(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】Ac-225溶液の製造方法およびAc-225溶液を用いた医薬の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
G21G4/08 G
(21)【出願番号】P 2022539057
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2022000116
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021002437
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療研究開発革新基盤創成事業」「セラノスティクス概念を具現化するための創薬拠点整備を伴う、抗体等標識治療薬(アルファ線)とコンパニオン診断薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 芳雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 潤
(72)【発明者】
【氏名】市川 浩章
(72)【発明者】
【氏名】今井 智之
(72)【発明者】
【氏名】永津 弘太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527731(JP,A)
【文献】特表2017-538780(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
226Raターゲットに、陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種の粒子を照射して、少なくとも
225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する工程(I)と、
前記工程(I)後の
226Raターゲットを溶解して、
226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)と、
前記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、
226Raターゲット由来の
226RaとAcとを分離して、前記Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度が高められたAc溶液(2)を得る工程(III)と、
前記Ac溶液(2)に含まれる
225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る工程(IV)と、
前記Ra-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、前記Ra-Ac溶液(3)と比べて
225Ac濃度が高められたAc溶液(4)を得る工程(V)と、
を含み
、
前記工程(I)の終了後、前記工程(III)を開始するまでの時間をT1とし、
前記工程(III)の終了後、前記工程(V)を開始するまでの時間をT2とした場合、
T2>T1の関係を満たす、
225Ac溶液の製造方法。
【請求項2】
前記Ac溶液(4)中の、
225Ac量に対する
140La量の比(
140La量/
225Ac量)が、前記工程(V)終了から7日後の時点で1×10
-5以下である、請求項
1に記載の
225Ac溶液の製造方法。
【請求項3】
前記T1が7日間より短い時間である、請求項
1または2に記載の
225Ac溶液の製造方法。
【請求項4】
前記工程(III)または前記工程(V)において、Raを捕捉する固相抽出剤を用いるか、Acをコロイド化させることを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の
225Ac溶液の製造方法。
【請求項5】
前記固相抽出剤が、陽イオン交換樹脂、下記式(A)で表される化合物を含む固相抽出剤(a)、下記式(B)で表される化合物を含む固相抽出剤(b)、および、下記式(C)で表される化合物を含む固相抽出剤(c)から選ばれる少なくとも1種である、請求項
4に記載の
225Ac溶液の製造方法。
【化1】
[式(A)中、mおよびnはそれぞれ独立して、0または1であり、R
1~R
4はそれぞれ独立して、炭素数8~12のアルキル基である。]
【化2】
[式(B)中、R
5およびR
6はそれぞれ独立して、炭素数8のアルキル基または炭素数8のアルコキシ基である。]
【化3】
[式(C)中、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。]
【請求項6】
前記Ac溶液(4)が、225Acと錯形成したキレート剤とターゲティング剤との複合体を有効成分として含有する医薬を製造するために用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の225Ac溶液の製造方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の製造方法によって得られた
225Ac溶液を用いて、前記キレート剤を
225Acと錯形成させる工程(VIa)を含む、前記医薬の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は225Ac溶液の製造方法または該溶液を用いた医薬の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学の分野では、放射線同位元素(RI)を含む薬剤を腫瘍などの病巣に選択的に取り込ませて治療するRI内用療法が行われている。放射線の中でもアルファ線は、飛程が短いため、周囲の正常な細胞に対する不要な被曝の影響が小さいという特徴を有する。アルファ線放出核種の一つである225Acは、半減期が10日間の放射性核種であり、近年、癌治療等における治療用核種として期待されている。
【0003】
225Acは、例えば、加速器を用いて226Raターゲットに陽子などの粒子を照射することで、(p,2n)の核反応により製造される。特許文献1には、粒子照射後の226Raターゲットを溶解して得られる、226Raイオンおよび225Acイオンを含有する溶液から225Ac成分を分離して精製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
225Acの生成と同時に得られるアクチニウムの放射性同位体として、224Ac(半減期2.9日)および226Ac(半減期29時間)が挙げられる。224Acおよび226Acは、半減期が225Acよりも短いことから、一定期間静置して、224Acおよび226Acをアクチニウム以外の金属異核種に壊変した後に、225Acと226Raとを分離することが行われてきた。しかしながら、この方法においては、226Raの核分裂で生じる生成物を考慮できていないことに本発明者らは気づいた。
【0006】
225Ac生成時に、226Raの核分裂により140Baが生成する。140Baは半減期12.75日で140Laに壊変するため、224Acや226Acを壊変させるための期間を置くと、その間に140Laが生成してしまう。140Laと225Acとは同様の挙動を示すため、これらを分離することは困難であり、品質の観点から懸念が生じることが分かった。
【0007】
140Laは、半減期が1.7日のため、壊変により消滅させることも考えられるが、140Baの共存下では、放射平衡により140Laの半減期も140Baと同じになるため、140Laを壊変により消滅させようとすると、結局、224Acや226Acが壊変するより長い静置期間が必要となり、225Acが損失するという問題があることが分かった。
【0008】
本発明の一態様は、225Acの減衰を抑えつつ、225Ac濃度の高い225Ac溶液を製造する方法を提供する。
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、下記構成例によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一態様は、226Raターゲットに、陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種の粒子を照射して、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する工程(I)と、
上記工程(I)後の226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)と、
上記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度(特に純度)が高められたAc溶液(2)を得る工程(III)と、
上記Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る工程(IV)と、
上記Ra-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(3)と比べて225Ac濃度(特に純度)が高められたAc溶液(4)を得る工程(V)と、
を含み、
上記Ac溶液(4)が、下記(a)または(b)に示す医薬を製造するために用いられる、225Ac溶液の製造方法である。
(a)225Acと錯形成したキレート剤とNd2抗体との複合体を有効成分として含有する医薬
(b)225Acと錯形成したキレート剤とターゲティング剤(ただし、Nd2抗体を除く)との複合体を有効成分として含有する医薬
【0011】
また、本発明の他の一態様は、上記工程(I)~上記工程(V)を行って得られた225Ac溶液を用いて、上記キレート剤を225Acと錯形成させる工程(VIa)を含む、上記医薬の製造方法である。
【0012】
本発明の一態様によれば、225Acの減衰を抑えつつ、225Ac濃度(特に純度)の高い225Ac溶液を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】種々の
225Ac試料のγスペクトルである。
図2の(a)は、実施例2における、EOBから4日後の
225Ac生成物(一次分離)のγスペクトルであり、
図2の(b)は、実施例2における、EOBから20日後の
225Ac生成物(二次分離)のγスペクトルであり、
図2の(c)は、市販の標準
225Ac(生成器製造)のγスペクトルである。
【
図3】Alディスク上で乾燥した
225Ac(0.37~1.85kBq)のアリコートを被覆なしで測定した、
225Ac生成物のαスペクトルである。
図3の(a)は、実施例2における、EOBから19日後の精製
225Ac生成物のαスペクトルであり、
図3の(b)は、市販の標準
225Acのαスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[225Ac溶液の製造方法]
本発明の一態様に係る225Ac溶液の製造方法(以下「本製造方法」ともいう。)は、226Raターゲットに、陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種の粒子を照射して、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する工程(I)と、
工程(I)後の226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)と、
Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度(特に純度)が高められたAc溶液(2)を得る工程(III)と、
Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る工程(IV)と、
Ra-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、Ra-Ac溶液(3)と比べて225Ac濃度(特に純度)が高められたAc溶液(4)を得る工程(V)と、
を含み、
Ac溶液(4)が、下記(a)または(b)に示す医薬を製造するために用いられる、225Ac溶液の製造方法である。
(a)225Acと錯形成したキレート剤とNd2抗体との複合体を有効成分として含有する医薬
(b)225Acと錯形成したキレート剤とターゲティング剤(ただし、Nd2抗体を除く)との複合体を有効成分として含有する医薬
【0015】
なお、本明細書では、例えば、質量数225のアクチニウムを規定したい場合には225Acと記載し、アクチニウムの放射性同位体等を特に限定しない場合にはAcと記載する。ラジウム等についても同様である。
【0016】
<工程(I)>
工程(I)では、226Raターゲットに、陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種の粒子を照射して、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する。226Raターゲットに粒子を照射することにより、場合により壊変等を経てAcが生成する。
少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)としては、225Acと、224Acおよび226Acから選ばれる少なくとも1種とが挙げられる。
【0017】
226Raターゲットとしては226Raが含まれていれば特に制限されないが、226Raが基材に固定化されていることが好ましい。
226Raターゲットの作製方法の一例として、炭化ケイ素(SiC)フィルター上に、226RaCO3を析出・濾別することで、一定の厚みを有するRaターゲットを作製する方法が挙げられるが、遠隔操作においても効率よくRaターゲットを作製できる観点からは、溶液中の遊離Raを電気的に基材に固体化する電着法が好ましい。該電着法として、例えば、特表2007-508531号公報には、アルミニウム基板に、ラジウムイオンを含有する1つの有機水溶液からラジウム含有物質を電着することが記載されているが、高電圧を印加しなくても電着効率を高めるという観点では、pH緩衝剤を含む電着液を用いて基材に電着させる方法がより好ましい。このような技術として、本出願人の一人が出願した国際公開第2020/256066号が挙げられる。
【0018】
上記照射の際には、具体的には、サイクロトロンや線形加速器等の加速器、好ましくはサイクロトロンを用いて粒子を加速し、その加速した粒子を226Raターゲットに照射することが好ましい。
粒子としては、陽子、重陽子または光子が好ましく、陽子がより好ましい。例えば、粒子として陽子を照射した場合は、226Ra(p,2n)225Acの核反応が生じ、224Acおよび/または226Acが不純物として生成する。また、粒子として光子(γ線)を照射した場合は、226Ra(γ,n)225Raの核反応が生じ、225Raが壊変することで225Acが生成する。粒子として、陽子、重陽子または光子を用いると、227Ac(半減期27年)は、理論上は生成しないため、225Ac濃度(特に純度)の高い225Ac溶液を得る観点で、より好ましい。
粒子を照射する際の条件としては、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)が生成するように、粒子の種類、エネルギー、照射時間などを適宜調節すれば特に制限されず、種々の条件を採用することができる。
【0019】
225Acと粒子とが核反応をするとき、通常、副反応として、226Raの核分裂が生じ、140Baが生成する。
また、226Raターゲットの原料には、226Raの他にBaが含まれていることが通常であり、特許文献1のように226RaとBaとを分離する技術が開発されているが、226RaターゲットからBaを完全に除去することは難しいため、226RaターゲットにBaが含まれていると、上記粒子のうち陽子を使用した場合は、Baと陽子との核反応により132La(半減期4.8時間)や135La(半減期19.5時間)が生成する。
本発明の一態様では、後述する各工程において、これら放射性異核種を順次除去する。
【0020】
<工程(II)>
工程(II)では、工程(I)後の226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る。
工程(I)の終了後、あまり時間を経ずに得られたRa-Ac溶液(1)には、例えば、224Ac、225Ac、226Ac、226Ra、140Ba、132La、135Laが含まれる。
【0021】
226Raターゲットを溶解する際には、酸を用いればよい。該酸は、1種でも、2種以上でもよい。
上記酸としては、例えば、無機酸が挙げられ、該無機酸としては、硝酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸またはフッ化水素酸が挙げられる。これらの中でも、226RaおよびAcを十分に溶解させることができ、下記工程(III)を効率よく行うことができる等の点から、硝酸、塩酸が好ましく、硝酸が特に好ましい。
【0022】
226Raターゲットを溶解するためには、226Raのモル量に対し、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上であり、好ましくは50倍以下、より好ましくは40倍以下のモル量の酸が使用される。
【0023】
<工程(III)>
工程(III)では、上記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度(特に純度)が高められたAc溶液(2)を得る。
この工程(III)により、例えば、224Ac、225Ac、226Acを含むAc溶液(2)と、226Ra、140Baを含むRa溶液(2)とを得ることができる。工程(III)では、例えば、224Ac、225Ac、226Ac、226Raおよび140Baを含むRa-Ac溶液(1)から、226Ra、140Baを分離除去することができるため、Ac溶液(2)は、Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度(特に純度)が高められた溶液となる。
【0024】
工程(I)の終了後、工程(III)を開始するまでの時間をT1とした場合、該T1はできるだけ短いことが好ましく、該T1の下限は工程(II)を実施可能な時間であればよく、該T1は、好ましくは7日間より短い時間であり、より好ましくは5日以下である。
T1を上記範囲とすることで、Acと140Baとを早期に分離することができるため、140Baの壊変により生じる140Laの少ないAc溶液(2)を容易に得ることができる。
また、T1を上記範囲とすることで、得られるRa溶液(2)を早期に再利用することができる。
【0025】
226Raターゲットから生成される225Acは微量であり、226Raの大部分が未反応のまま残るが、226Raは貴重な核種であること、また、廃棄は容易ではないことから、Ra溶液(2)は、回収して再利用することが好ましい。Ra溶液(2)は、例えば、必要により精製工程等を経た後、226Raターゲットを製造するための電着液等として再利用される。このような技術として、本出願人の一人が出願した国際公開第2021/002275号が挙げられる。
【0026】
なお、従来の方法では、この工程(III)を行う際には、226Ac量を十分に減衰させておく必要があるため、Ra-Ac溶液(1)中の226Ac量が十分に減衰した後、RaとAcとを分離すると、得られるAc画分には、相当量の140Laが含まれ、この140La量を減衰させるためにさらに多くの時間を要していた。
このように多くの時間を要すると、時間の経過とともに目的とする225Ac量が減衰するため、従来の方法では、225Acの減衰を抑えつつ、225Ac濃度(特に純度)の高い225Ac溶液を製造すること、また、140La量が少ないことと、225Ac濃度(特に純度)が高いことを両立した225Ac溶液を製造することは容易ではなかった。
また、上記の通り、大部分の226Raは225Acに変換されずに、226Raとして残存するため、残存した226Raを効率的に回収し、225Acの原料として再利用することが行われているが、従来の方法では、226Ac量が十分に減衰するための時間を経るまで226Raを再利用できなかった。
しかしながら、本製造方法では、225Ac濃度(特に純度)の高い225Ac溶液を容易に得ることができ、かつ、工程(III)の実施後に、すぐに226Raを再利用できるので、226Raの利用効率を高めることができる。
【0027】
工程(III)においては、226RaとAcとを分離できる技術であればどのような技術も採用することができるが、その好適例としては、Raを捕捉する固相抽出剤を用いる技術、Acをコロイド化させる技術が挙げられる。
上記固相抽出剤としては、好ましくは、陽イオン交換樹脂、下記式(A)で表される化合物を含む固相抽出剤(a)、下記式(B)で表される化合物を含む固相抽出剤(b)、および、下記式(C)で表される化合物を含む固相抽出剤(c)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
工程(III)は、RaとAcとの分離を2回以上行ってもよい。例えば、陽イオン交換樹脂を用いる場合、同様の陽イオン交換樹脂を用いて2回以上の分離を行ってもよく、異なる陽イオン交換樹脂を用いて2回以上の分離を行ってもよく、陽イオン交換樹脂と、例えば、固相抽出剤(a)とを用いて、2回以上の分離を行ってもよい。この場合、陽イオン交換樹脂と固相抽出剤(a)とを用いる順番は特に制限されない。固相抽出剤(a)、(b)や(c)を用いる場合も陽イオン交換樹脂を用いる場合と同様である。
なお、RaとAcとの分離を行った後は、陽イオン交換樹脂や固相抽出剤を洗浄する洗浄工程を行うことが好ましい。
【0028】
上記工程(III)は、これらの中でも、使用する溶媒量が少なくても、Ra-Ac溶液(1)から、Ac純度の高いAc溶液(2)を容易に得ることができる等の点から、固相抽出剤(a)を用いてRaとAcとの分離を行い、その後、固相抽出剤(b)を用いてRaとAcとの分離を行う工程であることが好ましい。
【0029】
また、工程(III)は、Ra-Ac溶液(1)をアルカリ化して、コロイド化させた水酸化アクチニウムを、メンブレンフィルター等で濾過してフィルター上に捕集することで得られた溶液をRa溶液(2)として得、フィルター上に捕集したAcを溶解することで、Ac溶液(2)を得ることもできる。
【0030】
・陽イオン交換樹脂
上記陽イオン交換樹脂としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられ、該陽イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、Bio-Rad社製「AG 50W」が挙げられる。
上記陽イオン交換樹脂としては、より効率よくRaとAcとを分離できる等の点から、二価陽イオンを選択的に吸着する機能を有する樹脂(以下「樹脂(i)」ともいう。)が好ましい。
【0031】
樹脂(i)を用いる場合の工程(III)の具体例としては、樹脂(i)にRa-Ac溶液(1)をアルカリ条件下で接触させて、Raイオンを樹脂(i)に吸着させて、通過液をAc溶液(2)として得、酸性条件下で樹脂(i)からRaイオンを溶離させることでRa溶液(2)を得る方法が挙げられる。
【0032】
樹脂(i)としては、アルカリ条件下で金属イオンと錯形成し、酸性条件下で金属イオンを溶離することができるものであることが好ましく、例えば、二価陽イオン交換基を有するものが挙げられる。二価陽イオン交換基としては、具体的には、イミノジ酢酸基、ポリアミン基、メチルグリカン基が挙げられ、好ましくはイミノジ酢酸基である。
樹脂(i)のより好ましい例として、イミノジ酢酸基を保持するスチレンジビニルベンゼン共重合体が挙げられる。このようなイミノジ酢酸基を有する樹脂の市販品としては、Bio-Rad社製「Chelex」シリーズ、三菱化学(株)製「ダイヤイオン」シリーズ、ダウケミカル社製「アンバーライト」シリーズ等が挙げられ、より具体的にはBio-Rad社製「Chelex100」(粒径:50~100mesh、イオン型:Na型、Fe型)が挙げられる。
【0033】
樹脂(i)は、チューブに充填して用いてもよい。チューブは、樹脂(i)を充填させることができ、柔軟性を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはゴムまたは樹脂等からなるフレキシブルチューブ、より好ましくは医療用チューブである。
このようなチューブを用いることで、一般的なガラス製カラムよりも長さを長くする、すなわち理論段数を高くすることができるため、Raイオンの吸着効率を高めることができる。また、放射性物質を通液した後の樹脂(i)をチューブに充填させたまま、その他の器具や機器等を放射能汚染させることなく、簡便に廃棄することができる。
【0034】
・固相抽出剤(a)
固相抽出剤(a)は、下記式(A)で表される化合物を含めば特に制限されず、固相抽出剤に含まれる従来公知の成分を含んでいてもよい。
固相抽出剤(a)は、下記式(A)で表される化合物のみからなる固相抽出剤であってもよいし、下記式(A)で表される化合物と他の成分(例:従来公知の添加剤、不活性支持体)を含む固相抽出剤(不活性支持体中に下記式(A)で表される化合物が導入されている固相抽出剤も含む)であってもよい。
固相抽出剤(a)は、下記式(A)で表される化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
固相抽出剤(a)は、下記式(A)で表される化合物を含む不活性支持体が好ましく、下記式(A)で表される化合物を含む多孔質シリカまたは有機ポリマーがより好ましい。多孔質シリカの孔径は特に限定されないが直径50~150μm程度が好ましい。
【0036】
固相抽出剤(a)を用いる場合の工程(III)の具体例としては、高濃度の酸(例:硝酸の場合0.3M以上)を含むRa-Ac溶液(1)を固相抽出剤(a)に通液することにより、Acイオンを固相抽出剤(a)に選択的に保持させて、通過液をRa溶液(2)として得、Acイオンを保持した固相抽出剤(a)に低濃度の酸を通液することにより、保持したAcイオンを溶離させることでAc溶液(2)を得る方法が挙げられる。
このように、固相抽出剤(a)は、RaおよびAcを分離する(Acイオンを該固相抽出剤(a)に保持させ、Raイオンを通過させる)際に用いる酸の濃度が高いため、この工程(III)において、固相抽出剤(a)を用いることで、RaイオンおよびAcイオンを含有する溶液からAcイオンを分離する際に用いる溶媒量が少なくても、RaイオンとAcイオンとを十分に分離することができる。
【0037】
固相抽出剤(a)に用いる上記高濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(a)に用いる上記高濃度の酸の濃度は、RaおよびAcをより効率よく分離する(Ac通過量およびRa保持量が少なく分離する)ことができる等の点から、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0.3M以上、より好ましくは0.5M以上であり、好ましくは4.0M以下であり、該酸として塩酸を用いる場合、好ましくは1M以上であり、好ましくは8M以下である。
【0038】
Ra-Ac溶液(1)を固相抽出剤(a)に通液させる際のRa-Ac溶液(1)の流速は、RaおよびAcをより効率よく分離することができる等の点から、好ましくは0.01mL/min以上、より好ましくは0.1mL/min以上、さらに好ましくは0.5mL/min以上であり、好ましくは5mL/min以下、より好ましくは3mL/min以下、さらに好ましくは2mL/min以下である。
【0039】
固相抽出剤(a)に用いる上記低濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(a)に用いる上記低濃度の酸の濃度は、保持されたAcイオンを固相抽出剤(a)から十分に溶離させることができれば特に限定されないが、用いる酸として、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸を用いる場合は、その濃度差が大きい方が好ましい。
固相抽出剤(a)に用いる上記低濃度の酸の濃度は、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0Mより大きく、好ましくは0.2M以下、より好ましくは0.1M以下、さらに好ましくは0.01M以下であり、該酸として塩酸を用いる場合、好ましくは0Mより大きく、0.2M以下である。
【0040】
また、固相抽出剤(a)にRa-Ac溶液(1)に使用した酸が残存している可能性があり、この場合にも、固相抽出剤(a)から、確実にAcイオンを溶離させることができる等の点から、上記高濃度の酸の濃度は、上記低濃度の酸の濃度と濃度差があることが好ましく、上記低濃度の酸の濃度を1とした場合、好ましくは15以上である。
【0041】
固相抽出剤(a)に用いる上記低濃度の酸の流速は、保持されたAcイオンを固相抽出剤(a)から十分に溶離させることができる等の点から、好ましくは0.1mL/min以上、より好ましくは0.5mL/min以上であり、好ましくは20mL/min以下、より好ましくは10mL/min以下である。
【0042】
固相抽出剤(a)としては特に限定されないが、一例として市販品を用いてもよく、例えば、Eichrom Technologies社製の「DGAレジン」、「DGAブランチドレジン」が挙げられる。
【0043】
【0044】
式(A)中、mおよびnはそれぞれ独立して、0または1であり、mおよびnは、好ましくは1である。
式(A)中、R1~R4はそれぞれ独立して、炭素数8~12のアルキル基である。該アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよい。R1~R4はそれぞれ独立して、好ましくは、オクチル基または2-エチルへキシル基である。
【0045】
・固相抽出剤(b)
固相抽出剤(b)は、下記式(B)で表される化合物を含めば特に制限されず、固相抽出剤に含まれる従来公知の成分を含んでいてもよい。
固相抽出剤(b)は、下記式(B)で表される化合物のみからなる固相抽出剤であってもよいし、下記式(B)で表される化合物と他の成分(例:従来公知の添加剤、不活性支持体)を含む固相抽出剤(不活性支持体中に下記式(B)で表される化合物が導入されている固相抽出剤も含む)であってもよい。
固相抽出剤(b)は、下記式(B)で表される化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
固相抽出剤(b)は、下記式(B)で表される化合物を含む不活性支持体が好ましく、下記式(B)で表される化合物を含む多孔質シリカまたは有機ポリマーがより好ましい。多孔質シリカの孔径は特に限定されないが直径50~150μm程度が好ましい。
【0047】
固相抽出剤(b)を用いる場合の工程(III)の具体例としては、低濃度の酸(例:硝酸の場合0.2M以下)を含むRa-Ac溶液(1)を固相抽出剤(b)に通液することにより、Acイオンを固相抽出剤(b)に選択的に保持させて、通過液をRa溶液(2)として得、Acイオンを保持した固相抽出剤(b)に高濃度の酸を通液することにより、保持したAcイオンを溶離させることでAc溶液(2)を得る方法が挙げられる。
【0048】
固相抽出剤(b)に用いる上記低濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(b)に用いる上記低濃度の酸の濃度は、RaおよびAcをより効率よく分離する(Ac通過量およびRa保持量が少なく分離する)ことができる等の点から、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0Mより大きく、好ましくは0.2M未満、より好ましくは0.1M以下、さらに好ましくは0.01M以下であり、該酸として塩酸を用いる場合、好ましくは0Mより大きく、0.2M以下である。
【0049】
固相抽出剤(b)に上記Ra-Ac溶液(1)を通液する際の流速は、Acイオンを該固相抽出剤(b)に十分に保持させることができる等の点から、好ましくは1mL/min以上、より好ましくは1.5mL/min以上であり、好ましくは30mL/min以下、より好ましくは20mL/min以下である。
【0050】
固相抽出剤(b)に用いる上記高濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(b)に用いる上記高濃度の酸の濃度は、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0.2M以上、より好ましくは0.3M以上、さらに好ましくは0.5M以上であり、好ましくは4M以下、より好ましくは2M以下、さらに好ましくは1M以下であり、該酸として塩酸を用いる場合、好ましくは0.3M以上、好ましくは8M以下である。
【0051】
固相抽出剤(b)に用いる上記高濃度の酸の流速は、保持されたAcイオンを固相抽出剤(b)から十分に溶離させることができる等の点から、好ましくは0.5mL/min以上、より好ましくは1mL/min以上、さらに好ましくは2mL/min以上であり、好ましくは30mL/min以下、より好ましくは25mL/min以下、さらに好ましくは20mL/min以下である。
【0052】
固相抽出剤(b)としては特に限定されないが、一例として市販品を用いてもよく、例えば、Eichrom Technologies社製の「Lnレジン」、「Ln2レジン」「Ln3レジン」が挙げられる。
【0053】
【0054】
式(B)中、R5およびR6はそれぞれ独立して、-R'または-OR'(R'は炭素数8のアルキル基)である。該R'における炭素数8のアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよく、好適例としては、オクチル基、2-エチルへキシル基、2-メチル-4,4-ジメチルペンチル基が挙げられる。
【0055】
式(B)で表される化合物の好適例としては、下記式(B-1)~(B-3)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
・固相抽出剤(c)
固相抽出剤(c)は、下記式(C)で表される化合物を含めば特に制限されず、固相抽出剤に含まれる従来公知の成分を含んでいてもよい。
固相抽出剤(c)は、下記式(C)で表される化合物のみからなる固相抽出剤であってもよいし、下記式(C)で表される化合物と他の成分(例:R10-OH(R10は、炭素数4~12のアルキル基であり、好ましくはオクチル基である)で表される化合物、従来公知の添加剤、不活性支持体)を含む固相抽出剤(不活性支持体中に下記式(C)で表される化合物が導入されている固相抽出剤も含む)であってもよい。
固相抽出剤(c)は、下記式(C)で表される化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0060】
固相抽出剤(c)は、下記式(C)で表される化合物を含む不活性支持体が好ましく、下記式(C)で表される化合物を含む多孔質シリカまたは有機ポリマーがより好ましい。多孔質シリカの孔径は特に限定されないが直径50~150μm程度が好ましい。
【0061】
固相抽出剤(c)を用いる場合の工程(III)の具体例としては、高濃度の酸を含むRa-Ac溶液(1)を固相抽出剤(c)に通液することにより、226Raイオンを固相抽出剤(c)に選択的に保持させて、通過液をAc溶液(2)として得、226Raイオンを保持した固相抽出剤(c)に低濃度の酸を通液することにより、保持した226Raイオンを溶離させることでRa溶液(2)を得る方法が挙げられる。
【0062】
固相抽出剤(c)に用いる上記高濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(c)に用いる上記高濃度の酸の濃度は、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0.1M超えであり、より好ましくは1M以上であり、好ましくは8M以下、より好ましくは4M以下である。
【0063】
固相抽出剤(c)に用いる上記低濃度の酸としては、上記Ra-Ac溶液(1)に用いる酸と同様の酸が挙げられ、好ましい酸も同様である。用いられる酸は、1種でも、2種以上でもよい。
固相抽出剤(c)に用いる上記低濃度の酸の濃度は、該酸として硝酸を用いる場合、好ましくは0Mより大きく、好ましくは0.1M以下、より好ましくは0.05M以下である。
【0064】
固相抽出剤(c)としては特に限定されないが、一例として市販品を用いてもよく、例えば、Eichrom Technologies社製の「Srレジン」が挙げられる。
【0065】
【0066】
式(C)中、R8およびR9はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。該アルキル基は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよく、好適例としては、t-ブチル基が挙げられる。
【0067】
<工程(IV)>
工程(IV)では、上記Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る。
この工程(IV)により、好ましくは225Ac、224Raおよび226Raを含むRa-Ac溶液(3)が得られる。
【0068】
ここで、「225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させる」とは、Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体、具体的には、224Ac、226Acまたはその両方を壊変させて、ラジウムの同位体(Ra)を生成させることをいう。224Acは壊変して224Ra(半減期3.66日)を生じる。226Acは壊変して226Raおよび226Th(半減期30.9分)を生じる。工程(IV)においては、224Acおよび226Acの一部が壊変していればよいが、224Acおよび226Acを十分壊変させることが好ましい。
【0069】
工程(III)の終了後、後述する工程(V)を開始するまでの時間をT2とした場合、T2はT1より長いこと、すなわち、T2>T1の関係を満たすことが好ましいが、T2≧2×T1の関係を満たすことがより好ましい。
T2の下限は、226Acが十分に壊変する時間が好ましい。このようにすることで、224Acおよび226Acからラジウムの同位体を生成することができ、226Thを消滅させることができる。
T2の上限は、225Acの減衰をできるだけ抑制する観点から設定することが好ましい。
例えば、T2を20日とした場合、226Acは1×10-5以下となることが、シミュレーションコードPHITSを用いたシミュレーションで予測される。なお、シミュレーションは工程(I)の照射終了時における225Acの放射能を1とした場合に任意の時間経過後の他の放射性異核種の数値を予測している。
【0070】
工程(I)から工程(III)の間に、140Baが140Laに壊変した場合、Ac溶液(2)に140Laが混入することが考えられる。この140Laが、後述する工程(V)で得られるAc溶液(4)の品質に影響する場合は、工程(IV)をAc溶液(2)中の140Laを除去するための工程とすることもできる。この場合、T2は、後述する工程(V)の終了から7日後の時点で、140La量/225Ac量が、好ましくは1×10-5以下、より好ましくは1×10-6以下、さらにより好ましくは1×10-7以下となるように、設定することができる。
このように、T2を設定することで、工程(I)において生じた、132La(半減期4.8時間)や135La(半減期19.5時間)の異核種を消滅させることができる。従来の方法では、132Laや135Laを低減する一つの方法として、226Raターゲットに含まれるBa量を低減することが考えられるが、T2を上記範囲とすることで、226Raターゲットに含まれるBa量によらず、La量の少ない225Ac溶液(4)を得ることができる。このため、T2が上記範囲にある本製造方法によれば、使用する226Raターゲットが制限されず、226Raターゲットの選択自由度が高い。
【0071】
<工程(V)>
工程(V)では、上記Ra-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(3)と比べて225Ac純度が高められたAc溶液(4)を得る。
Ac溶液(4)は、例えば、225Ac、224Raおよび226Raを含むRa-Ac溶液(3)から、224Ra、226Raを分離除去することができるため、Ra-Ac溶液(3)と比べて225Ac濃度(特に純度)が高められた溶液となる。
【0072】
工程(V)の具体的な方法としては、工程(III)と同様の方法が挙げられる。
【0073】
工程(I)から工程(V)の終了までの期間は、例えば、1ヵ月とすることができる。
【0074】
<医薬>
上記工程(V)で得られたAc溶液(4)は、下記(a)または(b)に示す医薬を製造するために用いられる。
上記医薬とは、(a)225Acと錯形成したキレート剤とNd2抗体との複合体を有効成分として含有する医薬、または、(b)225Acと錯形成したキレート剤とターゲティング剤(ただし、Nd2抗体を除く)との複合体を有効成分として含有する医薬である。
【0075】
上記キレート剤とは、225Acと錯形成可能な化合物であれば特に限定されないが、例えば、以下の化合物および該化合物に由来する構造を含む化合物が挙げられる。
・DOTA(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)
・DOTMA((1R,4R,7R,10R)-α,α’,α’’,α’’’-tetramethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)
・DOTAM(1,4,7,10-tetrakis(carbamoylmethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane)
・DOTA-GA(α-(2-Carboxyethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)
・DOTP(((1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrayl)tetrakis(methylene))tetraphosphonic acid)
・DOTMP(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(methylenephosphonic acid))
・DOTA-4AMP(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(acetamidomethylenephosphonic acid)
・DO2P(Tetraazacyclododecane dimethanephosphonic acid)
【0076】
上記Nd2抗体とは、ムチンサブタイプ5ACに特異的に結合する抗体の一種であるNd2に由来する抗体であれば限定されず、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいし、マウス抗体であってもキメラ抗体であってもヒト化抗体であってもよい。このようなNd2抗体として、Japanese Journal of Cancer Research, 87, 977-984, 199等に記載されたマウス抗体、特開平7-203974号公報や特開平11-5749号公報等に記載されたキメラ抗体、国際公開第2013/157102号や国際公開第2013/157105号等に記載されたヒト化抗体が挙げられる。
【0077】
上記ターゲティング剤とは、Nd2抗体以外の剤であって、生体内の標的臓器もしくは組織に対する指向性、または標的分子に対する特異性を発現させるための化学構造を有する剤のことを指す。本明細書では、標的臓器、組織または標的分子を総称して「標的部位」ともいう。
ターゲティング剤として、好ましくは、鎖状ペプチド、環状ペプチドまたはこれらの組み合わせ、タンパク質、抗体(ただし、Nd2抗体を除く)またはそのフラグメント、成長因子、アフィボディ、ユニボディ、ナノボディ、単糖類、多糖類、ビタミン、アンチセンス核酸、siRNA、miRNA、核酸アプタマー、デコイ核酸、cPGオリゴ核酸、ペプチド核酸、リポソーム、ミセル、ナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられ、より好ましくは、ポリペプチドである。
なお、上記ターゲティング剤としては、アミノ酸から構成されるターゲティング剤が好ましく、該ターゲティング剤を構成するアミノ酸は天然のものであってもよく、合成されたものであってもよく、分子量は特に限定されない。
【0078】
ポリペプチドは、構成するアミノ酸残基が3残基以上であるペプチドであればよいが、具体的には、鎖状ペプチド、環状ペプチドまたはこれらの組み合わせ、タンパク質、抗体(ただし、Nd2抗体を除く)またはそのフラグメントであり、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEのクラスを有する抗体(免疫グロブリン)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント等の抗体断片、ペプチドアプタマーが挙げられる。
【0079】
ターゲティング剤が抗体(ただし、Nd2抗体を除く)である場合、抗原に特異的に結合する能力を有するマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であることが好ましく、ヒト化抗体であることがより好ましく、また、安定な物性を有し、かつ、標的部位への集積性に優れていることが好ましい。該抗体はその抗原結合断片として用いられてもよく、かかる態様も本発明の一態様に包含される。
【0080】
ターゲティング剤に用いられ得る抗体(ただし、Nd2抗体を除く)以外の各種ペプチドは、従来公知の方法、例えば、液相合成法、固相合成法、自動ペプチド合成法、遺伝子組み換え法、ファージディスプレイ法、遺伝暗号リプログラミング、RaPID(Random non-standard Peptide Integrated Discovery)法等の手法により合成することができる。各種ペプチドの合成にあたっては、必要に応じて、用いられるアミノ酸の官能基の保護を行ってもよい。
【0081】
Nd2抗体、または、ターゲティング剤と、キレート剤とを複合化するためには、例えば、クリック反応等の公知の反応を採用することができる。
複合体において、Nd2抗体、および、ターゲティング剤は、キレート剤と直接結合していてもよく、PEGなどの他の公知のリンカー構造を介して間接的に結合していてもよい。
また、複合体において、Nd2抗体、および、ターゲティング剤は、他の構造と結合可能な反応原子団を修飾させたものを用いて、キレート剤と複合化させていてもよい。
Nd2抗体、または、IgG抗体であるターゲティング剤と、キレート剤とを複合化する方法として、例えば、国際公開第2016/186206号に記載の技術を用いることで、抗体のFc領域を部位特異的に修飾することができる。
【0082】
なお、上記複合化は、キレート剤と225Acとを錯形成させた後に、Nd2抗体またはターゲティング剤との複合化を行うことで複合体を作製してもよいし、キレート剤が予めNd2抗体またはターゲティング剤と結合している場合は、該キレート剤と225Acとを錯形成させることで、複合体を作製してもよい。
【0083】
上記複合体を作製する方法として、例えば、本出願人の一人が出願した国際公開第2021/075546号に記載の方法を採用することができる。この方法では、Nd2抗体またはターゲティング剤およびキレート剤のそれぞれに、反応原子団としてクリック反応可能な原子団を予め導入しておき、225Acをキレート剤に配位させた後に、クリック反応により、225Acと錯形成したキレート剤と、Nd2抗体またはターゲティング剤との複合体を作製する。
ここで、本明細書における「反応原子団」とは、一方の化合物と他方の化合物とを結合させる際の反応が直接生じる化学構造のことを指す。
【0084】
クリック反応は、例えば、アルキンとアジドとの組み合わせ、または、ジエンとジエノフィルとの組み合わせによって生じる反応である。反応工程の簡便性を図る観点から、クリック反応可能な原子団は、金属触媒フリーのクリック反応に用いることができる原子団であることが好ましい。このような原子団の組み合わせによるクリック反応の具体例として、ヒュスゲン環化付加反応、逆電子要請型ディールス・アルダー反応が挙げられる。
【0085】
クリック反応可能な原子団として、Nd2抗体またはターゲティング剤、および、キレート剤の一方にアルキンを含む原子団、他方にアジドを含む原子団を導入することにより、クリック反応によりトリアゾール骨格を形成可能である。また、Nd2抗体またはターゲティング剤、および、キレート剤の一方に1,2,4,5-テトラジンを含む原子団、他方にアルケン(ジエノフィル)を含む原子団を導入することにより、クリック反応によりピリダジン骨格を形成可能である。
【0086】
クリック反応可能な原子団の具体例としては、アルキンとしてジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含む原子団、アジドとしてアジド基を含む原子団、ジエンとして1,2,4,5-テトラジンを含む原子団、アルケン(ジエノフィル)としてtrans-シクロオクテン(TCO)を含む原子団が挙げられる。クリック反応可能な原子団を導入する場合には、市販されている種々の試薬を用いて導入することができる。具体的には、クリック反応可能な原子団として、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含む原子団を導入する場合は、例えば、DBCO-C6-Acid、DBCO-Amine、DBCO-Maleimide、DBCO-PEG acid、DBCO-PEG-NHS ester、DBCO-PEG-Alcohol、DBCO-PEG-amine、DBCO-PEG-NH-Boc、Carboxyrhodamine-PEG-DBCO、Sulforhodamine-PEG-DBCO、TAMRA-PEG-DBCO、DBCO-PEG-Biotin、DBCO-PEG-DBCO、DBCO-PEG-Maleimide、TCO-PEG-DBCO、DBCO-mPEGなどのDBCO試薬を用いることができる。
【0087】
[溶解精製液]
本発明の他の態様として、粒子(例:陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種)が照射された226Raターゲットを溶解し、得られた溶液を精製した溶解精製液が挙げられる。
粒子の照射から1ヵ月後の該溶解精製液中の、225Ac量に対する140La量の比(140La量/225Ac量)は、1×10-5以下であり、好ましくは1×10-6以下、より好ましくは1×10-7以下である。
このような溶解精製液は、140La量が少なく、225Ac濃度(特に純度)の高い液である。
該溶解精製液は、具体的には、本製造方法により製造されたAc溶液(4)とすることができる。
また、該溶解精製液は、具体的には、上記(a)または(b)に示す医薬を製造するために用いられることが好ましい。
【0088】
[医薬の製造方法]
本発明の他の態様である医薬の製造方法は、下記工程(VIa)を含む。
工程(VIa):本製造方法を実行して得られた225Ac溶液を用いて、キレート剤を225Acと錯形成させる工程
【0089】
上記キレート剤を225Acと錯形成させる反応は、任意の溶媒の存在下で、適宜、加熱等しながら実行することができる。このような反応としては、本出願人の一人が出願した国際公開第2021/033530号や国際公開第2021/075546号が挙げられる。
【0090】
工程(VIa)は、225Acと錯形成したキレート剤と、Nd2抗体またはターゲティング剤との複合体を作製する工程を更に含んでいてもよく、該工程を含んでいることが好ましい。
該複合体を作製する工程としては、本製造方法の欄に記載の工程と同様の工程等が挙げられる。
【0091】
工程(VIa)は、225Acと錯形成したキレート剤と、Nd2抗体またはターゲティング剤との複合体を有効成分として含有する医薬を得るための製剤化工程を更に含むことができる。
該製剤化工程は、適宜、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等のpH調節剤、ポリソルベート等の可溶化剤、安定剤、酸化防止剤などの各種添加剤を添加したり、水や生理食塩液等の等張液で希釈して放射能濃度を調整してもよい。
また、製剤化工程として、各種添加剤の添加または濃度調整を行った後、メンブレンフィルター等で滅菌ろ過を行って注射剤とする工程を含んでいてもよい。
【0092】
[本発明の他の態様]
本発明の他の態様としては、以下の[1]~[7]に関する、225Ac溶液の製造方法および溶解精製液も挙げられる。
【0093】
[1]226Raターゲットに、陽子、重陽子、中性子および光子から選ばれる少なくとも1種の粒子を照射して、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する工程(I)と、
上記工程(I)後の226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)と、
上記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(1)と比べてAc濃度(特に純度)が高められたAc溶液(2)を得る工程(III)と、
上記Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る工程(IV)と、
上記Ra-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、上記Ra-Ac溶液(3)と比べて225Ac濃度(特に純度)が高められたAc溶液(4)を得る工程(V)と、
を含む、225Ac溶液の製造方法。
【0094】
[2] 上記工程(I)の終了後、上記工程(III)を開始するまでの時間をT1とし、
上記工程(III)の終了後、上記工程(V)を開始するまでの時間をT2とした場合、
T2>T1の関係を満たす、[1]に記載の225Ac溶液の製造方法。
【0095】
[3]上記Ac溶液(4)中の、225Ac量に対する140La量の比(140La量/225Ac量)が、上記工程(V)終了から7日後の時点で1×10-5以下である、[1]または[2]に記載の225Ac溶液の製造方法。
【0096】
[4]上記T1が7日間より短い時間である、[2]に記載の225Ac溶液の製造方法。
【0097】
[5]上記工程(III)または上記工程(V)において、Raを捕捉する固相抽出剤を用いるか、Acをコロイド化させることを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の225Ac溶液の製造方法。
【0098】
[6]上記固相抽出剤が、陽イオン交換樹脂、上記した式(A)で表される化合物を含む固相抽出剤(a)、上記した式(B)で表される化合物を含む固相抽出剤(b)、および、上記した式(C)で表される化合物を含む固相抽出剤(c)から選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載の225Ac溶液の製造方法。
【0099】
[7]粒子が照射された226Raターゲットの溶解精製液であって、
粒子の照射から1ヵ月後の該溶解精製液中の、225Ac量に対する140La量の比(140La量/225Ac量)が1×10-5以下である、溶解精製液。
【実施例】
【0100】
以下、実施例に基づいて本発明の一態様をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0101】
<計算化学的手法>
シミュレーションコードPHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)を用い、以下の仮定に基づいて、下記各溶液に含まれる放射性元素の量をシミュレーションにより算出した。
【0102】
[シミュレーション1]
226Raターゲット(φ20mm、226Ra質量:50mg、Ba質量:50mg)に、照射エネルギー16MeVで陽子を1時間照射する工程(I)を行ったと仮定した。
【0103】
工程(I)を行ってからすぐに、工程(I)で得られた226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)を行ったと仮定した。
この工程(II)で得られたRa-Ac溶液(1)中の225Acの放射能(225Ac量)を1.00(1.00E+00)と規格化した。この場合、得られたRa-Ac溶液(1)中の、224Ac量は5.05E+01、226Ac量は1.07E+00、226Raターゲット由来の226Raを除く226Ac由来の226Ra量は4.53E-09、140Ba量は3.44E-03、140La量は2.89E-05であると算出された。
【0104】
上記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、Ac溶液(2)を得る工程(III)を行ったと仮定した。なお、上記工程(I)の終了後、この工程(III)を開始するまでの時間を6時間(0.25日)とした。
この226RaとAcとの分離の際には、周期表第3族元素、ランタノイド元素およびアクチノイド元素は、Acと分離できず、その他の元素は100%分離できると仮定した。
この工程(III)で得られたAc溶液(2)中の、225Ac量は9.83E-01、224Ac量は1.20E+01、226Ac量は9.31E-01、226Ra量は0.00(工程(III)を開始時の226Ra量は5.50E-08)、140Ba量は0.00(工程(III)を開始時の140Ba量は3.45E-03)、140La量は3.67E-04であると算出された。
【0105】
上記Ac溶液(2)に含まれる225Ac以外のアクチニウムの放射性同位体を壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含むRa-Ac溶液(3)を得る工程(IV)を行い、得られたRa-Ac溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、Ac溶液(4)を得る工程(V)を行ったと仮定した。なお、上記工程(I)の終了後、この工程(V)を開始するまでの時間を504時間(21日)とした。
このRaとAcとの分離の際には、周期表第3族元素、ランタノイド元素およびアクチノイド元素は、Acと分離できず、その他の元素は100%分離できると仮定した。
この工程(V)で得られたAc溶液(4)中の、225Ac量は2.33E-01、224Ac量は0.00、226Ac量は6.30E-06、226Ra量は0.00(工程(V)を開始時の226Ra量は3.28E-07)、140La量は6.96E-08であると算出された。
【0106】
また、上記工程(V)から7日後(工程(I)の終了後から672時間(28日)経過後)のAc溶液(4)中の、225Ac量は1.44E-01、224Ac量は0.00、226Ac量は1.14E-07、226Ra量は2.20E-12、140La量は3.86E-09であると算出された。
【0107】
これらの結果を下記表1にまとめた。
【0108】
【0109】
[比較シミュレーション1]
226Raターゲット(φ20mm、226Ra質量:50mg、Ba質量:50mg)に、照射エネルギー16MeVで陽子を1時間照射する工程(I)を行ったと仮定した。
【0110】
工程(I)を行ってからすぐに、工程(I)で得られた226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有するRa-Ac溶液(1)を得る工程(II)を行ったと仮定した。
この工程(II)で得られたRa-Ac溶液(1)中の225Acの放射能(225Ac量)を1.00(1.00E+00)と規格化した。この場合、得られたRa-Ac溶液(1)中の、224Ac量は5.05E+01、226Ac量は1.07E+00、226Raターゲット由来の226Raを除く226Ac由来の226Ra量は4.53E-09、140Ba量は3.44E-03、140La量は2.89E-05であると算出された。
【0111】
上記Ra-Ac溶液(1)に含まれる、226Raターゲット由来の226RaとAcとを分離して、Ac溶液(2)を得る工程(III)を行ったと仮定した。なお、上記工程(I)の終了後、この工程(III)を開始するまでの時間を504時間(21日)とした。
この226RaとAcとの分離の際には、周期表第3族元素、ランタノイド元素およびアクチノイド元素は、Acと分離できず、その他の元素は100%分離できると仮定した。
この工程(III)で得られたAc溶液(2)中の、225Ac量は2.33E-01、224Ac量は0.00、226Ac量は6.30E-06、226Ra量は0.00(工程(III)を開始時の226Ra量は3.82E-07)、140Ba量は0.00(工程(III)を開始時の140Ba量は1.12E-03)、140La量は1.29E-03であると算出された。
【0112】
上記工程(III)から7日後(工程(I)の終了後から672時間(28日)経過後)のAc溶液(2)中の、225Ac量は1.44E-01、224Ac量は0.00、226Ac量は1.14E-07、226Ra量は2.20E-12、140La量は7.14E-05であると算出された。
【0113】
これらの結果を下記表2にまとめた。
【0114】
【0115】
<実験化学的手法>
次に、下記方法で225Ac溶液を製造した。
【0116】
[実施例1]
・工程(I)
サイクロトロンにて、金板(Φ30)に247μCiの226Raを電着させたターゲットに、18MeV、15μA、0.5hrの条件で陽子を照射した((p、2n)反応)。
【0117】
・工程(II)
照射から3日後に、照射済みのターゲットを0.7M硝酸16mLに溶解した。
【0118】
・工程(III)
得られた溶解液を、DGAレジン(Eichrom Technologies社製)に通液させた(通過液(1))。その後、該DGAレジンを、0.7M硝酸5mLで洗浄した(洗浄液(2))。通過液(1)および洗浄液(2)を、226Ra回収液とし、Raをリサイクルするための電着液とした。
その後、DGAレジンを、更に0.7M硝酸15mLで洗浄した(洗浄液(3))。洗浄液(3)は廃液とした。
上記洗浄後のDGAレジンに、0.005M硝酸20mLを通液し、225Acを溶出した。溶出した225AcをLnレジン(Eichrom Technologies社製)に通液させた(通過液(4))。次いで、Lnレジンを、0.05M硝酸10mLで洗浄した(洗浄液(5))。通過液(4)と洗浄液(5)は廃液とした。
上記洗浄後のLnレジンに、0.7M硝酸10mLを通液し、225Acを溶出した(225Ac溶液(6))。得られた225Ac溶液(6)を、ゲルマニウム半導体検出器で測定した結果、225AcはEOB(照射終了時)換算で0.2μCiであった。
【0119】
・工程(IV)
225Ac溶液(6)を得てから17日間経過させた。
【0120】
・工程(V)
上記17日経過後に、225Ac溶液(6)10mLを、DGAレジンに通液させた(通過液(7))。DGAレジンを0.7M硝酸20mLで洗浄した(洗浄液(8))。通過液(7)、洗浄液(8)は廃液とした。
その後、DGAレジンに0.005M硝酸20mLを通液し、225Acを溶出した。溶出した225AcをLnレジンに通液した(通過液(9))。次いで、Lnレジンを、0.05M硝酸10mLで洗浄した(洗浄液(10))。通過液(9)と洗浄液(10)は廃液とした。
上記洗浄後のLnレジンに、0.5M硝酸10mLを通液し、225Acを溶出した(225Ac溶液(11))。得られた225Ac溶液(11)をゲルマニウム半導体検出器で測定した結果、225AcはEOB(照射終了時)換算で0.2μCiであった。
【0121】
[実施例2]
・サイクロトロンのビーム照射によるAc-225製造
NIRS-AVF-930サイクロトロンの34MeV H2
+(イオン化分子状水素)ビームにより、公称強度10μAで3~5時間のビーム照射を行った。真空を隔てるフォイルによりH2
+イオンが分裂し、約20μAで17MeVの陽子ビームを得た。ターゲット材料に入射する陽子エネルギーは、真空フォイル(Al、100μm)、He冷却層(30mm)、および、ターゲットフォイル(Nb、50μm)中をビームが通過することにより、15.6MeVになると計算コードSRIMで推定された。予想される225Ac収率を最大限向上させるため、226Ra(p,2n)225Ac反応断面積が最大となるようにターゲット材料における陽子エネルギー15.6MeVを設定したが、これはALICE計算コードで得られた結果(15MeVで最大700mb)と先行研究であるApostolidis C, Molinet R, McGinley J, Abbas K, Mollenbeck J, Morgenstern A. Cyclotron production of Ac-225 for targeted alpha therapy. Appl Radiat Isot 2005;62:383-387の結果(16.8MeVで最大710mb)の間のエネルギーを採用した。
【0122】
・ターゲットマトリックスからの
225Acの分離
照射終了時(EOB)から3~4日後に実施した、分離手順を
図1に示す。サイクロトロンで照射したターゲットを、3mLの0.7M HNO
3に溶解し、得られた溶液を、0.8mL/分以下の速度で、DGAカートリッジ(N,N,N',N'-テトラ-n-オクチルジグリコールアミド、1mL、Eichrom Technologies社製)に通液し、
225Acをカートリッジに捕集した。ターゲット容器内に残留するAc/Raの回収を向上させるため、さらに3mLの0.7M HNO
3を、ターゲット容器に2回添加し、それぞれの洗浄画分も、上記DGAカートリッジに通液し、
225Acをカートリッジに捕集した。
【0123】
このDGAカートリッジを、20mLの0.7M HNO3で洗浄し、DGAカートリッジに残留した226Raを洗浄除去した。次いで、5mM HNO3(20mL)を、0.8mL/分以下の速度で上記DGAに通液することにより、225Acを溶出し、その画分をバイアルに回収した。続いて、粗225Ac画分を、Lnカートリッジ(ジ(2-エチルヘキシル)オルトリン酸、2mL、Eichrom Technologies社製)に通液し、このカートリッジを、10mLの50mM HNO3で洗浄して、混入する微量226Raを除去し、次いで、十分にパージした。上記洗浄液の画分はすべて、次の使用で再処理されるRa回収画分として、回収した。最終的に、0.7M HNO3(10mL)をLnカートリッジに通液することによって、225Acを溶出し、これを別のバイアルに回収した。
【0124】
表3は、本実施例で行われた製造(3回)の結果を示している。なお、表3における#1は、上記T1を5日、上記T2を14日とした場合の結果であり、#2は、上記T1を4日、上記T2を21日とした場合の結果であり、#3は、上記T1を4日、上記T2を28日とした場合の結果である。
陰極表面に電着により作製した226Raターゲットは1.0~1.5mg/cm2の薄状ターゲットであるとみなすことができる。226Ra(p,2n)225Acの断面積(σ)は、15.6MeVにおいて353mbであると推定された。この核反応に関する従来の研究では、16.8MeVにおいて約710mb(Apostolidis C, Molinet R, McGinley J, Abbas K, Mollenbeck J, Morgenstern A. Cyclotron production of Ac-225 for targeted alpha therapy. Appl Radiat Isot 2005;62:383-387)、または16.0MeVにおいて600+mb(ALICEコードによる計算、Apostolidis C, Molinet R, McGinley J, Abbas K, Mollenbeck J, Morgenstern A. Cyclotron production of Ac-225 for targeted alpha therapy. Appl Radiat Isot 2005;62:383-387)、および、16.0MeVにおいて522mb(TENDL-2019で計算、TALYS-based evaluated nuclear data library (TENDL-2019) website https://tendl.web.psi.ch/tendl_2019/proton_html/Ra/ProtonRa226xs.html Accessed Sep 4, 2020)であり、それぞれはるかに高い値が示されている。しかしながら、上述したように、今回のターゲットは、表面の不均一さにより約2/3の面積が、226Raで覆われており、従って上記σは、例えば、1.56(=1/0.64)倍することができる。結果として、今回の実際条件における226Ra(p,2n)225Acおよび226Ra(p,n)226Acの推定断面積の補正値として得られた値は、それぞれ、552mbおよび14mbであった(参考:16MeVにおける(p,n)チャンネルに対して34mb、TALYS-based evaluated nuclear data library (TENDL-2019) website https://tendl.web.psi.ch/tendl_2019/proton_html/Ra/ProtonRa226xs.html Accessed Sep 4, 2020)。Ac分離効率、ビームプロファイル、Ba/Ra比は、評価に一定の誤差を与えうるが、本実施例においてこれらの可能性因子に対する定量的補正は何ら適用できなかった。したがって、これらの不確実性は上記推定には含まれていないが、上記補正断面積は、ALICEコードおよびTENDLコードによる計算値や先行研究の実測値と十分な合致を示した。
【0125】
【0126】
・分離
図2(a)に示すように、
226Acおよびその他放射性異核種の存在を一次分離後の
225Ac試料中に検出した。
226Acは、
226Raと同様に、冷却期間中に多くの子孫核種を生成する4n+2系列放射性核種である。したがって、
226Acが減衰する過程で放出した4n+2系列不純物を、二次精製としての繰り返し分離により、除去することができ、高品質
225Acを生成した。上記照射条件において、
224Ac(EC:91%、α:9%、T
1/2=2.8時間)が、
226Ra(p,3n)チャンネル(E
TH=13.6MeV)を介して副生されるはずだが、
224Acの半減期は非常に短く、EOBから4日経過した分離終了時点で、検出することはできなかった。しかし、4n系列におけるγ放出を伴う2つの
224Ac子孫核種、すなわち、
212Bi(T
1/2=61分、727keV、6.7%)、および、
208Tl(T
1/2=3.1分、2615keV、99%)が、洗浄画分と各分離物の両方で、顕著な分布が検出され、さらには、精製
225Ac試料にも極微量に検出された。これは、
224Acの生成の証拠であった。
225Ac画分中の
212Biと
208Tlの存在は、今回の分離条件において、BiがAcと部分的類似性を有しているため、理にかなった結果であった。一方、
212Biの親核種である
212Pb(T
1/2=10.6時間、239keV、44%)は、精製
225Ac試料において、検出されなかった。
212Pbの親核種となる可能性がある4n系列核種すべて(
224Ac~
216Po(
224Raを除く))は、
212Pbよりも半減期が短く、
224Raは、
226Raとともに除去された。したがって、分離過程で注意すべきである副生放射性核種は、4n+2系列を中心に考えることができる。
【0127】
他の注目すべき副生物は、
135La(EC、T
1/2=19.5時間)および
140La(β、T
1/2=1.68日)であった。前者は、古いRa線源に含まれる天然Ba担体から
135Ba(p,n)チャンネルで副生すると考えられる。しかし、
135Laの半減期は、
225Acの半減期よりはるかに短く、したがって、抽出したRaに対して混入するBaの除去を行わなくとも、
225Acに対する
135Laの比率は、適切な冷却時間によって徐々に減少すると思われる。一方、Baの最も重い安定同位体は
138Baであるため、
140Laは、陽子照射によって生成するには原子質量が大きすぎると思われる。すなわち、
226Raの照射において
226Raの核分裂で生成した可能性があることが示唆される。さらに、
140Laの親核種である
140Ba(β、T
1/2=12.6日)も、別の核分裂生成物として生成した可能性がある。
140Baは
225Acよりも半減期が長いため、減衰による
140Baおよびその娘核種である
140Laの
225Acに対する比率の減少は期待できない。そこで、サイクロトロン照射終了から数日以内に一次分離を実施し、
226Raと化学的挙動が類似している
140Baを
226Raとともに一次分離により
225Ac画分から除去し、
225Ac画分中を
140Laのみとした。実際に、
225Ac画分にわずかに検出された
140Laは、その公称半減期1.68日と極めて良く一致する半減期1.67±0.10日で減衰を示し、その後、2~3週の冷却によりγスペクトル上で検出不能なレベルまで減衰した。すなわち、一次精製を行うことで、
140Laの
225Acに対する比率を減少させることができた。例えば、上記試料を、EOB後19~20日間、または、分離終了から2週間、冷却したところ、他製法である
229Th/
225Acジェネレーター(
図2(b)、
図2(c))由来の
225Acと同等のスペクトルを得た。
図3に示されるように、今回の
225Ac生成物のαスペクトルも、上記参照物と同様のプロファイルを示し、特に、
226Ra(Eα=4.78MeV、94%)および
210Po(Eα=5.30MeV、100%)の検出は確認されなかった。したがって、適切な冷却期間を伴った2回の分離により、
229Th/
225Acジェネレーター由来の
225Acに匹敵する品質を有する精製
225Acが生成されるとの結論に至った。
【0128】
[実施例3]
(1-1.錯形成工程)
下記式(L1及びL2)で表されるキレート剤を用いた。なお、下記式(L1)で表されるDOTA-DBCOは、Wang H et al. Selective in vivo metabolic cell-labeling-mediated cancer targeting. Nat Chem Biol. 13(4): 415-424. (2017)に記載の方法に従い合成した。また、下記式(L2)で表されるDOTAGA-DBCOは、Bernhard et al. DOTAGA-Anhydride: A Valuable Building Block for the Preparation of DOTA-Like Chelating Agents, Chem. Eur. J. 18(25): 7834-7841. (2012)に記載の方法に従い合成した。
【0129】
【0130】
キレート剤と実施例1に記載の方法に従って得られた225Ac溶液とを、酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中、70℃で90分間反応させることで、225Acと錯形成したキレート剤を含む液(225Ac錯体液)を得た。
【0131】
(1-2.抗体修飾工程)
別途、ペプチドを国際公開第2017/217347号に記載の方法で製造して、下記式(P3)で表される17個のアミノ酸残基を含むペプチドを得た。このペプチドのアミノ酸配列は、配列番号(2)のXaa2がリシン残基である配列と同一であり、リシン残基の側鎖末端アミノ基がR1で示される構造で修飾されている。また、2つのシステイン残基で互いにジスルフィド結合しており、ペプチドのN末端はジグリコール酸および8つのPEGを有するリンカー構造を介して、反応原子団であるアジド基を含む原子団として、エチルアジドが結合しているものである。
【0132】
【化11】
[式(P3)中、Glyはグリシンを、Proはプロリンを、Aspはアスパラギン酸を、Cysはシステインを、Alaはアラニンを、Tyrはチロシンを、Hisはヒスチジンを、Gluはグルタミン酸を、Leuはロイシンを、Valはバリンを、Trpはトリプトファンを、Pheはフェニルアラニンを示す。]
【0133】
上記式(P3)で表されるペプチドと、ヒトIgG抗体(トラスツズマブ;ロシュ社製)とを酢酸ナトリウム緩衝液(pH6)に混合した混合液を、室温で30分間反応させて、ペプチド修飾抗体を含む溶液を得た。このペプチド修飾抗体は、上記のペプチドによって抗体のFc領域が部位特異的に修飾されたものである。
【0134】
(2.標識工程)
1-2.抗体修飾工程で得られたペプチド修飾抗体を含む溶液に、1-1.錯形成工程を経て得られた各225Ac錯体液を未精製のまま添加し、37℃で120分間クリック反応させて、複合体を得た。さらに、得られた複合体の溶液を限外ろ過フィルター(Merck社製、型番:UFC505096)を用いて精製した。
【0135】
該複合体の放射化学的純度および放射化学的収率の測定方法は以下のとおりとした。
薄層クロマトグラフィー(Agilent社製、型番:SGI0001、展開溶媒:アセトニトリルと0.1mmol/LのEDTA溶液(pH5.0)との混液(体積比1:1))をスキャナータイプ画像解析装置(GEヘルスケア社製、MODEL Typhoon FLA 7000)で測定し、検出された全放射能(カウント)に対する、原点付近に検出されたピークの放射能(カウント)の百分率を放射化学的純度(%)とした。また、ガンマ線スペクトルメータ(ORTEC社製、MODEL GMX15P4)で測定し、錯形成工程時に加えた全放射能(カウント)に対して、標識工程の精製後に得られた複合体の放射能(カウント)の百分率を放射化学的収率(%)とした。その測定結果を表5に示す。
【0136】
【0137】
得られた複合体を生理食塩液で希釈して、225Acと錯形成したキレート剤とトラスツズマブとの複合体を有効成分として含有する医薬を得る。
【0138】
[実施例4]
市販されているDaptomycin(東京化成工業社製)をジメチルホルムアミドに溶解させ、トリエチルアミンとDOTABnSCNを加え、50℃で120分間反応させた。得られた反応液を逆相シリカゲルクロマトグラフィーにて分離精製し、DOTA-Daptomycin(下記式(L3))を得た。
DOTA-Daptomycinと、実施例1に記載の方法に従って得られた225Ac溶液258kBqとを、0.5mol/Lのテトラメチルアンモニウム酢酸緩衝液(pH7.8)及びエタノール水溶液の混合液中で、70℃、1時間の加熱条件下で反応させて、複合体を得た。
【0139】
【0140】
得られた複合体の放射化学的純度を、次の方法で測定した。すなわち、薄層クロマトグラフィー(Agilent社製、iTLC-SG、展開溶媒:0.1mоl/L EDTA溶液(pH5.0))を用いて、未反応の225Acを含む全225Ac放射能カウントに対する225Acと錯形成したキレート剤の放射能カウントの百分率を放射化学的純度(%)とした。その結果、放射化学的純度は99.9%以上であった。
【0141】
得られた複合体を生理食塩液で希釈して、225Acと錯形成したキレート剤とダプトマイシンとの複合体を有効成分として含有する医薬を得る。
【要約】
本発明の一態様は225Ac溶液の製造方法または該溶液を用いた医薬の製造方法に関し、該225Ac溶液の製造方法は、226Raターゲットに粒子を照射して、少なくとも225Acを含む2種以上のアクチニウムの放射性同位体(Ac)を生成する工程と、該工程後の226Raターゲットを溶解して、226RaおよびAcを含有する溶液(1)を得る工程と、溶液(1)に含まれる226RaとAcとを分離して、溶液(1)と比べてAc濃度が高められた溶液(2)を得る工程と、溶液(2)に含まれる225Ac以外のAcを壊変させて、壊変により得られたラジウムの同位体(Ra)を含む溶液(3)を得る工程と、溶液(3)に含まれるRaとAcとを分離して、溶液(3)と比べて225Ac濃度が高められた溶液(4)を得る工程とを含み、溶液(4)が、225Acと錯形成したキレート剤と、Nd2抗体またはターゲティング剤(ただし、Nd2抗体を除く)との複合体を有効成分として含有する医薬を製造するために用いられる。