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特許7154392歯科インプラントシステムとナビゲーション方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】歯科インプラントシステムとナビゲーション方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20221007BHJP
   A61B 34/32 20160101ALI20221007BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61B34/32
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021512886
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019104979
(87)【国際公開番号】W WO2020048545
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】62/728,861
(32)【優先日】2018-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519452138
【氏名又は名称】ブレイン ナビ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】チェン シェシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン カンジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン チーユ
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェンリン
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-236749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0057675(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107595418(CN,A)
【文献】特開2013-236748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61B 34/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科インプラント装置に接続された作用端を有する多軸ロボットアームと、
歯科インプラントプロセス中にインプラント受容患者のインプラント受容領域に関するリアルタイム画像情報を取り込むために前記多軸ロボットアームに結合された少なくとも1つの光学装置と
を備え、
前記多軸ロボットアームは、インプラント前計画と前記リアルタイム画像情報との関連付け結果に従って前記インプラント受容領域内の所定の経路に沿って移動する前記歯科インプラント装置を駆動し、
前記インプラント前計画は、前記インプラント受容領域の3次元モデルに関連付けられ、前記所定の経路に関連する所定の入口点、該所定の経路に関連する少なくとも1つの所定の中継点、および該所定の経路に関連する所定の目標点を含み、前記3次元モデルは、前記インプラント受容領域に関するインプラント前画像情報から構築され、
前記歯科インプラント装置は、前記インプラント受容領域内の前記所定の経路に沿って移動し、前記少なくとも1つの所定の中継点に到着すると、該所定の経路から後退するように駆動される、
歯科インプラントシステム。
【請求項2】
前記インプラント前画像情報は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像情報、磁気共鳴画像(MRI)画像情報、およびX線イメージング画像情報のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学装置は、第1の光学装置と第2の光学装置とを含み、前記第1の光学装置は、前記リアルタイム画像情報を取り込むために前記多軸ロボットアームの前記作用端に結合され、前記第2の光学装置は、マーク位置情報を取り込むために前記多軸ロボットアームに結合されている、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項4】
前記多軸ロボットアームが、前記作用端とは異なる基端部を有し、前記第2の光学装置が前記基端部に結合されている、
請求項3に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項5】
前記インプラント受容患者にしっかりと接続されたマーキング装置をさらに備え、前記第2の光学装置は、前記マーキング装置に関連付けられた前記マーク位置情報を取り込む、
請求項3に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項6】
前記所定の経路は、前記インプラント前画像情報にマークされている歯槽神経位置および副鼻腔位置のうちの少なくとも1つに従って決定される、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの所定の中継点は、前記インプラント受容領域内の骨密度および前記所定の経路の長さのうちの少なくとも1つに従って決定される、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項8】
前記歯科インプラント装置上に配置された温度センサーをさらに含み、前記歯科インプラント装置は、前記温度センサーの感知結果に応答して、前記所定の経路から後退する、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項9】
前記歯科インプラント装置が前記所定の経路から後退すると、前記歯科インプラントシステムは、前記インプラント前計画における前記少なくとも1つの所定の中継点をさらに調整する、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項10】
前記所定の経路に従って前記インプラント受容領域にインプラントを固定するために前記多軸ロボットアームによって駆動されるインプラント固定装置をさらに含み、前記インプラント固定装置は、前記インプラントに関連するリアルタイムトルク値が所定のトルク閾値に達するとすぐに動作を停止する、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項11】
前記歯科インプラント装置に結合され、前記インプラントが前記所定の経路から逸脱するときはいつでも警告情報を送信するように適合された警告装置をさらに備える、
請求項9に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項12】
前記インプラント前計画と前記リアルタイム画像情報との関連付け結果に従って、前記インプラント受容領域内の前記所定の経路に沿って移動する前記歯科インプラント装置を駆動するように前記多軸ロボットアームに指示するために、前記多軸ロボットアームおよび前記少なくとも1つの光学装置と通信接続する処理装置をさらに備える、
請求項1に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項13】
前記リアルタイム画像情報、前記インプラント前画像情報、前記所定の経路、前記所定の入口点、前記少なくとも1つの所定の中継点、前記所定の目標点、前記インプラント受容領域の骨密度、前記歯科インプラント装置のリアルタイム温度、該歯科インプラント装置の移動速度、前記インプラントのリアルタイムトルク、および前記歯科インプラントプロセスに関連する仮想画像のうちの少なくとも1つを操作者に表示するために前記処理装置に通信接続されたウェアラブルディスプレイ装置をさらに備える、
請求項12に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項14】
前記歯科インプラント装置が動作している間に前記インプラント受容領域に関する前記リアルタイム画像情報を取り込むために前記多軸ロボットアームの作用端に結合された第1の光学装置と、
前記インプラント受容患者にしっかりと接続されたマーキング装置と、
前記マーキング装置のマーク位置情報を取り込むために前記多軸ロボットアームの基端部に結合された第2の光学装置と
をさらに含む、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項15】
前記インプラント前計画とリアルタイム画像情報との関連付け結果に従って、前記インプラント受容領域内の前記所定の経路に沿って往復運動する前記歯科インプラント装置を駆動するように前記多軸ロボットアームに指示するために、前記多軸ロボットアーム、前記第1の光学装置および前記第2の光学装置と通信接続する処理装置をさらに備える、
請求項14に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項16】
前記リアルタイム画像情報、前記インプラント前計画の関連付け情報、前記所定の経路、前記インプラント受容領域の骨密度、前記歯科インプラント装置のリアルタイム温度、該歯科インプラント装置の移動速度、および歯科インプラントドリルプロセスに関連する仮想画像のうちの少なくとも1つを操作者に表示するために前記歯科インプラントシステムに通信接続されたウェアラブルディスプレイ装置をさらに備える、
請求項15に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項17】
前記インプラント前計画は、前記インプラント受容領域の3次元モデルに関連付けられ、前記3次元モデルは、前記インプラント受容領域に関するインプラント前画像情報から構築される、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項18】
前記インプラント前画像情報は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像情報、磁気共鳴画像(MRI)画像情報、およびX線イメージング画像情報のうちの少なくとも1つを含む、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項19】
前記所定の経路は、前記インプラント前画像情報にマークされている歯槽神経位置および副鼻腔位置のうちの少なくとも1つに従って決定される、
請求項18に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項20】
前記歯科インプラント装置は、前記インプラント受容領域内の前記所定の経路に沿って移動し、前記少なくとも1つの所定の中継点に到着すると、該所定の経路から後退するように駆動される、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項21】
前記歯科インプラント装置上に配置された温度センサーをさらに含み、前記歯科インプラント装置は、前記温度センサーの感知結果に応答して、前記所定の経路から後退する、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項22】
前記歯科インプラント装置が前記所定の経路から後退すると、前記歯科インプラントシステムは、前記インプラント前計画における前記少なくとも1つの所定の中継点をさらに調整する、
請求項21に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項23】
前記歯科インプラント装置が格納式ドリル装置である、
請求項13に記載の歯科インプラントシステム。
【請求項24】
取り付け部分を備えた第1の末端部分を有するスリーブであって、該取り付け部分によって該スリーブが歯科インプラント装置に取り付けられ、ねじ穴が第2の末端部分に形成され、前記取り付け部分の遠位に配置されている、スリーブと、
隣接ヘッドと該隣接ヘッドから延びるドリル本体とを有するドリル要素であって、該ドリル本体は雄ねじ部分を有し、該ドリル要素の該雄ねじ部分が前記スリーブのねじ穴に固定される、ドリル要素と
を備え、
前記隣接ヘッドは前記スリーブの内壁に隣接し、該隣接ヘッドが第1の位置にあるときに前記第1の末端部分の近くにあり、前記歯科インプラント装置は、駆動されて前記スリーブを回転させ、それにより、該スリーブに固定された前記ドリルを前記第1の位置から第2の位置に移動させ、したがって、該隣接ヘッドが前記第2の末端部分に到達し、それにより該スリーブの内壁に隣接するまで、該スリーブから突出する、請求項1に記載の前記歯科インプラントシステム用の、
格納式ドリル装置。
【請求項25】
請求項1に記載の前記歯科インプラントシステム用の格納式ドリル装置であって、
歯科インプラント用の格納式ドリル装置であって、
取り付け部分を備えた第1の末端部分を有するスリーブであって、該取り付け部分によって該スリーブは歯科インプラント装置に取り付けられ、穴が第2の末端部分に形成され、該取り付け部分の遠位に配置されている、スリーブと、
前記スリーブ内に配置されたドリル部材であって、
該スリーブの内壁に形状が対応し、したがって該スリーブの内壁に隣接する外面を有する円筒形ベースであって、円錐形のくぼみが該円筒形ベースに形成され、前記取り付け部分に近接して配置されている円筒形ベースを備える、ドリル部材と、
一方の端が前記円筒形ベースに接続され、もう一方の端が前記スリーブの穴から第1の長さだけ突出するドリル本体と、
前記ドリル本体の一部分の周りに適合するばねであって、該一部分は前記スリーブの内側にあり、該ばねは一方の端が前記円筒形ベースに隣接し、もう一方の端が該スリーブの内壁に隣接し、前記第2の末端部分に近接して配置されている、ばねと、
前記円錐形のくぼみに配置された少なくとも1つのボールと
を備える、ドリル部材と
を備え、
前記円筒形ベースと前記ドリル本体が一体的に形成され、前記歯科インプラント装置が駆動されて前記格納式ドリル装置を回転させると、前記少なくとも1つのボールが前記円錐形のくぼみの中心から該円錐形のくぼみを横切って外側に転がり、それによって該円錐形のくぼみに作用力を及ぼし、該作用力の下で該円筒形ベースが該ドリル本体を押して、該ドリル本体が前記スリーブの穴から第2の長さだけさらに突出する、
該歯科インプラントシステム用の格納式ドリル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科インプラントシステムおよびナビゲーション方法、より具体的には、ロボットアームおよびナビゲーション方法によって実装される歯科インプラントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科インプラント処置は歯科医が手作業で行っており、インプラント受容患者のインプラント受容領域(顎骨など)に開けられる穴の質は、歯科医の触覚のパフォーマンスと経験に依存する。結果として、従来の歯科インプラント手順には、経験の浅いまたは注意力のない歯科医が、従来の歯科インプラント手順を上手く実行できないという欠点がある。これを考慮して、歯科インプラントの助けとなる歯科インプラントシステムおよびその方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
前述の先行技術の欠点を考慮して、本開示の目的は、ロボットアームを用いて自律的な歯科インプラントを実行するだけでなく、歯科インプラントプロセス中に歯科インプラント全体の計画または進行をタイムリーかつ適切に調整することを目的として、歯科インプラントプロセス中に歯科インプラントシステムおよび操作者(歯科医など)にインプラント受容患者のインプラント受容領域に関するリアルタイム情報をフィードバックするために、歯科インプラントシステムおよびナビゲーション方法を提供することである。
【0004】
本開示の第1の概念によれば、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント装置に接続された作用端を有する多軸ロボットアームと、歯科インプラントプロセス中にインプラント受容患者のインプラント受容領域に関するリアルタイム画像情報を取り込むために多軸ロボットアームに結合された少なくとも1つの光学装置とを備え、多軸ロボットアームは、インプラント前計画とリアルタイム画像情報との関連付け結果に従ってインプラント受容領域内の所定の経路に沿って移動する歯科インプラント装置を駆動し、インプラント前計画はインプラント受容領域の3次元モデルに関連付けられ、所定の経路に関連する所定の入口点と、所定の経路に関連する少なくとも1つの所定の中継点と、所定の経路に関連する所定の目標点とを含み、3次元モデルはインプラント受容領域に関するインプラント前画像情報から構築される。
【0005】
この概念によれば、インプラント前画像情報は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像情報、磁気共鳴画像(MRI)画像情報、およびX線イメージング画像情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
この概念によれば、少なくとも1つの光学装置は、第1の光学装置と第2の光学装置とを含み、第1の光学装置は、リアルタイム画像情報を取り込むために多軸ロボットアームの作用端に結合され、第2の光学装置は、マーク位置情報を取り込むために多軸ロボットアームの基端部に結合されている。
【0007】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、インプラント受容患者にしっかりと接続されたマーキング装置をさらに備え、第2の光学装置は、マーキング装置に関連付けられたマーク位置情報を取り込む。
【0008】
この概念によれば、所定の経路は、インプラント前画像情報にマークされている歯槽神経位置および副鼻腔位置のうちの少なくとも1つに従って決定される。
【0009】
この概念によれば、少なくとも1つの所定の中継点は、インプラント受容領域内の骨密度および所定の経路の長さのうちの少なくとも1つに従って決定される。
【0010】
この概念によれば、歯科インプラント装置は、インプラント受容領域内の所定の経路に沿って移動し、少なくとも1つの所定の中継点に到着すると、所定の経路から後退するように駆動される。
【0011】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント装置上に配置された温度センサーをさらに含み、歯科インプラント装置は、温度センサーの感知結果に応答して、所定の経路から後退する。
【0012】
この概念によれば、歯科インプラント装置が所定の経路から後退すると、歯科インプラントシステムは、インプラント前計画における少なくとも1つの所定の中継点をさらに調整する。
【0013】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、所定の経路に従ってインプラント受容領域にインプラントを固定するために多軸ロボットアームによって駆動されるインプラント固定装置をさらに含み、インプラント固定装置は、インプラントに関連するリアルタイムトルク値が所定のトルク閾値に達するとすぐに動作を停止する。
【0014】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、インプラント前計画とリアルタイム画像情報との関連付け結果に従って、インプラント受容領域内の所定の経路に沿って移動する歯科インプラント装置を駆動するように多軸ロボットアームに指示するために、多軸ロボットアームおよび少なくとも1つの光学装置と通信接続する処理装置をさらに含む。
【0015】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、リアルタイム画像情報、インプラント前画像情報、所定の経路、所定の入口点、少なくとも1つの所定の中継点、所定の目標点、インプラント受容領域の骨密度、歯科インプラント装置のリアルタイム温度、歯科インプラント装置の移動速度、インプラントのリアルタイムトルク、および歯科インプラントプロセスに関連する仮想画像のうちの少なくとも1つを操作者に表示するために処理装置に通信接続されたウェアラブルディスプレイ装置をさらに備える。
【0016】
本開示の第2の概念によれば、歯科インプラントシステムは、多軸ロボットアームと、多軸ロボットアームの作用端に接続された歯科インプラント装置とを備え、多軸ロボットアームは、歯科インプラントドリルが完了するまでインプラント前計画に従ってインプラント受容患者のインプラント受容領域の所定の経路に沿って往復運動する歯科インプラント装置を駆動し、インプラント前計画は、所定の経路に関連し、かつインプラント受容領域の骨密度および所定の経路の長さのうちの少なくとも1つに従って決定される少なくとも1つの所定の中継点を含む。
【0017】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント装置が動作している間にインプラント受容領域に関するリアルタイム画像情報を取り込むために多軸ロボットアームの作用端に結合された第1の光学装置と、インプラント受容患者にしっかりと接続されたマーキング装置と、マーキング装置のマーク位置情報を取り込むために多軸ロボットアームの基端部に結合された第2の光学装置とをさらに備える。
【0018】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、インプラント前計画とリアルタイム画像情報との関連付け結果に従って、インプラント受容領域内の所定の経路に沿って往復運動する歯科インプラント装置を駆動するように多軸ロボットアームに指示するために、多軸ロボットアーム、第1の光学装置および第2の光学装置と通信接続する処理装置をさらに備える。
【0019】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、リアルタイム画像情報、インプラント前計画の関連付け情報、所定の経路、インプラント受容領域の骨密度、歯科インプラント装置のリアルタイム温度、歯科インプラント装置の移動速度、および歯科インプラントドリルプロセスに関連する仮想画像のうちの少なくとも1つを操作者に表示するために歯科インプラントシステムに通信接続されたウェアラブルディスプレイ装置をさらに備える。
【0020】
この概念によれば、インプラント前計画は、インプラント受容領域の3次元モデルに関連付けられ、3次元モデルは、インプラント受容領域に関するインプラント前画像情報から構築される。
【0021】
この概念によれば、インプラント前画像情報は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像情報、磁気共鳴画像(MRI)画像情報、およびX線イメージング画像情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
この概念によれば、所定の経路は、インプラント前画像情報にマークされている歯槽神経位置および副鼻腔位置のうちの少なくとも1つに従って決定される。
【0023】
この概念によれば、歯科インプラント装置は、インプラント受容領域内の所定の経路に沿って移動し、少なくとも1つの所定の中継点に到着すると、所定の経路から後退するように駆動される。
【0024】
この概念によれば、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント装置上に配置された温度センサーをさらに含み、歯科インプラント装置は、温度センサーの感知結果に応答して、所定の経路から後退する。
【0025】
この概念によれば、歯科インプラント装置が所定の経路から後退すると、歯科インプラントシステムは、インプラント前計画における少なくとも1つの所定の中継点をさらに調整する。
【0026】
この概念によれば、歯科インプラント装置は格納式ドリル装置である。
【0027】
本開示の第3の概念によれば、歯科インプラント用の格納式ドリル装置は、取り付け部分を備えた第1の末端部分を有するスリーブであって、取り付け部分によってスリーブが歯科インプラント装置に取り付けられ、ねじ穴が第2の末端部分に形成され、取り付け部分の遠位に配置されている、スリーブと、隣接ヘッドと隣接ヘッドから延びるドリル本体とを有するドリル要素であって、ドリル本体は雄ねじ部分を有し、ドリル要素の雄ねじ部分がスリーブのねじ穴に固定される、ドリル要素とを備え、隣接ヘッドはスリーブの内壁に隣接し、隣接ヘッドが第1の位置にあるときに第1の末端部分の近くにあり、歯科インプラント装置は、駆動されてスリーブを回転させ、それにより、スリーブに固定されたドリルを第1の位置から第2の位置に移動させ、したがって、隣接ヘッドが第2の末端部分に到達し、それによりスリーブの内壁に隣接するまで、スリーブから突出する。
【0028】
本開示の第4の概念によれば、歯科インプラント用の格納式ドリル装置は、取り付け部分を備えた第1の末端部分を有するスリーブであって、取り付け部分によってスリーブは歯科インプラント装置に取り付けられ、穴が第2の末端部分に形成され、取り付け部分の遠位に配置されている、スリーブと、スリーブ内に配置されたドリル部材であって、スリーブの内壁に形状が対応し、したがってスリーブの内壁に隣接する外面を有する円筒形ベースであって、円錐形のくぼみが円筒形ベースに形成され、取り付け部分に近接して配置されている、円筒形ベースと、一方の端が円筒形ベースに接続され、もう一方の端がスリーブの穴から第1の長さだけ突出するドリル本体と、ドリル本体の一部分の周りに適合するばねであって、一部分はスリーブの内側にあり、ばねは一方の端が円筒形ベースに隣接し、もう一方の端がスリーブの内壁に隣接し、第2の末端部分に近接して配置されている、ばねと、円錐形のくぼみに配置された少なくとも1つのボールとを備える、ドリル部材とを備え、円筒形ベースとドリル本体が一体的に形成され、歯科インプラント装置が駆動されて格納式ドリル装置を回転させると、少なくとも1つのボールが円錐形のくぼみの中心から円錐形のくぼみを横切って外側に転がり、それによって円錐形のくぼみに作用力を及ぼし、作用力の下で円筒形ベースがドリル本体を押して、ドリル本体がスリーブの穴から第2の長さだけさらに突出する。
【0029】
本開示の第5の概念によれば、歯科インプラントシステムにおけるインプラント受容領域内の所定の経路に沿った歯科インプラント装置の動きを案内するための歯科インプラントナビゲーション方法であって、この方法は、歯科インプラントシステムによってインプラント受容領域に関するインプラント前画像情報を取得することと、歯科インプラントシステムによってインプラント前画像情報からインプラント受容領域の3次元モデルを構築することと、歯科インプラントシステムによってインプラント前画像情報および3次元モデルに従ってインプラント前計画を作成することであって、インプラント前計画が、所定の経路に関連する所定の入口点と、所定の経路に関連する少なくとも1つの所定の中継点と、所定の経路に関連する所定の目標点とを含む、作成することと、歯科インプラントシステムによってインプラント受容領域に関するリアルタイム画像情報を取得することと、リアルタイム画像情報に表示される第1の位置を、インプラント前画像情報に表示された第2の位置に位置合わせするために、歯科インプラントシステムによって、インプラント前画像情報に含まれる少なくとも1つの初期特徴点およびリアルタイム画像情報に含まれる少なくとも1つの第1の特徴点に従って位置変換情報を生成することと、歯科インプラントシステムによって、インプラント前画像情報、リアルタイム画像情報、位置変換情報およびインプラント前計画に従ってインプラント受容領域内の所定の経路に沿って往復運動するように歯科インプラント装置を駆動することとを含み、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント装置がインプラント前計画に従って少なくとも1つの所定の中継点または所定の目標点に移動するときに、所定の経路から後退するように歯科インプラント装置を駆動する。
【0030】
この概念によれば、方法はさらに、歯科インプラントシステムによって、歯科インプラント装置のリアルタイム温度値を検出することと、歯科インプラントシステムによって、リアルタイム温度値の検出に応答して所定の経路から後退するように歯科インプラント装置を駆動することとを含む。
【0031】
この概念によれば、方法はさらに、
【0032】
歯科インプラントシステムによって、マーキング装置のマーク位置情報を取得することであって、マーキング装置がインプラント受容領域にしっかりと接続されている、取得することと、
【0033】
歯科インプラントシステムによって、マーク位置情報と決定された移動閾値を比較して、インプラント受容領域の現在位置が変化したかどうかを決定することと、
【0034】
肯定的な決定に基づいて、歯科インプラントシステムによって、マーク位置情報およびインプラント受容領域の現在位置の変化に従って、歯科インプラント装置の現在位置を調整することとを含む。
【0035】
この概念によれば、方法はさらに、歯科インプラント装置の作用端の位置を位置合わせすることを含む。
【0036】
この概念によれば、方法はさらに、インプラント受容領域の骨密度および所定の経路の長さに従って、少なくとも1つの所定の中継点を決定することを含む。
【0037】
この概念によれば、インプラント受容領域に関するインプラント前画像情報を取得するステップは、インプラント受容領域の歯槽神経位置およびインプラント前画像情報における副鼻腔位置のうちの少なくとも1つをマーキングすることを含む。
【0038】
この概念によれば、方法はさらに、ウェアラブルディスプレイ装置によって、リアルタイム画像情報、インプラント前計画における関連情報、所定の経路、インプラント受容領域内の骨密度、歯科インプラント装置のリアルタイム温度、歯科インプラント装置の移動速度、および歯科インプラントプロセスに関連する仮想画像のうちの少なくとも1つを操作者に提供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
当業者は、本開示の実施形態の説明および添付の図面を参照することにより、本開示の技術的特徴への洞察を得ることができる。しかしながら、説明および添付の図面は、参照のみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではないため、例示と見なされるべきである。
図1】本開示の例示的な実施形態による、歯科インプラントシステムとインプラント受容患者との関係の概略図である。
図2】本開示の歯科インプラントシステムを用いて歯科インプラントを実施するための主な流れ図である。
図3】本開示の例示的な実施形態による、歯科インプラントシステムのインプラント前計画の作成プロセスの流れ図である。
図4A】本開示の特定の実施形態による、歯科インプラント計画中に歯列弓線を描くことの概略図である。
図4B】本開示の特定の実施形態による、歯列弓線に従って作成されたパノラマの概略図である。
図5】本開示の特定の実施形態による、CT座標を光学座標に変換する概略図である。
図6】本開示の特定の実施形態による、変換情報を計算する流れ図である。
図7】本開示の特定の実施形態による歯科インプラントプロセスの流れ図である。
図8】本開示の特定の実施形態によるドリルプロセスの流れ図である。
図9】本開示の特定の実施形態によるドリルプロセスの概略図である。
図10】本開示の特定の実施形態による、インプラントを所定の位置に固定する流れ図である。
図11】本開示の特定の実施形態による、インプラントを所定の位置に固定する概略図である。
図12】本開示の特定の実施形態による、歯科インプラントシステムを位置合わせする概略図である。
図13】本開示の特定の実施形態による、x-z平面上の器具先端位置を識別する概略図である。
図14】本開示の特定の実施形態による、y-z平面上の器具先端位置を識別する概略図である。
図15A】本開示の特定の実施形態による、歯科インプラント装置と共に使用するための格納式ドリルの概略図である。
図15B】本開示の別の特定の実施形態による、歯科インプラント装置と共に使用するための格納式ドリルの概略図である。
図16】本開示の特定の実施形態によるマーキング装置の概略図である。
図17】本開示の特定の実施形態による、患者が移動したかどうかをマーキング装置で検出する流れ図である。
図18】本開示の特定の実施形態による、仮想現実装置の助けを借りて表示された視覚化された外科的内容の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示の概念は、添付の図面を参照して例示的な実施形態に従って以下に説明される。添付の図面および説明では、類似または同一の構成要素は、同一の参照番号で示されている。説明のために、添付の図面は、各層の厚さと形状に関して、実際の測定値を示すために描かれたものでも、縮尺どおりに描かれたものでもない。添付の図面に示されていない、または以下に説明されていない構成要素は、当業者の間でよく知られている可能性がある。
【0041】
図1を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、歯科インプラントシステムとインプラント受容患者との関係の概略図が示されている。図1に示されるように、歯科インプラントシステム100は、本質的に、多軸ロボットアーム140、歯科インプラント装置150、第1の光学装置142、および第2の光学装置143を備える。多軸ロボットアーム140は、互いに接続された支持アーム147、148、149を備える。歯科インプラント装置150および光学装置142は、ロボットアーム140の作用端に結合されている。光学装置143は、ロボットアーム140に結合されている(例えば、ロボットアーム140の基端部に結合されている)。本開示の実施形態では、光学装置142、143は、2次元カメラまたは2次元カメラモジュールを含む。カメラモジュールはプロジェクターを含む。あるいは、変形実施形態では、2次元カメラは、赤外線(IR)カメラ、カラー(RGB)カメラ、またはグレースケールカメラを含む。
【0042】
本開示によれば、光学装置142、143と多軸ロボットアーム140との間の位置情報変換関係は、所定の位置合わせ手段によって得られる。歯科インプラント装置150の作用端(先端など)152と多軸ロボットアーム140との間の位置情報変換関係の特定の実施形態は、以下でさらに説明される(図12図14)。
【0043】
本開示によれば、歯科インプラントシステム100は、スタンド120およびマーキング装置121をさらに備える。マーキング装置121は、その画像情報が光学装置143によって取り込まれる特別なマーキング装置であるように設計されている。本開示によれば、歯科インプラントシステム100は、マーキング装置121によってインプラント受容患者10に接続されている。例えば、インプラント受容患者10の頭部がスタンド120上にあるとき、スタンド120は、インプラント受容患者10の頭部とマーキング装置121との間の堅固な接続を可能にし、その結果、インプラント受容患者10のインプラント受容領域の位置の変化の原因であるインプラント受容患者10の動きを検出することができる。好ましくは、マーキング装置121の新しい位置は、歯科インプラント経路を更新するために、第2の光学装置143によって取り込まれる。あるいは、変形実施形態では、スタンド120は、インプラント受容患者10の頭部または口腔、またはインプラント受容患者10を支えるベッド130に接続されている。
【0044】
図2を参照すると、本開示の歯科インプラントシステムを用いて歯科インプラントを実施する主な流れ図200が示されている。図2に示すように、本開示の歯科インプラントシステムを用いて歯科インプラントを実施することは、インプラント受容領域に関するインプラント前画像情報(断層撮影スキャン画像情報など)を入力し、画像情報から3次元モデルを構築することを含む(ステップ210)。この特定の実施形態では、インプラント前画像情報は、歯科用コンピュータ断層撮影(CT)スキャン情報、磁気共鳴画像(MRI)画像情報、および/またはX線イメージング画像情報を含む。
【0045】
次に、インプラント前画像情報およびこうして構築された3次元モデルに従って、インプラント前計画が作成される(ステップ220)。本開示によれば、インプラント前計画は、歯科インプラント装置の所定の経路(歯科インプラント経路としても知られる)、歯科インプラント経路に関連する所定の入口点、少なくとも1つの所定の中継点、および所定の目標点(すなわち、歯科インプラントの完了時に到達する位置)を含む。所定の中継点は、歯科インプラントドリルを実行するために、歯科インプラント装置が経路から後退し、動作を停止しなければならない位置点である。所定の中継点は、インプラント受容領域内の骨密度および歯科インプラント経路の経路長に従って決定される。例示的な実施形態では、歯科インプラント装置は、経路から後退し、それにより、所定の入口点に戻る。しかしながら、変形実施形態では、歯科インプラント装置は、歯科インプラント経路上の任意の適切な位置に後退する。本開示によれば、インプラント前画像情報は、インプラント受容患者10の歯の断面情報およびインプラント受容患者10の歯列弓線情報を含む。さらに、インプラント前計画は、以下でさらに説明するように、インプラント受容患者10の副鼻腔位置情報、インプラント受容患者10の歯槽神経位置情報、インプラント受容患者10の顎骨密度情報、およびインプラントデータ(ブランド名、形状、およびサイズを含む)に依存する(図3図4A、および図4Bを参照)。
【0046】
次に、インプラント受容領域のリアルタイム画像データを取得するために、インプラント受容患者10の歯の表面情報などの3次元部分表面情報が光学装置142によって取り込まれる(ステップ230)。その後、画像データの座標変換プロセスが開始される。
【0047】
ステップ210で構築された3次元モデルの1つまたは複数の特徴点が選択され、それに応じて(すなわち、ステップ210で構築された3次元モデルの特徴点を選択するシーケンスに従って)ステップ230で取得されたリアルタイム画像データ(歯の表面情報など)の1つまたは複数の特徴点が選択されることにより、2つのデータセット(後で説明し、図5に示す)間の座標変換の準備をする(ステップ240)。この実施形態では、選択された特徴点は3つであるが、本開示はそれに限定されない。
【0048】
次に、3次元モデルと歯の表面情報の特徴点に従って変換行列が計算される(ステップ250)。インプラント前画像データ(例えば、歯科用CTスキャンによって得られる)の座標は、ステップ250で計算された変換行列を用いて光学システムの座標(リアルタイム画像データ)に変換され(ステップ260)、歯科インプラント経路(CTスキャン座標)に関する情報を光学システム座標に変換することを容易にする(後で説明し、図6に示す)。
【0049】
次に、歯科インプラント経路に関する情報がロボットアームの座標系に代入され、歯科インプラント経路に沿って移動するロボットアームおよび歯科インプラント装置を駆動し(ステップ270)、それによって歯科インプラントが実施される(ステップ280)(後で説明し、図7に示す)。
【0050】
図3を参照すると、本開示の例示的な実施形態による、歯科インプラントシステムのインプラント前計画の作成プロセスの流れ図300が示されている。図3に示されるように、インプラント前計画の作成プロセスは、以下に記載されるステップを含む。
【0051】
最初に、インプラント前画像データ、およびインプラント受容領域に関するコーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)スキャンデータなどのインプラント受容領域に関するデータが読み取られる(ステップ310)。次に、画像データに従って歯列弓線が描かれる(ステップ320)。図4Aを参照すると、歯列弓線は、インプラント前画像データに含まれる断層撮影断面410で歯上の複数の選択点421~429を選択するステップと、歯科インプラントシステムによって、選択点間の位置に従って歯列弓線430を作成するステップと、断層撮影断面410に歯列弓線430を表示するステップに従って描かれる。この実施形態では、選択点は9個であるが、本開示はそれに限定されず、したがって、他の特定の実施形態では、異なる数の選択点が必要に応じて選択される。
【0052】
次に、ステップ320で描かれた歯列弓線に従って、インプラント受容患者10のパノラマ(パノ)およびその3次元モデルが作成される(ステップ330)。このように作成されたパノが図4Bに示されている(440で表されている)。図4Bに示すパノにマークされている副鼻腔452、454および/または歯槽神経462、464の位置、ならびに副鼻腔(ステップ340)が検出され、検出された情報が断面情報に表示される。
【0053】
その後、データベース内のインプラント3次元モデル470が選択され、断面に配置される(ステップ350)。次に、インプラント3次元モデル470の計画位置は、歯科インプラント経路が他の歯の位置または骨の位置によって影響を受けないように調整される(ステップ360)。本開示によれば、インプラントの計画位置が副鼻腔452、454または歯槽神経462、464に近すぎる場合、警告メッセージが操作者に送信される(ステップ370)。最後に、歯科インプラントシステムは、所定の入口点480および所定の目標点490を含む歯科インプラント経路を出力する。
【0054】
座標系の変換に関して、図5および図6は、それぞれ、CT座標系を光学座標系に変換する方法と、座標変換行列を計算する方法を示している。この実施形態では、図6に示す流れ図600で概略的に記述される変換計算は、図5で選択された特徴点P1、P2、P3、P1’、P2’、P3’に従って実行される。しかしながら、図5および図6は、単に例示的な目的を果たすに過ぎず、したがって、変形実施形態では、変換行列の計算は、必要に応じて数が変更される可能性のある特徴点に従って実行される。
【0055】
図6を参照すると、初期の対角正変換行列が計算される(ステップ610)。この実施形態では、第1の初期行列TCTおよび第2の初期行列Tcameraが計算される。第1の初期行列TCTと第2の初期行列Tcameraの計算は、以下の式で満たされる。まず、CTでの計算は次のとおりであり、
【0056】
【数1】
【0057】
式中、
【0058】
【数2】
【0059】
ベクトルVectorXxはベクトルVectorのx成分、ベクトルVectorXyはベクトルVectorのy成分、ベクトルVectorXzはベクトルVectorのz成分、ベクトルVectorYxはベクトルVectorのx成分、ベクトルVectorYyはベクトルVectorのy成分、ベクトルVectorYzはベクトルVectorのz成分、ベクトルVectorZxはベクトルVectorのx成分、ベクトルVectorZyはベクトルVectorのy成分、ベクトルVectorZzはベクトルVectorのz成分である。P1は点P1のx値、P1は点P1のy値、P1は点P1のz値である。
【0060】
光学装置での計算は次のとおりであり、
【0061】
【数3】
【0062】
式中、
【0063】
【数4】
【0064】
ベクトルVectorX’xはベクトルVectorX’のx成分、ベクトルVectorX’yはベクトルVectorX’のy成分、ベクトルVectorX’zはベクトルVectorX’のz成分、ベクトルVectorY’xはベクトルVectorY’のx成分、ベクトルVectorY’yはベクトルVectorY’のy成分、ベクトルVectorY’zはベクトルVectorY’のz成分、ベクトルVectorZ’xはベクトルVectorZ’のx成分、ベクトルVectorZ’yはベクトルVectorZ’のy成分、ベクトルVectorZ’zはベクトルVectorZ’のz成分である。P1’は点P1’のx値、P1’は点P1’のy値、P1’は点P1’のz値である。
【0065】
次に、CT座標情報の特徴点P1、P2、P3は、変換行列
【0066】
【数5】
【0067】
に従って光学システム座標に代入されて、それぞれ、P1transformed、P2transformed、およびP3transformedになる(ステップ620)。
【0068】
その後、ステップ630は、計算されたP1transformed、P2transformed、P3transformedとP1’、P2’、P3’との間の距離がそれぞれ閾値を満たすかどうかを確認することを含む。距離が閾値を満たさない場合、プロセスフローはステップ620に戻り、Tcamera行列と
【0069】
【数6】
【0070】
行列をP1transformed、P2transformed、P3transformedで更新した後、変換によって再度P1transformed’、P2transformed’、P3transformed’を生成する。次に、生成されたP1transformed’、P2transformed’、P3transformed’とP1’、P2’、P3’との間の距離は、距離が閾値を満たすまで繰り返し計算される。したがって、最終的な変換行列は次のようになる。
【0071】
【数7】
【0072】
次に、光学システム座標は、光学装置142(図1)およびロボットアーム140(図1)の既知の変換関係Tcamera2robotに従ってロボットアームに代入される(ステップ610)。ステップ640の変換行列
【0073】
【数8】
【0074】
を考慮すると、変換方程式は
【0075】
【数9】
【0076】
になる。したがって、CT座標をロボットアーム座標に変換できる。
【0077】
図7を参照すると、本開示の特定の実施形態による、ロボットアームおよび歯科インプラント装置によって実行される歯科インプラントプロセスの流れ図700が示されている。図7に示されるように、歯科インプラント装置が歯科インプラント経路上の所定の入口点に到達すると、本開示の歯科インプラントプロセスを開始する準備ができている。
【0078】
まず、歯科インプラントを行う前に、操作者(歯科医)は手作業で歯茎を切る(歯肉フラップ手術)か、ロボットアームと特殊な器具で歯肉穿孔を行い、その後の歯科インプラントプロセスへの道を開く(ステップ710)。次に、ステップ720は、ドリルおよび歯科インプラントを実行するためのロボットアームおよび歯科インプラント装置の動作に関するものである。過度に高いドリル温度によってインプラント受容患者10に起こり得る歯の組織の壊死を予防する必要がある。この目的のために、ステップ720はさらに、関連するプロセスを実行することを含み、それにより、普通ならドリルプロセス中の過度の高温によって引き起こされる損傷から歯の組織を保護する(後で説明し、図8および図9に示す)。
【0079】
歯科インプラント経路に従って実行されるドリルプロセスが完了すると、ロボットアームは、インプラント前計画に従ってドリル穴にインプラントを固定する(ステップ730)。このステップでは、インプラントは所定のトルク値に従って所定の位置にしっかりと固定され、関連する詳細は後で説明され、図10および図11に示される。
【0080】
図8を参照すると、本開示の特定の実施形態による、ロボットアームによって実行されるドリルプロセスの流れ図800が示されている。図8に示されるように、流れ図800の目的は、普通ならドリルプロセス中の過度の高温によって引き起こされる損傷から歯の組織を保護することである。したがって、本開示によれば、歯科インプラントシステムは、ドリル温度を下げるための冷却装置(散水装置など)と、新たにドリル位置点を計算するかどうかを決定するために関連する感知測定値をリアルタイムで読み取るためのセンサーとを備える。本開示の歯科インプラントシステムで実行されるドリルプロセスは、以下に記載されるステップを含む。
【0081】
最初に、歯科インプラント経路のHU(ハウンズフィールドユニット)値が、インプラント前画像情報またはスキャン情報から読み取られる(ステップ810)。その後、HU値が処理され、インプラント受容領域の対応する骨密度レベルが計算される(ステップ820)。例えば、この特定の実施形態では、5つの骨密度レベル、すなわち、N1(最低の骨密度、すなわち、最も柔らかい骨)からN5(最高の骨密度、すなわち、最も硬い骨)が存在する。
【0082】
次に、その移動の各段階におけるドリルツール(ドリルなど)の変位が、前述の骨密度レベルに従って事前に決定される(ステップ830)。例えば、この実施形態では、骨密度レベル0~N1は3.5mmの単位変位に関連し、骨密度レベルN1~N2は3.0mmの単位変位に関連し、骨密度レベルN2~N3は2.5mmの単位変位に関連し、骨密度レベルN3~N4は2.0mmの単位変位に関連し、骨密度レベルN4~N5は1.5mmの単位変位に関連する。(前述の単位変位値はすべて経験設計値である。)
【0083】
その後、本開示の歯科インプラントシステムの多軸ロボットアームが歯科インプラント経路全体に有するユニット移動位置点の数が、歯科インプラント経路の長さおよびステップ830で得られたユニット変位値に従って計算される(ステップ840)。ユニット移動位置点は、所定の中継点である。
【0084】
次に、ステップ840で計算された所定の中継点位置に従って、多軸ロボットアームおよび歯科インプラント装置がドリルのために駆動され、冷却装置が冷却のために水を噴霧し始める(ステップ850)。本開示によれば、ロボットアームが所定の各中継点の位置に移動すると、ロボットアームは、歯科インプラント装置を駆動して歯科インプラント経路から後退させ、歯科インプラントシステムは、冷却用の水を噴霧するために冷却装置を始動し、ドリル温度が顎骨の壊死を引き起こすのに十分なほど高くならないようにする。例示的な実施形態では、歯科インプラント装置は、歯科インプラント経路から後退し、したがって、所定の入口点に戻る。しかしながら、別の実施形態では、歯科インプラント装置は、歯科インプラント経路上の任意の適切な位置に後退する。ドリルプロセスでは、歯科インプラント装置のリアルタイムの温度と圧力が、ロボットアームまたは歯科インプラント装置にそれぞれ取り付けられた温度センサーまたは圧力センサーで検出され(ステップ860)、現在の進行状況と状態が判定される(ステップ870)。感知された測定値が閾値を超えると、ロボットアームは歯科インプラント装置を駆動して、歯科インプラント経路から後退させ、それによって所定の入口点位置に戻す。その後、プロセスフローはステップ830に戻り、ドリルユニットの変位を計算し、ドリルプロセスを続行する前に、ユニットの移動位置ポイント(すなわち、所定の中継点)を新たに更新する。センサー情報が閾値を超えない場合、ロボットアームは歯科インプラント装置を制御して、歯科インプラント経路上の所定の目標点に到達するまで次の位置ポイントに動かし続け、それによってドリルプロセスを終了する。
【0085】
図9を参照すると、本開示の特定の実施形態による、ロボットアームによって実行されるドリルプロセスの概略図が示されている。図に示すように、インプラント受容領域で行われた歯肉フラップ手術が完了するときまでには歯茎910が展開され、したがって、下の顎骨930が露出している。歯科インプラント経路は、所定の入口点940、少なくとも1つ(図では3つ)の所定の中継点(またはユニット移動位置点)962、964、966、および所定の目標点950を含む。ドリル920は、所定の入口点940で歯科インプラント経路に入り、歯科インプラント経路に沿って移動する。ドリル920は、所定の中継点962、964、966で停止し、歯科インプラント経路から後退するまで逆転する。この時点で、歯科インプラントシステムは冷却装置を始動し、冷却装置は水を噴霧し、普通なら過度の高温によって引き起こされる顎骨930の壊死を防止する目的で冷却を達成する。例示的な実施形態では、歯科インプラント装置は歯科インプラント経路から後退し、それによって所定の入口点に戻る。しかしながら、別の実施形態では、歯科インプラント装置は、歯科インプラント経路上の任意の適切な位置に後退する。本開示によれば、所定の中継点(またはユニット移動位置点)は、歯科インプラント経路の長さおよび顎骨930のインプラント受容領域内の骨密度に従って決定される。本開示によれば、歯科インプラント装置(すなわち、ドリル920)は、多軸ロボットアームの作用端に接続され、ロボットアームによって移動される。
【0086】
特定の実施形態では、歯科インプラント経路のHU値が読み取られた後、所定の入口点、所定の中継点、および所定の目標点など、ドリルプロセスに関連する位置点の計算が開始される。さらに、ドリルプロセス中、インプラント受容領域の歯の組織を損傷から保護する目的で、散水装置を使用してドリル温度を下げる。温度センサーまたは圧力センサーの測定値がリアルタイムで読み取られ、ドリル関連の位置点を新たに計算するかどうかが即座に決定される。変形実施形態では、センサーは、ロボットアームまたは歯科インプラント装置に取り付けられて、歯科インプラントシステムがその測定値を読み取ることを可能にする。一実施形態では、ドリルプロセスの開始前に、歯科インプラントシステムは、歯科インプラント経路およびHU値を読み取り、対応するユニット変位を識別し、歯科インプラント経路上の所定の中継点を計算/決定する(移動周波数を計算する)。
【0087】
図10を参照すると、本開示の特定の実施形態による、インプラントを所定の位置に固定する流れ図1000が示されている。図10に示されるように、本開示のインプラント固定プロセスは、以下に記載されるステップを含む。
【0088】
最初に、歯科インプランター(すなわち、インプラント固定装置)が、本開示の歯科インプラントシステムに接続される(ステップ1010)。この実施形態では、歯科インプランターは、インプラントの回転速度またはトルクなどの関連データがすでに付属している市販の歯科インプランターである。本開示の歯科インプラントシステムは、ロボットアームに対してフィードバック制御を実行する目的で、インプラントに関するトルク情報を取得するために歯科インプランターに接続されている。
【0089】
その後、インプラントを所定の位置に固定するために必要なトルク値が事前決定される(ステップ1020)。トルク値は、インプラントのサイズとインプラント受容領域内の骨密度に依存する。この特定の実施形態では、歯科医は、その経験値に従ってトルク値を事前決定し、所定のトルク値を歯科インプラントシステムに割り当てる。インプラントを所定の位置に固定するためのドリルが、本開示の歯科インプラント装置に取り付けられる(ステップ1030)。歯科インプラントシステムは、ロボットアームを歯科インプラント経路上の所定の入口点まで駆動し始める(ステップ1040)。次に、インプラントをドリルに固定する(ステップ1050)。次に、ステップ1060は、インプラントを所定の位置に固定し、現在のトルク値をリアルタイムで検出することを含む。その後、ステップ1070は、トルク値のリアルタイム検出結果に従って、トルク値がステップ1020で事前決定され、かつ歯科インプランターに必要であるトルク値を超えているかどうか、およびインプラントがその目的地に到達したかどうかを決定することを含む。決定が否定的である場合、プロセスフローはステップ1060に戻り、歯科インプラント装置がインプラントを所定の位置に固定することとインプラントを緩めることとを交互に繰り返すことを可能にする。リアルタイムで検出されたトルク値がステップ1020で事前決定されたトルク値に到達し、歯科インプラント経路上の所定の目標点に到達するとすぐに、本開示のインプラント固定プロセスは終了する(ステップ1080)。
【0090】
図11を参照すると、本開示の特定の実施形態による、インプラントを所定の位置に固定する概略図が示されている。図に示されるように、歯科インプランター1120は、本開示の歯科インプラントシステムのロボットアーム1110、およびロボットアーム1110の作用端にある歯科インプラント装置に接続され、一方、インプラント1130は、歯科インプラント装置に接続される。インプラント固定プロセス1140の間、歯科インプラント装置は、歯科インプラント経路上の所定の入口点1142からインプラント受容領域の顎骨1141に入り、歯科インプラントシステムは、インプラント1130が歯科インプラント経路上の所定の目標点1143に到達するまで歯科インプラント経路に沿って図10のステップを実行する。本開示によれば、歯科インプラント装置はドリルを実行し、ロボットアーム1110の作用端に歯科インプランター1120の所定のインプラントトルク値で接続されて、現在のトルク値の変化をリアルタイムで検出し、インプラントがその目的地に到達したかどうかを決定する。歯科インプラント装置は、インプラントが所定のインプラント位置に到達するまで、インプラントを所定の位置に固定するために継続的に動作する。
【0091】
図12を参照すると、本開示の特定の実施形態による、歯科インプラントシステムを位置合わせする概略図が示されている。図12に示されるように、位置合わせプロセスの目的は、歯科インプラント装置の作用端(先端)の位置を位置合わせし、それをロボットアーム座標に変換することである。この特定の実施形態では、歯科インプラント装置は、ロボットアームフランジに固定されている。歯科インプラントシステムは、ロボットアームのフランジ1212、歯科インプラント装置支持部材1210、歯科インプラント装置1211、歯科インプラント装置1211のフロントエンド器具(ドリルなど)1220、器具先端1221、第1の光源1232、第2の光源1234、第1のカメラ1242、第2のカメラ1244、および計算コンピュータ1260を備える。計算コンピュータ1260は、ロボットアームを有線または無線で制御する。いくつかの特定の実施形態では、第1の光源1232および第2の光源1234は、平面1250上に垂直に配置されたバックライトボードである。いくつかの特定の実施形態では、平面1250は、フランジ1212に取り付けられた標準的な器具によって、ロボットアーム座標に従って、位置合わせ方法によって位置合わせされる。平面1250が位置合わせされた後、第1の光源1232のx座標およびz座標は、ロボットアームのx座標およびz座標に対応し、一方、第2の光源1234のy座標およびz座標は、ロボットアームのy座標およびz座標に対応する。
【0092】
いくつかの特定の実施形態では、第1の光源1232および第2の光源1234は、互いに垂直である。いくつかの他の特定の実施形態では、第1のカメラ1242は、平面1250上に配置され、第2の光源1234に垂直であり、第2のカメラ1244は、平面1250上に配置され、第1の光源1232に垂直である。フロントエンド器具1220は、第1のカメラ1242および第2のカメラ1244がフロントエンド器具1220の写真を撮るように、第1の光源1232および第2の光源1234に配置されている。
【0093】
図13を参照すると、本開示の特定の実施形態による、x-z平面上の器具先端位置を識別する概略図が示されている。図13に示されるように、フロントエンド器具1220は、第1のカメラ1242がフロントエンド器具1220の写真を撮るように、その画像を第1のバックライトボード1232に投影する。いくつかの他の特定の実施形態では、フロントエンド器具1220の画像は、画像1301、1302、1303に含まれる。さらに、フロントエンド器具1220およびフロントエンド器具先端1221は、画像1301内で識別される。投影面がロボットアーム座標(x、z)と位置合わせされているため、画像1302に示されるように、フロントエンド器具先端1221は画像の中心に移動される。次に、フロントエンド器具1220の方向は、画像1303で示されるような画像によって補正される。この時点で、フロントエンド器具1220とロボットアームのx-z座標との位置合わせが完了する。
【0094】
図14を参照すると、本開示の特定の実施形態による、y-z平面上の器具先端位置を識別する概略図が示されている。図14に示されるように、フロントエンド器具1220は、第2のカメラ1244がフロントエンド器具1220の写真を撮るように、その画像を第2のバックライトボード1234に投影する。いくつかの他の特定の実施形態では、フロントエンド器具1220の画像は、画像1401、1402、1403に含まれる。さらに、フロントエンド器具1220およびフロントエンド器具作用端(先端)1221は、画像1401内で識別される。投影面がロボットアーム座標(y、z)と位置合わせされているため、画像1402に示されるように、フロントエンド器具先端1221は画像の中心に移動される。次に、フロントエンド器具1220の方向は、画像1403で示されるような画像によって補正される。この時点で、フロントエンド器具1220とロボットアームのy-z座標との位置合わせが完了する。
【0095】
本開示によれば、図13および図14に示されるプロセスのステップは、フロントエンド器具先端1221のx-z投影画像およびy-z投影画像の中心点までの距離が所定の閾値よりも小さくなるまで繰り返され続け、これにより、位置合わせプロセスが完了する。
【0096】
本開示はさらに、臼歯などの限られたスペースを有するインプラント受容領域においてドリルおよび歯科インプラントを実施する際に使用するのに適した格納式ドリル装置を提供する。
【0097】
図15Aおよび図15Bを参照すると、本開示の2つの特定の実施形態による、歯科インプラント装置と共に使用するための格納式ドリル装置(ドリル)の概略図がそれぞれ示されている。図15Aは、本開示の一実施形態による、遠心力下で駆動されたときに伸長および格納することができるドリルを示す。図15Bは、本開示の別の実施形態による、ねじ込み式のプッシュ/プルによって駆動されたときに伸長および格納することができるドリルを示す。
【0098】
図15Aに示されるように、本開示によれば、格納式ドリル装置1510は、本質的に、スリーブ1511と、スリーブ1511に受容されたドリル部材とを備える。取り付け部分1512は、スリーブ1511の第1の末端部分に配置され、スリーブ1511が歯科インプラント装置(図示せず)に取り付けられることを可能にするように適合されている。穴1513は、スリーブ1511の第2の末端部分に形成され、取り付け部分1512の遠位に配置されている。ドリル部材は、円筒形ベース1514、ドリル本体1515、少なくとも1つのボール1516、1517、およびばね1518を備える。円筒形ベース1514の外面は、形状がスリーブ1511の内壁に対応し、したがってそれに隣接する。円錐形のくぼみ1519が円筒形ベース1514に形成され、スリーブ1511の取り付け部分1512の近くに配置されている。ドリル本体1515は、一端が円筒形ベース1514に接続され、他端がスリーブ1511の穴1513から第1の長さだけ突出している。ドリル本体1515の一部がスリーブ1511の内側にあるため、ばね1518は、ドリル本体1515の一部の周りに適合する。ばね1518は、一端が円筒形ベース1514に隣接している。ばね1518の他端は、スリーブ1511の内壁に隣接し、第2の末端部分に近接して(すなわち、穴1513の近くに)配置されている。少なくとも1つのボール(この実施形態では2つのボール)1516、1517は、円錐形のくぼみ1519に配置されている。この時点で、図15Aの左の図に示されているように、ドリルは格納状態にある。
【0099】
本開示の歯科インプラント装置が駆動されて格納式ドリル装置1510を回転させると、ボール1516、1517は、円錐形のくぼみ1519の中心から円錐形のくぼみ1519の凹面を横切って外側に転がり、それによって円錐形のくぼみ1519に作用力(遠心力)が作用し、円筒形ベース1514がドリル本体1515を押して、ドリル本体1515がスリーブ1511の穴1513から第2の長さ(第1の長さよりも長い)だけさらに突出するようになる。この時点で、図15Aの右の図に示されるように、ドリルは突出状態にある。
【0100】
好ましくは、円筒形ベース1514およびドリル本体1515は一体的に形成される。
【0101】
図15Bに示されるように、別の実施形態では、本開示の格納式ドリル装置1520は、本質的に、スリーブ1521およびドリル要素を含む。スリーブ1521は、取り付け部分1522を備えた第1の末端部分を有し、それにより、スリーブ1521は歯科インプラント装置(図示せず)に取り付けられる。ねじ穴1523は、スリーブ1521の第2の末端部分に形成され、取り付け部分1522の遠位に配置されている。ドリル要素は、隣接ヘッド1524と、隣接ヘッド1524から延びるドリル本体1525とを有する。ドリル本体1525は、雄ねじ構造1526を有する。ドリル要素の雄ねじ構造1526は、スリーブ1521のねじ穴1523に固定される。隣接ヘッド1524が第1の位置にあるとき(図15Bの左の図に示されるように)、隣接ヘッド1524は、スリーブ1521の内壁に隣接し、第1の末端部分の近く(すなわち、取り付け部分1522の近く)にある。この時点で、ドリル装置1520は、図15Bの左の図に示されているように、格納状態にある。対照的に、歯科インプラント装置が駆動されてスリーブ1521を回転させると、スリーブ1521に固定されたドリル本体1525は、第1の位置から第2の位置に移動し(図15Bの右の図に示されるように)、したがって、隣接ヘッド1524が第2の末端部分に到達し、それによってスリーブ1521の内壁に隣接するまで、スリーブ1521から突出する。この時点で、ドリル装置1520は、図15Bの右の図に示されるように、突出状態にある。本開示によれば、ドリル装置1510、1520は、ドリルプロセス中にインプラント受容患者の口腔内で利用可能な小さなスペースに適合するように設計され、したがって、歯科医がドリルスペースの変動のためにドリルを交換しなければならない回数を減らす。
【0102】
図16を参照すると、本開示の特定の実施形態によるマーキング装置の概略図が示されている。図16に示されるように、マーキング装置1600は、図1のマーキング装置121に対応する。いくつかの特定の実施形態では、マーキング装置1600は、特徴点1601、1602、1603、1604、1605および認識パターン1609を備える。一実施形態では、マーキング装置1600の特徴点1601、1602、1603、1604、1605および認識パターン1609は、特定の波長の光を放出し、その光は、本開示の歯科インプラントシステムに配置された光学装置(光学装置143など)によって取り込まれる。対照的に、マーキング装置1600の他の部分は、放出する光が少なすぎるので、光学装置によって取り込むことができない。他の特定の実施形態では、マーキング装置1600の特徴点1601、1602、1603、1604、1605および認識パターン1609は、特定の波長の光(光源から放出される)を反射し、その光は、本開示の歯科インプラント装置に配置された光学装置(光学装置143など)によって取り込まれる。対照的に、マーキング装置1600の他の部分は光を吸収するため、光学装置は光をほとんど取り込まない。
【0103】
歯科インプラントシステムがマーキング装置1600の特徴点1601、1602、1603、1604、1605および認識パターン1609の位置を見つけると、特徴点1601、1602、1603、1604、1605の3次元位置および認識パターン1609の3次元位置を識別し、2次元から3次元へのいくつかの座標変換方法(PNPアルゴリズムなど)によって変換関係を識別することが可能である。図1に示すように、インプラント受容患者10(またはインプラント受容領域)が移動したかどうかを検出するために、マーキング装置121とインプラント受容患者10は、堅固に接続されている(インプラント受容患者10の頭部とマーキング装置121は、スタンド120によって堅固に接続されている)。
【0104】
図17を参照すると、本開示の特定の実施形態による、インプラント受容患者10(またはインプラント受容領域)が移動したかどうかをマーキング装置で検出する流れ図1700が示されている。本開示によれば、インプラント受容患者10(またはインプラント受容領域)の位置は、経路を更新するかどうかを決定するために、図2に示されるステップ270~280の方法によって連続的に検出される。図17に示すように、この方法のプロセスフローは、以下に説明するステップを含む。
【0105】
まず、最初に検出されたマーク位置が登録され(ステップ1710)、変換関係Tが計算される。次に、現在のマーク点位置と初期マーク点位置とを比較し、投影距離を計算するために、マーク画像における特徴点1601、1602、1603、1604、1605の現在検出された位置および認識パターン1609が、変換関係Tによって画像上に投影される(ステップ1720)。その後、ステップ1730は、投影距離が所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含む。ステップ1730の決定が否定的である場合、プロセスフローはステップ1710に戻って計算を続行する。ステップ1730での決定が肯定的である場合、インプラント受容患者10またはインプラント受容領域が移動したと決定される(ステップ1740)。この時点で、歯科インプラントシステムは、変形関係T’を更新し、それに応じて歯科インプラント経路情報を更新する(ステップ1750)。
【0106】
本開示の歯科インプラントシステムはさらに、歯科インプラントプロセスに関するメッセージを操作者(歯科医)に表示するウェアラブルディスプレイ装置(ウェアラブル仮想現実ディスプレイ装置など)に接続される。図18を参照すると、本開示の特定の実施形態による、仮想現実装置の助けを借りて表示された視覚化された外科的内容の概略図が示されている。図18に示されるように、操作者(歯科医)1810は、本開示の歯科インプラント装置1830を用いてインプラント受容患者1820に歯科インプラントを実施する間、仮想現実ディスプレイ装置1840を着用する。仮想現実ディスプレイ装置1840は、歯科インプラントプロセスに関する内容を表示し、視覚化情報インターフェース1850と連動して動作することによって内容を操作者1810に表示する。この特定の実施形態では、視覚化情報インターフェース1850は、インプラント前断層撮影スキャンによって得られた断面、骨密度のHU値(表示情報1854)、歯槽神経(表示情報1855)、ならびに所定の入口点(表示情報1859)および所定の目標点(表示情報1858)を有する歯科インプラント経路を含む、インプラント前計画に関する情報を有する。視覚化情報インターフェース1850はさらに、ドリル温度(表示情報1851)、現在のドリル回転速度(表示情報1852)、ドリル反作用力値(表示情報1853)および現在のドリル深さ(表示情報1856)を含む、歯科インプラントプロセスで得られた関連メッセージを有する。視覚化情報インターフェース1850では、リアルタイム画像情報(表示情報1857)が、インプラント受容患者1820の画像に重ね合わされる。他の特定の実施形態では、歯科インプラントプロセス中に、リアルタイム情報は、トルク、警告メッセージ、およびドリルまたはインプラントが歯槽神経または副鼻腔と接触する警告領域など、任意の他のセンサーで検出される情報を含む。視覚化情報インターフェース1850はさらに、パノおよび歯列弓線情報など、任意の他のインプラント前情報を表示するが、本開示はそれに限定されない。他の特定の実施形態では、仮想現実ディスプレイ装置1840は、ヘッドマウントディスプレイなどに限定されない。
【0107】
本開示の装置および/またはプロセスの特定の実施形態は、ブロック図、流れ図、および/または例によって示されている。ブロック図、流れ図、および/または例は、1つまたは複数の機能および/または動作を示す。当業者は、ブロック図、流れ図、および/または例によって示されるすべての機能および/または動作をハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらのほぼ任意の組み合わせによって、個別におよび/または集合的に実装できることを理解している。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載の主題の一部は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)などによって実装される。しかしながら、当業者は、特定の実施形態のいくつかの態様が、1つまたは複数のコンピュータ上で実行される1つまたは複数のコンピュータプログラム(例えば、1つまたは複数のコンピュータシステムで実行される1つまたは複数のプログラム)、1つまたは複数のプロセッサで実行される1つまたは複数のプログラム(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサで実行される1つまたは複数のプログラム)、ファームウェア、またはそれらのほぼ任意の組み合わせの形で全体的または部分的に集積回路に同等に実装されることを認識する。さらに、回路の設計および/またはソフトウェアおよび/またはファームウェアのプログラミングは、本開示を考慮して当業者に周知であると見なされなければならない。さらに、当業者は、本明細書に記載の主題のメカニズムが異なる方法でプログラム製品として配布され得ること、および本明細書に記載の主題の例示的な特定の実施形態が、配布を実行する際に使用するための信号伝達媒体の特定のタイプに関係なく適用可能であることを理解する。信号伝達媒体の例には、フロッピーディスク、ハードディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリなどの記録可能な媒体、ならびにデジタルおよび/またはアナログ通信媒体など(光ファイバケーブル、導波管、有線通信接続、および無線通信接続など)の伝送媒体が含まれるがこれらに限定されない。
【0108】
本開示の歯科インプラントシステムおよび方法は、上で説明され、添付の図面によって示されている。しかしながら、本開示の特定の実施形態は、単に例示的な目的で役立つに過ぎない。したがって、本開示の特許請求の範囲および精神から逸脱することなく、本開示の特定の実施形態に様々な変更を加えることができ、変更は、本開示の請求項の範囲内に入る方法で解釈されなければならない。したがって、特定の実施形態は、本開示を限定するものではないが、本開示の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲で定義されている。
【符号の説明】
【0109】
10 インプラント受容患者
100 歯科インプラントシステム
120 スタンド
121 マーキング装置
130 ベッド
140 ロボットアーム
142 光学装置
143 光学装置
147 支持アーム
148 支持アーム
149 支持アーム
150 歯科インプラント装置
152 歯科インプラント装置の作用端
200 流れ図
210-280 ステップ
300 流れ図
310-380 ステップ
410 断層撮影断面
421-429 選択点
430 歯列弓線
440 パノ
452 副鼻腔
454 副鼻腔
462 歯槽神経
464 歯槽神経
470 インプラント3次元モデル
480 入口点
490 目標点
600 流れ図
610-640 ステップ
700 流れ図
710-730 ステップ
800 流れ図
810-880 ステップ
910 歯茎
920 ドリル
930 顎骨
940 入口点
950 目標点
962、964、966 中継点
1000 流れ図
1010-1080 ステップ
1110 ロボットアーム
1120 歯科インプランター
1130 インプラント
1140 インプラント固定プロセス
1141 顎骨
1142 入口点
1143 目標点
1210 歯科インプラント装置支持部材
1211 歯科インプラント装置
1212 フランジ
1220 フロントエンド器具
1221 フロントエンド器具
1232 第1の光源
1234 第2の光源
1242 第1のカメラ
1244 第2のカメラ
1250 平面
1260 計算コンピュータ
1301-1303 画像
1401-1403 画像
1510 ドリル装置
1511 スリーブ
1512 取り付け部分
1513 穴
1514 円筒形ベース
1515 ドリル本体
1516 ボール
1517 ボール
1518 ばね
1519 円錐形のくぼみ
1520 ドリル装置
1521 スリーブ
1522 取り付け部分
1523 ねじ穴
1524 隣接ヘッド
1525 ドリル本体
1526 雄ねじ構造
1600 マーキング装置
1601-1605 特徴点
1609 認識パターン
1700 流れ図
1710-1750 ステップ
1810 操作者
1820 インプラント受容患者
1830 歯科インプラント装置
1840 仮想現実ディスプレイ装置
1850 視覚化情報インターフェース
1851-1859 表示情報
P1-P3 特徴点
P1’-P3’ 特徴点
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18