゾート地の雰囲気を連想させる空又は海等の青系統の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。スペクトルデータ110は、例えば、スキーリゾートの雰囲気を連想させる松明等の暖色系の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。
【0163】
スペクトルデータ110は、上述の例に限られず、種々のキーワードから連想される色の光を特定するスペクトル情報同士でグループ化されてもよい。
【0164】
スペクトルデータ110がスペクトル情報に基づいてグループ化されている場合であっても、制御部22は、環境情報に基づいてグループ化されている場合と同じ方法で利用者に対して再現環境情報の候補を提示してよい。
【0165】
(他の実施形態:画像データの表示と照明との連動)
図15に示されるように、一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、発光装置10と、スペクトル制御装置20と、表示装置50とを備える。スペクトル制御システム1は、
図1に例示されている測定装置30とカメラ40とを更に備えてもよい。発光装置10及びスペクトル制御装置20の構成に関する説明は、上述してきたとおりであるので、省略される。本実施形態において、スペクトル制御装置20は、スペクトルデータ110をあらかじめ取得しているとするが、スペクトル情報を適宜生成してもよい。
【0166】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1において、表示装置50は、発光装置10が射出する光で照らされる所定の空間に設置されている。スペクトル制御システム1は、表示装置50が表示する画像と、発光装置10が射出する光のスペクトルとを連動させる。これによって、所定の空間で表示装置50に表示される画像を見る利用者は、画像が撮影された状況に没入する感覚を得られる。また、利用者が表示される画像に対して感情移入しやすくなる。
【0167】
<構成例>
表示装置50は、表示制御部52と、表示記憶部54と、操作部55と、表示インタフェース56と、表示部58とを備える。表示制御部52は、表示装置50の各構成部を制御する。表示制御部52は、スペクトル制御装置20の制御部22と同一の構成であってもよいし、類似の構成であってもよい。表示記憶部54は、スペクトル制御装置20の記憶部24と同一の構成であってもよいし、類似の構成であってもよい。表示記憶部54は、表示制御部52が表示部58に表示させる画像データを格納してよい。
【0168】
表示インタフェース56は、スペクトル制御装置20のインタフェース26と同一の構成であってもよいし、類似の構成であってもよい。表示インタフェース56は、スペクトル制御装置20のインタフェース26との間で互いに情報又はデータを送受信する。表示インタフェース56は、スペクトル制御装置20のインタフェース26から受信した情報又はデータを表示制御部52に出力するとともに、表示制御部52から取得した情報又はデータをスペクトル制御装置20のインタフェース26に送信する。
【0169】
操作部55は、スペクトル制御システム1の利用者が表示装置50を操作するための入力を受け付ける。操作部55は、タッチパネル、キーボード又はマウス等の入力デバイスを含んでよい。
【0170】
表示部58は、表示制御部52から取得するデータに基づく画像を表示する。表示部58は、例えば、プロジェクタ等の投影デバイスを含んでよい。表示装置50は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ等のディスプレイを含んでよい。ディスプレイは、モニタ又はテレビとして構成されてもよいし、スマートフォン又はタブレット等の携帯端末の表示デバイスとして構成されてもよい。
【0171】
表示制御部52は、表示部58に静止画を表示させてもよいし、動画を表示させてもよい。表示制御部52が表示部58に表示させる画像は、撮影された位置に関する情報及び撮影された日時に関する情報の少なくとも一方の情報と関連付けられていてよいし、どちらの情報にも関連付けられていなくてもよい。
【0172】
表示制御部52は、操作部55によって利用者から画像を表示することを指示する操作を受け付けた場合、表示部58への画像の表示を開始してよい。表示制御部52は、1枚の静止画を表示部58に表示させ続けてもよい。表示制御部52は、表示部58に表示させる静止画を変更してもよい。つまり、表示制御部52は、複数の静止画を表示部58に表示させてもよい。表示制御部52が静止画を変更する間隔は、変更毎に一定であってもよいし、変更毎に異なっていてもよいし、ランダムであってもよい。表示制御部52は、表示記憶部54に格納されている順番どおりに静止画を表示してもよいし、他の条件に基づいて静止画を表示する順番を決定してもよい。表示制御部52は、表示部58に動画を表示させ続けてもよい。
【0173】
画像データは、その画像が撮影された位置に関する情報、又は、その画像が撮影された日時に関する情報に関連付けられていることがある。表示部58に表示されている画像のデータに関連付けられている情報は、表示画像情報とも称される。画像データが表示画像情報に関連付けられている場合、表示制御部52は、表示画像情報をスペクトル制御装置20の制御部22に出力する。制御部22は、表示画像情報を取得した場合、発光装置10が射出する光のスペクトルを表示画像情報に基づいて制御する。制御部22は、あらかじめ記憶部24等に格納されているスペクトルデータ110のうち、表示画像情報と同一又は類似の情報を含む環境情報に関連づけられているスペクトル情報を抽出してよい。制御部22は、抽出したスペクトル情報で特定される光を発光装置10に射出させてよい。
【0174】
画像データが表示画像情報に関連付けられていない場合、表示制御部52は、画像データそのものを制御部22に出力してよい。制御部22は、画像データから、その画像が撮影された環境を照らす光のスペクトルを解析してよい。制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルを、画像データから解析したスペクトルに基づいて制御してよい。制御部22は、画像データから、その画像が撮影された位置又は日時を推定してもよい。制御部22は、推定した情報に一致する環境情報、又は、推定した情報に類似する環境情報に関連づけられているスペクトル情報を抽出してもよい。制御部22は、抽出したスペクトル情報で特定される光を発光装置10に射出させてよい。
【0175】
画像データが表示画像情報に関連づけられていない場合、表示装置50の表示制御部52又はスペクトル制御装置20の制御部22は、画像データそのものを外部の情報処理装置に出力してよい。外部の情報処理装置は、画像データを解析して表示画像情報を生成し、表示制御部52又は制御部22に出力してよい。表示制御部52は、外部の情報処理装置が生成した表示画像情報を取得した場合、取得した表示画像情報を画像データに関連付けて制御部22に出力してよい。
【0176】
表示装置50の表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を変更した場合、変更した画像の表示画像情報又は画像データそのものをスペクトル制御装置20の制御部22に出力する。制御部22は、表示部58に表示される画像の変更に応じて、発光装置10が射出する光のスペクトルを変更してよい。
【0177】
以上述べてきたように、本実施形態に係るスペクトル制御システム1は、表示装置50に表示する画像と発光装置10に射出させる光のスペクトルとを連動させることができる。このようにすることで、表示装置50に表示される画像を見る利用者は、画像が撮影された状況に没入する感覚を得られたり、表示される画像に対して感情移入しやすくなったりする。
【0178】
<変更頻度の制御の例>
光のスペクトルが頻繁に変化する場合、利用者が違和感を覚え得る。スペクトル制御装置20の制御部22は、表示部58に表示させる画像を変更する間隔が所定時間より短い場合、発光装置10が射出する光のスペクトルを変更しないように制御してよい。表示部58に表示させる画像を変更する間隔は、変更間隔とも称される。制御部22は、表示装置50から表示画像情報又は画像データそのものを取得した場合でも、変更間隔が第1時間未満であれば、発光装置10が射出する光のスペクトルを変更しなくてよい。変更間隔が第1時間未満である場合に光のスペクトルを変更しない制御は、変更間隔が第1時間未満である場合に表示装置50の表示制御部52が表示画像情報又は画像データそのものをスペクトル制御装置20に出力しないことによって実現されてもよい。変更間隔が第1時間以上とされることによって、第1時間以上にわたって発光装置10が射出する光のスペクトルが変更されない。これによって、光のスペクトルが変化する頻度が少なくなる。その結果、利用者が違和感を覚えにくくなる。また、スペクトルを変更するための演算等の処理で消費される電力が低減され得る。第1時間は、利用者の感覚に合うように設定されてもよいし、消費電力が削減目標を達成するように設定されてもよい。
【0179】
制御部22は、表示部58に表示させる画像が変更されるスケジュールを表示制御部52から取得してよい。制御部22は、画像が変更されるスケジュールに基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを変更するスケジュールを生成してよい。このようにすることで、スペクトル制御システム1は、利用者に違和感を与えずに発光装置10が射出する光のスペクトルを変更できる。また、スペクトルが計画的に変更されることによって、スペクトルを変更するために消費される電力が低減され得る。
【0180】
<動画表示との連動の例>
スペクトル制御装置20の制御部22は、表示装置50に表示される動画の内容に、発光装置10に射出させる光のスペクトルを連動させてもよい。動画は、例えば60ヘルツ又は120ヘルツ等のフレームレートで表示される。仮に制御部22が各フレームの内容にスペクトルを追従させる場合、スペクトルの変化の頻度が多くなる。制御部22は、動画の内容をシーンに分けて、各シーンに対応するスペクトル情報を生成してよい。制御部22は、シーン毎に発光装置10に射出させる光のスペクトルを変更してよい。制御部22は、例えば、表示装置50にろうそくで照らされている部屋のシーンが表示されている場合、発光装置10に射出させる光のスペクトルを、ろうそくの光のスペクトルに合わせてもよい。制御部22は、表示装置50に表示されるシーンが屋外のシーンに切り替わったときに、発光装置10に射出させる光のスペクトルを、屋外の光のスペクトルに合わせて変更してもよい。制御部22は、例えば、表示装置50にライブ会場の映像が表示されている場合、演奏される楽曲毎に異なるステージ又は会場の照明に応じて、発光装置10に射出させる光のスペクトルを変更してもよい。このようにすることで、利用者は、表示装置50に表示されている動画の各シーンに没入する感覚を得やすくなったり、感情移入しやすくなったりする。
【0181】
表示装置50に表示される動画が広告等の本編と無関係の内容を含む場合、制御部22は、本編の内容の表示中に限り、表示している画像に発光装置10に射出させる光のスペクトルを連動させてよい。制御部22は、広告等の本編と無関係の内容の表示中に、表示している画像と発光装置10に射出させる光との連動を停止してよい。制御部22は、連動を停止する場合、発光装置10に射出させる光のスペクトルを、初期設定のスペクトルに合わせてもよいし、別途設定されているスペクトルに合わせてもよい。動画の内容が本編の内容である場合とそうでない場合とでスペクトルの制御を異ならせることで、利用者は、表示装置50に表示される画像を注視していなくても、本編の内容が表示されているか判断できる。
【0182】
<空間的な照明制御の例>
発光装置10は、所定の空間としての1つの部屋に対して2台以上設置されていてもよい。例えば、部屋の天井を照らす発光装置10と、壁を照らす発光装置10と、床を照らす発光装置10とが別々に設置されていてもよい。スペクトル制御装置20の制御部22は、表示装置50に表示される画像に合わせて、部屋の各部を照らす光のスペクトルを異ならせてもよい。制御部22は、例えば、表示装置50に青空の下に緑の芝生が広がっている画像が表示されている場合、部屋の天井を照らす光のスペクトルを青空の色に合わせるとともに、部屋の床を照らす光のスペクトルを芝生の色に合わせてもよい。このようにすることで、利用者は、表示装置50に表示されている画像に没入する感覚を得やすくなったり、感情移入しやすくなったりする。
【0183】
<複数の部屋の照明制御の例>
スペクトル制御システム1は、複数の部屋を有する住戸又はオフィス等において、各部屋を照らす光を射出する発光装置10を各部屋に備えてよい。スペクトル制御装置20の制御部22は、各部屋の発光装置10を制御し、各部屋を照らす光のスペクトルを制御してよい。
【0184】
表示装置50が複数の部屋のうちの1つの部屋に設置されているとする。制御部22は、表示装置50が設置されている部屋の発光装置10だけを制御し、制御対象の発光装置10が射出する光のスペクトルを表示装置50に表示する画像に連動させてよい。このようにすることで、スペクトルを変更するための演算等の処理で消費される電力が低減され得る。
【0185】
制御部22は、表示装置50が設置されていない部屋の発光装置10もあわせて制御し、制御対象の発光装置10が射出する光のスペクトルを表示装置50に表示する画像に連動させてよい。このようにすることで、表示装置50が設置されていない部屋に在室する利用者が、表示装置50が設置されている部屋の雰囲気を共有できる。
【0186】
スペクトル制御システム1は、各部屋に利用者が在室しているか検出する人感センサ等のセンサを備えてよい。スペクトル制御装置20の制御部22は、各部屋の利用者の在室状況に関する情報を取得してよい。制御部22は、利用者の在室状況に関する情報を、スペクトル制御システム1に含まれるセンサから取得してもよいし、外部のセンサから取得してもよい。制御部22は、利用者が在室している部屋の発光装置10だけを制御し、制御対象の発光装置10が射出する光のスペクトルを表示装置50に表示する画像に連動させてよい。このようにすることで、スペクトルを変更するための演算等の処理で消費される電力が低減され得る。
【0187】
<フローチャートの例>
スペクトル制御装置20の制御部22は、
図16に例示されるフローチャートの手順を含むスペクトル制御方法を実行してよい。スペクトル制御方法は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0188】
制御部22は、表示装置50から表示画像情報を取得する(ステップS31)。制御部22は、表示装置50から表示されている画像データそのものを取得し、画像データに基づいて表示画像情報を生成してもよい。制御部22は、外部の情報処理装置から表示画像情報を取得してもよい。
【0189】
制御部22は、表示画像情報に基づいてスペクトルデータ110からスペクトル情報を抽出する(ステップS32)。
【0190】
制御部22は、スペクトル情報に基づいて発光装置10を制御する(ステップS33)。制御部22は、スペクトル情報で特定される光を発光装置10に射出させる。
【0191】
制御部22は、表示装置50から新たに表示画像情報を取得したか判定する(ステップS34)。制御部22は、表示装置50から新たに画像データを取得した場合に、新たに表示画像情報を取得したと判定してもよい。制御部22は、新たに表示画像情報を取得しない場合(ステップS34:NO)、ステップS33の手順に戻り、スペクトル情報を変更せずに発光装置10を制御し続ける。
【0192】
制御部22は、表示装置50から新たに表示画像情報を取得した場合(ステップS34:YES)、変更間隔が第1時間未満であるか判定する(ステップS35)。制御部22は、変更間隔が第1時間未満である場合(ステップS35:YES)、ステップS33の手順に戻り、スペクトル情報を変更せずに発光装置10を制御し続ける。
【0193】
制御部22は、変更間隔が第1時間未満でない場合(ステップS35:NO)、つまり、変更間隔が第1時間以上である場合、スペクトル情報を変更する(ステップS36)。制御部22は、新たな表示画像情報に基づいてスペクトルデータ110からスペクトル情報を抽出することによって、スペクトル情報を変更する。制御部22は、ステップS36の手順を実行した後、ステップS33の手順に戻り、変更したスペクトル情報に基づいて発光装置10の制御を続ける。
【0194】
表示装置50の表示制御部52は、
図17に例示されるフローチャートの手順を含む画像表示方法を実行してよい。画像表示方法は、プロセッサに実行させる画像表示プログラムとして実現されてもよい。
【0195】
表示制御部52は、表示部58への画像の表示を開始する(ステップS41)。表示制御部52は、操作部55で利用者から画像の表示を開始する操作入力を受け付けた場合に、表示部58への画像の表示を開始してよい。利用者からの操作入力によって表示する画像が指定されている場合、表示制御部52は、指定された画像を表示部58に表示させてよい。表示する画像が指定されていない場合、表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を適宜選択してよい。
【0196】
表示制御部52は、スペクトル制御装置20に表示画像情報を出力する(ステップS42)。表示部58に表示させる画像に表示画像情報が関連付けられていない場合、表示制御部52は、表示部58に表示させる画像の画像データそのものをスペクトル制御装置20に出力してよい。
【0197】
表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を変更するか判定する(ステップS43)。表示制御部52は、操作部55で利用者からの画像を変更する操作入力を取得した場合に、表示部58に表示させる画像を変更すると判定してよい。表示制御部52は、表示部58に同じ画像を表示させている期間が所定期間を超えたときに、表示部58に表示させる画像を新たな画像に変更すると判定してよい。表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を変更しないと判定した場合(ステップS43:NO)、ステップS44の手順の判定を繰り返す。
【0198】
表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を変更すると判定した場合(ステップS43:YES)、表示部58に表示させる画像を現在表示している画像と異なる画像に変更する(ステップS44)。表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を、利用者からの操作入力によって指定された画像に変更してもよい。表示制御部52は、表示部58に表示させる画像を、表示制御部52が適宜選択した画像に変更してもよい。
【0199】
表示制御部52は、変更した画像に関連付けられる表示画像情報をスペクトル制御装置20に出力する(ステップS45)。変更した画像に表示画像情報が関連付けられていない場合、表示制御部52は、表示部58に表示させる画像の画像データそのものをスペクトル制御装置20に出力してよい。表示制御部52は、ステップS45の手順の終了後、ステップS43の手順に戻る。
【0200】
以上、スペクトル制御装置20の制御部22が表示装置50から取得した情報に基づいて、表示装置50が設置されている所定の空間を照らすために発光装置10に射出させる光のスペクトルを決定する構成が説明された。このようにすることで、表示装置50に表示されている画像を見ている利用者は、表示装置50に表示されている画像に没入する感覚を得やすくなったり、感情移入しやすくなったりする。
【0201】
発光装置10に射出させる光のスペクトルの決定又は変更は、スペクトル制御装置20に限られず、表示装置50によって実行されてもよい。つまり、表示装置50の表示制御部52が発光装置10に射出させる光のスペクトルを決定し又は変更し、スペクトル制御装置20の制御部22に出力してもよい。
【0202】
(他の実施形態:ビデオ通話中の照明との連動)
図18に示されるように、一実施形態に係るスペクトル制御システム1は、発光装置10と、スペクトル制御装置20と、第1端末装置81と、第2端末装置82とを備える。第1端末装置81及び第2端末装置82は、端末装置80と総称されるとする。発光装置10及びスペクトル制御装置20の構成に関する説明は、上述してきたとおりであるので、省略される。本実施形態において、スペクトル制御装置20は、スペクトルデータ110をあらかじめ取得しているとするが、スペクトル情報を適宜生成してもよい。
【0203】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1において、各端末装置80は、ネットワーク75を介して互いに通信可能に接続される。各端末装置80の利用者は、端末装置80で動作するアプリケーションプログラムによって、互いにビデオ通話でコミュニケーションをとることができる。ビデオ通話において、各端末装置80の利用者は、相手方の端末装置80から送信される画像をリアルタイムに見ながら音声で通話することができる。
【0204】
<端末装置80の構成例>
図19に示されるように、端末装置80は、端末制御部83と、端末通信部84と、端末操作部85と、端末表示部86と、カメラ87と、音声入出力部88とを備える。端末装置80は、位置情報取得部89を更に備えてもよい。
【0205】
端末制御部83は、端末装置80の各構成部を制御する。端末制御部83は、スペクトル制御装置20の制御部22と同一の構成であってもよいし、類似の構成であってもよい。端末制御部83は、端末記憶部を含んでよい。端末記憶部は、端末装置80の動作のために用いられる各種情報及び端末制御部83で実行されるプログラム等を格納する。端末記憶部は、端末制御部83のワークメモリとして機能してよい。端末記憶部の少なくとも一部は、端末制御部83と別体として構成されてもよい。第1端末装置81の端末制御部83は、第1端末制御部とも称される。第2端末装置82の端末制御部83は、第2端末制御部とも称される。
【0206】
端末通信部84は、端末装置80をネットワーク75に通信可能に接続する。端末通信部84は、端末制御部83から入力された情報を、ネットワーク75を介して他の端末装置80又はスペクトル制御装置20に送信する。端末通信部84は、ネットワーク75を介して他の端末装置80又はスペクトル制御装置20から受信した情報を端末制御部83に出力する。端末通信部84は、有線又は無線によってネットワーク75に接続されていてよい。端末通信部84は、LAN等の通信インタフェースを含んでよい。端末通信部84は、4G若しくはLTE又は5G等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。第1端末装置81の端末通信部84は、第1端末通信部とも称される。第2端末装置82の端末通信部84は、第2端末通信部とも称される。
【0207】
端末操作部85は、端末装置80の利用者が端末装置80を操作するための入力を受け付ける。端末操作部85は、タッチパネル、キーボード又はマウス等の入力デバイスを含んでよい。第1端末装置81の端末操作部85は、第1端末操作部とも称される。第2端末装置82の端末操作部85は、第2端末操作部とも称される。
【0208】
端末表示部86は、端末制御部83から取得するデータに基づく画像を表示する。端末表示部86は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ等のディスプレイを含んでよい。第1端末装置81の端末表示部86は、第1端末表示部とも称される。第2端末装置82の端末表示部86は、第2端末表示部とも称される。
【0209】
カメラ87は、端末装置80がビデオ通話で用いられている場合、端末装置80の利用者を被写体として撮影し、撮影した画像を端末制御部83に出力する。カメラ87は、撮像素子を含んでよい。撮像素子は、例えば、CMOSイメージセンサ又はCCD等を含んでよい。第1端末装置81のカメラ87は、第1端末カメラとも称される。第2端末装置82のカメラ87は、第2端末カメラとも称される。
【0210】
音声入出力部88は、端末装置80がビデオ通話で用いられている場合、端末装置80の利用者が発話した音声又は利用者の周囲の音声を取得する、マイク等の音声入力デバイスを含む。音声入出力部88は、入力された音声に基づく音声データを端末制御部83に出力する。音声入出力部88は、ビデオ通話の相手側の端末装置80から送信された音声データを出力する、スピーカ等の音声出力デバイスを含む。第1端末装置81の音声入出力部88は、第1音声入出力部とも称される。第2端末装置82の音声入出力部88は、第2音声入出力部とも称される。
【0211】
位置情報取得部89は、端末装置80の位置情報を取得し、端末制御部83に出力する。端末装置80の位置情報は、緯度若しくは経度、又は高度に関する情報を含んでよい。位置情報取得部89は、GNSS技術等に基づいて、端末装置80の位置情報を取得してよい。GNSS技術は、GPS、GLONASS、Galileo、又は準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムを含んでよい。第1端末装置81の位置情報取得部89は、第1位置情報取得部とも称される。第2端末装置82の位置情報取得部89は、第2位置情報取得部とも称される。
【0212】
端末装置80は、第1端末装置81と第2端末装置82とを含む。第1端末装置81は、第1利用者がビデオ通話で利用する端末装置80に対応する。第2端末装置82は、第2利用者がビデオ通話で利用する端末装置80に対応する。第1利用者及び第2利用者はそれぞれ、第1所在空間71及び第2所在空間72に所在するときにビデオ通話でコミュニケーションをとるとする。第1所在空間71は、発光装置10が射出する光によって照らされるとする。つまり、スペクトル制御システム1は、第1利用者が所在する第1所在空間71を照らす光のスペクトルを制御できる。
【0213】
スペクトル制御装置20は、インタフェース26を介してネットワーク75に接続され、各端末装置80と通信可能に構成される。スペクトル制御装置20は、端末装置80からビデオ通話で送受信している画像を取得してもよい。スペクトル制御装置20は、端末装置80から位置情報を取得してもよい。
【0214】
<端末装置80におけるビデオ通話の動作例>
第1端末装置81において、第1端末操作部は、第1利用者からビデオ通話を開始する入力を受け付ける。第1端末操作部は、ビデオ通話の相手方を特定する情報の入力をあわせて受け付ける。第1端末制御部は、第1端末操作部に入力された情報に基づいて、ビデオ通話の相手方となる第2端末装置82を特定する。第1端末制御部は、第1端末通信部を介して、第2端末装置82と通信を開始する。
【0215】
第1利用者及び第2利用者は、それぞれ第1端末装置81及び第2端末装置82を用いてビデオ通話でコミュニケーションをとることができる。第1利用者及びその背景又は周囲が映っている画像は、第2端末表示部に表示される。第2利用者及びその背景又は周囲が映っている画像は、第1端末表示部に表示される。
【0216】
スペクトル制御装置20の制御部22は、第2端末装置82から取得する情報に基づいて、第2所在空間72を照らしている光と同一又は類似の光を、第1所在空間71に対して発光装置10に射出させてよい。このようにすることで、第1利用者が所在する第1所在空間71は、第2所在空間72を照らしている光のスペクトルと同一又は類似のスペクトルを有する光で照らされる。その結果、第1利用者は、第2利用者が所在する空間と同一又は類似の光で照らされる空間に所在することができ、第2利用者と空間を共有している感覚を得られる。
【0217】
制御部22は、発光装置10が第1所在空間71に対して射出する光のスペクトルを、第2所在空間72を照らす光のスペクトルに合わせる制御を、第1端末装置81がビデオ通話を開始したときに自動的に開始してもよい。
【0218】
制御部22は、発光装置10が第1所在空間71に対して射出する光のスペクトルを、第2所在空間72を照らす光のスペクトルに合わせる制御の開始の指示が第1端末操作部に入力されたことを表す情報を第1端末装置81から取得してよい。制御部22は、第1端末操作部に指示が入力されたことを表す情報を取得した場合に、発光装置10が第1所在空間71に対して射出する光のスペクトルを、第2所在空間72を照らす光のスペクトルに合わせる制御を開始してもよい。第1端末操作部は、例えば、第1端末表示部に表示されたアイコン又はメニューを第1利用者にクリックさせたりタップさせたりすることによって、第1利用者の操作入力を受け付けてよい。
【0219】
制御部22は、発光装置10が射出する光のスペクトルを、第2所在空間72を照らす光のスペクトルに合わせる制御の開始の指示が第1端末操作部に入力されたことを、第2利用者に通知してよい。例えば、第2端末装置82は、第2端末表示部に、第1所在空間71を照らす光を、第2所在空間72を照らす光に合わせる制御の開始が第1利用者から要求されていることを表示してよい。制御部22は、第1所在空間71を照らす光を、第2所在空間72を照らす光に合わせる制御を開始することについて同意する入力を、第2端末操作部を通じて第2利用者から受け付け、制御部22に送信する。制御部22は、第2利用者の同意を確認した場合に、発光装置10が第1所在空間71に対して射出する光のスペクトルを、第2所在空間72を照らす光のスペクトルに合わせる制御を開始する。
【0220】
制御部22は、第2端末カメラで撮影した画像を第2端末装置82から取得し、取得した画像に基づいて、発光装置10が射出する光のスペクトルを制御してよい。制御部22は、例えば、以下の処理を実行してよい。制御部22は、第2端末装置82から取得した、第2利用者及びその背景又は周囲が映っている画像を解析し、第2所在空間72を照らしている光のスペクトルを特定するスペクトル情報を生成する。制御部22は、スペクトル情報に基づいて特定される光を発光装置10に射出させる。
【0221】
制御部22は、第2端末装置82の位置情報を第2端末装置82から取得し、取得した位置情報に基づいて、発光装置10に射出させる光を制御してよい。制御部22は、例えば、以下の処理を実行してよい。制御部22は、スペクトルデータ110に対応付けられている環境情報のうち、第2端末装置82の現在位置から所定範囲内の位置を特定する環境情報を抽出する。さらに、制御部22は、ビデオ通話を行っている現在時刻から所定時間内の時刻を特定する環境情報を抽出する。制御部22は、第2端末装置82の現在位置とビデオ通話を行っている現在時刻とに基づいて抽出された環境情報に対応付けられているスペクトルデータ110を取得する。制御部22は、取得したスペクトルデータ110に対応付けられているスペクトル情報に基づいて特定される光を発光装置10に射出させる。
【0222】
ビデオ通話が進行する間、現在時刻が変化する。制御部22は、現在時刻の変化に応じて環境情報を新たに抽出してよい。制御部22は、新たに抽出された環境情報に対応付けられているスペクトルデータ110を取得してよい。制御部22は、発光装置10に射出させる光を、新たに取得したスペクトルデータ110に対応付けられているスペクトル情報に基づいて変更してよい。制御部22は、所定時刻が経過したときに、スペクトル情報の変更を実行してよい。所定時刻は、例えば1時間等に設定されてよいが、これに限られず適宜設定されてよい。
【0223】
ビデオ通話が進行する間、第2利用者及び第2利用者が利用する第2端末装置82が移動することがある。制御部22は、第2端末装置82の位置情報の変化に応じて環境情報を新たに抽出してよい。制御部22は、新たに抽出された環境情報に対応付けられているスペクトルデータ110を取得してよい。制御部22は、発光装置10に射出させる光を、新たに取得したスペクトルデータ110に対応付けられているスペクトル情報に基づいて変更してよい。制御部22は、第2端末装置82の位置が所定距離以上移動したときに、スペクトル情報の変更を実行してよい。所定距離は、例えば10km等に設定されてよいが、これに限られず適宜設定されてよい。
【0224】
第1利用者は、複数の部屋を有する住戸又はオフィス等において、ある1つの部屋に所在し、他の部屋に移動可能であるとする。第1利用者が所在する部屋が第1所在空間71に対応する。スペクトル制御システム1は、各部屋を照らす光を射出する発光装置10を各部屋に備えるとする。スペクトル制御システム1は、第1利用者がどの部屋に在室しているか検出するために、人感センサ等のセンサを各部屋に備えてよい。制御部22は、第1利用者が在室している部屋を特定する情報を取得し、第1利用者が在室している部屋に設置されている発光装置10だけを第2端末装置82の情報に基づいて制御してよい。このようにすることで、スペクトルを変更するための演算等の処理で消費される電力が低減され得る。制御部22は、第1利用者が他の部屋に移動したことを表す情報を取得し、第1利用者が移動した先の部屋の発光装置10の制御を開始するとともに、第1利用者が立ち去った部屋の発光装置10の制御を終了してよい。
【0225】
制御部22は、第1端末装置81と第2端末装置82との間の通話が終了した場合、第2端末装置82に関する情報に基づく発光装置10の制御を終了してよい。発光装置10は、制御部22による制御が終了した場合、あらかじめ設定されているスペクトルで特定される光を射出してよい。
【0226】
第1端末装置81と第2端末装置82との間の通話は、ビデオ通話と音声通話とを含み得る。音声通話は、端末装置80同士で画像を送受信しない。制御部22は、通話が音声通話だけに切り替わった場合に、第2端末装置82に関する情報に基づく発光装置10の制御を終了してよい。制御部22は、通話が音声通話だけに切り替わった場合でも、第2端末装置82の位置情報及び現在時刻に基づいて発光装置10の制御を継続してもよい。
【0227】
上述の説明において、発光装置10は、第1所在空間71に設置されているものの、第2所在空間72に設置されているか特定されていない。発光装置10が第2所在空間72にも設置されている場合、制御部22は、第1所在空間71に設置されている発光装置10と、第2所在空間72に設置されている発光装置10とのうち、一方の発光装置10をマスタの装置とみなしてよい。制御部22は、他方の発光装置10をスレーブの装置とみなしてよい。制御部22は、マスタの装置とみなした発光装置10が位置する空間を照らす光のスペクトルを制御する一方で、スレーブの装置とみなした発光装置10の制御を停止してよい。このようにすることで、2つの発光装置10が射出する光が互いにフィードバックされて制御状態が未収束の状況が避けられ得る。制御部22は、利用者からの入力に基づいて、マスタの装置とみなす発光装置10を決定してもよい。
【0228】
本実施形態において、2つの端末装置80の間でビデオ通話が実行される場合における発光装置10の制御が説明された。本実施形態における動作は、3つ以上の端末装置80の間でビデオ通話が実行される場合にも適用され得る。制御部22は、通話先の端末装置80が位置する空間が2か所以上に存在する場合、いずれか1か所の空間を選択して、選択した空間を照らす光に基づいて発光装置10に射出させる光のスペクトルを制御してよい。制御部22は、利用者からの操作入力に基づいて、2か所以上の空間から1か所の空間を選択してもよい。
【0229】
<フローチャートの一例>
スペクトル制御装置20の制御部22は、
図20に例示されるフローチャートの手順を含むスペクトル制御方法を実行してよい。スペクトル制御方法は、プロセッサに実行させるスペクトル制御プログラムとして実現されてもよい。
【0230】
制御部22は、第1端末装置81がビデオ通話を開始したか判定する(ステップS51)。第1端末装置81がビデオ通話を開始していない場合(ステップS51:NO)、ステップS51の判定の手順を繰り返す。
【0231】
制御部22は、第1端末装置81がビデオ通話を開始した場合(ステップS51:YES)、第2端末装置82の情報を取得する(ステップS52)。第2端末装置82の情報は、第2端末装置82の位置情報を含んでよい。第2端末装置82の情報は、第2端末装置82が送信するビデオ通話の画像を含んでよい。
【0232】
制御部22は、第2端末装置82の情報に基づいて、発光装置10に射出させる光を特定するスペクトル情報を取得する(ステップS53)。第2端末装置82の情報がビデオ通話の画像である場合、制御部22は、その画像から第2所在空間72を照らす光のスペクトルを解析することによって、スペクトル情報を取得してよい。第2端末装置82の情報が第2端末装置82の位置情報である場合、制御部22は、位置情報と現在時刻とに基づいてスペクトルデータ110に対応付けられている環境情報を抽出し、抽出した環境情報に関連づけられているスペクトル情報を取得してよい。
【0233】
制御部22は、取得したスペクトル情報に基づいて、発光装置10を制御する(ステップS54)。制御部22は、発光装置10が第1所在空間71に対して射出する光を、スペクトル情報で特定される光に近づける。
【0234】
制御部22は、第1端末装置81がビデオ通話を終了したか判定する(ステップS55)。制御部22は、第1端末装置81が通話を継続するものの音声通話のみを継続する場合、ビデオ通話を終了したと判定する。制御部22は、第1端末装置81が通話全体を狩猟した場合、ビデオ通話を終了したと判定する。第1端末装置81がビデオ通話を終了していない場合(ステップS55:NO)、つまり、ビデオ通話を継続している場合、ステップS52の手順に戻り、発光装置10の制御を続ける。
【0235】
制御部22は、第1端末装置81がビデオ通話を終了した場合(ステップS55:YES)、発光装置10の制御を終了する(ステップS56)。制御部22は、ステップS56の手順の実行後、
図20のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部22は、第1端末装置81がビデオ通話を終了した場合でも、第2端末装置82の位置情報及び現在時刻に基づいてスペクトル情報を抽出することによって、発光装置10の制御を継続してもよい。
【0236】
本実施形態に係るスペクトル制御システム1によれば、端末装置80同士の通話において、各端末装置80の利用者が所在する空間を照らす光を一致させる又は類似させることができる。このようにすることで、互いに通話する利用者が空間を共有している感覚を得られる。その結果、スペクトル制御システム1は、利用者同士に一体感又は連帯感を与えることができる。
【0237】
本実施形態において、スペクトル制御装置20の機能は、端末装置80によって実行されてもよい。この場合、端末装置80が発光装置10に射出させる光のスペクトルを指示する制御情報を生成してよい。つまり、発光装置10は、端末装置80から制御情報を取得してよい。端末装置80の利用者が部屋を移動した場合、端末装置80は、利用者が所在する部屋の発光装置10と通信することによって、その部屋を照らす光のスペクトルを制御してよい。このようにすることで、システム構成が簡略化され得る。その結果、利用者にとっての利便性が向上し得る。
【0238】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0239】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0240】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1蛍光体は、第2蛍光体と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0241】
1 スペクトル制御システム
10 発光装置(2:素子基板、2A:主面、3:発光素子、4:枠体、5:封止部材、6:波長変換部材、60:透光部材、61~65:第1~第5蛍光体)
20 スペクトル制御装置(22:制御部、24:記憶部、26:インタフェース)
30 測定装置
40 カメラ
50 表示装置(52:表示制御部、54:表示記憶部、55:操作部、56:表示インタフェース、58:表示部)
71、72 第1所在空間、第2所在空間
75 ネットワーク
80 端末装置(81:第1端末装置、82:第2端末装置、83:端末制御部、84:端末通信部、85:端末操作部、86:端末表示部、87:カメラ、88:音声入出力部、89:位置情報取得部)
100 スペクトルデータベース
110 スペクトルデータ