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特許7154400熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布
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  • 特許-熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20221007BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20221007BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20221007BHJP
   D04H 1/55 20120101ALI20221007BHJP
【FI】
D01F8/14 B
C08G63/183
D04H1/541
D04H1/55
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021515614
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2020006267
(87)【国際公開番号】W WO2020231166
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0055705
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ユング ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ド ヒュン
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113615(JP,A)
【文献】特開平04-139212(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115096(WO,A1)
【文献】特開平09-059825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/14
C08G 63/183
D04H 1/541
D04H 1/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を含む酸成分、およびエチレングリコールと下記化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルを含み、前記ジオール成分中、前記化学式1で表される化合物の含量が、前記化学式2で表される化合物の含量よりも大きいことを特徴とする熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物と前記化学式2で表される化合物との含量の総和は、前記ジオール成分中に、30~45モル%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記ジオール成分中に、前記化学式1で表される化合物は、ジオール成分を基準として20~40モル%、前記化学式2で表される化合物は、ジオール成分を基準として1~10モル%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記ジオール成分中に、前記化学式1で表される化合物は30~40モル%、前記化学式2で表される化合物は1~6モル%で含まれることを特徴とする請求項に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記ジオール成分は、ジエチレングリコールを含まないことを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記酸成分は、イソフタル酸を酸成分を基準として1~10モル%でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項7】
前記コポリエステルは、融点がなく、軟化挙動を示し、ガラス転移温度が60~75℃であることを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項8】
前記コポリエステルは、固有粘度が0.500~0.800dl/gであることを特徴とする請求項1に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物。
【請求項9】
ポリエステル系成分を含む芯部と、
前記芯部を囲む請求項1~のいずれか1項に記載の熱接着性繊維用ポリエステル組成物を含む鞘部と、を含む熱接着性複合繊維。
【請求項10】
請求項に記載の熱接着性複合繊維と、
ポリエステル系繊維と、を含んで所定の形状に成形された不織布。
【請求項11】
前記不織布は、自動車用マットレス、建築用内蔵材、寝装材、衣類用保温材および農業用断熱材よりなる群から選ばれたいずれか1つであることを特徴とする請求項10に記載の不織布。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、熱接着性繊維用ポリエステル組成物に関し、より詳細には、繊維への紡糸性、広い温度範囲で熱接着性に優れ、夏期の保存条件でも経時変化が最小化され、保存安定性が向上し、具現された製品において優れた触感、消臭特性および吸湿性を発現できる熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布に関する。
[背景技術]
【0002】
一般的に、合成繊維は、融点が高くて用途が制限される場合が少なくない。特に繊維等の接着用途において芯等の用途やテープ状の織物の間に挿入して加圧接着する接着剤として使用される場合には、加熱によって繊維織物自体が劣化することがあり、高周波ミシンのような特殊な装備を使用しなければならないという煩わしさがあるので、このような特殊装備を利用することなく、通常の簡単な加熱プレスにより容易に接着することが要望されている。
【0003】
従来の低融点ポリエステル繊維は、マットレス、自動車用内蔵材または各種不織布のパッティング用途に製造時に使用される相互繊維構造物において異種の繊維を接着する目的でホットメルト(Hot Melt)型バインダー繊維が幅広く使用されてきた。
【0004】
例えば、米国登録特許第4,129,675号には、テレフタル酸(terephthalic acid:TPA)とイソフタル酸(isophthalic acid:IPA)を利用して共重合された低融点ポリエステルが紹介されており、また、韓国登録特許第10-1216690号には、接着性を改善させるためのイソフタル酸、ジエチレングリコールを含んで具現された低融点ポリエステル繊維を開示している。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の低融点ポリエステル繊維は、一定水準以上の紡糸性および接着性を有することができるが、剛直な改質剤の環構造によって熱接着後にかたい感じの不織布または織物構造体を得る問題点がある。
【0006】
また、バインダー特性の発現のために、低い融点や低いガラス転移温度を有する方向に開発が進行されることによって、具現されたポリエステルの耐熱性が悪くなって、夏期に40℃を超える保存条件でも経時変化が顕著に発生し、保存中に発生するポリエステルチップや繊維間結合が発生して、保存安定性も顕著に低下する問題がある。
【0007】
ひいては、従来の低融点ポリエステル繊維を利用して製造された不織布は、高分子自体が親水性が殆どないため、衛生材料の用途に使用する場合には、体液を吸収しない問題がある。
【0008】
したがって、従来の低融点ポリエステル繊維が有する紡糸性および接着性を維持または改善させることができると共に、顕著に改善された触感、染着特性と共に、常温での経時変化を最小化し、保存安定性を向上させることができ、親水性を向上させて吸湿性が要求される用途にも使用可能な熱接着性ポリエステル繊維に対する開発が求められているのが現状である。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
【0009】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、その目的は、繊維への紡糸性に優れ、優れた熱接着性を発現すると同時に、応用された物品において顕著に改善された触感と染着特性を発現することができ、ひいては、常温で経時変化が最小化され、保存安定性が向上した熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、消臭特性が向上し、親水性を向上させて吸湿性が要求される用途にも用途展開が拡大され得る熱接着性繊維用ポリエステル組成物、これを通じて具現された熱接着性複合繊維および不織布を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、テレフタル酸を含む酸成分、およびエチレングリコールと下記化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルおよび消臭剤を含む熱接着性繊維用ポリエステル組成物を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
本発明の実施例によれば、前記化学式1で表される化合物と化学式2で表される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分中に30~45モル%で含まれ得る。
【0015】
また、前記ジオール成分中に、化学式1で表される化合物の含量(モル%)が、化学式2で表される化合物の含量(モル%)よりさらに大きくてもよい。
【0016】
また、前記ジオール成分は、ジエチレングリコールを実質的に含まなくてもよい。
【0017】
また、前記酸成分は、イソフタル酸を、酸成分を基準として1~10モル%でさらに含まれ得る。
【0018】
また、前記ジオール成分中に、前記化学式1で表される化合物は1~40モル%、前記化学式2で表される化合物は1~20モル%で含まれ得、より好ましくは、前記ジオール成分中に、前記化学式1で表される化合物は20~40モル%、前記化学式2で表される化合物は1~10モル%、より好ましくは、前記化学式1で表される化合物は30~40モル%、前記化学式2で表される化合物は1~6モル%で含まれ得る。
【0019】
また、前記酸成分は、イソフタル酸をさらに含み、前記コポリエステル中に、前記イソフタル酸、前記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物の含量の総和は、55モル%以下で含まれ得る。
【0020】
また、ブルーおよびレッド染料を含む補色剤を、ポリエステル組成物の総重量に基づいて、1~10ppmさらに含むことができる。
【0021】
また、前記消臭剤は、遷移金属がドープされた光触媒酸化物であり、ポリエステル組成物の総重量に基づいて、0.3~5.0重量%具備され得る。
【0022】
また、前記コポリエステルの総重量に基づいて、チタン系重合触媒がTi元素量を基準として5~40ppmさらに含まれ得る。
【0023】
前記コポリエステルの総重量に基づいて、リン系熱安定剤がP元素量を基準として10~30ppmさらに含まれ得る。
【0024】
また、前記組成物は、融点がなく、軟化挙動を示し、ガラス転移温度が60~75℃、 より好ましくは、65~72℃でありうる。
【0025】
また、前記組成物は、固有粘度が0.500~0.800dl/gでありうる。
【0026】
また、本発明は、本発明による熱接着性繊維用ポリエステル組成物を含むポリエステルチップを提供する。
【0027】
また、本発明は、芯部と、前記芯部を囲む本発明による熱接着性繊維用ポリエステル組成物を含む鞘部と、を含む熱接着性複合繊維を提供する。
【0028】
また、本発明は、本発明による熱接着性複合繊維単独、または前記熱接着性複合繊維とポリエステル系繊維を含んで所定の形状に成形された不織布を提供する。
【0029】
本発明の一実施例によれば、前記不織布は、各種衛生用品、自動車用マットレス、建築用内蔵材、寝装材、衣類用保温材および農業用断熱材よりなる群から選ばれたいずれか1つでありうる。
[発明の効果]
【0030】
本発明によれば、繊維への紡糸性に優れ、優れた熱接着性を発現すると同時に、応用された物品において顕著に改善された触感と、染着性を発現することができる。また、常温で経時変化が最小化され、保存安定性が向上することができる。ひいては、ポリエステル組成物をチップに製造するとき、乾燥時間を顕著に減少させて製造時間を顕著に短縮させることができる。これにより、これを利用して具現された物品も、夏期のような保存条件(例えば40℃以上)でも経時変化が最小化され、保存安定性に優れているので、物品の初回形状の変形や使用中の変形を防止することができる。また、優れた消臭特性と親水特性に起因して各種衛生用品に広く使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例による複合繊維の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【0033】
本発明による熱接着性繊維用ポリエステル組成物は、テレフタル酸を含む酸成分、およびエチレングリコールと下記化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルおよび消臭剤を含む。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
まず、前記酸成分は、テレフタル酸を含み、それ以外にテレフタル酸でない炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸や、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸および/または、スルホン酸金属塩をさらに含むことができる。
【0037】
前記炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知となったものを制限なしに使用できるが、好ましくは、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸およびジメチルイソフタレートよりなる群から選ばれたいずれか1つ以上であり得、より好ましくは、テレフタル酸との反応安定性、取り扱い容易性および経済的な観点からイソフタル酸でありうる。
【0038】
また、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知となったものを制限なしに使用できるが、これに対する非制限的な例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、クエン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸およびヘキサデカン酸よりなる群から選ばれたいずれか1つ以上でありうる。
【0039】
また、前記スルホン酸金属塩は、ソジウム3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホネートでありうる。
【0040】
一方、前記酸成分としてテレフタル酸以外に具備され得る他の成分は、ポリエステル組成物の耐熱性を低下させることができて、好ましくは、含まない方が良い。ただし、テレフタル酸との反応安定性、取り扱い容易性および経済的観点等を考慮して他の種類の酸成分がさらに含む場合には、イソフタル酸を含んだ方が良く、この場合にも、イソフタル酸は、酸成分を基準として1~10モル%で含まれることが好ましい。もしイソフタル酸が酸成分を基準として1モル%未満で具備される場合、目的とする追加的な低い温度での高い熱接着特性を発現しにくいことがあり、10モル%を超過して具備される場合、具現される物品が固くなって、やわらかい触感を顕著に低下させ、ガラス転移温度が過度に低くなっても耐熱性の低下が問題になり得る。また、コポリエステルにおいて後述する化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびイソフタル酸の総含量が過度に増加することによって、かえって結晶を形成できる主成分として作用して、目的とする温度での熱接着特性を顕著に低下させるなど発明の目的を達成しにくいことがある。
【0041】
次に、前記ジオール成分は、エチレングリコールと下記化学式1で表される化合物および化学式2で表される化合物を含む。
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
【0044】
まず、前記化学式1で表される化合物は、製造されるポリエステル組成物の結晶化度、ガラス転移温度を低くして、優れた熱接着性能を発現するようにすることができる。また、繊維状に製造された後、染色工程で常圧の条件で染色を可能にして染色工程をさらに容易にし、染着特性に優れていて、洗濯堅牢度が向上し、不織布等の成形物の触感を向上させることができる。好ましくは、前記ジオール成分中に、前記化学式1で表される化合物は、13~40モル%、より好ましくは、20~40モル%、さらに好ましくは、30~40モル%で含まれ得る。もし化学式1で表される化合物がジオール成分基準13モル%未満で具備される場合、紡糸性に優れているが、接着可能温度が高くなるか、熱接着特性が低下し、使用される用途が制限され得るという恐れがある。また、もし化学式1で表される化合物が40モル%を超過して具備される場合、紡糸性が良くないので、商用化が難しい問題点が発生し得、かえって結晶性が増大して熱接着特性が低下する恐れがある。
【0045】
一方、好ましくは、化学式1で表される化合物が20モル%以上具備され得、これを通じて後述する化学式2で表される化合物と共にポリエステル組成物の低温での熱接着特性をさらに向上させることができ、ポリエステル組成物をチップ化させるとき、乾燥時間が顕著に短縮され得る利点がある。
【0046】
前記化学式2で表される化合物は、上述した化学式1で表される化合物と共に製造されるポリエステル組成物の熱接着特性をさらに向上させながらも、化学式1で表される化合物のガラス転移温度の顕著な低下を防止して、40℃以上の保存温度にもかかわらず、経時変化を最小化させ、保存安定性を向上させることができる。熱接着性と関連して化学式2で表される化合物は、化学式1で表される化合物との混合使用に伴って、具現されるポリエステル組成物を利用した熱接着性繊維に適切な収縮特性を発現させ、このような特性発現によって熱接着時に点接着力をさらに増加させることによって、より上昇した熱接着特性を発現することができる。
【0047】
好ましくは、前記ジオール成分中に、前記化学式2で表される化合物は1~20モル%、より好ましくは、1~10モル%、さらに好ましくは、1~6モル%で含まれ得る。
【0048】
もし化学式2で表される化合物が、ジオール成分を基準として1モル%未満で含まれる場合、目的とする耐熱性の向上が難しくて、保存安定性が良くなく、経時変化が非常に大きくなり得るという恐れがある。また、上述した化学式1で表される化合物と共に使用されることによって、化学式2で表される化合物が20モル%を超過して含まれると、紡糸性が良くなくて、商用化が難しい問題点が発生することがあり、場合によって、イソフタル酸まで追加で含む場合には、結晶性が十分に低下してそれ以上の効果がなく、追加されるイソフタル酸の含量が増加するとき、かえって結晶性が増大して、目的とする温度での優れた熱接着特性を顕著に低下させることができるなど発明の目的を達成しない恐れがある。また、繊維状等に具現されるとき、収縮性が顕著に大きく発現して、加工の困難がある。
【0049】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記化学式1で表される化合物と化学式2で表される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分中に30~45モル%で含まれることが好ましく、より好ましくは、33~41モル%で含まれ得る。もし30モル%未満でこれらが含まれる場合、コポリエステルの結晶性が増加して、高い融点が発現したり、軟化点を低い温度で具現したりすることが難しくなって、熱接着可能温度が顕著に高くなり、低い温度では優れた熱接着特性が発現しないことがある。また、もし化学式2で表される化合物が45モル%を超過して含まれる場合、重合反応性と紡糸性が顕著に低下する恐れがあり、製造されるコポリエステルの結晶性がかえって増加して、目的とする温度での高い熱接着特性を発現しにくいことがある。
【0050】
この際、前記ジオール成分中に、上述した化学式1で表される化合物が、化学式2で表される化合物よりさらに大きい含量(モル%)で含まれ得る。もし化学式1で表される化合物が、化学式2で表される化合物より少ないか、同じ量で含まれる場合、目的とする熱接着特性を発現しにくく、高温で接着されなければならないので、展開される製品の用途に制限がありえる。また、過度な収縮特性の発現によって展開される製品への加工が困難になる恐れがある。ひいては、目的とする用途への使用が困難な問題があり得る。
【0051】
一方、前記ジオール成分は、上述した化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびエチレングリコール以外に、他の種類のジオール成分をさらに含むことができる。
【0052】
前記他の種類のジオール成分は、ポリエステルの製造に使用される公知のジオール成分でありうるので、本発明は、これに特に限定されないが、これに対する非制限的な例として、炭素数2~14の脂肪族ジオール成分であり得、具体的に1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールおよびトリデカメチレングリコールよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上でありうる。ただし、目的とする水準の熱接着特性と同時に耐熱性を兼ね備えるために、化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物およびエチレングリコール以外に、他の種類のジオール成分をさらに含まないことが好ましく、特にジエチレングリコールは、コポリエステルを収得するために使用されるジオール成分に実質的に含まれなくてもよい。もしジエチレングリコールがジオール成分に含まれる場合、ガラス転移温度の急激な低下を招いて、化学式2で表される化合物を具備する場合にも、目的とする水準の耐熱性を達成しないことがある。この際、前記ジオール成分にジエチレングリコールを実質的に含まないか、または含まないという意味は、コポリエステルの製造時に意図的にジエチレングリコールを投入しないことを意味し、酸成分およびジオール成分のエステル化反応、重縮合反応で自然発生するジエチレングリコールまで含まないことを意味しない。一方、本発明の一実施例によれば、ポリエステル組成物に含まれる自然発生的なジエチレングリコールの含量は、全体組成物の3重量%未満でありうる。もし自然発生的なジエチレングリコールの含量が適正水準を超過する場合、繊維へ紡糸時にパック圧を増加させ、頻繁な糸切れを誘発して、紡糸性が顕著に低下し得る問題がある。
【0053】
上述した酸成分およびジオール成分は、ポリエステル合成分野における公知の合成条件を利用してエステル化反応および重縮合を経てコポリエステルに製造され得る。この際、酸成分とジオール成分は、1:1.1~2.0のモル比で反応するように投入され得るが、これに制限されるものではない。
【0054】
一方、前記酸成分およびジオール成分は、上記のような適正のモル比で一度に混合された後、エステル化反応および重縮合を経てコポリエステルに製造されるか、酸成分とジオール成分中に、エチレングリコールと化学式1で表される化合物間のエステル化反応中に化学式2で表される化合物を投入して、エステル化反応および重縮合を経てコポリエステルに製造され得、本発明は、これに対して特に限定しない。
【0055】
前記エステル化反応で触媒をさらに含むことができる。前記触媒は、通常、ポリエステルの製造時に使用される触媒を使用することができるが、好ましくは、チタン系重合触媒であり得、さらに具体的に下記化学式3で表されるチタン系重合触媒でありうる。
【0056】
【化7】
【0057】
前記化学式3で表されるチタン系重合触媒は、水分子の存在下でも安定しているので、水が多量で副生するエステル化反応前に添加しても、失活しないので、従来より短縮された時間内にエステル化反応および重縮合反応が進行され得、これを通じて黄変による着色を抑制することができる。前記触媒は、収得されるコポリエステルの総重量においてチタニウム原子換算で5~40ppmになるように含まれ得、これを通じてコポリエステルの熱安定性や色調がさらに良好になって好ましい。もしチタニウム原子換算で5ppm未満で具備される場合、エステル化反応を適切に促進させにくいことがあり、もし40ppmを超過して具備される場合、反応性は促進されるが、着色が発生する問題点がありえる。
【0058】
また、前記エステル化反応は、好ましくは、200~270℃の温度および1100~1350トル(Torr)の圧力下で行われ得る。前記条件を満たさない場合、エステル化反応時間が長くなったり、反応性の低下によって重縮合反応に適合したエステル化化合物を形成できなかったりする問題が発生する問題点がありえる。
【0059】
また、前記重縮合反応は、250~300℃の温度および0.3~1.0トル(Torr)の圧力下で行われ得、もし前記条件を満たさない場合、反応時間の遅延、重合度の低下、熱分解の誘発等の問題点がありえる。
【0060】
一方、重縮合反応時に熱安定剤をさらに含むことができる。前記熱安定剤は、高温で熱分解を通した色相の変色を防止するためのものであり、リン系化合物を使用することができる。前記リン系化合物は、一例として、リン酸、モノメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸等のリン酸類およびその誘導体を使用した方が良く、これらのうちでも、特にトリメチルリン酸またはトリエチルリン酸が、効果が優れるので、さらに好ましい。前記リン系化合物の使用量は、最終収得されるコポリエステルの総重量に対してリン原子換算で10~30ppmを使用することが好ましい。もしリン系熱安定剤が10ppm未満で使用される場合、高温熱分解を防止しにくくいため、コポリエステルが変色することがあり、もし30ppmを超過する場合、製造費用の観点から不利になり得、重縮合反応時に熱安定剤による触媒活性の抑制によって反応遅延現象が発生する問題点がありえる。
【0061】
本発明による熱接着性ポリエステル組成物は、上述したコポリエステルの重縮合反応時に、またはコポリエステルを収得した後に具備される消臭剤を含む。前記消臭剤は、ホルムアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン等のVOC物質のような有害ガスを分解して低減または除去させる機能を行い、繊維に使用する公知の消臭剤の場合、制限なしに使用することができる。ただし、繊維の親水性を向上させ、より容易に活性化されるために、好ましくは、無光触媒であり得、具体的に遷移金属がドープされた光触媒酸化物でありうる。無光触媒は、光のない状態でも水分の吸収を通じて触媒作用ができる触媒を意味する。前記遷移金属は、特別な制限はないが、反応性を考慮してZn、Mn、Fe、Cu、Ni、Co、Cr、V、Zr、Mo、Ag、W、PtおよびAuよりなる群から選ばれた2種以上のものを使用することが好ましい。なお、前記光触媒酸化物は、TiO、SrTiO、ZrO、SnO、WO、Bi、Fe等が挙げられるが、特にTiOが好ましく、より好ましくは、アナターゼ型TiOを含有することが好ましく、さらに好ましくは、アナターゼ型TiO光触媒酸化物に遷移金属FeおよびAgがドープされたものでありうる。
【0062】
前記消臭剤は、熱接着性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、0.3~5.0重量%、より好ましくは、0.3~2.5重量%、さらに好ましくは、0.3~1.2重量%で具備され得る。もし0.3重量%未満で具備される場合、目的とする水準の消臭特性および親水性を増加させにくいことがあり、5.0重量%を超過する場合、単糸強度が低下し、糸の破損による紡糸作業性が悪化することがある。また、糸が切れずに紡糸された原糸であっても、保存中または製品に使用された後、水分または露出される光、一例として紫外線により活性化される無光触媒の触媒反応によって有害ガスだけでなく、繊維形成成分であるコポリエステルにも影響を及ぼして、原糸の強度をさらに顕著に低下させることができる恐れがある。
【0063】
また、前記熱接着性ポリエステル組成物は、補色剤をさらに含むことができる。前記補色剤は、繊維へ紡糸された後に進行される染色工程で染着される染料の色相をさらに強く、良くするための色調調整のためのものであり、繊維分野において公知となったものを添加することができ、これに対する非制限的な例として原着用染料、顔料、建染染料、分散染料、有機顔料等がある。ただし、好ましくは、ブルーおよびレッド染料が混合されたものを使用することができる。これは、補色剤として一般的に使用されるコバルト化合物の場合、人体有害性が大きくて、好ましくないためであるのに対し、ブルーおよびレッド染料が混合された補色剤は、人体に無害であるので好ましい。また、ブルーおよびレッド染料を混合して使用される場合、色調を微細に制御できる利点がある。前記ブルー染料は、一例として、solvent blue 104、solvent blue 122、solvent blue 45等があり得、前記レッド染料は、一例としてsolvent red 111、solvent red 179、solvent red 195等がありえる。また、前記ブルー染料とレッド染料は、1:1.0~3.0の重量比で混合され得、これを通じて目的とする微細な色調制御に顕著な効果を発現するのに有利である。
【0064】
前記補色剤は、ポリエステル組成物の総重量に基づいて、1~10ppm具備され得るが、もし1ppm未満で具備される場合、目的とする水準の補色特性を達成しにくいことかあり、10ppmを超過する場合、L値が減少して、透明性が低下し、暗い色を帯びる問題点がありえる。
【0065】
上述した方法を通じて製造された本発明によるポリエステル組成物は、固有粘度が0.5~0.8dl/gでありうる。もし固有粘度が0.5dl/g未満の場合、断面形成に問題点があり得、固有粘度が0.8dl/gを超過する場合、パック(Pack)圧力が高くて、紡糸性に問題点がありえる。
【0066】
また、前記ポリエステル組成物は、融点がなく、軟化挙動を示す熱的特性を有することができ、好ましくは、軟化点が90~110℃であり得、これを通じて本発明の目的を達成するのにさらに有利になり得る。
【0067】
また、前記ポリエステル組成物は、ガラス転移温度が60~75℃でありうる。もしガラス転移温度が60℃未満の場合、ポリエステル組成物を通じて具現されたポリエステルチップ、繊維またはこれらを通じて具現された物品が、夏期のような例えば40℃を超える温度条件でも経時変化が大きく、チップや繊維間接合が発生して保存安定性が顕著に低下する恐れがある。また、チップ間の結合が発生する場合、紡糸不良を引き起こす恐れもある。ひいては、繊維等で具現された後、収縮特性が過度に発現して、かえって接合特性が低下する恐れがある。また、チップ形成後に乾燥工程、繊維へ紡糸後に後加工工程等に必要とされる熱処理の限界によって工程所要時間の長期化または当該工程を円滑に行うことができない問題があり得る。
【0068】
また、もしガラス転移温度が75℃を超過する場合、熱接合特性が顕著に低下する恐れがあり、接合工程の実行温度が高温に制限されることによって、用途展開に制限がある恐れがある。
【0069】
上述した本発明の一実施例によるポリエステル組成物は、ポリエステルチップで具現され得、前記ポリエステルチップの製造方法、チップの規格は、当該技術分野における公知の製造方法と規格に従うことができるので、本発明は、これに関する具体的な説明を省略する。
【0070】
また、本発明は、図1に示されたように、芯部11と、前記芯部11を囲む本発明による熱接着性繊維用ポリエステル組成物を含む鞘部12とを含む熱接着性複合繊維10を具現する。
【0071】
前記芯部は、繊維へ紡糸可能な高分子の場合、制限なしに使用され得、一例として、鞘部に比べて耐熱性および機械的強度が大きい公知のポリエステル系成分であり得、具体的にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等でありうるが、これに制限されるものではない。
【0072】
前記芯部と鞘部は、一例として8:2~2:8の重量比で複合紡糸されたものでありうるが、これに制限されるものではなく、目的に応じて比率を適切に調節して紡糸することができる。
【0073】
前記複合繊維を紡糸条件、紡糸装置および紡糸後の複合繊維に対する冷却、延伸等の工程は、当該技術分野における公知の条件、装置および工程を利用したり、これを適切に変形したりして行われ得るので、本発明は、これに対して特に限定されない。
【0074】
一例として、前記複合繊維は、270~290℃の紡糸温度で紡糸されたものであり得、紡糸後に2.5~4.0倍延伸されたものでありうる。また、複合繊維の繊度は、1~15デニールであり、繊維長は、一例として1~100mmでありうる。
【0075】
一方、本発明の一実施例による熱接着性ポリエステル組成物は、図1とは異なって、単独で紡糸されて単独の熱接着性繊維で具現されることもできることを明らかにする。
【0076】
また、本発明は、上述した熱接着性複合繊維や、熱接着性単独繊維を含んで具現された不織布を含む。
【0077】
前記不織布は、熱接着性複合繊維や熱接着性単独繊維のような熱接着性繊維単独、または前記熱接着性繊維に支持繊維としてポリエステル系繊維を共に混合して具現され得る。一例として、前記熱接着性繊維およびポリエステル系繊維は、単繊維であり得、それぞれの単繊維が混繊および開繊された後、熱処理を経て不織布が製造され得る。
【0078】
本発明の一実施例によれば、前記熱接着性繊維およびポリエステル系繊維は、3:7~1:9の割合で混合され得るが、これに制限されるものではなく、用途等を考慮して適切に変更され得る。
【0079】
また、前記熱処理は、100~180℃、より好ましくは、120~180℃であり得、これを通じてさらに向上した接着特性を発現することができる。
【0080】
また、前記多孔性構造体は、一例として各種衛生用品、自動車用マットレス、建築用内蔵材、寝装材、衣類用保温材および農業用断熱材よりなる群から選ばれたいずれか1つでありうるが、これに制限されるものではない。
[発明を実施するための形態]
【0081】
下記の実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明することとするが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるためのものと解釈されなければならない。
【0082】
<実施例1>
ジオール成分として下記化学式1で表される化合物38モル%と下記化学式2で表される化合物3モル%および残余ジオール成分としてエチレングリコール59モル%を投入し、酸成分としてテレフタル酸100モル%を投入して前記酸成分とジオール成分を1:1.5の割合で250℃で1140トル(torr)の圧力下でエステル化反応させてエステル反応物を得、その反応率は、97.5%であった。形成されたエステル反応物を重縮合反応器に移送し、収得されるコポリエステル総重量に基づいて、重縮合触媒として下記化学式3で表されるチタン系化合物15ppm(Ti元素基準)、熱安定剤としてトリエチルリン酸25ppm(P元素基準)を投入して最終圧力0.5トル(torr)になるように徐々に減圧しつつ、285℃まで昇温して重縮合反応を行ってコポリエステルを形成させ、これに遷移金属FeおよびAgがドープされたアナターゼ型TiO光触媒酸化物を、製造されるポリエステル組成物の総重量に基づいて、1重量%を含ませて、熱接着性繊維用ポリエステル組成物を収得した。
【0083】
その後、前記ポリエステル組成物を通常の方法で横、縦、高さがそれぞれ2mm×4mm×3mmであるポリエステルチップに製造した。
【0084】
その後、前記ポリエステル組成物を鞘部とし、固有粘度が0.65dl/gであるポリエチレンレーテフタレート(PET)を芯部とする芯鞘型複合繊維を製造するために、前記ポリエステル組成物で具現されたポリエステルチップと、PETチップをホッパーにそれぞれ投入後に溶融させて、芯鞘型紡糸口金にそれぞれ投入した後、275℃下で1000mpmの紡糸速度で芯部と鞘部が5:5の重量比になるように複合紡糸し、3.0倍延伸して、繊維長が51mmであり、繊度が4.0deである下記表1のような芯鞘型熱接着性複合繊維を製造した。
【0085】
【化8】
【0086】
【化9】
【0087】
【化10】
【0088】
<実施例2~14>
実施例1と同一に実施して製造するものの、下記表1、表2または表3のようにコポリエステルを製造するための単量体の組成比を変更させて、下記表1、表2または表3のようなポリエステルチップおよびこれを利用した芯鞘型複合繊維を製造した。
【0089】
<比較例1~4>
実施例1と同一に実施して製造するものの、下記表2のようにコポリエステルを製造するための単量体の組成を変更させて、下記表2のようなポリエステルチップおよびこれを利用した芯鞘型複合繊維を製造した。
【0090】
<実験例1>
実施例および比較例によって製造されたポリエステルチップや、芯鞘型熱接着性複合繊維について下記の物性を評価して、その結果を下記表1~表3に示した。
【0091】
1.固有粘度
ポリエステルチップに対してオルソクロロフェノール(Ortho-Chloro Phenol)を溶媒として110℃、2.0g/25mlの濃度で30分間溶融後、25℃で30分間恒温して、キャノン(CANON)粘度計が連結された自動粘度測定装置から分析した。
【0092】
2.ガラス転移温度、融点
示差熱分析装置を利用してガラス転移温度および融点を測定し、分析条件は、昇温速度を20℃/minにした。
【0093】
3.ポリエステルチップ乾燥時間
製造されたポリエステル組成物をチップ(chip)化後、真空乾燥器で55℃、4時間間隔で水分率を測定し、測定結果、水分率100ppm以下と測定されたときの時間を乾燥時間で示した。
【0094】
4.単繊維保存安定性
製造された芯鞘型複合繊維500gに対して温度40℃、相対湿度45%のチャンバーで圧力2kgf/cmを加えて3日間放置して、繊維間の融着状態を専門家10人が肉眼で観察し、その結果、融着が発生しない場合を10点、全部融着が発生した場合を0点を基準として0~10点で評価した後、平均値を計算した。その結果、平均値が9.0以上である場合、非常に優秀(◎)、7.0以上9.0未満の場合、優秀(○)、5.0以上7.0未満は、普通(△)、5.0未満は、悪い(×)で示した。
【0095】
5.紡糸作業性
紡糸作業性は、実施例および比較例別に同一含量で紡糸された芯鞘型複合繊維に対して紡糸加工中にドリップ(口金を通過する繊維ストランドが一部融着されたり、糸切れ後にストランドが不規則に融着されたりして形成された塊りを意味する)発生数値をドリップ感知器を用いてカウントし、実施例1でのドリップ発生数値を100を基準として残りの実施例および比較例で発生したドリップ個数を相対的な百分率で表示した。
【0096】
6.染着率の評価
芯鞘型複合繊維重量を基準として2重量%のブルー(blue)染料を含む染液に対して、浴比1:50で90℃で60分間染着工程を行った後、日本のクラボウ(KURABO)社の色彩測定システムを利用して染色された複合繊維に対する可視領域(360~740nm、10nm間隔)の分光反射率を測定した後、CIE 1976規格に基づく染着量の指標であるTotal K/S値を算出して、染料の色収得率を評価した。
【0097】
7.接着強度
製造された芯鞘型複合繊維とポリエチレンテレフタレート(PET)単繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)を5:5で混繊および開繊した後、120℃、140℃および160℃の温度条件で熱処理して、坪量が35g/mのホットメルト不織布を具現し、横、縦および厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmの試験片で具現して、KS M ISO 36方法に基づいてUTM(universal testing machine)を利用して接着強度を測定した。
【0098】
一方、熱処理時に過度な収縮によって形態が変形された場合、接着強度を評価せず、「形態変形」と評価した。
【0099】
8.ソフト触感
接着強度の評価のために140℃の温度条件で熱処理されて製造された不織布に対して10人の同業界の専門家からなるグループによる官能検査を実施し、評価結果、8人以上がソフトであると判断する場合、優秀(◎)、6~7人は良好(○)、5~4人は普通(△)、4人未満は不良(×)に区分した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
表1~表3を通じて確認できるように、比較例は、乾燥時間が顕著に延長されるか(比較例1~3)、紡糸作業性が顕著に良くないか(比較例2、比較例3)、単繊維保存安定性が非常に悪くなるか(比較例2、比較例3)、温度別の接着強度評価で形態が変形(比較例4)されたことを確認できて、すべての物性を同時に満足させることができないことを確認できるが、実施例は、すべての物性を優れた水準で発現していることを確認できる。
【0104】
一方、実施例においても、化学式1で表される化合物より化学式2で表される化合物の含量がさらに多く含まれた実施例15は、他の実施例に比べて温度別の接着強度評価で形態が変形されて、目的とする物性を達成するのに適していないことを確認できる。
【0105】
<実施例15~実施例18>
実施例1と同一に実施して製造するものの、消臭剤の含量を下記表4のように変更して芯鞘型複合繊維を製造した。
【0106】
<比較例5>
実施例1と同一に実施して製造するものの、消臭剤を投入せずに、表4のような芯鞘型複合繊維を製造した。
【0107】
<実験例2>
実施例1、15~18、比較例1および比較例5による芯鞘型複合繊維を利用して下記の物性を評価し、その結果を表4に示した。
【0108】
1.紡糸作業性
実験例1と同じ方法で紡糸作業性を評価した。
【0109】
2.水分および光に対する保存安定性
芯鞘型複合繊維を130℃で熱処理して不織布を製造した。製造された不織布を所定の大きさに切って各実施例および比較例別に試験片を2個ずつ準備した後、あらかじめ準備されたUVランプ付き恒温恒湿チャンバー内に準備された試験片1個(試験片1)を投入し、温度25℃、相対湿度50%RH、紫外線を300mJ/cmの強さで30日間照射した。水分および光に対する保存安定性は、恒温恒湿チャンバーで30日間保存された試験片の引張強度と恒温恒湿チャンバーに投入されない残りの試験片1個(試験片2、未処理試験片)の引張強度をそれぞれ測定して下記の式を通じて導き出し、その値が大きいほど外部の水分や紫外線等の光による機械的強度の低下が大きいものと評価することができる。この際、前記試験片2の引張強度は、試験片1を恒温恒湿チャンバーに投入して評価を始める時点で測定した。
【0110】
[式]
機械的強度の低下率(%)=[(試験片2の引張強度(N)-試験片1の引張強度(N))/試験片2の引張強度(N)]×100
【0111】
3.ガス低減率
芯鞘型複合繊維を130℃で熱処理して不織布を製造した後、10cm×10cmに切断して試験片を準備した。準備された試験片を3Lテドラーバッグに入れ、対象ガスと清浄空気を注入して密封した後、120分経過後にそれぞれの濃度をガステック検知管法で測定して、下記計算式1からガス低減率を計算した。
【0112】
[計算式1]
低減率(%)=[(C-C)/C]×100
【0113】
この際、前記計算式1でCは、空試験濃度、Cは、試料濃度を示す。
【0114】
4.吸収性
吸収性は、バイレック法を利用し、ガス低減率の評価のために製造された不織布を2.5cm×20cmに切断した試験片を製作した後、下側を水槽に浸水して、毛細管現象により試験片に吸収される高さを10分間測定した。
【0115】
【表4】
【0116】
表4を参照して確認できるように、消臭剤を含む実施例は、比較例5に比べてガス低減率、紡糸作業性、親水性および光/水分による保存安定性を同時に満たすのに有利であることを確認できる。
【0117】
また、化学式2の化合物を含まない比較例1の場合、消臭剤を含む場合においても、同一含量で消臭剤を含む実施例1に比べて吸収性、紡糸作業性および光/水分による保存安定性において良くないことを確認できる。
【0118】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加等により他の実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想範囲内に入るといえる。
図1