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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20221011BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20221011BHJP
【FI】
A01G9/02 103J
A01G9/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019138401
(22)【出願日】2019-07-27
(65)【公開番号】P2021019538
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501263153
【氏名又は名称】株式会社南産業
(73)【特許権者】
【識別番号】511251504
【氏名又は名称】皆吉 一治
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】皆吉 一治
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-085511(JP,A)
【文献】特開2002-034331(JP,A)
【文献】特許第4686631(JP,B1)
【文献】特開2002-360072(JP,A)
【文献】特開2005-000008(JP,A)
【文献】特開2010-227008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持手段と、
支持手段により地上に平面視長矩形状に支持される止水シートであって、シートの両長辺部間の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中に埋設された止水シートと、
支持手段により地上に平面視長矩形状に支持されその上面側に培地を搭載する培地シートであって、シートの両長辺部の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中に埋設されて止水シートとの間に間隙を形成するように止水シートから上方に平行移動した位置に設置された培地シートと、を含み、
地中側の培地シートと止水シートとの間の間隙空間を、地上側空間に連通する連通路が設けられたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
支持手段は、培地シート又は止水シートの長手方向の両端部を支持するシート端部支持装置を有し、
該シート端部支持装置は、長手方向の両端部で止水シートの端部を支持する止水シート支持具と、
該止水シート支持具より平面視で内側に間隙をあけて培地シートの端部を支持する培地シート支持具と、を有し、
該止水シートと該培地シートとの間の間隙空間を地上側空間に連通させる連通路を形成したことを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビニルハウス等の温室内や露地において、野菜、果物、花卉類、その他の植物を栽培するのに利用しうる植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜、果物、花卉等の植物を栽培する際に、例えば、U字状に撓ませて支持したシートの上面に培地を装填して設けられた栽培床(栽培ベッド)を利用し、植物又はその培地や水、肥料等を管理しながら栽培する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、例えば、作業時の労力軽減のために、培地を地上より高位に設置する高設栽培床装置も知られている。従来の高設栽培床装置は、地上より高位に横架させた2本の横架アーム間に培地シートを下方に撓ませてその上面に装填した培地とともに支持させ、培地シートの間に間隙を設けて培地シートからさらに下方に撓ませて同アーム間に液受シートを支持させている。また、本発明者らは、特許文献1において、栽培床を幅方向に連続して設けることができ、有効栽培面積を効率的に形成しうる高設栽培床装置を提案している。特許文献1の高設栽培床装置は、上記のような2本の横架アームの間に培地シートと液受シートとを間隙をあけて2層に撓ませて支持させた高設栽培床装置において、横架アームの長手方向と直交する方向に列状に配置され地上側から縦に支持された複数の縦パイプと、横架アームに直角状に配置され、培地シートと液受けシートを間隙を設けて2層に撓ませた状態で支持し、一部が横架パイプの一本に嵌合するとともに他部が縦パイプに差し込み嵌合される追加U字状アームと、追加U字状アームの縦パイプへの差込嵌合部側で該追加U字状アームに一体的に連結される追加横架アームと、を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5827539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにU字状に撓ませたシートの上面に培地を装填して支持させた従来の栽培床は、シートが軽量で、薄く可撓性があるため、栽培対象の植物に応じた所望の栽培床を比較的簡単に、低コストで製造することができうる等の利点がある。その反面、従来の栽培床では、外気やハウス室内の温度環境によって培地の温度も影響を受けやすく、例えば、冬場時期の夜間に培地の温度が急激に下がったりするなどして、植物の生育に支障をきたすおそれが生じる。また、培地の温度を維持するために、例えば、暖房装置によってビニルハウス室内温度を加温したり、ボイラで温めたお湯をパイプで循環したりして、培地を加温する方法も実施されているが、燃料代等のランニングコストや設備コストが比較的高価となる問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、栽培空間の温度に影響されにくく、培地の温度管理を比較的簡単に行え、良好に植物を栽培できる植物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、支持手段12と、支持手段12により地上に平面視長矩形状に支持される止水シート14であって、シートの両長辺部間の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中UGに埋設された止水シート14と、支持手段12により地上に平面視長矩形状に支持されその上面側に培地18を搭載する培地シートであって、シートの両長辺部の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中UGに埋設されて止水シート14との間に間隙46を形成するように止水シート14から上方に平行移動した位置に設置された培地シート16と、を含み、地中UG側の培地シート16と止水シート14との間の間隙空間46を、地上側空間RMに連通する連通路48が設けられた植物栽培装置から構成される。
【0007】
その際、支持手段12は、培地シート16又は止水シート14の長手方向の両端部を支持するシート端部支持装置を有し、シート端部支持装置は、長手方向の両端部で止水シート14の端部14Eを支持する止水シート支持具26と、該止水シート支持具26より平面視で内側に間隙をあけて培地シート16の端部16Eを支持する培地シート支持具28と、を有し、該止水シート14と該培地シート16との間の間隙空間46を地上側空間に連通させる連通路48を形成したこととしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物栽培装置によれば、支持手段と、支持手段により地上に平面視長矩形状に支持される止水シートであって、シートの両長辺部間の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中に埋設された止水シートと、支持手段により地上に平面視長矩形状に支持されその上面側に培地を搭載する培地シートであって、シートの両長辺部の間隙が下方に凹状に垂下し少なくとも垂下した一部が地中に埋設されて止水シートとの間に間隙を形成するように止水シートから上方に平行移動した位置に設置された培地シートと、を含むことから、シートで培地を支持する構造であっても、培地が比較的温度の変化が少ない地中に埋設されているので、温室内等の栽培空間の温度に影響されにくく、培地の急激な温度低下等の温度変化による生育障害を防止して、植物を良好に栽培することができる。
【0009】
また、培地シートは、搭載した培地の一部が地上側に突設されるように両長辺部が地上から突出する位置で支持手段に支持されている構成とすることにより、培地の一部が地上側に露出されるので水の供給等を含む栽培管理が行いやすく、植物を良好に栽培できる。
【0010】
また、止水シートで受け止めた水を外部に排出する排水手段が設けられた構成とすることにより、止水シートや培地シートの少なくとも一部を地中に埋設した構造であっても、培地からの排水をスムーズに行わせて、該培地の水分管理を確実に行え、植物を良好に栽培することができる。
【0011】
また、排水手段は、該止水シートに穿孔して設けられた排水口部と、該止水シートより下位となる地中に埋設され該排水口部に連通接続された排水管と、該排水口部又は該排水管の排水流路に介設された開閉バルブと、を有する構成とすることにより、排水手段を具体的な構成で低コストで実現できる。また、必要に応じて開閉バルブを開閉して止水シートからの排水状態と貯水状態を切り換え、培地の水分管理を簡単に行える。また、例えば、ヤシガラ等の植物由来の培地を利用する場合などには、培地を新規に設置したり入れ替えたりした際に、装置内において該培地を水に浸してのあく抜き処理等の事前処理等も簡単に行うことができる。
【0012】
また、前記支持手段と止水シートと培地シートの組が地面に複数並設され、排水手段は、それぞれの止水シートからの排水を集水する共同排水管を有する構成とすることにより、大きな栽培面積を確保して栽培管理できるとともに、それらの培地から効率良く排水処理することができる。
【0013】
また、地中側の培地シートと止水シートとの間の間隙空間を、地上側空間に連通する連通路が設けられた構成とすることにより、例えば、連通路を介して温風や冷風を入れることにより培地の温度管理を補助することもでき、実用性を向上しうる。
【0014】
また、支持手段は、培地シート又は止水シートの長手方向の両端部を支持するシート端部支持装置であって、該培地シート又は該止水シートが形成する下方への撓み空間の長手方向の端部を閉鎖するように撓ませた状態で支持するシート端部支持装置を有する構成とすることにより、一方に長い培地シートや止水シートの長手方向両端側の閉鎖を簡単な構成で具体的に実現できる。
【0015】
また、シート端部支持装置は、長手方向の両端部で止水シートの端部を支持する止水シート支持具と、該止水シート支持具より平面視で内側に間隙をあけて培地シートの端部を支持する培地シート支持具と、を有し、該止水シートと該培地シートとの間の間隙空間を地上側空間に連通させる連通路を形成した構成とすることにより、簡単な構造で該止水シートと該培地シートとの間の間隙空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る植物栽培装置の一部を断面して示した斜視説明図である。
図2図1の植物栽培装置の一部省略した平面図である。
図3図1の植物栽培装置のA-A線断面図である。
図4図1の植物栽培装置のB-B線断面図である。
図5図1の植物栽培装置の支持手段と培地シートと止水シートを並設した状態の説明図である。
図6図1の植物栽培装置の支持手段の一部を示す説明図である。
図7図1の植物栽培装置の支持手段の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照しつつ本発明の植物栽培装置の実施形態について説明する。本発明に係る植物栽培装置は、例えば、キュウリ、トマト、パプリカ等の野菜やホウレンソウ等の葉野菜、果物類、花卉類、その他種々の植物を栽培できる植物用の栽培ベッド装置又は栽培床装置である。図1ないし図10は、本発明の植物栽培装置の一実施形態を示している。図1図2図3に示すように、本実施形態に係る植物栽培装置10は、支持手段12と、支持手段12に支持された止水シート14と、支持手段12に支持され上面に培地18を搭載した培地シート16と、を備える。本実施形態では、植物栽培装置10は、例えば、ビニルハウスVH等の温室内で植物を栽培する場合について説明する。
【0018】
支持手段12は、止水シート14と培地シート16を支持する支持手段である。図1図2図3に示すように、本実施形態では、支持手段12は、例えば、平面視長矩形状に組み付けられた枠部材20と、枠部材20を地面より上方に支持する支柱22と、該枠部材20に設けられて止水シート14と培地シート16を所定形状に撓ませた状態を保持するようにそれらのシートの一部を係止して支持するシート支持具(24、26、28)を含む。図6にも示すように、枠部材20は、例えば、長手方向を水平にして互いに平行に配置される2本の長辺アーム30と、長辺アーム30の両端に該長辺アーム30に対して直角で水平に配置される2本の第1短辺アーム32と、各第1短辺アーム32から枠部材20の内側に所定の間隙をあけて離隔して該第1短辺アーム32と平行に配置される2本の第2短辺アーム34と、を組合せて設けられている。長辺アーム30、第1短辺アーム32、第2短辺アーム34は、例えば、金属等の硬質素材で断面矩形状の角材又は角パイプからなる。長辺アーム30は、例えば、約50m程度の長さで設けられ、長手方向の複数の箇所を複数の支柱22によって下から支えられている。第1短辺アーム32、第2短辺アーム34は、例えば、約40cmの長さで設けられており、それぞれアーム両端に下方を開口した略コ字状の嵌合部32aが設けられ、該嵌合部32aの両外面にはボルト貫通用の孔が穿孔されている。下向きの略コ字状の嵌合部32aは、角材等からなる長辺アーム30の断面外形輪郭に対応して形成されている。第1短辺アーム32、第2短辺アーム34は、長辺アーム30に嵌合部32aを嵌合させてボルト35を介して固定される。すなわち、本実施形態では、枠部材20は、平面視で、およそ50m×40cmの内枠サイズで設けられており、その内側に後述のように一方に長く形成された止水シート14と培地シート16及び培地18が設置されて一つの栽培区画が形成される。支柱22は、例えば、縦に長く形成されて地中に突き刺して固定される杭部36と、該杭部36の上端に固定され上方を開口した略コ字状の受片部38と、を有する。杭部36は、上部を地面GLよりも突出されている。上向きの略コ字状の受片部38は、長辺アーム30の断面外形輪郭に対応して形成され該長辺アーム30を嵌合状に係合するようになっており、その縦片にはボルト貫通用の孔が穿孔されている。支柱22は、例えば、長辺アーム30の長手方向に沿って、1~1.5m程度の間隔で複数個配置され、略コ字状の受片部38内に長辺アーム30を嵌合状に受け入れてボルト39を介して固定されることによって、該長辺アーム30を支持する。支柱22は、例えば、長辺アーム30を地面GLから10cm程度上方に離隔した位置で水平に支持している。
【0019】
シート支持具は、長辺アーム30の上面側に固定され止水シート14及び培地シート16の両長辺側を支持するシート長辺支持具24と、第1短辺シート32の上面側に固定された止水シート端部支持具26と、第2短辺シート34の上面側に固定された止水シート端部支持具28と、を含む。各シート支持具24、26、28は、図7に示すように、例えば、従来周知のビニルシート等を留めるシート止め金具からなり、対向受け片40を有する金属製のステー部材42と、ステー部材42内に挿入される弾発挟み部材44と、を有する。ステー部材42は、アームの長手方向に沿って一方に長く形成され、対向受け片40の間に挿入口を上方に開口されている。弾発挟み部材44は、例えば、金属線状を台形の交互反転形状に曲げ形成したものを弾発ばねとして、ステー部材42の挿入口から内部に挿入されて該ステー部材42の対向受け片40に係止される。ステー部材42の挿入口に止水シート14又は培地シート16の長辺側又は短辺側の端部を挿入し、その上から弾発挟み部材44を対向受け片40間に装着して該止水シート14又は培地シート16を挟み込み係止させる。シート長辺支持具24では、ステー部材42内に、止水シート24の長辺端部が挿入され一つの弾発挟み部材44が挿入されて止水シート14を係止して支持するとともに、同じステー部材42内に止水シート14の上から培地シート16の長辺端部が挿入され他の弾発挟み部材44が挿入されて培地シート16を係止して支持する。止水シート端部支持具26では、後述のように、止水シート14の長手方向の両端部がステー部材42内に、止水シート24の長辺端部が挿入され一つの弾発挟み部材44が挿入されて止水シート14を係止して支持する。同様に、培地シート端部支持具26では、後述のように、培地シート14の長手方向の両端部がステー部材42内に、止水シート24の長辺端部が挿入され一つの弾発挟み部材44が挿入されて培地シート16を係止して支持する。すなわち、支持手段12は、止水シート14の端部を支持する止水シート支持具と、止水シート支持具から間隙をあけて培地シート16の端部を支持する培地シート支持具と、を有するシート端部支持装置を含む。
【0020】
止水シート14は、いわゆる防水シートであり、培地シート16を通過して流下する水分(液体)を受けて集めて流すシート体である。図1図2図3に示すように、止水シート14は、支持手段12により地上に平面視長矩形状に支持されるとともに、短辺方向の中央部を下方に撓ませて、該止水シートの両長辺部の間に撓み形成される間隙が下方に凹状に垂下した状態で設置される。同時に、止水シート14は、少なくとも垂下した一部が地中UGすなわち地面GLよりも下方に埋設されるように設けられている。本実施形態では、止水シート14は、例えば、ビニル樹脂等の不透水性素材からなり、一方に長い帯状(長矩形状)の可撓性防水シートからなる。止水シート14は、例えば、地面を管理機等で断面U字状に掘削してできた凹溝内に、略U字状に撓ませて垂下させ、両長辺部となる端部を地上側で上述の支持手段12のシート長辺支持具24で支持される。本実施形態では、例えば、止水シート14は、U字の最下端部が地面GLから25cm程度の深さ位置に設定されるとともに、地面GLから上方に10cm程度が突出される。止水シート14の長手方向の両端部側、すなわち短辺端部14E側は、長辺アーム30の端部側で該U字状の空間の端部を閉鎖するように上方向に屈曲されて立ち上げられ、地上側で支持手段12の止水シート端部支持具26で支持される。
【0021】
培地シート16は、前記止水シート14との間に間隙空間46を形成するように止水シートの上方に設置され、上面側に培地18を搭載する培地支持用シートである。図1図2図3に示すように、培地シート16は、支持手段12により地上に平面視長矩形状に支持されるとともに、短辺方向の中央部を下方に撓ませて該培地シートの両長辺部の間に撓み形成される間隙が下方に凹状に垂下した状態で設置される。同時に、培地シート16は、少なくとも垂下した一部が地中UG側すなわち地面GLよりも下方に埋設されるとともに、搭載する培地18の一部が地上側に突設されるように両長辺部が地上から突出する位置で支持手段12に支持されている。本実施形態では、培地シート16は、例えば、水や空気が透過可能であるが植物の根や土砂等の通過を遮断しうる網目を有する不織布又は織布製の可撓性シート、いわゆる防根シートまたは不透根シートからなり、一方に長い帯状(長矩形状)に形成されている。培地シート16は、略U字状に撓む止水シート14のU字間隙内に該止水シートを上方に平行移動したような位置に設置されるように略U字状に撓ませて垂下されるとともに、U字の下方突出側に止水シート14との間に断面略三日月状でシートの長手方向に沿って長い間隙空間46を形成して、両長辺部となる端部を地上側で上述の支持手段12のシート長辺支持具24で止水シート14と同時に支持される。本実施形態では、例えば、培地シート16は、U字の最下端部が地面GLから15cm程度の深さ位置に設定されるとともに、地面GLから上方に10cm程度を突出させている。よって、培地シート16と止水シート14との間の間隙空間46は、それらのシートのU字下端部どうしの間で約10cm程度の大きさの間隙となっている。培地シート16の上面に搭載される培地18も、上側分の約10cm程度が地面GLから突出して配置されることとなる。培地シート16の長手方向の両端部側、すなわち短辺端部16E側は、長辺アーム30の端部寄り位置で該U字状の培地搭載空間の端部を閉鎖するように上方向に屈曲されて立ち上げられ、地上側で支持手段12の培地シート端部支持具28で支持される。
【0022】
図2図5に示すように、上述のように止水シート14と該培地シート16との間の間隙空間46を形成しながら二重に配置された状態で、シートの両長辺部はシート長辺支持具24で支持される。各シートの端部側は、下方側に配置される止水シート14の短辺端部14Eは、枠部材20の端部に配置される第1短辺アーム32に固定された止水シート端部支持具26に支持されるとともに、上方側に配置される培地シート16の短辺端部14Eは、枠部材20のやや内側に配置される第2短辺アーム34に固定された培地シート端部支持具26に支持される。よって、止水シート14の立ち上がった短辺端部14Eと培地シート16の立ち上がった短辺端部16Eとの間には上面側を開口49して縦方向に連通する連通路48が形成される。この連通路48は、上述の地中UG側の止水シート14と培地シート16との間の間隙空間46を地上側空間RMとを連通する。例えば、連通路48を介して、必要に応じて加温空気や冷温空気等を吹き込んで、培地18の温度を管理することとしてもよい。また、連通路48の上面側の開口を蓋部材やシート等で開閉可能に設けることとしてもよい。また、連通路48は、上記構成に限らず、例えば、パイプの一端を地上側空間RMに露出するとともに、他端を止水シート16と培地シート16の間の間隙空間46に連通させる構造等、その他任意の連通構成でもよい。
【0023】
本実施形態では、培地18は、例えば、ヤシガラを粉砕して粒状物としたものが利用される。ヤシガラは、空気保持力及び排水性が高く水分含有度が低いとともに、土などと比較して最近や病気の発生が少なくいうえ、土に比べると軽量で、上記のような培地シート16でも確実かつ簡易に支持することができる。なお、培地18は、ヤシガラに限らず、例えば、スギやヒノキの樹皮を原料としたクリプトやピートモス、その他、栽培する植物に対応して任意のものでもよい。培地18は、上記のような支持手段12と培地シート16による支持構成により、上下中間位置より下側部分が地中UG側に埋設されるとともに、上側部分は地面GLよりも上に突出して配置される。なお、図示しないが、培地の上方又は培地の近傍には、培地18又は培地に植えた植物に水又は栄養分を含む水を供給する灌水装置等を設置してもよい。
【0024】
上述したこれらの支持手段12と止水シート14と培地シート16と培地18によって、一つの地中埋設培地ユニット50が構成される。図5に示すように、ビニルハウス等の温室内には、地中埋設培地ユニット50は、枠部材40の短辺方向に向けて、互いに所定の間隔をあけながら、複数個が並設される。例えば、2連棟型のビニルハウスVHの場合には、各棟に4つの地中埋設培地ユニット50が並設されると、全体では8個の地中埋設培地ユニット50が設置されることになる。単棟型でも複数の連棟型のビニルハウスに設けてもよいが、連棟型のように大型のビニルハウスに多数の地中埋設培地ユニット50を並設すると集約的に栽培管理できる。
【0025】
さらに、図1図4図5に示すように、止水シート14で受け止めた水を外部に排出する排水手段が設けられている。本実施形態では、排水手段52は、複数の地中埋設培地ユニット50のそれぞれの止水シート14からの排水を集水して排水するように構成されている。具体的には、排水手段52は、それぞれの止水シート14に穿孔して設けられた排水口部54と、該止水シート14より下位となる地中UGに埋設され該排水口部54に連通接続された排水管56と、該排水管56の排水流路に介設された開閉バルブ58と、複数の排水管56に同時に連通された共同排水管60と、を有する。排水口部54は、例えば、止水シート14の長手方向の端部側に設けられている。排水口部54は、例えば、円形の貫通孔を穿孔するとともに該貫通孔を補強するように装着される孔あきの継手部材が固定されている。排水管56は、例えば、一端が排水口部54に接続されており、下方に向けて縦管部が延設されるとともに、平面視で地中埋設ユニット50に重ならない位置までL字状に横方向に向けて横管部が延設され、さらに横管部の端部からL字状に曲折され下方に縦管部が延設されている。排水管56の中間には、開閉バルブ58が介設され、排水流路を開閉可能にしている。開閉バルブ58は、地上側から操作可能に設けられている。共同排水管60は、排水管56よりさらに下方位置で地中UGに埋設されている。共同排水管60の一端は、ビニルハウスVH外部の用水路CH等に引き出されて、集めた水を外部に排水する。なお、共同排水管60は、ビニルハウス等に設置されている暗渠や集水槽に排水するように設けてもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る植物栽培装置10の作用について説明する。上述のように支持手段12を介して培地シート16の一部が地中に埋設されるように下方に凹状に垂下して支持され、かつ該培地シート16の上面側に搭載された培地18の一部も地中に埋設されて設置されることから、比較的温度変化の少ない地中に培地18が設置されるので、培地18の温度変化が比較的少なく、温度管理を行える。特に、冬場の夜間等で気温が急激に下がる場合であっても、培地18の一部が地中に配置されるので、培地の温度が急激に低下するのを防止でき、良好に培地の温度を維持しながら植物を栽培できる。さらに、必要に応じて、連通路48を介して加温空気や冷温空気を地中側の止水シート14と培地シート16の間の間隙空間46に送風して、培地18の温度管理を補助することもできる。図示しない水供給装置等で培地18や植物に対して水を供給すると、培地18を通過した水は培地シート16を透水して止水シート14に受け止められる。止水シート14で受け止められた水は、排水手段52の排水口部54から排水管56を介して共同排水管60に集められ、ビニルハウス等の外部に排水される。このようにして、培地の温度管理や水分管理を簡単かつスムーズに行いながら植物を良好に栽培することができる。
【0027】
以上説明した本発明の植物栽培装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の植物栽培装置は、例えば、野菜、果物、花卉、その他の植物の栽培に好適に利用することができる。露地栽培でも利用できるが、特に、ビニルハウス等の温室栽培に好適である。
【符号の説明】
【0029】
10 植物栽培装置
12 支持手段
14 止水シート
16 培地シート
18 培地
24 シート長辺支持具
26 止水シート端部支持具
28 培地シート端部支持具
46 間隙空間
48 連通路
52 排水手段
54 排水口部
56 排水管
58 開閉バルブ
60 共同排水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7