(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】近赤外線遮断用コーティング組成物に含まれるコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 3/12 20060101AFI20221007BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20221007BHJP
B01J 13/12 20060101ALI20221007BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20221007BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20221007BHJP
【FI】
C01G3/12
C09K3/00 105
B01J13/12
B82Y40/00
B82Y30/00
(21)【出願番号】P 2021543105
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 KR2019011974
(87)【国際公開番号】W WO2020071658
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116980
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521133539
【氏名又は名称】アムテ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナムフン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ビョンクォン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0101802(KR,A)
【文献】特開2011-142052(JP,A)
【文献】Aso Navaee et al,Journal of Collid andInterface Science,2017年,505,pp.241-252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 3/12
C09K 3/00
B01J 13/12
B82Y 40/00
B82Y 30/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuSナノ粒子、還元剤及び溶媒の混合溶液を加熱してCu
2-xSナノ粒子を製造するステップと、
Cu
2-xSナノ粒子、酸化剤及び溶媒の混合溶液を加熱してCu
2-xS@Cu
2-yOコア-シェルナノ粒子を製造するステップと、を含むことを特徴とする、コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子は、5nm~200nmの一次粒子サイズを有し、1~2のCu/S元素比を満足することを特徴とする、請求項1に記載のコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元剤は、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジボラン、リチウムボロヒドリド、ナトリウムボロヒドリド、カリウムボロヒドリド、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、ヘキサデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、硫化水素、メルカプトメタン、メルカプトエタン、メルカプトプロパン、メルカプトブタン、メルカプトヘキサン、メルカプトオクタン、メルカプトデカン、メルカプトドデカン、メルカプトヘキサデカン、メルカプトオクタデカン、メルカプトメタノール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトヘキサノール、メルカプトオクタノール、メルカプトデカノール、メルカプトドデカノール、メルカプトヘキサデカノール、メルカプトオクタデカノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプデカン酸、メルカプトドデカン酸、メルカプトドデカン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトメチルアミン、メルカプトエチルアミン、メルカプトプロピルアミン、メルカプトブチルアミン、メルカプトヘキシルアミン、メルカプトオクチルアミン、メルカプトデシルアミン、メルカプトドデシルアミン、メルカプトヘキサデシルアミン、メルカプトオクタデシルアミン、ジメルカプトメタン、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトヘキサン、ジメルカプトオクタン、ジメルカプトデカン、ジメルカプトドデカン、ジメルカプトヘキサデカン、ジメルカプトオクタデカン、システイン、メルカプトピルビン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトマレイン酸、ナトリウム、カリウム、リチウム、金属アマルガム、アスコルビン酸水素、メタン、アンモニア及びカーボンモノオキシド、ナトリウムヒドリド、リチウムヒドリド、カリウムヒドリド、リチウムジイソプロピルアミン、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、並びにリチウムエトキシドよりなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記酸化剤は
、リチウムヒドロキシド、ナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド
、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ヒドロゲンペルサルフェート、リチウムペルサルフェート、ナトリウムペルサルフェート、カリウムペルサルフェート、アンモニウムペルサルフェート、ヒドロゲンペルマンガネート、リチウムペルマンガネート、ナトリウムペルマンガネート、カリウムペルマンガネート、アンモニウムペルマンガネート、ヒドロゲンマンガネート、リチウムマンガネート、ナトリウムマンガネート、カリウムマンガネート、アンモニウムマンガネート、ヒドロゲンジクロメート、リチウムジクロメート、ナトリウムジクロメート、カリウムジクロメート、アンモニウムジクロメート、ヒドロゲンクロメート、リチウムクロメート、ナトリウムクロメート、カリウムクロメート、アンモニウムクロメート、ヒドロゲンペルヨーデート、リチウムペルヨーデート、ナトリウムペルヨーデート、カリウムペルヨーデート、ヒドロゲンヨーデート、リチウムヨーデート、ナトリウムヨーデート、カリウムヨーデート、ヒドロゲンヨーダイト、リチウムヨーダイト、ナトリウムヨーダイト、カリウムヨーダイト、ヒドロゲンハイポヨーダイト、リチウムハイポヨーダイト、ナトリウムハイポヨーダイト、カリウムハイポヨーダイト、ヒドロゲンペルブロメート、リチウムペルブロメート、ナトリウムペルブロメート、カリウムペルブロメート、ヒドロゲンブロメート、リチウムブロメート、ナトリウムブロメート、カリウムブロメート、ヒドロゲンブロマイト、リチウムブロマイト、ナトリウムブロマイト、カリウムブロマイト、ヒドロゲンハイポブロマイト、リチウムハイポブロマイト、ナトリウムハイポブロマイト、カリウムハイポブロマイト、ヒドロゲンペルクロレート、リチウムペルクロレート、ナトリウムペルクロレート、カリウムペルクロレート、ヒドロゲンクロレート、リチウムクロレート、ナトリウムクロレート、カリウムクロレート、ヒドロゲンクロライト、リチウムクロライト、ナトリウムクロライト、カリウムクロライト、ヒドロゲンハイポクロライト、リチウムハイポクロライト、ナトリウムハイポクロライト、カリウムハイポクロライト、酸素、オゾン及び硝酸よりなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、ギ酸、酢酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ピリジン、ヘキセン、シクロヘキセン、オクタン、イソホロン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、カーボンテトラクロリド、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びポリプロピレングリコールよりなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近赤外線遮断用コーティング組成物に含まれる近赤外線遮断機能を有する素材としてのコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子及びその製造方法に係り、より詳細には、従来の硫化銅ナノ粒子の近赤外線遮断機能を維持しながら、水分安定性に優れたコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、建築物の美観、景観及び日照量の確保のためにガラス建具の面積が格段に増え、夏の太陽輻射熱による室内温度の上昇及び冬の暖房効率の低下などといった問題点が発生している。これは、全体建築物のエネルギー損失の60%以上を上回る。
【0003】
従来は、エネルギーの流入及び流出に対応する日除け装置(ブラインド、バーチカル、カーテンなど)が使われたが、使い勝手が悪く、美観上良くないため、使用に消極的になる。しかも、全世界で地球温暖化を解決するために、省エネの重要性が浮き彫りになって環境規制が厳しくなるにつれて、建築物も一層高いレベルの省エネ方案が求められる。
【0004】
このような要求を満たすために、建築用省エネ型高機能性熱遮断フィルムの開発が必要であり、需要が急激に増加するにつれて、市場が大きく発展している。
【0005】
熱遮断フィルムの特性は熱遮断添加剤によって付与され、このような熱遮断添加剤としては様々な物質が使われている。
【0006】
まず、染料(dye)及び有機添加剤は、狭い領域の赤外線吸収及び低い安定性により、使用に制約が多かった。次に、金属薄膜をスパッタリングまたは蒸着によって形成してなる熱反射フィルムを導入したが、優れた赤外線遮蔽性能にも拘らず、低い可視光線透過性、高い単価及び電磁波遮蔽特性などの欠点がある。
【0007】
近年、主に使用される熱遮断添加剤としては、ドーピングされたタングステン酸化物ナノ粒子(例えば、酸化セシウムタングステン(Cesium tungsten oxide))及びドーピングされたスズ酸化物ナノ粒子(例えば、酸化インジウムスズ(Indium tin oxide)、酸化スズアンチモン(Antimony tin oxide))が使われている。前記酸化物ナノ粒子添加剤の場合、高い可視光透過率、高い赤外線遮蔽率、及び高い熱的・化学的安定性により建築用熱遮断フィルムに最も合致する材料であるが、希少元素の含有による高い単価、複雑な合成・焼成工程、及び分酸性などの問題により、これを代替する材料の開発が必要である。
【0008】
そのため、韓国登録特許第1821489号に開示されているように、酸化物ナノ粒子を代替するために、高い可視光透過率及び高い赤外線遮蔽率を有する硫化銅ナノ粒子を用いた近赤外線遮断コーティング組成物が開発されたが、硫化銅の場合、水分との接触時に水分によって硫化銅結晶が分解されて赤外線遮断特性が持続的に維持されないという問題を抱えている。かかる問題により、現在、近赤外線遮蔽剤として商用化されていない状況であり、これにより、より水分に対する抵抗性、すなわち水分安定性に優れた硫化銅素材の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国登録特許第10-0791931号(発明の名称:ジイモニウム塩、及びこれを含む近赤外線吸収フィルム、出願人:エスケイケミカル株式会社、登録日:2007年12月28日)
【文献】韓国登録特許第10-1505418号(発明の名称:近赤外線カット率が向上した透明熱遮断コーティング液組成物、その製造方法、前記組成物を用いて製造された透明熱遮断フィルム及び透明熱遮断ガラス、出願人:株式会社AMTE、登録日:2015年3月18日)
【文献】韓国登録特許第10-1821489号(発明の名称:硫化銅ナノ粒子を含有する近赤外線領域の選択的遮断機能を有するコーティング液組成物、出願人:株式会社AMTE、登録日:2018年1月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、近赤外線遮断用コーティング組成物に、近赤外線遮断機能を有する素材として硫化銅ナノ粒子を還元及び酸化させて、緻密に酸化銅シェルを形成することにより、硫化銅ナノ粒子の優れた可視光透過及び赤外線遮断特性を維持しながらも水分安定性が向上したコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CuSナノ粒子を製造し、製造されたCuSナノ粒子を還元させてCu2-xSナノ粒子を製造した後、これを再び酸化させてCu2-xSの表面を酸化銅に変換する過程を介して、コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子を製造することを特徴とする。前記Cu2-xSの表面が酸化銅に変換される過程で、緻密に酸化銅膜が形成されて、水分との接触時に水分安定性に優れた硫化銅ベースのナノ粒子を製造することを特徴とする。
【0012】
一般的な実施形態によれば、CuSナノ粒子を製造するステップと、前記CuSナノ粒子、還元剤及び溶媒を反応器に添加して加熱の過程を経てCu2-xSナノ粒子を製造するステップと、前記Cu2-xSナノ粒子を精製するステップと、前記精製されたCu2-xSナノ粒子、酸化剤及び溶媒を反応器に添加して加熱の過程を経てCu2-xS@Cu2-yOコア-シェルナノ粒子を製造するステップと、前記Cu2-xS@Cu2-yOコア-シェルナノ粒子を精製するステップと、を含むことにより、コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子が製造されることを特徴とする。
【0013】
前記CuSナノ粒子は、ポリオール溶媒の下で銅前駆体0.1~0.5mol及びチオ尿素0.1~0.5molをポリオールに混合して90~100℃で30~150分間反応することにより製造できる。
【0014】
前記ポリオールとしては、銅化合物の還元機能を有する多価アルコールである。2~6個のOH基を有することが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びフェニルジグリコールのうちの1種以上が使用できる。
【0015】
銅前駆体またはチオ尿素0.1~0.5molは、エチレングリコールまたはジエチレングリコール25~150mlに溶解して使用できる。
【0016】
このとき、銅前駆体とチオ尿素との混合比、反応温度及び反応時間は、前記硫化銅ナノ粒子の製造条件に最適化されたものであって、上記の条件から外れると、近赤外線領域の遮断が上手くできないため、コーティング液組成物の品質が低下するおそれがある。前記銅前駆体としては、銅硝酸塩、銅塩化塩、銅酢酸塩及び銅アルコキシ化物よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とし、好ましくは、銅硝酸塩(Cu-Nitrate)であり得る。したがって、前記硫化銅ナノ粒子は、好ましくは、銅硝酸塩を出発物質としてグリコサーマル(Glyco thermal)法を用いて製造できる。
【0017】
前記硫化銅ナノ粒子は、5nm~200nmの一次粒子サイズを有し、1~2のCu/S元素比を満足する。
【0018】
前記還元剤は、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジボラン、リチウムボロヒドリド、ナトリウムボロヒドリド、カリウムボロヒドリド、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、ヘキサデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、硫化水素、メルカプトメタン、メルカプトエタン、メルカプトプロパン、メルカプトブタン、メルカプトヘキサン、メルカプトオクタン、メルカプトデカン、メルカプトドデカン、メルカプトヘキサデカン、メルカプトオクタデカン、メルカプトメタノール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトヘキサノール、メルカプトオクタノール、メルカプトデカノール、メルカプトドデカノール、メルカプトヘキサデカノール、メルカプトオクタデカノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプデカン酸、メルカプトドデカン酸、メルカプトドデカン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトメチルアミン、メルカプトエチルアミン、メルカプトプロピルアミン、メルカプトブチルアミン、メルカプトヘキシルアミン、メルカプトオクチルアミン、メルカプトデシルアミン、メルカプトドデシルアミン、メルカプトヘキサデシルアミン、メルカプトオクタデシルアミン、ジメルカプトメタン、ジメルカプトエタン、ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトヘキサン、ジメルカプトオクタン、ジメルカプトデカン、ジメルカプトドデカン、ジメルカプトヘキサデカン、ジメルカプトオクタデカン、システイン、メルカプトピルビン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトマレイン酸、ナトリウム、カリウム、リチウム、金属アマルガム、アスコルビン酸水素、メタン、アンモニア及びカーボンモノオキシド、ナトリウムヒドリド、リチウムヒドリド、カリウムヒドリド、リチウムジイソプロピルアミン、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、並びにリチウムエトキシドよりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0019】
前記酸化剤は、ヒドロゲンオキシド、リチウムヒドロキシド、ナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド、ヒドロゲンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ヒドロゲンペルサルフェート、リチウムペルサルフェート、ナトリウムペルサルフェート、カリウムペルサルフェート、アンモニウムペルサルフェート、ヒドロゲンペルマンガネート、リチウムペルマンガネート、ナトリウムペルマンガネート、カリウムペルマンガネート、アンモニウムペルマンガネート、ヒドロゲンマンガネート、リチウムマンガネート、ナトリウムマンガネート、カリウムマンガネート、アンモニウムマンガネート、ヒドロゲンジクロメート、リチウムジクロメート、ナトリウムジクロメート、カリウムジクロメート、アンモニウムジクロメート、ヒドロゲンクロメート、リチウムクロメート、ナトリウムクロメート、カリウムクロメート、アンモニウムクロメート、ヒドロゲンペルヨーデート、リチウムペルヨーデート、ナトリウムペルヨーデート、カリウムペルヨーデート、ヒドロゲンヨーデート、リチウムヨーデート、ナトリウムヨーデート、カリウムヨーデート、ヒドロゲンヨーダイト、リチウムヨーダイト、ナトリウムヨーダイト、カリウムヨーダイト、ヒドロゲンハイポヨーダイト、リチウムハイポヨーダイト、ナトリウムハイポヨーダイト、カリウムハイポヨーダイト、ヒドロゲンペルブロメート、リチウムペルブロメート、ナトリウムペルブロメート、カリウムペルブロメート、ヒドロゲンブロメート、リチウムブロメート、ナトリウムブロメート、カリウムブロメート、ヒドロゲンブロマイト、リチウムブロマイト、ナトリウムブロマイト、カリウムブロマイト、ヒドロゲンハイポブロマイト、リチウムハイポブロマイト、ナトリウムハイポブロマイト、カリウムハイポブロマイト、ヒドロゲンペルクロレート、リチウムペルクロレート、ナトリウムペルクロレート、カリウムペルクロレート、ヒドロゲンクロレート、リチウムクロレート、ナトリウムクロレート、カリウムクロレート、ヒドロゲンクロライト、リチウムクロライト、ナトリウムクロライト、カリウムクロライト、ヒドロゲンハイポクロライト、リチウムハイポクロライト、ナトリウムハイポクロライト、カリウムハイポクロライト、酸素、オゾン及び硝酸よりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0020】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、ギ酸、酢酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ピリジン、ヘキセン、シクロヘキセン、オクタン、イソホロン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、カーボンテトラクロリド、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びポリプロピレングリコールよりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0021】
前記コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子のコアは、化学式1で表示できる。
【0022】
[化学式1]
Cu2-xS
前記化学式1において、0≦x≦1.0を満足する。
【0023】
前記コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子のシェルは、化学式2で表示できる。
【0024】
[化学式2]
Cu2-yO
前記化学式2において、0≦y≦1.0を満足する。
【0025】
前記コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子の遮断波長領域は、600nm乃至2,500nmであり得る。
【0026】
前記コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子を樹脂バインダー及び有機溶媒に混合して近赤外線遮断用コーティング組成物を提供することができる。より具体的には、コア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子100重量部に樹脂バインダー20~800重量部及び有機溶媒100~1000重量部を含むことができる。
【0027】
前記コーティング組成物をPETフィルムに0.1μm~100μmの厚さでコーティングする場合、50%~99%の近赤外線カット率及び30%~95%の可視光線透過率を有し、恒温恒湿(温度:85℃、相対湿度:85%)100時間の条件後にも近赤外線カット率及び可視光線透過率の変化が±3.0%以内を有することを特徴とする。
【0028】
前記樹脂バインダーは、紫外線硬化型樹脂100重量部を基準に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート及びヒドロキシプロピルアクリレートの中から選ばれた1種以上の化合物10~100重量部、及び紫外線による重合を誘導するための光開始剤0.1~20重量部を含むことができる。前記光開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Igacure184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)などを使用することができる。前記樹脂バインダーに紫外線硬化型樹脂と共に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及び光開始剤が含まれる混合比は、コーティング液組成物の物性を維持するために上記の範囲から外れないことが好ましい。
【0029】
前記紫外線硬化性樹脂は、多官能単量体、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、及びウレタンアクリレートよりなる群の中から1種以上が選択できる。
【0030】
前記多官能単量体としては、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート及び1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレートよりなる群の中から1種以上が選択できる。好ましくは、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート及びトリメチレンプロピルトリアクリレートの中から選択されるものを使用することができる。
【0031】
本発明のコーティング液の製造に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコール、エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンの中から選択された1種以上の物質を組成物の溶解度、粘度及びコーティング条件に応じて適宜混合して使用することができる。
【0032】
本発明のコーティング液組成物は、表面のレベリング、スリップ性、防汚性などを改善するためのシリコン系添加剤、フッ素系添加剤、アクリル系添加剤などをさらに含むことができる。
【0033】
別の態様において、本発明は、前記コーティング液組成物を基材フィルムに塗布し、紫外線硬化させて製造された熱遮断フィルムを提供することができる。前記基材フィルムは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)またはポリプロピレンフィルムであることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することができる。こうして製造された熱遮断フィルムは、可視光線透過率に優れるだけでなく、赤外線領域の全領域で均一な熱遮断性能を発現する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、近赤外線遮断フィルムのコーティング素材としてのコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子及びその製造方法は、CuSナノ粒子を還元させてCu2-xSナノ粒子を合成した後、さらに酸化させてCu2-xSの表面を酸化銅に変換する過程を介して緻密に形成された酸化銅膜により、従来の硫化銅ナノ粒子の優れた可視光透過及び赤外線遮断特性を維持しながら、長時間の使用でも水分に対する安定性が向上したコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】近赤外線遮断用コーティング組成物に対する製造工程のフローチャートである。
【
図2】製造例1によって製造されたCuSナノ粒子、実施例1によって製造されたCu
2-xSナノ粒子、及び実施例2によって製造されたCu
2-xS@Cu
2-yOナノ粒子のX線回折(X-ray diffraction;XRD)分析を用いた結晶構造分析結果を示す。
【
図3】実施例2によって製造されたナノ粒子のTEM(transmission electron microscope)イメージを示す。
【
図4】実施例2によって製造されたナノ粒子の凝集した2次粒子のサイズ分布を示す粒度分析結果である。
【
図5】製造例1によって製造されたCuSナノ粒子、実施例1によって製造されたCu
2-xSナノ粒子、及び実施例2によって製造されたCu
2-xS@Cu
2-yOナノ粒子が含まれているコーティングフィルムの初期透過スペクトル、及び恒温恒湿チャンバー(温度:85℃、相対湿度:85%)に100時間保管した後の透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されることもできる。むしろ、ここで紹介される内容が徹底かつ完全となるように、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0037】
<製造例1.CuSナノ粒子の製造>
4M硝酸銅(copper nitrate)エチレングリコール溶液(ethylene glycol)50mlと4Mチオ尿素(thiourea)エチレングリコール溶液50mlとを混合し、100℃で1時間加熱攪拌してCuSナノ粒子を合成した。その後、反応混合物を常温に冷やした後、遠心分離器を用いて反応混合物をエタノールで3回洗浄し、60℃で乾燥させてCuSナノ粒子粉末を製造する。
【0038】
このように製造されたCuSナノ粒子をX線回折(X-ray diffraction;XRD)分析した結果、CuS結晶ピークのみが現れるということを確認した。
【0039】
透過電子顕微鏡(Transmission electron microscope)を介して粒子サイズを測定した結果、1次粒子サイズは5~200nmの範囲を有することが確認された。
【0040】
<実施例1.Cu2-xSナノ粒子の製造>
前記製造例によって作られたCuSナノ粒子粉末10g、アスコルビン酸(ascorbic acid)2g、及びエタノール(ethyl alcohol)88gを250mlの丸底フラスコに仕込み、フラスコ内部の温度を80℃に上昇させた後、12時間攪拌してCu2-xSナノ粒子を合成した。その後、反応混合物を常温に冷やした後、遠心分離器を用いて反応混合物をエタノールで3回洗浄し、60℃で乾燥させてCu2-xSナノ粒子粉末を製造した。
【0041】
このように製造されたCu2-xSナノ粒子をX線回折(X-ray diffraction;XRD)分析した結果、CuS結晶と同じピークが観察されるとともに、Cu1.8S結晶と同じピークも観察されたが、CuSナノ粒子が還元されてCu2-xSナノ粒子が形成されたということを反映している。
【0042】
<実施例2.Cu2-xSナノ粒子からのCu2-xS@Cu2-yOナノ粒子の製造>
前記実施例1によって作られたCu2-xSナノ粒子粉末10g、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)1g、及びエタノール(ethyl alcohol)89gを250mlの丸底フラスコに仕込み、常温で12時間撹拌して、Cu2-xSナノ粒子から製造されたCu2-xS@Cu2-yOナノ粒子を合成した。その後、反応混合物を常温に冷やした後、遠心分離器を用いて反応混合物をエタノールで3回洗浄し、60℃で乾燥させて、Cu2-xSナノ粒子から製造されたCu2-xS@Cu2-yOナノ粒子パウダーを製造した。
【0043】
このように製造されたCu2-xS@Cu2-yOナノ粒子をX線回折(X-ray diffraction;XRD)分析した結果、CuS結晶と同じピークが観察されるとともに、Cu1.8S結晶と同じピークも観察された。また、Cu1.8S結晶のピーク強度が減少するとともに、Cu2O結晶ピークも同時に観察されるが、これはCu1.8Sナノ粒子の表面が酸化されてCu2Oが生成されたということを反映している。
【0044】
<比較例1.CuSナノ粒子から合成されたCuS@Cu2-yOナノ粒子の製造>
前記製造例によって作られたCuSナノ粒子粉末10g、ベンゾイルペルオキシド(benzoyl peroxide)1g、及びエタノール(ethyl alcohol)89gを250mlの丸底フラスコに仕込んだ後、常温で12時間攪拌して、CuSナノ粒子から製造されたCuS@Cu2-yOナノ粒子を合成した。その後、反応混合物を常温に冷やした後、遠心分離器を用いて反応混合物をエタノールで3回洗浄し、60℃で乾燥させて、CuSナノ粒子から製造されたCuS@Cu2-yOナノ粒子パウダーを製造した。
【0045】
製造例1、実施例1、実施例2及び比較例1によって製造した硫化銅ナノ粒子に対してエネルギー分散X線分光器(Energy dispersive X-ray sepctrometer、EDAX)を測定した結果、元素比率は、表1のとおりである。
【0046】
【表1】
表1に示されているように、製造例1で製造されたCuSと比較して、CuSに対して還元反応を行った実施例1の硫化銅の場合は、Cuに対するSの比率が低くなり、酸化反応を行った実施例2の硫化銅の場合は、Cuに対するSの比率が高くなり、酸素比率も高くなったことを確認したように、CuSナノ粒子がCu
2-xSに還元され、酸化反応を介して最終的にCu
2-xS@Cu
2-yOでコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子が製造されたということが分かる。
【0047】
CuSナノ粒子に対して還元反応を行わず、酸化反応のみを行った比較例1の場合は、酸素比率が高くなったという点で、CuS@Cu2-yOでコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子が製造されたということを確認することができる。
【0048】
<実験例1.硫化銅ナノ粒子の透過度及び安定性の特性>
ナノ粒子分散液の製造
製造例1、実施例1、実施例2及び比較例1によって製造したそれぞれの硫化銅ナノ粒子粉末10g、10gのDISPERBYK-116、メチルイソブチルケトン(Methylisobutylketone、MIBK)80g、及びジルコニアボール(zirconia ball、500μm)50gを仕込み、ボールミル(Ball-mill)分散機を用いて14日間分散させる。その後、PPフィルター(300mesh)を用いてジルコニアボールと異物を除去してナノ粒子分散液を製造した。さらに、ナノ粒度分析器(Zetasizer Nano ZS90)を用いて硫化銅ナノ粒子のサイズ分布を確認した。
【0049】
ナノ粒子コーティング液の製造
ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)23.9g、イソボロニル(メタ)アクリレート(IBOA)4.7g、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)60.9g、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5.5gを250mLのフラスコに仕込み、モーター攪拌機で1時間攪拌してバインダーを製造した。製造したバインダーと、前記製造したナノ粒子分散液とを1:2の重量比で混合した。その後、攪拌機を用いて30分間攪拌することにより、ナノ粒子が含まれているコーティング液を製造した。
【0050】
ナノ粒子が含まれているフィルムの製造
PETフィルム(SKC V7610、100μm)上に前記ナノ粒子コーティング液を#5 MAYER Barを用いて塗布した。その後、80℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させた後、400mJ/cm
2強さのUVを照射して、ナノ粒子が含まれているフィルムを製造し、VLT(Visible light transmittance)、IRC(Infrared cut)及びフィルムHazeに対する物性を評価した。また、製造したナノ粒子の安定性を評価するために、恒温恒湿チャンバー(温度:85℃、相対湿度:85%)に100時間保管した後、再評価を行った。その結果を表2及び
図3に示した。
【0051】
【表2】
<物性評価方法>
(1)VLT(Visible light transmittance):コーティングされたフィルムに対して、UV-Vis-NIRスペクトロメーター(Jasco、V670)を用いて、380~780nmの波長帯の透過率の平均値を求めることにより、可視光透過率(%)を求める。
【0052】
(2)IRC(Infrared cut):コーティングされたフィルムに対して、UV-Vis-NIRスペクトロメーター(Jasco、V670)を用いて、780~2,500nmの波長帯の透過率の平均値を求めることにより、赤外線透過率(%)を測定し、これを100(%)から引いた数値で赤外線カット率(%)を求める。
【0053】
(3)Haze:コーティングされたフィルムに対してヘーズメーター(Haze meter)(NDK、NDH-2000N)を用いて測定した。
【0054】
表2の結果を参照すると、可視光線透過率は比較例1のナノ粒子を用いたフィルムが最も高く、近赤外線遮断効果は著しく劣ることが分かった。CuSナノ粒子に対して還元及び酸化工程を経た実施例2は、可視光線透過率が増加し、特に近赤外線カット率が74.34%であって、最も高いカット率を持っていることが分かった。
【0055】
恒温恒湿による安定性評価の結果では、製造例1のCuSナノ粒子を用いたフィルムと、酸化処理された比較例1のCuS@Cu2-yOナノ粒子を用いたフィルムは、可視光線透過率を増加したが、近赤外線遮断効果が著しく減少することが分かった。これに対し、還元処理されたCu2-xS及びCu2-xS@Cu2-yOは、可視光線透過率に対する変化は殆どなく、近赤外線カット率ではむしろ増加することが分かった。つまり、CuSを還元処理してCu2-xSが形成されると、恒温恒湿に対する水分抵抗性が大きくなり、結果として水分安定性も増加させることが分かった。
【0056】
特に、Cu2-xSの表面を酸化銅に変換する過程を介して緻密に形成された酸化銅膜により、従来の硫化銅ナノ粒子の優れた可視光透過及び赤外線遮断特性を維持しながら、水分安定性が向上したコア-シェル構造の硫化銅ナノ粒子を得ることができる。フィルム上の硫化銅ナノ粒子の量とコーティング厚さに応じて可視光線透過率及び近赤外線カット率が変化できるが、最終的に実施例2で製造したCu2-xS@Cu2-yOを用いたフィルムは、最大可視光線透過率が59.28%を示し、最大近赤外線カット率は74.34%を示すことを確認した。特に、Cu2-xS@Cu2-yOナノ粒子の場合、水分安定性に優れるため、恒温恒湿100時間以後も、最大可視光線透過率は58.99%、最大近赤外線カット率は74.51%であって、恒温恒湿実験前とほぼ同じレベルの可視光線透過率と近赤外線カット率を持っていることを示した。
【0057】
以上のように、本発明では、特定された事項と限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。