(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61G 11/00 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61G11/00
(21)【出願番号】P 2022083365
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武司
(72)【発明者】
【氏名】西井 誠
(72)【発明者】
【氏名】末廣 陽
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡
(72)【発明者】
【氏名】日高 大介
(72)【発明者】
【氏名】赤星 博文
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110025445(CN,A)
【文献】特開2015-181775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置され、前記収容室内に収容された患児に対するエタノールによる医療行為にともない気化したエタノールを含む空気を浄化する浄化装置であって、
前記空気を取り込むための吸気部と、
前記空気を吸引する吸引部と、
前記吸引部によって吸引した空気からエタノールを除去する除去部と、
前記除去部によってエタノールが除去された空気を排気する排気部と、
少なくとも前記除去部を保持可能な筐体と、
前記筐体を、前記収容室の患児が載置されている載置面以外に固定するための固定部と、を備える、浄化装置。
【請求項2】
前記排気部が排気する空気の排気方向は、前記保育器内の空気の循環を阻害しない方向に設定されている、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記除去部は、前記筐体内に2つ保持されており、
前記2つの除去部のうち、一方の除去部は、他方の除去部よりも前記吸気部に近い側に配置されている、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記収容室の内縁に立設された壁部に着脱可能に取り付けられている、請求項1に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記除去部が破過状態であるか否かを検知する破過センサが設けられている、請求項1~4の何れか1項に記載の浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を浄化する浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保育器内の患児に対して医療行為を行う際に、患児の対象部位を消毒する目的や医療行為実施者の手指消毒の目的等でエタノールが使用される場合がある。保育器内の空気中に含まれるエタノール濃度は、このような医療行為を行う度に上昇する。空気中に含まれるエタノール濃度が高くなると、この空気を患児が呼吸や脆弱な皮膚から吸収することによって、患児の身体および生育に悪影響を与える可能性がある。それゆえ、保育器内の患児に対する医療行為においてエタノールを使用する場合には、保育器内の空気中のエタノールの濃度の上昇を抑える必要がある。
【0003】
患児が、保育器が設置されている空間(病室や病棟内等)の空気を呼吸、または皮膚から吸収可能である場合、保育器外の空気中のエタノールを除去すればよい。しかし、患児を収容する収容室内の温度および湿度が調節可能な保育器(“閉鎖型保育器”とも称する)の場合、保育器外の空間のエタノールを除去しても、収容室内の空気(すなわち、保育器内の空気)中のエタノールを除去することができない。なぜなら、閉鎖型保育器において、収容室内へ流入する収容室外の空気の量は少なく、収容室内の空気を循環させる仕組みが採用されているからである。また、保育器外の空気中のエタノールを除去し、保育器外の空気と保育器内の空気を入れ替える方法も考えられるが、当該方法では保育器内の温度、湿度の維持が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気化したエタノールを除去可能な公知の卓上空気清浄器を、閉鎖型保育器の収容室内に設置することで、収容室内の空気中のエタノールを除去することができる。しかし、閉鎖型保育器の収容室(特に、患児を収容している状況において)は狭いため、公知の卓上空気清浄器のうち小型のものを選択しても、寸法が大きすぎたり、形状が適切ではなかったりするため、医療行為の邪魔になるという問題が生じる。これは、保育器内の患児に対する医療行為を実施する上で邪魔にならないよう設計されていないからである。
【0005】
本開示は、閉鎖型保育器内での患児に対する医療行為の邪魔にならない浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る浄化装置は、患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置され、前記収容室内に収容された患児に対するエタノールによる医療行為にともない気化したエタノールを含む空気を浄化する浄化装置であって、前記空気を取り込むための吸気部と、前記空気を吸引する吸引部と、前記吸引部によって吸引された空気からエタノールを除去する除去部と、前記除去部によってエタノールが除去された空気を排気する排気部と、少なくとも前記除去部を保持可能な筐体と、前記筐体を、前記収容室の患児が載置されている載置面以外に固定するための固定部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、浄化装置を構成する筐体が、収容室の患児が載置されている載置面以外に固定されているので、患児に対する医療行為の邪魔にならずに、閉鎖型保育器内のエタノールを除去して空気を浄化することができる。
【0008】
前記排気部が排気する空気の排気方向は、前記閉鎖型保育器内の空気の循環を阻害しない方向に設定されていてもよい。上記構成によれば、閉鎖型保育器内の空気の循環を阻害しないで、閉鎖型保育器内の空気からエタノールの除去を行うことができる。
【0009】
前記除去部は、前記筐体内に2つ保持されており、前記2つの除去部のうち、一方の除去部は、他方の除去部よりも前記吸気部に近い側に配置されていてもよい。上記構成によれば、吸引部によって吸引された空気は、吸気部に近い側に配置された一方の除去部によってエタノールが除去され、その後、他方の除去部によってエタノールが除去されるので、吸気部に近い側の除去部で除去しれなかったエタノールを、他方の除去部で除去することができる。
【0010】
前記固定部は、前記収容室の内縁に立設された壁部に着脱可能に取り付けられてもよい。上記構成によれば、固定部が、収容室の内縁に立設された壁部に着脱可能に取り付けられていることで、筐体を収容室の内縁に立設された壁部に固定することができる。このように、固定部によって、筐体、すなわち浄化装置本体を、収容室の内縁に立設された壁部に固定できるため、浄化装置は、保育器内での患児に対する医療行為の邪魔にならない。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、閉鎖型保育器内での患児に対する医療行為の邪魔にならない浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態1に係る浄化置を備えた保育器の概略斜視図である。
【
図3】
図2に示す浄化装置のAA線矢視断面図である。
【
図4】本開示の実施形態2に係る浄化装置の変形例を示す概略斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態3に係る浄化装置の他の変形例を示す概略斜視図である。
【
図7】
図1に示す保育器の変形例を示す保育器の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
患児に対する医学的介入には、保育器内で実施されるものがある。そして、保育器内には、保育器内の空気に含まれる揮発性物質を吸着除去する浄化装置が設置されている。浄化装置によって吸着除去される揮発性物質は、エタノールのような患児Xに対する医学的介入において使用される物質である。
【0015】
従って、保育器内に設置された浄化装置は、保育器内で実施される医学的介入において使用される揮発性物質であるエタノールを、該保育器内の空気から除去する。これにより、患児に対する医学的介入を保育器内において行うことの安全性を向上させることができる。なお、浄化装置を保育器内に設置する理由の一例として、衛生面や機能面で問題が生じ難いことを挙げることができる。例えば、浄化装置の全てあるいは一部を保育器外に設置した場合、保育器内と保育器外との温湿度差によって結露などが生じ、衛生面や機能面で問題が生じ易くなる。このため、浄化装置は、保育器内に設置するのが好ましい。以下、除去対象の揮発性物質としてエタノールを例に説明するが、これに限定されるものではない。はじめに、保育器の概要を説明する。
【0016】
<保育器の概要>
図1は、保育器1の概略斜視図である。保育器1は、患児Xを収容する収容室101と、収容室101を載置する載置台102とを含む。収容室101内には、ベッド11、ベッドの前後に配置された衝立部12が配置されている。ベッド11の表面11aは、患児が置かれる載置面である。ベッド11は、載置台102上に設けられたベッドステージ13に設置されている。ベッドステージ13は、ベッド11を上下方向または上下左右方向に動かすことが可能である。衝立部12は、ベッド11の表面11aから所定の高さおよび所定の幅を有する透明な樹脂で形成されており、後述する浄化装置120を設置する設置部としても使用される。
【0017】
収容室101には、医師または看護師が患児Xに対して点滴投与等の処置を行うための処置用の開口部101aが2個設けられている。収容室101内で患児Xに対して何らかの処置をする場合には、必ず消毒する必要がある。例えば、酒精綿を用いて患児Xの手等の処置対象の部位を消毒する。収容室101内で酒精綿を使用すれば、当該収容室101内にエタノールが発生する。発生したエタノールを除去するために、収容室101内には、ベッド11の衝立部12に2つの浄化装置120・120が配置されている。
【0018】
ここで、収容室101内の空気は、エタノールを発する発生源(例えば酒精綿)から離れた位置の第1空気と、エタノールを発する発生源(例えば酒精綿)近傍の第2空気とを含む。従って、浄化装置120は、主に、エタノールの発生源から離れた位置の第1空気からエタノールを除去する。浄化装置120は、収容室101内に配置され、収容室101内の空気からエタノールを除去する除去部を構成している。
【0019】
保育器1は、患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器(所謂、閉鎖型保育器)である。このため、保育器1は、さらに、循環部410、供給部420、排出部430を備える。循環部410は、温度および湿度が調節された空気を収容室101に循環させる。供給部420は、空気を収容室101外から収容室101内に供給する。排出部430は、収容室101内の空気の少なくとも一部を収容室101外に排出する。これにより、保育器1は、患児を収容する収容室における温湿度が維持され、温湿度が維持できるレベルで自然吸排気を行い換気されている。なお、保育器1は温湿度に加えて、酸素濃度が調整可能であってもよい。
【0020】
載置台102には、保育器1の機能などを、使用者(医師、看護師等)が操作できるように操作パネル102aが設けられている。
【0021】
保育器1において収容室101内の空気は、循環部410によって温度および湿度が調整されている。また、浄化装置120は、収容室101内の空気を吸気して、吸気した空気に含まれるエタノールを除去し、エタノールを除去した空気を再び収容室101内に排気する。これにより、収容室101内の温度および湿度を保ったまま、当該収容室101からエタノールを除去することができる。
【0022】
また、浄化装置120を収容室101内に配置することで、保育器1を設置するスペースとは別に、浄化装置120を設置するためのスペースを確保する必要が無い。
【0023】
<浄化装置の概要>
図2は、浄化装置120の概略斜視図である。
図3は、
図2のAA線矢視断面図である。
【0024】
浄化装置120は、
図2に示すように、一体的に設けられた2つの筐体(第1筐体121、第2筐体122)を含む。ここでは、別々の筐体(第1筐体121、第2筐体122)を接続して一つの筐体としている例を示している。なお、2つの筐体(第1筐体121、第2筐体122)を一体で成形して一つの筐体としてもよい。第1筐体121の前面121aには、外気を取り込む吸気部121bが設けられている。第1筐体121は、第1筐体121の後面を含む後部であって第1筐体121の下面121cにおいて第2筐体122と内部で連通した構造となっており、吸気部121bによって吸気された外気を第2筐体122に導くようになっている。第1筐体121の後部は、吸気部121bから排気部122bに向かう方向(以下、排気方向)において、前面121aの下流側に位置する。換言すると前面121aは、排気方向において第1筐体121の後部より上流側に位置する。第2筐体122の前面は第1筐体121の後面を含む後部であって第1筐体121の下面121cに接続されている。第2筐体122の後面122a(第1筐体121との連通側と反対側の面)には、外気を排気する排気部122b(
図3)が設けられている。第2筐体122の前面は、排気方向において後面122aの上流側に位置する、換言すると後面122aは、排気方向において第2筐体122の下流側に位置する。
【0025】
浄化装置120は、
図3に示すように、断面逆L字状の形状をし、収容室101内の衝立部12に設置されている。すなわち、浄化装置120は載置面の上方に設置される。浄化装置120には、第1筐体121および第2筐体122を収容室101の内縁に固定するための固定部が設けられている。具体的には、第1筐体121の下面121cには、第2筐体122の側面122cに平行で、且つ当該側面122cから所定の距離離れた位置に、固定部として、下方に突出した突起部121dが設けられている。突起部121dは、所定の高さおよび所定の幅を有する例えば樹脂からなる部材であり、第1筐体121と一体的に設けられている。
図3では、第1筐体121に突起部121dを接続して一つの筐体としている例を示している。なお、第1筐体121と突起部121dとを一体で成形して一つの筐体としてもよい。
【0026】
突起部121dは、当該突起部121dと第2筐体122の側面122cまでの距離が、収容室101の衝立部12の厚みよりも少し長くなる位置に設けられている。これにより、浄化装置120を収容室101の内縁に設けられた衝立部12に設置する際に、第2筐体122の側面122cと第1筐体121の突起部121dとによって衝立部12を挟み込むことで、浄化装置120を衝立部12に安定して設置することができる。このように、突起部121dによって、第1筐体121および第2筐体122を収容室101の内縁に立設された壁部である衝立部12に固定することができる。このように、固定部である突起部121dによって、第1筐体121および第2筐体122筐体、すなわち浄化装置120本体は、収容室101の内縁に立設され衝立部12に固定される。従って、浄化装置120は、保育器1内での患児Xに対する医療行為の邪魔にならない。なお、突起部121dは、収容室101の内縁に設けられた衝立部12に着脱可能な構成としてもよい。
【0027】
このように、浄化装置120は、医療行為の邪魔にならない位置に設置するのが好ましい。さらに、浄化装置120の排気方向(エタノールを除去した空気を排気する方向)は、保育器1内の空気の循環を阻害しない方向であり、且つ、患児Xに当たらない方向が好ましい。これにより、保育器1は、機能(温湿度の維持機能等)を維持し、且つ、空気が患児Xにあたることによって、患児の体温を奪ったり、不感蒸泄による水分喪失を促進させたりすることが無いため、患児Xの安全性を確保することができる。
【0028】
また、第1筐体121に設けられた突起部121dは、当該第1筐体121の幅方向(第1筐体121内での排気方向に直交する方向)に向かって、連続して設けられていている。
【0029】
第1筐体121は、第1除去部124、吸引部125を含む。第1除去部124は、繊維状の活性炭からなり、吸気部121bから吸気された外気に含まれるエタノールの大部分を素早く吸着する。従って、外気に含まれるエタノールの量が少なければ、第1除去部124において全てのエタノールが吸着されることになる。本実施形態において繊維状の活性炭をシート状に成型したシート状の活性炭を用いている。
【0030】
第1除去部124は、第1筐体121の上部側から着脱可能な容器内にシート状の活性炭を収容したカートリッジ型である。これにより、第1除去部124の交換が容易である。また、シート状の活性炭は使い捨てである。このため、第1除去部124の交換は、以下のように行う。第1筐体121から取り出した第1除去部124に収容されたシート状の活性炭を捨てて、新しいシート状の活性炭を第1除去部124に収容し、再度、第1除去部114を第1筐体121に取り付ける。
【0031】
吸引部125は、1つのシロッコファンからなり、第1除去部124を介して吸気部121bから外気を吸引し、当該ファンの回転軸方向と直交する方向となる後段の第2除去部126に送風する。ここで、吸引部125における吸気量は50L/min以上とするが、これに限定されものではない。なお、大量の吸気ができるように、吸引部125における吸気面積は大きい方が好ましい。
【0032】
第2筐体122は、第2除去部126を含む。第2除去部126は、第2筐体122から着脱可能なカートリッジ内にペレット状の活性炭を収容したカートリッジ型である。これにより、第2除去部126の交換を容易に行うことができる。また、ペレット状の活性炭は使い捨てであるため、交換のために取り出した第2除去部126に収容されたペレット状の活性炭は捨てて、新しいペレット状の活性炭を収容し、再度、第2除去部126を第2筐体122に取り付ける。
【0033】
上記構成の浄化装置120の排気部122bから排気される空気(エタノール除去済の空気)の排気方向は、保育器1内の空気の循環を阻害しない方向に設定されている。
【0034】
保育器1は、例えば
図8に示すように、水槽17と、加熱部18と、ヒーター19と、ファン20と、を備える。水槽17は水を収容している。加熱部18は、水槽17内に設けられており、水槽17が収容している水を加熱することにより、蒸気を発生させる。加熱部18により発生した蒸気は、ファン20によって収容室101内を循環する。
【0035】
一方、浄化装置120は、ベッド11に設けられた衝立部12に固定されており、収容室101内の空気を吸気部121bから吸気し、排気部122bから排気する。排気部122bから排気される空気は、保育器1のベッド11の衝立部12と収容室101の内壁面との隙間から、ベッド11の下部に排気される。ベッド11の下部に排気された空気(エタノール除去済の空気)は、ファン20によって加熱部18で発生した蒸気と共に吸気される。従って、浄化装置120の排気方向は、保育器1の吸気方向と一致している。
【0036】
また、保育器1内において、ベッド11の衝立部12と収容室101の内壁面との隙間から、保育器1内で循環されている空気がベッド11の下部に吸引される。従って、浄化装置120は、ベッド11の衝立部12と収容室101の内壁面との隙間に余裕があれば、ベッド11の衝立部12に設置するのが好ましい。これにより、浄化装置220の排気方向と保育器1内で循環される空気の循環方向とを同じにできる。
【0037】
以上のように、第1筐体121内の第1除去部124では、シート状の活性炭を吸着材として用いることで、高濃度のエタノールを素早く大量に吸着し、第2筐体122内の第2除去部126では、ペレット状の活性炭を吸着材として用いることで、第1除去部114によって吸着しきれていないエタノールをゆっくり、もれなく吸着する。
【0038】
つまり、第1除去部124は、
図3に示すように、第2除去部126よりも吸気部121bに近い側に配置されている。つまり、吸引部125によって吸引された空気の流れの上流側に第1除去部124が配置され、下流側に第2除去部が配置されているので、吸気部121bから吸引された空気は、吸気部121bに近い側(空気の流れの上流側)に配置された第1除去部124によってエタノールが除去され、その後、空気の流れの下流側に配置された第2除去部126によってエタノールが除去されるので、第1除去部124で除去しれなかったエタノールを、第2除去部126で除去することができる。
【0039】
上述した第1除去部124で用いるシート状の活性炭における吸着特性を実現するための条件として、吸引される空気と接触する表面積が広いことが上げられる。
【0040】
従って、第1筐体121の吸気部121bから吸気された外気は、第1除去部124によって素早く大量にエタノールが吸着され、さらに、第2除去部126によってエタノールがもれなく吸着されるので、排気部122bから排気される外気にはほとんどエタノールが含まれない。
【0041】
浄化装置120は、
図1に示すように、保育器1の収容室101内に設置されるのが好ましい。このように、浄化装置120を収容室101内に設置すれば、収容室101内の空気からエタノールを除去することができる。これにより、保育器1の収容室101内の患児Xが、意図せずエタノールに暴露されてしまうことを回避することができる。
【0042】
通常、保育器1において収容室101内の空気は、温度および湿度が調整されている。従って、上述したように、浄化装置120は、収容室101内の空気を吸気して第1筐体121の第1除去部124によって素早く大量にエタノールが除去された空気を第2筐体122内の第2除去部126へと誘導し、該第2除去部126によってもれなくエタノールが除去された空気を収容室101内に排気する。これにより、収容室101内の温度および湿度を保ったまま、当該収容室101からエタノールを除去することができる。
【0043】
なお、前記実施形態1では、吸引部125を含む第1筐体121と、第2除去部126を含む第2筐体122とを一体化した浄化装置120について説明した。この場合、各筐体のスリム化を図ったとしても、第1筐体121内に含まれる吸引部125を構成するファンのスリム化を行うのが難しいため、保育器1によっては収容室101のベッド11の衝立部12に設置させるのが難しい場合もある。そこで、下記の実施形態2では、保育器1内のベッド11の衝立部12と収容室101との間に空間が小さい場合であっても、浄化した空気をベッド11に排気することができる浄化装置について説明する。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
<浄化装置の概要>
図4は、本実施形態に係る浄化装置220の概略斜視図である。浄化装置220は、前記実施形態1の浄化装置120とほぼ同じ構造をしており、異なるのは、エタノールを除去した外気の排気構造である。ここで、浄化装置220を構成する各要素と、前記実施形態1の浄化装置120を構成する各要素との対応関係は、以下のようになる。第1筐体221は第1筐体121に対応し、第2筐体222は第2筐体122に対応し、前面221aは前面121aに対応し、吸気部221bは吸気部121bに対応し、上面221cは、下面121cに対応する。さらに、第1筐体221は、第1筐体121と同様に、内部に第1除去部124、吸引部125を備え、第2筐体222は、第2筐体122と同様に、内部に第2除去部126を備えている。ただし、第2筐体222においては、エタノールを吸着した後の外気を側面222aに設けられたチューブ223から排気するようになっている。チューブ223は、所定の長さを有するフレキシブルチューブであり、排気口223aを所望する方向に向けることが可能となっている。
【0046】
上記構成の浄化装置220は、第1筐体221を下側にして収容室101のベッド11の下に配置し、さらに、チューブ223の排気口223aもベッド11の下に配置する。ここで、排気口223aは、当該空気の排気する方向、すなわち排気する方向が、収容室101内における空気の循環する方向と同じ向きになるように配置する。これにより、浄化装置220は、ベッド11の下でエタノールを含む空気を吸引し、ベッド11の下でエタノールを除去した空気を収容室101内に循環させることができる。
【0047】
また、浄化装置220は、ベッド11の下に配置して使用するので、吸引部125内のファンを大きくすることが可能となり、吸引力をアップさせることが可能となる。つまり、収容室101内のベッド11の下における空間に浄化装置220を配置できる範囲内で、吸引部125内のファンの大きさを大きくして、吸引力をアップさせることが可能となる。このように、浄化装置220をベッド11の下に配置すれば、浄化装置220をベッド11の衝立部12上に設置する必要がない。従って、浄化装置220をベッド11下に配置することは、ベッド11の衝立部12と収容室101の内周面との隙間が大きくない場合、すなわち浄化装置220を衝立部12に設置するのが空間的に難しい場合に好適である。
【0048】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
<浄化装置の概要>
図5は、本実施形態に係る浄化装置230の斜視図である。
図6は、
図5に示す浄化装置の概略断面図である。前記実施形態2では、浄化装置220の第1筐体221と第2筐体222とが一体となった構成の例について説明したが、これに限られるものではなく、
図6および
図7に示す浄化装置230のような構成であってもよい。浄化装置230は、第1筐体231と第2筐体232とが分離して、チューブ233によって接続された構造となっている。浄化装置230の第1筐体231は浄化装置220の第1筐体221に対応し、第2筐体232は第2筐体222に対応する。
【0050】
第1筐体231は、吸引部125を備え、前面231aから空気を吸引し、後面231b側から排気する。第1筐体231の前面231aには、当該第1筐体231内部に連通する開口部(図示せず)が形成され、この開口部にチューブ233が接続されている。このチューブ233は、
図4に示す浄化装置220のチューブ223と同じものである。
【0051】
第2筐体232は、断面略L字状で有り、第1除去部124および第2除去部126を備え、前面232aから導入された空気を第1除去部124および第2除去部126を介して後面232bから排気する。第2筐体232の後面232bには、当該第2筐体232内部に連通する開口部(図示せず)が形成され、この開口部にチューブ233が接続されている。従って、第2筐体232から排気される空気は、チューブ233を通して第1筐体231によって吸引される。
【0052】
なお、第1除去部124は、前記実施形態1の第1除去部124と同じシート状の活性炭を用いてエタノールを吸着し、第2除去部126は、前記実施形態1の第2除去部126と同じペレット状の活性炭を用いてエタノールを吸着する。また、第1除去部124および第2除去部126においては、エタノールを除去するために、吸着材によってエタノールを吸着するだけでなく、触媒によってエタノールを分解するようにしてもよい。
【0053】
第1筐体231は、ベッド11の下、すなわち載置面の下方に設置し、第2筐体232は、ベッド11の衝立部12、すなわち載置面の上方に設置する。この場合、第2筐体232の側面232dを衝立部12に近づけて設置する。このとき、第2筐体232の上部側の下面232cに前記実施形態1で説明した突起部121dと同じ突起部を設けて、この突起部によって第2筐体232を衝立部12に固定する。従って、浄化装置230は、
図6に示す状態で、第2筐体232の前面232aからエタノールを含む空気を吸気し、当該第2筐体232内の第1除去部124および第2除去部126によってエタノールが除去された空気がチューブ233を介して第1筐体231の吸引部125によって吸引され、当該第1筐体231の後面231bからベッド11の下の空間に排気される。
【0054】
上記構成の浄化装置230によれば、吸引部125を含む第1筐体231の筐体サイズが衝立部12と保育器1の収容室101の周壁との間の大きさに制限されず、吸引部125を大きくすることで、ファンのサイズを大きくし吸引量の増加を図ることができる。さらに、第2筐体232内の第1除去部124と第2除去部126のサイズを大きくでき、エタノールの吸着量や吸着材の耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、第2筐体232において屈曲した部分の角(下面232cと側面232dとが交差する部分に対向する部位)が面取りされている。これにより、衝立部12と収容室101の周壁との間で、第2筐体232を揺動させる範囲を広げることができる。
【0056】
(浄化装置の駆動制御)
前記実施形態1、2、3の浄化装置120、220および230は、電源のオン・オフにより内部の吸引部125内のファンの駆動および停止を行うようになっている。この電源は、電池(1次電池、充電池等)であってもよく、外部電源であってもよく、また、外部電源と充電池との組み合わせであってもよい。浄化装置の使用の都度保育器内に設置する場合には、電源として電池が好ましく、浄化装置を常時保育器内に設置する場合には、外部電源が好ましい。通常、浄化装置は、保育器内で常設し、連続運転する場合には、電源は外部電源が好ましい。通常、収容室101内で患児Xに対して処置を行う際に、処置者(医師または看護師)によって電源をオンすることで、吸引部125のファンを駆動させる。また、浄化装置120、220および230における吸引力は、吸引部125内のファンの回転数によって調整することができるので、除去するエタノールの濃度に応じてファンの回転数を変えることで、適切にエタノールの吸引および除去を行うことができる。
【0057】
また、前記実施形態1、2、3の浄化装置120、220、230は、それぞれ動作状況(駆動状況)を表示する機能を有している。駆動状況を表示する機能とは、運転中であるか否か、停止中であるか否か、フィルタ(除去部の活性炭)交換要か否か、トラブル発生しているか否か、バッテリー低下しているか否か等を明示的に表示することを示す。この場合、駆動状況は、表示パネルに表示してもよいし、駆動状況に応じたランプを点灯させることによって表示してもよい。これにより、処置者は、浄化装置120、220、230の作動忘れを無くすことができる。また、浄化装置120、220、230は、フィルタの交換を促す表示をすることが可能となる。
【0058】
さらに、前記実施形態1、2、3の浄化装置120、220、230は、保育器1の開口部101aから出し入れし易く、取り扱い易い質量(例えば150g)であることが好ましい。
【0059】
〔変形例1〕
前記実施形態1では、収容室101に処置用の開口部101aが2個設けられている例について説明したが、開口部101aの数については少なくとも2個であればよく、3個以上であってもよい。
【0060】
〔変形例2〕
前記実施形態1では、浄化装置120の駆動制御を、各装置に設けられた操作部の操作によって行う例について説明したが、保育器1が備える操作パネル102aの操作によって行われるようにしてもよい。
【0061】
〔変形例3〕
前記実施形態1では、
図1に示すように、浄化装置120をベッド11の片側(患児Xの頭側)に2つ配置している例を示しているが、これに限定されるものでなく、医療行為の邪魔にならず、適切にエタノール除去ができれば、浄化装置120を反対側(患児Xの足側)に2つ配置してもよいし、ベッド11の両側に浄化装置120を一つずつ配置してもよい。設置される浄化装置120の数は1つでも、3つ以上でもよい。
【0062】
〔変形例4〕
前記実施形態1では、突起部121dは、第1筐体121と一体的に設けられる例について説明したが、これに限定されるものではなく、突起部121dは、第1筐体121と別体に設けられていてもよい。
【0063】
〔変形例5〕
前記実施形態1では、第1筐体121に設けられた突起部121dは、当該第1筐体121の幅方向(第1筐体121内での排気方向に直交する方向)に向かって、連続して設けられる例について説明したが、これに限定されず、断続的に設けられていてもよい。また、突起部121dは、第1筐体121の下面121cの幅方向(第1筐体121内での排気方向に直交する方向)の両端部に一つずつ設けられていてもよい。突起部121dの形状については、特に限定されるものではなく、第2筐体122の側面122cによって衝立部12を挟み込むことができる形状であればよい。なお、突起部121dは、衝立部12の厚みに応じて、突起部121dから第2筐体122の側面122cまでの距離を調整するように可動するようにしてもよい。
【0064】
〔変形例6〕
前記実施形態1では、第1除去部124において使用する吸着材としては、シート状の活性炭の例について説明したが、これに限定されず、エタノールを吸着するものであれば、他の吸着材を使用してもよい。
【0065】
〔変形例7〕
前記実施形態1では、吸引部125から第2除去部126を流れる外気の送風方向が、第1除去部124から吸引部125を流れる外気の送風方向に対して直交する方向であるため、回転軸方向に対して直交する方向に風を吹き出すシロッコファンを用いた例について説明したが、これに限定されるものではない。ファンの型式については、第1筐体121と第2筐体122との構造に応じて変更すればよい。例えば、第1筐体121における吸引方向と排気方向とが同じであれば、軸流ファンを用いてもよい。また、吸引部125で用いるファンの数についても2個に限定されるものではなく、1個または3個以上であってもよい。従って、ファンの型式や数は、浄化装置に採用する電源方式、消費電力、必要な流量等を考慮して選定する。
【0066】
〔変形例8〕
前記実施形態1では、第2除去部126において使用する吸着材としては、ペレット状の活性炭の例について説明したが、これに限定されず、エタノールを吸着するものであれば、他の吸着材を使用してもよい。
【0067】
〔変形例9〕
前記実施形態1では、第1除去部124と第2除去部126においてそれぞれ使用される吸着材が異なっている例について説明したが、同じであってもよい。また、エタノールを除去するために、吸着材によってエタノールを吸着する以外に、エタノールを触媒によって分解するようにしてもよい。
【0068】
さらに、エタノールの吸着と分解を両方行って除去するようにしてもよい。例えば、第1除去部124と第2除去部126のそれぞれに、吸着材と触媒を備え、一つの除去部内で吸着材によるエタノールの吸着と触媒によるエタノールの分解を行うようにしてもよい。あるいは、第1除去部124が触媒によってエタノールを分解し、第2除去部126が吸着材によってエタノールを吸着してもよいし、第1除去部124が吸着材によってエタノールを吸着し、第2除去部126が触媒によってエタノールを分解してもよい。
【0069】
〔変形例10〕
前記実施形態1では、第1筐体121内に一つの第1除去部124、第2筐体122内に一つの第2除去部116を設けた例について説明したが、第1除去部124、第2除去部126の何れか一方のみであってもよいし、第1筐体121および第2筐体122のそれぞれに2つ以上の除去部を設けてもよい。これらの除去部においてエタノールを除去する方法は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0070】
〔変形例11〕
前記実施形態2では、浄化装置220のチューブ223の排気口223aの設置位置がベッド11の下である例について説明したが、これに限られない。浄化装置220のチューブ223の排気口223aの設置位置は、ベッド11上の患児Xに影響を与えない箇所、保育器1内の循環への影響が少ない箇所へ空気を排気する位置であれば、どこでもよい。特に、浄化装置220におけるチューブ223の排気口223aの設置位置は、排気口223aから排気される空気をベッド11上の患児に直接吹き付けない位置であればよい。例えば、収容室101を構成する周囲の壁に向かって空気を排気するようにすれば、ベッド11の上にチューブ223の排気口223aを設置してもよい。
【0071】
〔変形例12〕
前記実施形態2では、浄化装置220をベッド11の下に配置する例について説明したが、浄化装置220の位置は、これに限られない。例えば、ベッド11の衝立部12と収容室101の内壁面との隙間に余裕があれば、ベッド11の衝立部12に浄化装置220を設置してもよい。この場合、第1筐体221を上側にして、第2筐体222の側面222bを衝立部12に近づけて設置する。このとき、第1筐体221の上面221cに前記実施形態1で説明した突起部121dと同じ突起部を設けて、この突起部によって浄化装置220を衝立部12に固定する。この場合、浄化装置220のチューブ223の排気口223aはベッド11の下の空間に向くように、チューブ223を設置する。
【0072】
〔変形例13〕
浄化装置220の構成のうち、吸引部125を含む第1筐体221の小型化が難しく、第2除去部126を含む浄化部である第2筐体222の小型化、特に厚みを薄くすることは容易である。従って、吸引部125を含む第1筐体221と、浄化部である第2筐体222とを分離した構成とし、第1筐体221をベッド11下に設置し、第2筐体222をベッド11の衝立部12に設置するようにしてもよい。
【0073】
具体的には、第1筐体221と第2筐体222との間に、例えば
図4の浄化装置220が備えるチューブ223のようなフレキシブルチューブを設け、第1筐体221
によって吸引した外気を、フレキシブルチューブを介して第2筐体222に送ることが考えられる。この場合、吸引部125を含む第1筐体221の設置場所(ベッド11下)と、浄化部である第2筐体222との設置場所(衝立部12上)との距離に応じて、フレキシブルチューブの長さを設定すればよい。
【0074】
本変形例の浄化装置では、ファンを有する吸引部125を含む第1筐体221と浄化部である第2除去部126を含む第2筐体222とを分離させることで、小型化が難しい第1筐体221をベッド11下に配置し、小型化が容易な第2筐体222のみを衝立部12に設置させるようにしている。これにより、スペース的に衝立部12に第1筐体221を設置させるのが難しい場合であっても、浄化部を構成している第2筐体222のみを衝立部12に設置させることによって、収容室101内の空気の浄化を行うことができる。
【0075】
〔変形例14〕
また、実施形態1の第1筐体121および実施形態2の第2筐体222において屈曲した部分の角が面取りされていてもよい。これにより、浄化装置120、220を収容室101内に設置した際に、衝立部12と収容室101の周壁との間で、第1筐体121、第2筐体222を揺動させる範囲を広げることができる。
【0076】
〔変形例15〕
前記実施形態1~3の浄化装置120、220および230では、電源のオン・オフによって駆動制御を行っていたが、これに限定されるものではない。例えば、また、収容室101内にエタノールの濃度を検知する濃度センサを設置し、濃度センサの検知信号に基づき、浄化装置120、220および230の駆動制御を行うようにしてもよい。例えば、濃度センサの検知信号が示すエタノールの濃度が、所定濃度以上になったときに、吸引部125のファンの駆動を開始させ、所定濃度よりも下がれば、吸引部125のファンの駆動を停止させるようにしてもよい。さらに、浄化装置120、220および230が駆動している間、濃度センサの検知信号が示すエタノールの濃度が所定濃度よりもさらに上昇したことを示せば、吸引部125内のファンの回転数を上げるようにして、吸引力を上げて収容室101内のエタノールをより積極的に吸引するようにしてもよい。これにより、迅速にエタノールを吸引して除去することができる。
【0077】
さらに、浄化装置120、220および230に、第1除去部124や第2除去部126の吸着状態を検知するための検知手段を設けてもよい。検知手段は、エタノール濃度を検知する濃度センサであってもよい。この場合、浄化装置120、220および230は、検知手段が検知したエタノール濃度によって、第1除去部124、第2除去部126の吸着状態(破過(吸着機能を超えて吸着などして、吸着対象が漏れている状態)している状態か、あるいは十分に吸着できている状態か)を判断する。
【0078】
前記検知手段は、浄化装置120、220および230内に設けてもよく、浄化装置120、220および230外に設けてもよいが、たとえば、第1除去部124の下流側(第1除去部124と第2除去部126の間)に設けることが好ましい。このようにすることで、第1除去部124の吸着状態を検知でき、たとえば第1除去部124の吸着機能の低下にともない、十分な吸着機能を発揮できない状態や、第2除去部126での吸着量が増大し第2除去部126が破過する状態となる前に第1除去部124を交換することが可能となる。また、第2除去部126の下流側に検知手段を設け、第2除去部126の吸着状態を検知するようにしてもよい。あるいは、第1除去部124と第2除去部126との間と、第2除去部126の下流側の両方に検知手段を設け、第1除去部124と第2除去部126の両方の吸着状態を検知するようにしてもよい。
【0079】
また、収容室101内に設けたエタノール濃度を検知する濃度センサの検知結果と、前記吸着状態を検知する検知手段の検知結果とを組み合わせて浄化装置120、220および230の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0080】
さらに、検知手段を、第1除去部124の上流側に設けてもよい。この場合、検知手段は、第1除去部124によってエタノールが吸着される前の空気に含まれるエタノール濃度を検知する。すなわち検知手段は、保育器1内の空気に含まれるエタノールの濃度を検知する。検知手段が検知したエタノール濃度から吸引部125のファンの駆動制御を行うようにしてもよい。
【0081】
この場合、浄化装置120、220および230の制御部(図示せず)は、検知手段が検知したエタノール濃度に応じて、吸引部125のファンを回転させるモータの駆動を制御する。例えば、制御部は、検知手段が検知したエタノール濃度が所定の値よりも高ければ、ファンの回転数を上げるようにモータの駆動を制御し、一方、検知手段が検知したエタノール濃度が所定の値以下であれば、ファンの回転数を下げるようにモータの駆動を制御する。
【0082】
また、浄化装置120、220および230は通信部を備え、通信部は、検知手段が検知したエタノール濃度を示す情報を外部機器に通信することで、保育器1内のエタノール濃度をモニタリングするようにしてもよい。すなわち、浄化装置120、220および230は、保育器1内のエタノール濃度をモニタリングするモニタリング装置として機能する。
【0083】
〔変形例16〕
前記実施形態1では、
図1に示すように、保育器1では、収容室101のベッド11の上部側で、循環部410による保育器1内の空気の循環、供給部420からの保育器1内への空気の供給、排出部430からの保育器1外への空気の排出を行っている。つまり、
図1に示す保育器1における主な空気の循環は、収容室101のベッド11の上部側で行われる。このため、収容室101のベッド11上の患児Xに空気の流れによる温度変化の影響を与える可能性がある。そこで、収容室101のベッド11上の患児Xに空気の流れによる温度変化の影響を少なくするために、例えば
図7に示す保育器2では、収容室101のベッド11の下部側で、空気の保育器2内での循環、空気の保育器2内への供給、および空気の保育器2外への排出を行うようにすることが好ましい。なお、保育器2内から保育器2外への空気の排出方向については、保育器2内の空気の循環方向を阻害しない方向(例えば循環方向と同じ方向)に排出するのが好ましい。
【0084】
図7に示す保育器1では、図示されていないが、
図1と同じ循環部410と供給部420がベッド11の下部に配置されている。なお、
図7に示す保育器2では、
図1に示す排出部430のように保育器2の空気を積極的に保育器2外に排出する装置を設けず、保育器2内の空気を、収容室101の開口部101a、収容室101と載置台102との間に存在する僅かな隙間等を通して、保育器2外に排出させている。
【0085】
図7に示す保育器2では、保育器2内の空気は、ベッド11の下部に配置された循環部410によって温度および湿度が調整された空気が、保育器2の長辺側の内壁に沿ってベッド11の下部から収容室101の上部に導かれる。また保育器2内の空気は、保育器2の短辺側の内壁に沿ってベッド11上の空気がベッド11の下部の循環部410に導かれる。このように保育器2では、患児Xに空気の流れによる温度変化の影響が少ないようにされている。
【0086】
従って、
図7に示す保育器2によれば、収容室101内の患児Xに保育器2内の空気の流れの影響を少なくした状態で、保育器2内の空気を清浄に保ち、且つ空気の温度・湿度を適切に保つことが可能となる。
【0087】
〔変形例17〕
浄化装置120による患児への影響を抑制するために、浄化装置120の吸気部121bは、患児より高い位置に存在する。このようにすることで、エタノールの除去率を高めることができるとともに、吸気部121bによる吸気によって患児の周囲の気流速度が速くなることで患児へ悪影響を及ぼすことを抑制することができる。たとえば浄化装置120の吸気部121bは、ベッド11の衝立部12の上から、ベッドステージ13内に設けられた底部ファンまでの間であって、患児と同じ高さ以外に設定されていればよい。また、吸気部121bは、ベッド11の周囲からの気流が保育器1(2)内の換気ファン(図示せず)に到達するまでの部分に設置されていればよい。
【0088】
〔変形例18〕
前記実施形態1~3では、浄化装置120、220および230は、吸気側に風速を検出するセンサ(以下、風速センサと称する)を設けてもよい。この場合、浄化装置120、220および230における制御部は、風速センサによって検出された風速に応じて、吸引部125、225のファンを回転させるモータの駆動を制御する。制御部は、例えば、風速センサが所定範囲内の風速を検知すれば、吸引部125、225のファンの回転数を一定に保つようにモータを制御し、風速センサが所定範囲を超えて一定の風速よりも速い風速であると検知すれば、吸引部125、225のファンの回転数を下げるようにモータを制御し、一定の風速よりも遅い風速であると検知すれば、吸引部125、225のファンの回転数を上げるようにモータを制御する。これにより、浄化装置120、220および230は、特に、吸引部125、225のファンを回転させるモータが過剰に作動することで、保育器1(2)内の環境に影響することを防ぐことができる。このように、吸引部125、225のファンは、風速センサを備えることで、吸気側の風速を常に監視することが可能となる。この結果、吸引部125、225のファンは、自身に対して、適量の空気を吸引させることが可能となる。
【0089】
〔変形例19〕
浄化装置120、220および230の吸気部121b、221bは、保育器1(2)の空気の循環を阻害しない位置に設けるのが好ましい。吸気部121b、221bは、特に、保育器1(2)内の患児Xの周囲の空気の循環を変動させない位置に設けるのが好ましい。さらに、吸気部121b、221bは、エタノールが保育器ファン(図示せず)で保育器1(2)全域に拡散されないように、保育器1(2)内の患児Xに対して医療処置が行われるベッド11の上から空気が流れ落ちる部位から、保育器1(2)本体の換気ファン(図示せず)の間に設けることが好ましい。
【0090】
〔変形例20〕
浄化装置120、220および230において、排気部122b、排気口223aから排気される空気の流量を検知する流量センサが設けられてもよい。浄化装置120、220および230の制御部は、流量センサによって検知された流量が所定範囲内の流量であれば、吸引部125のファンの動作は正常であると判定し、流量センサによって検知された流量が所定範囲を超えた流量であれば、除去機能に異常があると判定する。この場合の除去機能に異常があるとは、吸引部125のファンの動作が正常でない場合、あるいは、排気部122b、排気口223aから空気が排気できない場合を示す。空気が排気できない場合とは、排気部122b、排気口223aがフィルタの目詰まり、あるいは異物によって詰まった状態が考えられる。そして、浄化装置120、220および230は、除去機能に異常があると判定した場合、除去機能が異常であることを処置者に報知する。これにより、エタノールが除去できない状態で、浄化装置120、220および230を使用し続けることがない。よって、流速センサが設けられた浄化装置120、220および230は、安全管理上好ましい装置といえる。なお、浄化装置120、220および230において、流量センサは、第1除去部124と第2除去部126との間に設けられていてもよい。
【0091】
本発明は上述した各実施形態および各変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 保育器、2 保育器、11 ベッド、11a 表面、12 衝立部、13 ベッドステージ、101 収容室、101a 開口部、102 載置台、102a 操作パネル、120 浄化装置、121 第1筐体、121a 前面、121b 吸気部、121c 下面、121d 突起部、122 第2筐体、122a 後面、122b 排気部、124 第1除去部、125 吸引部、126 第2除去部、220 浄化装置、221 第1筐体、221a 前面、221b 吸気部、222 第2筐体、222a 側面、223 チューブ、223a 排気口、X 患児(処置対象)
【要約】
【課題】保育器内の空気から揮発性物質を除去する。
【解決手段】浄化装置(120)は、吸引部(125)によって吸引した空気からエタノールを除去する第2除去部(126)と、第2除去部(126)によってエタノールが除去された空気を排気する排気部(122b)と、吸引部(125)および第2除去部(126)をそれぞれ保持可能な第1筐体(121)および第2筐体(122)を、収容室の衝立部(12)に固定するための突起部(121d)とを備える。
【選択図】
図3