(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】擬人化試験装置の腹部肉質のための連結デザイン
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2021515636
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 US2019052429
(87)【国際公開番号】W WO2020061568
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319005017
【氏名又は名称】ヒューマネティックス イノヴァティブ ソリューションズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ゼンウェン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ンギー,トーン
(72)【発明者】
【氏名】マッキニス,ジョセフ ピー.
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0162077(US,A1)
【文献】特開平08-122009(JP,A)
【文献】米国特許第05665922(US,A)
【文献】特開2005-078568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0091017(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0000425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 5/00- 7/08
G01M 17/00- 17/10
G09B 9/04
G06F 30/00- 30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース内面及び反対側のベースの外面を有し、該ベース内面が第1の空洞を画定するベース部材と、
前記ベース部材に連結されて前記ベース部材から延びる弾性のフランジであって、該弾性フランジはフランジ内面、反対側のフランジ外面及びフランジ周縁部を有し、該フランジは第2の空洞を画定し、該第2の空洞は前記第1の空洞から延び且つ前記第1の空洞に対して開いている、弾性フランジと、
第1の幅を画定する第1の部分と、該第1の幅よりも大きい第2の幅を画定する第2の部分とを有する腹部コンポーネントであって、該第1の部分は前記第1の空洞内に収容され、該第2の部分は前記第2の空洞内に収容され、前記弾性フランジは該腹部コンポーネントの第2の部分と直接係合して、前記ベース部材に対して該腹部コンポーネントを弾性的に保持する、腹部コンポーネントと、
を含む擬人化試験装置。
【請求項2】
前記腹部コンポーネントの第2の部分が前記第2の空洞内に収容される前に画定される前記フランジの最大幅は前記第2の幅よりも小さい、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項3】
前記フランジの最大幅は前記第1の幅よりも大きい、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項4】
前記弾性フランジの周縁部は開口を画定し、前記腹部コンポーネントが前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結されている場合に、該開口を介して前記第1の空洞及び前記第2の空洞内に少なくとも部分的に受容されている、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項5】
前記腹部コンポーネントは中空状で且つ内部空洞を画定し、前記腹部コンポーネントは該内部空洞内に配置される第1の支持部材を含む、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記第1の空洞内に配置される第2の支持部材を含み、該第2の支持部材は、前記腹部コンポーネントが前記ベース部材に連結されている場合に前記第1の支持部材に隣接して配置されている、請求項5に記載の擬人化試験装置。
【請求項7】
前記ベース部材は、第1の表皮で覆われたインナーコア発泡体を含み、前記弾性フランジは第2の表皮を含み、該第2の表皮は該第1の表皮に連結され且つ該第1の表皮から延びる、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項8】
前記第2の表皮は前記第1の表皮と一体形成され且つ前記第1の表皮から延びる、請求項7に記載の擬人化試験装置。
【請求項9】
前記第2の表皮の厚さは3~5mmの範囲である、請求項7に記載の擬人化試験装置。
【請求項10】
前記第2の表皮はループ構造を画定し、該ループ構造は外側ループ部、内側ループ部及び該外側ループ部と該内側ループ部とを接続する遷移ループ部を含み、該外側ループ部及び該内側ループ部のそれぞれは、前記第1の表皮に別々に連結され且つ前記第1の表皮から延びる、請求項7に記載の擬人化試験装置。
【請求項11】
前記第2の表皮は前記ループ構造内にループ空洞を画定し、前記第1の表皮は該ループ空洞とオープン連通する発泡体収容空洞を画定し、前記
インナーコア発泡体の全体が該発泡体収容空洞内に収容される、請求項10に記載の擬人化試験装置。
【請求項12】
前記ベース部材から延びる前記弾性フランジの長さは、前記第1の部分から延びる前記第2の部分の対応する高さと等しい、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項13】
前記腹部コンポーネントの第1の部分の底部は1つ以上の突出領域を含み、前記ベース内面は1つ以上の表面凹部を画定し、該1つ以上の突出領域のうちの1つは、前記腹部コンポーネントが前記ベース部材に連結されている場合に前記1つ以上の表面凹部のうちの対応する1つ内で固定される、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項14】
前記
腹部コンポーネントは、
上部と、該上部を前記第2の部分に接続する横方向に延びる切り欠き
とをさらに含み、前記腹部コンポーネントが前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結されている場合、前記フランジの周縁部は該切り欠きと当接する、請求項1に記載の擬人化試験装置。
【請求項15】
第1の空洞を画定するベース内面を有するベース部材と、第1の幅を画定する第1の部分及び該第1の幅よりも大きい第2の幅を画定する第2の部分を有する腹部コンポーネントとを含む擬人化試験装置の一部を形成する方法であって、当該方法は、
弾性フランジを前記ベース部材に連結するステップであって、該弾性フランジはフランジ内面、反対側のフランジ外面及びフラン
ジ外縁面を有し、該フランジは第2の空洞を画定し、該第2の空洞は前記第1の空洞から延び且つ前記第1の空洞に対して開いている、ステップと、
前記腹部コンポーネントが前記第1の空洞及び前記第2の空洞内で部分的に収容され、前記腹部コンポーネントの第1の部分の外面が前記ベース内面と係合し、前記腹部コンポーネントの第2の部分の外面が前記弾性フランジにより弾性的に保持されるように、前記腹部コンポーネントを前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記フランジの最大幅は前記第2の幅よりも小さく、前記フランジの最大幅は前記第1の幅よりも大きく、前記腹部コンポーネントを前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結するステップは、前記腹部コンポーネントを前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結するステップの間に、前記フランジ外面に向かう方向に前記腹部コンポーネントの第2の部分から前記フランジに力を加えて、前記フランジの最大幅が前記第2の幅よりも大きい値になるように大きくすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記腹部コンポーネントは中空状で且つ内部空洞を画定し、前記方法は、
前記内部空洞内に第1の支持部材を配置するステップと、
前記第2の空洞内に第2の支持部材を配置するステップと、
前記腹部コンポーネントが前記ベース部材に連結されている場合に、前記第2の支持部材を前記第1の支持部材に隣接して配置するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記腹部コンポーネントの第1の部分の底部は1つ以上の突出領域を含み、前記ベース内面は1つ以上の表面凹部を画定し、該1つ以上の突出領域のうちの1つは、前記腹部コンポーネントを前記ベース部材及び前記弾性フランジに連結するステップの間に該1つ以上の表面凹部のうちの対応する1つ内で固定される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのプロセッサを含み、該プロセッサはメモリを含む、コンピュータと、
前記メモリ上に記憶され、仮想擬人化試験装置を生成するように構成された第1のソフトウェアアプリケーションと、
含むシステムであって、
前記仮想擬人化試験装置は、
内面、反対側の外面及び該内面と該外面とを接続する縁面を有し、該内面が第1の空洞を画定する、仮想ベース部材と、
前記仮想ベース部材の前記縁面に連結され且つ前記縁面から延びる仮想弾性フランジであって、該仮想弾性フランジはフランジ内面、反対側のフランジ外面及びフランジ周縁面を含み、該仮想フランジは第2の空洞を画定し、該第2の空洞は前記第1の空洞から延び且つ前記第1の空洞に対して開いている、仮想弾性フランジと、
仮想腹部コンポーネントであって、該仮想腹部コンポーネントの外面の第1の部分及び第2の部分が前記仮想ベース部材の内面と係合し、該仮想腹部コンポーネントの外面の第2の部分が前記仮想弾性フランジにより弾性的に保持されるように、該仮想腹部コンポーネントは前記第1の空洞及び前記第2の空洞内に部分的に収容され且つ前記仮想ベース部材及び前記仮想弾性フランジに連結される、仮想腹部コンポーネントと、
を含む、システム。
【請求項20】
前記ソフトウェアアプリケーションは、生成された前記仮想擬人化試験装置に対して仮想衝突シミュレーションを実施するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2018年9月21日に出願された米国仮出願第62/734582号の優先権を主張する。該米国仮出願の全体は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して擬人化試験装置(anthropomorphic test device)に関し、より具体的には擬人化試験装置の腹部肉質(abdomen flesh)のための連結デザインに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車、航空機及び他の車両製造業者は、車両及びその乗員に対する衝突の影響を測定するために多種多様な衝突試験を行う。衝突試験(場合によってはクラッシュテストとも呼ばれる)を通して、車両の製造業者は車両を改善するのに用いることができる貴重な情報を得る。
【0004】
衝突試験は、しばしば人体の損傷リスクを推定するために、擬人化試験装置(場合によっては代替的に擬人化マネキンと呼ばれ、「衝突実験用ダミー人形(crash test dummies)」としてよりよく知られている)の使用を多くの場合伴う。通常、衝突実験用ダミー人形はヘッドアセンブリ、スパインアセンブリ、リブケージアセンブリ、骨盤アセンブリ、右腕アセンブリ、左腕アセンブリ、右脚アセンブリ及び左脚アセンブリを含む。ジョイントは、様々なアセンブリを一緒に連結し、人間の関節可動域をシミュレートする関節を可能にするために設けられる。加えて、これらのアセンブリは表皮(skin)で覆われた内側発泡体材料を含む模擬肉質で通常覆われる。擬人化試験装置は、対象となる人間の一般的な力学特性、塊、関節及び関節の硬さを有していなければならない。加えて、擬人化試験装置は、衝突試験中に人のように車内と相互作用するのに十分な機械的衝撃応答を有していなければならない。
【0005】
これらの装置において、肉質は、組み立て/分解及び取扱いを容易にするためにジョイントで分かれている場合が多い。しかしながら、肉質が分かれていることで組み立てや取り扱いは容易になるが、衝突試験中に非人間的な応答を引き起こす。例えば、特定のデザインでは、腹部コンポーネントとベース部材(例えば、骨盤部材)の肉質との間で分離の問題が存在する。衝突試験の間、腹部及び骨盤に対応する腹部コンポーネント及びベース部材との間の肉質で大きなズレ又は分裂が生じ、ベース部材と腹部コンポーネントとの間での肉質/塊の連結が不適切なものとなり、関連する肉質の表皮に沿って表面が不連続になる。この不適切な連結及び不連続な表面は腹部及び骨盤の動力学に影響を及ぼし、この衝突試験の間の衝突実験用ダミー人形の非人間的な応答、例えば、シートベルトがダミー人形の腹部と骨盤の間の間隙内に掛かる(latches)することに寄与する。
【0006】
本開示は、従来技術のデザインに関連する分離の問題に対処及び最小化し又は克服し、それにより衝突試験の間により人間的な応答を有する衝突実験用ダミー人形を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は擬人化試験装置の肉質のための連結デザインを提供する。
【0008】
具体的には、擬人化試験装置は、ベース内面及び反対側のベースの外面を有し、該ベース内面が第1の空洞を画定するベース部材を含む。加えて、試験装置は、ベース部材に連結されてベース部材から延びる弾性のフランジであって、該弾性フランジはフランジ内面、反対側のフランジ外面及びフランジ周縁部を有し、該フランジは第2の空洞を画定し、該第2の空洞は前記第1の空洞から延び且つ第1の空洞に対して開いている、弾性フランジも含む。さらに、擬人化試験装置は、第1の幅を画定する第1の部分と、該第1の幅よりも大きい第2の幅を画定する第2の部分とを有する腹部コンポーネントであって、該第1の部分は第1の空洞内に収容され、第2の部分は前第2の空洞内に収容され、弾性フランジは該腹部コンポーネントの第2の部分と直接係合して、ベース部材に対して該腹部コンポーネントを弾性的に保持する、腹部コンポーネントを含む。
【0009】
この構成では、弾性フランジは、衝突試験の間に生じ得る腹部コンポーネントとベース部材との間の分離の問題を最小限に抑えるか又は防止するのを支援する。したがって、連結された腹部コンポーネント及びベース部材を含み、弾性フランジが存在せず且つこれらの分離の問題を有する擬人化試験装置に比べて、連結された腹部コンポーネント、弾性フランジ及びベース部材は衝突試験の間により人間的な応答を提供する。加えて、連結デザインは、衝突試験の前に、連結された腹部コンポーネントのベース部材に対する初期の位置決め及び位置の維持を支援する。
【0010】
本開示の他の特徴及び利点は、添付の図面と合わせて以下の説明を読んだ後によりよく理解されるため、容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ベース部材に連結された腹部コンポーネントであって、ベース部材に連結された弾性フランジを含む腹部コンポーネントを含む、本開示に係る擬人化試験装置の一部の一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のベース部材から外された腹部コンポーネントの正面斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1の断面図に対応する、
図4の連結された腹部コンポーネント及びベース部材の図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る、
図4の一部の拡大図である。
【
図7】
図7は、別の実施形態に係る、
図4の一部分の拡大図である。
【
図8】
図8は、仮想擬人化試験装置を作成し且つ評価するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図7を参照して、擬人化試験装置又は衝突試験用ダミー人形の一部の実施形態を概して参照符号10で示し、ベース部材40に連結された腹部コンポーネント20を含む。実施形態は、ベース部材40に連結され、ベース部材40から延びる弾性フランジ70も含む。本明細書の実施形態では、腹部コンポーネント20、ベース部材40及び弾性フランジ70は、衝突試験用ダミー人形10の腹部及び骨盤領域に概ね対応する位置で衝突試験用ダミー人形10上に配置される。特定の実施態様では、ベース部材40は代替的に骨盤部材とも呼ばれ得る。
【0013】
「擬人化試験装置」又は「衝突試験用ダミー人形」という用語は、本開示で互換的に用いられる。衝突試験用ダミー人形10は、50パーセンタイル男性型(fiftieth percentile male type)であり、座位で示されている。この衝突試験用ダミー人形10は主として前部座席及び後部座席の大人の乗員のための拘束システム及び自動車の車内の性能を試験するために用いられる。衝突試験用ダミー人形10の大きさ及び重さは、ミシガン大学運輸研究所(UMTRI)、米軍身体測定調査(ANSUR)及び米国欧州民間身体計測調査資料(CESAR)により通常別々に行われる身体計測学に基づく。なお、関節可動域、重心及び各部の質量は、身体計測データにより定義される人間の被験者のものをシミュレートする。
【0014】
以下で説明し且つ先に言及した腹部コンポーネント20及びベース部材40並びに弾性フランジ70の実施形態は、主に衝突試験用ダミー人形10の腹部及び骨盤領域におけるそれらの使用に関する。しかしながら、これらのコンポーネントの原理及び連結は、衝突試験用ダミー人形10の様々な他の場所で任意の2つの肉質コンポーネントを互いに連結するために用いることができるため、腹部及び骨盤領域での使用だけに限定されない。しかしながら、以下での説明を簡素にするために、以下の説明では、衝突試験用ダミー人形10の腹部及び骨盤領域でこれらのコンポーネントを用いる場合を参照する。
【0015】
腹部コンポーネント20は、表皮24で覆われたインナーコア発泡体部22を含む。腹部コンポーネント20は、衝突試験用ダミー人形10に構造的完全性を提供するとともに人間の腹部領域の構造及び機能をより厳密にシミュレートする(すなわち、衝突試験において腹部領域のより人間的な応答を提供する)ために支持構造110を含めることができるように中空状になっている。
【0016】
腹部コンポーネント20は上部26を含み、上部26は、リブケージアセンブリ(図示せず)の下と、ベース部材40内に受容されるように構成された下部28との間に位置するように構成されている。
【0017】
腹部コンポーネント20の下部28は第1の部分32及び第2の部分30を含む。ここでは上部バンド領域30として示す第2の部分30は上部26に隣接し、上部26から第1の部分30の方に延びる。第2の部分32の外面31は第1の部分32と上部26との間に画定される長さL1(すなわち、高さL1)を有する。切り欠き37を画定する端部は横方向に延びて、第2の部分30を上部26に接続する。
【0018】
第1の部分32は、第2の部分30から上部26と反対の方向に延び、底部領域34で終了する。第1の部分32の外面33は、第2の部分31の外面31に対して内方に延び、底部領域34で終了する。底部領域34は1つ以上の突出領域35を含み得る。
【0019】
図4で最良の形で示すように、腹部コンポーネント20の第1の部分32の最大幅W1は、第2の部分30の最大幅W2よりも小さい。
【0020】
第1の部分32の最大幅W1は、腹部コンポーネント20の第1の部分32の外面33間の距離測定を意味する一方、第2の部分30の最大幅W2は、腹部部材の任意の1つの断面図に沿った腹部コンポーネント20の第2の部分32の外面31間の距離測定を意味し、幅W1及びW2のそれぞれを画定する線は互いに平行である。腹部コンポーネントの断面図の平面を変更することにより、追加の最大幅W1及びW2を得ることができるのが分かるであろう。腹部コンポーネントの十分に異なる断面図が得られた場合、複数の得られた最大幅W1及びW2は、腹部コンポーネント20の第1の部分32及び第2の部分30のそれぞれのためにそれぞれの円周を画定できる。とりわけ、腹部コンポーネント20の第1の部分32の最大幅W1は第2の部分30の最大幅W2よりも小さいため、腹部コンポーネント20の第1の部分32の対応する円周も、第2の部分30の対応する円周よりも小さい。
【0021】
ベース部材40は、腹部コンポーネント20と同様に表皮44で覆われたインナーコア発泡体部42を含む。表皮44はインナーコア発泡体部42を包み込み得る。そのため、インナーコア発泡体部42を含む発泡体収容空洞部45を画定する。ベース部材40は開いており、開口62を画定し、内側空洞64又は第1の空洞64を画定するベース内面60を含み、内面60は腹部コンポーネント20の第1の部分32の形状に対応する輪郭を有する。そのため、第1の空洞64の底部近くのベース内面62は1つ以上の表面凹部65を含み、1つ以上の表面凹部65のそれぞれは、以下でさらに説明するように、腹部コンポーネント20が第1の空洞64内で受容された場合に1つ以上の突出領域35の対応する1つを受容するように構成されている。
【0022】
第1の空洞64は、人間の脊椎の下部をシミュレートすることを意図した支持構造111(ここでは骨盤支持構造として示す)を含むことを可能にする。支持構造111は、衝突試験用ダミー人形10に構造的完全性を提供するとともに人間の骨盤領域の構造及び機能をより厳密にシミュレートする(すなわち、衝突試験において骨盤領域のより人間的な応答を提供する)ようにも機能する。ある場合において、支持構造111は
図1~
図3に示すように一対の大腿上部支持構造120としてさらなる支持構造120に連結され得る。
【0023】
ベース部材40は骨盤部材として用いられる場合、骨盤領域50と、骨盤領域50から延びる一対の大腿上部領域52、54とを含む。大腿上部領域52、54は、下腿部材(図示せず)を含む衝突テスト用ダミー人形10の脚部に関連する追加の部材を受容するように構成された開口56、58を含み、上述したように、ベース部材40に含まれる構造部材111から延びる追加の構造部材120を収容する。
【0024】
衝突試験用ダミー人形10は、ベース部材40に連結された弾性フランジ70も含む。
図4、
図6及び
図7で最良の形で示すように、弾性フランジ70はフランジ内面72と、反対側のフランジ外面74とを含み、ベース部材40の反対側の弾性フランジ70の周縁部71はフランジ内面72とフランジ外面74とを接続し、フランジ内面72は開口62をさらに画定し、第2の空洞79を追加で画定する。第2の空洞79はベース部材40の第1の空洞64とオープン連通している。フランジ内面72は、腹部コンポーネント20の上部バンド領域30の外面31の大きさ及び形状に概ね対応する大きさ及び形状を有する。フランジ内面72とフランジ外面74との間で測定される弾性フランジ70の厚さ(すなわち、周縁部71の長さ)は、以下でさらに説明するように、弾性フランジ70が腹部コンポーネント20の第2の部分30に対して弾性的に保持されるよう弾性フランジ70に柔軟性を提供するために、概して3~10mm、より好ましくは3~5mmの範囲の大きさと薄い。弾性フランジ70の厚さは切り欠き37の横方向の長さに対応することが好ましい。
【0025】
図4に最良の形で示すように、弾性フランジ70は最大幅W3によって画定することもできる。弾性フランジ70の最大幅W3、好ましくは、フランジ内面72は、腹部コンポーネント20の第2の部分30が第2の空洞79内に収容される前に画定され、それゆえ自然で未延伸状態のフランジ内面72の最大幅を表す。図示のように、本明細書では、弾性フランジ70の最大幅W3は腹部部材20の第2の部分30の最大幅W2よりも小さいが、腹部部材20の第1の部分32の最大幅W1よりも大きい。
【0026】
特定の実施形態では、弾性フランジ70はベース部材40と一体形成されているが、代替的な実施形態では、弾性フランジ70はベース部材40に連結されるか、さもなければ固定又は取り付けられる別個の構造である。腹部コンポーネント20及びベース部材40のように、弾性フランジ70は表皮73を含む。しかしながら、腹部コンポーネント20及びベース部材40とは異なり、弾性フランジ70は表皮73内で収容されるインナーコア発泡体を含まない。表皮73は、以下でさらに説明するように、所望の機能を果たすために所望の可撓性及び/又は弾性及び強度を有する単一の材料又は材料の組み合わせから作られ得る。
【0027】
特定の実施形態では、
図6で最良の形で示すように、弾性フランジ70は、ベース部材40の表皮44から延びるか、さもなければ一体形成され、周縁部71で終了する長さL2を有する。したがって、これらの実施形態では、表皮73はベース部材40の表皮44の延長部(すなわち、一体形成されている)であり得る一方、代替的な実施形態では、表皮73は表皮44に連結されるか、取り付けられるか又はさもなければ固定され、それゆえに表皮44から延びる。
【0028】
ベース部材40から周縁部71までの弾性フランジ70の長さL2は、腹部コンポーネント20の第2の部分30の長さL1と実質的に同様であるか又は同じであることが好ましい。さらに、
図6に示すように、弾性フランジ70の表皮73の厚さは、表皮44の厚さと同じであってもいいし異なっていてもよく、3~10mmの範囲、より好ましくは3~5mmの範囲であり得る。
【0029】
図7に示すような特定の代替的な実施形態では、弾性フランジ70の表皮73はループ構造75を画定し、ループ構造75は、外側ループ部76、内側ループ部78及び外側ループ部76と内側ループ部78を接続する遷移ループ部77を含み、外側ループ部76及び内側ループ部78のそれぞれは、ベース部材40の表皮44に別々に連結されて延びる。
図6のように、外側ループ部76、内側ループ部78及び遷移ループ部77に対応する表皮73の厚さは1.5~10ミリメートル、例えば3~5ミリメートルの範囲であることが好ましい。そのため、外側ループ部76及び内側ループ部78の合計の厚さを含むループ構造75の厚さは好ましくは3~20ミリメートル、より好ましくは3~5ミリメートルの範囲である。ループ構造の厚さは切り欠き37の横方向の長さに対応するか又は代替的に周縁部71の長さに対応することが好ましい。
【0030】
ループ構造75は、外側ループ部76、内側ループ部78及び遷移ループ部77内にあるループ空洞80も画定する。ループ空洞80は発泡体収容空洞45とオープン連通しているが、インナーコア発泡体42を含んでいない(すなわち、インナーコア発泡体42の全体が発泡体収容空洞45内で収容される)。
【0031】
図1及び
図5に示すように、腹部コンポーネント20がベース部材40に連結されている場合、腹部コンポーネント20の第2の部分32は、腹部コンポーネント20の第1の部分32の外面33がベース内面62と係合するよう腹部コンポーネント20が第1の空洞64及び第2の空洞79内に部分的に収容されるように、開口62内に挿入されている。加えて、腹部コンポーネント20の第2の部分30の外面31は弾性フランジ70と直接係合し且つ弾性フランジ70により弾性的に保持される。さらに、周縁部71又は弾性フランジ70は切り欠き37と当接するため、フランジ外面74は上部26の外面に滑らかに遷移する。
【0032】
さらに、突出領域35のそれぞれは、1つ以上の表面凹部65の対応する1つ内に取り付けられる。さらに、腹部コンポーネント内に配置された構造コンポーネント110は、ベース部材40の第1の空洞64に含まれる構造コンポーネント11に連結される。
【0033】
腹部コンポーネント20がベース部材40に連結されると、第1の部分32の最大幅W1は弾性フランジ70の最大幅W3よりも小さいために、腹部コンポーネントの第1の部分32は開口62及び第2の空洞79を通って第1の空洞64内に自由に延びる。腹部コンポーネント20が1つ以上の表面凹部65に近づくと、腹部コンポーネント20の第2の部分30はフランジ内面72に接触し、フランジ内面72に力を加え始めて、表皮73を第2の空洞79から外方に且つフランジ外面74の方に広げる。この力の印加により、弾性フランジ70の幅はその最大幅W3を超え、腹部コンポーネント20の第2の部分30の最大幅W2よりわずかに大きい幅まで増大するため、腹部コンポーネント20の第2の部分30の外面31がフランジ内面72と直接係合するように配置された状態で、腹部コンポーネント20の第2の部分30が第2の空洞79に完全に受容することができる。突出領域35のうちの1つが1つ以上の表面凹部65のうちの対応する1つ内に固定され且つ周縁部71が切り欠き37に当接するように腹部コンポーネントが完全に固定されると、表皮73の弾性は、弾性フランジのフランジ内面72が第2の部分30の外面31と直接係合するように保持する。この直接係合は、ベース部材40を腹部コンポーネント20と連結状態で保持するのに十分に強力である。
【0034】
この構成では、弾性フランジ70は、任意の衝突試験の前に好ましくはベース部材40の空洞64内で第2の部分30の外面31に対して弾性的に保持されることにより腹部コンポーネント20の初期の位置決め及び位置決めの維持を支援する。加えて、弾性フランジ70は、弾性フランジ70が存在しない構成と比べた場合にその弾性保持特性により、衝突試験の間に生じ得る腹部コンポーネント20とベース部材40との間の分離の問題を最小限に抑えるか又は防止するのを支援する。
【0035】
本開示は、コンピュータ1030に含まれるソフトウェアアプリケーションを用いて仮想擬人化試験装置を作成し、作成された擬人化試験装置を仮想衝突試験で評価するためのシステム1000も説明する。擬人化試験装置は、上述した擬人化試験装置10の仮想表現であり、上述した全ての特徴及びコンポーネントを含む。
【0036】
次に
図8を参照して、コンピュータ1030は、少なくとも1つのプロセッサ1032、メモリ1034、大容量記憶メモリデバイス1036、入出力インターフェース1038及びヒューマンマシンインターフェース1040を含み得る。コンピュータ1030は、ネットワーク1013及び/又は入出力インターフェース1038を介して1つ以上の外部リソース1042に連結されるように構成され得る。外部リソースは、限定されないが、サーバ、データベース、大容量記憶装置、周辺装置、クラウドベースのネットワークサービス又はコンピュータ1030によって使用され得る他の任意の適切なコンピューティングリソースを含み得る。
【0037】
プロセッサ1032は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブル論理装置、状態マシン、論理回路、アナログ回路、デジタル回路又はメモリ1034に記憶される動作命令に基づいて信号(アナログ又はデジタル)を操作する他の任意の装置から選択される1つ以上の装置を含み得る。メモリ1034は、限定されないが、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ又は情報を記憶することが可能な他の任意のデバイスを含む単一のメモリデバイス又は複数のメモリデバイスを含み得る。大容量記憶デバイス36は、ハードドライブ、光学ドライブ、テープドライブ、不揮発性固体デバイス又は情報を記憶可能な他の任意のデバイス等のデータ記憶装置を含み得る。データベース1044は大容量記憶メモリデバイス1036上に存在してもよく、本明細書に記載の様々なシステム及びモジュールにより用いられるデータを収集及び整理するために用いられ得る。
【0038】
プロセッサ1032は、メモリ1034内に存在するオペレーティングシステム1046の制御下で動作し得る。オペレーティングシステム1046は、メモリ1034内に存在するアプリケーション1048等の1つ以上のコンピュータソフトウェアアプリケーションとして具現化されたコンピュータプログラムコードが、プロセッサ1032により実行される命令を有するように、コンピュータリソースを管理し得る。代替的な実施形態では、プロセッサ1032はアプリケーション1048を直接実行し得る。その場合、オペレーティングシステム1046は省略され得る。1つ以上のデータ構造1050もメモリ1034内で存在してもよく、データを記憶するために又は操作するためにプロセッサ1032、オペレーティングシステム1046及び/又はアプリケーション1048により用いられ得る。本明細書で提供されるソフトウェアアプリケーション1048は、仮想擬人試験装置10’を作成するソフトウェアアプリケーション及び作成された仮想擬人試験装置10’を仮想衝突試験環境で評価するソフトウェアアプリケーションを含む。
【0039】
入出力インターフェース1038は、プロセッサ1032を、ネットワーク1013及び/又は外部リソース1042等の他の装置及びシステムに動作可能に連結する機械インターフェースを提供し得る。それにより、アプリケーション1048は、本発明の実施形態を含む様々な特徴、機能、アプリケーション、プロセス及び/又はモジュールを提供するために、I/Oインターフェース1038を介して通信することにより、ネットワーク1013及び/又は外部リソース1042と協働し得る。アプリケーション1048は、1つ以上の外部リソース1042により実行されるプログラムコードを有してもよく、そうでなければ、コンピュータ1030の外部の他のシステム又はネットワークコンポーネントによって提供される機能及び/又は信号に依存し得る。実際に、ハードウェア及びソフトウェア構成がほぼ無限に可能であることを考えると、当業者であれば、本発明の実施形態は、コンピュータ1030の外部に位置し、複数のコンピュータ又は他の外部リソース1042の間で分散されたアプリケーション又はクラウドコンピューティングサービス等のネットワーク1013上でサービスとして提供されるコンピューティングリソース(ハードウェア及びソフトウェア)によって提供されるアプリケーションを含み得ることを理解するであろう。
【0040】
HMI1040は、コンピュータ1030のユーザがコンピュータ1030と直接やり取りできるようにするために、既知の方法でコンピュータ1030のプロセッサ1032に動作可能に連結され得る。HMI1040は、ビデオ及び/又は英数字ディスプレイ、タッチスクリーン、スピーカ及びユーザに情報を提供することが可能な任意の他の好適な音声及びビジュアルインジケータを含み得るHMI1040は、ユーザからのコマンド又は入力を受け入れ、入力された入力をプロセッサ1032に送信可能な英数字キーボード、ポインティングデバイス、キーパッド、押しボタン、制御ノブ、マイクロホン等の入力装置及び制御装置も含み得る。
【0041】
本開示は、従来技術の腹部肉質連結デザインに関連する分離の問題に対処し且つ克服し、衝突試験の間にとりわけ腹部領域に関してより人間的な応答を有する新たな肉質連結デザインを有する衝突試験用ダミー人形10を提供する。関連するシステムは、本明細書に開示の衝突試験用ダミー人形10が分離の問題に対処し且つ克服することを確認するために、仮想衝突試験シミュレーションを実行することを可能にする。
【0042】
本開示を例示的に記載してきた。用いられてきた用語は限定ではなく説明の言葉の性質を有するものであることを理解すべきである。
【0043】
本開示の多くの変更及び修正が上記の教示に照らして可能である。したがって、本開示は具体的に記載された以外の方法で実施され得る。