IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人佐賀大学の特許一覧 ▶ 三惠工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図1
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図2
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図3
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図4
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図5
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図6
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図7
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図8
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図9
  • 特許-骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20221011BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20221011BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A61F5/01 K
A41D13/05 125
A61F5/02 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018245012
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020103574
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-05-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 平成30年10月10日~10月12日 展示場所 東京国際展示場 第45回国際福祉機器展にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】株式会社SANKEI
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】安田 府佐雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 功一
(72)【発明者】
【氏名】山城 佑太
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-234758(JP,A)
【文献】実開昭60-041616(JP,U)
【文献】実開昭59-059506(JP,U)
【文献】特許第6415776(JP,B1)
【文献】米国特許第04030489(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0021961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-02
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材料で構成されたベース、下フレーム及び上フレームと、該上フレームに取り付けられ使用者の大胸筋の下部及び肋骨の下部の胸郭を保持する保持パッドを具備し、上記ベースは、使用者の腰部背面周囲を囲むよう半楕円形に湾曲し、上記下フレームは、上記ベースの中央部寄りに起立状態に固定され、上記上フレームは、下方部分が直線状で上方部分には前方にかつ内方に湾曲する上方湾曲部が形成され、該上フレームの下方部分は、上記下フレームに上下動かつ回転可能に嵌装され、該上フレームを回転することにより着座した際使用者の骨盤及び臀部が浮く高さに上フレームの高さを調節できるよう上記上フレームまたは下フレームの内方には線状コイルばねが設けられ、上記下フレームまたは上フレームには該線状コイルばねのばね線間に係合する係合部が設けられ、上記保持パッドは、板状のパッド本体と上記上フレームの上方部分に沿う形状のフレーム通し部と保持パッドを使用者の大胸筋の下部及び肋骨の下部に締め付ける締付ベルトを有し、該フレーム通し部は上フレームの上方部分に沿う一端側がパッド本体に連結され、他端側がパッド本体から離れた自由端に形成されている骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具。
【請求項2】
上記上フレームの上方部分の上方湾曲部は、先端が下方に向かって湾曲している請求項1に記載の骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具。
【請求項3】
上記線状コイルばねは、上記上フレームまたは下フレームに内接する巻き径の固定部と、該固定部よりも細い巻き径のガイド部を有し、上記固定部は上フレームまたは下フレームに固定され、下フレームまたは上フレームの係合部は上記ガイド部のばね間に突出する内方突起である請求項1又は2に記載の骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具。
【請求項4】
上記フレーム通し部は、上フレームの上方湾曲部を差し込む差込部と、該差込部から挿入された上方湾曲部を受支する受支部と、上方湾曲部の先端に対応する先端部を有し、該差込部と先端部は、上記受支部よりも下方に位置している請求項に記載の骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座した際、骨盤及び臀部に作用する負荷を軽減できるようにした負荷軽減装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子に着座した際、骨盤及び臀部には上半身の荷重が作用し、腰痛、痔、エコノミークラス症候群(血栓症)、静脈瘤(血行障害)などの原因となることが知られている。従来、腰痛治療器具として、患者が座席に着座した状態から座席を下げることにより身体を浮かせ、患者自身の体重により下方に引っ張って湾曲した背骨を重力により真っすぐに矯正するようにした腰痛治療椅子が提案されている(例えば特許文献1参照)。このような椅子は、腰痛治療を行うことを目的とした特殊な構造の腰痛治療椅子であり、通常の椅子に着座した際に骨盤や臀部に作用する負荷を軽減できるようにした治療器具ではない。本願の発明者は、そのような特殊な構造の治療椅子ではなく、通常の椅子に着座した際に、骨盤や臀部に作用する負荷を軽減できるよう身体に装着する重量軽減装具を発明し、特許出願(特願2017-205613)を行った。この重量軽減装具は、使用者の上半身に装着する装着部を有し、この装着部を支持するフレーム部分として上下支持部と、着座状態で上下支持部を起立させる起立部を具備している。そして、椅子に着座したとき、臀部が浮いた状態になるよう装着部に作用する上半身の負荷を上下支持部で支持し、起立部を介して座面に伝達し、上半身の荷重が骨盤や臀部に作用しないようにしたものである。椅子から立ち上がると、重量軽減装具は身体に装着されたままであるから、身体と共に移動し、次に椅子に座ると、上述と同様にして骨盤や臀部に作用する上半身の負荷を軽減することができる。
【0003】
上記重量軽減装具として、身体に装着する際、使用者の身長に合わせて装着部の高さを調節する高さ調整機構を採用し、また装着部を胴体の側面に添った円弧状の剛体で形成することが上記出願に記載されている。しかし、胴部の側面を円弧状の剛体で囲むと、剛体の先端部が身体の前面に位置するから、胴部に装着する際、該先端部が邪魔になって装着が面倒である。
【0004】
なお、高さ調整機構としては、上記出願には、板バネを用いたロックピンやボルトとネジを用いる機構が記載されているが、ロックピンの場合には、高さを調整する際、その都度板ばねに抗してロックピンを押し込んで上下支持部を上下動させなければならず、操作が面倒である。また、ボルトを利用して高さを変更するには、ボルト又はナットの一方を固定し、他方を回転して直進動させることになるが、標準品のボルトやナットは、直径やねじピッチが規定されているので、回転操作による直進動は、移動量が少ない。移動量を増すにはボルトを長くし回転数を多くしなければならない。ボルトは中実体であるから、その重量も重くなる。例えば、M8の標準品のメートルねじの場合、ピッチは1.25となり、1周あたり1.25mmの高さ調整が可能であるが、100mm動かすには80周も回わさなくてはならない。また、200mmの長さのボルトにすると、ボルトの重さは67gになる。さらに、ナットをフレームに固定してボルトを回転させるように構成した場合には、ナットを固定するための取り付け構造も複雑なものとなる。そのため、身体に装着する装具の高さ調整機構としてボルト、ナットを採用した場合、ボルトの長さが長くなり、調整時の回転数も多く、重量も重くなって好ましいものとはいえない。
【0005】
上記装着部を上下支持部で支持する機構として、上記出願では、コイルばねやフックで装着部を吊下げたり、フレームとして上下支持部の上端に上下接続部を設けてこの上下接続部にベルトで装着部を吊下げる機構が記載されている。しかし、上下接続部は水平方向に延びており、ベルトに対して水平方向に移動可能であるから、重量軽減装具を身体に装着して移動するとき、上下接続部がベルトから抜け出して、フレームが脱落するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-221257号公報(特許請求の範囲、段落0014、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題は、骨盤や臀部にかかる負荷を軽減できる負荷軽減装具であって、軽量で高さの調整が簡単であり、移動の際に脱落しないよう確実に装着することができる負荷軽減装具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、パイプ材料で構成されたベース、下フレーム及び上フレームと、該上フレームに取り付けられ使用者の大胸筋の下部及び肋骨の下部の胸郭を保持する保持パッドを具備し、上記ベースは、使用者の腰部背面周囲を囲むよう半楕円形に湾曲し、上記下フレームは、上記ベースの中央部寄りに起立状態に固定され、上記上フレームは、下方部分が直線状で上方部分には前方にかつ内方に湾曲する上方湾曲部が形成され、該上フレームの下方部分は、上記下フレームに上下動かつ回転可能に嵌装され、該上フレームを回転することにより着座した際使用者の骨盤及び臀部が浮く高さに上フレームの高さを調節できるよう上記上フレームまたは下フレームの内方には線状コイルばねが設けられ、上記下フレームまたは上フレームには該線状コイルばねのばね線間に係合する係合部が設けられ、上記保持パッドは、板状のパッド本体と上記上フレームの上方部分に沿う形状のフレーム通し部と保持パッドを使用者の大胸筋の下部及び肋骨の下部に締め付ける締付ベルトを有し、該フレーム通し部は上フレームの上方部分に沿う一端側がパッド本体に連結され、他端側がパッド本体から離れた自由端に形成されている骨盤及び臀部に作用する負荷軽減装具が提供され、上記課題が解決される。
【0009】
また、本発明によれば、上記線状コイルばねは、上記上フレームまたは下フレームに内接する巻き径の固定部と、該固定部より細い巻き径のガイド部を有し、上記固定部は上フレームまたは下フレームに固定され、下フレームまたは上フレームの係合部は上記ガイド部のばね線間に突出する内方突起である上記負荷軽減装具が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記上フレームの上方湾曲部は、先端が下方に向かって湾曲している上記負荷軽減装具が提供される。
【0011】
また、上記フレーム通し部は、上フレームの上方湾曲部を差し込む差込部と、該差込部から挿入された上方湾曲部を受支する受支部と、上方湾曲部の先端に対応する先端部を有し、該差込部と先端部は、上記受支部よりも下方に位置している上記負荷軽減装具が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の負荷軽減装具は、上記のように構成され、ベースと、該ベースから立ち上がる下フレームと、該下フレームに上下動かつ回転可能に嵌装される上フレームをパイプ材料で構成し、該上フレームに保持パッドを装着し、上記上フレームまたは下フレームの内方に線状コイルばねを設け、上記下フレームまたは上フレームに該線状コイルばねのばね線間に係合する係合部を設けたので、身体に装着する際は、上フレームを回転させれば上フレームの前部間の開口部が広がり、容易に使用者の胴部に沿わせて装着することができる。そして、上フレームが回転可能に設けられているから、装着したとき上フレームが身体に密着し、余分な出っ張りが生じることもなく、装着後に身体の自由度を阻害することもない。装着後は、線状コイルばねを介して上フレームと下フレームは連結されているので、身体に装着して起立したときに、下フレーム及びベースが脱落することはない。
【0013】
着座した際に椅子の座部から骨盤及び臀部が浮くように使用者に合わせて上フレームの高さを調整するには、上フレームを回転させればよい。すなわち、上フレームまたは下フレーム内には線状コイルばねが固定されているので、上フレームを回転すると線状コイルばねまたは係合部も回転し、該線状コイルばねと係合部は螺旋係合しているから、線状コイルばねにガイドされて上フレームが上下動し、簡単に所望の高さに調整することができる。この際、線状コイルばねのピッチは、巻回条件を変えるだけでボルトのねじピッチよりも大きく形成することができるので、上フレームを少し周回させて高さを調整でき、調整作業が簡単になる。例えば、線状コイルばねのピッチを6mmに設定した場合には、高さを90mm調整するには15周の回転で済む。このように上フレームの高さを使用者の臀部が浮く高さに調整した後、椅子の座部に着座すれば、上半身の荷重は、保持パッド、上フレーム、下フレームを介してベースから椅子の座部に伝達され、骨盤及び臀部に大きな負荷が作用しないようにできる。また、上記線状コイルばねは、ボルトに比べて軽量であるから、全体の重量を軽くでき、身体に装着した状態で移動しても大きな重さを感じられず、快適に移動することができる。
【0014】
上記上フレームの上部は、余分な出っ張りを生じないよう身体の胴部に沿って前方にかつ内方に湾曲した3次元的な湾曲形状の上方湾曲部に形成するのが好ましく、この上方湾曲部に上記保持パッドを取り付ける。高さを調整するときには、上フレームから保持パッドを取り外し、調整後に、この上記保持パッドに設けたフレーム通し部に上フレームの上方湾曲部を差し込む。この際、該上方湾曲部は、前方かつ内方に湾曲した3次元的な湾曲形状であるから、フレーム通し部の全周が保持パッドの板状のパッド本体に密着して固定されていると、パッド本体とフレーム通し部が一体化し、フレーム通し部がパッド本体に拘束されて自由に屈曲させることができなくなり、差込作業が非常に面倒である。しかし、本発明では、フレーム通し部の一側部だけを保持パッドに固定し、他側部を保持パッドから離れた自由端に形成したので、フレーム通し部を容易に屈曲させて上フレームになじませながら差し込むことができ、差込口から上方湾曲部の先端を差し込んで簡単にフレーム通し部に上フレームを挿通させることができ、取り付け時間を短縮することができる。また、フレーム通し部の一端側が自由端になっていると、ある程度身体の動きが自由になり、装着したまま移動したときに、万一転倒等しても怪我の発生を少なくすることができる。
【0015】
上記フレーム通し部を、上フレームの上方湾曲部を差し込む差込部と、該差込部から挿入された上方湾曲部を受支する受支部と、上方湾曲部の先端に対応する先端部を有する袋体に形成し、該差込部と先端部を、上記受支部よりも下方に位置させると、上方湾曲部をフレーム通し部に挿通した状態で、差込部と先端部で上方湾曲部の動きが拘束され、前後方向に移動しないようにできるから、身体に装具を装着したまま移動しても、フレーム部分が脱落するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】背面から見た斜視図。
図2】装着した状態の正面図。
図3】装着した状態の背面図。
図4】保持パッドを外したフレーム部分の斜視図。
図5】フレーム部分の平面図。
図6】フレーム部分の分解斜視図。
図7】線状コイルばねの一部省略正面図。
図8】フレームの高さを調整する際の説明図。
図9】保持パッドの展開図。
図10】保持パッドの一部の拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施例を示し、フレーム部分は、ベース1と、該ベース1から立ち上がる一対の下フレーム2と、該下フレーム2に上下動かつ回転可能に嵌装された一対の上フレーム3を具備し、該上フレーム3の上部に保持パッド4を装着し、この保持パッド4で使用者の大胸筋の下部及び肋骨の下部の胸郭を保持する。上記下フレーム2と上フレーム3は、いずれか一方を他方の外周に嵌着すればよく、図1等に示す実施例では、下フレーム2の外周に上フレーム3を嵌装し、下フレーム2が上フレーム3に内接するようにしてある。
【0018】
図4図8を参照し、上記フレーム部分はそれぞれパイプ材料で形成され、ベース1は、使用者の腰部の背面周囲を囲むように半楕円形に湾曲し、中央部寄りに上記下フレーム2が溶接等により起立状態に固定されている。図6に示すように、この下フレーム2の上端開口部には、プレス加工やカシメ加工により一部を内方に突出させて内方突起を形成してあり、この内方突起を後記する線状コイルばね5との係合部6としている。なお、係合部の位置は、下フレームの上端よりも下方に設けることもでき、内方突起に代えて下フレームの内方に突出するピンであってもよい(図示略)。
【0019】
図1図8に示すように、実施例では、上記上フレーム3は、上記下フレーム2の外周に上下動かつ回転可能に嵌合する内径に形成され、下端にはキャップ7が取り付けられ、下方部分は直線状であるが、上方部分には、使用者の身体の前面側に向かって前方に向かって弧状に湾曲するとともに使用者の腹部方向に向かって内方に湾曲する3次元的な形状の上方湾曲部8が形成され、該上方湾曲部の先端9は湾曲しながら下方に向かって延びている。
【0020】
上記上フレーム3の直線部分の内方には線状コイルばね5が設けられている。該線状コイルばね5は、図7に示すように、ほぼ上フレーム3に内接する巻き径の固定部10を上部に形成し、その下部に、上記固定部10より細い巻き径のガイド部11を形成してあり、該ガイド部11が下フレーム2内に挿入される。上記線状コイルばね5は、上フレーム3内に上端を差し込んで周囲からプレス加工やカシメ加工により上フレームの壁面を内方に突出させ、該突出部12を固定部10の周面に係合させることにより上フレーム3に固定される。この際、固定部10の巻きピッチは、周囲から押圧されても変形せずに確実に突出部12が係合するようコイル線が接するような狭いピッチに巻回することが好ましい。なお、突出部を上フレームに形成する代わりに、上フレームの外側から適宜の止ねじやピンを差し込んで線状コイルばね5を固定してもよい(図示略)。
【0021】
上記ガイド部11の巻きピッチは、下フレーム2の係合部6が上記線状コイルばね5のコイル線間に螺旋係合するよう上記固定部10よりも大きなピッチに巻回されている。このガイド部11のピッチにより上フレーム3を周回したときの上フレーム3の移動量が変化する。図7に示す実施例では、線径Φが2mm、巻きピッチを6mmに設定したコイルばねであり、この場合には、上フレーム3の高さを90mm調整するのに、上フレーム3を15周回転させればよく、ボルト、ナットの場合よりも大幅に少ない回転数で済ますことができる。その他、所望によりガイド部11の巻きピッチを適宜に設定することにより所望の状態に調整することができる。上フレーム3を下フレーム2に接続するには、下フレーム2の上端に上フレーム3の下端を外挿し、上フレーム3を回転しながら線状コイルばね5のばね線間に下フレーム2の係合部6を係合させればよい。このようにすれば、上フレーム3と下フレーム2を上下方向に連結できるとともに、上記のように、上フレーム3を回転するだけでベース1からの高さを調整することができる(図8参照)。
【0022】
保持パッド4は、2枚の板状のパッド本体13と、上記上フレーム3に保持パッドを取付けるためパッド本体13に一端を固定したフレーム通し部14と、パッド本体13を身体に締着するための締付ベルト15を有している。パッド本体13は、木材料、紙材料、プラスチック材料等の硬質板状の芯材16の表面を触感のよい表装材17で被覆し、上記上フレーム3の上方湾曲部8にほぼ沿う形状に形成した外縁部を有している。すなわち、パッド本体13の外縁部は、身体の背部側に位置する後部側から上方に立ち上がる後縁部18と、上昇しながら身体の胴部を回って身体の前部側に延びる上縁部19と、身体の前部側で下方に延びる前縁部20と、ほぼ水平に形成された下縁部21を有している
【0023】
上記フレーム通し部14は、丈夫な布材料、皮革その他のフレキシブルで耐久性のある材料で上方湾曲部8に沿った形状に作られた袋体であって、上フレーム3の上方湾曲部8を差し込む差込部22と、該差込部22から挿入された上方湾曲部8を受支する受支部23と、上方湾曲部8の先端9に対応する先端部24を有し、該差込部22と先端部24は、上記受支部23よりも下方に位置している。実施例において、上記差込部22及び先端部24は上フレームを挿通するよう開口しているが、所望により先端部24を閉塞してもよい。該フレーム通し部14は、パッド本体13に固定する際、フレーム通し部の上下の一端側がパッド本体13から離れた自由端25になるよう他端側をパッド本体13に縫着26して固定してある。図10に示す実施例では、フレーム通し部14の上縁側が自由端25に形成され、下縁側をパッド本体に縫着26して固定してあるが、下縁側を自由端にし、上縁側をパッド本体に連結するようにしてもよい。フレーム通し部14の全周をパッド本体13に密着して縫着した場合には、パッド本体13とフレーム通し部14が一体化され、簡単に屈曲しなくなるので、非常に装着しにくいが、上記のようにフレーム通し部14の一端側に自由端25を設けてパッド本体13に連結することにより上フレームに装着する際に、上方湾曲部の3次元形状によくなじんで、容易に取り付けることができるし、身体への負担も少なく、痛さも解消することができる。また、装着したまま移動する際、万が一転倒等すると、全体がフレーム部に固定されている場合には、フレーム部が身体に強くあたったりして怪我の発生が大きくなるが、自由端を設けたことによりそのような事態を少なくすることができる。さらに、上記フレーム通し部14の差込部22と先端部24の位置が、上記上方湾曲部8が内接する上記受支部23よりも下方に位置しているので、上フレームの移動が拘束され、移動中に保持パッド4からフレーム部が脱落するおそれがない。
【0024】
上記締付ベルト15は、パッド本体13に設けたベルト通し27に、上下2段に設けてあり、2本のベルト15で身体の大胸筋の下部及び肋骨の下部に保持パッドを締め付け、端部に設けたバックル28を連結することにより身体から脱落しないように保持パッド4を締着する。この際、1本のベルトでは保持パッド4を固定する際に締め込みを強くしないと、ズレが発生し、上半身の荷重を確実に支えることがができなくなるが、好ましくは実施例に示すように、2本のベルトを使用すれば、下方のベルトをウエストラインに位置させることにより、腹部でも荷重を支えることができ、1本のベルトよりも安定状態で確実に上半身の荷重を支えることができる。
【0025】
また、上フレーム3が身体から離れていると、身体の動きにフレーム部が追従せずに、ぶらついた状態になり、椅子に着座した際に確実に荷重を支持することができなくなるが、上記のように、回転可能な上フレーム3をフレーム通し部14に挿通して保持パッド4を取り付けたことにより、装着時に上フレーム3が身体に密着し、使用者の身体の動きに合わせながら自由度を阻害しない構造が得られる。
【0026】
上記構成により使用者は、椅子に着座する前に、自分の骨盤及び臀部が椅子の座面から浮くような高さに上フレーム3の高さを調整する。このとき、保持パッド4を外した状態で上フレーム3を回転し、その後、保持パッド4のフレーム通し部14に上フレーム3の上方湾曲部8を挿通させて保持パッド4を取り付ける。それから、大胸筋の下部及び肋骨の下部を囲むように保持パッド4を身体に巻き付け、2本の締付ベルト15で身体に締め付ける。この状態で、使用者は自由に移動することができる。使用者が事務椅子その他の普通の椅子に座ると、臀部が椅子の座面から浮いた状態になるので、上半身の荷重が保持パッド4、上フレーム3、下フレーム2、ベース1を介して座面に伝えられ、骨盤及び臀部に大きな負荷がかからないようにすることができる。
【0027】
上記実施例では、線状コイルばねを上フレーム3側に固定し、下フレーム2側に係合部を設けて、下フレーム2が上フレーム3に内接するように構成したが、線状コイルばねを下フレーム側に固定し、上フレーム側に係合部を設けて、上フレーム3を下フレーム2に内接するように嵌装することもできる。この場合には、図示を省略したが、線状コイルばね5の配置を、図7に示す構成から逆にし、ほぼ下フレーム2に内接する巻き径の固定部10を下部に形成し、その上部に上記固定部10より細い巻き径のガイド部11を形成し、該ガイド部11の外周に上フレーム3が挿入されるようにすればよい。また、上フレーム3の下端には、上記線状コイルばねのガイド部のばね線間に螺旋係合する係合部を設ける(図示略)。
【0028】
上記線状コイルばね5は、固定部10側から、下フレーム2内に差し込み、周囲からプレス加工やカシメ加工により下フレームの壁面を内方に突出させ、該突出部を固定部10の周面に係合させることにより下フレーム2に固定される。この際、固定部10の巻きピッチは、周囲から押圧されても変形せずに確実に上記突出部が係合するようコイル線が接するような狭いピッチに巻回することが好ましい。なお、突出部を下フレームに形成する代わりに、下フレームの外側から適宜の止ねじやピンを差し込んで線状コイルばね5を固定してもよい(図示略)。
このようにすれば、上フレームを回転することにより、上フレームに設けた係合部は、線状コイルばねのガイド部に沿って回転し、これにより上フレームは上下動し、高さを調整することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース
2 下フレーム
3 上フレーム
4 保持パッド
5 線状コイルばね
6 係合部
8 上方湾曲部
10 固定部
11 ガイド部
12 突出部
13 パッド本体
14 フレーム通し部
15 締付ベルト
25 自由端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10