(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20221011BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20221011BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2018219038
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 優一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 翔
(72)【発明者】
【氏名】間 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝正
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-164751(JP,A)
【文献】特開2014-157756(JP,A)
【文献】特開平09-156380(JP,A)
【文献】特開2013-244861(JP,A)
【文献】特開2018-165118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139786(US,A1)
【文献】特開2009-193942(JP,A)
【文献】特開2015-079564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0205891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリの冷却装置であって、
上記バッテリを収容し、上記車両のフロアパネルの下側に配置されたバッテリケースと、
このバッテリケースを上記フロアパネルに固定する固定用ブラケットと、を有し、
上記フロアパネルには、上記バッテリケースを上記車両の車幅方向に横断するように設けられたクロスメンバが取り付けられ、
上記固定用ブラケットは、上記クロスメンバよりも前側に取り付けられた第1固定用ブラケットと、上記クロスメンバよりも後側に取り付けられた第2固定用ブラケットから構成され、
上記固定用ブラケットと上記バッテリケースの底面により通風路が構成されることを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
上記固定用ブラケットは、上記固定用ブラケットと上記バッテリケースの底面によって閉断面が形成されるように構成され、上記通風路は、上記車両の前後方向に向けて開口している請求項1記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
上記固定用ブラケットは、上記通風路の前端における流路断面積が、前端よりも後方の部位における流路断面積よりも大きくなるように構成されている請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
上記バッテリケースの底面にはバッテリ凹部が形成され、上記バッテリ凹部の表面と、上記固定用ブラケットの間に上記通風路が形成される請求項1乃至3の何れか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
上記固定用ブラケットは、上記バッテリケースの底面に当接する固定部と、この固定部よりも上記バッテリケースの底面から離間した位置にある通風路形成部と、を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項6】
さらに、上記バッテリケースに取り付けられた第1シール部材を有し、上記第1シール部材は、上記通風路の前端よりも前方側に取り付けられ、
上記第1シール部材よりも前方側に原動機が配設され、上記原動機によって加熱された温度の高い空気が上記通風路に流入するのを抑制する請求項1乃至5の何れか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項7】
上記バッテリケースの底面には、上記クロスメンバと上記バッテリケースの底面との間に追加の通風路が形成されるように、第2シール部材が取り付けられている請求項
1記載のバッテリ冷却装置。
【請求項8】
さらに、上記バッテリケースを保護するように、上記バッテリケースに取り付けられたプロテクタを有し、上記プロテクタは、上記第1固定用ブラケットと上記第2固定用ブラケットの間に、上記車両の前後方向に延びるように取り付けられている請求項
1又は7に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項9】
さらに、上記車両の底面に取り付けられたアンダーカバーを有し、上記アンダーカバーは、上記バッテリケース及び上記固定用ブラケットを覆うと共に、上記通風路の前端開口に走行風を導入する開口部を有する請求項1乃至
8の何れか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ冷却装置に関し、特に、車両に搭載されたバッテリの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動するモータや、車両に搭載された電装品を作動させるため、通常、車両にはバッテリが搭載されている。このバッテリは、充電時や放電時に熱を発生するため、適正な温度範囲に入るように冷却しておく必要がある。バッテリの温度が適正範囲から逸脱すると、バッテリの性能が低下したり、バッテリの耐用年数が短くなったりするという問題が発生する。
【0003】
特表2013-538416号公報(特許文献1)には、車両バッテリ用の冷却装置が記載されている。この車両バッテリ用の冷却装置においては、バッテリセル群が冷却床の上に配置され、この冷却床の内部には、U字形に湾曲した複数の平坦配管が設けられており、この平坦配管に冷却液を流すことによりバッテリを冷却している。また、車両に搭載されたバッテリのケースに、冷却ファンにより冷却風を送ってバッテリを冷却する冷却装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の車両バッテリ用の冷却装置では、バッテリを冷却するために、内部に冷却液が流れる冷却床、この冷却床の平坦配管に冷却液を循環させるための循環ポンプ、及び冷却液を冷却するための熱交換器等が必要になり、車両の重量増加、コスト増加に繋がるという問題がある。また、冷却ファン等によって冷却風を送る場合にも、バッテリの冷却用の特別な装置が必要となり、車両の重量増加、コスト増加に繋がるという問題がある。また、循環ポンプや冷却ファンの駆動にもバッテリの電力を必要とする場合があるので、バッテリを冷却するための装置が、バッテリを発熱させてしまうという問題もある。
【0006】
従って、本発明は、簡単な構造で車両に搭載されたバッテリを冷却することができるバッテリ冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載されたバッテリの冷却装置であって、バッテリを収容し、車両のフロアパネルの下側に配置されたバッテリケースと、このバッテリケースをフロアパネルに固定する固定用ブラケットと、を有し、フロアパネルには、バッテリケースを車両の車幅方向に横断するように設けられたクロスメンバが取り付けられ、固定用ブラケットは、クロスメンバよりも前側に取り付けられた第1固定用ブラケットと、クロスメンバよりも後側に取り付けられた第2固定用ブラケットから構成され、固定用ブラケットとバッテリケースの底面により通風路が構成されることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、固定用ブラケットによって、バッテリケースが車両のフロアパネルの下側に固定される。また、固定用ブラケットとバッテリケースの底面との間には通風路が形成され、この通風路内に車両の走行風が流れることにより、バッテリケースが冷却される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、バッテリケースをフロアパネルの下側に固定するための固定用ブラケットによって通風路が形成され、この通風路を流れる走行風によってバッテリケースが冷却されるので、バッテリを冷却するための特別な器材を使用することなくバッテリを冷却することができる。このため、バッテリを冷却するための装置によって、車両の重量が大きく増加したり、コストが大きく増加したりするのを防止することができる。
また、一般に、車両のフロアパネルには、所要の強度を確保すること等を目的として、種々の部材が取り付けられる。上記のように構成された本発明によれば、固定用ブラケットが、クロスメンバよりも前側の第1固定用ブラケットと、後側の第2固定用ブラケットから構成されている。このため、バッテリケースを横断するようにクロスメンバが設けられている場合であっても、十分な長さの通風路を形成することができ、バッテリケース全体を冷却することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、固定用ブラケットは、固定用ブラケットとバッテリケースの底面によって閉断面が形成されるように構成され、通風路は、車両の前後方向に向けて開口している。
【0011】
このように構成された本発明によれば、固定用ブラケットとバッテリケースの底面によって閉断面が形成されるので、通風路内を流れる走行風の一部が、通風路の途中から外部へ流出するのを防止することができ、バッテリを効果的に冷却することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、固定用ブラケットは、通風路の前端における流路断面積が、前端よりも後方の部位における流路断面積よりも大きくなるように構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、通風路の前端における流路断面積が大きくされているので、より多くの空気を通風路内に導入することができる。また、前端の流路断面積が後方の部位における流路断面積よりも大きくされているので、通風路内に導入された空気が通風路内で加速され、より冷却効果を高くすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、バッテリケースの底面にはバッテリ凹部が形成され、バッテリ凹部の表面と、固定用ブラケットの間に通風路が形成される。
このように構成された本発明によれば、バッテリケース底面のバッテリ凹部によって通風路が形成されるので、通風路の流路断面積を大きくすることができ、より多くの空気を流すことにより冷却効果をより高くすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、固定用ブラケットは、バッテリケースの底面に当接する固定部と、この固定部よりもバッテリケースの底面から離間した位置にある通風路形成部と、を有する。
【0016】
このように構成された本発明によれば、固定用ブラケットが固定部と、通風路形成部とを有するので、簡単な構造の固定用ブラケットでバッテリケースを固定すると同時に、通風路を構成することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、さらに、バッテリケースに取り付けられた第1シール部材を有し、第1シール部材は、通風路の前端よりも前方側に取り付けられ、第1シール部材よりも前方側に原動機が配設され、原動機によって加熱された温度の高い空気が通風路に流入するのを抑制する。
【0018】
一般に、車両の底部には、エンジン等で加熱された高温の空気が流れる部位があり、このような高温の空気が通風路に流入すると、バッテリの冷却効率が低下してしまう。上記のように構成された本発明によれば、温度の高い空気が通風路に流入するのを抑制する、通風路の前端よりも前方側に取り付けられた第1シール部材を有するので、高温の空気が通風路に流入するのを抑制することができ、冷却効率の大幅な低下を防止することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、バッテリケースの底面には、クロスメンバとバッテリケースの底面との間に追加の通風路が形成されるように、第2シール部材が取り付けられている。
【0022】
このように構成された本発明によれば、バッテリケースの底面に第2シール部材が取り付けられ、クロスメンバとバッテリケースの底面との間に追加の通風路が形成されるので、クロスメンバの部分も通風路として活用することができ、冷却効果をより高めることができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、さらに、バッテリケースを保護するように、バッテリケースに取り付けられたプロテクタを有し、プロテクタは、第1固定用ブラケットと第2固定用ブラケットの間に、車両の前後方向に延びるように取り付けられている。
【0024】
このように構成された本発明によれば、第1固定用ブラケットと第2固定用ブラケットの間にプロテクタが取り付けられているので、車両が側面等から衝突され、フロアパネルが変形された場合であっても、プロテクタによりバッテリケースの損傷を抑制することができる。
【0025】
本発明において、好ましくは、さらに、車両の底面に取り付けられたアンダーカバーを有し、アンダーカバーは、バッテリケース及び固定用ブラケットを覆うと共に、通風路の前端開口に走行風を導入する開口部を有する。
【0026】
このように構成された本発明によれば、車両の底面にアンダーカバーが取り付けられているので、車両の空力特性を向上させることができる。また、アンダーカバーには、通風路の前端開口に走行風を導入する開口部が設けられているので、車両の底面がアンダーカバーで覆われた場合においても、十分な走行風を通風路に導入することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のバッテリ冷却装置によれば、簡単な構造で車両に搭載されたバッテリを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の底面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の底面図であって、アンダーカバーを取り外した状態を示す図である。
【
図4】
図3において、さらに、クロスメンバを取り外した状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を、車体から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を、車体から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置に備えられている第1固定用ブラケットの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置に備えられている第2固定用ブラケットの斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置が車両の車体に取り付けられた状態を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図9におけるX-X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の側面図である。
図2は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の底面図である。
図3は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を搭載した車両の底面図であって、アンダーカバーを取り外した状態を示す図である。
図4は、
図3において、さらに、クロスメンバを取り外した状態を示す図である。
【0030】
図1に示すように、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置10は、車両1の底部に設けられており、車両1の底部に配置されたバッテリを冷却するように構成されている。具体的には、車両1に搭載されたバッテリ(バッテリセルの集合体)はバッテリケース12の中に収容されている。このバッテリケース12は、車両1のフロアパネル2の下側に、車両1の側面視において、前輪6aと後輪6bの間に、車両1の前後方向に延びるように配置されている。さらに、バッテリケース12は、アンダーカバー4によって下方から覆われているため、バッテリケース12は、車両1の底部において、フロアパネル2とアンダーカバー4の間に位置する。
【0031】
図2に示すように、車両1の底面に取り付けられたアンダーカバー4は、車幅方向に並べて配置された第1カバー4a、第2カバー4b、及び第3カバー4cから構成されている。車両1のフロアパネル2の一部は、これら第1カバー4a、第2カバー4b、及び第3カバー4cによって覆われ、本実施形態のバッテリ冷却装置10は、アンダーカバー4のうちの第3カバー4cによって覆われている。また、本実施形態においては、車両1の前部にエンジン8が配置されており、このエンジン8から延びる排気管14が、車両1の底部中央を車両1の後方に向けて延びている。排気管14は、フロアパネル2の車幅方向中央に車両1の前後方向に延びるように形成されたトンネル部16内に収容されており、その一部が車幅方向中央に配置された第2カバー4bによって覆われている。
【0032】
図3に示すように、車両1のアンダーカバー4を取り外した状態では、トンネル部16の両側に、車両1の前後方向に延びるように夫々設けられたトンネルサイドフレーム18a、18bが露出する。また、トンネルサイドフレーム18a、18bの両外側には、車両1の前後方向に延びるように、概ねハの字形に配置されたフロアフレーム20a、20bが夫々設けられている。さらに、車両1の両側に沿って、サイドシル22a、22bが夫々設けられている。これらのトンネルサイドフレーム18a、18b、フロアフレーム20a、20b、及びサイドシル22a、22bは、フロアパネル2の下側に固定され、フロアパネル2を補強すると共に、車両1全体の剛性を高めている。
【0033】
さらに、2本のトンネルサイドフレーム18a、18bの間には、トンネル部16を横断するように、車幅方向に延びる第1トンネルクロスメンバ24a及び第2トンネルクロスメンバ24bが取り付けられている。第1トンネルクロスメンバ24aは細長い板状の部材であり、第2トンネルクロスメンバ24bはX字型の板状の部材であり、トンネル部16内に収容された排気管14等を下側から支持している。また、トンネル部16を横断するように第1トンネルクロスメンバ24a及び第2トンネルクロスメンバ24bを取り付けることにより、車両1の側面衝突時においてトンネル部16の変形を抑制する。
【0034】
また、トンネルサイドフレーム18bとフロアフレーム20bの間の、車両1の前後方向に延びる細長い凹部26内には、細長い直方体状のバッテリケース12が収容されている。この細長い凹部26を横断するように、トンネルサイドフレーム18b及びフロアフレーム20bには、クロスメンバである第1凹部クロスメンバ28a及び第2凹部クロスメンバ28bが取り付けられている。これら第1凹部クロスメンバ28a及び第2凹部クロスメンバ28bは、夫々長方形板状の部材であり、車両1の側面衝突時において凹部26の変形を抑制する。
【0035】
さらに、凹部26を横断するように、バッテリケース12をフロアパネル2に固定する固定用ブラケットが、トンネルサイドフレーム18b及びフロアフレーム20bに取り付けられている。この固定用ブラケットは、第1固定用ブラケット30、及び第2固定用ブラケット32からなり、バッテリケース12の底面に当接することにより、バッテリケース12をフロアパネル2に固定している。
【0036】
第1固定用ブラケット30は、車両1の前後方向で第1凹部クロスメンバ28aよりも前側に配置され、第2固定用ブラケット32は、車両1の前後方向で第1凹部クロスメンバ28aと第2凹部クロスメンバ28bの間に配置されている。従って、これらの部材は、車両1の前側から、第1固定用ブラケット30、第1凹部クロスメンバ28a、第2固定用ブラケット32、第2凹部クロスメンバ28bの順に配置されている。これら第1固定用ブラケット30、及び第2固定用ブラケット32の詳細については後述する。
【0037】
図4に示すように、バッテリケース12には、車両1の前後方向前側の端部にハーネス12aが取り付けられ、このハーネス12aを介してバッテリに蓄積された電力が各種車載電気機器に供給される。また、バッテリケース12の前側の端部には、バッテリケース12の周囲を取り囲むように第1シール部材34が取り付けられている。さらに、バッテリケース12の、第1凹部クロスメンバ28aと対向する部分には、第2シール部材36が取り付けられている。これら、第1シール部材34、第2シール部材36の詳細な構成、及び作用については後述する。
【0038】
次に、
図5乃至
図10を参照して、バッテリの冷却構造を説明する。
図5及び
図6は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置を、車体から取り外した状態を示す斜視図である。
図7は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置に備えられている第1固定用ブラケットの斜視図である。
図8は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置に備えられている第2固定用ブラケットの斜視図である。
図9は、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置が車両1の車体に取り付けられた状態を拡大して示す断面図である。
図10は、
図9におけるX-X線に沿う断面図である。
【0039】
図5及び
図6に示すように、本発明の実施形態によるバッテリ冷却装置10は、金属製のバッテリケース12と、これを下方から支持すると共に、フロアパネル2に固定する固定用ブラケットである第1固定用ブラケット30及び第2固定用ブラケット32から構成されている。これら第1、第2固定用ブラケットは、バッテリケース12の底面に当接することにより、バッテリケース12をフロアパネル2に押さえつけて固定する。
【0040】
バッテリケース12の、車両1前後方向前側の端部には、ハーネス12a接続用の端子12bが設けられており、この端子12b及びこれに接続されたハーネス12aの電極は、端子カバー12cによって覆われている。この端子カバー12cの後ろ側には、バッテリケース12の周囲を一周するように、弾性部材からなる第1シール部材34が配置されている。この第1シール部材34は、アンダーカバー4(第3カバー4c)が取り付けられた状態では、第3カバー4cと当接して、バッテリケース12の底面と第3カバー4cの間をシールする。
【0041】
また、バッテリケース12の底面には、バッテリ凹部38が、細長いバッテリケース12の長手方向に延びるように設けられている。このバッテリ凹部38は、幅一定の浅く、幅広の溝であり、第1シール部材34の後ろ側からバッテリケース12の後端まで、バッテリケース12の長手方向のほぼ全体に亘って設けられている。
【0042】
さらに、このバッテリ凹部38の両側には、第1固定用ブラケット30と第2固定用ブラケット32の間に、細長い板状の弾性部材からなる第2シール部材36が取り付けられている。この第2シール部材36は、第1凹部クロスメンバ28aが取り付けられた状態では、第1凹部クロスメンバ28aと当接して、バッテリケース12の底面と第1凹部クロスメンバ28aの間をシールする。
【0043】
また、
図6に示すように、バッテリケース12の側面には、薄板状のプロテクタ39が取り付けられている。このプロテクタ39は、第1固定用ブラケット30と第2固定用ブラケット32の間に、車両1の前後方向に延びるように取り付けられており、車両1の側面衝突時等において、バッテリケース12及びその中のバッテリ(図示せず)を保護する。
【0044】
図7に示すように、第1固定用ブラケット30は、金属板をプレス加工等により曲げて形成した部材であり、中央の通風路形成部30aと、この通風路形成部30aの両側に夫々形成された固定部30bと、を有する。さらに、各固定部30bの両側から張り出すように、アーム部30cが夫々形成されている。第1固定用ブラケット30を車両1に装着する際には、これらのアーム部30cがボルト(図示せず)によってトンネルサイドフレーム18b及びフロアフレーム20bに夫々固定される。
【0045】
通風路形成部30aは、
図7において、両側の固定部30bから隆起するように曲げ加工された長方形状の領域であり、通風路形成部30aは固定部30bよりもバッテリケース12の底面から離間した位置にある。(なお、通風路形成部30aは、車両1に装着された状態では、固定部30bよりも下方に位置する。)また、通風路形成部30aは、バッテリケース12底面のバッテリ凹部38とほぼ同一の幅を有し、第1固定用ブラケット30によってバッテリケース12を固定している状態では、バッテリ凹部38と対向するように配置される。これにより、通風路形成部30aとバッテリケース12の底面との間に通風路が形成される。一方、通風路形成部30aの両側の固定部30bは、第1固定用ブラケット30によってバッテリケース12を固定している状態では、バッテリ凹部38の両外側の部分に当接して、バッテリケース12を所定の位置に押さえている。さらに、通風路形成部30aの前側の端部30d(
図7における奥側の端部)は、後側の端部(
図7における手前の端部)よりも高く形成されている。この通風路形成部30aの高く形成された前側の端部30dは車両1の前側に向けて配置され、これにより、通風路形成部30aとバッテリケース12の底面との間に形成される通風路の前端開口の開口面積が大きくされる。
【0046】
次に、
図8に示すように、第2固定用ブラケット32も、第1固定用ブラケット30と同様に、金属板をプレス加工等により曲げて形成した部材であり、中央の通風路形成部32aと、この通風路形成部32aの両側に夫々形成された固定部32bと、を有する。さらに、各固定部32bの両側から張り出すように、アーム部32cが夫々形成されている。第2固定用ブラケット32を車両1に装着する際には、これらのアーム部32cがボルト(図示せず)によってトンネルサイドフレーム18b及びフロアフレーム20bに夫々固定される。
【0047】
通風路形成部32aは、
図8において、両側の固定部32bから一定の高さで隆起するように曲げ加工された台形状の領域であり、通風路形成部32aは固定部32bよりもバッテリケース12の底面から離間した位置にある。(なお、通風路形成部32aは、車両1に装着された状態では、固定部32bよりも下方に位置する。)通風路形成部32aは、第2固定用ブラケット32によってバッテリケース12を固定している状態では、バッテリ凹部38と対向するように配置される。これにより、通風路形成部32aとバッテリケース12の底面との間に通風路が形成される。また、通風路形成部32aは、幅広の底辺部32dがバッテリケース12底面のバッテリ凹部38とほぼ同一の幅を有し、幅の狭い上辺部はバッテリ凹部38よりも幅が狭くなっている。一方、通風路形成部32aの両側の固定部32bは、第2固定用ブラケット32によってバッテリケース12を固定している状態では、バッテリ凹部38の両外側の部分に当接して、バッテリケース12を所定の位置に押さえている。
【0048】
さらに、通風路形成部32aの幅広の底辺部32dは、車両1の前側に向けて配置される。これにより、通風路形成部30aとバッテリケース12の底面との間に形成される通風路は、後方に向かって流路断面積が狭くなるように形成される。
【0049】
次に、
図9及び
図10を参照して、第1固定用ブラケット30及び第2固定用ブラケット32等によって形成される通風路を説明する。
図9に示すように、バッテリケース12を第1固定用ブラケット30によってフロアパネル2に固定した状態では、第1固定用ブラケット30の通風路形成部30aとバッテリケース12のバッテリ凹部38の表面の間に隙間が形成され、この隙間が通風路40(
図10)として機能する。
図10に示すように、第1固定用ブラケット30とバッテリケース12の底面によって形成される通風路40は、閉断面を形成している。この通風路40は、車両1の前後方向(バッテリケース12の長手方向)に延び、前後方向に向けて開口するように形成される。同様に、第2固定用ブラケット32の通風路形成部32aとバッテリ凹部38の間にも隙間が形成され、この隙間も通風路42として機能する。さらに、第1固定用ブラケット30と第2固定用ブラケット32の間には第1凹部クロスメンバ28aが取り付けられ、この第1凹部クロスメンバ28aと、バッテリケース12の底面の間には2本の第2シール部材36が平行に挟まれている。これら第1凹部クロスメンバ28a、バッテリケース12(のバッテリ凹部38)、及び2本の第2シール部材36によって囲まれた空間も追加の通風路44として機能する。
【0050】
このように通風路40、42及び追加の通風路44を形成しておくことにより、車両1が走行した際、通風路40、42及び追加の通風路44の中には走行風が流れる。このため、走行風によって各通風路の一部を形成しているバッテリケース12が冷却される。従って、第1固定用ブラケット30、第2固定用ブラケット32、及びバッテリケース12は、バッテリ冷却装置10として機能している。同様に、第1凹部クロスメンバ28a、第2シール部材36及びバッテリケース12もバッテリ冷却装置10として機能している。
【0051】
ここで、上述したように、バッテリケース12、及び第1固定用ブラケット30、第2固定用ブラケット32及び第1凹部クロスメンバ28aはアンダーカバー4(第3カバー4c)によって覆われている。しかしながら、
図2及び
図9に示すように、第3カバー4cには窪み部46が設けられており、この窪み部46の内部には、走行風を導入するための開口部46aが形成されている。この開口部46aは車両1の前方に向けて開口していると共に、第1固定用ブラケット30の前側の端部30dによって形成された通風路40の前端開口と整合した位置に設けられている。このため、車体下側の空気が開口部46aから効果的に導入され、流入した走行風は前端開口を通って通風路40の中に円滑に流入し、さらに追加の通風路44、及び通風路42を通過して、バッテリケース12の底面全体を冷却する。
【0052】
また、第1固定用ブラケット30の前側の端部30dは、バッテリケース12の底面から大きく離間するように形成されているため、通風路40の前端開口が大きくなり、多量の空気を通風路40内に導入することができる。即ち、第1固定用ブラケット30は、通風路40の前端における流路断面積が、前端よりも後方の部位における流路断面積よりも大きくなるように構成されている。このため、通風路40の前端開口から流入した走行風は、通風路40内で加速されながら車両1の後方に向けて流れる。
【0053】
通風路40を通過した走行風は、さらに、バッテリケース12と第1凹部クロスメンバ28aの間に形成された追加の通風路44の内部に流入する。この第1凹部クロスメンバ28aは、車両1の構造部材であり、バッテリケース12を装着するための部材ではない。しかしながら、バッテリケース12との間の隙間を第2シール部材36によってシールすることにより、追加の通風路44を形成する部材として機能している。
【0054】
追加の通風路44を通過した走行風は、さらに、バッテリケース12と第2固定用ブラケット32の間に形成された通風路42の内部に流入する。第2固定用ブラケット32の通風路形成部32aは、後方に向けて幅が狭くなるように形成されている(
図8)ので、通風路42は前端における流路断面積が前端よりも後方の部位における流路断面積よりも大きくなる。このため、通風路42の前端から流入した走行風は、通風路42内を加速されながら車両1の後方に向けて流れて流出する。
【0055】
また、
図9に示すように、バッテリケース12の前端部に取り付けられた第1シール部材34は、第3カバー4cに設けられた窪み部46の裏側に位置している。即ち、第1シール部材34は、通風路40の前端開口よりも車両1の前側に設けられており、第3カバー4cとバッテリケース12の間の隙間をシールしている。このため、窪み部46に設けられた開口部46aから雨水等が侵入した場合でも、雨水等が開口部46aよりも前側に流れてバッテリケース12の端子12b等に接触するのを抑制することができる。さらに、上述したように、本実施形態においては、車両1の前部にエンジン8が配置されており、エンジンルーム(図示せず)内等でエンジン8の熱によって加熱された空気は、車両1の後方に向かって流れる。しかしながら、第3カバー4cとバッテリケース12の間の隙間は第1シール部材34によってシールされているので、エンジンルーム(図示せず)内等で加熱された空気が前端開口から通風路40内に流れるのを抑制することができ、冷却効率を向上させることができる。
【0056】
本発明の実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、バッテリケース12をフロアパネル2の下側に固定するための固定用ブラケット(第1固定用ブラケット30、第2固定用ブラケット32)によって通風路40、42が形成され、この通風路を流れる走行風によってバッテリケース12が冷却される(
図9)ので、バッテリケース12内のバッテリを冷却するための特別な器材を使用することなくバッテリを冷却することができる。このため、バッテリを冷却するための装置によって、車両1の重量が大きく増加したり、コストが大きく増加したりするのを防止することができる。
【0057】
また、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、第1固定用ブラケット30、及び第2固定用ブラケット32とバッテリケース12の底面によって閉断面が形成される(
図10)ので、通風路40、42内を流れる走行風の一部が、通風路の途中から外部へ流出するのを防止することができ、バッテリを効果的に冷却することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、通風路40、42の前端における流路断面積が大きくされている(
図7、
図8)ので、より多くの空気を通風路内に導入することができる。また、前端の流路断面積が後方の部位における流路断面積よりも大きくされているので、通風路内に導入された空気が通風路内で加速され、より冷却効果を高くすることができる。
【0059】
また、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、バッテリケース12底面のバッテリ凹部38によって通風路40、42が形成されるので、通風路の流路断面積を大きくすることができ、より多くの空気を流すことにより冷却効果をより高くすることができる。
【0060】
さらに、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、第1固定用ブラケット30が固定部30bと、通風路形成部30aとを有し(
図7)、第2固定用ブラケット32が固定部32bと、通風路形成部32aとを有する(
図8)。このため、簡単な構造の第1、第2固定用ブラケットでバッテリケース12を固定すると同時に、通風路40、42を構成することができる。
【0061】
また、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、温度の高い空気が通風路40に流入するのを抑制する、通風路40の前端よりも前方側に取り付けられた第1シール部材34を有するので、高温の空気が通風路40に流入するのを抑制することができ、冷却効率の大幅な低下を防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、固定用ブラケットが、第1凹部クロスメンバ28aよりも前側の第1固定用ブラケット30と、後側の第2固定用ブラケット32から構成されている。このため、バッテリケース12を横断するように第1凹部クロスメンバ28aが設けられている場合であっても、十分な長さの通風路を形成することができ、バッテリケース12全体を冷却することができる。
【0063】
また、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、バッテリケース12の底面に第2シール部材36が取り付けられ、第1凹部クロスメンバ28aとバッテリケース12の底面との間に追加の通風路44が形成されるので、第1凹部クロスメンバ28aの部分も通風路として活用することができ、冷却効果をより高めることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、第1固定用ブラケット30と第2固定用ブラケット32の間にプロテクタ39が取り付けられているので、車両1が側面等から衝突され、フロアパネル2が変形された場合であっても、プロテクタ39によりバッテリケース12の損傷を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態のバッテリ冷却装置10によれば、車両1の底面にアンダーカバー4が取り付けられているので、車両1の空力特性を向上させることができる。また、アンダーカバー(第3カバー4c)には、通風路40の前端開口に走行風を導入する開口部46a(
図2)が設けられているので、車両1の底面がアンダーカバー4で覆われた場合においても、十分な走行風を通風路40に導入することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、固定用ブラケットが第1及び第2固定用ブラケットから構成されていたが、固定用ブラケットは1つだけ、或いは3つ以上設けられていても良い。また、上述した実施形態においては、バッテリケース12の底面にバッテリ凹部38を設け、第1、第2固定用ブラケットに通風路形成部30a、32aを設けることにより通風路が形成されていた。しかしながら、通風路は、バッテリ凹部又は通風路形成部の何れか一方のみによって形成することもできる。さらに、上述した実施形態においては、車両1のアンダーカバー4は第1乃至第3カバーから構成され、第1、第2固定用ブラケットは第3カバー4cによって覆われていた。しかしながら、アンダーカバー4は設けられていなくても良く、また、アンダーカバー4を任意の数の部材によって構成することもできる。また、上述した実施形態においては、車両には、原動機としてエンジンが備えられていたが、エンジンの代わりに、又はエンジンに加えて、モータや、モータ/ジェネレータ等の回転電気機械を備えた車両に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
2 フロアパネル
4 アンダーカバー
4a 第1カバー
4b 第2カバー
4c 第3カバー
6a 前輪
6b 後輪
8 エンジン
10 バッテリ冷却装置
12 バッテリケース
12a ハーネス
12b 端子
12c 端子カバー
14 排気管
16 トンネル部
18a、18b トンネルサイドフレーム
20a、20b フロアフレーム
22a、22b サイドシル
24a 第1トンネルクロスメンバ
24b 第2トンネルクロスメンバ
26 凹部
28a 第1凹部クロスメンバ(クロスメンバ)
28b 第2凹部クロスメンバ
30 第1固定用ブラケット(固定用ブラケット)
30a 通風路形成部
30b 固定部
30c アーム部
30d 前側の端部
32 第2固定用ブラケット(固定用ブラケット)
32a 通風路形成部
32b 固定部
32c アーム部
32d 底辺部
34 第1シール部材
36 第2シール部材
38 バッテリ凹部
39 プロテクタ
40 通風路
42 通風路
44 追加の通風路
46 窪み部
46a 開口部