(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】圧縮によるセパレータ板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0226 20160101AFI20221007BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20221007BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20221007BHJP
B29B 7/82 20060101ALI20221007BHJP
B29B 7/88 20060101ALI20221007BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20221007BHJP
B29C 43/52 20060101ALI20221007BHJP
B29C 43/58 20060101ALI20221007BHJP
B29C 48/355 20190101ALI20221007BHJP
B29C 69/02 20060101ALI20221007BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20221007BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221007BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221007BHJP
【FI】
H01M8/0226
H01M8/0213
H01M8/0221
B29B7/82
B29B7/88
B29C43/34
B29C43/52
B29C43/58
B29C48/355
B29C69/02
C08J3/20 B CER
C08J5/18 CEZ
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022508964
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 DK2020000243
(87)【国際公開番号】W WO2021028000
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522052277
【氏名又は名称】ブルー ワールド テクノロジーズ ホールディング エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】グロマドスキ,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】バン,マッズ
(72)【発明者】
【氏名】アアショルム,ピーター スチオンニン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-024547(JP,A)
【文献】特開2005-088395(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125571(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ板
を製造
する方法であって、
前記方法は、
混合段階(1)において、熱可塑性ポリマー材料と導電性充填剤ECFの粉末とを混合
することと、
続く混練段階(2)において、可鍛性であるが溶融状態でない化合物を生成するために、前記熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より高いが前記熱可塑性ポリマー材料の溶融温度より低い混練温度で前記混合物を混練し、前記混練温度で十分に長い混練時間にわたって前記化合物を混練して、前記熱可塑性ポリマー材料においてフィブリル化を引き起こ
すことと、
前記混練段階(2)に続く予備プレス段階(4、5)において、前記可鍛性化合物を予備プレスしてシートに
することと、
前記予備プレス段階(4、5)の後のホットプレス成形段階(8)において、前記化合物を可鍛性であるが溶融状態ではない状態で圧縮するために前記熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より高いが前記熱可塑性ポリマー材料の溶融温度より低いプレス成形温度で前記シートをプレス型内で熱間圧縮してセパレータ板を形成
することと、
前記プレス型(10)内で圧力下にある間に、前記形成されたセパレータ板の温度を前記熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで下げて硬化固化させ、その後、前記硬化固化したセパレータ板を前記プレス型から取り外す
ことと、
を含
む、方法。
【請求項2】
前記方法は、
少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを選択
することであって、前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーはガラス転移温度および溶融温度を有し、前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度が前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの溶融温度の最低温度よりも低く、前記少なくとも2種のポリマーの少なくとも1種が混練によってフィブリル化可能であ
ることと、
前記混合段階(1)において、前記熱可塑性ポリマー材料を前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの混合物として供給し、前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを前記ECFと混合
することと、
前記混練段階(2)において、可鍛性であるが溶融状態でない化合物を混練するために、前記混合物の温度を前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度よりも高いが前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの溶融温度の最低温度よりも低い混練温度に調整し、前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの少なくとも1種においてフィブリル化を引き起こすために、前記混練温度で十分に長い混練時間の間混練
することと、
前記ホットプレス成形段階(8)において、前記プレス成形温度を前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度よりも高いが前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの最低溶融温度よりも低い温度に調整し、前記プレス型(10)内の圧力下にある間に、前記形成されたセパレータ板の温度を前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最低温度よりも低い温度まで下げて、前記少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの全てを硬化固化させた、その後、前記プレス型から前記硬化固化したセパレータ板を除去する
ことと、
を含む、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記方法は、製造段階の連続シーケンスを含み、前記連続シーケンスは、以下の順序で、
前記化合物
の混練段階(2)、
混練後に前記化合物を押し出す押出段階(3)、
前記押出化合物を予備プレスしてシート(14)にする
ための予備プレス段階(4、5)、
前記シート(14)を前記セパレータ板用の所望の寸法に成形する段階、
前記成形されたシート(14)を前記プレス型(10)へ移動させ、前記ホットプレス成形段階(8)で前記シート(14)を熱間圧縮し、前記セパレータ板に成形した後に前記シートが前記プレス型(10)内に残っている間に前記シートを前記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度より低い温度まで冷却し、その後、前記セパレータ板を前記プレス型(10)から取り外す段階
を含む、請求項1また
は2に記載
の方法。
【請求項4】
前記押出段階(3)は、前記化合物をコンベヤ上に押し出すことを含み、前記予備プレス段階(4、5)は、前記シートを前記コンベヤ上で移動させる間に前記押出化合物を予備プレスしてシート(14)にすることを含み、前記予備プレス段階(4、5)は、(A)前記押出化合物の高さが傾斜上部プレスコンベヤを通る途中で低くなるように、搬送方向に高さが低くなる前記上部プレスコンベヤによって前記押出化合物の高さを低くする第1の圧縮段階(4)、および(B)前記押出化合物の高さがカレンダー加工ステーションの間隙の各々を通過することによって低くなるように、後続の前記カレンダー加工ステーションにおける間隙高さが低くなる複数の後続の前記カレンダー加工ステーションによって前記押出化合物をプレス圧延することを含むカレンダー加工段階(5)のうちの少なくとも1つの段階を含む、請求項3に記載
の方法。
【請求項5】
前記シート(14)を前記セパレータ板用の所望の寸法に成形する段階は
、切断段階で切断することによって、前記シートの縁部から余剰材料の除去を含み、前
記方法は、前記除去された余剰材料を、後続のセパレータ板を製造するために前記混合段階(1)または前記混練段階(2)へ再循環させることを含む、請求項3また
は4に記載
の方法。
【請求項6】
前記混合段階(1)は、乾燥粉末としての前記ECF粉末を熱可塑性ポリマーの乾燥粉末と混合することを含み、前記混練段階(2)は、前記混合された乾燥粉末を前記混練温度で混練して前記化合物にすることを含む、請求項1
~5のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項7】
前記混合段階(1)は、前記ECF粉末を溶媒中の熱可塑性ポリマーの溶液と混合し、前記混合物を前記溶媒の沸点より高い温度まで加熱し、前記溶液を撹拌しながら前記溶媒を蒸発させることを含み、前記混練段階(2)は、前記溶媒の蒸発後に残っている前記混合物を混練して化合物にすることを含む、請求項1
~5のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項8】
前記溶媒は、蒸発中に捕捉され、後続の混合段階(1)のプロセスにおいて再利用される、請求項7に記載
の方法。
【請求項9】
前記混合段階(1)は、前記ECF粉末を前記熱可塑性ポリマーの粉末
の水分散液と混合し、前記混合物を加熱し、前記
水分散液を撹拌しながら水を蒸発させるステップを含み、前記混練段階(2)は、水の蒸発後に残っている前記混合物を混練して化合物にするステップを含む、請求項1
~5のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項10】
前記水は、蒸発中に捕捉され、後続の混合段階(1)のプロセスにおいて再利用される、請求項9に記載
の方法。
【請求項11】
前
記方法は、前記予備プレス段階(4、5)において、前記化合物を予備プレスして2mm未満の厚さのシートにすることを含む、請求項1
~10のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項12】
前記プレス型は、前記シート(14)のための空間を間に有する2枚の対向配置された成形プレス板(13a、13b)を備え、前記方法は、100W/(m・K)を超える熱伝導率を有する前記プレス板を形成し、前記シート(14)のプレス成形中に前記プレス板による熱エネルギーの吸収を引き起こすことを含み、前記熱エネルギーの吸収速度は、プレス成形中に前記セパレータ板をガラス転移温度より低い温度まで冷却し、2秒未満の時間内で前記セパレータ冷却の硬化固化を引き起こす速度に調節される、請求項1
~11のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項13】
前
記方法は、前記ホットプレス成形段階(8)において、75~375MPaの圧力で前記プレス型(10)によって前記シートをプレス成形し、前記プレス型の材料への熱エネルギーの伝達によって前記シートを冷却して、2秒未満の前記プレス型内での時間内に硬化固化を引き起こすことを含む、請求項1
~12のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項14】
前
記方法はイソプロパノールを使用しない、請求項1
~13のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリマー材料は、第1の群TP1の熱可塑性ポリマーおよび第2の群TP2の熱可塑性ポリマーを含む、またはそれらのみから成り、前記第1の群TP1および前記第2の群TP2の両方は、200℃を超える融点を有し、前記第1の群TP1は、100%未満の引張伸びおよび100MPaを超える曲げ強度を有するポリマーを含み、前記第2の群TP2は、少なくとも100%の引張伸びを有し、前記混練温度で混練することによってフィブリル化可能なポリマーを含み、前記化合物は、前記第2の群TP2のポリマーよりも多く前記第1の群TP1のポリマーを含み、前記化合物中のECFの含有量は、前記化合物の重量の60%を超える、請求項2または請求項2に従属する場合の請求項3
~14のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項16】
前記第1の群TP1は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン’(PSU)を含み、前記第2の群TP2は、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項15に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧縮、特に連続プロセスによってセパレータ板を製造する方法に関する。本発明はさらに、プレス型を備えた製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば2枚の単極板(MPP)を組み合わせることによって製造される双極板(BPP)は、単一の膜/電極接合体用のセパレータの役割を果たすので、ある種の燃料電池の重要な構成要素である。また、双極板(BPP)は、スタックの必要とされる電圧を供給するための電気接続において役割を果たす。
【0003】
高温および強酸性の媒体は、腐食する傾向があるため、金属BPPの利用を制限するので、炭素材料(特に、グラファイト)は、金属の代替物として魅力的である。
【0004】
米国特許第6544680号は、炭素およびPPSを含むが熱硬化性樹脂が添加された成形セパレータ板を開示している。米国特許第6803139号は、炭素および熱可塑性物質(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS))を含むが、カルボジイミドが添加された成形セパレータ板を開示している。欧州特許第1758185号は、ホットプレスで硬化される84%炭素、2%PTFE、14%エポキシを含む成形セパレータ板を開示している。熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、またはテフロン(登録商標)とも呼ばれるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられるが、例示されていない。
【0005】
米国エネルギー省(DOE)は、高分子電解質膜燃料電池の構成要素のための2020ターゲットを設定しており、これはインターネットサイトに記載されている。
https://www.energy.gov/eere/fuelcells/doe-technical-targets-polymer-electrolyte-membrane-fuel-cell-components.2020ターゲットは、0.01Ω・cm2未満の比抵抗および25MPaを超える曲げ強度を必要とする。この低抵抗のターゲットを実現するためには、BPP組成物中のグラファイトの量はかなり多く、特に70重量%以上でなければならず、その粒子はポリマーバインダー中に均一に分布していなければならない。これは、例えば、原材料をミクロンまたはサブミクロン寸法まで粉砕し、粉砕された粉末をさらに強力混合することによって実現され得る。
【0006】
粉砕プロセスは、SerEnergy社による国際公開第2018/072803号に開示されており、グラファイトおよびPPSの粉末をBPPに接合するためのPTFEの使用も開示している。本開示において、イソプロパノールは、製造プロセスにおいて界面活性剤として重要な役割を果たす。しかしながら、実際には、イソプロピルアルコールは混合中に水性分散液中のPTFE粒子の凝集を引き起こす可能性があることが判明しており、このことは場合によっては望ましいが、比較的長時間の撹拌を必要とし、これは製造プロセスを長引かせるので、商業的観点から望ましくない。イソプロパノールを使用することは、その引火点がわずか12℃であるので高い引火性を有することから、イソプロパノールを用いた作業が、特に高温での厳しい安全規則および永続的な制御を必要とするという点で、別の不利点を有する。
【0007】
したがって、柔軟な特定材料の成形の利点を維持しながらイソプロパノールの使用を回避することができる、セパレータ板の製造方法を提供することが望ましい。
【0008】
燃料電池を特に車両用の他のエネルギー源と競合させるためには、DOE2020ターゲットに従うコストは3USD/kW未満にしなければならない。燃料電池用セパレータ板の製造コストを低減するためには、製造プロセスの拡大と高速化が極めて重要である。
【0009】
米国特許第7758783号は、セパレータ板を製造するための連続プロセスを開示している。炭素をコンベヤ上に滴下し、その上にポリマーを噴霧し、カレンダー加工プロセスを通してその混合物をプレスして板にする。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0042496号は、ポリマーに充填剤(例えば、グラファイト)をブレンドし、混練し、押し出した後に、型に移し、そこで圧縮して、例えばセパレータ板にする連続プロセスを開示している。
【0011】
米国特許出願公開第2018/358630A1号は、燃料電池用の双極板の圧縮成形を開示しており、導電性組成物が炭素粉末およびポリマー樹脂(例えば、ポリフェニレンPPSおよび/またはPTFE)と共に使用される。欧州特許第1394878(A1)号は、ポリマー樹脂と炭素と充填剤とのブレンド物から成形された燃料電池セパレータを開示している。国際公開第2019/039214(A1)号は、多孔質シートを含浸させることによって得られる燃料電池セパレータを開示している。国際公開第2018/179633(A1)号は、油圧成形プレスシステムを開示している。米国特許出願公開第2013/216744(A1)号は、プラスチック結合繊維層のためのプレス成形システムを開示している。
【0012】
特にプロトン交換膜(PEM)燃料電池については、2つの主要なコスト要因、すなわち、白金含有電極および双極板(BPP)がある。USA DOEの2020プログラムに設定されたターゲットの範囲内になるように製造コストを低減することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、当該技術分野における改良を提供することである。特に、セパレータ板(特に、BPP)を製造する方法を改良することが目的である。具体的な目的は、イソプロパノールを含まない製造方法、連続製造、高速製造、廃棄物の出ない製造の中にある。これらの目的の1つまたは複数は、例えば燃料電池用の以下に説明されるようなセパレータ板の製造方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
セパレータ板の製造方法は、熱可塑性ポリマー材料と導電性充填剤(ECF)の粉末とを混合して、セパレータ板用の配合ポリマーマトリックス(例えば、MPPまたはBPP)を生成するための混合段階を含む。
【0015】
そのようなECFの例は、非晶質炭素、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび/またはグラファイトである。例えば、ECFは主要濃度のグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含む。典型的には、カーボンブラック粉末中の粒子の粒径はサブミクロン範囲であり、例えば20~100nmの平均粒径を有する。グラファイト粉末の場合、平均粒径は0.1~20ミクロンの範囲であるが、典型的には0.25~5ミクロンの範囲である。カーボンブラックが使用される場合、任意に、炭素繊維、カーボンナノチューブおよび/またはグラフェン(典型的には、少量)が添加される。このことにより、セパレータ板(特に、MPPまたはBPP)の導電率がさらに高まる。
【0016】
後続の混練段階では、可鍛性であるが溶融状態でない化合物を生成するために、熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より高いが熱可塑性ポリマー材料の溶融温度より低い混練温度で混合物を混練する。混合物から得られた化合物は、熱可塑性ポリマー材料においてフィブリル化を生じさせるために十分長い混練時間、混練温度で混練される。フィブリル化は本発明の有用な態様である。
【0017】
任意に、熱可塑性ポリマー材料は少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの混合物であり、これらは混合段階でECFと混合され、次いで混練段階で混練される。
【0018】
具体的な実施形態では、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーは、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度が少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの溶融温度の最低温度よりも低くなるように選択される。混練段階では、混合物の温度は、可鍛性であるが溶融状態でない化合物を混練するために、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度よりも高いが少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの溶融温度の最低温度よりも低い混練温度に調整される。したがって、全てのポリマーが混練段階で適切に可鍛性を有するためには、それらのガラス転移温度より高く、それらの溶融温度より低い混練温度に保たれなければならない。
【0019】
さらに、少なくとも1種のポリマーが適切なフィブリル化が可能でなければならない場合に有用であり、混合物は、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの少なくとも1種においてフィブリル化を生じさせるために、混練温度で十分に長い混練時間にわたって混練されなければならない。
【0020】
例えば、以下でより詳細に説明するように、ポリフェニレンサルファイド(PPS)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合物の混練は、PTFEの実質的なフィブリル化のみをもたらし、これは、これら2種のポリマー間の非常に異なる物理的特性に起因する。しかしながら、2種のポリマーの各々は、以下でより明らかになるその有利な特定の特性によって役割を果たす。
【0021】
混練段階では、化合物はまだセパレータ板用の量に分割されておらず、まだシートの形状に形成されていないが、バルクとして残っている。混練段階から、化合物は、典型的にはセパレータ板製造のための部分が抽出され、その後、適切な形状に形成される。例えば、任意に、押出化合物を次の製造段階へ搬送するためのコンベヤ上に、混練化合物を押し出すことによって、抽出が行われる。
【0022】
混練段階の後、後続の予備プレス段階において、可鍛性で柔軟な化合物が予備プレスされてシートにされる。任意に、予備プレス段階は、混練された化合物の高さが上部プレスコンベヤを通る途中で低くなるように、搬送方向に高さが低くなる上部プレスコンヤによって、化合物(例えば、押出化合物)の高さを低くする第1の圧縮段階を含む。代替的に、または追加的に、予備プレス段階は、押出混合物の高さがカレンダー加工ステーションの間隙の各々を通過することによって低くなるように、これらの後続のカレンダー加工ステーションにおける間隙高さが低くなる複数の後続のカレンダー加工ステーションによって、化合物(例えば、押出化合物)をプレス圧延するステップを含むカレンダー加工段階を含む。
【0023】
任意に、セパレータ板用の所望の寸法へのシートの成形は、例えば切断による、シートの縁部からの余剰材料の除去を含む。有利には、該方法は、さらに続いて製造されるセパレータ板を製造するために、除去された余剰材料を混合段階または混練段階へ再循環させるステップを含む。このようにして、余剰材料は無駄にならない。
【0024】
予備プレス段階の後、シートをプレス成形段階に供し、化合物を可鍛性であるが溶融状態ではない状態で圧縮するために熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より高いが熱可塑性ポリマー材料の溶融温度より低いプレス成形温度でシートをプレス型内で熱間圧縮してセパレータ板を形成する。次に、プレス型内で圧力下にある間に、形成されたセパレータ板の温度を熱可塑性ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで下げて硬化固化させ、その後、硬化固化したセパレータ板をプレス型から取り外す。
【0025】
熱可塑性ポリマー材料が少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含む特定の実施形態では、プレス成形温度は、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最高温度より高いが少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの溶融温度の最低温度よりも低くなるように調整される。したがって、全てのポリマーは、可鍛性を有するようにそれらの様々なガラス転移温度より高く、それらの様々な溶融温度より低い混練温度に保たれる。次に、プレス型内で圧力下にある間に、形成されたセパレータ板の温度を少なくとも2種の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度の最低温度より低い温度まで下げて、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーの全てを硬化固化させ、その後、硬化固化したセパレータ板をプレス型から取り外す。
【0026】
任意に、ホットプレス成形段階において、シートは、75~375MPaの圧力でプレス型によってプレスされる。
【0027】
例えば、プレス型は、間にシートのための空間を有する2枚の対向配置された成形プレス板を備える。プレス型が化合物から熱を吸収する能力に優れている場合、熱エネルギーの吸収速度は、プレス成形中にプレス成形されたセパレータ板をガラス転移温度より低い温度まで冷却し、非常に短い時間内(例えば、5秒未満、任意に2秒未満または1秒未満)での冷却によりセパレータを硬化固化させる速度に調節され得る。任意に、プレス板は、100W/(m・K)を超える熱伝導率を有し、シートのプレス成形中にプレス板によって熱エネルギーを効率的に吸収する。
【0028】
任意に、2枚のプレス板は、プレス板のリムが支持フレームの内壁に当接するように、支持フレームによって支持され囲まれる。有利には、プレス板が支持フレームに当接している支持フレームの内壁は、プレス板よりも低い硬度の材料で作製される。利点は、成形プロセス中に、またその後に、プレス板が成形プロセス後にプレス成形されたセパレータ板を取り出すために分解されるときに、プレス板と支持フレームとの相互の引っ掻きを最小限に抑えることである。
【0029】
一実施形態では、プレス板は、プレス板よりも大きな体積および質量を有するカウンターブロックに対する力によって圧縮されるように配置される。任意に、プレス型は、プレス板およびシートへの過負荷を防止し、高速プレス成形にもかかわらずシートをMPPへと徐々に成形することを可能にするために、一対の成形プレス板とカウンターブロックとの間に、ばねなどの弾性要素を備える。
【0030】
様々な段階ならびにプレス型を用いた製造方法および記載されている製造設備は、燃料電池、特にプロトン交換膜(PEM)燃料電池、例えば高温プロトン交換膜(HT-PEM)燃料電池におけるセパレータに有用である。高温PEM燃料電池は、低温PEM燃料電池と比較して大きな利点を有し、すなわち、内部の一酸化炭素への耐性が高いことから、不純な水素(例えば、改質ガス)を用いて動作が可能である。しかし、燃料電池内部の濃酸媒体と組み合わせた比較的高い加工温度(120~200℃)は、粉末化またはペレット化された導電性充填剤(ECF)を結合するために、不活性で熱的に安定なポリマーを使用する必要性をもたらす。
【0031】
例えば、熱可塑性ポリマー材料は、第1の群TP1の熱可塑性ポリマーおよび第2の群TP2の熱可塑性ポリマーを含む、またはそれらから成る。2つの異なる群からポリマーを選択することによって、とりわけ、構造的安定性、靭性、および化学的不活性に関連する物理的パラメータを調整して、セパレータ板用の最適な熱可塑性ポリマー材料を生成することができる。2つの好適な群の特徴を以下でより詳細に説明する。
【0032】
例えば、第1の群TP1の熱可塑性ポリマーは、主に構造的安定性を生み出すために使用され、第2の群TP2の熱可塑性ポリマーは、主に破断を防止するための靭性のために使用される。複合材料の靭性を生み出すために、第2の群から選択されたポリマーは、混練によってフィブリル化可能でなければならない。
【0033】
以下でより明らかになるように、群TP1が100%未満の引張伸びを有し、TP2が少なくとも100%の引張伸びを有する熱可塑性ポリマーの組み合わせが有用であることが確認された。
【0034】
TP1およびTP2のポリマー(単数または複数)間の比率は、最適化のために調整される。いくつかの実施形態において、化合物は、TP2のポリマーよりも多くTP1のポリマーを含む。
【0035】
最終的なセパレータ板がHT-PEM燃料電池に使用される場合、群TP1およびTP2の両方は、200℃を超える融点を有さなければならない
【0036】
さらに、セパレータ板の良好な構造的安定性を提供するために、第1の種類TP1が100MPaよりも高い曲げ強度を有する場合に、有利である。
【0037】
電気抵抗が低いという理由から、ECFの濃度は比較的高い濃度、例えば60重量%以上、例えば70重量%以上でなければならない。
【0038】
BPPのための特定の基準は、USA DOEの2020ターゲットによって与えられ、BPPは、0.01Ω・cm2未満の比抵抗および25MPaを超える曲げ強度を有さなければならないが、3USD/kW未満の生産コストの基準も満たさなければならないことを意味する。これらの要件は、低コストで製造される低電気抵抗および高強度が課題であるため、バインダーとしてのポリマーの注意深い選択および製造プロセスの改良を必要とする。
【0039】
さらに、特にHT-PEM燃料電池に関して、ポリマーの選択基準は、熱可塑性であることは別として、熱安定性だけでなく、化学抵抗性および良好な曲げ強度である。
【0040】
熱可塑性ポリマーとして非常に有用な候補は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。しかしながら、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)は有用な代替ポリマーである。これらのポリマーは、第1の群のポリマーTP1(群1の熱可塑性ポリマーの略)に属する。群TP1のポリマーは、高い熱安定性、化学抵抗性 および良好な曲げ強度を有する。
【0041】
この群TP1の有利な特徴を以下に挙げる。
-200℃より高い溶融温度
-少なくとも120℃の連続使用温度
-1.5g/cm3未満の比重
-100%未満、例えば最大80%または最大50%の引張伸び
-100MPaより高い曲げ強度
-2%未満の収縮率
【0042】
これらの中で、製造のための最も重要な特徴は、高い曲げ強度であり、HT-PEM燃料電池に使用する場合には、さらに比較的高い連続使用温度である。
【0043】
一例として、PPSは、200℃未満の温度でいかなる溶媒にも溶解せず、結晶化度および分子量に依存する271~292℃の範囲の高い融点を有するため、セパレータ板(特に、MPPおよびBPP)用の有利なバインダーである。その融点は、HT-PEM燃料電池の動作温度よりも著しく高い(120℃~200℃)。
【0044】
しかしながら、いくつかの重要な物理的特性をまとめた以下の表1から明らかなように、群TP1のこれらのポリマーは、比較的低い引張伸びを有する。
【表1】
【0045】
低い引張伸びは、材料が比較的脆性であることを意味するので、不利であり得る。しかしながら、破断のリスクが最小限に抑えられることが一般に望ましい。これは、特に薄いセパレータ板にとって重要な課題である。破断のリスクを低減するために、実行可能な技術的解決策を見出すことが望ましい。
【0046】
表1のポリマーの物理的特性を考慮すると、より高い引張伸びを有する候補、すなわち、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。以下では、第2の群のポリマーを定義し、これらのポリマーが属する群2の熱可塑性ポリマーを略してTP2とする。群TP2のポリマーは比較的高い引張伸びを有し、特に混練によってフィブリル化され得る。
【0047】
この群TP2の有利な特徴を以下に挙げる。
-200℃より高い溶融温度
-少なくとも120℃の連続使用温度
-100%より高い引張伸び、例えば100%~300%または200%~300%の範囲
-混練によるフィブリル化の傾向
【0048】
これらの中で、製造のための最も重要な特徴は、比較的高い引張伸びおよび混練によるフィブリル化能力である。100%~300%の範囲の引張伸びは、PPSの4%よりも何倍も大きい。
【0049】
さらに、TP2のガラス転移温度は、TP1のポリマーと組み合わせて使用される場合、TP1のポリマーの溶融温度よりも低い温度でなければならない。
【0050】
上記の表1には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)も記載されている。このポリマーは175℃の融点を有し、これは最大200℃の温度で動作するHT-PEM燃料電池にはあまり有用ではない。この理由から、これはHT-PEM燃料電池用の適切な候補とはならなかった。
【0051】
混合物中で両方の群TP1およびTP2のポリマーを使用することは、それらの個々の有用な特性が組み合わせられ得るので、利点を生み出す。一例として、PPSとPTFEとの混合物は、導電性フィラーの複合バインダーとして使用され得る。特に、PTFEは、その高い分解温度(410℃)、不活性、および低摩擦係数、高強度、靭性ならびに自己潤滑性を含む他の固有の特性により、PPSと組み合わせた場合に他の熱可塑性バインダーよりも非常に有利である。
【0052】
PPSとPTFEとの混合物の利点は、先行技術(例えば上述したSerEnergy社による国際公開第2018/072803号)において認められている。しかしながら、US DOE2020ターゲットを達成するためには、特に、改良された物理的特性および製造コストに関して、さらなる改良が必要である。
【0053】
さらなる改良を実現するために、群TP2は、フィブリル化され得るポリマーを含むように選択された。フィブリル化は、フィブリルの生成により材料の靭性を向上させる。ポリマー中にフィブリルが生成されるフィブリル化プロセスの説明については、米国特許出願公開第2017/099826号明細書を参照されたい。
【0054】
上述したTP1のポリマー(特に、PPS)は、引張伸びが小さく、そのため、低コストのセパレータ板の製造におけるフィブリル化には適していないことが強調されている。
【0055】
製造について、以下の大まかな製造段階をより詳細に説明する。
・TP1/TP2/ECFの混合手順
・予備成形手順
・プレス成形手順
【0056】
最適に組み合わされた製造段階ではあるが、手順段階の各々は、それぞれ単独でも有益であり、先行技術における他の製造方法と組み合わせることができる。例えば、以下では、プレス型およびプレス成形手順が、急速冷却を用いて説明されているが、これは、他の製造方法(本明細書で言及されているとは限らない)にも有用である。
【0057】
任意に、導電性であるセパレータ板の場合、材料は、
・少なくとも60%の炭素粉末(例えば、少なくとも70%)、
・10~20%のポリフェニレンサルファイド (PPS)、および
・0.05~18%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、0.05~1%、任意に0.05~0.5%(区間の端点を除く)、例えば、0.05%~0.4%)を含有する粉末のブレンドを含む。ここで、全てのパーセンテージは、化合物の総重量の総和の重量のパーセンテージである。
【0058】
いくつかの実施形態では、製造は、製造段階の連続シーケンスを含み、連続シーケンスは、以下の順序で、以下の段階を含む。
・化合物の混練段階
・混練後に化合物を押し出す押出段階
・押出化合物を予備プレスしてシートにする予備プレス段階
・シートをセパレータ板用の所望の寸法に成形する段階
・成形されたシートをプレス型へ移動させ、ホットプレス成形段階でシートを熱間圧縮し、セパレータ板に成形した後のシートがプレス型内に残っている間にシートを熱可塑性ポリマーのガラス温度より低い温度まで冷却し、その後、セパレータ板をプレス型から取り外す段階
【0059】
いくつかの実施形態では、押出段階は、化合物をコンベヤ上に押し出すステップを含み、予備プレス段階は、シートをコンベヤ上で移動させる間に押出化合物を予備プレスしてシートにすることを含む。
【0060】
任意に、予備プレス段階は、押出混合物の高さが上部プレスコンベヤを通る途中で低くなるように、搬送方向に高さが低くなる傾斜上部プレスコンベヤによって、押出混合物の高さを低くする第1の圧縮段階を含む。代替的に、または追加的に、予備プレス段階は、押出混合物の高さがカレンダー加工ステーションの間隙の各々を通過することによって低くなるように、後続のカレンダー加工ステーションにおける間隙高さが低くなる複数の後続のカレンダー加工ステーションによって、押出混合物をプレス圧延するころを含むカレンダー加工段階を含む。
【0061】
任意に、セパレータ板用の所望の寸法へのシートの成形は、例えば切断による、シートの縁部からの余剰材料の除去を含む。有利には、該方法は、後続のセパレータ板を製造するために、除去された余剰材料を混合段階または混練段階へ再循環させることを含む。このようにして、材料は無駄にならない。
【0062】
既に述べたように、原材料はディスペンサから供給され、ミキサー内で、典型的には撹拌によって混合される。このプロセスのために、異なる可能性が存在する。混合手順の非限定的な例は、以下のA、BおよびCに示す通りである。
【0063】
(A)導電性充填剤(ECF)の乾燥粉末を熱可塑性ポリマー(例えば、群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび群TP2の第2の熱可塑性ポリマー)の乾燥粉末と混合する。その後、混練段階は、混合された乾燥粉末を混練温度で混練して化合物にすることを含む。
【0064】
(B)導電性充填剤(ECF)の粉末を熱可塑性ポリマー(例えば、群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび群TP2の第2の熱可塑性ポリマー)の溶液と混合し、混合物を溶媒の沸点より高い温度まで加熱して、溶液を撹拌しながら溶媒を蒸発させる。混練段階は、溶媒の蒸発後に残りの混合物を混練して化合物にすることを含む。任意に、溶媒は蒸発中に捕捉され、後続の混合段階のプロセスにおいて再利用される。
【0065】
(C)導電性充填剤(ECF)の粉末を熱可塑性ポリマー(例えば、群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび群TP2の第2の熱可塑性ポリマー)を含有する水性分散液と混合し、混合物を水の沸点より高い温度まで加熱して、分散液を撹拌しながら水を蒸発させる。混練段階は、水の蒸発後および分散液中の他の任意の液体(例えば界面活性剤)の蒸発後に、残りの混合物を混練して化合物にすることを含む。任意に、水は蒸発中に捕捉され、後続の混合段階のプロセスにおいて再利用される。例えば、ある量の脱イオン水が、典型的には、重量で測定したときに粉末よりも重い重量の水と共に、例えば、粉末の重量に対して1.5:1の質量比で供給される。
【0066】
任意に、これらの手順の原理を組み合わせることができる。例えば、TP2の水性分散液をECF/TP1の乾燥粉末と混合する。
【0067】
プロセスBについては、熱可塑性ポリマーを溶解するために種々の溶媒が利用可能である。特にPPSを溶解するための例示的な溶媒は、1-ベンゾイルナフタレン、1-ベンゾイル-4-ピペリドン、1-ベンジル-2-ピロリジノン、1-シクロへキシル-2-ピロリジノン、1,1-ジフェニルアセトン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジベンゾイルベンゼン、1,3-ジフェニルアセトン、1,3-ジフェノキシベンゼン、4-アセチルビフェニル、2-ビフェニルカルボン酸、4-ビフェニルカルボン酸、1,2,3-トリフェニルベンゼン、1,3,5-トリフェニルベンゼン、1,3-ジフェニルアセトン、1,4-ジベンゾイルブタン、1-ベンジル-2-ピロリジノン、1-ブロモナフタレン、1-クロロナフタレン、1-シクロへキシル-2-ピロリジノン、1-エトキシナフタレン、1-メトキシナフタレン、1-メチル-2-ピロリジノン、2-メトキシナフタレン、1-フェニルデカン、1-フェニルナフタレン、フェニル-2-ピロリジノン、2,4,6-トリクロロフェノール、2,5-ジフェニルオキサゾール、2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール、1,8-ジクロロアントラキノン、2,6-ジメトキシナフタレン、2,6-ジフェニルフェノール、2,7-ジメトキシナフタレン、2-ベンゾイルナフタレン、2-メトキシナフタレン、フェノキシビフェニル、2-フェニルフェノール、3-フェノキシベンジルアルコール、4,4’-ジブロモビフェニル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4-ベンゾイルビフェニル、4-ブロモビフェニル、4-ブロモジ-フェニルエーテル、4-フェニルフェノール、5-クロロ-2-ベンゾオキサゾロン、9-フェニルアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,9’-ビフルオレン、9-フルオレノン、アントラセン、ベンゾフェノン、ベンジル、ビベンジル、ビス(4- クロロフェニル スルホン)、ブチルステアレート、シクロへキシルフェニルケトン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾイルメタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルカーボネート、クロロリン酸ジフェニル、リン酸ジフェニルメチル、フタル酸ジフェニル、ジフェニルスルホン、硫化ジフェニル、ジフェニルスルホキシド、2,5-ジフェニルオキサゾール、ジフェン酸、ドコサン、ドトリアコンタン、ε-カプロラクタム、フルオランテン、フルオレン、HB-40(商標)、ヘキサデカン、m-テルフェニル、ミリスチン酸メチル、ステアリン酸メチル、鉱油、N,N-ジフェニルホルムアミド、o,o’-ビフェノール、o-テルフェニル、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、フェナントレン、フェノチアジン、安息香酸フェニル、ポリリン酸、ピレン、p-テルフェニル、Santowax R(商標)、スルホラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラフェニルエチレン、テトラフェニルメタン、テトラフェニルシラン、Therminol 66(商標)、Therminol 75(商標)、チアントレン、トリフェニレン、トリフェニルメタン、トリフェニルメタノール、リン酸トリフェニルである。
【0068】
例として、PTFE用の特に有用な溶媒は、デカフルオロビフェニル、オクタフルオロナフタレン、パーフルオロテトラデカヒドロフェナントレン、パーフルオロエイコサン、パーフルオロペルヒドロベンジルナフタレン、パーフルオロテトラコサン、パーフルオロ-1-メチルデカリン、PP11、C14F24オリゴマーである。
【0069】
手順(B)におけるこれらのポリマーの溶解は、比較的高い温度(例えば,1-メチル-2-ピロリジノン中のPPSについて203℃を必要とし得ることに留意されたい。それに対して、上記の手順(A)および(C)は、室温で行うことができる点で有利である。比較すると、混合手順(C)は、手順(A)と比較して別の利点、すなわち乾燥粉末ECF間のポリマー粒子の分布の改善を有する。
【0070】
プレス型内におけるセパレータ板の構造化は、流れパターン(例えば、水素燃料、酸素含有ガス、または冷却剤(例えば、水、トリエチレングリコール(TEG)、もしくはシリコーン油のような冷却液)の流れのためのチャネルの潜在的な形成を含む。
【0071】
成形後、典型的には、セパレータ板の機械加工によるさらなる構造化は必要ない。
【0072】
例えば、該方法は、双極板の両側に流路パターンを有する双極板へとシートを成形することを含む。あるいは、MPPが製造され、そのMPPのうちの2枚が背中合わせに組み合わされて単一のBPPになる。
【0073】
任意に、セパレータ板は、セパレータ板間に燃料電池膜を有するアレイとして配置され、膜は水素燃料を酸素ガスから分離する。
【0074】
この製造方法は、例えば2枚のMPPを組み合わせることによって得られるBPPに適しているだけではない。この製造方法は、陰極板、陽極板および冷却板のような他のセパレータ板にも同様に適用される。
【0075】
本発明は、燃料電池、特に高温プロトン交換膜(HT-PEM)燃料電池に特に有用であるが、他の電気化学的エネルギー貯蔵変換装置、例えば電池、二重層コンデンサまたは電解槽にも使用することができる。
【0076】
本発明の利点は、以下のいくつかの利点を含む。
・粘性であるが溶融状態ではない状態でガラス転移温度より高い温度での混練によるポリマーのフィブリル化
・PTFEに対するカレンダー加工の影響
・連続製造プロセス
・再利用プロセス
【0077】
国際公開第2018/072803号は、可能な組成物として炭素/PTFE/PSSを開示していることが指摘されている。しかしながら、そこに記載されているように、粉末スラッジは圧縮され、最初に混練されない。特に、PTFEのフィブリル化は、国際公開第2018/072803号には取り上げられていない。
【0078】
いくつかの態様では、セパレータ板の製造方法は、粉末状の導電性充填剤ECFを第1の熱可塑性ポリマーおよび第2の熱可塑性ポリマーと混合することであって、第1の熱可塑性ポリマーは、100%未満、たとえば4~100%の範囲の引張伸びを有し、第2の熱可塑性ポリマーは、300%を超える、たとえば100%~300%の範囲の引張伸びを有する、混合することと、第2の群TP2のポリマーのガラス転移温度より高いが溶融温度より低い温度で混合物を混練し、混練によって第2の群TP2のポリマーをフィブリル化させることとを含む。
【0079】
濃度および量について記載されている全ての百分率は、重量百分率(wt%)であることが指摘されている。
【0080】
図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図3】PTFE含有量に依存するセパレータ板の面積比抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
双極板(BPP)は、Vstack=V1+V2+...+Vn-1+Vn(
図1にも示されている)のように、スタックの必要な電圧を供給するために直列に電気接続する単一の膜/電極接合体用のセパレータの役割を果たすので、燃料電池の重要な構成要素の1つである。
【0083】
水素を含有する燃料が陽極燃料入口から供給され、酸素が陰極燃料入口から供給される。水素および酸素は結合して水となり、陰極燃料出口から吐出されるが、残りの水素は、例えば、改質プロセスのためのエネルギーを供給するために改質器と組み合わせて使用されるバーナーで使用するために、陽極燃料出口から除去される。
【0084】
図2は、2種のポリマーが化合物中のECFとしての炭素と組み合わされる場合のセパレータ板(例えば、MPPまたはBPP)の連続製造方法を例示している。しかしながら、記載されている方法は3種以上のポリマーに一般化することができ、その原理は等しく良好に適用される。
【0085】
特に、ポリマーTP1およびTP2の2つの群が示されており、2種のポリマーの組み合わせの第1のポリマーは群TP1から選択され、第2のポリマーはTP2から選択される。TP1の群は、高度の熱安定性、化学抵抗性および良好な曲げ強度を有するポリマーである。例としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)が挙げられる。TP2の群は、比較的高い引張伸びを有し、有利には、特に混練によってフィブリル化され得るポリマーである。例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0086】
プロセスの混合段階1において、原材料は、ディスペンサ0から供給され、ミキサー内で、典型的には撹拌によって混合される。このプロセスのために、異なる可能性が存在する。混合手順の非限定的な例は、以下の通りである。
(A)導電性充填剤(ECF)の粉末を第1の群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび第2の群TP2の第2の熱可塑性ポリマーの粉末と混合する
(B)導電性充填剤(ECF)の粉末を第1の群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび第2の群TP2の第2の熱可塑性ポリマーの溶液と混合する
(C)導電性充填剤(ECF)の粉末を第1の群TP1の第1の熱可塑性ポリマーおよび第2の群TP2の第2の熱可塑性ポリマーを含有する分散液と混合する
任意に、手順を組み合わせることができる。
【0087】
手順(B)は、導電性充填剤(ECF)の粉末を第1の群TP1の第1の熱可塑性ポリマーの溶液および第2の群TP2の第2の熱可塑性ポリマーの粉末と混合する手順(B1)で置き換えることができ、または手順(B)は、導電性充填剤(ECF)の粉末を第1の群TP1の第1の熱可塑性ポリマーの粉末および第2の群TP2の第2の熱可塑性ポリマーの溶液と混合する手順(B2)で置き換えることができることに留意されたい。
【0088】
本明細書に記載されている異なる方法(A)、(B)、および(C)は、比較した場合に異なる利点および不利点を有し、このことについて以下でより詳細に説明する。
【0089】
ECFの例は、非晶質炭素、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび/またはグラファイトである。例えば、ECFは主要濃度のグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含む。典型的には、カーボンブラック粉末中の粒子の粒径はサブミクロン範囲であり、例えば20~100nmの平均粒径を有する。グラファイト粉末の場合、平均粒径は0.1~20ミクロンの範囲であるが、典型的には0.25~5ミクロンの範囲である。カーボンブラックが使用される場合、任意に、炭素繊維、カーボンナノチューブまたはグラフェン(典型的には、少量)が添加される。
【0090】
手順(B)におけるこれらのポリマーの溶解は、比較的高い温度を必要とすることに留意されたい。それに対して、上記の手順(A)および(C)は、室温で行うことができる点で有利である。
【0091】
水中に分散された粒子を用いる手順Cについて、有用な製品の例としては、Toray社製のPPSの10重量%水性分散液およびDupont社製のPTFEの60重量%水性分散液が挙げられる。これらの製品の詳細は、インターネット上に挙げられている。
https://www.toray.jp/chemical/en/polymer/pdf/catalog_pol01en.pdf
http://www2.dupont.com/Teflon_Industrial/en_US/assets/downloads/kl5764.pdf
【0092】
手順(C)において、水は、TP1および/またはTP2の群のポリマー(任意に、サブミクロンサイズのポリマー)をECFの表面に供給するための送達剤として作用する。有利には、湿潤剤としての役割を果たす界面活性剤は、これらの種類の分散液に添加され、ポリマーナノ粒子がECFのポアおよびクラックにより深く浸透するのを助けるためのブリッジとしての役割を果たす。
【0093】
界面活性剤の例は、Dow Chemicals(登録商標)社製のTergitol(商標)15-Sシリーズ、Croda International(登録商標)社製のTween(登録商標)シリーズ、Union Carbide Corporation(登録商標)社製のTriton(登録商標)Xシリーズである。Triton(登録商標)XシリーズのTriton(登録商標)X-100(商標)は非イオン性であり、親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素親油性または疎水性基を有する。炭化水素基は、4-フェニル基である。化学式は、C14H22O(C2H4O)n(n=9~10)である。これは、Sigma Aldrich(登録商標)社から市販されている。
【0094】
手順(C)の分散液中の水の含有量を減らすために、温度を水の沸点まで上昇させながら、分散液を混合段階1で撹拌する。蒸発した水は、その後タンクに集められて冷却され、次のバッチの後続の攪拌プロセスで再び使用される。水は必要とされる純度のために無視できないコストを伴うので、蒸留水の回収および再利用は、水を廃棄して新しい水を供給するのと比較してコストを低減する。
【0095】
混合物から蒸発した液体を回収することは、TP1および/またはTP2を溶解するために溶媒が使用される方法Bでは、より重要である。この場合、溶媒の供給は大きなコストを意味する。さらに、溶媒の回収および再利用は環境に優しい。方法(B)の利点は、溶解したポリマーが、溶解したTCP1および/またはTCP2と接触した場合に、ポアおよびクラックにさらに深く浸透することである。欠点は、ECF/TP1/TP2混合物の溶解およびECF/TP1/TP2混合物からの溶媒の除去のために比較的高い温度を使用する必要があることである。さらに、これらの溶媒のいくつかは毒性があり、大量生産を複雑にし得る。
【0096】
しかしながら、先行技術の方法と一般的に比較すると、手順(B)においてこれらの高沸点溶媒を用いて操作するのに必要な温度は、セパレータ板用の剥離グラファイトの連続製造において適用される温度、すなわち700~1050℃よりも大幅に低いことを指摘したい。
【0097】
高沸点溶媒の使用は方法(B)において可能であるが、方法(C)における脱イオン水を用いた操作が典型的に好ましい。
【0098】
撹拌容器内での撹拌段階1の後、ECF/TP1/TP2混合物は、混練容器内での高温混練の混練段階2に供される。この混練操作の目的は、群TP2のポリマーのフィブリル化である。フィブリル化を達成するためには、温度は群TP2のポリマーのガラス転移温度より高い温度でなければならない。温度の上昇は、TP1またはTP2のポリマーのうちの一方のポリマーの融点に達するまでプラス効果を有する。なぜなら、溶融状態のポリマーは非常に急速に流動するからである。これは、製造されたBPPの面積比抵抗を増加させるので、あまり有用でないことが分かった。
【0099】
混練は、ポリマーに実質的なフィブリル化を引き起こすのに十分な長さの時間で行われる。時間は混練プロセスに依存する。典型的な混練時間は、1~60分の範囲である。
【0100】
PTFEの例では、粘性状態にあるPTFEのガラス転移温度に到達するために、温度は130℃よりも高くしなければならない。グラファイト/PPS/PTFE化合物の場合、温度は、PPSの溶融温度(274℃)より低い温度でなければならない。
【0101】
混練段階2において加熱ECF/TP1/TP2化合物(例えば、グラファイト/PPS/PTFE化合物)を混練した後、化合物は押出段階3に供され、ここで押出機から柔軟で可鍛性の材料として押し出される。化合物は押出ノズルを通過して、例えば矩形断面を有する押出化合物ロッドを形成する。有利には、これは比較的高速で、例えば0.1~1m/秒の範囲、例えば0.25m/秒の速度で行われる。
【0102】
押し出されたロッドは、コンベヤベルト上で第1の圧縮段階4へと搬送される。このような第1の圧縮段階4は、ロッドの高さが圧縮段階4を通る途中に低くなるように、搬送方向に高さが低くなる傾斜上部プレスコンベヤとして例示される。この単一操作を使用して、ロッドの高さを迅速に低くする同時に、幅を広くすることができる。
【0103】
任意に、必要とされる最終厚さを有する比較的薄いシートを形成するために、後続のカレンダー加工ステーションにおいて間隙高さが低くなるカレンダー加工ステーションによるカレンダー加工段階5が追加される。有利には、シートへと変形されたときのロッドの厚さは、2mm未満、任意に1mm未満に減少する。例えば、カレンダーロール間の間隙は、各ステーションの後のECP/TP1/TP2化合物の高さを50%低くする。このような幅減少カレンダー加工ステーションの数は、ロッドの初期厚さおよびシートの最終厚さ(任意に1mm未満であり、10分の数mm程度に薄くされ得る)に依存する。このカレンダー加工段階5の間に、例えばPTFEにおいて、ナノフィブリル形成がさらに促進される。PPSについては、既に上述したように、フィブリル化は生じていない。
【0104】
上記で概説したように、TP2に対するTP1のパラメータおよび特性の差により、化合物中の相対濃度は異なり、典型的にはTP2よりもTP1の方が高い。
【0105】
PTFEの上限として有用な一例は18重量%であり、これは面積比抵抗についてのUSA DOEの2020ターゲットに相当する。これは
図3に示されており、
図3は、BPPの組成物におけるPTFE含有量に依存する電気的特性の依存性を示す。
【0106】
PTFE濃度はさらに、DOEターゲットを念頭に置くと、BPP厚さに影響を及ぼす。例えば、目標値に達するために、BPPの厚さは、PTFE含有量の増加に伴って減少し、すなわち、0.05重量%のPTFEを有するBPPの0.84mmから、18重量%のPTFEを有するBPPの0.18mmまで減少する。これらの実施例では、PPS含有量は20重量%のレベルに固定されている。
【0107】
実際の事例では、PTFE含有量は、典型的には18重量%よりはるかに低く、例えば0.5重量%より低い。TP2のポリマー(例えば、PTFE)の添加は可塑性を高め、この点は有利であるが、より低い導電率をもたらすという不利点を意味する。例えば、2つの群のポリマー間の重量比TP1:TP2は20より大きく、場合によっては最大400である(これは、PPS:PTFEが20:0.05重量%の場合である)。このような化合物混合物の一例は、ECFとは別に、20重量%のPPSと0.05重量%のPTFEである。この場合の炭素含有量は、ほぼ80%である。しかしながら、混合物はさらに界面活性剤を含有してもよく、炭素含有量はそれに応じて低くなる。
【0108】
典型的には、化合物中の炭素含有量は、適切な所望の導電率にするためには70%超である。
【0109】
図2を参照すると、ECF/TP1/TP2フィルムの温度は、段階6において、例えば、コンベヤ表面の温度を調整し、コンベヤ表面とシートとの間に確実に熱伝導が生じるようにすることによって調整される。
【0110】
その後、シートは、対応するステーションで必要な寸法に切り取られ、例えば、切断ステーション7において、典型的にはナイフによって切断される。任意に、切れ端は、製造プロセスにおいて再利用するために、段階2において容器に戻される。この場合、出発材料の使用に関する収率は、100%に非常に近くなり得る。
【0111】
プレス成形段階8では、熱間圧縮または圧縮成形がプレス型内で行われる。例えば、PPSがTP1のポリマーとして使用される場合、段階8のプレス型内での熱間圧縮は、220℃~274℃の初期温度で行われる。有用な印加圧力は75~375MPaであるが、特により高い温度、例えば最高400℃の温度では、より低くなり得る。熱間圧縮の利点は、短いプレス成形時間(任意に、1秒未満)である。
【0112】
例えば、熱間圧縮または圧縮成形中に、プレスされた材料の密度は2倍以上増加する。
【0113】
オプションとして、プレス成形段階8で使用されるプレス型は、セパレータ板を冷却するためにも使用される。この場合、プレス成形による成形は、シート内のポリマーのガラス転移温度(一例として、PPSの場合、85℃)に達する前に完了すべきであるため、セパレータ板を成形するのに利用可能な時間は、シートを冷却する速度によって制限される。迅速なプレス成形手順は、化合物中の1つまたは複数種のポリマーのガラス転移温度に達する前に、製品をプレスしてその所望の最終形状にすることができるという点で有益である。
【0114】
加えて、プレス成形中のシートの迅速な冷却は、一般に、製造プロセスを高速化するという利点を有する。高速熱間圧縮または圧縮成形すると同時に形成されたシートを短時間で冷却するのを実現するために、プレス型の材料は、熱を吸収して、その結果プレスされたMPPをできるだけ速く冷却するために高い熱伝導率を備えている。そのような材料の例は、モリブデン、タングステン、および2024-T351、7075-T651のようないくつかのアルミニウム合金を有する材料であり、それぞれ143W/(m・K)、197W/(m・K)、121W/(m・K)、および130W/(m・K)の熱伝導率を有する。
【0115】
プレス成形段階8用のプレス型10の一例が
図4に示されている。ポリマーシート14(例えば、MPP)は、カウンターブロック15に対して力11によって圧縮される成形プレス板13a、13bの間に挿入される。2枚のプレス板13a、13bは支持フレーム12によって支持されている。オプションとして、プレス板13a、13bおよびシート14への過負荷を防止し、高速プレス成形にもかかわらずMPPへのシート14の漸次成形を可能にするために、ばねなどの弾性要素16が成形板13a、13bとカウンターブロック15との間に設けられる。
【0116】
製造されたMPPは、プレス成形動作中にプレス型10の壁を覆う。プレス成形段階8におけるプレスプロセスの前の連続プロセスの予備成形セクション4、5における炭素含有シートの厚さの減少は、滑らかな連続プロセスを確実にし、シートおよびプレス型への損傷(プレス型の内側部分の引っ掻き傷を含む)のリスクを最小限に抑える。
【0117】
プレス板13a、13bおよび支持フレーム12の様々な構成要素に対して異なる硬度を有する材料を使用することが有利であることが分かっている。特に、プレス板13a、13bと比較して、支持フレーム12に対してより低い硬度を使用することが有利であることが分かっている。
【0118】
硬度が異なることの利点は、支持フレーム12のプレス板13a、13bが作用接触している間に、プレス板13a、13bの引っ掻きを最小限に抑えることである。これに関連して、セパレータ板14が正確な寸法および形状を実現するためには、プレス板13a、13bが高剛性で安定している必要があることが指摘されている。このような理由で、プレス板13a、13bは硬質材料で作製される必要がある。また、プレス型10から材料が漏れ出るのを防止するために、プレス板13a、13bは、支持フレーム12の内壁17にしっかりと当接する必要がある。この緊密な当接は、支持フレーム12の内壁17の引っ掻きのリスクがあることを意味する。プレス板13a、13bと支持フレーム12と硬度が異なる場合、プレス板13a、13bのリムと周囲の支持フレーム12との間に表面の引っ掻きが生じるリスクが最小限に抑えられることが分かっている。しかしながら、プレス板13a、13bは高い硬度を有する必要があるので、硬度の差は、最も有利には、プレス板よりも低い硬度を有する支持フレーム12を用いて、または支持フレーム12の少なくとも内壁17について低い硬度を有する(この場合、プレス板13a、13bが内壁17に当接している)ことによって、実現される。
【0119】
プレス板13a、13b用、および任意でカウンターブロック15用の材料の有用な例は、モリブデン、タングステン、および2024-T351、7075-T651のようないくつかのアルミニウム合金であり、ブリネル法に従って、それぞれ225、294、120、150の硬度を有する。支持フレーム12用の有用な材料は、より軟質の材料、例えばブリネル硬さが166の青銅、 または、ブリネル硬さがそれよりもずっと低い95である他のアルミニウム合金(6061-T651、2011-T3)である。
【0120】
製造速度を上げるためには、圧力を加える前のシートの時間も最小限に抑えなければならない。このような理由で 、シート材料(特に、EDF/TP1/TP2フィルム)は、コンベヤ上を高速で移動しなければならない。ポリマーの熱損失を最小限に抑えるために、コンベヤのローラの材料は低い熱伝導率を有さなければならない。このような理由から、ポリマーローラが有利であることが分かっている。ローラの材料の有用な一例は、0.25W/(m・K)の熱伝導率を有するPEEKである。
【0121】
ポリマーローラの使用はまた、従来の金属ローラと比較して別の利点、すなわち、特に高温での高い固着防止特性を有する。例えば、PEEKは、260℃という比較的高い連続使用温度を有し、PSS/PTFEの化合物の好適な候補となる。
【0122】
この製造方法がMPPを製造するために使用される場合、MPPは、例えば
図2に示されるように容器9内に収集される。
【0123】
BPPが最終製品として所望される場合、その段階から、MPPは、BPPになる対接合体に使用され得る。典型的な接合方法は、2枚のMPPの周囲を背中合わせに当接した状態で接着するステップを含む。PEM BPPに利用される接着剤の要件は、MPP化合物に使用されるポリマーに非常に類似しており、すなわち、高温PEM燃料セルの加工温度範囲内での機械的、熱的および化学的安定性である。本明細書に記載されるプロセスによってBPPを形成することにより、ガス流路およびポートホールを1回のランで形成することが可能であり、その結果、フライス加工のような追加の操作が必要でないことが言及されるべきである。
【0124】
グラファイト/PPS/PTFE化合物をベースとするECF/TP1/TP2シートおよびBPPのいくつかの機械的特性および電気的特性を表2に示す。この表に示したデータは、20重量%のPPSおよび0.05重量%のPTFEを有するグラファイト含有シートから得られたものである。水性PTFE分散液を乾燥粉末グラファイト/PPS混合物に添加することによって化合物を混合した。このようなポリマー組成物を用いて、275±25MPaの圧力を加え、265±5℃を初期温度としてBPPを形成した。表2から明らかなように、質量密度は圧縮によって2~3倍増加したが、厚さは1/2~1/3に減少した。曲げ強度は、DOE2020ターゲットの要件内である。
【0125】
【0126】
結論として、提示されている製造方法は、高温PEM燃料電池での使用に好適なセパレータ板(特に、BPP)の製造のための高速、連続的、かつ廃棄物の出ない方法を意味する。
【0127】
先行技術に対するこのプロセスの主な利点は以下の通りである。
1)切断段階後に欠陥部分または切れ端を有するECF/TP1/TP2シートを再使用することができる。
2)製造には易燃性物質(特に、イソプロパノール)を使用せず、製造には水または高沸点溶媒のみを使用する。
3)イソプロパノールの回避は、ポリマーナノ粒子の凝集のリスクを最小限に抑え、ひいては、化合物内部に粒子をより良好に分布させる。
4)配合されたフィルムおよび/またはシートを液体から濾過し真空乾燥する追加の段階を有する必要がない。
5)ポリマーロールの使用による熱損失を最小限に抑え、TP1およびTP2のポリマーの融点より低い温度での操作による粘着問題を最小限に抑えることにより、非常に高速の製造が実現される。
6)約40%の高い気孔率のために温度および湿度に関する特別要件を有する部屋を必要とするシートの長期保存を回避するのに役立つ連続プロセスである。
7)シートがカレンダー加工されるときと同じ温度でプレス型へと搬送されるので、2%に達し得るシートの収縮に関する問題を最小限に抑える。
8)プレス型の特別な設計ならびにMPP用のブランクとしての薄い予備圧縮されたグラファイト系シートの利用、およびシートの組成物における非粘着性添加剤(TP2としてPTFE)の使用により、非常に短時間の熱間圧縮または圧縮成形が実現される。