(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】皮内溶液送達のためのシステム、装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/08 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61B18/08
(21)【出願番号】P 2019552858
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 IL2018050350
(87)【国際公開番号】W WO2018178976
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512023018
【氏名又は名称】ノヴォクセル リミテッド
【住所又は居所原語表記】43 HeMelacha Street, P.O.Box 8539, Poleg Industrial Zone, Natania, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャヴィト,ロネン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-309973(JP,A)
【文献】特表2004-533296(JP,A)
【文献】特表2017-501825(JP,A)
【文献】特表2017-503564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0065533(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 90/98
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の面積の角質層内に少なくとも1つの亀裂を生成するための真皮調整装置であって、
少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器と、
前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器に結合された少なくとも1つの制御装置と、
前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器および前記少なくとも1つの制御装置に結合された電源と、
前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器および前記少なくとも1つの制御装置を包囲する筐体と、
前記真皮調整装置の遠位端を形成する鈍端部であって、前記鈍端部は前記筐体に機械的に結合され、前記少なくとも1つの非侵襲性亀裂発生器に電気的に結合され、前記鈍端部は、前記鈍端部が前記皮膚の面積の前記表面と物理的に接触するとき、前記皮膚の面積の前記角質層を穿孔することなく前記皮膚の面積の前記表面を押し下げるために十分に鈍い、鈍端部と
を含み、
前記少なくとも1つの制御装置は、
a)前記鈍端部を実質的に定温に維持し、パルス期間の関数として前記皮膚の面積の表面温度を維持する前記パルス期間にわたって前記鈍端部を介して前記皮膚の面積に一定量の熱を伝達するためであって、前記熱量は前記皮膚の面積を脱水するために較正される一方で、前記皮膚の面積の顆粒層、有棘層および基底層の生存能力を維持する、伝達するために、ならびに
b)前記鈍端部を介して前記皮膚の脱水された面積の前記表面に応力を加えるためであって、前記少なくとも1つの信号は、前記皮膚の面積の前記角質層上に歪みを生成するために較正されることにより、外傷を誘発することなく前記皮膚の面積の前記角質層内に少なくとも1つの亀裂の形成のみをもたらし、前記皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持する、応力を加えるために
較正された少なくとも1つの信号を発生するように前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器を制御する、真皮調整装置。
【請求項2】
前記熱量は前記皮膚の面積の層を低下した含水率に脱水するように較正され、前記皮膚の層および前記低下した含水率は、
10%未満の含水率に脱水された前記角質層、および
70%未満の含水率に脱水された顆粒層
から選択される、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項3】
前記実質的な定温は摂氏400度を超えず、前記パルス期間は14ミリ秒を超えない、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項4】
前記制御装置は前記少なくとも1つの信号のパラメータを制御し、前記パラメータは、前記少なくとも1つの信号の時宜、強度、周波数、期間、および位相からなる群から選択される、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御装置は、前記パルス期間に対して前記熱量を前記鈍端部を介して前記皮膚の面積に前記伝達することを、前記鈍端部を介して前記皮膚の脱水された面積の前記表面に前記応力を加えることと同期するように構成される、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器は、
i.乾燥流発生器と、
ii.無線周波数発生器と、
iii.光エミッタと、
iV.熱ヒータと
からなる群から選択された脱水発生器を含む、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器はモータを含み、前記少なくとも1つの信号は、
a)繰り返し前記鈍端部を遠位に押すことおよび前記鈍端部を近位に後退させること、ならびに
b)前記鈍端部を回転させること
の内の一方を実行することにより、前記鈍端部を介して前記皮膚の脱水された面積の前記表面に応力を加える、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項8】
前記鈍端部は、その中に光チャネルを埋め込まれている少なくとも1つの非侵襲性の鈍い突起部を含み、前記光チャネルは前記鈍端部を介して前記皮膚の面積に前記熱量を伝達するように構成され、前記少なくとも1つの非侵襲性の鈍い突起部はリッジ、ピラミッド型歯、およびピンからなる群から選択される、請求項1に記載の真皮調整装置。
【請求項9】
皮膚の面積の角質層内に少なくとも1つの亀裂を生成するための真皮調整装置であって、
乾燥流を発生するように構成された発生器と、
前記発生器に電気的に結合され、前記乾燥流を前記発生することを制御するように構成された少なくとも1つの制御装置と、
前記発生器および前記少なくとも1つの制御装置に結合された電源と、
前記発生器および前記少なくとも1つの制御装置を包囲する筐体と、
前記発生器に結合され、前記真皮調整装置の遠位端に配置された少なくとも1つの乾燥流エミッタであって、前記少なくとも1つの乾燥流エミッタは前記乾燥流を前記皮膚の面積に伝達するように構成される、少なくとも1つの乾燥流エミッタと
を含み、
前記制御装置は、
a)前記少なくとも1つの乾燥流エミッタを介して前記皮膚の面積を脱水する一方で、前記皮膚の面積の顆粒層、有棘層および基底層の生存能力を維持するために、ならびに
b)前記少なくとも1つの乾燥流エミッタを介して前記皮膚の面積に定常流体圧として応力を付与するためであって、前記付与された応力は、前記皮膚の面積の前記角質層上に歪みを生成するように較正されることにより、外傷を誘発することなく前記皮膚の面積の前記角質層内に少なくとも1つの亀裂の形成のみをもたらし、前記皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持する、付与するために、
前記乾燥流を前記発生することを較正する、
真皮調整装置。
【請求項10】
ヒト以外の動物の皮膚の面積を調整するための方法であって、
パルス期間にわたって実質的に定温に対応する熱量を較正する手順と、
少なくとも1つの信号を発生する手順と、
前記少なくとも1つの信号を付与する手順であって、
i)真皮調整装置の鈍端部を前記実質的に定温に維持するための少なくとも1つの信号、
ii)前記鈍端部を介して前記皮膚の面積に前記熱量を伝達し、前記パルス期間の関数として前記皮膚の面積の表面温度を維持するための少なくとも1つの信号であって、
前記熱量は、前記皮膚の面積を脱水する一方で、前記皮膚の面積の顆粒層、有棘層および基底層の生存能力を維持するために較正される、信号、ならびに
iii)外傷を誘発することなく前記皮膚の面積の前記角質層内に少なくとも1つの亀裂の形成のみをもたらすため、および前記皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持するために前記皮膚の面積の前記角質層上に歪みを生成する手法で、前記皮膚の面積の前記角質層を穿孔することなく前記鈍端部を介して前記皮膚の脱水された面積の前記表面を押し下げるための少なくとも1つの信号
を付与する手順と
を含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの信号を発生することは、乾燥流を発生すること、無線周波数信号を発生すること、光信号を発生すること、および加熱信号を発生することからなる群から選択された行為を実行することにより脱水信号を発生し、前記少なくとも1つの脱水信号は前記皮膚の面積を脱水するために付与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記皮膚の面積に前記熱量を伝達することにより、前記皮膚の面積の層を低下した含水率に脱水し、前記皮膚の層および前記低下した含水率は、
10%未満の含水率に脱水された前記角質層、および
70%未満の含水率に脱水された顆粒層
から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記実質的な定温は摂氏400度を超えず、前記パルス期間は14ミリ秒を超えず、前記皮膚の脱水された面積の前記表面を前記押し下げることにより、前記脱水された表面を0.1ミリメートル~1ミリメートルの範囲の深さに押し下げる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
付与されたときに前記皮膚の脱水された面積の前記表面を押し下げる前記少なくとも1つの信号を発生することは、乾燥流を発生すること、無線周波数信号を発生すること、一連の機械的パルスを発生すること、および機械的回転を発生することからなる群から選択された行為を実行することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの信号を発生することは、前記少なくとも1つの信号の第1のパラメータを制御することを含み、前記第1のパラメータは、前記少なくとも1つの信号の時宜、強度、温度、周波数、期間、および位相からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記鈍端部を介して前記皮膚の脱水された面積の前記表面を前記押し下げることを、前記鈍端部を介して前記皮膚の面積に前記熱量を前記伝達することと同期させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技法は、一般に皮内治療のためのシステムおよび方法に関し、詳細には外部に塗布された溶液を皮内に吸収するために皮膚の面積を調整するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、最外層の細胞が剥がれ、皮膚の表面まで移動して内部細胞によって置換されるように絶え間なく状態が変化する動的な多層組織である。体中が構造的に一致しているが、皮膚は解剖学的部位および個人の年齢によって厚さが異なる。解剖学的に述べると、表皮は、身体内部と外部環境との間の物理的および化学的障壁として機能する最外層であり、真皮は皮膚に構造的支持を提供するより深い層である一方で、皮下組織または皮下層は脂肪の重要な貯蔵所であるさらなる層である。真皮は疎性結合組織で構成された層である。
【0003】
次に
図1Aを参照する。
図1Aは、先行技術で公知であるような、概して10で示された表皮の試料の断面の概略図である。表皮10は重層扁平表皮であり、その主な細胞はケラチノサイトと呼ばれ、ケラチノサイトは蛋白質ケラチンを合成する。ケラチノサイトはより深い皮膚層から最上皮膚層に絶えず移行する状態にある。エスモソーム(esmosome)と呼ばれる蛋白質架橋はケラチノサイトを接続する。表皮10はケラチンの成熟の様々な段階でケラチノサイトによって形成された4つの別個の層を含む。最外表面からより深い層に移動すると、表皮の4層は、本明細書では角質層12Aと呼ばれる最外層12A、顆粒層12B(顆粒細胞層としても公知である)、有棘層12C(棘または有棘細胞層としても公知である)、および基底層12D(基底または胚芽細胞層としても公知である)である。
【0004】
角質層12Aは、角質層細胞として公知の六角形状の生存できないケラチノサイトの層で構成される。皮膚のほとんどの面積には、10~30の層が積層した角質層細胞が存在する。各角質層細胞は、蛋白質エンベロープによって包囲され、保水ケラチン蛋白質で満たされている。ケラチン蛋白質の細胞形状および配向は角質層12Aに強度を追加する。細胞を包囲するのは脂質二重層の積層である。角質層12Aの得られる構造は、皮膚の自然な物理的および保水障壁を提供する。基底層12Dから角質層12Aまでのように表皮細胞の上方移動は、通常約28日を要し、表皮通過時間として公知である。
【0005】
皮内薬剤送達は、より深い皮膚層、すなわち角質層12Aの下にあるあらゆる層に薬剤を送達するための様々な比較的非侵襲性の技法に関する。皮内薬剤送達のための技術および技法は2つの一般カテゴリーに分類される。第1のカテゴリーは、穿孔、剥離または薄切りさせるなどにより、皮膚の表皮層に機械的および物理的な割れ目をもたらし、それによって薬品および薬剤を皮内に送達することができる。第2のカテゴリーは、皮膚、具体的には表皮の特質を化学的に変え、したがって薬剤、軟膏または薬品を吸収するためにより受け入れやすくさせる。このような技法の例には、電気穿孔法、局所血管の拡張をもたらす物質の拡散による外部刺激などが含まれる。
【0006】
熱機械的剥離(本明細書ではTMAと略す)は、皮膚科治療において使用する公知の技法であり、皮膚は角質層12Aの面積を剥離させる、すなわち蒸発させるように十分に高温に加熱される。TMAは角質層12Aの外部表面に微細窪みを生成させ、それを通して軟膏、薬剤または薬品などの水溶液が皮膚の下層、例えば顆粒層12B、有棘層12C、および基底層12Dに送達されてもよい。通常、レーザは角質層12Aを蒸発させるために使用され、微細窪みを生成させる。しかし剥離の工程は損傷を引き起こすことがあり、皮膚の最上層の凝固および崩壊をもたらし、最上部は真皮乳頭層になる。したがって剥離は患者の不快感、ならびに皮膚組織の傷を引き起こす可能性があり、最終的に皮膚科治療において意図した吸収の効果を妨げる。
【0007】
次に
図1Bを参照する。
図1Bは、先行技術に公知であるような、概して20で示された剥離レーザ治療を受けた皮膚の試料の画像である。
図1Bでは、表皮の様々な層、例えば角質層22A、顆粒層22B、有棘層22Cおよび基底層22Dなどが見られる。示されたように、剥離レーザ治療は、円24によって示された角質層22Aの領域の蒸発、ならびに円26によって示されたより深い皮膚層22Bおよび22Cの領域の凝固をもたらす。円24によって示された蒸発は、角質層22Aが蒸発した領域を示し、それによって下の組織が包囲する環境に曝される。領域26(円で示されている)は、真皮乳頭層の真皮凝固を示し、それによってその吸収能力を妨げる。
【0008】
次に
図1Cを参照する。
図1Cは、先行技術に公知であるような、概して30で示された無線周波数(本明細書ではRFと略す)工程を使用する剥離治療を受けた皮膚の試料の画像である。画像には、皮膚層の角質層32A、顆粒層32B、有棘層32Cおよび基底層32Dが見られる。さらに角質層32Aが蒸発した領域を示す窪み34が見られ、下の組織が曝されている。領域36(円で示されている)は、剥離RF治療の結果として焼灼された、燃焼した組織の面積を示す。焼灼に起因して、領域36は凝固し、窪み34において皮膚30の下の組織と外部表面との間に二次浸透障壁をもたらし、したがって皮内薬剤送達を可能にするために表皮を開くことを意味する剥離治療と反対の結果に達する。剥離RF治療は常に焼灼をもたらすとは限らない。
【0009】
皮内薬剤送達のための他の方法は当技術分野では公知である。「Topical Delivery of Vaccines」の名称でMiksztaらによる米国特許第6,595,947B1号は、皮膚の表皮組織に物質を局所送達するための方法を対象とする。その方法は、皮膚の表皮組織に物質の送達できるように皮膚の角質層を引き裂くために摩擦を使用する。摩擦は表皮層に支障をきたすことなく角質層を引き裂く。
【0010】
「Skin perforating device for transdermal medication」の名称でJangによる米国特許第5,611,806号は、多針ディスクを使用して皮膚を切断する装置を対象とする。針ディスクは複数の皮膚穿孔針で覆われている。装置は均一の深さの切断を皮膚内で引き起こし、これは経皮薬品の送達を促進する。
【0011】
Journal of Cosmetic and Laser Therapy, 2016, 18(1):31-7, Epub 2016 Jan 20(2018年3月12日にhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26073117で見られた)に発表されたElmanらによる発行物「Fractional treatment of aging skin with Tixel, a clinical and histological evaluation」は、「Tixel」と呼ばれるTMA系装置による皮内治療と、顔表皮組織の部分剥離を使用して皮膚の皺を取り除くためのCO2レーザ治療の比較を開示している。TMA系装置は400℃に加熱した金属先端部を具備しており、様々な時間の長さの一連のパルスおよび予め設定した突起の深さで皮膚に当てる。発行物は、どちらの治療も角質層の下に表皮の蒸発および真皮乳頭層の真皮凝固を表す窪みを生成したと報告している。
【0012】
International Journal of Pharmaceutics, Vol. 511, pp. 821-830, 2016に発表したSintov, A.C.およびHofmann, M.A.による発行物「A novel thermo-mechanical system enhanced transdermal delivery of hydrophilic active agents by fractional ablation」は、水溶液を送達するために製剤内でブタの耳の皮膚の試料の治療を調査するための金メッキのステンレス鋼先端部を有するTMA系装置の使用を開示している。TMA系装置は、ブタの耳の皮膚の表面に熱エネルギーを伝達するために使用された。治療では、角質層の領域を蒸発することにより複数のマイクロチャネルが生成された。
【発明の概要】
【0013】
溶液をより深い皮膚層の中に吸収するために皮膚の面積を調整する一方で、皮膚組織の細胞の一体化および生存能力を維持し、治療前に皮膚の穿孔障壁機能を保護するために、新規の方法およびシステムを提供することが開示された技法の目的である。
【0014】
したがって開示された技法によれば、皮膚の面積の角質層内に少なくとも1つの亀裂を生成するための真皮調整装置が提供される。真皮調整装置は、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器、少なくとも1つの制御装置、電源、筐体を含む。少なくとも1つの制御装置は、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器に結合される。電源は、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器および少なくとも1つの制御装置に結合される。筐体は、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器および少なくとも1つの制御装置を包囲する。少なくとも1つの制御装置は、少なくとも1つの信号を発生するため、および皮膚の面積を脱水し、皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために少なくとも1つの信号を付与するために、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器を制御する。応力は、皮膚の面積の角質層上に歪みを生み出すために較正される。歪みにより、皮膚の面積が脱水されたときに皮膚の面積の角質層内に少なくとも1つの亀裂の形成をもたらす一方で、皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持する。
【0015】
一部の実施形態では、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器は、乾燥流発生器、無線周波数発生器、光エミッタ、および熱ヒータからなる群から選択された脱水発生器を含む。
【0016】
一部の実施形態では、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器は、乾燥流発生器、および無線周波数発生器からなる群から選択された応力付与発生器を含む。
【0017】
一部の実施形態では、少なくとも1つの非侵襲性皮膚亀裂発生器は、真皮調整装置の遠位端に機械的に結合されたモータを含み、モータは皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために少なくとも1つの信号を付与するように構成される。
【0018】
一部の実施形態では、モータは、a)繰り返し真皮調整装置の遠位端を遠位に押し、遠位端を近位に後退させ、b)真皮調整装置の遠位端でローラを回転させる内の一方を実行するように構成される。
【0019】
一部の実施形態では、装置の遠位端は、皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために、少なくとも1つの信号を付与するように構成された少なくとも1つの非侵襲性突起部を具備する。
【0020】
一部の実施形態では、少なくとも1つの非侵襲性突起部はその中に光チャネルが埋め込まれており、光チャネルは皮膚の面積を脱水するために少なくとも1つの信号を付与するように構成される。
【0021】
したがって開示された技法によれば、皮膚の面積を調整するための方法が提供され、方法は、少なくとも1つの信号を発生すること、ならびに皮膚の面積を脱水するため、および皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために少なくとも1つの信号を付与することを含み、応力は皮膚の面積の角質層上に歪みを生成するように較正され、歪みにより、皮膚の面積が脱水されたときに皮膚の面積の角質層内に少なくとも1つの亀裂の形成をもたらす一方で、皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持する。
【0022】
一部の実施形態では、皮膚の面積を脱水するために少なくとも1つの信号を付与することにより、皮膚の面積の角質層を10%未満の含水率に脱水する。
【0023】
一部の実施形態では、皮膚の面積を脱水するために少なくとも1つの信号を付与することにより、皮膚の面積の顆粒層を70%未満の含水率に脱水する。
【0024】
一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することは、真皮調整装置の遠位端を摂氏400度に維持することを含む。
【0025】
一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することは、8ミリ秒~14ミリ秒の範囲の期間のパルスを発生することを含む。
【0026】
一部の実施形態では、皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために少なくとも1つの信号を発生することは、0.1ミリメートル~1ミリメートルの範囲の深さに角質層の外部表面を押し下げるために非侵襲性の応力を付与することを含む。
【0027】
一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することは、少なくとも1つの信号の第1のパラメータを制御することを含み、第1のパラメータは、少なくとも1つの信号の時宜、強度、温度、周波数、期間、および位相からなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態では、方法は、皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために少なくとも1つの信号を付与することを、皮膚の面積を脱水するために少なくとも1つの信号を付与することと同期させることをさらに含む。
【0029】
一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することにより脱水信号を発生し、脱水信号を発生することは、乾燥流を発生すること、無線周波数信号を発生すること、光信号を発生すること、および加熱信号を発生することからなる群から選択された行為を実行することを含む。
【0030】
一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することにより応力信号を発生し、応力信号を発生することは、乾燥流を発生すること、無線周波数信号を発生すること、一連の機械的パルスを発生すること、および機械的回転を発生することからなる群から選択された行為を実行することを含む。
【0031】
一部の実施形態では、方法は、皮膚の面積の角質層に溶液を塗布することをさらに含む。
【0032】
開示された技法は、図面と併せて考慮することにより、以下の詳細な説明からより完全に理解され認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】先行技術に公知であるような表皮の試料の断面の概略図である。
【
図1B】先行技術に公知であるような剥離レーザ治療を受けた皮膚の試料の画像である。
【
図1C】先行技術に公知であるような無線周波数工程を使用して剥離治療を受けた皮膚の試料の画像である。
【
図2A】開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、真皮調整装置の概略図である。
【
図2B】開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、真皮調整装置の概略図である。
【
図2C】開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、真皮調整装置の概略図である。
【
図3A】共に開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、開示された技法の真皮調整装置の一実施形態の概略図である。
【
図3B】共に開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、開示された技法の真皮調整装置の一実施形態の概略図である。
【
図3C】共に開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、開示された技法の真皮調整装置の一実施形態の概略図である。
【
図3D】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、
図3A~
図3Cの真皮調整装置によって非侵襲性治療を受ける皮膚の試料の概略図である。
【
図3E】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、
図3A~
図3Cの真皮調整装置によって非侵襲性治療を受ける皮膚の試料の概略図である。
【
図4A】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、
図3A~
図3Cの真皮調整装置によって非侵襲性治療を受けた後の皮膚の面積の画像である。
【
図4B】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、
図3A~
図3Cの真皮調整装置による治療に応答した皮膚に対する熱波穿孔深さを示すグラフである。
【
図4C】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、8msの期間のパルスに対して
図3A~
図3Cの真皮調整装置による治療後に、15msにわたって様々な皮膚の深さにおける皮膚の温度を示すグラフである。
【
図4D】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、14msの期間のパルスに対して
図3A~
図3Cの真皮調整装置による治療後に、30msにわたって様々な皮膚の深さにおける皮膚の温度を示すグラフである。
【
図4E】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、付与された応力と、付与された応力に応答して複数の材料の対応する伸長との間の関係を示すグラフである。
【
図4F】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、一般に
図2Aの真皮調整装置、具体的に
図3Aの真皮調整装置の加熱段階の適用に応答した、複数の深さにおける皮膚の温度を示すグラフである。
【
図4G】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、8msの期間のパルスに対して
図3Aの真皮調整装置による加熱段階の間の様々な深さにおける皮膚の温度勾配を示す。
【
図4H】先行技術の方法に従って剥離治療を受けた後の皮膚の面積を示す図である。
【
図4I】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、
図2Aの真皮調整装置による非剥離性治療を受けた後の皮膚の面積を示す図である。
【
図5A】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、光エミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図5B】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、光エミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図5C】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、光エミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図5D】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、乾燥流を使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図5E】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、乾燥流を使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図6A】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、RFエミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図6B】開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、RFエミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
【
図7】開示された技法のさらなる実施形態に従って構築された作動する、真皮調整装置を作動するための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
開示された技法は、非侵襲性および非剥離性工程を使用して物質の皮内送達のための、皮膚の面積の吸収能力を改良するための新規のシステム、装置および方法を提供することにより、先行技術の欠点を克服する。皮膚の角質層は、水中でその重量の3倍まで吸収することができ、脱水したときに柔軟で可撓性であるが、含水量が十分に降下したときに角質は脆くなり割れやすい。この特性は人および動物の両方に当てはまる。開示された技法は、美容または医療治療用の溶液または物質を吸収する一方で、皮膚組織の細胞の一体化および生存を維持し、治療前の皮膚の穿孔障壁機能を保護するために皮膚を調整するようにこの特性を利用する。開示された技法によれば、角質は脆くなるように十分に脱水される。次いで応力(すなわち断面積当たりの力)が脆い角質に付与され、これによって角質上に歪みが生じ、変形させる。歪みにより角質内に複数の亀裂が形成される一方で、角質を剥離しない。皮膚内に形成された亀裂は、より深い皮膚組織層にアクセスチャネルを提供し、これらの層は親水性、脂溶性または疎水性溶液を吸収できるようになる。加えて、上部皮膚層内に形成された亀裂は、皮膚の外部表面に連続して加熱を加えることに応答してより深い皮膚層から水を蒸発させることができる、すなわち皮膚の表皮層は、表皮層の下の真皮層の一部と同様に脱水される。より深い皮膚層を脱水することにより、その中の細胞が具体的には親水性および脂溶性溶液を吸収しやすくなる。
【0035】
角質を調整することには、加熱段階、および皮膚を穿孔しない、したがって非侵襲性である応力を付与する段階が含まれる。加熱段階は皮膚の脱水を引き起こし、応力を付与する段階は皮膚に歪みをもたらし、皮膚の表面が変形する。脱水段階は角質層ならびにより深い皮膚層に影響を及ぼすのに対して、歪みを付与する段階は角質層のみに影響を及ぼす。最初の脱水および次の応力を付与する組合せは、皮膚の表皮層の角質を脆くし、外傷を誘発することなく亀裂させる。角質内の亀裂は、皮膚の外部表面から下にある脱水したが依然として生存できる細胞に送達チャネルを形成する。これにより皮膚の外部表面に塗布された溶液、物質、薬剤、軟膏などが、より深い層に到達でき、そこで吸収される。脱水および応力を付与する段階は、皮膚の穿孔を避ける正確に制御された方式で皮膚の外部に適用される。応力は、外傷を誘発することなく亀裂の形成をもたらすために、皮膚の表面に丁度十分な量の歪みをもたらすよう付与される。皮膚に外傷を誘発することを避けることにより、開示された技法は、より深い皮膚層の吸収能力に弊害をもたらすはずである炎症性免疫反応をその後起こすことを防ぐ。したがって従来の先行技術とは対照的に、開示された非剥離技法は、皮膚細胞の凝固または変性を最小にする。脱水段階および非侵襲性の歪みを付与する段階は、連続して、連携してまたはそれらの組合せとして適用されてもよい。
【0036】
開示された技法は、角質を10%未満の含水率に脱水し、脆く割れやすいままにし、顆粒層(角質層の下の次の層)などのより深い層を70%未満の含水率に脱水し、その吸収能力を増加させる。加えて開示された技法は、脆い角質層の表面に歪みを付与し、割れを形成する。この手法で、より深い層内の生細胞への熱損傷が防止され、それらの生存能力を維持する。その後、生細胞は亀裂を介して送達された親水性、脂溶性または疎水性溶液を吸収して反応することができる。皮内送達に関連した用語「溶液」は、皮膚を通して投与できる薬品、薬剤、ワクチン、軟膏、クリーム、粘性物質などを指すために本明細書全体に使用されることに留意されたい。また本明細書全体に使用される用語「皮膚」は、ヒトの皮膚ならびに動物の皮膚に適用することができることにも留意されたい。
【0037】
次に
図2A~2Bを参照する。
図2A~2Bは、開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、概して200で示された真皮調整装置の概略図である。
図2Aを参照すると、真皮調整装置200は皮膚250の面積の近位に位置付けられて示されている。皮膚250の面積の層は、角質層252、顆粒層254、有棘層256、および基底層258として示されている。顆粒層254、有棘層256、および基底層258は、まとめてより深い皮膚層と呼ぶことができる。
図2Aは真皮調整装置200によって調整される前の皮膚250の面積を示し、角質層252は完全に無傷である。
【0038】
真皮調整装置200はヒータ204、ストレッサ206、制御装置208、および電源210を含み、すべては筐体212内に包囲される。筐体212に取り付けられているのはハンドル214である。ヒータ204、ストレッサ206、制御装置208および電源210は、それぞれがその間に有線、光ファイバー、およびソフトウェア(例えば通信プロトコル)チャネルのいずれかを含む公知の技法を使用して、データを転送する通信バス216を介して互いに電気的に結合される。通信バス216は直列、並列、またはそれらの組合せでデータを転送してもよい。ヒータ204は、制御装置208によって決定されたような1つまたは複数の熱制御パラメータに従って、皮膚250の面積を脱水するための熱を発生する。ヒータ204は、真皮調整装置200の遠位端に十分に近位に位置付けられたときに、ヒータ204によって生成された熱が皮膚250の面積に送達されるように、真皮調整装置200の遠位端に熱的に結合される。送達された熱により、皮膚250の面積から水が蒸発する。ストレッサ206は、制御装置208によって決定されたような1つまたは複数の応力制御パラメータに従って、皮膚250の面積に付与するための応力を発生する。応力は機械的応力、気流によってもたらされた圧力などであってもよい。ストレッサ206は、真皮調整装置200の遠位端に十分に近位に位置付けられたときに、ストレッサ206によって生成された応力が皮膚250の面積に付与されるように、真皮調整装置200の遠位端に結合される。付与された応力は皮膚250の面積に歪みを生成し、複数の亀裂の形成をもたらす。
【0039】
図2Aに示されたように、真皮調整装置200により皮膚250を調整する前に、皮膚250の面積の角質層252は平滑で完全に無傷であり、著しい亀裂はない。この状態で、角質層252は、より深い皮膚層254、256、および258と、真皮調整装置200の遠位端に面する角質層252の外部表面との間に障壁をもたらす。したがって角質層252は、より深い皮膚層254、256、および258内の生細胞が外部に付与された溶液を吸収するのを防ぐ。
【0040】
次に
図2Bを参照する。
図2Bは、開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、
図2Aの制御装置208、ヒータ204、およびストレッサ206の概略ブロック図である。制御装置208は、少なくとも1つの処理装置218、記憶装置220、トランシーバ222、および通信バス224を含む。処理装置218、記憶装置220、およびトランシーバ222は、通信バス224を介して互いに電気的に結合される。通信バス224は、有線、光ファイバー、およびソフトウェア(例えば通信プロトコル)チャネルのいずれかを含む公知の技法を使用してデータを転送する。通信バス224は直列、並列、またはそれらの組合せでデータを転送してもよい。トランシーバ222は、赤外線技術、ブルートゥース(登録商標)技術、イーサネット技術などを通して有線、無線または両方のあらゆる公知の通信手段を介してデータを受信する。データは、1つまたは複数のプログラムコード命令、真皮調整装置200の作動を制御するための1つまたは複数のパラメータなどを含んでもよい。記憶装置220は、1つまたは複数のプログラムコード命令、データおよび作動パラメータを記憶する働きをするコンピュータ可読媒体である。処理装置218は、
図2Aのヒータ204およびストレッサ206の作動を制御するためなど、真皮調整装置200の作動を制御するために1つまたは複数のプログラムコード命令を実行するときにパラメータを適用する。
【0041】
制御装置208は、皮膚250の面積に連続して、同時にまたはそれらの組合せのいずれかでそれぞれの熱および歪みを付与するために、ヒータ204およびストレッサ206の作動を制御する。例えば制御装置208はまずヒータ204により脱水段階の実施を制御し、次いでストレッサ206により応力付与および歪み生成段階の実施を制御してもよい。別の実施形態では、制御装置208は、脱水段階ならびに応力付与および歪み生成段階が同時に実施されるように、ヒータ204およびストレッサ206の作動を同期させてもよい。
【0042】
ヒータ204は熱発生器224および熱エミッタ226を含む。熱発生器224は、制御装置208および電源210(
図2A)に電気的に結合される。熱エミッタ226は、熱発生器224に、および真皮調整装置200(
図2A)の遠位端に熱的に結合される。熱発生器224は、例えば温度(単位摂氏、℃)、波長(単位ナノメートル、nm)、エネルギーレベル(単位ジュール、J)、時宜(単位秒)などの1つまたは複数の熱制御パラメータに従って熱を発生する。制御装置208は、熱制御パラメータに従って熱発生器224の作動を制御する。熱エミッタ226は、皮膚250の面積が真皮調整装置200の遠位端の近位に位置付けられたときに、真皮調整装置200の遠位端から熱発生器224によって発生された熱を皮膚250の面積上に放射する。制御装置208は、角質層252の含水率が10%未満であり、顆粒層254の含水率が70%未満であるように、皮膚250の面積の脱水をもたらすために熱発生器224による熱の発生および熱エミッタ226による熱の放射を制御する。例えば制御装置208は、熱エミッタ226によって放射された熱の時宜、周波数、温度、および強度のいずれかを制御する。制御装置208は、1つまたは複数のセンサ(図示せず)から皮膚250の面積の状態についてのフィードバックを受信し、それに応じて熱発生器224による熱の発生および熱エミッタ226による熱の放射を調節してもよい。
【0043】
開示された技法によれば、以下の公式はヒータ204を作動するためのパラメータを決定するために使用される。定熱容量に対して、水を蒸発させるために必要なエネルギー量は以下のように算出されてもよい。
エネルギー=(質量)×(温度差)×(特定熱容量) (1)
【0044】
生きている皮膚組織が定熱容量をもっていない場合であっても、100℃未満の非常に狭い温度範囲にわたる皮膚組織に対する熱容量の変化は非常に小さく、定熱容量の仮定から生じる誤差はそれに応じて小さい。例えば大気圧では、定圧における特定の熱容量は、20℃で4.183kJ/(kg・K)から80℃で4.194kJ/(kg・K)に変化し、変化は0.3%に過ぎない。過熱水などの他の物質については、温度および圧力に関する熱容量の変化は大きいことがある。350℃(200バール)では、熱容量は8.138kJ/(kg・K)で、同じ圧力における20℃の熱容量の2倍に近い。生きた皮膚組織から水を蒸発させるために必要な熱量は、したがって顕熱(Q
sh)と潜熱(Q
lh)の合計で算出することができる。開示された技法の文脈における顕熱は、その表面温度(通常32℃)がおよそ100℃であるように、組織を加熱するために必要な熱に関連する。潜熱は加熱した水の状態を液体から蒸気に変えるために必要な熱である。したがって必要な熱Q
Thは以下のように顕熱と潜熱の合計によって与えられる。
【数1】
顕熱は、水の特定の熱容量に温度変化を乗じて算出される。潜熱は、水に対する特定の潜熱に水の質量として測定された水量を乗じて算出される。したがって必要な熱は以下のように書き換えてもよい。
Q
Th=C
m(T
2-T
1)+mL (3)
上式でLは特定の潜熱(水に対してこれは2264.76kJ/(kg・K)である)であり、mは質量(kg)であり、C
mは水の特定の熱容量(4.2kJ/(kg・K))であり、T
2は皮膚の最終温度(℃)であり、T
1は皮膚の初期温度(℃)である。真皮調整装置200の遠位端から皮膚250の異なる層への直接熱伝達(流)は以下の一般方程式によって決定されてもよい。
【数2】
より具体的には、熱ポテンシャル差は温度差T
i-T
jに熱伝導率kおよび熱伝導面積Aを乗じて与えられ、熱抵抗は皮膚の厚さによって与えられる。したがって直接熱伝達は以下のより具体的な方程式によって決定される。
【数3】
上式でqは熱流であり、T
i-T
i-1は各皮膚層内の温度差であり、Δx
a、Δx
bは皮膚層a、bに対する厚さであり、Aは皮膚の面積の熱伝導率であり、k
a、k
bは皮膚層a、bそれぞれに対する熱伝導率である。
【0045】
皮膚250の面積によって吸収された熱量は、真皮調整装置200の遠位端に位置付けられた熱エミッタ228と皮膚250の熱特性との間の距離の関数である。皮膚250は真皮調整装置200の遠位先端部に比べてかなり大きいので、真皮調整装置200の遠位先端部は集中質量として分析されることがある。集中質量では、内部温度は熱伝達工程の間中基本的に均一のままであり、温度(T)はその時(t)の関数であるととることができ、したがってT(t)が与えられる。集中質量モデルに対する熱伝達は、時間間隔dtにわたる皮膚250の面積に伝達された熱であり、これは時間間隔dtの間の皮膚250の面積のエネルギーの増加に等しく、熱伝達係数(h)と、真皮調整装置200の皮膚250の面積との接触面積(A
s)の積に時間間隔dtにわたる温度差(T
∞-T)を乗じると数学的に表すことができる。これは皮膚250の治療した面積の質量(m)に皮膚250の特定の熱c
pを乗じたものに等しく、以下の公式として表すことができる。
hA
s(T
∞-T)dt=mc
pdT (6)
上式で、hは熱伝達係数(W/(m
2・K))であり、A
sは真皮調整装置200と皮膚250の治療した面積との接触面積であり、T
∞は皮膚250の面積の最終温度(℃)であり、Tは皮膚250の面積の初期温度(℃)であり、mは皮膚250の治療した面積の質量(kg)であり、c
pは皮膚250の面積の特定の熱(Kg・m
2/(Ks
2))である。m=ρVにおいてρは皮膚250の面積の密度(kg/m
3)であり、Vは皮膚250の治療した面積の容積(m
3)であり、方程式(5)は以下のように書き換えてもよいことに留意されたい。
【数4】
これは以下のように解くことができる。
【数5】
上式で、
【数6】
である。
【0046】
熱発生器226は、以下の例のように熱を発生するためのあらゆる公知の技法を使用して実施されてもよい。
・熱発生器226は摩擦を介して加熱する機械的熱発生器であってもよい。
・熱発生器226は、真皮調整装置200の遠位端に配置された、熱エミッタ228を形成する熱伝導要素に熱的に結合された熱発生要素であってもよい。
・熱発生器226は、熱エミッタ228を形成する複数の空気チャネルを介して真皮調整装置200の遠位端に流体結合された、空気加圧器に結合された熱発生要素であってもよい。
・熱発生器226は、真皮調整装置200の遠位端に配置された複数の光ファイバチャネルとして構成された、熱エミッタ228に光学的に結合された赤外線(本明細書ではIR)または近IRレーザエミッタであってもよい。
・熱発生器226は、真皮調整装置200の遠位端からRF信号を導くように構成された、熱エミッタ228に電気的に結合されたRF信号エミッタであってもよい。
【0047】
ストレッサ206はアクチュエータ230および応力付与器232を含む。アクチュエータ230および応力付与器232は、皮膚250の面積が真皮調整装置200の遠位端に十分に近接して位置付けられたときに、アクチュエータ230によって駆動された力が応力付与器232により皮膚250の面積上に搬送されるように互いに結合される。例えばアクチュエータ230は、応力搬送機232に機械的に結合されても、電気的に結合されても、または流体結合されてもよい。例示的実施形態は、
図5A~5Eにおいて以下により詳細に説明されているが、これらの例は限定を意図するものではない。アクチュエータ230は、制御装置208および電源210(
図2A)に電気的に結合される。アクチュエータ230は、例えば力(単位ニュートン、N)、エネルギーレベル(単位ジュール、J)、周波数(単位ヘルツ、Hz)、位相(単位秒)、時宜(単位秒)などの1つまたは複数の応力制御パラメータに従って応力を発生する。アクチュエータ230は、例えばリニアモータ、圧電素子、RFエミッタなどのあらゆる公知の応力アクチュエータであってもよく、これらの実施形態は
図6A~6Bにおいて以下により詳細に説明されている。制御装置208は、上述の応力制御パラメータに従ってアクチュエータ230の作動を制御する。応力付与器232は、アクチュエータ230によって発生された応力を真皮調整装置200の遠位端から皮膚250の面積上に搬送する。付与された応力に応答して、歪みが皮膚250の面積上に生成され、複数の亀裂の形成をもたらす
【0048】
図2Cを参照すると、真皮調整装置200は、真皮調整装置200によって治療した後の皮膚250の面積の近位に示されている。皮膚250の面積は割れ、脱水された角質層252内に複数の亀裂260が表れている。角質層252は、治療前より真皮調整装置200による治療後の方が薄い。複数の亀裂260は、応力付与器232によって付与された応力の結果として皮膚250上に生成された歪みによってもたらされる。各複数の亀裂260は、角質層252の外部表面とより深い皮膚層254、256、および258との間にチャネルを提供する。とりわけ真皮調整装置200によって調整した後に角質層252ならびにより深い皮膚層254、256、および258内の細胞構造は無傷のままであり、それによって外傷および凝固は最小であることを示す。このように調整されて、角質層252の外部表面に塗布された溶液(図示せず)は複数の亀裂260を介してより深い皮膚層254、256、および258に搬送することができ、そこで溶液はその中に存在する細胞によって吸収される。
【0049】
制御装置208は、皮膚250の面積の表面またはより深い皮膚層のいずれにも熱的損傷を生じることなく皮膚250の面積を脱水するために十分な熱を生成するように、ヒータ204を制御することにより
図2Aおよび2Cに示された皮膚250の調整を制御する。ヒータ204は熱を生成し、皮膚250の角質層252の外部表面に熱を付与し、それによってその中に保存された水を蒸発させる。一実施形態では、制御装置208は、角質層252のそれぞれの含水率が約10%未満になるまで、また顆粒層200Bの細胞外マトリクス(本明細書ではECMと略す)のそれぞれの含水率が約70%未満になるまで、皮膚250の表皮層(例えば角質層252およびより深い皮膚層254、256、および258)から蒸発を引き起こすために、ヒータ204によって生成された熱の温度、強度および時宜を制御する。
【0050】
また制御装置208は、角質層252の外部に付与されたときに、脱水された角質層252を割るのに十分な歪みを脱水された角質層252上にもたらす応力を生成するためにストレッサ206も制御する。ストレッサ206は応力を生成し、角質層252を穿孔することなく角質層252の外部表面に応力を付与する。外部に付与した応力は、角質層252上に歪みを生成し、免疫反応を引き起こすために皮膚250の表皮の層に外傷を生じることなく、角質層252内に複数の亀裂260の形成をもたらす。したがって真皮調整装置200による皮膚250の調整は非侵襲性である。複数の亀裂260の大きさおよび深さは、20~300ミクロンの範囲であってもよい。調整された角質層252内で亀裂した組織の、亀裂していない組織に対する割合は、1%~30%の範囲であってもよい。その割合は、例えば複数の亀裂260の幅の角質層252の、無傷の領域の幅に対する割合であってもよい。一旦調整されると、皮膚250の面積は、亀裂した角質層252の外部表面に付与された親水性、脂溶性または疎水性溶液をより深い皮膚層254、256、および258内の生細胞の中に吸収することができる。
【0051】
次に
図3A~3Cを参照する。
図3A~3Cは、まとめると開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、概して300で示された開示された技法の真皮調整装置の一実施形態の概略図である。以下の説明では、真皮調整装置300は、
図2A~2Cの真皮調整装置200に関して上述された手順および/または機能のいずれかを実行するために作動可能であると理解される。
図3Aを参照すると、真皮調整装置300は、アクチュエータ306A、制御装置308、電源310、通信バス316A、316B、および316Cのそれぞれ、筐体312の遠位端に薄い要素として示された熱発生器326を含むヒータ304、ならびに真皮調整装置300の遠位端に1組のピラミッド型歯の熱伝導表面として示された熱エミッタ328、アクチュエータ330、シャフト334、アクチュエータ先端部332、ならびに距離ゲージ336を含む。
図2A~2Bに戻って参照する一方で、依然として
図3Aを参照すると、制御装置308は制御装置208に対応し、電源310は電源210に対応し、ヒータ304、熱発生器326および熱エミッタ328はヒータ204、熱発生器226および熱エミッタ228のそれぞれに対応し、アクチュエータ330およびアクチュエータ先端部332はアクチュエータ230および応力付与器232のそれぞれに対応する。
【0052】
制御装置308、アクチュエータ330および電源310は、通信バス316Aを介して電気的に結合される。制御装置308および電源310は通信バス316Bおよび316Cのそれぞれを介して熱発生器326に電気的に結合される。アクチュエータ330はシャフト334を介してアクチュエータ先端部332に機械的に結合される。アクチュエータ330は、応力パラメータに従って真皮調整装置300の長手方向軸(Y)と位置合わせして、アクチュエータ先端部332を遠位に距離ゲージ336を超えて伸ばし、アクチュエータ先端部332を近位に距離ゲージ336の背後に後退させるように作動するリニアモータである。アクチュエータ先端部332のより詳細な説明は
図3Bにおいて以下に与えられる。
【0053】
ヒータ304は、アクチュエータ先端部332の近位で真皮調整装置300の遠位端に位置付けられる。ヒータ304は、当技術分野で公知のあらゆる適切な技法を使用して具現化されてもよい。例えばヒータ304の熱発生器326は、セラミックヒータなどの熱ヒータであってもよい。別法として、ヒータ304の熱発生器326はレーザ光源であってもよい。ヒータ304は真皮調整装置300の遠位端に定熱を提供する。一実施形態では、熱エミッタ328は、熱エミッタ328がアクチュエータ先端部332と一緒に真皮調整装置300の遠位端を形成するように、アクチュエータ先端部332上の熱伝導性コーティングである。この実施形態では、ヒータ304の熱発生器326は、例えば熱整合を確保するために熱発生器326を熱エミッタ328およびアクチュエータ先端部332の近位基部に押し付けるバネ(図示せず)を使用することにより、または別法として熱伝導性接着剤を使用することなどにより、熱エミッタ328に熱的に結合される。制御装置308は、熱エミッタ328を真皮調整装置300の作動中におよそ400℃の一定の有効温度に維持するために、ヒータ304の熱発生器326の作動を制御する。
【0054】
図3Bを参照すると、真皮調整装置300が斜め視野から示されている。アクチュエータ先端部332は、真皮調整装置300の遠位端に配置されている。アクチュエータ先端部332は、真皮調整装置300の長手方向軸(Y)と位置合わせされたピラミッド型突起部338のアレイを含む。突起部338のアレイの頂点は、真皮調整装置300の遠位端を形成する。一実施形態では、アクチュエータ先端部332は、およそ1cm
2の面積を覆う突起部338のアレイの9×9のグリッドを含む。突起部338のアレイの1つずつの高さはおよそ1.25mmである。各突起部338の遠位端の表面積(例えば角質層252(
図2A)と接触させる表面積)はおよそ1.27×10
-4m
2である。皮膚250とアクチュエータ先端部332の突起部338のアレイとの接触面積の間の間隔は十分であるので、あらゆる時点で皮膚250と突起部338のアレイの任意の1つとの接触面積の任意の1つの温度は突起部338のアレイの1つのみにより熱的に影響を及ぼされる。したがって治療の間中、正常な体温(すなわち37℃)を維持する突起部338のアレイと接触した皮膚250の面積の間に領域が存在する。突起部338は、金メッキしたチタニウム、タングステン、タンタルまたは金メッキしたステンレス鋼などの生体適合材料、熱伝導性材料および耐熱性材料から作成されてもよい。開示された技法の一実施形態では、突起部338の熱伝導性は、角質層252(
図2A)の加熱により皮膚250(
図2A)の面積の生細胞を剥離することなく脱水を十分に起こすことができるために、金メッキした銅の熱伝導性より低い。
【0055】
真皮調整装置300の距離ゲージ336は、真皮調整装置300のそれぞれの遠位端に配置される。距離ゲージ336は、真皮調整装置300が使用されないときに突起部338のアレイを包囲する。治療中、アクチュエータ330は突起部338の遠位端が距離ゲージ336をおよそ400マイクロメートル(本明細書ではμmと略す)だけ超えて遠位に伸びるように、アクチュエータ先端部332を遠位に前進させる。アクチュエータ330は、制御装置308によって制御されたように治療毎の所定のパルス期間およびパルスの所定の数に従って高調波パルス運動においてアクチュエータ先端部332を前進させ、後退させるように作動し、角質層252上に応力に加えて摩擦熱を生じる。複数の突起部338が皮膚250の面積と接触している間、突起部338のアレイの遠位端は、角質層252(
図2A)を穿孔することなく皮膚250の表面を押し下げる。複数の突起部338は非侵襲的手法で皮膚250の表面を押し下げる。押し下げる深さは、0.1ミリメートル(mm)~1mm、または0.05~1.2mm、または0.2mm~0.8mm、または0.3mm~0.7mm、または0.4mm~0.6mmの範囲である。したがって真皮調整装置300による皮膚250の調整は非侵襲性である。突起部338と皮膚250との間の接触時間は、突起部338のアレイと皮膚250との間の十分な熱伝達により実質的に凝固または燃焼することなく皮膚250の実質的な脱水をもたらすことを可能にするために、1~20ミリ秒(本明細書ではmsと略す)の間で変化する。典型的なパルス期間は、8ms~14ms、または5ms~20ms、または10ms~15ms、または5ms~15msの範囲であってもよい。一実施形態では、アクチュエータ先端部332の高調波パルス運動の距離は、真皮調整装置300の長手方向軸に沿って0.02mm~1.50mmの範囲であってもよい。アクチュエータ先端部332のパルス運動とヒータ304による加熱の組合せによって、皮膚250の面積を迅速に加熱し、皮膚250の表面からの水の蒸発ならびに角質層252の亀裂をもたらす。加えて一旦角質層252が亀裂すると、ヒータ304による連続した熱の付与がより深い皮膚層254、256、および258(
図2A)から水を蒸発させる。
【0056】
次に
図3Cを参照する。
図3Cは、
図3Aの真皮調整装置300の遠位端に対する別の実装形態の概略図である。ヒータ304(
図3A)は、アクチュエータ先端部332の近位に位置付けられた熱発生器326を含む。熱発生器326は、例えばインテンスパルスライト(本明細書ではIPLと略す)光源、IRもしくは近IR光源、固体レーザダイオードなどの光エミッタであることが可能であり、熱エミッタ328は、熱発生器326から真皮調整装置300の遠位端に光を向ける複数の突起部338内に埋め込まれた複数の光チャネルを含む。熱発生器326は、わずかなCO
2レーザとして100μmの組織穿孔深さに実装されてもよい。熱発生器326は、水の最高吸収ピークに対応して波長2.94μmで光を放射してもよい。別法として、熱エミッタ328の光チャネルは突起部338のアレイの外部に隣接して位置付けられてもよい。制御装置308(
図3B)は、アクチュエータ先端部332の高調波パルス運動を熱発生器326による光の放射と同期させる。例えば制御装置308は、突起部338のアレイが皮膚250の面積と物理的に接触されるときのみIRレーザが放射されるように、熱発生器326によりIRレーザの放射を制御してもよい。これは、装置が皮膚250の面積の表面と物理的に接触しない限り、IRレーザの放射を防ぐために安全手段を提供してもよい。別法としてセンサ(図示せず)が、アクチュエータ先端部332と皮膚250の面積との間の接触を検知し、熱発生器326を活性化するように制御装置308に通知してもよい。センサは、同様にアクチュエータ先端部332と皮膚250の面積との間に接触が検出されないときに、熱発生器326を不活性にするように制御装置308に通知してもよい。
【0057】
次に
図3D~3Eを参照する。
図3D~3Eは、開示された技法のさらなる実施形態に従って構築されて作動する、概して300で示された、
図3A~3Cの真皮調整装置により非剥離治療を受ける皮膚の試料の概略図である。
図3Dは真皮調整装置300によって調整される前の皮膚250の面積を示し、
図3Eは真皮調整装置300によって調整された後の皮膚250の面積を示す。
図3Dを参照すると、皮膚250の表面温度は37℃(正常な皮膚温度)であり、皮膚250は完全に脱水している。角質層252は無傷であり、皮膚250の外部表面とより深い皮膚層254、256および258との間の障壁として働く。
図3Eを参照すると、皮膚250は脱水されており、角質層252は
図3Dより薄い。角質層252は、より深い皮膚層254、256、および256へのアクセスチャネルとして機能する複数の亀裂260を提示する。とりわけより深い皮膚層254、256、および258の細胞は生きたままであり、それらは角質層252の外部が亀裂した表面に付与された溶液を吸収することができる。
【0058】
皮膚250の面積のこの調整を達成するために、制御装置308は真皮調整装置300の遠位端の温度を400℃に上昇させるために熱発生器326を制御する。制御装置308は、制御信号をアクチュエータ330に送信してアクチュエータ先端部332を8ms~14msの範囲のパルスで駆動させる。開示された技法によれば、真皮調整装置300の遠位端の応力パルスの期間および表面温度は、上に与えられた方程式(6)~(9)の集中システム分析を使用して分析した、皮膚250の面積の熱波穿孔深さと熱特性との間の以下の方程式に従って計算される。
【数7】
上式で、δは単位がメートルの熱波穿孔深さであり、αは単位がm
2/sの熱拡散率であり、tは単位が秒の時間であり、kは単位がW/m・°Kの熱伝導率であり、ρは単位がKg/m
3の密度であり、C
pは単位がJ/(Kg・°K)の定圧での熱容量である。
【0059】
以下の表1は皮膚250の面積に対する熱伝導特性を与える。
【表1】
【0060】
アクチュエータ先端部332から皮膚250の面積までの熱伝達は、以下の方程式に従って算出されてもよい。
【数8】
方程式(11)は皮膚250の面積のそれぞれの突起部338のアレイのそれぞれに対する熱流束について説明する。方程式(11)により、熱流束は、各突起部338の皮膚250の表面との接触表面積A上の突起部338毎の熱流束を積分することによって算出される。したがって皮膚250の面積に伝達されたエネルギーの総量は以下の方程式によって表すことができる。
【数9】
この方程式は、各パルスの期間tに対する各突起部338から皮膚250に伝達されたエネルギー量について説明し、これはパルス期間tにわたって方程式(11)において上で算出した突起部338毎のHeat
fluxを積分することによって算出される。
【数10】
この方程式は、パルス当たりの突起部338当たりに伝達されたエネルギー量に突起部338の数n(これは
図3Bに示された実施形態では81である)を乗じることによって算出される、パルス毎のアクチュエータ先端部332から皮膚250に伝達されたエネルギー量について説明する。複数の突起部338は必要に応じて配置されてもよい。例えば複数の突起部338は、4×6アレイ、12×12アレイ、10×10アレイ、15×15アレイ、10×15アレイなどのように配置されてもよい。
【0061】
以下の表2は、アクチュエータ先端部332から皮膚250に伝達された熱量、ならびに方程式(6)~(9)において上に説明されたように真皮調整装置300の有限要素解析から決定したように、パルス期間8msおよびパルス期間14msのそれぞれに対する熱穿孔深さを示す。
【表2】
【0062】
次に
図4A~4Dを参照する。
図4A~4Dは、パルス期間8msおよび14msでの
図3A~3Eの真皮調整装置300による治療のための皮膚250の応答を示す。数値結果は、上に与えられたような方程式(6)~(9)を使用して皮膚の有限要素解析から得られた。
図4Aを参照すると、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、概して250で示された、
図3A~3Eの真皮調整装置による非剥離性治療を受けた後の皮膚の面積の画像が示されている。皮膚250は破線円268によって示された角質層252内に開口を有して示されている。開口268は角質層252を通って2つの亀裂262および264に繋がる。亀裂262および264は、266と示された角質層252の外部表面と顆粒層254、有棘層256および基底層258と示された皮膚250のより深い内部層との間に自由通路帯域を形成する。顆粒層254、有棘層256および基底層258内の細胞は脱水される一方で、依然としてそれらの生存能力を維持し、したがって亀裂262および264を介して外部に付与された溶液を吸収する力がある。とりわけ顆粒層254、有棘層256および基底層258内に存在する凝固または変性は最小である。皮膚250は突起部338(
図3B)によって機械的に穿孔されず、むしろ亀裂262および264は、脱水および真皮調整装置300(
図3A~3E)により角質層252に付与された非侵襲性圧縮負荷/応力の組合せ、ならびにこの応力によって生じた角質層252上に生じた歪みによって生成された。同様に皮膚250のより深い層(すなわちより深い皮膚層254、256、および258)への真皮調整装置300の効果は、主にECMから水を蒸発する一方で、生細胞への熱損傷を最小にすることである。
【0063】
図4Bを参照すると、
図3A~3Cの真皮調整装置による治療に応答した皮膚の熱波穿孔深さを示すグラフが、開示された技法のさらなる実施形態に従って構築されて作動する、概して400で示されている。グラフ400は、単位マイクロメートルで組織深さを示す水平軸402、および単位摂氏で温度を示す垂直軸404を含む。曲線406は、パルス期間8msで真皮調整装置300(
図3A~3C)による治療に応答する皮膚250の熱波穿孔深さを描くのに対して、曲線408は、パルス期間14msで真皮調整装置300による治療に応答する皮膚250の熱波穿孔深さを描く。8msのパルス期間に対する曲線406に関して、深さ0μmでは皮膚250の温度は400℃に達し、深さ5μmでは皮膚250の温度は350℃に達し、深さ10μmでは皮膚250の温度は300℃に達し、深さ30μmでは皮膚250の温度は150℃に達する。14msのパルス期間に対する曲線222に関して、深さ0μmでは皮膚250の温度は400℃に達し、深さ5μmでは皮膚250の温度は360℃に達し、深さ10μmでは皮膚250の温度は320℃に達し、深さ30μmでは皮膚250の温度は180℃に達する。曲線406および408からわかるように、最も大幅な温度増加は皮膚250の表面で深さ0μmにおいて起きる。皮膚250のより深い層、例えば
図3D~3Eの層254、256、および258の温度は、急勾配で劇的に低減し、約50μmで先細になり、そこで温度は緩やかな勾配で低減する。この特性はより深い皮膚層での剥離および組織の損傷を防ぎ、これらの細胞の生存能力を維持する。
【0064】
次に
図4Cを参照する。
図4Cは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、概して420で示された、パルス期間8msに対する
図3A~3Cの真皮調整装置による治療の後、15msにわたって様々な皮膚の深さにおける皮膚の温度を示すグラフである。グラフ420は単位ミリ秒で時間を示す水平軸422および単位摂氏で温度を示す垂直軸424を含む。426で示された最上曲線は、装置300により8msのパルスで治療される場合の15msにわたる皮膚250、換言すると角質層252の外側の表面温度の変化を示す。パルスの最初に、皮膚250の表面温度は急速に上昇し、1ms以内に400℃のピーク温度に達する。角質層252の表面は、パルスの期間8msの間定温400℃に維持され、その後温度は降下し始め、10ms後に320℃に達し、15ms後におよそ260℃に達する。
【0065】
428で示された曲線は、真皮調整装置300により8msのパルスで治療される場合の、角質層252の中間領域に対応する5μmの深さにおいて15msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度は最初の2msで急速に増加し、およそ300℃に達し、その後温度はより遅い速度で増加し続け、8msで350℃に近いピーク温度に達する。8ms後、温度はかなり急速に低減し、10msで約250℃に低下し、15ms後に160℃未満に低減し続ける。
【0066】
430で示された曲線は、真皮調整装置300により8msのパルスで治療される場合の、角質層252と顆粒層254との間の境界に対応する10μmの深さにおいて15msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度は最初の3msで急速に増加し、260℃に達し、その後温度はより遅い速度で増加し続け、8msで300℃に近いピーク温度に達する。8ms後、温度はかなり急速に低減し、10msで約240℃に低下し、15ms後に160℃未満に低減し続ける。曲線430(10μm)および428(5μm)は約12ms後に集束する。432で示された曲線は、真皮調整装置300により8msのパルスに治療される場合の、基底層258の真下(皮膚の表皮と真皮層との間の境界)に対応する30μmの深さにおいて15msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度はほとんど直線的に増加し、8ms後にほぼ150℃に達する。8ms後、温度はかなり直線的に低減するが、その増加より遅く、15ms後に120℃に達する。
【0067】
434で示された曲線は、真皮調整装置300により8msのパルスで治療される場合の、100μmの深さにおいて15msにわたる皮膚250の下の組織の温度の変化を示す。パルスの最初に、深い組織の温度は正常な体温37℃からあまり変化せず、15ms後に40℃に達する。
【0068】
グラフ420から見られるように、曲線426によって表された皮膚250の表面温度のみがパルスの期間の間中400℃に維持され、大幅な脱水および亀裂の形成が可能なる。曲線428および430によって表された深さ5μmおよび10μmのそれぞれにおけるより深い皮膚層254および256の温度は、若干上昇し、生細胞に損傷を生じることなく脱水することができる。しかし曲線432および434のそれぞれによって表された30μm以下から100μmまでの深い組織の温度は、緩やかに上昇するに過ぎず、これらの面積の損傷を防ぐ。
【0069】
次に
図4Dを参照する。
図4Dは、開示された技法のさらなる実施形態に従って構築されて作動する、概して440で示された、パルス期間14msに対して
図3A~3Cの真皮調整装置による治療後、30msにわたって様々な皮膚の深さにおける皮膚の温度を示すグラフである。グラフ440は、単位ミリ秒で時間を示す水平軸442および単位摂氏で温度を示す垂直軸444を含む。446で示された最上曲線は、真皮調整装置300(
図3A~3C)により14msのパルスで治療される場合の、30msにわたる皮膚250、例えば角質層252の外側の表面温度の変化を示す。パルスの最初に、皮膚250の表面温度は急速に上昇し、1ms以内で400℃のピーク温度に達する。角質層252の表面は、パルス期間の14msの間定温400℃に維持され、その後温度は降下し始め、15ms後に370℃に達し、30ms後に丁度260℃未満に達する。
【0070】
448で示された曲線は、真皮調整装置300により14msのパルスで治療される場合の、角質層252の中間領域に対応する5μmの深さにおいて30msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度は最初の3msで急速に増加し、およそ320℃に達し、その後温度はより遅い速度で増加し続け、14msで360℃に近いピーク温度に達する。14ms後、温度はかなり急速に低減し、17msで約240℃に低下し、30ms後に120℃未満に低減し続ける。
【0071】
450で示された曲線は、真皮調整装置300により14msのパルスで治療される場合の、角質層252と顆粒層254との間の境界に対応する10μmの深さにおいて30msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度は最初の3msで急速に増加し、260℃に達し、その後温度はより遅い速度で増加し続け、17msでおよそ310℃のピーク温度に達する。14ms後、温度はかなり急速に低減し、17msで約240℃に低下し、30ms後に120℃未満に低減し続ける。10μmの曲線450および5μmの曲線448は、約17ms後に集束する。
【0072】
452で示された曲線は、真皮調整装置300により14msのパルスで治療される場合の、基底層258の直下に対応する30μmの深さにおいて30msにわたる皮膚250の温度の変化を示す。パルスの最初に、温度はパルスの期間の間中より緩やかに増加し、14msで180℃に近いピーク温度に達し、その後温度は徐々に低減し、30msで丁度110℃未満に低下する。
【0073】
454で示された曲線は、真皮調整装置300により14msのパルスで治療される場合の、100μmの深さにおいて30msにわたる皮膚250の下の組織の温度の変化を示す。パルスの最初に、深い組織の温度は正常な体温37℃からあまり変化せず、30ms後に丁度45℃以下に達する。
【0074】
グラフ440に見られるように、温度の上昇および減衰パターンは、グラフ420(
図4C)に類似している。曲線446によって表された皮膚250の表面温度のみがパルスの期間の間中400℃に維持され、大幅な脱水および角質上に亀裂を形成することができる。曲線448および450によって表された深さ5μmおよび10μmのそれぞれの深さにおけるより深い皮膚層254および256の温度は若干上昇し、その中の生細胞を損傷させることなく部分的に脱水することができる。しかし曲線452および454のそれぞれによって表された30μm直下から100μmまでの深い層の温度は緩やかに上昇するに過ぎず、それによってこれらの面積の損傷を防ぐ。
【0075】
概して真皮調整装置300(
図3A)により、より一般的には真皮調整装置200(
図2A)により皮膚250上に加熱段階を適用することによって、角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258の脱水を引き起こす。脱水の結果として、溶液をその後導入された皮膚250の外部表面と脱水された角質層252ならびにより深い皮膚層254、256、および258との間に濃度勾配が存在する。濃度勾配は、真皮調整装置200によって治療されなかった皮膚250の他の面積に存在するあらゆる濃度勾配より大きい。真皮調整装置200による皮膚250の調整によって生じた濃度勾配は、角質層252を通してより深い皮膚層254、256および258に存在する生細胞に導入された溶液の吸収を加速させる働きをする。追加として角質層252が脱水されるときに、皮膚の角質層252の外部の濃度勾配はかなりある。例えば溶液は75%~100%、または80%~90%、または60%~100%の範囲の含水率を有することがあり、脱水された角質層252の含水率は0%~10%、または5%~15%、または10%~20%の範囲であることがある。対照的に、角質層252の内部の濃度勾配はかなり小さい。例えば顆粒層254は、熱穿孔深さに対応して含水率70%、または75%、または65%、または80%に達するために脱水されることがある。顆粒層254の含水レベルは、脱水された角質層252からの距離が低減するにつれて、このレベルから徐々に低減する、すなわち部分的に脱水された顆粒層254を通り上方に動き、50%、40%、30%および20%の含水レベルを通って0%~10%、または5%~15%の範囲の含水率を有する脱水された角質層252に達成するように移行する。皮膚250の外部の濃度勾配に対する皮膚250の内部の濃度勾配のこの差は、外部に塗布された溶液の吸収をさらに加速させ得る。
【0076】
追加として治療中に真皮調整装置300(
図3A)により、より一般的には真皮調整装置200(
図2A)により皮膚250に付与された熱エネルギーの総量は比較的小さい。付与された熱エネルギーは、概して真皮調整装置200の物理的寸法および設計の関数である。真皮調整装置300(
図3A)の特定の場合に対して付与された熱エネルギーを説明する熱伝導解析が、方程式11~13において上で説明されている。熱伝導解析は、アクチュエータ先端部332の大きさ、形状、および材料、追加として制御装置308が熱パラメータ(例えば8msおよび14msのパルス、アクチュ先端部を400℃まで加熱すること、その他)に従って熱エミッタ328による熱の付与を制御する方法を考慮する。しかしこのような解析は
図3A~3Eの実施形態に限定することを意図しない。同様の熱伝導解析は、過剰な凝固を生じることなく角質層252を亀裂する皮膚250への所望の熱エネルギー伝達を達成するために、当技術分野で公知であるような熱伝導解析に従って本明細書で開示された実施形態のそれぞれに対して実行されてもよいことを理解されたい。
【0077】
したがって真皮調整装置300(
図3A)により、一般的には真皮調整装置200(
図2A)により治療される場合の皮膚250内の凝固した組織の量は、従来の技法に比べて大幅に低減される。皮膚の凝固におけるこの低減は、先行技術によって治療された皮膚20(
図1A)および皮膚30(
図1B)を、真皮調整装置300(
図3A)によって、より一般的には真皮調整装置200(
図2A)によって治療された皮膚250(
図4A)と比較することによって明らかである。これらの画像を比較することによって見られるように、皮膚20(
図1A)および皮膚30(
図1B)に存在する凝固は、皮膚250(
図4A)に存在するいかなる凝固より非常に大きい。組織の凝固におけるこの低減は、このような組織の凝固によってもたらされる障壁を低減させ、より深い皮膚層254、256、および258の生細胞により導かれた溶液に対する吸収能力をさらに高める。
【0078】
次に
図4Eを参照する。
図4Eは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、付与された応力と付与された応力に応答して複数の材料の対応する伸長との間の関係を示す、概して460で示されたグラフである。各複数の材料は異なる相対湿度を有し、したがって付与された力に異なって応答する。付与された応力は、単位グラム(g)で測定した「力」と標した垂直軸462上に示されている。伸長は、力を付与する前の最初の長さに対する伸長の百分率(%)で測定した「伸長」と標した水平軸464上に示されている。
【0079】
曲線466は、真皮調整装置200(
図2A)および真皮調整装置300(
図2B)のいずれかにより脱水段階を適用した後に、角質層252に関して上に説明されたように相対湿度32%を有する脆性材料に対する伸長特性を示す。したがって付与する力を40gまで増加することにより、この材料をおよそ20%だけ伸長し、この材料は薄くなり、追加の力を付与したときにこの材料は割れるまたは裂ける傾向がある。曲線468は低エネルギーで急速加熱を受ける材料の伸長特性を示し、真皮調整装置200(
図2A)および真皮調整装置300(
図3A)のいずれかにより脱水段階を適用した後に、顆粒層254(
図4A)に関して上に説明されたように相対湿度76%に達する。付与した力が0gから23gに緩やかに増加することにより、この材料は線状関係に伸長する。付与した力が23gを超えて増加すると、材料はかなり伸長し続け(例えば伸び)、裂けない。曲線470は、より深い皮膚層256および258などの相対湿度98%を有する材料に対する伸長特性を示す。したがってこのような材料は付与した力に応答して非常に伸張し、裂けない。
【0080】
次に
図4Fを参照する。
図4Fは、開示された技法のさらなる実施形態に従って構築されて作動する、一般的に真皮調整装置200(
図2A)および具体的には真皮調整装置300(
図3A)のいずれかによる加熱段階の適用に応答した複数の深さにおける皮膚の温度を示す、概して471で示されたグラフである。付与した熱は、単位℃で測定した「温度」と標した垂直軸472上に示され、皮膚の深さは、単位μmで測定した「皮膚の深さ」と標した水平軸474上に示されている。曲線476Aは0ミクロン(μm)の深さに対応する表面における皮膚250の温度を示し、曲線476Bは5μmの深さにおける皮膚250の温度を示し、曲線476Cは10μmの深さにおける皮膚250の温度を示す。曲線472A、472B、および472Cは角質層252に関連する。したがって角質層252の温度は、加熱段階に応答して劇的に増加し、400℃~340℃の範囲で高温に維持される。曲線476Dは30μmの深さにおける皮膚250の温度を示す。この深さでは、皮膚の温度ははるかに緩やかに上昇し、250℃を超えない。曲線476Eは100μmの深さにおける皮膚250の温度を示す。この深さでは、皮膚の温度はほとんど上昇せず、50℃に達する。
【0081】
次に
図4Gを参照する。
図4Gは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、パルス8msに対する真皮調整装置300(
図3A)の突起部338(
図3A)による加熱段階中の様々な深さにおける皮膚250の、概して478で示された温度勾配を示す。皮膚250への影響は真皮調整装置300(
図3A)について示されているが、これは限定することを意味せず、同様の影響が真皮調整装置200による加熱段階の適用により皮膚250に及ぼされることを理解されたい。破線482は、角質層252とより深い皮膚層254、256、および258との間の境界を示す。皮膚の深さの表示は、例示を意図するに過ぎず、一定の縮尺ではない。破線482の上の領域の熱勾配は、
図4Fの曲線476A、476B、および476Cに対応する。破線482の下の領域の熱勾配は、
図4Fの曲線476Dおよび476Eに対応する。したがって加熱段階は皮膚250に二重効果を有する。角質層252は曲線476A、476B、および476C(
図4F)によって示されたように比較的高温に加熱され、その弾性に影響を与える。角質層252が加熱段階の前に相対湿度100%であるとき、付与された応力に応答するその伸長は200%である。しかし角質層252が加熱段階の後に相対湿度0%に迫るとき、付与された応力に応答してその伸長が
図4Eに示されたように10%未満に低減する。それに反してより深い皮膚層254、256、および258は、曲線476Dおよび476E(
図4F)によって示されたようにより低い温度に加熱される。
【0082】
次に概して480で示された
図4Hを参照する。
図4Hは、先行技術の方法に従って剥離治療を受けた後の皮膚10(
図1A)の面積を示す。剥離治療に続いて、角質層12Aの一部は表示482「SCの除去」によって示されたように除去される。その上、剥離は角質層12Aの上の皮膚10の外部の面積と、生細胞が存在するより深い皮膚層12B、12C、および12D(
図1A)に対応するより深い皮膚層12Fとの間に凝固帯域12Eが形成されている。凝固帯域12Eは、角質層12Aの上で皮膚10の外部の面積からより深い皮膚層12Fを封止する。その結果、皮膚10の外部に付与された溶液は12Gと示された貯蔵部内に集まり、より深い皮膚層12Fによって吸収されない。
【0083】
次に概して490で示された
図4Iを参照する。
図4Iは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、
図2Aの真皮調整装置200による非剥離治療を受けた後の皮膚250(
図4A)の面積を示す。
図4Hの皮膚10の面積と対照的に、真皮調整装置200(
図2A)による非侵襲性治療に続いて、角質層252はわずかに穿孔され、自由通路帯域262および264(
図4A)に対応する自由通路帯域492および494を残す。穿孔された角質層252は、より深い皮膚層254、256、および258(
図4A)に対応するより深い皮膚層496に障壁を生じない。その上、低レベルに制御した真皮調整装置200による熱エネルギーの付与に由来する、比較的少量の凝固組織498は、角質層252の上で皮膚250の外部表面からより深い皮膚層496に材料を通過させるために非常に限られた妨げしかもたらさない。最後に角質層252およびより深い皮膚層496の脱水により、角質層252の外部表面に導かれた溶液とより深い皮膚層496との間に水濃度勾配が形成される。この濃度勾配は、真皮調整装置200による治療を受けていない皮膚250の他の面積に存在することがある濃度勾配より大きい。皮膚250へのこれらの効果、すなわち穿孔、限定された凝固、および脱水の組合せは、角質層252の外部表面から脱水されたより深い皮膚層496の中に溶液のための自由通路を提供し、急速な吸収をもたらす。角質層252内の穿孔および少量の凝固組織498により自由通路が提供され、さらに疎水性および脂溶性溶液をより深い皮膚層496の中に急速に吸収させることに気付くであろう。
【0084】
次に
図5A~5Cを参照する。
図5A~5Cは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、概して500で示された、光エミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。真皮調整装置500は光エミッタを使用して熱を生成し、皮膚(図示せず)の表面の上で回転するように作動する回転可能なシリンダの使用により応力を発生し、皮膚上に歪みを生成する。以下の説明では、真皮調整装置500は真皮調整装置200(
図2A~2E)の少なくともハードウェア構成要素を含むことが理解され、皮膚250に対して上記の手順および機能のいずれかを実行するように作動可能である。真皮調整装置500は制御装置(図示せず)および電源(図示せず)、アクチュエータ530およびローラ532、ならびに熱発生器526および熱エミッタ528を含む。制御装置および電源は、制御装置208および電源210(どちらも
図2Bより)に対応する。熱発生器526および熱エミッタ528は、熱発生器226および熱エミッタ228(どちらも
図2Bより)に対応する。アクチュエータ530およびローラ532は、アクチュエータ230および応力搬送機232(どちらも
図2Bより)に対応する。制御装置、電源およびヒータ526は真皮調整装置500の本体内に一体化されてもよい。
【0085】
ローラ532は真皮調整装置500の遠位端を形成し、皮膚250に直接接触して触れるように作動する回転可能なシリンダである。アクチュエータ530は電源および制御装置に電気的に結合される。アクチュエータ530はシャフト534を介してローラ532に機械的に結合される。シャフト534は真皮調整装置500の長手方向y軸に直角に配向され、ローラ532の真皮調整装置のx軸に平行な回転の中心軸を通って位置付けられ、それによってローラ532がシャフト534を中心に回転することができる。真皮調整装置の軸ガイド540が
図5A~5Cに示されている。アクチュエータ530はローラ532がシャフト534を中心に回転するように作動する回転可能なモータとして具現化することができる。
【0086】
熱エミッタ528は、ローラ532によって形成された真皮調整装置500の遠位端に熱発生器526を結合する複数のチャネルから形成される。熱発生器526は、ローラ532の内側などの真皮調整装置500内のあらゆる適切な場所に位置付けられてもよい。熱エミッタ528のチャネルは、ローラ532の表面を覆う平行なリング542を形成する複数の列に配置されてもよい。ローラ532は熱エミッタ528を形成するチャネルの1個、2個、3個、…n個の平行なリング542を配置されてもよい。リング間の距離は、数十マイクロメートル~数ミリメートルの範囲、例えば0.05mm、0.2mmまたは1mmであってもよい。あらゆる2つのチャネル間の距離は、0.1mm~0.5mm、0.5mm~1mm、1mm~1.5mm、1.5mm~2mm、2mm~2.5mm、または2.4mm~3mmの範囲であってもよい。これらの距離はすべて例として挙げたに過ぎない。
【0087】
図5A~5Bを参照すると、真皮調整装置500は、
図3Cについて上に説明されたように、生細胞から水を蒸発させるために適切な光を放射するように作動する光エミッタとして構成された熱発生器526を備えて示されている。熱発生器526はIPL光源、IR光源または固体レーザダイオードであってもよく、およそ2.94μmの波長を有するレーザを放射してもよい。熱エミッタ528は、熱発生器526によって放射された光信号を真皮調整装置500の遠位端においてローラ532の外部表面に搬送するように構成された、複数の光チャネルから形成される。熱エミッタ528によって放射された光信号は、皮膚250から水を蒸発させる。熱発生器526がIPL光源またはIR光源であるとき、1つまたは複数の反射体(図示せず)は、放射された光を熱エミッタ528の各チャネルの直径のおよそ2倍の範囲においてより狭いビームに集中するために、熱発生器526と熱エミッタ528との間に装着されてもよい。熱発生器526が固体レーザであるとき、熱発生器526は複数の小さい直径のレーザ(図示せず)を含み、それぞれは熱エミッタ528の光チャネルの1つの中に装着される。
【0088】
図5Aを参照すると、熱エミッタ528は、ローラ532を覆う複数の突起部538内に埋め込まれた複数の光チャネルとして構築されている。真皮調整装置500の熱発生器526および熱エミッタ528は、真皮調整装置300(
図3C)の熱発生器326(
図3C)および熱エミッタ328(
図3C)と実質的に同様であり、顕著な違いは、熱発生器526および熱エミッタ528がローラ532の表面に配置されていることである。突起部538は、突起部338(
図3B)のアレイについて上に説明したように、あらゆる適切な生体適合材料、熱伝導性材料および耐熱性材料から形成されてもよい。同様に突起部538の寸法、形状および材料、ならびにその間の距離は、真皮調整装置300の突起部338の寸法、形状および材料、ならびにその間の距離に対応してもよい。複数の突起部538は、シャフト534を中心とするローラの回転と同期して非侵襲的手法で皮膚250の表面を押し下げる。突起部338は、真皮調整装置500によって治療されたときに皮膚250を穿孔しないように十分に鈍角であり、皮膚250を0.1ミリメートル(mm)~1mm、または0.05~1.2mm、または0.2mm~0.8mm、または0.3mm~0.7mm、または0.4~0.6mmの範囲の深さに押し下げる。一実施形態では、突起部338の各アレイの直径は、0.05mmから0.1mm、0.15mmおよび1.0mmまでの範囲であってもよい。ローラ532の外周から測定された際の突起部338の高さは、0.05mmから0.1mm、0.15mmおよび1.0mmまでの範囲であってもよい。突起部338は
図5A~
図5Bではピンとして示されているが、突起部338は、
図3A~3Cについて上に説明されたピラミッド型などの皮膚に応力を付与するためのあらゆる適切な形状を有してもよい。
【0089】
図5Bを参照すると、熱エミッタ528は、突起部538の間でローラ532の表面上に直接埋め込まれた複数の光チャネルとして構成されている。したがって治療中、熱エミッタ528と角質の表面との間に、突起部538の高さに対応する参照番号544を介して示された短い距離が存在する。
図5A~5Bに示された実施形態は例示目的を意図する。したがって真皮調整装置500用のハンドルおよび筐体などの特徴は概念的例示のみとして示されている。
図5Aの真皮調整装置500の熱エミッタ528を形成する光チャネルは複数の突起部538内に埋め込まれているのに対して、
図5Bの真皮調整装置500の熱エミッタ528を形成する光チャネルは複数の突起部538の間でローラ532の表面上に配置されている。したがって
図5Aの熱エミッタ528によって直接影響を及ぼされた皮膚の面積は、複数の突起部538によって直接影響を及ぼされた皮膚の面積に対応する。その上、
図5Aの真皮調整装置500の熱エミッタ528は皮膚と直接接触することになる。対照的に、
図5Bの真皮調整装置500の熱エミッタ528によって直接影響を及ぼされた皮膚の面積は、複数の突起部538によって直接影響を及ぼされた皮膚の面積の間にある。その上、熱エミッタ528は、複数の突起部538の高さに対応する距離によって皮膚と直接接触しないことがある。
【0090】
次に
図5Cを参照する。
図5Cは、開示された技法の実施形態に従って構築されて作動する、真皮調整装置500用のさらなる実施形態を示す。真皮調整装置500用のこの実装形態では、応力付与器232(
図2B)に対応する応力付与器552は、ローラ532の幅に及ぶ複数の細長いリッジとして形成される。熱エミッタ528はローラ532上に直接埋め込まれた複数の光チャネルから形成され、ローラ532の幅に及ぶ列554に配置される。熱エミッタ528の列554は、応力付与器552のリッジと交互に配置される。ローラ532の幅は0.5cm~4cmの範囲であってもよい。熱エミッタ528を形成するチャネルの列554は細長いリッジ552の間に位置付けられる。リッジ552の高さはローラ532の表面から0.5mm~2mmの範囲であってもよい。一実施形態では、
図5Cのリッジ552の高さは、
図3Bの突起部538の直径と同様におよそ1.25mmであってもよい。同様に
図5Cのリッジ552は、突起部338(
図3B)のように適切な熱伝導性材料および生体適合材料から作成されてもよい。
【0091】
アクチュエータ530によるローラ532の回転は、熱発生器526によって放射された光への皮膚250の面積の露出時間を決定する。したがって皮膚の表皮の脱水レベルは、ローラ532の回転周波数ならびに熱発生器526によって放射された光信号の電力および波長の関数である。制御装置(図示せず)は、シャフト534を中心としたローラ532の回転速度、ならびに開示された技法に従って皮膚を脱水する一方で剥離を回避するために、熱発生器526によって放射される光のパルス期間および強度を制御する。IPLまたは固体レーザとして具現化される熱発生器526の場合、制御装置は、光が熱エミッタ528の光チャネルのみから放射される一方で皮膚250の面積の照準線内にあることを確保するために、ヒータ526によって放射された光パルスをアクチュエータ538の回転速度と同期させてもよい。制御装置508は皮膚の上でローラ532の速度を制御する。例えば速度は1mm/s~5mm/sの範囲であってもよい。
図5A~5Bに関して、ローラ532上の熱エミッタ528の光チャネルの間の間隔と、制御装置によって制御されたようなローラ532の回転周波数との組合せは、常に突起部538の任意の1つと皮膚250との接触面積の温度が突起部538の1つによって実質的に影響を及ぼされるように較正されるので、突起部538と接触させる皮膚の面積の間に正常な人の体温37℃に維持する領域が存在する。同様に
図5Cについて、ローラ532上の熱エミッタ528の光チャネルの間の間隔と制御装置によって制御されたようなローラ532の回転周波数との組合せは、常にリッジ552の任意の1つと皮膚250との接触面積の温度がリッジ552の1つによって実質的に影響を及ぼされるように較正されるので、リッジ552と接触させる皮膚の面積の間に正常な人の体温37℃に維持する領域が存在する。
【0092】
皮膚が脱水された後(タイマ、センサなどによって決定されてもよい)、制御装置はローラ532の回転を制御してあらゆる突起部538(
図5A~5B)または別法としてリッジ552(
図5C)が非侵襲性圧縮負荷もしくは応力を脱水された皮膚に付与し、皮膚上に歪みを生成することにより複数の亀裂が形成される。制御装置は、ローラ532の回転速度、およびその後突起部538(
図5A~5B)によって、または別法としてリッジ552(
図5C)によって皮膚に掛かる圧力が皮膚を刺さないように、または穿孔しないように較正して制御する。結果として真皮調整装置500による皮膚250の調整は非侵襲性である。真皮調整装置500による皮膚の脱水および皮膚上への応力の付与は、制御装置によって制御されるのと同時にまたは連続して実行されてもよいことに気付くであろう。アクチュエータ530を介してローラ532の回転を駆動し、ヒータ526の作動を制御することにより、制御装置は、皮膚の上に熱および応力を組み合わせた付与を制御し、その後皮膚上に歪みを生成し、角質の亀裂を生じる。
【0093】
次に
図5D~5Eを参照する。
図5D~5Eは、開示された技法のさらなる実施形態に従って構築されて作動する、概して550で示された、乾燥流を使用して熱を発生する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。真皮調整装置550は、真皮調整装置200(
図2A~2E)の少なくともハードウェア構成要素を含むことが理解され、皮膚250について上に説明された手順および機能のいずれかを実行するように作動可能である。真皮調整装置550は、上に説明されたように作動するローラ532およびアクチュエータ530を有する
図5A~5Cの真皮調整装置500と実質的に同様である。真皮調整装置550は、マニホールド560を介して結合された熱発生器556および熱エミッタ558を含む。マニホールド560は熱発生器556および熱エミッタ558とともに、真皮調整装置550の遠位端から皮膚250に向かって放出するために熱発生器556から本明細書で「乾燥流」と呼ばれる乾燥した空気またはガスの流れをもたらすように作動する。乾燥流は、角質およびより深い皮膚レベルを脱水し、追加として定常流体圧として応力を付与する両方の二重目的を果たし、皮膚上に歪みを生成することにより角質に亀裂を生じる。ローラ532、熱発生器556および熱エミッタ558による脱水と応力の付与の組合せにより角質が剥がれることがあり、その後親水性、脂溶性または疎水性溶液のいずれかを吸収するように、その中にある生細胞を調整するためにより深い皮膚層の脱水にさらに寄与する。
【0094】
熱エミッタ558は、マニホールド560を介して熱発生器556によって生成された乾燥流をローラ532の外部表面に導く、ローラ532の表面上の複数の穿孔から形成される。熱発生器556は、例えば空気を30℃~600℃の範囲の温度に加熱する空気乾燥機を使用することにより乾燥流を発生する。複数の管として示されたマニホールド560は、熱発生器556からローラ532に乾燥流を導き、そこで乾燥流はローラ532の表面上の穿孔(標されていない)として示された熱エミッタ558に放出される。一部の実施形態では、マニホールド560の大きさは0.5mmから0.6mm、3mmまでの範囲であってもよい。ローラ532の外部表面上の熱エミッタ558の穿孔の直径は、0.5mmから0.1mmまでの範囲であってもよい。熱エミッタ558の穿孔は、複数の平行な列または平行なリングとしてローラ532の表面上に位置合わせされる。1列内の穿孔の間の距離は0.1mm~3mmの範囲であってもよい。列間の距離は0.5mm~3mmの範囲であってもよい。
【0095】
乾燥流から皮膚上に掛けられる圧力に加えて、ローラ532は皮膚の表面に圧力を付与するように作動可能である。したがって皮膚に負荷された応力は、乾燥流とローラ532からの圧力の両方の組合せである。制御装置は、乾燥流の時宜、温度および圧力、ならびにシャフト534を中心とするローラ532の回転速度を制御し、それによって皮膚に送達された熱および応力のレベルならびに皮膚上に生成された得られる歪みを制御する。熱のレベルは、方程式6~13において上に与えられた熱の算出に説明されたように、外傷を誘発することなく亀裂を生成するために皮膚を十分に脱水させるために較正される。
【0096】
図5Eを参照すると、開示された技法の一実施形態に従って構築されて作動する、真皮調整装置550の別の実施形態が示されている。真皮調整装置550のためのこの実施形態では、ローラ532は、
図5Cについて上に説明されたように、ローラ532の幅に及ぶ1つまたは複数のリッジ562が追加として提供される。熱エミッタ558を形成するチャネルの列は細長いリッジ562の間に位置付けられる。一部の実施形態では、皮膚の上でローラ532の速度は1mm/s~5mm/sの範囲であってもよい。真皮調整装置500から放射された乾燥流の温度は10℃~50℃の範囲であってもよい。真皮調整装置550から放射された乾燥流の湿度は0%~10%の湿度の範囲であってもよい。
【0097】
次に
図6A~6Bを参照する。
図6A~6Bは、開示された技法の別の実施形態に従って構築されて作動する、概して600Aおよび600Bのそれぞれで示された、RFエミッタを使用して熱を生成する開示された技法の真皮調整装置の概略図である。
図6Aは単極電極を使用する実施形態を示し、
図6Bは1組の双極電極を使用する実施形態を示す。以下の説明では、真皮調整装置600は
図2A~2Eの装置200の少なくともハードウェア構成要素を含むことが理解され、皮膚250に対して上記の手順および機能のいずれかを実行するように作動可能である。具体的には真皮調整装置600Aおよび66Bは、それぞれが筐体620、制御装置608、電源610、リニアモータ630、RF発生器626および単一電極628A(
図6A)または1対の電極628B(
図6B)のいずれか、ならびに通信バス616を含む。制御装置608は制御装置208(
図2B)に対応し、電源610は電源210(
図2A)に対応し、リニアモータ630はアクチュエータ230(
図2B)に対応し、RF発生器626は熱発生器(
図2B)に対応し、
図6Aの単一電極628は熱エミッタ228(
図2B)に対応し、対の電極628B(
図6B)は熱エミッタ228(
図2B)に対応する。制御装置608、電源610、モータ630およびRF発生器626は、真皮調整装置600Aおよび600Bのそれぞれの筐体620内に一体化される。
図6Aの電極628Aは単極電極であるのに対して、
図6Bの電極628Bは1組の双極電極である。制御装置608、電源610、モータ630およびRF発生器626は、通信バス616を介して電気的に結合される。
【0098】
図6Aを参照すると、電極628Aは真皮調整装置600Aのモータ630およびRF発生器626に電気的に結合されている。電極628Aは真皮調整装置600Aの遠位端に配置される。モータ630は、電極628Aを皮膚250に軽く押すように作動するリニアモータであり、それによって応力を脱水した皮膚250に付与して歪みを生成することにより、皮膚250の表面に亀裂を形成させる。RF発生器626は、角質層252およびより深い皮膚層254、256および258内のイオンを撹拌する高周波数交流を生成することにより、破線領域632Aによって示されたように摩擦熱を介してその中に保存された水を加熱させる。水は組織の温度が70℃から組織から蒸発し始め、組織の温度が104℃に達したときに組織の含水率のおよそ半部が消失することが示された実験結果によれば、制御装置608は皮膚250を100℃の温度まで加熱するためにRF発生器626を介して角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258の加熱を制御する。制御装置608はRF発生器604Aによって放射されたRF信号のパルス期間を30~50秒に制御する。この速度では、皮膚250の温度の予想される上昇は実質的に低い。皮膚250に送達された最大電力は周波数範囲460KHzでおよそ25W/m
2・°Kである。単極が使用されるとき、熱は狭く深い領域に侵入し、すなわち有棘層256に達する。正確に制御された加熱と応力の付与の組合せは、皮膚250の前に存在した免疫および無傷の状態を実質的に損なうまたは変えることなく、角質層252内に亀裂を形成させる。
【0099】
図6Bを参照すると、電極628Bは真皮調整装置600Bのモータ630およびRF発生器626に電気的に結合されている。電極628Bは真皮調整装置600Bの遠位端に配置される。モータ630は、電極628Bを皮膚250に軽く押すように作動するリニアモータであり、それによって応力を脱水した皮膚250に付与して歪みを生成することにより、皮膚250の表面に亀裂を形成させる。正確に制御された加熱と応力の付与の組合せは、皮膚250の前に存在した免疫および無傷の状態を実質的に損なうまたは変えることなく、角質層252内に亀裂を形成させる。RF発生器626は角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258内のイオンを撹拌する高周波数交流を生成することにより、破線領域632Bによって示されたように摩擦熱を介してその中に保存された水を加熱させる。制御装置608は、皮膚250を温度100℃まで加熱するために、RF発生器626を介して角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258の加熱を制御する。制御装置608はRF発生器604Aによって放射されたRF信号のパルス期間を30~50秒に制御する。この速度では、皮膚250の温度の予想される上昇は実質的に低い。皮膚250に送達された最大電力は周波数範囲460KHzでおよそ25W/m
2・°Kである。2極が使用されるとき、熱は
図6Bに示されたように広く浅い領域に侵入し、すなわち熱は顆粒層254を越えて侵入しない。正確に制御された加熱と応力の付与の組合せは、皮膚250の前に存在した免疫および無傷の状態を実質的に損なうまたは変えることなく、角質層252内に亀裂を形成させる。
【0100】
次に
図7を参照する。
図7は、開示された技法のさらなる実施形態に従って作動する、真皮調整装置を作動するための方法の概略図である。手順700では、少なくとも1つの信号が発生される。
図2Aを参照すると、制御装置208はヒータ204による、およびストレッサ206による少なくとも1つの信号の発生を制御する。制御装置208は少なくとも1つの信号の時宜、強度、温度、周波数、期間および位相のいずれかを制御する。一実施形態では、ヒータ204およびストレッサ206は別個の構成要素である。
図3Aを参照すると、制御装置308はヒータ304による熱の発生を制御し、制御装置はストレッサ306による応力の発生を制御する。ヒータ304は真皮調整装置300の遠位端を摂氏400度に維持してもよい。ストレッサ306は8ミリ秒(ms)~14ms、または5ms~15ms、または5ms~20ms、または8ms~20msの範囲の期間のパルスを発生してもよい。別の実施形態では、ヒータ204およびストレッサ206は単一構成要素として実装される。
図5D~5Eを参照すると、制御装置508は熱発生器556による乾燥流の発生を制御する。
【0101】
手順702では、少なくとも1つの信号を発生することにより、脱水信号を発生する。脱水信号を発生することは、乾燥流を発生すること、RF信号を発生すること、光信号を発生すること、および加熱信号を発生することの1つまたは複数を実行することを含む。脱水信号は皮膚の面積を脱水するために付与される。
図5D~5Eを参照すると、熱発生器556は、角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258を脱水する乾燥流を発生する。
図6A~6Bを参照すると、RF発生器626は、角質層252ならびにより深い皮膚層254、256および258内のイオンを撹拌する高周波数交流を発生することにより、摩擦熱を介してその中に保存された水を加熱させる。
図5A~5Cを参照すると、熱発生器526は、水の最大吸収ピークに対応するおよそ2.94μmの波長を有するレーザを放射する。熱エミッタ528は熱発生器526によって放射された光信号を皮膚250の上に放射することにより、皮膚250から水を蒸発させる。
図3A~3Cを参照すると、熱発生器326は、真皮調整装置300の遠位端に伝達される加熱を発生する。例えば熱発生器326は、真皮調整装置300の遠位端上で熱伝導表面328に熱的に結合されたセラミックヒータであってもよい。加熱により水は皮膚250から蒸発する。
【0102】
手順704では、少なくとも1つの信号を発生することにより応力信号を発生し、ここでは応力信号を発生することは、乾燥流を発生すること、無線周波数信号を発生すること、一連の機械的パルスを発生すること、および機械的回転を発生することのいずれかを実行することを含む。応力は角質層の外部表面を押し下げるために非侵襲的に付与される。一部の実施形態では、角質層の外部表面は、0.1ミリメートル~1ミリメートル、または0.05~1.2mm、または0.2mm~0.8mm、または0.3mm~0.7mm、または0.4~0.6mmの範囲の深さに押し下げられる。
図5D~5Eを参照すると、熱発生器556は、角質層252上に応力を掛ける乾燥流を発生する。
図6A~6Bを参照すると、RF発生器626は、角質層252上に応力を掛ける高周波数交流を発生する。
図3A~3Cを参照すると、アクチュエータ330は、制御装置308によって制御されたように治療毎に所定のパルス期間および所定数のパルスに従って高調波パルス運動においてアクチュエータ先端部332を前進させ、後退させる。複数の突起部338はパルス運動と同期して非侵襲的手法で皮膚250の表面を押し下げる。押し下げる深さは、0.1ミリメートル(mm)~1mm、または0.05~1.2mm、または0.2mm~0.8mm、または0.3mm~0.7mm、または0.4mm~0.6mmの範囲である。
図5D~5Eを参照すると、アクチュエータ530はシャフト534を介してローラ532に機械的に結合される。アクチュエータ530は、シャフト534を中心にローラ532を回転させる回転可能なモータである。複数の突起部538は、シャフト534を中心としたローラの回転と同期して非侵襲的手法で皮膚250の表面を押し下げる。
【0103】
手順706では、少なくとも1つの信号は皮膚の面積を脱水させるため、および皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を加えるために付与される。応力は、皮膚の面積の角質層上に歪みを生成するために較正される。歪みにより、皮膚の面積が脱水されたときに皮膚の面積の角質層に少なくとも1つの亀裂の形成をもたらす一方で、皮膚の面積の亀裂前の免疫状態を維持する。
図2Aを参照すると、制御装置は上で方程式6~13によって定義されたように、1つまたは複数の熱パラメータに従って熱を発生するためにヒータ204を制御する。ヒータ204は熱を発生し、皮膚250の角質層252の外部表面に熱を加え、それによってその中に保存された水を蒸発させる。一実施形態では、皮膚250の面積の角質層252は10%未満の含水率に脱水される。別の実施形態では、皮膚250の面積の顆粒層254は70%未満の含水率に脱水される。制御装置208は、追加として1つまたは複数の応力制御パラメータに従って応力を発生するように非侵襲性ストレッサ206を制御する。ストレッサ206は応力を生成し、応力を角質層252の外部に付与する。外部に付与した応力は非侵襲性であり、脱水された角質層252上に歪みを生じ、これにより脱水された角質層252が割れ、角質層252内に複数の亀裂260が形成される一方で、皮膚250の面積の亀裂前の免疫状態が保護される。
【0104】
手順708では、皮膚の面積の角質層の外部表面に応力を付与した少なくとも1つの信号は、皮膚の面積を脱水するために付与した少なくとも1つの信号と同期される。
図3Bを参照すると、制御装置308はアクチュエータ先端部332の高調波パルス運動を熱発生器326による光の放射と同期させる。
【0105】
手順710では、皮膚の脱水して亀裂した角質層に溶液が塗布される。
図4Aを参照すると、皮膚250の亀裂した角質層252に溶液(図示せず)が塗布され、そこで溶液はより深い皮膚層254、256および258によって吸収される。
【0106】
開示された技法の一部の実施形態では、少なくとも1つの信号を発生することは、少なくとも1つの信号の時宜、強度、温度、周波数、期間および位相のいずれかを制御することをさらに含む。
図2Aを参照すると、制御装置208はヒータ204およびストレッサ206のいずれかによって発生した信号の時宜、強度、温度、周波数、期間および位相のいずれかを制御する。
【0107】
本明細書で上に開示された様々な実施形態は例示として意図されることが当業者には認識されよう。開示された技法は上記の要素の特定の組合せおよび配列に限定されない。具体的には、当技術分野で公知であるようなヒータ、熱発生器、熱エミッタ、ストレッサ、アクチュエータおよび応力付与器のための追加の実施形態が、開示された技法を達成するためにあらゆる適切な手法で組み合わされてもよい。
【0108】
開示された技法は、本明細書で上に具体的に示されて説明されたものに限定されないことが当業者には認識されよう。むしろ開示された技法の範囲は以下の特許請求の範囲のみによって画定される。