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特許7154516プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法
<図1>
  • 特許-プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法 図1
  • 特許-プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法 図2
  • 特許-プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20221011BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 11/14 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 11/22 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 49/707 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 45/61 20060101ALI20221011BHJP
   C07F 15/04 20060101ALN20221011BHJP
   C07F 15/06 20060101ALN20221011BHJP
【FI】
B01D53/04
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
C07C9/08
C07C11/06
C07C11/14
C07C11/22
C07C7/12
C07C49/707
C07C45/61
C07F15/04
C07F15/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021524190
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2019113067
(87)【国際公開番号】W WO2020093877
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】201811332100.9
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】鮑 宗必
(72)【発明者】
【氏名】李 良英
(72)【発明者】
【氏名】任 其龍
(72)【発明者】
【氏名】張 治国
(72)【発明者】
【氏名】楊 亦文
(72)【発明者】
【氏名】楊 啓▲エイ▼
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012251(JP,A)
【文献】特開2012-031161(JP,A)
【文献】国際公開第2010/021345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体の製造工程、及び
前記金属有機構造体を吸着剤として、プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンを含む混合ガスからプロピレン、プロピン、プロパンまたはプロパジエンを吸着分離および精製して得る工程、
を含む、混合ガスからプロピレン、プロピン、プロパンまたはプロパジエンを分離する方法であって、
前記金属有機構造体の一般式が、[M(C)(HO)]1.5HOであり、式中、Mは、バルト、又はニッケルであり、
前記金属有機構造体の製造工程は、
(1)塩化コバルト(II)又は塩化ニッケル(II)のいずれかの無機塩、スクアリン酸、水酸化カリウムおよび脱イオン水を所定割合で混合し、攪拌して溶解した後、水熱反応釜に投入して、反応温度、220℃にて、48時間反応させるステップと、
(2)前記反応の終了後、脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥して金属有機構造体を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする混合ガスからプロピレン、プロピン、プロパンまたはプロパジエンを分離する方法。
【請求項2】
前記吸着分離の温度は、-5~50℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合ガスの総圧は、100~1000kPaである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属有機構造体の形状は、立方体、棒状、粒子状または柱状である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記無機塩、スクアリン酸および水酸化カリウムのモル比は、1:(0.5~3):(0~5)である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材料およびエネルギーの技術に関し、特に、プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン(C)は、最も基本的な化学工業原料としてすでに各種の化学品の生産に広く応用されている。例えば、2013年のポリプロピレンの生産総量は、8500万トンに達し、ポリエチレンの生産量にわずかに劣るにすぎない。現在、プロピレンは、石油や多炭素の炭化水素化合物の分解蒸留によって得るのが一般的である。しかしながら、分解蒸留産物の組成が複雑であることが多く、通常、微量(1000~2000ppm)のプロピン(C)やプロパジエンなどが含まれている。重合級のプロピレンを獲得して生産に用いるためには、プロピン、プロパジエンの含有量を5ppm乃至1ppmに低下させなければならない。しかしながら、プロピレン及びプロピンは、類似の構造、近似した分子動力学サイズを有し、含有量は、極微量であるため、プロピレン/プロピン/プロパジエンの分離において、極めて困難な課題になっている。
【0003】
工業上よく使われる部分水素化法では、プロピンに対して選択的に水素化を行うことにより、プロピレン中に残留するプロピンを除去する(例えば、Teschner D、Borsodi J、Wootsch A、et al・Science、2008、320(5872):86-89.)。しかしながら、通常、該方法はPdなどの貴金属を有効触媒成分とするため、高価で一部のプロピレンも水素化により低付加価値のプロパンに変換され、プロピレンの収量が低下する。プロピレンとプロパンとの相対揮発度の差は0.1にすぎず、且つ精留に必要な温度と圧力条件も極めて厳格で、244~327Kと1.7~30barの条件下で実現する必要がある。そのため、プロピレン/プロパンを精留法で分離して重合級のプロピレンを得ることは非常に困難である。また、現在の工業的な重合級のプロピレンは、200枚以上のたな板を備える精留装置の上で実施する必要があり、精留過程における巨大なエネルギー消費と中小規模設備に適用できないという理由から、当該方法の普及と利用は制限されている。このため、現在、より経済的で、省エネ可能なプロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンを精製分離するための手段を早急に開発しなければならない。上記方法に対して、吸着分離法は、操作が簡便で、エネルギー消費が小さく、コストが低いなどの特徴を持つが、プロピレン、プロピン、プロパンとプロパジエンの吸着分離で、最も重要なのは吸着量が多く、高吸着選択性を有する吸着剤を選択することである。一般に使われる吸着剤としては、活性炭、粘土、分子篩、シリカゲルなどが挙げられるが、このような材料は内部孔構造の不均一により吸着の容量や選択性が工業用レベルに達していない。
【0004】
金属有機構造体(Metal Organic Framework)は、極めて大きい比表面積と細孔容積を有し、且つ金属イオンや配位子の種類、及びその合成条件を変化させることにより、異なる多孔質チャネル形状と孔径の大きさを有する多孔質構造を得ることができ、ガス分離の分野で極めて広く応用できる可能性を有する。現段階では、金属有機構造体を用いたプロピレン/プロピンの分離についての研究は少ない。例えば、Xingら(Yang L, Cui X, Yang Q, et al. Adv. Mater., 2018, 30(10): 1705374.)に研究開発された陰イオンカラムの材料SIFSIX-1-Cu,SIFSIX-2-Cu-i,SIFSIX-3-Ni,SIFSIX-3-Zn,NbOFFIVE-1-Niは、プロピン/プロピレンに対して効率的な吸着分離性能を有している。吸着平衡に基づくプロピレン/プロパンの分離は、最も有効な分離手段であり、不飽和炭化水素類と開放金属部位との間に、MOF-74、MIL-100やCu-BTCなどのπ-錯体を形成する(Bloch E D, Queen W L, Krishna R, et al. Science, 2012, 335(6076): 1606-1610. Yoon J W, Seo Y K, Hwang Y K, et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2010, 49(34): 5949-5952. He Y, Krishna R, Chen B. Energy Environ. Sci., 2012, 5(10): 9107-9120.)。同時に、ガス分子サイズの大きさに基づく分子の拡散動力学の違いによって分離する。例えば、Liチームが公開したZIF-8では、ガス分子の材料の多孔質チャネル内での拡散差異により、プロピレン/プロピンの効率的な分離を実現する(Li K, Olson D H, Seidel J, et al. J. Am. Chem. Soc., 2009, 131(30): 10368-10369.)。
【0005】
しかしながら、多くの金属有機構造体は、水熱安定性が低く、製造コストが高く、配位子の価格が高い。さらに、合成の全過程においてN,N-ジメチルホルムアミドやN,N-ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中で反応させる必要があり、その後の精製過程で大量の有機廃液が発生するという欠点がある。良好な安定性、高いガス吸着量及び高レベルの吸着分離選択性を持つ金属有機構造体を低コストで製造することは非常に重要な技術課題になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する問題を克服するために、本発明者らは、混合ガスからプロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンを分離するための金属有機構造体の新規な使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般式が[M(C)(HO)]1.5HOであり、式中、Mが金属(イオン)である金属有機構造体をプロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの分離において使用する。
【0008】
また、本発明者らは、金属有機構造体を吸着剤として、プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンのうちの少なくとも2種を含む混合ガスから単一のガスを吸着分離精製して得る工程であって、金属有機構造体の一般式は、[M(C)(HO)]1.5HOで、式中、Mは金属であり、金属有機構造体の多孔質チャネルの断面は正方形または菱形であり、多孔質チャネルのサイズが3.2~4.5オングストロームである、工程を含む混合ガスからプロピレン、プロピン、プロパンまたはプロパジエンを分離する方法を提供する。
【0009】
金属有機構造体は、遷移金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとスクアリン酸との配位結合または分子間力により形成された三次元網目構造である。
【0010】
本発明の吸着分離過程は簡単であり、一定圧力で混合ガスを、該吸着剤が充填された吸着塔又は吸着カラムを用いて吸着させることができる。また、吸着塔は1つ又は複数からなり、従来の圧力変動吸着、真空圧力変動吸着または温度変動吸着により分離してもよい。
【0011】
前記吸着分離過程の温度は、-5~50℃であり、混合ガスの総圧は、100~1000kPaであることが好ましく、吸着分離過程の温度は、20~50℃であり、混合ガスの総圧は、100~400kPaであることがさらに好ましく、吸着分離過程の温度は、25℃であり、混合ガスの総圧は、100kPaであることが特に好ましい。
【0012】
上記金属は、カルシウム、モリブデン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウムまたはマンガンであることが好ましい。上記金属は、カルシウム、コバルトまたはニッケルであることがさらに好ましい。
【0013】
金属有機構造体の形状は、立方体、棒状、粒子状または柱状であることが好ましい。
【0014】
本発明の吸着分離の原理について
本発明の金属有機構造体の多孔質チャネルは、断面が正方形または菱形であり、多孔質チャネルのサイズは、3.2~4.5オングストロームである。このサイズは、上記分離対象ガスに近い分子サイズであり、良好な分離効果を実現できる。また、塩基を反応試薬として追加する場合、該材料構造に含まれている水酸化物基も配位に関与し、分極未完全配位の酸素原子を誘導する役割を果たすことにより、分子分極率の大きいガスは多孔質チャネルに早く入り込み、且つ材料の細孔表面の機能基と強い相互作用を生じる。一方、分子分極率の小さいガスは材料の細孔表面の機能基との相互作用が比較的弱くなる。熱力学と動力学の両方の要因により、2つのガスの材料表面への吸着量に有意差が生じ、混合ガスが吸着塔を通過する際に、ガスと材料との作用が弱く吸着容量が小さいものは、最初に塔出口から噴出する。一方、ガスと材料の作用が強くて吸着容量が大きいものは、塔出口からの流出に要する時間が長くなることを利用して、上記分離対象ガスの効率的な吸着分離を実現した。
【0015】
好ましくは、上記金属有機構造体は、
(1) 無機塩、スクアリン酸、塩基および脱イオン水を所定の割合で混合し、攪拌溶解後、常圧または高圧の反応釜に投入して反応させる工程であって、上記無機塩は、金属の塩化塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩または過塩素酸塩である、工程と、
(2) 水熱反応終了後、脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥して金属有機構造体を得る工程と、を含む方法で製造される。
該金属有機構造体の製造過程において、スクアリン酸を有機配位子として、一連の金属無機塩とを精製水中で反応させることにより、有毒且つ揮発しやすい有機溶媒を使用する必要がなく、調製用材料の原料価格が低く、合成条件が温和で、操作が簡単で、後処理が容易で、材料合成コストが低くなる。本発明の方法では、金属有機構造体は、メタンと窒素に対して高い吸着分離選択性を有し、かつ材料構造及び吸着性能の安定性が高く、耐水性が良く、極めて広い応用展望を有する。
【0016】
本発明で用いた吸着剤は、吸着飽和後、真空または不活性ヘリウム雰囲気下で25~150℃に制御し、10~48時間保持するだけで再生可能となる。温度が高すぎるか、時間が長すぎると吸着剤の構造が破壊され、温度が低すぎたり、時間が短すぎたりすると、吸着剤内に残留する吸着質を完全に除去できなくなる可能性がある。
【0017】
本発明において、上記好ましい方法により調製された吸着剤は、構造及び性能が安定で、粒子形状が規則的で、孔径サイズが適切で、プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの吸着分離に対して高い選択性と吸着容量を有する。
【0018】
上記無機塩、スクアリン酸および塩基のモル比は、1:(0.5~3):(0~5)であることが好ましい。水は溶媒として後の乾燥過程で蒸発させる。無機塩をコバルト塩、ニッケル塩またはモリブデン塩とする場合、上記無機塩、スクアリン酸および塩基のモル比は、1:(1~1.5):(2~4)であり、無機塩をカルシウム塩とする場合、塩基の添加量は0で、無機塩とスクアリン酸とのモル比は、1:1であることがさらに好ましい。
【0019】
無機塩、スクアリン酸および塩基の配合比を変更することにより、結晶の大きさ、結晶型、規則度などを変化させることができるとともに、この材料のメタンと窒素に対する吸着量及び選択吸着分離性能にも影響を与えることができる。無機塩をカルシウム塩とする場合、塩基の添加量は0で、無機塩とスクアリン酸とのモル比は、1:1であることが特に好ましい。
【0020】
上記無機塩が、塩化コバルトである場合、金属塩、スクアリン酸および塩基の配合比は、1mmol:1.5mmol:4mmolであることが特に好ましい。
【0021】
上記攪拌工程は、500~1000回転/分で、適切な時間攪拌して溶液を均一に混合する工程である。不均一な混合では、反応により得られる結晶の結晶型が不規則になる可能性がある。
【0022】
上記水熱反応の反応温度は、100~220℃であり、反応時間は、12~112時間であることが好ましく、120~220℃で24~100時間反応させることがさらに好ましい。反応温度は、結晶の生成に影響を与え、高すぎたり、低すぎたりすると、結晶の生成を実現できなくなる可能性もある。
【0023】
水熱反応後の製品は、水洗浄により数回遠心し、多孔質チャネルに残留した配位子、アルカリ溶液、無機塩を置換する。
【0024】
真空乾燥の温度は、25~150℃であり、時間は、10~24時間であることが好ましい。
【0025】
上記混合ガスは、プロピレン、プロピン、プロパン、プロパジエンに限られず、二酸化炭素、メタン、ヘリウム、アルゴン、酸素などの他のガスであってもよい。本発明の原料ガスの組成範囲は広く、様々な濃度に適用することができ、且つ各ガスの含有量は5%から85%の範囲とすることができる。
【0026】
本発明で用いた金属有機構造体は、異なる加工プロセスにより球状、柱状、粒子状などの吸着分離材料として製造するか、または従来技術を用いて膜材料に製造して、プロピレン、プロピン、プロパンおよびプロパジエンの膜分離に利用してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、従来技術に比べて、以下の利点を有する。
本発明に係る金属有機構造体の製造用無機(金属)塩は、自然界における含有量が豊富である。特に鉱物の中に大量に存在する炭酸カルシウムを金属資源とすれば、有機配位子であるスクアリン酸は安価で、入手が容易であり、合成条件が温和で、精製工程が簡単で、操作及び大容量化が容易である。また、本発明に係る金属有機構造体は、構造および性能が安定で、プロピレン/プロピン/プロパン/プロパジエンに対して非常に高い吸着選択性を有し、かつ複数回の吸着-再生を繰り返した後も、当初の吸着性能を効果的に維持することができる。該混合ガスの吸着分離において、本発明により製造した吸着剤は、その他のほとんどの固体吸着剤よりもはるかに優れた性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1により製造した金属有機構造体の安定性の評価結果を示すXRDパターンである。
図2】実施例2により製造した金属有機構造体の安定性の評価結果を示すXRDパターンである。
図3】実施例3により製造された金属有機構造体の安定性の評価結果を示すXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されることはない。
【0030】
実施例1:
炭酸カルシウム0.151mmol、スクアリン酸0.151mmol、脱イオン水20mLを混合し、25mLの水熱反応釜に入れ、30分間撹拌した後、120℃で24時間反応させた。反応終了後、反応釜を冷却し、精製水で複数回洗浄し、精製した金属有機構造体を得た。精製した金属有機構造体を100℃で真空下において12時間脱ガスして溶媒を除去した吸着剤を得た。その後、ガス吸着の評価を行った。
【0031】
上記吸着剤を用いてプロピレン、プロピン、プロパンとプロパジエンの単成分の吸着等温線を作成した。適量の吸着剤を採取し、吸着温度を0℃および25℃とした。0℃で1barとした場合、プロピレンの吸着量は2.9mmol/gであり、プロピンの吸着量は3.3mmol/gであり、プロパンの吸着量は2.7mmol/gであり、プロパジエンの吸着量は3.5mmol/gであった。該体系は0℃で0.01barとした場合、プロピレンの吸着量は1.3mmol/gであり、プロピンの吸着量は2.8mmol/gであり、プロパンの吸着量は0.3mmol/gであり、プロパジエンの吸着量は3.0mmol/gであった。低圧下では、該材料の各種ガスに対する吸着容量に有意差があり、該材料がこの4種類のガスに対して良好な吸着分離効果があることを示した。25℃で1barの場合、プロピレンの吸着量は2.6mmol/gであり、プロピンの吸着量は3.1mmol/gであり、プロパンの吸着量は2.3mmol/gであり、プロパジエンの吸着量は3.3mmol/gであった。該体系は25℃で0.01barである場合、プロピレンの吸着量は0.6mmol/gであり、プロピンの吸着量は2.6mmol/gであり、プロパンの吸着量は0.3mmol/gであり、プロパジエンの吸着量は2.8mmol/gであった。IAST計算により、プロピレン/プロパンの体積比が50:50である場合、0.01barでの該吸着剤の2種類のガスに対する吸着選択性は、0℃および25℃でそれぞれ10.6および8.1である。プロピレン/プロピンの体積比が50:50である場合、0.01barでの該吸着剤の2種類のガスに対する吸着選択性は、0℃および25℃でそれぞれ52.1および26.0であった。プロパン/プロピンの体積比が50:50である場合、0.01barでの該吸着剤の2種類のガスに対する吸着選択性は、0℃および25℃でそれぞれ365.8および136.3であり、プロピレン/プロパジエンの体積比が50:50である場合、0.01barでの該吸着剤の2種類のガスに対する吸着選択性は、0℃および25℃でそれぞれ25.2および16.3であった。
【0032】
サンプルの安定性を評価するために、サンプルを相対湿度60%の空気中で7日間曝露した後、及び精製水に7日間浸漬した後、各条件下で吸着剤のXRD測定を行った。XRDパターンは、図1に示すとおりである。評価結果から、7日間水に浸漬した後も7日間相対湿度60%の空気に曝露した後も、吸着剤のXRDパターンは合成直後のXRDパターンと一致し、該材料が極めて良好な安定性を有することを示した。
【0033】
実施例2:
塩化コバルト(II)六水和物1.931mmol、スクアリン酸2.88mmol、水酸化カリウム7.72mmol、脱イオン水7mLを混合し、25mLの水熱反応釜に入れ、30分間撹拌した後、220℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、反応釜を冷却し、反応で得られた固体を精製水で複数回洗浄し、精製した金属有機構造体を得た。精製した金属有機構造体を120℃で真空下において12時間脱ガスして溶媒を除去した吸着剤を得た。その後、ガス吸着の評価を行った。
【0034】
サンプルの安定性を評価するために、サンプルを相対湿度60%の空気中で7日間曝露した後、及び精製水に7日間浸漬した後、各条件下でサンプルのXRD測定を行った。XRDパターンは、図2に示すとおりである。評価結果から、7日間水に浸漬した後も7日間相対湿度60%の空気中に曝露した後も、吸着剤のXRDパターンは合成直後のXRDパターンと一致し、該材料が極めて良好な安定性を有することを示した。
【0035】
実施例3:
塩化ニッケル(II)六水和物1.931mmol、スクアリン酸2.88mmol、水酸化カリウム7.72mmol、脱イオン水7mLを混合し、25mLの水熱反応釜に入れ、30分間撹拌した後、220℃で48時間反応させた。反応終了後、反応釜を冷却し、精製水で複数回洗浄し、精製した金属有機構造体を得た。精製した金属有機構造体を120℃で真空下において12時間脱ガスして溶媒を除去した吸着剤を得た。その後、ガス吸着の評価を行った。
【0036】
サンプルの安定性を評価するために、サンプルを相対湿度60%の空気中で7日間曝露した後、及び精製水に7日間浸漬した後、各条件下で吸着剤のXRD測定を行った。XRDパターンは、図3に示すとおりである。評価結果から、7日間水に浸漬した後も7日間相対湿度60%の空気中に曝露した後も、吸着剤のXRDパターンは合成直後のXRDパターンと一致し、該材料が極めて良好な安定性を有することを示した。
【0037】
以上、本発明の具体的な実施例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許の技術的特徴の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の原理と主旨から逸脱することなく、本発明の範囲内でこれらの実施例に対してさまざまな修正及び修飾を行うことができ、本発明の範囲は特許請求の範囲とその等価物により限定されることが理解できる。
図1
図2
図3