(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コンテンツを表示するサイネージシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20221011BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20221011BHJP
【FI】
B66B3/00 G
G06Q30/02 470
(21)【出願番号】P 2018128850
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】鯉渕 裕也
(72)【発明者】
【氏名】松村 健一
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254410(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034006(WO,A1)
【文献】特開2002-104747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0105390(US,A1)
【文献】中国実用新案第206108593(CN,U)
【文献】特開2021-196728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 - 3/02
G06Q 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ内に設置されるディスプレイ装置と、前記ディスプレイ装置に表示するコンテンツを制御する制御部とを備えたサイネージシステムであって、
前記制御部は、
乗客がエレベータに乗ってきた階又は行先階に対応付けられたコンテンツを格納するデータベースに基づいてコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御し、
乗客が建物の出入口からエレベータに乗る場合には、乗客の行先階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示し、
乗客が建物の出入口を行先としてエレベータに乗る場合には、乗客が乗ってきた階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御する、
サイネージシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記行先階と前記乗客が乗ってきた階の情報に基づいて、前記ディスプレイ装置に表示する前記コンテンツの長さを決定する、請求項1に記載のサイネージシステム。
【請求項3】
エレベータ内に設置されたディスプレイ装置に表示するコンテンツを制御する方法であって、
乗客により行先として選択された行先階と前記乗客が乗ってきた階の情報を取得するステップと、
乗客がエレベータに乗ってきた階又は行先階に対応付けられたコンテンツを格納するデータベースに基づいてコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を備え、
乗客が建物の出入口からエレベータに乗る場合には、乗客の行先階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示し、
乗客が建物の出入口を行先としてエレベータに乗る場合には、乗客が乗ってきた階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御する、方法。
【請求項4】
前記行先階と前記乗客が乗ってきた階の情報に基づいて、前記ディスプレイ装置に表示する前記コンテンツの長さを決定するステップを更に備えた請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツを表示するサイネージシステム及び方法に関し、特に、コンテンツの表示を制御するサイネージシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルやプロジェクターなどのディスプレイ装置にコンテンツを表示させるデジタルサイネージが普及しつつある。サイネージでは、表示させるコンテンツを自由に変更することができることから、この利点を活かした制御を行うことで、高い広告効果を得ることが期待される。
例えば、特許文献1のように、利便性の高い情報を提供するためのデジタルサイネージが開発されている。また、特許文献2のように、エレベータのかご内にディスプレイ装置を備えたシステムも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/159602
【文献】特開2017-7818
【0004】
上述の通り、エレベータのかご内にディスプレイ装置を備えたシステムもあり、また、ディスプレイ装置に施設情報や広告等を表示することも行われている。
しかしながら、これらのディスプレイ装置に表示される広告コンテンツ等の情報は、時間と共に変更されることもあるが、エレベータの乗客の行動などの状況や乗客の興味等を考慮してなされたものではなく、乗客にとって有益な情報とはなっていないことも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、エレベータ内の表示コンテンツを乗客に効果的に提供するシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、以下のような特徴を有するものである。すなわち、本発明の1つの特徴によれば、エレベータ内に設置されるディスプレイ装置と、前記ディスプレイ装置に表示するコンテンツを制御する制御部とを備えたサイネージシステムであって、前記制御部は、エレベータの上昇又は下降の行先方向のそれぞれに応じて前記コンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御する、サイネージシステムが提供される。
【0007】
本発明において、前記制御部は、エレベータの上昇又は下降の行先方向のそれぞれと、乗客が乗ってきた階又は行先階とに対応付けられたコンテンツを格納するデータベースに基づいてコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御することもできる。
【0008】
本発明において、前記制御部は、前記データベースに基づいて、エレベータの行先方向が上昇方向である場合には、乗客の行先階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示し、エレベータの行先方向が下降方向である場合には、乗客が乗ってきた階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御することもできる。
【0009】
また、本発明において、前記制御部は、前記データベースに基づいて、エレベータの行先方向が上昇方向である場合には、乗客が乗ってきた階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示し、エレベータの行先方向が下降方向である場合には、乗客の行先階に対応付けられたコンテンツを前記ディスプレイ装置に表示するように制御することもできる。
【0010】
また、本発明の別の特徴によれば、エレベータ内に設置されたディスプレイ装置に表示するコンテンツを制御する方法であって、乗客により行先として選択された行先階と前記乗客が乗ってきた階の情報を取得するステップと、前記エレベータの上昇又は下降の行先方向の情報を取得するステップと、前記エレベータの前記行先方向の情報と、前記行先階又は前記乗客が乗ってきた階の情報とに基づいて前記ディスプレイ装置に表示するコンテンツを決定するステップとを備えた方法が提供される。
【0011】
本発明において、前記コンテンツを決定するステップは、前記エレベータの前記行先方向が上昇方向である場合には、前記行先階の情報に基づいて前記ディスプレイ装置に表示するコンテンツを決定し、前記エレベータの前記行先方向が下降方向である場合には、前記乗客が乗ってきた階の情報に基づいて前記ディスプレイ装置に表示するコンテンツを決定することもできる。
【0012】
また、本発明において、前記コンテンツを決定するステップは、前記エレベータの前記行先方向が上昇方向である場合には、前記乗客が乗ってきた階の情報に基づいてディスプレイ装置に表示するコンテンツを決定し、前記エレベータの前記行先方向が下降方向である場合には、前記行先階の情報に基づいてディスプレイ装置に表示するコンテンツを決定するように制御することもできる。
【0013】
また、本発明は、前記行先階と前記乗客が乗ってきた階の情報に基づいて、前記ディスプレイ装置に表示する前記コンテンツの長さを決定するステップを更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エレベータ内の表示コンテンツを乗客に効果的に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態であるサイネージシステムの構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるサイネージシステムのフローチャートを示す図である。
【
図4】エレベータ内のディスプレイ装置にコンテンツを表示する実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[サイネージシステムの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係るサイネージシステム100を示すものである。
【0017】
サイネージシステム100は、各種情報に基づいてディスプレイ装置200に表示されるコンテンツを制御するように構成される。サイネージシステム100は、ディスプレイ装置200と、制御部300と、情報取得部400と、記憶部500と、管理サーバ600とを備える。
【0018】
情報取得部400は、乗客の動作等に伴う情報を取得する。例えば、エレベータのドアが開放されたときに、エレベータに乗ってきた乗客が存在するかどうかの情報を所定のカメラ等のセンサにより判定して取得すると共に、乗客が乗ってきた階の情報や乗客がエレベータのかご内に設置された行先階のボタンを押下したことに伴って行先階の情報を取得する。
【0019】
記憶部500は、ディスプレイ装置200にコンテンツを表示させる処理を実現するためのプログラム及び当該プログラムの実行に伴って参照され得る各種情報を記憶している。記憶部500はまた、データベースを備えており、データベースにおいて、後述するように、エレベータの上昇又は下降の行先方向のそれぞれと、乗客が乗ってきた階(出発階)又は行先階と、コンテンツとを関係づけて記憶している。
【0020】
制御部300は、プロセッサなどを備えており、記憶部500に格納されているプログラムやデータを読み込んで実行することにより、様々な処理を実行する。
【0021】
この点、制御部300は、情報取得部400からエレベータ内に乗客が存在するか否かの判別情報を受信するように構成されており、エレベータ内に乗客が存在する場合にはディスプレイ装置200の電源をオンにする一方で、エレベータ内から乗客がいなくなった場合にはディスプレイ装置の電源をオフにするように制御する。
【0022】
制御部300はまた、情報取得部400から、乗客が乗ってきた階(出発階)の情報及び乗客がエレベータのかご内に設置された行先階のボタンが押下されたことにより得られた行先階の情報を受信するように構成されている。制御部300は、これら出発階と行先階の情報から、エレベータのかごが上昇しようとしているのか、下降しようとしているかを判定する。制御部300は、判定されたエレベータの上昇又は下降の行先方向の情報と、乗客が乗ってきた階(出発階)又は行先階の情報から、記憶部500のデータベースに基づいて、これらに対応付けられたコンテンツを抽出してそのコンテンツをディスプレイ装置200に提供する。一実施例では、制御部300は、エレベータが上昇しようとしていると判定された場合には、その乗客の行先階の情報を取得し、その行先階に対応するコンテンツを記憶部500から取得してディスプレイ装置に送信する一方で、エレベータが下降すると判定された場合には、その乗客の出発階の情報を取得し、その出発階に対応するコンテンツを記憶部500から取得してディスプレイ装置200に送信する。
【0023】
なお、制御部300及び記憶部500は、エレベータのかご内に配置されていてもよいし、エレベータの外にその一部又は全部の機能を配置すると共に無線通信等によりディスプレイ装置200や情報取得部400と通信するように構成してもよい。
【0024】
ディスプレイ装置200は、映像や文字情報などのコンテンツを表示するようにエレベータ内に備え付けられる液晶ディスプレイ等であり、映像や文字情報を表示できるものであれば何であっても良い。
【0025】
管理サーバ600は、定期的にあるいは必要に応じて制御部300にアクセスして各種プログラムやデータを更新する。例えば、商業施設の各階の店舗構成が変わることにより、その変更後の構成に対応するように制御部300を介して記憶部500のデータベース内のコンテンツを更新することができる。また、管理サーバ600は、複数のエレベータのかごに対する情報を一括して管理するように構成してもよい。この場合、管理サーバ600は、かご毎に各種プログラムやデータも更新するように構成してもよい。
【0026】
[データベースの構成例]
図2は、本発明の一実施例に係る記憶部500内のデータベースを示す。
図2に示される通り、データベースには、エレベータの上昇又は下降と、行先階又は出発階と、ディスプレイ装置に表示する各コンテンツとが関係付けられて記憶されている。
【0027】
図2(a)に示される通り、エレベータが上昇するときは、行先階によりコンテンツが特定されるように、行先階とコンテンツが紐づけて記憶されており、
図2(b)に示される通り、エレベータが下降するときには、出発階によりコンテンツが特定されるように、出発階とコンテンツが紐づけて記憶されている。
【0028】
例えば、エレベータが上昇する場合であって、行先階が9階である場合には、対応するコンテンツとしてコンテンツE を表示できるように、「上昇」、「9階」、「コンテンツE」が対応付けられて記憶されている(図(a))。また、エレベータが下降する場合であって、出発階が9階である場合には、対応するコンテンツとしてコンテンツE’を表示できるように、「下降」、「9階」、「コンテンツE’」が対応付けられて記憶されている(図(b))。
【0029】
データベースには、エレベータの上昇又は下降に応じて適したコンテンツを表示できるように、各階に対応する各コンテンツが構成される。この点、例えば、商業施設の出入り口が1階であるとすると、エレベータの上昇は、目的地へ向かう動作であり、エレベータの下降は、乗客が商業施設を出て帰る方向の動作であることが多いと予測し、この点を考慮して、上昇又は下降のそれぞれに対応するコンテンツを表示できるようにデータベースを構築する。エレベータの下降時については、もちろん1階フロアなどの出口階に行こうとしているのではなく商業施設内の他の店舗に向かうなどの目的を持って下層階に行こうとする乗客も存在し得るが、この例では、上昇するときに比べれば帰ることを想定して乗ることが多いと想定する。
【0030】
このように、本発明は、エレベータが上昇しているのか下降しているのかによってディスプレイ装置に表示するコンテンツを使い分けるという点に1つの特徴を有している。
【0031】
この点、エレベータの上昇時には、目的地へ向かう行動であるとの予測の下で「行先階」に関係するコンテンツを表示できるように、また、エレベータの下降時には、商業施設から出て帰る行動であるとの予測の下で乗客が乗ってきた階層の店舗等に再度興味を持ってもらうべく、「乗客が乗ってきた階(出発階)」に関係するコンテンツを表示できるようにすることが考えられる。
【0032】
データベースの具体例として、エレベータが「上昇する場合」であって、「行先階が9階である場合」に対応する「コンテンツE」として、9階フロアで開催されているイベント・セールの広告を選定して登録しておくようにしてもよい。一方、例えば、エレベータが「下降する場合」であって、「乗客が乗ってきた階(出発階)が9階である場合」に対応する「コンテンツE’」として、9階フロアの次回のイベント・セール・クーポン情報に関する情報等を選定して登録しておくようにしてもよい。
【0033】
通常、乗客がエレベータに乗っている時間は限られている。そのため、乗客が乗ってきた階から行先階への到着までに要する時間を把握し、その時間に相当する長さの広告コンテンツを選択・決定して提示するように構成してもよい。また、1階から乗って20階まで行く場合には、それに相当する長さの広告とし、15階から乗って20階まで行く場合には、行先は同じであるが、1階から乗って20階まで行く場合よりも所要時間が短いことを考慮し、同種のコンテンツをダイジェスト版として提示するなどしても良い。
【0034】
また、
図2(a)及び(b)に示す通り、各階に対してコンテンツを用意しておいても良いし、また、エレベータが目的階まで到達するまでの時間の短さを考慮して、ある程度まとまった階数に対して、同じコンテンツを用意しておいても良い。例えば、2階から5階に対しては同等のコンテンツを表示し、10階以上は各階に対応するコンテンツを登録するなどとしてデータベースを構築してもよい。
【0035】
また、別の例として、ディスプレイ装置がマンションのエレベータ内に設置されている場合には、エレベータが上昇するときには、1階から乗って帰宅する場合が多いと想定して、各階に共通するコンテンツとして、リラックスできるコンテンツや、家で楽しむサービスの広告などが選定されてもよい。一方、エレベータが下降するときには、外出する場合が多いことを想定して、各階に共通するコンテンツとして、出かけることを想定して近隣店舗のチラシや天気予報、列車運行情報などが選定されてもよい。このようにして、エレベータが上昇しているのか下降しているのか、また、どの階層に向かっているのかによってディスプレイ装置に表示するコンテンツを使い分けることができる。
【0036】
[エレベータの動作に応じた表示処理フロー]
次に、本発明に係るサイネージシステムにおける表示処理フローを
図3に示す。
ここでは、説明の単純のために、商業施設において乗客が1階フロアから搭乗して9階フロアに向かうときのサイネージシステムの表示処理フローの例と、9階フロアから搭乗して1階フロアに向かうときのサイネージシステムの表示処理フローの例を説明する。
【0037】
1.エレベータが上昇する場合の例
まず、1階フロアから搭乗して9階フロアに向かうときのサイネージシステムの表示処理フローの例について説明する。
【0038】
本システムは、エレベータに誰も載っていないときは、サイネージの電源オフとなっている状況から開始するように構成できる。エレベータに乗客が存在するかは所定のカメラ等のセンサにより判定することかできる。
【0039】
次に、1階フロアにおいてエレベータのドアが開くと乗客が乗ってきたかどうかを判定する(S100)。乗客の存在が確認されると、ディスプレイ装置が電源オンとなる(S200)。一方、乗客の存在が確認されない場合には、電源はオフのままとなる。
【0040】
この状態で、乗客が行先階のボタンを押下することなどにより行先階の情報が入力される(S300)。この例では、乗客がそのエレベータに1階で乗り、行先階として9階のボタンが押下されると、乗ったときの階(出発階)が1階であるという情報と行先階が9階であるという情報が取得される。なお、複数の乗客が乗ってきて複数の階層フロアのボタンが押下された場合、行先階として押下された各階が情報として取得されるようにしてもよい。
【0041】
次に、この出発階と行先階の情報から、エレベータが上昇するか下降するかを判定する(S400)。この例では、出発階が1階であり、行先階が9階であることから、エレベータは上昇する状況にあると判定される。
【0042】
エレベータが上昇すると判定された場合には、その乗客の行先階の情報を取得し(S510)、その行先階に対応するコンテンツをデータベースから取得してディスプレイ装置に表示する(S600)。
【0043】
この例では、
図4に示す通り、エレベータが上昇する場合であって行先階が9階フロアである場合に対応するコンテンツとして、「9階フロアで開催されているイベント・セール」をデータベースから取得してディスプレイ装置に表示する。
【0044】
なお、S300において行先階として複数の階が情報として取得されていた場合には、S600において、低層階から上昇方向に順に押下された階層フロアの各々に停まるまで各々の行先階に対応するコンテンツを表示するように構成してもよい。
【0045】
商業施設において入口が1階などの低層階にあり、そこからエレベータに乗り上の階に向かう場合には、その行先階に何らかの目的を持って向かっていると考えられる。そこで、データベースには、エレベータが上昇する場合であって行先階が9階フロアである場合には、乗客は9階フロアにどこかの店舗に興味を持っている可能性があると想定して、9階フロアにて開催されているイベント・セールに関する情報を表示できるように、「上昇」、「9階」、「イベント・セール」の情報が関係付けられて記憶されている。通常、商業施設は、同じ階層フロアには同様のカテゴリーの店舗が存在するように構成されていることが多く、本例の場合、9階フロアのカテゴリーに興味を持っていると思われる乗客に対して、コンテンツとして、そのカテゴリーに関連するイベント・セールの案内を効率的に提供し、当該イベント・セールに立ち寄ることを促すことが可能となる。
【0046】
2.エレベータが下降する場合の例
次に、9階フロアから搭乗して1階フロアに向かうときのサイネージシステムの表示処理フローの例を説明する。
【0047】
本システムは、エレベータに誰も載っていないときは、サイネージの電源オフとなっている状況から開始し、9階フロアにおいてエレベータのドアが開くと乗客が乗ってきたかどうかを判定する(S100)。乗客の存在が確認されると、サイネージシステムが電源オンとなる(S200)。
【0048】
この状態で、乗客が行先階のボタンを押下することなどにより行先階の情報が入力される(S300)。この例では、乗客がそのエレベータに9階で乗り、行先階として1階のボタンが押下されると、乗ったときの階(出発階)が9階であるという情報と行先階が1階であるという情報が取得される。なお、エレベータの下降と共に各階層フロアから順次乗客が乗ってきて低階層フロアのボタンが押下された場合、行先階として押下された各階を情報として取得するようにしてもよい。
【0049】
次に、この出発階と行先階の情報から、エレベータが上昇するか下降するかを判定する(S400)。この例では、出発階が9階であり、行先階が1階であることから、エレベータは下降する状況にあると判定される。
【0050】
エレベータが下降すると判定された場合には、その乗客の出発階の情報を取得し(S5520)、その出発階に対応するコンテンツをデータベースから取得してディスプレイ装置に表示する(S600)。
【0051】
この例では、エレベータが下降する場合であって出発階が9階フロアである場合に対応するコンテンツとして、「9階フロアの次回のイベント・セール・クーポン情報等」をデータベースから取得してディスプレイ装置に表示する。
【0052】
なお、S300において行先階として複数の階が情報として取得されていた場合には、S600において、高層階から下降方向に順に押下された階層フロアの各々に停まるまで各々の出発階に対応するコンテンツを表示するように構成してもよい。
【0053】
商業施設に対する出入口が1階などの低層階にあり、この例のように9階などの上層階からエレベータに乗って1階に向かう場合には、帰宅のために出入口階である1階に向かっていることが相対的に多いと考えられる。そこで、データベースには、エレベータが下降する場合であって行先階が1階フロアである場合には、乗客は相対的に帰宅する可能性があると想定して、次回の来店率を向上させることを目的として、今回立ち寄った9階フロアの次回のイベント・セール・クーポン情報に関する情報等を表示できるように、「下降」、「9階」、「次回のイベント・セール・クーポン情報等」の情報が関係付けられて記憶されている。本例の場合、乗客が9階フロアからエレベータに乗ってきていることから、その乗客は、9階フロアの店舗カテゴリーに何らかの興味を持っていると思われるため、その乗客に対して、コンテンツとして、9階のカテゴリーに関連する次回のイベント・セール・クーポン等の案内を効率的に提供し、次回も当該商業施設の9階フロアに立ち寄ってもらうように促すことが可能となる。
【0054】
3.変形例
上記の例では、エレベータが上昇するときには乗客は目的地に向かっていることを想定しており、エレベータが下降しているときは乗客が商業施設から出て帰ることを想定している。
【0055】
しかしながら、同じような商業施設であっても、出入口である駐車場が屋上にある場合には、帰る方向は、エレベータの上昇方向となる。したがって、駐車場が屋上にある場合には、データベースの構成として、「上昇」と「出発階」とを紐づけると共に、「下降」と「行先階」とを紐づけるように構成し、上記のデータベースの構成に対してエレベータの上昇と下降との間で各階に対応するコンテンツを入れ替えるように構成してもよい。
【0056】
また、商業施設ではなくマンションに設置されたエレベータの場合を想定すると、コンテンツ例として、上り方向の運行時は自宅のある階層に向かっていることが想定され、リラックス効果のある映像を表示するようにコンテンツを登録しておいてもよく、また、下り方向の運行時に対しては最寄り駅の運行情報、周辺店舗の広告を表示するようにコンテンツを登録しておいてもよい。
【0057】
乗客が一度にエレベータに乗る時間はかなり短いのが一般的ではあるが、一方で、エレベータ内は閉鎖的空間であり、エレベータのかご内のディスプレイは短時間でも注目されやすい存在となり得るものであり、そこに表示される広告コンテンツは乗客にインパクトを与えやすいものとなり得る。そのようなエレベータ内という特殊な環境において、不特定多数に向けたコンテンツを単に提供するのではなく、本発明のように乗客の行動の意図を考慮して選択的にコンテンツを提供することは情報発信ツールとしては極めて効果的である。
【0058】
以上のように、本発明に係るサイネージシステムの実施の一形態及び実施例について説明してきたが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、これに種々の変更を加え得るものであることは容易に理解される。そして、それらが特許請求の範囲の各請求項に記載した事項、及びそれと均等な事項の範囲内にある限り、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。上記の実施例は、対象物に対する影及び対象物が段差を有する場合に対してのものであったが、これはあくまでも一例であり、本発明がこの特定の具体例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、エレベータ内に設置されるディスプレイ装置に表示するために利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 エレベータ
200 ディスプレイ装置
300 制御部
400 情報取得部
500 記憶部
600 管理サーバ