(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】伸縮ノーズ機構を有する手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20221007BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20221007BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20221007BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20221007BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/56
A61B34/20
A61B34/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021117300
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2018527912の分割
【原出願日】2016-11-30
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ボズン,ティモシー・ジェイ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502180(JP,A)
【文献】特開2008-019902(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112163(WO,A1)
【文献】特表2014-500738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0060278(US,A1)
【文献】米国特許第05911722(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071752(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20-34/37
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによって操作されるように構成された手持ち部分と、
前記手持ち部分に動作可能に連結された旋回部分であって、前記手持ち部分に対して第1及び第2の自由度にて旋回するように構成された旋回部分と、
を備える手術器具であって、
前記旋回部分は、
アクセサリ駆動モータと、
前記アクセサリ駆動モータによって駆動されるように構成されたアクセサリ駆動部材と、
複数の送りネジであって、該複数の送りネジの各々が、第1の端部、及び、該第1の端部に固定された被駆動ギア、を含む複数の送りネジと、
キャリッジであって、該キャリッジを軸方向に貫通する中心開口を有し、前記複数の送りネジの各々に沿って直線状に平行移動するように構成されたキャリッジと、
駆動ギアを回転させるように構成された直線駆動モータであって、前記被駆動ギアの各々と協働して、前記複数の送りネジの各々の回転により前記キャリッジが前記手持ち部分に対して第3の自由度で直線状に平行移動することを可能にするように構成された直線駆動モータと、
を有し、
前記アクセサリ駆動部材は、前記キャリッジの前記中心開口を貫通して、前記キャリッジの前記中心開口内で運動するように構成されている、手術器具。
【請求項2】
前記キャリッジは、前記送りネジのネジ山と連動するネジ山を有する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記キャリッジは、前記送りネジを受け入れて前記送りネジと協働する複数の二次開口であって、前記キャリッジの前記中心開口から半径方向に離間している複数の二次開口を有する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記二次開口は、前記送りネジのネジ山と協働するネジ山を有する、請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記旋回部分は、アクセサリを動作可能に支持するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記直線駆動モータは、前記アクセサリを前記手持ち部分に対して前記第3の自由度にて直線状に平行移動させるように構成されている、請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記アクセサリ駆動部材は相互接続部と接続され、前記相互接続部は、前記アクセサリを前記アクセサリ駆動部材に取り付けるように構成されている、請求項6に記載の手術器具。
【請求項8】
前記直線駆動モータは、前記旋回部分に対して軸方向に固定されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記直線駆動モータは、電磁コイルと、該電磁コイルによって回転可能なロータと、を有し、
前記ロータは、前記アクセサリ駆動部材が前記ロータを貫通することを可能にするように、前記ロータを貫通する開口を有する、請求項8に記載の手術器具。
【請求項10】
前記相互接続部は、前記アクセサリ駆動部材に連結された第1の端部と、前記アクセサリに連結されて前記アクセサリの駆動を可能にするように構成された第2の端部と、を有する、請求項7に記載の手術器具。
【請求項11】
前記送りネジの各々は、該送りネジの各々が前記旋回部分に対して直線状に固定されるように、前記駆動ギアとエンドホルダーとの間に直線状に固定されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項12】
前記エンドホルダーは、該エンドホルダーを軸方向に貫通して前記アクセサリ駆動部材が貫通することを可能にする中心開口を有する、請求項11に記載の手術器具。
【請求項13】
前記エンドホルダーは、該エンドホルダーの前記中心開口から半径方向かつ周囲へ離間している複数の二次開口を有し、前記エンドホルダーの前記二次開口の各々は、前記複数の送りネジの一端部を回転可能に支持する、請求項12に記載の手術器具。
【請求項14】
前記駆動ギアは、前記直線駆動モータの前記駆動ギアを軸方向に貫通する開口を有し、前記アクセサリ駆動部材は、前記駆動ギアの前記開口を貫通するとともに、前記駆動ギアの前記開口内で運動するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項15】
前記旋回部分は、さらにキャリッジエンコーダを有する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項16】
前記キャリッジエンコーダは、前記キャリッジの移動方向に沿って配置されて、前記キャリッジの直線位置を検知するように構成されている、請求項15に記載の手術器具。
【請求項17】
前記旋回部分は、アクセサリを動作可能に支持するように構成され、
前記キャリッジエンコーダは、前記キャリッジの前記直線位置に基づいて前記アクセサリの直線位置を決定する、請求項16に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2015年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/260,851
号の利得を主張し、その開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれる
ものとする。
【0002】
[発明の分野]
本開示は、概略的には、手術器具に関し、さらに詳細には、伸縮ノーズ機構を有する手
術器具を追跡し、かつ制御するためのシステムにて用いられる手術器具に関する。
【背景技術】
【0003】
(ナビゲーションとしても知られる)追跡システムは、手術器具のような器具の正確な
位置を必要とする手術中に外科医を支援する。このような手術の例として、神経外科、脊
椎外科、及び整形外科が挙げられる。一具体例では、追跡システムは、外科手術中に手術
器具の位置及び方位を追跡し、多くの場合、患者の術前画像又は術中画像と共に器具の位
置及び/又は方位をモニターに表示する(術前画像は、典型的には、MRI又はCTスキ
ャンによって準備され、術中画像は、X線透視装置、低レベルX線装置、又は任意の同様
の装置によって準備される)。
【0004】
手術器具の端の切断具が作用する位置を確定するために、切断ジグ、ガイドアーム、又
は他の拘束機構の助けなしに、手術器具を手動で用いることも提案されている。例えば、
Brissonらに付与された特許文献1を参照されたい。一具体例では、追跡システムは、典
型的には、手術器具に配置された追跡装置を検出するカメラを用いる。追跡装置は、手術
器具の位置及び方位を決定するために、発光ダイオード(LED)のような複数の光学マ
ーカーを有している。手術器具の位置は、通常、三次元空間、すなわち、x,y,z座標
系又はデカルト座標系において、カメラに対する器具の作業端の座標と相関関係を有して
いる。手術器具の方位は、この器具のピッチ、ロール、及びヨー(ヨーイング)を意味す
る。手術器具の位置及び方位の両方が画定されたときに、この器具の相対位置は、追跡シ
ステムに掌握されたことになる。
【0005】
手術器具の一形式として、「ペンシル型」の手持ち式手術器具が知られている。ペンシ
ル型手持ち式手術器具は、ユーザーの手によって保持され、患者の組織への医学的/外科
的作業、例えば、大腿骨に対する骨組織のような組織の成形又は除去を行うようになって
いる。ペンシル型手持ち式手術器具は、深さ自由度の運動のために伸縮ノーズを利用する
。また、ペンシル型手持ち式手術器具は、旋回ジンバル機構を介してもたらされる2つの
追加的な自由度の運動を利用する。一具体例では、器具は、直線状に平行移動するネジ山
付きノーズチューブを有する部分を備えている。モータは、ノーズチューブと直接係合す
る長い雌ネジ山を有する細長のロータを用いて、ノーズチューブを伸縮させる。ノーズチ
ューブは、近位端にモータのロータに直接嵌合する雄ネジ山を有している。ロータが一方
向に回転すると、ノーズチューブは、(ノーズチューブが連動していることによって)引
き込まれ、反対方向に回転し、その結果、ノーズチューブが押し出される。このようなペ
ンシル型手持ち式手術器具の例は、2012年8月31日に出願された係属中の特許文献
2に開示されている。この文献の開示内容は、参照することによって、ここに明示的に含
まれるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,757,582号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0060278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の手持ち式手術器具は、十分に機能しているが、このような手持ち式手術器具の改
良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
手術器具の一実施形態が提供される。手術器具は、ユーザーによって操作されるように
構成された手持ち部分と、この手持ち部分に動作可能に連結された旋回部分とを備えてい
る。旋回部分は、手持ち部分に対して第1及び第2の自由度にて旋回するように構成され
ている。旋回部分は伸縮ノーズ機構を備えている。伸縮ノース機構は、ノーズチューブと
、このノーズチューブの直線状平行移動を可能にするようにノーズチューブから延びるキ
ャリッジを有する中間ユニットと、キャリッジと協働し、ノーズチューブを手持ち部分に
対して第3の自由度にて直線状に平行移動させる駆動モータとを備えている。
【0009】
手術器具の他の実施形態が提供される。手術器具は、ノーズチューブと、駆動ギアを備
える駆動モータと、ノーズチューブ及び駆動モータ間に連結された中間ユニットとを備え
ている。中間ユニットは、各々がネジ山を有すると共に一端部に被駆動ギアを備える複数
の送りネジを備えている。中間ユニットは、送りネジと連動するためのネジ山を有するキ
ャリッジを備えている。駆動ギアは、被駆動ギアの各々と連動して送りネジの各々の回転
を可能にするように構成され、これによって、キャリッジを送りネジに沿って直線状に平
行移動させ、ノーズチューブの伸縮を可能にするようになっている。
【0010】
手術器具のさらなる他の実施形態が提供される。手術器具は、旋回部分と、この旋回部
分内に配置されたシャフトとを備えている。第1の駆動モータが、旋回部分内に配置され
、シャフトを回転させるように構成されている。第2の駆動モータが、旋回部分内に配置
され、シャフトを直線状に平行移動させるように構成されている。第2の駆動モータは、
ロータ及び駆動ギアを備え、ロータ及び駆動ギアの各々は、シャフトを受け入れるために
、及びシャフトがロータ及び駆動ギアの各々を通して自在に回転し、かつ直線状に平行移
動することを可能にするために、ロータ及び駆動ギアの各々を貫通する開口を画定してい
る。
【0011】
本開示の他の利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって良
好に理解されたなら、容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】手術器具のための追跡及び制御システムにおける一実施形態の概略図である。
【
図1B】手術器具のための追跡及び制御システムにおける他の実施形態の概略図である。
【
図2】
図1A及び
図1Bにおける追跡及び制御システムに用いられる手術器具のドリル部分の断面図である。
【
図3】
図2における手術器具の一部の拡大断面図である。
【
図4】
図2における手術器具の他の部分の拡大断面図である。
【
図5】
図2における手術器具のさらに他の部分の拡大断面図である。
【
図6】
図2における手術器具のさらなる部分の拡大断面図である。
【
図7】
図2における線7-7に沿った断面図である。
【
図8】
図2における線8-8に沿った断面図である。
【
図9】外側ハウジング及びアクセサリが省略された、
図2の手術器具のドリル部分の直線駆動区域の斜視図である。
【
図10】一部が省略された、
図9と同様の図である。
【
図11A】
図3におけるドリル部分のバー駆動ロータの斜視図である。
【
図12】
図4及び
図9におけるドリル部分の直線駆動モータのロータの斜視図である。
【
図13】
図4における直線駆動モータのコイルの斜視図である。
【
図14A】
図6におけるドリル部分のバーシャフトの端面図である。
【
図16A】
図2におけるドリル部分のノーズチューブの斜視図である。
【
図16B】ネジ付きインサートが組み込まれた
図16Aにおけるノーズチューブの他の斜視図である。
【
図17】
図6における線17-17に沿った断面図である。
【
図18A】
図2におけるドリル部分のアクセサリの斜視図である。
【
図20】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にあるドリル部分の断面図の1つである。
【
図21】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にあるドリル部分の断面図の1つである。
【
図22】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にあるドリル部分の断面図の1つである。
【
図23】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にあるドリル部分の断面図の1つである。
【
図24】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にあるドリル部分の断面図の1つである。
【
図25】手術器具のアクセサリが深さ軸に沿って種々の位置にある
図20~
図24におけるドリル部分の断面図をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1A及び
図1Bを参照すると、一実施形態に係る手術器具1200と共に用いられる
追跡及び制御システム100が示されている。手術器具1200は、アクセサリ202と
共に用いられる。一実施形態では、アクセサリ202は、回転可能なシャフト203と、
このシャフト203の一端部の遠位端チップ204とを有している。アクセサリ202は
、患者の組織への医学的/外科的作業、すなわち、処置を行う構成要素である。手術器具
1200によって駆動可能なアクセサリ202の種類として、シェーバー、ドリルビット
、バー、超音波工具、材料送達アクセサリ、測定装置、撮像アクセサリ等が挙げられる。
図1A及び
図1Bでは、図示されるアクセサリ202はバー(切断アクセサリ)となって
いる。このバーは、
図18A及び
図18Bに示されるように、骨を除去するための球状バ
ーヘッドを有する遠位端部204と、キー付き二重D字形状を有する近位端部205とを
有している。
【0014】
手術器具1200は、アクセサリ202のシャフト203及び遠位端チップ204を回
転させ、手術器具1200に取り付けられたアクセサリ202の遠位端チップ204を所
定の境界に対して所望の関係に保つために、追跡及び制御システム100が手術器具12
00を追跡する。(ここで、「遠位側」は、手術器具1200を保持するユーザーから器
具が作用する組織の方を向く側を意味し、「近位側」は、手術器具1200が作用する組
織から器具を保持するユーザーの方を向く側を意味する)。追跡及び制御システム100
は、手術器具1200の原位置に対するアクセサリ202の遠位端チップ204の位置を
制御する。この制御によって、アクセサリ202の遠位端チップ204は、このアクセサ
リが作用する外科部位における境界に衝突しないように又はこの境界を破らないように阻
止されることを理解されたい。
【0015】
一実施形態では、手術器具1200は手持ち構造を有している。図示される手持ち構造
は、ペンシルグリップ構造である。しかしながら、他の形式の手持ち構造であっても、こ
こに述べる概念を用いることができる。手術器具1200は、(旋回部分とも呼ばれる)
総称的に1202で示されるドリル部分と、ユーザーの手によって保持される手持ち部分
1204とを備えている。ドリル部分1202は、例えば、
図2~
図6に示されるように
、アクセサリ202に連結されている。手持ち部分1204は、ドリル部分1202に2
つの旋回自由度をもたらすようになっている。アクセサリ202、例えば、バー、ドリル
ビット等が回転するいくつかの実施形態では、ドリル部分1202は、アクセサリ202
を回転軸Rを中心として回転させる(
図2)。
【0016】
前述したように、手術器具1200に関して、回転軸Rは、手持ち部分1202に対し
てピッチ方向及びヨー(ヨーイング)方向に移動する。ドリル部分1202は、アクセサ
リ202を原位置に対して直線軸、すなわち、深さ軸Zに沿って伸縮させる。ドリル部分
1202に関して、図示される実施形態では、深さ軸Z及び回転軸Rは同一軸であること
を理解されたい。
【0017】
図1A及び
図1Bに示されているように、手術器具1200及びアクセサリ202は、
大腿骨102の一部を成形するために用いられる。手術器具1200は、他の種類の組織
、例えば、人体の軟組織又は他の骨の除去又はそれ以外の処理を行うために用いられても
よいことを理解されたい。
【0018】
図1A及び
図1Bをさらに参照すると、図示される実施形態では、大腿骨102は、遠
位端チップ204によって除去されるべき目標体積104の材料を有している。目標体積
104は、作業境界106と呼ばれる境界によって画定されている。この作業境界106
は、処置の後に残留するべき骨の表面を画定している。追跡及び制御システム100は、
遠位端チップ204が目標体積104の材料のみを除去し、作業境界106を超えないこ
とを確実にするために、手術器具1200を追跡し、かつ制御する。他の実施形態におい
て、作業境界106は、どのような形状又は大きさによって画定されてもよく、二次元形
状又は三次元形状、線、軌道、表面、直線経路、非直線経路、体積、面、孔、輪郭等を含
んでもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、作業境界106は、手術器具
1200が横断するべきではない二次元又は三次元境界を画定することができる。他の実
施形態では、作業境界106は、手術器具1200のアクセサリ202が移動するときに
沿うべき線、経路、軌道又は進路を画定してもよい。これらの場合、作業境界106は、
作業経路、作業軌道、又は作業進路とも呼ばれることを理解されたい。
【0019】
図1A及び
図1Bを参照すると、追跡及び制御システム100は、ナビゲーションユニ
ット108を備えている。ナビゲーションユニット108は、大腿骨102及び手術器具
1200の位置及び方位を追跡する。ナビゲーションユニット108は、カメラ110と
、このカメラ110からの信号を受信し、この信号を処理するナビゲーションコンピュー
タ112とを備えている。カメラ110は、データ結線107によってナビゲーションコ
ンピュータ112に接続されている。一具体例では、データ結線107は、高速通信及び
アイソクロナス実時間データ転送のシリアルバスインターフェイス規格であるIEEE1
394インターフェイスであるとよい。データ結線107は、企業特化プロトコルを用い
てもよいことを理解されたい。
【0020】
追跡及び制御システム100内に組み込み可能な1つのカメラ110は、ミシガン州カ
ラマズーのStryker Corporationから市販されているFlashPoint(登録商標)6000Cam
eraである。このカメラ110は、互いに離間した3つの高解像度CCDカメラ(図示せ
ず)を備えている。CCDカメラは、赤外線(IR)信号を検出する。カメラ110は、
スタンド(図示せず)に取り付けられ、カメラ110が(理想的には障害物によって遮蔽
されることなく)手持ち部分1204及び大腿骨102に取り付けられたトラッカー11
4,116の視野内に入るように、処置が行われる区域の上方に位置決めされる。各トラ
ッカー114,116は、赤外光をカメラ110に伝達する発光ダイオード、例えば、(
図示されない)3つのLEDの形態にある複数の光学マーカーを有している。場合によっ
ては、光学マーカーは、カメラユニット(図示せず)と共に用いられる3つ以上の光反射
鏡(図示せず)であってもよく、この場合、光反射鏡から反射した光を伝達することにな
る。他の処置では、追加的なトラッカーが人体の他の骨、組織又は他の部分、工具、又は
器具に取付けられてもよいことを理解されたい。トラッカー114,116は、それぞれ
、追跡装置114,116と呼ばれることもあることを理解されたい。
【0021】
ナビゲーションコンピュータ112は、ラップトップコンピュータのようなパーソナル
コンピュータであってもよい。ナビゲーションコンピュータ112は、ディスプレイ11
3、中心処理ユニット(図示せず)、メモリ(図示せず)、及び記憶装置(図示せず)を
有している。ナビゲーションコンピュータ112にソフトウエアが実装されている。ソフ
トウエアは、カメラ110から受信した信号をトラッカー114,116が取り付けられ
た対象物の位置及び方位を表すデータに変換する。また、ナビゲーションコンピュータ1
12に付随的に設けられているのは、入力装置、例えば、マウス又は他の適切なポインタ
ー入力装置及びキーボードである。
【0022】
カメラ110から転送された光捕獲信号に基づいて、ナビゲーションコンピュータ11
2は、カメラ110に対する各光学マーカの位置、従って、この光学マーカが取り付けら
れた対象物の位置及び方位を決定する。カメラ、ナビゲーションコンピュータ112、及
びトラッカー114,116の例は、Malackowskiらに付与された米国特許第7,725
.162号に示されている。この文献の開示内容、例えば、カメラ、ナビゲーションコン
ピュータ、及びトラッカー並びに関連する操作方法及び使用は、参照することによって、
ここに含まれるものとする。
【0023】
追跡及び制御システム100は、データ結線121を介してナビゲーションコンピュー
タ112と通信する器具制御装置120を備えている。
図1A及び
図1Bにおいて、器具
制御装置120は、コンピュータを備えていてもよいし、又はコンピュータを備えていな
くてもよい。データ結線121は、高速通信及びアイソクロナス実時間データ転送のシリ
アルバスインターフェイス規格であるIEEE1394インターフェイスであるとよい。
他の具体例では、データ結線121は、企業特化プロトコルを用いてもよい。器具制御装
置120は、データ結線123によって手術器具1200と通信する。いくつかの具体例
では、ナビゲーションコンピュータ112及び器具制御装置120は、単一ユニットであ
ってもよいことを理解されたい。
【0024】
図1Aにおいて、追跡及び制御システム100は、モータ動力結線125を介して手術
器具1200における複数のモータの各々と通信する複数のモータ制御装置124を備え
ている。加えて、器具制御装置120は、データ結線126を介してモータ制御装置12
4と通信する。データ結線126は、EtherCatのような高速データ通信プロトコルである
とよい。他の具体例では、データ結線126は、企業特化プロトコルを用いてもよい。モ
ータ制御装置124は、モータ動力結線125を介して手術器具1200のアクチュエー
タを作動し、かつ位置決めする。いくつかの具体例では、モータ制御装置124は、単一
ユニットであってもよいことを理解されたい。
【0025】
図1Aに示される実施形態では、追跡及び制御システム100は、器具ドライバ130
をさらに備えているとよい。器具ドライバ130は、アクセサリ202の動力及び/又は
速度を制御するために、ドリル部分1202の後述のアクセサリ駆動モータに動力を供給
する。器具ドライバ130内の動力供給及び制御構成部品は、「モータ駆動外科用ハンド
ピースが接続された制御コンソールであって、このハンドピースの2つ以上で全て未満に
同時に動力供給するように構成された制御コンソール」と題する米国特許第7,422,
582号に記載される手術器具制御コンソールにおけるものと同様であってもよい。この
開示内容、例えば、制御コンソールの動力供給及び制御構成部品並びに関連する操作方法
及び使用は、参照することによって、ここに含まれるものとする。器具ドライバ130は
、データ結線131を介して器具制御装置120と通信する。データ結線131は、高速
通信及びアイソクロナス実時間データ転送のシリアルバスインターフェイス規格であるI
EEE1394インターフェイスであるとよい。データ結線131は、企業特化プロトコ
ルを用いてもよい。他の具体例では、器具ドライバ130は、器具制御装置120内に一
体化されていてもよいし、又はその一部であってもよいことを理解されたい。
【0026】
図1Bにおいて、追跡及び制御システム100は、データ結線121を介してナビゲー
ションコンピュータ112と通信する器具制御装置120を備えている。この実施形態で
は、器具制御装置120は、手術器具1200のモータの各々のために、モータ制御装置
124及び電源132を備えているか又は含んでいる。この実施形態では、前述の実施形
態の器具ドライバ130は、追加的なモータ制御装置124に取替えられていることを理
解されたい。器具制御装置120は、データ結線123Aによって手術器具1200と通
信する。
図1Bに示される実施形態では、結線123Aの配線は、
図1Aのものと異なっ
ており、手術器具1200の複数のモータに給電するために共通の動力結線131が必要
である。この種の実施形態は、手術器具1200内に実装される電子機器の種類及び数量
にも影響を与える。加えて、この実施形態は、手術器具1200と器具制御装置120と
の間の結線の大きさ及び数を著しく低減させる。器具制御装置120は、パーソナルコン
ピュータ等を備えていてもよいことを理解されたい。
【0027】
図1Cを参照すると、器具制御装置120は拘束境界111を画定している。拘束境界
111は、緩衝部105を画定するように作業境界106から所定の距離を隔てて位置し
ている。追跡及び制御システム100の一具体例では、器具制御装置120は、手術器具
1200を制御するように、拘束境界111に対する遠位端チップ204の中心の位置を
決定する。作業境界106と拘束境界111との間の相対距離は、ある程度、アクセサリ
202の幾何学的形状の関数である。例えば、もしもアクセサリ202が球状バーヘッド
として遠位端チップ204を備えていたならば、拘束境界111は、バーヘッドの直径の
半分である。バーヘッドの中心軌跡が拘束境界111上にあるとき、バーの外側切断面が
作業境界106にあることを理解されたい。
【0028】
図1A及び
図1Bを参照すると、手術器具1200は、データ結線123を介して器具
制御装置120と通信する。データ結線123は、ナビゲーションコンピュータ112に
よって生じ、器具制御装置120に伝達される位置及び方位に基づき、手術器具1200
を制御するために必要な入力及び出力のための経路をもたらす。手術器具1200は、前
述したように、
図1A及び
図1Bに示される追跡及び制御システム100に用いられると
よい。前述したように、追跡及び制御システム100は、アクセサリ202の遠位端チッ
プ204を目標体積104に保つために、目標体積104及び手術器具1200の位置及
び方位を追跡する。手術器具1200は、典型的には、追跡及び制御システム100、特
に器具制御装置120に接続するためのデータ結線123を備えていることを理解された
い。
【0029】
図2を参照すると、手術器具1200は、ドリル部分1202とも呼ばれる遠位側アセ
ンブリと、手持ち部分1204とも呼ばれる近位側アセンブリとを備えている。手持ち部
分1204は、ユーザーによって操作され、いくつかの実施形態では、ユーザーの手によ
って支持され、かつ移動される。いくつかの実施形態では、ユーザーは、手持ち部分12
04を把持し、かつ支持することによって手術器具1200を操作し、手術器具1200
は、他の機械的アーム、フレーム等によって支持されない。他の実施形態では、手術器具
1200は、ロボットアーム又はマニピュレータに取り付けられてもよく、いくつかのモ
ードでは、ロボットアーム又はマニピュレータの運動を制御するために、ユーザーが手動
によって手持ち部分1204と協働することが可能になっている。このような器具の一例
は、2014年3月3日に「仮想拘束境界を確立するためのシステム及び方法」の表題で
出願された米国特許出願公開第2014/0276943号に記載されている。この文献
は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。手術器具1200を
追跡するために、追跡装置114が手持ち部分1204に取り付けられるとよいことを理
解されたい。
【0030】
アクセサリ202は、ドリル部分1202によって手持ち部分1204に移動可能に連
結されている。ドリル部分1202は、アクセサリ202を離脱可能に保持し、アクセサ
リ202を患者の組織に医学的/外科的作業を行うように駆動し、アクセサリ202の遠
位端チップ204がアクセサリ202が作用する目標体積104の作業境界106に衝突
しないように又はこの作業境界106を破らないように阻止するために、アクセサリ20
2を直線軸又は深さ軸Zにおいて深さ自由度で移動させる。手持ち部分1204内に含ま
れる2つの旋回自由度は、前述の直線又は深さ自由度と連係することを理解されたい。
【0031】
手持ち部分1204は、ドリル部分1202と係合し、アクセサリ202の遠位端チッ
プ204が目標体積104の作業境界106に衝突しないように又はこの作業境界106
を破らないように阻止するために、ドリル部分1202をアクセサリ202のピッチ運動
及びヨー運動を調整するように移動させる。前述のように、「ピッチ」は、後述のジンバ
ル1312の中心を通る水平面に対するドリル部分1202及びアクセサリ202の上下
方向(すなわち、図示されるX軸)の角方位であり、「ヨー」は、ジンバル1312の中
心を通る垂直面に対するドリル部分1202及びアクセサリ202の左右方向(すなわち
、図示されるY軸)の角方位である。ドリル部分1202に対するアクセサリ202の遠
位端チップ204の移動の範囲は、追跡及び制御システム100によって画定されること
を理解されたい。
【0032】
手持ち部分1204は、外側ケーシング1206を備え、ドリル部分1202は、外側
ケーシング1208を備えている。外側ケーシング1208は、手持ち部分1204の外
側ケーシング1206に対してZ軸を中心として回転可能に固定されている。ドリル部分
1202は、外側ケーシング1208に固定されたブッシュケーシング1210と、ブッ
シュケーシング1210から延び、アクセサリ202を支持する可動ノーズチューブ12
12とを備えている。手持ち部分1204は、ドリル部分1202に係合し、2012年
8月31日に「ハウジング、ハウジングから延びる切断アクセサリ、及びハウジングに対
する切断アクセサリの位置を確立するアクチュエータを備える手術器具」の表題で出願さ
れた米国特許出願公開第2013/0060278号に開示されている方法と同じように
、手持ち部分1204に対するドリル部分のピッチ運動及びヨー運動を調整することを理
解されたい。この文献は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする
。
【0033】
図2、
図3、
図5、
図6、
図11A及び
図11Bを参照すると、ドリル部分1202は
、総称的に1214で示されるアクセサリ駆動機構を備えている。アクセサリ駆動機構1
214は、アクセサリ202を回転軸Rを中心として回転させ、このアクセサリにトルク
を与えるために、アクセサリ202に連結されている。駆動機構1214は、アクセサリ
駆動モータとも呼ばれる駆動モータ1216を備えている。駆動モータ1216は、中間
シャフト1224を駆動するために外側ケーシング1208内に配置されている。中間シ
ャフト1224は、(「バーシャフト」とも呼ばれる)相互接続シャフト1270を駆動
し、この相互接続シャフト1270が、最終的にアクセサリ202のシャフト203を駆
動する。
【0034】
ドリル部分1202及びアクセサリ202は、手持ち部分1204に対して複数の自由
度で移動する。手術器具1200は、複数のアクチェータ、例えば、後述の直線駆動モー
タ1226、ヨーモータ(ヨーイングモータ)1223、及びピッチモータ1227を備
えている。これらのモータは、アクセサリ202を手持ち部分1204に対して複数の自
由度で移動させるために、アクセサリ202に動作可能に連結されている。アクチュエー
タの少なくとも1つ、さらに具体的には、ヨーモータ1223及びピッチモータ1227
は、駆動機構1214及びアクセサリ駆動モータ1216を手持ち部分1204に対して
ピッチ自由度及びヨー自由度で移動させることを理解されたい。また、外側ケーシング1
208は、アクチュエータの少なくとも1つ、例えば、ヨーモータ1223によって、手
持ち部分1204に対してヨー自由度で移動可能であると共に、ピッチモータ1227に
よって、手持ち部分1204に対してピッチ自由度で移動可能であることを理解されたい
。これらのモータはモータ制御装置124に接続されている。直線駆動モータ1226は
、直線運動又は回転運動をもたらすように作動される。ヨーモータ1223及びピッチモ
ータ1227は、米国特許出願公開第2013/0060278号に開示されるものと同
様であってもよく、この文献に記載される方法と同じように、ドリル部分1220をヨー
自由度及びピッチ自由度で移動させるようになっていてもよい。なお、この文献は、参照
することによって、ここに含まれるものとする。
【0035】
複数のアクチュエータ、例えば、直線駆動モータ1226、ヨーモータ1223、及び
ピッチモータ1227は、アクセサリ202を手持ち部分1204に対してピッチ自由度
、ヨー自由度、及び深さ自由度を含む少なくとも3つの自由度で移動させることができる
。アクセサリ202がバーである一実施形態では、アクセサリ駆動モータ1216は、ア
クセサリ202の回転速度を少なくとも選択的に制御することによって、第4の自由度を
もたらすモータとして機能する。
【0036】
ドリル部分1202は、アクセサリ202及びアクチュエータの1つを支持し、アクチ
ュエータの少なくとも他の1つによって移動可能になっている。具体的には、ドリル部分
1202、さらに具体的には、外側ケーシング1208は、直線駆動モータ1226及び
アクセサリ駆動モータ1216を支持している。直線駆動モータ1226は、アクセサリ
202をドリルの深さ軸Zに沿って平行移動させる。ドリル部分1202がヨーモータ1
223及びピッチモータ1227によって移動可能であることを理解されたい。また、ヨ
ーモータ1223及びピッチモータ1227は、アクセサリ駆動モータ1216及び直線
駆動モータ1226を手持ち部分1204に対してピッチ自由度及びヨー自由度で移動さ
せることを理解されたい。また、アクセサリ駆動モータ1216は、器具ドライバ130
(
図1A)又はモータ制御装置(
図1B)によって制御可能であることを理解されたい。
【0037】
一実施形態では、アクセサリ駆動モータ1216は、電磁コイル1217と、アクセサ
リ202を駆動させるために外側ケーシング1208に回転可能に連結されたロータ12
18とを備えている。ロータ1218は、各端部に少なくとも1つの軸受1220を備え
ることができる。これらの軸受1220は、電磁コイル1217を介して外側ケーシング
1208に動作可能に係合し、これによって、ロータ1218を外側ケーシング1208
に連結し、外側ケーシング1208に対するロータ1218の回転を可能にする。電磁コ
イル1217がロータ1218を回転させることを理解されたい。ロータ1218は、図
11Bに示されるように、二重「D」字状接続部を介して中間シャフト1224を駆動す
ることを理解されたい。
【0038】
ドリル部分1202は、アクセサリ202の位置を決定かつ制御するために、アクセサ
リ駆動モータ1216及び/又は直線駆動モータ1226内にどのような適切な手段を備
えていてもよい。例えば、モータ1216,1226の1つ又は複数は、ホール効果セン
サを備えていてもよい。ホール効果センサは、ロータからの検知された磁場に基づく信号
を測定する。この磁場に基づく信号は、関連するモータロータの回転位置の関数として変
化する。付加的に又は代替的に、回転位置エンコーダ又は絶対角位置エンコーダが用いら
れてもよい
【0039】
図2及び
図5を参照すると、ドリル部分1202は、総称的に1222で示される伸縮
ノーズ機構も備えている。伸縮ノーズ機構1222は、外側ケーシング1208内に配置
された中間シャフト1224を備えている。中間シャフト1224は、アクセサリ駆動モ
ータ1216の回転をアクセサリ202に伝達させ、これによって、アクセサリ202を
駆動させるために、ロータ1218から延びている。また、伸縮ノーズ機構1222は、
総称的に1226で示される直線駆動モータと、総称的に1228で示される(中間ユニ
ットとも呼ばれる)直線ブロック要素とを備えている。直線ブロック要素1228は、直
線駆動モータ1226と協働し、ノーズチューブ1212を直線軸又は深さ軸Zに沿って
伸縮、すなわち、平行移動させるものである。
【0040】
図2、
図4、
図12及び
図13を参照すると、直線駆動モータ1226は、電磁コイル
1229と、ロータ1230とを備えている。ロータ1230は、このロータを軸方向に
貫通する開口1232を有し、これによって、中間シャフト1224が直線駆動モータ1
226を貫通し、アクセサリ駆動モータ1216に回転可能に接続される。ロータ123
0は、少なくとも1つ又は複数の軸受1234を備えている。これらの軸受1234の1
つは、ロータ1230の一端部において電磁コイル1229を介して外側ケーシング12
08に係合し、これらの軸受1234の他の1つは、ロータ1230の他の軸端部におい
て直線ブロック要素1228に係合している。直線駆動モータ1226は、ロータ123
0の一端部に直線ブロック要素1228と係合する駆動ギア1236も備えている。電磁
コイル1229がロータ1230を回転させることを理解されたい。中間シャフト122
4は、各軸端部に二重「D」字状接続部を形成する平坦部1225を有することを理解さ
れたい。
【0041】
図2、
図5及び
図7~
図10を参照すると、直線ブロック要素1228は、軸方向に延
びる複数の送りネジ1238を備えている。これらの送りネジ1238は、周方向におい
て互いに離間している。図示される実施形態では、3つの送りネジ1238が設けられて
いる。送りネジ1238の各々は、このネジに沿って複数のネジ山1239を有している
。送りネジ1238の各々は、その一端部に被駆動ピニオンギア1240を備えている。
ピニオンギア1240は、ロータの駆動ギア1236の歯に係合する複数の歯を備えてい
る。
【0042】
直線ブロック要素1228はまた、送りネジ1238に沿って直線状に又は軸方向に移
動するキャリッジ1242を備えている。キャリッジ1242は、ノーズチューブ121
2から延び、送りネジ1238とノーズチューブ1212との間に機械的連動をもたらす
ものである。一実施形態では、キャリッジ1242は、ノーズチューブ1212の一部と
して一体に形成され、これによって、キャリッジ1242及びノースチューブ1212は
、共通の構成要素の一部を構成する。他の実施形態では、キャリッジ1242及びノーズ
チューブ1212は互いに別の構成要素となっている。キャリッジ1242は、送りネジ
1238のネジ山1239と連動するネジ山1247を備えている。キャリッジ1242
は、種々の実施形態によれば、送りネジ1237と協働するようになっている。
【0043】
一実施形態では、キャリッジ1242は、ノーズチューブ1212を受け入れるために
このキャリッジを軸方向に貫通する中心開口1244を備えている。キャリッジ1242
はまた、中心開口1244から半径方向に離間した複数の二次開口1246を備えている
。これらの二次開口1246は、周方向において互いに離間しており、キャリッジ124
2を軸方向に貫通している。二次開口1246は、送りネジ1238のネジ山1239に
係合するネジ山1247を備えている。ノーズチューブ1212は、キャリッジ1242
をノーズチューブ1212に対して配置するために、半径方向に延びるフランジ1248
と、ノーズチューブ1212内に配置されてキャリッジ1242に係合するフランジ付き
ブッシュ1249とを有している。3つのピニオンギア1240の全てが駆動ギア123
6に係合する結果として、直線駆動ロータ1230が回転するときに3つの送りネジ12
38が連動することを理解されたい。
【0044】
キャリッジ1242は、キャリッジ1242及びノーズチューブ1212が同一の構成
部品から形成されるかどうか等の因子によっては、中心開口1244を有していなくても
よい。同様に、二次開口1246は、送りネジ1238のネジ山1239と連動するため
の代替的構造、例えば、部分的な円形部分、回動機構(例えば、軸受)等に置き換えられ
てもよい。
【0045】
キャリッジ1242は、ノーズチューブ1212の近位端部において軸方向に捕捉又は
固定されている。キャリッジ1242及びノーズチューブ1212は、キャリッジ124
2が深さZ軸方向においてノーズチューブ1212に対して揺動しないように緊密な軸方
向柔軟性(axial compliance)を有するように構成されているとよい。この軸方向柔軟性
は、ゼロであってもよい。すなわち、軸方向の捕捉は、許容誤差が実際上存在しないほど
緊密になっていてもよい。
【0046】
一方、ノーズチューブ1212及びキャリッジ1242は、許容誤差を調整するために
比較的大きな半径方向柔軟性(radial compliance)をもたらすことを可能にするように
構成されるとよい。半径方向柔軟性は、キャリッジ1242とノーズチューブ1212と
の間の緊密な軸方向柔軟性よりも著しく大きくなっているとよい。このような半径方向柔
軟性は、種々の方法によってもたらすことができる。一実施形態では、キャリッジ124
2とノーズチューブ1212との間に間隙をもたらし、具体的には、キャリッジ1242
がノーズチューブ1212に対して半径方向に移動することを可能にするために、キャリ
ッジ1242の中心開口1244の内径は、ノーズチューブ1212の外径よりも意図的
に大きくなっている。付加的又は代替的に、二次開口1246は、もし設けられるなら、
送りネジ1238の外径よりも意図的に大きな内径を備えているとよい。さらに、付勢部
材、例えば、バネがキャリッジ1241内に組み込まれてもよく、及び/又はキャリッジ
1242とノーズチューブ1212との間に連結されてもよい。他の例では、キャリッジ
1242及び/又はノーズチューブ1212は、半径方向移動を吸収するために、変形可
能な材料から構成されもよいし、又はこの材料に連結されてもよい。
【0047】
直線ブロック要素1228は、送りネジ1238の一端部の周りに配置されたエンドホ
ルダー1250も備えている。エンドホルダー1250は、ノーズチューブ1212を受
け入れるようにエンドホルダー1250を軸方向に貫通する中心開口1252を備えてい
る。エンドホルダー1250は、中心開口1252から半径方向に離間した複数の二次開
口1254も備えている。これらの二次開口1254は、周方向において互いに離間し、
エンドホルダー1250を貫通している。各開口1254は、送りネジ1238の一端部
を回転可能に支持する軸受1256を備えている。エンドホルダー1250は、外側ケー
シング1208内に配置され、この外側ケーシングに固定されている。直線ブロック要素
1228は、ハウジング1258も備えている。ハウジング1258は、送りネジ123
8の他端部の周りに配置され、ロータ1230の周りに配置された軸受1234に接続さ
れている。ハウジング1258は、軸方向に延び、複数の固定具1260によってエンド
ホルダー1250に接続されている。ハウジング1258は、外側ケーシング1208内
に配置され、この外側ハウジングに固定されている。送りネジ1238の他端部は、軸受
1262によってハウジング1250内に回転可能に配置されていることを理解されたい
。また、中間シャフト1224は、軸受1264によってハウジング1258内に回転可
能に支持されていることを理解されたい。中間シャフト1224は、3つの位置で支持さ
れ、中央軸受1264は、二重Oリング1265によって支持されていることを理解され
たい。中間シャフト1224の遠位端部は、軸受1266によって回転可能に支持され、
かつノーズチューブ1212に対して軸方向に固定されている(
図5)。これによって、
中間シャフト1224は、ノーズチューブ1212が伸縮するときにノーズチューブ12
12の位置に追従することになる。
【0048】
直線ブロック要素1228は、キャリッジ1242の直線位置を検知するために、ハウ
ジング1258の周りに配置された平行移動エンコーダ1268をさらに備えている。平
行移動エンコーダ1268は、キャリッジ1242の位置を検知することを理解されたい
。これは、ノーズチューブ1212及びアクセサリ202の位置を決定する1つの方法を
もたらすことになる。このキャリッジの位置の検知は、磁石をキャリッジ1242上に配
置し、1つ又は複数のホール効果センサをハウジング1258に沿って配置することによ
って達成される。ノーズチューブ1212及びアクセサリ202の位置を測定又は決定す
る他の技術、例えば、電磁センサ等を用いる技術が利用されてもよい。
【0049】
図2、
図5、
図6、
図14A及び
図14Bを参照すると、駆動機構1214は、相互接
続シャフト1270を備えている。相互接続シャフト1270は、ノーズチューブ121
2内に配置され、中間シャフト1224の遠位端部とアクセサリ202のシャフト203
の近位端部205を相互接続する。相互接続シャフト1270は、
図14Aに示されるよ
うに、各端部に二重D字状開口1272を有しているが、本発明の範囲から逸脱すること
なく、どのような適切な形状を有していてもよい。相互接続シャフト1270の各端部は
、軸受1274によってノーズチューブ1212内に支持されている。二重D字状開口1
272は、中間シャフト1224の回転がアクセサリシャフト203に伝達されるように
、シャフト1224、203のキー付き端部に接続されることを理解されたい。相互接続
シャフト1270は、中間シャフト1224からアクセサリ202のアクセサリシャフト
203にトルクを伝達させることを理解されたい。
【0050】
図2、
図6、
図15及び
図17を参照すると、伸縮ノーズ機構1222は、ノーズチュ
ーブ1212内に配置された直線ブッシュ1276も備えている。ブッシュ1276は、
略円断面を備える略円筒形状を有している。ブッシュ1276は、ノーズチューブ122
12を受け入れるようにこのブッシュを貫通する中心開口1278を備えている。ブッシ
ュ1276は、中心開口から半径方向に延びる複数の内部通路又はキー溝1280も備え
ている。キー溝1280は、ノーズチューブ1212の突起又は外部タブ1282を受け
入れるようにこのブッシュを貫通している。各内部キー溝1280は、ノーズチューブ1
212の外部タブ1282の1つを受け入れるようになっている。キー溝1280は、深
さ軸Zと平行に延び、外部タブ1282を深さ軸Zに沿った移動に対して押さえるように
寸法決めされ、かつ形作られている。ブッシュ1276は、ケーシング1208の材料と
異なる種々の材料から形成することができる。ブッシュ1276は、ノーズチューブ12
12に対して低摩擦接触をもたらす材料から形成されてもよいし、又は位置検知を可能に
するために非磁気材料から形成されてもよい。ノーズチューブ1212の外部タブ128
2は、直線ブッシュに対してキーとして作用し、これによって、その軸を中心とする回動
を阻止することを理解されたい。ブッシュ1276は、外側ケーシング1210に対して
固定されていることも理解されたい。
【0051】
図2、
図6、
図16A及び
図16Bを参照すると、伸縮ノーズ機構1222は、軸方向
に延びるノーズチューブ1212を備えている。ノーズチューブ1212は、外側ケーシ
ング1210に対して伸縮するようになっている。ノーズチューブ1212は、直線ブロ
ック要素1228によって,外側ケーシング1210に対して深さ軸Zに沿って移動する
。ノーズチューブ1212が深さ軸Zに沿って移動するとき、外部タブ1282がキー溝
1280内において摺動することを理解されたい。
【0052】
図9、
図10、
図16A及び
図16Bを参照すると、伸縮ノーズ機構1222は、圧入
のような適切な機構によってノーズチューブ1212の遠位端部に接続又は挿入されたア
ダプタ又はインサート1283を備えている。インサート1283は、遠位端部に雄ネジ
山部分1285を有している。
【0053】
図6を参照すると、伸縮ノーズ機構1222は、ノーズチューブ1212内に配置され
た1つ又は複数の軸受1286を備えている、これらの軸受1286は、アクセサリ20
2のアクセサリシャウト203に係合し、このアクセサリシャフト203を回転可能に支
持するように構成されている。伸縮ノーズ機構1222は、ノーズチューブ1212内に
配置された複数のスペーサ1288,1294も備えている。スペーサ1288,129
4は、それらの間に位置するバネ1292によって軸方向に離間され、ノーズチューブ1
212内の多数の軸受を予圧するものである。
【0054】
図18A、
図18B及び
図19を参照すると、アクセサリ202は、アクセサリ202
のアクセサリシャフト203をインサート1283を介してノーズチューブ1212に回
転可能に連結させる連結(バー)アセンブリ1298を備えているとよく、これによって
、アクセサリ202は、ノーズチューブ1212に対する回転時に回転軸Rを中心として
回転する。連結アセンブリ1298は、孔1302を有するコネクタ1300を備えてい
る。孔1302は、コネクタ1300を軸方向に貫通しており、その一端部に雌ネジ山1
304を有している。雌ネジ山1304は、連結アセンブリ1298をインサート128
3のネジ山付き端部1285に保持するためのものである、連結アセンブリ1298は、
1つ又は複数の軸受1306も備えている。軸受1306は、孔1302内においてコネ
クタ1300とアクセサリ202のアクセサリシャフト203との間に配置され、これに
よって、これらの間の回転を可能にするものである。また、連結アセンブリ1298は、
軸受1306の内輪をアクセサリシャフト203に対して適所に捕捉又は拘束するフラン
ジ付き貝殻片1309A,1309Bも備えている。連結アセンブリ1298は、フラン
ジ付き貝殻片1309A,1309Bを中心としてアクセサリシャフト203上に配置さ
れたスリーブ1308、1310も備えている。連結アセンブリ1298の前述の実施形
態は、制限的なものとみなされるべきではないことを理解されたい。また、連結アセンブ
リ1298をノーズチューブ1212に固定するための代替的方法及び軸受1306の内
輪をアクセサリシャフト203に対して適所に固定するための代替的な製造方法も可能で
あることを理解されたい。ノーズチューブ1212は、アクセサリ202を支持し、ケー
シング1208,1210に対して深さ軸Zに沿って平行移動可能であること、すなわち
、典型的には円筒状のノーズチューブ1212は、深さ軸Zに沿ってアクセサリ202の
位置を調整することをさらに理解されたい。
【0055】
図20~
図25は、例えば、外側ケーシング1208,1210に対して深さ軸Zに沿
って異なる位置に移動したノーズチューブ1212を示している。具体的には、
図20に
おいて、ノーズチューブ1212は、ほぼ完全に後退しており、
図24では、ノーズチュ
ーブ1218は、ほぼ完全に伸長している。
図21~
図23は、
図20及び
図24に示さ
れる位置間の位置を示している。具体的には、
図22は、「原」位置にあるノーズチュー
ブ1212を示している。
図21は、完全後退位置と原位置との間の中間位置にあるノー
ズチューブ1212を示している。
図23は、原位置と完全伸長位置との間の中間位置に
あるノーズチューブ1212を示している。
図25は、
図20~
図25に示される位置の
全てを示している。ノーズチューブ1212がケーシング1208,1210に対して移
動すると、ノーズチューブ1212内に収容された連結アセンブリ1298、アクセサリ
202、及び全ての他の構成要素が、ノーズチューブ1212及び中間シャフト1224
と共に移動することを理解されたい。
【0056】
図2に示されるように、ドリル部分1202は、手持ち部分1204対するアクセサリ
202の少なくとも2つの旋回自由度の運動を支持するジンバル1312を備えている。
具体的には、アクセサリ202は、ジンバル1312を中心としてピッチ運動及びヨー運
動するように調整可能である。ジンバル1312は、手持ち部分1204に対して深さ軸
Zに沿って固定されている。ノーズチューブ1212は、ジンバル1312に対してドリ
ルの深さ軸Zに沿って直線状に平行移動することを理解されたい。
【0057】
ジンバル1312は、ドリル部分1202の外側ケーシング1208内に一体化されて
いるので、ドリル部分1202及びアクセサリ202は、手持ち部分1204に対して旋
回することができる。ジンバル1312は、ドリル部分1202が旋回されたときのドリ
ル部分1202の慣性質量モーメントを最小にし、所定の供給トルクに対する角加速度を
最大にするために、ドリル部分1202の略重力中心Gを中心として配置されるとよい。
【0058】
一実施形態では、アクセサリ駆動モータ1214に動力を供給するために、すなわち、
アクセサリ202に選択的に動力を供給するか又は動力供給を中断するために、トリガー
又は足ペダル、又は代替的にボタン(図示せず)が手持ち部分1204の外側ケーシング
1206によって支持されていてもよい。手術器具1200に関して前述したように、手
術器具1200は、手術器具1200内に配置されたセンサ(図示せず)を備えていても
よい。センサは、もしもトリガーが作動されたなら及び/又はもしトリガーの作動が停止
されたならば、信号を生成するようになっている。センサからの出力信号は、データ結線
13(
図1A)によって、器具駆動コンソール130に転送される。このセンサ信号の状
態に基づいて、器具ドライバ130は、アクセサリ202の遠位端チップ203が目標体
積104の境界106内にあるときに、通電信号をアクセサリ駆動モータ1214に印加
する。トリガー又はボタンの代替例又は付加例として、アクセサリ駆動モータ1214へ
のオン/オフ指令ををもたらすことによってアクセサリ駆動モータ1214を制御するた
めに、足ペダル(図示せず)が器具制御装置120と通信するようになっていてもよい。
【0059】
前述したように、いくつかの実施形態では、アクセサリ202の遠位端チップ204が
目標体積104の境界106の外にあるときに、器具ドライバ120は、仮にトリガーが
作動されても、通電信号をアクセサリ駆動モータ1214に印加しない。追跡及び制御シ
ステム100は、以下のように、すなわち、アクセサリ202の遠位端チップ204が目
標体積104の緩衝部105に入ったときに、すなわち、工具の運動範囲が失われたとき
に、器具ドライバコンソール130がアクセサリ202の速度を低減させる通電信号を印
加するように構成されていてもよい。
【0060】
アクセサリ202の運動/操作を制御するための他の制御システム/方法は、2012
年8月31日に「ハウジング、ハウジングから延びる切断アクセサリ、及びハウジングに
対して切断アクセサリの位置を確立するアクチュエータを備える手術器具」の表題で出願
された米国特許出願公開第2013/0060278号に記載されているものと同様であ
ってもよい。この文献は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0061】
以上、本発明の実施形態について、例示的に説明してきた。用いられた専門用語は、制限
するためではなくむしろ説明するためのものであることを理解されたい。
【0062】
前述の示唆に照らして、本発明の多くの修正及び変更が可能である。従って、添付の請
求項の範囲内において、本発明は、具体的に記載された方法以外の方法で実施されてもよ
い。