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<図1>
  • 特許-血流センサーおよび患部診断システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】血流センサーおよび患部診断システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018200142
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020065697
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草井 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】諸富 公昭
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-034432(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035460(WO,A1)
【文献】特開2001-245860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281076(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に発光部および受光部からなる検出部を有する検出基板と、
生体の皮膚に貼り付けされることで前記検出基板の検出部を生体の皮膚に当接させる貼付部と、
前記検出基板の表面上および/または前記検出基板の周囲に設けられ、前記検出基板の表面よりも表側に突出するように形成された弾性部材とを備え
前記貼付部は、前記検出基板の裏面に当接し、かつ、正面視において表面側に前記検出基板の周端よりも大きい外形を有する粘着層が形成された貼付テープである
ことを特徴とする血流センサー。
【請求項2】
前記弾性部材は、正面視において、前記検出基板の周りを囲むように設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の血流センサー。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記検出基板上で、かつ、正面視において前記検出部の周りを囲むように設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の血流センサー。
【請求項4】
前記弾性部材が、遮光性を有する材料で形成されており、該弾性部材が、前記貼付部が皮膚に貼り付けられたときに、前記検出部への外光の入射を遮断する遮光部を兼ねていることを特徴とする請求項2または3に記載の血流センサー。
【請求項5】
前記貼付テープは、遮光性を有する材料で形成されており、該貼付テープが、前記貼付部が皮膚に貼り付けられたときに、前記検出部への外光の入射を遮断する遮光部を兼ねている
ことを特徴とする請求項記載の血流センサー。
【請求項6】
前記検出基板と前記貼付テープとの間に設けられ、正面視において、前記検出基板より大きくかつ前記貼付テープよりも小さい弾性体からなる弾性基板をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の血流センサー。
【請求項7】
前記検出基板は、表面積が0.1cm以上かつ2.0cm以下であり、厚さが0.5mm以上かつ3.0mm以下である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の血流センサー。
【請求項8】
前記検出基板の裏面に、前記貼付テープを貫通してリード線が接続されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の血流センサー。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の血流センサーと、前記血流センサーとの通信が可能に構成された演算装置とを備える患部診断システムであって、
前記演算装置は、
前記発光部から患部に照射光を照射させる工程と、
前記受光部から患部からの反射光に基づく受光信号を受信する工程と、
前記照射光と前記反射光の差分に基づいて患部の血流量を算出する工程と、
前記血流量から患部の状態を診断する工程と、を実施する
ことを特徴とする患部診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式の血流センサー並びにこれを用いた患部診断方法および患部診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血流を管理することは、医学的な見地から非常に重要である。例えば、糖尿病において、高血糖により四肢の末梢部の血管が閉塞性動脈硬化症を起こした場合、その部分が壊死してしまうおそれがある。そこで、光学式のセンサーを用いて、動脈および静脈の血流等のデータを測定し、その結果に基づく血中酸素濃度から末梢部の血流状況を確認する方法が知られている。
【0003】
血中酸素濃度の測定に関し、例えば、特許文献1には、対をなすシート状導光体間に指先を挟みこむように構成されたパルスオキシメーターが開示されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、日常の健康管理に血流データを活用する技術も知られている。このものでは、生体情報検出装置の筐体が腕時計を模した形状をしており、被験者の装着側に生体センサーが取り付けられ、脈拍数を管理することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-177955号公報
【文献】特開2012-254194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2のような従来技術は、事故等によって指尖損傷や四肢の切断後に再接合手術を受けた患者や、火傷や床擦れなどにより皮膚移植を受けた患者等の患部には使用が難しいという問題がある。
【0007】
具体的に、手術等によって指先等が再接合されているような場合、患部は包帯等により保護されている。したがって、血流測定の際には、包帯を取り除いて、患部や患部周辺を露出させた状態で血流センサーを当てて血流を測定する必要がある。また、測定終了後には、血流センサーを取り外して再度包帯を巻きなおす必要があり、大変面倒である。
【0008】
これに対し、血流センサーを患部や患部周辺(以下、患部と患部周辺とをまとめて単に患部ともいう)に押し当てたままで包帯を巻くことも考えられる。しかしながら、パルスオキシメーターやスマートウォッチは、サイズが比較的大きいので、患部や患部周辺が長時間圧迫されてしまい、患部や患部周辺の細胞が壊死を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたものであり、患部の皮膚に長時間貼り付けることが可能な血流センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る血流センサーは、表面に発光部および受光部からなる検出部を有する検出基板と、生体の皮膚に貼り付けされることで前記検出基板の検出部を生体の皮膚に当接させる貼付部と、前記検出基板の表面上および/または前記検出基板の周囲に設けられ、前記検出基板の表面よりも表側に突出するように形成された弾性部材とを備えていることを特徴とする。
【0011】
血流センサーが上記構成を採ることによって、検出基板の表面側を患部に向けた状態で貼付部により患部に検出部が当接するように貼り付けて、検出部により患部の血流を測定することができる。また、検出基板の表面よりも先に弾性部材が患部に当接するように構成されているため、貼付部の貼り付けによる圧力が分散されて緩和され、患部および患部周辺の圧迫を抑制することができる。これにより、阻血性障害が引き起こされない。すなわち本発明の血流センサーは、患部の皮膚に長時間貼り付けることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によると、患部に長時間貼り付けることが可能な血流センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】血流センサーを表面側から見た正面図
図2図1のII-II線断面図
図3】血流センサーの貼り付け状態を示す図
図4】血流センサーの他の例を示す正面図
図5図4のV-V線断面図
図6】血流センサーの他の例を示す正面図
図7図4のVII-VII線断面図
図8】患部診断方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
以下の図面では、共通または対応する構成要素には、同一の符号を付している。また、同一の符号を付した共通の構成について、説明を省略する場合がある。
【0016】
図1および図4に示すように、本実施形態の血流センサー10は、表面に検出部22を有する検出基板21と、検出部22と後述するリード線50との間の接続配線(図示省略)が形成された配線基板28と、患部に貼り付けられることで患部に検出部22を当接させる貼付テープ30とを備えている。さらに、血流センサー10には、検出基板21の表面よりも表側(被験者側)に向かって突出させることで、貼付テープ30が皮膚に貼り付けられたときに皮膚に当接するように形成された弾性部材40が設けられている。弾性部材40の構成については、後ほど詳細に説明する。
【0017】
このような弾性部材40を設けることで、貼付テープ30が患部(皮膚)に貼り付けられたときに、検出部22を患部に当接させる一方で、検出基板21による患部への接触圧力を軽減させることができるようになっている。すなわち、本開示の血流センサー10は、検出基板21が患部に強く押し付けられて患部を圧迫しないようになっている。
【0018】
以下、図面を参照しつつ、各構成要素について、具体的に説明する。
【0019】
-検出基板-
検出基板21は、発光素子25,26から生体内に光を照射し、受光素子24によってその反射光を受光する機能を有する基板である。発光素子25,26は、発光部に相当し、受光素子24は受光部に相当する。
【0020】
具体的に、検出基板21の表面には、中央部分に受光素子24が設けられ、その受光素子24を挟むように、互いに波長が異なる2つの発光素子25,26が並べて配置されている。
【0021】
なお、発光素子は2種以上の互いに異なる波長で発光可能であればよい。すなわち、発光素子は、1つでも複数でもよいが、測定精度と検出基板21の小型化の観点から2つが好ましい。また、受光素子24の位置は、特に制限されないが、患部との密着性を高める観点から検出基板21の中央部分が望ましい。さらに、2つの発光素子25,26を用いる場合には、測定精度の観点から、受光素子24を挟むようにして2つの発光素子25,26が配置されていると好ましく、それぞれの発光素子25,26から受光素子24までの距離が互いに等しいとより好ましい。
【0022】
検出基板21の形状は、患部である体の各部位に適していればよく、特に限定されるものではないが、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形等である。
【0023】
検出基板21のサイズは、特に限定されるものではないが、患部に貼り付ける際に関節や皮膚の凹凸形状によって浮きが生じないようにするために、小さいことが好ましい。また、検出基板21の厚さは、貼り付ける際に患部を極力圧迫しないようにするために、薄いことが望ましい。具体的に、検出基板21は、表面積が、例えば0.1~2cmであることが望ましい。また、検出基板21の厚さが、受光素子24と発光素子25,26の高さを含めて0.5~3mmであることが望ましい。ただし、検出基板21の厚さは、より薄いことが望ましいので0.5mm以下であってもよい。
【0024】
ここで、検出基板21の表面とは、表面に形成された凹凸を含めて、患者(患部)と対向する側の面を指すものとする。後ほど説明する配線基板28や貼付テープ30についても同様とする。
【0025】
検出基板21を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、金属や樹脂等を使用することができる。好ましくは、患者の皮膚に直接長期間にわたって接することができるように、アレルギー反応など人体に負荷をかける可能性が少ない材料で形成されているのが望ましい。具体的には、アルミニウムや銅などの金属基板よりも、ポリウレタンベースや塩化ビニル、オレフィン等を材料としたFPC(Flexible printed circuits)基板が望ましい。
【0026】
発光素子25,26の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザーやLEDが挙げられる。発光素子25,26は、照射光の波長を100nm~1mmの範囲に設定することで、血液の成分が吸収するので、血流の検出に必要なデータを取得することができる。また、発光素子25,26は、患者の身体への負荷を考慮すると、照射光の波長が495nm~1000nmであるのがより好ましい。
【0027】
なお、図1に示すように、複数の発光素子25,26を使用する場合には、測定精度の観点から、例えば、赤色光と赤外光、緑色光と赤外光のように、(1)スペクトル幅の重なりが生じず、(2)血液成分の吸収波長が互いに異なる、という条件を満たす組み合わせであることが望ましい。
【0028】
一方で、具体的には図示しないが、発光素子が1つである場合には、単一のピーク波長を発光可能なものであってもよいし、発光素子そのものが異なる2以上のピーク波長を発光可能なものであってもよい。さらに、発光素子が単一のピーク波長を発光可能なものであって、発光素子表面に光学フィルターを備えて異なる2以上のピーク波長を生じるものであってもよい。
【0029】
さらに、発光素子25,26は、光の強度調節が可能なものが望ましい。例えば、発光素子25,26に入力される電圧を変えることで、発光素子25,26の光量を調節可能に構成することが挙げられる。発光素子25,26の光量の調節ができることで、皮膚からの深さが異なる部分での血流データの採取が容易となる。
【0030】
-配線基板-
配線基板28は、検出基板21と貼付テープ30との間に設けられており、その表面の中央には、検出基板21が接着剤(図示省略)等を用いた貼り付け等により固定されている。配線基板28には、発光素子25,26および受光素子24に接続された信号配線が形成されている。配線基板28の配線には、リード線50の一端が接続されており、リード線50は、貼付テープ30を厚さ方向に貫通して、外部に引き出されている。配線基板28は、弾性基板に相当する。
【0031】
配線基板28のサイズは、特に限定されるものではないが、検出基板21より大きくかつ貼付テープ30よりも小さい外形を有するのが好ましい。また、配線基板28の厚さは、検出基板21よりも薄いのが好ましく、例えば、0.1mm未満である。
【0032】
配線基板28を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン等を材料としたFPC基板である。
【0033】
-貼付テープ-
貼付テープ30は、検出基板21の表側(図1の紙面手前側)から見た正面視(以下、単に正面視という)において、配線基板28の周端よりも大きい外形を有する。そして、貼付テープ30の配線基板28と対向する側の面(以下、表面という)には、全面にわたって広がる粘着層32が設けられている(図2参照)。
【0034】
そして、その粘着層32の中央に、配線基板28の裏面側が貼り付け固定されている。すなわち、正面視において、貼付テープ30の粘着層32が、配線基板28の周端から外側に露出(延出)していて、正面側から視認可能になっている。図1では、貼付テープ30が、正面視において配線基板28の周端の全てから外側に露出(延出)するように構成されている例を示している。
【0035】
これにより、図3に例示されるように、患部の周囲(例えば、図中の指60)に粘着層32を当接させて貼り付けることができる。すなわち、検出基板21の表面を患部に当接させた状態で、患部の周囲に貼付テープ30を貼り付けて血流センサー10を固定することができる。
【0036】
貼付テープ30の粘着層32としては、皮膚への負荷が少ないものが好ましい。具体的には、アクリル系やゴム系、シリコーン系の粘着剤があるが、特にシリコーン系の粘着剤がアレルギー反応などの影響が小さいので好ましい。
【0037】
図3の貼付テープ30は、取り扱いが容易となるように、樹脂フィルム、紙、布、不織布等の様な粘着性を有さない基材シート31を有し、基材シート31の表面上に粘着層32が形成されているのが望ましい。一方で、具体的な図示は省略するが、貼付テープ30が粘着層32のみにより構成されていてもよい。
【0038】
以上のように、検出基板21と貼付テープ30との間に、検出基板21よりも幅広の配線基板28を設け、配線基板28の周端から貼付テープ30の粘着層32が露出(延出)するように構成している。これにより、血流センサー10をしっかりと貼り付け(装着)できるようにしつつ、検出基板21の患部への接触圧の最適化することができる。
【0039】
より具体的に、図3の拡大図内に矢印で示すように、貼付テープ30を患部に貼り付けることにより、検出基板21および配線基板28は、貼付テープ30によって患部に向かう方向に押し付けられる。一方で、貼付テープ30によって配線基板28の端部が患部に向かう方向に押し付けられると、弾性を有する配線基板28の中央部分が患部から離れる方向に若干撓むことにより、検出基板21には患部から離れる方向の力が与えられる。これにより、検出基板21の中央部分では、貼付テープ30によって検出基板21が患部に押し付けられる力を若干弱めることができるようになっている。すなわち、検出基板21が患部を圧迫しないようにすることができる。
【0040】
なお、貼付テープ30の種類や形状は、皮膚に貼り付け可能であればよく、特に限定されるものではない。例えば、貼付テープ30として、公知の絆創膏やマスキングテープに用いられる低粘着性のテープ等を用いることができる。また、貼付テープ30の形状は、図1に示すように、角にRを付したような略矩形状に限定されるものではなく、角にRを付した略多角形状、多角形状、円形状、楕円形状、その他の不定形状を採用することができる。
【0041】
また、受光素子24に対して、発光素子25,26から出射され生体で反射された反射光(以下、単に反射光という)以外の光を混入させないために、貼付テープ30に遮光性があることが好ましい。例えば、貼付テープ30として、肌色や黒色を呈するものを使用することで遮光性を得ることができる。また、貼付テープ30の遮光性を向上させるために、アルミニウム箔等の金属箔や紙等を、貼付テープ30にラミネートさせるようにしてもよい。
【0042】
さらに、貼付テープ30で皮膚を密閉させてしまうと、その部分でのみ湿度が上昇して湿疹などの皮膚障害が生じる可能性があるため、貼付テープ30に通気性があるとより好ましい。例えば、貼付テープ30に通気性を付与するために、貼付テープ30に微小な通気孔(図示省略)を形成してもよいし、貼付テープ30の基材に不織布等の通気性を有する素材を用いるようにしてもよい。
【0043】
貼付テープ30に形成する通気孔は、遮光性を考慮してテープ全面に直径100nm以下の微小な孔を形成するようにしてもよい。また、その直径100nm以下の通気孔に加えて、または、代えて、検出基板21の周端から正面視で外側に離間した位置に、直径101nm以上500nm以下程度の通気孔を形成するようにしてもよい。
【0044】
-弾性部材-
弾性部材40は、患部に対する圧迫を軽減するためのものであり、検出基板21の周囲および/または検出基板21の表面に設けられている。
【0045】
図1では、正面視において、弾性部材40が検出基板21の周囲を囲むように設けられている例を示している。また、図4では、弾性部材40が、検出基板21の表面に設けられている。
【0046】
弾性部材40は、検出部22の皮膚への当接領域を確保する観点から、発光素子25,26や受光素子24を塞がないように、正面視において検出部22の周りを囲むように設けられている。
【0047】
さらに、弾性部材40は、図1および図4のどちらの構成例においても、検出基板21の表面よりも突出するように形成されている。
【0048】
具体的に、図1および図2に示すように、弾性部材40が検出基板21の周囲を囲むように形成されている場合には、弾性部材40の厚さは、検出基板21よりも厚く形成されている。
【0049】
また、図4および図5に示すように、弾性部材40が検出基板21の表面に形成されている場合には、弾性部材40の厚さにかかわらず、弾性部材40は、検出基板21の表面よりも突出することになる。そこで、弾性部材40の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、患部に対する圧迫を軽減するために必要なスペックに応じて、使用する材料に応じた厚さを設定するとよい。
【0050】
弾性部材40を構成する材料は、弾性を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えばスポンジ、ゴム、三次元網目構造状に樹脂繊維を組み込んだもの、不織布等を好適に用いることができる。
【0051】
以上のような構成にすることで、患部(皮膚)に検出基板21を貼付テープ30で押さえつけることによって生じる圧力を弾性部材40によって分散させることができる。これにより、血流センサー10を皮膚に長時間貼り付けて血流を測定することができる。さらに、弾性部材40を設けるにより、皮膚表面(図3の指50の表面)の凸凹や関節等の凸凹に影響されずに、検出基板21の表面(検出部22)を皮膚に当接させることが可能となる。
【0052】
-患部診断システム-
リード線50の他端は、受光素子24からの信号から血流量を算出可能な演算装置(図示省略)に接続されていてもよいし、例えば、電池内蔵型の無線通信装置(図示省略)に接続されて、外付けの演算装置(図示省略)等との間で無線通信が可能に構成されていてもよい。
【0053】
演算装置は、血流量を算出する専用の装置であってもよいし、パソコンやスマートフォン等であって、専用のソフトウェアやアプリ等のプログラムによって演算処理が可能に構成されていてもよい。
【0054】
図8に示すように、患部診断システムでは、上記実施形態で説明した血流センサーを皮膚に貼り付ける工程(S1)が行われた後で、プログラムが、演算装置に、発光素子25,26から患部に照射光を照射させる工程(S2)を実行させ、その後、受光素子24を介して患部からの反射光を受光させる工程(S3)を実行させる。これにより、受光素子24から受けた反射光に基づいた受光信号が、受光素子24から配線基板28およびリード線50を介して演算装置に送信される。
【0055】
その後、プログラムが、演算装置に、発光素子25,26から照射された照射光と、受光素子24からの反射光(受光信号)との差分に基づいて、患部の血流量を算出する工程(S4)と、S4で算出された血流量から患部の状態を診断する工程(S5)とを実行させる。
【0056】
なお、演算装置のよる演算処理に関しては、発光素子25,26からの照射光や反射光(または、反射光に基づいて生成された受光信号)に関する情報から血流量を演算するものであれば、具体的手法は、特に限定されるものではない。
【0057】
そして、演算装置で算出された血流量や、患部状態の診断結果は、例えば、スマートフォンやパソコンのディスプレイ等に表示される。
【0058】
以上のように、患部診断システムが上記の工程を備えることで、皮膚に長時間貼り付けて血流量を診断することができる。
【0059】
さらに、リード線50を演算装置につなぐだけという非常に容易な方式で血流を測定することが可能になる。すなわち、包帯等をほどいたり、再度巻きなおしたりする等の手間がなくなる。これにより、患者及び医療関係者の負担が軽減される。
【0060】
また、測定データをクラウドデータ化し、そのデータにて血流が止まったり血流量の明らかな低下が見られたりした場合に、医療従事者と患者にアラームで知らせるようにしてもよい。これにより、今までは血流低下後の皮膚変色などの症状が現れるまで判明しなかった術後の悪化症状を早期に明らかにすることができる。
【0061】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。
【0062】
例えば、貼付テープ30は、正面視において、配線基板28よりも大きければ皮膚に貼り付けることができるので、図6に示すように、貼付テープ30が、正面視において検出基板21の周端の一部(図6では上下両端)から外側に露出(延出)するように構成されていてもよい。
【0063】
また、例えば、図7に示すように、配線基板を設けないようにしてもよい。この場合、貼付テープ30の粘着層32の中央に、検出基板21の裏面が直接貼り付け固定される。また、リード線50の一端が、配線基板28に代えて、検出基板21に接続される。それ以外の構成は、上記の実施形態と同様であり、実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
また、受光素子24に対して反射光以外の光を混入させないために、貼付テープ30に遮光性を有する材料を用いることに加えて、または、代えて、弾性部材40を、遮光性を有する材料で形成するようにしてもよい。例えば、弾性部材40に、遮光性を有するスポンジやゴム等を好適に用いることができる。
【0065】
さらに、弾性部材40の表面に、粘着層(図示省略)が設けられていてもよい。この場合、図1または図7に示すように、貼付テープ30を設けてもよいし、具体的な図示は省略するが、貼付テープ30を省いて、弾性部材40の接着層を皮膚に貼り付けることで、血流センサー10を患部に装着するようにしてもよい。これにより、血流センサー10をさらに小型化することができる。
【0066】
また、図1では、弾性部材40が、検出基板21の周りを囲むように設けられているものとしたが、これに限定されない。例えば、正面視において、弾性部材40の一部が切り欠かれていてもよい。すなわち、本開示において、検出基板21の周囲に設けられ、とは、必ずしも正面視において、検出部22および/または検出基板21の周りを隙間なく取り囲んでいるものに限定するものではない。ただし、検出基板21の周りを隙間なく取り囲むようにすることで、患部に対する圧迫を軽減する機能を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の血流センサーは、患部に長時間貼り付けることが可能なため、極めて有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 血流センサー
21 検出基板
22 検出部
24 受光素子(受光部)
25,26 発光素子(発光部)
28 配線基板(弾性基板)
30 貼付テープ(貼付部)
40 弾性部材
50 リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8