(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】溶液中の物質の吸光度を測定する装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20221011BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01N21/33
G01N21/05
(21)【出願番号】P 2018544452
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2017054504
(87)【国際公開番号】W WO2017144719
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】エーリング,ハノ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】樋口 宗彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0188042(US,A1)
【文献】特開平7-12726(JP,A)
【文献】特表2015-518157(JP,A)
【文献】特開2015-137983(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/157282(JP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3420336(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/96059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の物質の吸光度を測定する装置であって、
少なくとも部分的に所定の波長スペクトルの光を通す、前記溶液を収容するために配置された、少なくとも1つの試料セル(3
0)と
、
少なくとも2つのUVLED(21、2
2)を含む、LED光源配置(20)であって、前記少なくとも2つのUVLED(21、2
2)がそれぞれ、前記所定の波長スペクトル以内で、他の1つ以上の前記UVLED(21、2
2)とは異なるUV波長の光出力を放射するように配置される、LED光源配置(20)とを備え、
前記少なくとも1つの試料セル(30)が、少なくとも2本の光路(305、305’)を有する、二重路長フローセルであって、前記各光路(305、305’)が、他の前記各光路(305、305’)とは路長が異なり、
前記装置は、前記少なくとも2本の光路(305、305’)に対応する少なくとも2つの検出器(41、42)を更に備え、前記検出器は前記UVLED(21、22)の発光サイクルの所定の期間中にのみ出力を検出するように構成されており、
前記装置は、前記少なくとも2つのUVLED(21、2
2)のそれぞれが、関連する光ファイバ束(60)を備えることを特徴とし、前記光ファイバ束(60)は、複数の光ファイバを含み、各光路(
305、305’)に対して1本の光ファイバであり、各光ファイバ束(60)は、各UVLED(21、2
2)から前記各光路(
305、305’)への複数の別々の光導波路を提供し、
前記LED光源配置(20)は、各UVLED(21、2
2)に対して少なくとも1つの光学フィルタ(50、51、5
2)を更に備え、前記光学フィルタは、前記UVLED(21、2
2)と前記光ファイバ束(60)との間に配置され、
或いは、前記LED光源配置(20)は、前記LED光源配置(20)の各UVLED(21、22)に対し、少なくとも2つの光学フィルタをさらに備え、前記光学フィルタが、各光ファイバの出力端と、対応する光路の入口との間に配置され、或いは、前記LED光源配置(20)は、前記LED光源配置(20)の各UVLED(21、22)に対し、少なくとも2つの光学フィルタをさらに備え、前記光学フィルタが、各光路の出口と、対応する検出器(41、42)との間に配置され、
内部に第1の光路及び第2の光路(305、305’)を形成するためにガラス棒(80)が提供されており、前記試料セル(30)に挿入されており、前記第1の光路(305)は、前記第2の光路(305’)の路長よりも短い路長を有し、
前記ガラス棒(80)は光ファイバとは異なる、装置。
【請求項2】
前記LED光源配置(20)からの前記光出力を制御するために配置された、コントローラ(70)をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記LED光源配置(20)の各UVLED(21、2
2)に対し、少なくとも2つの光学フィル
タを備え、前記光学フィル
タが、各光ファイバの出力端と、対応する光
路の入
口との間に配置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記LED光源配置(20)の各UVLED(21、2
2)に対し、少なくとも2つの光学フィル
タを備え、前記光学フィル
タが、各光
路の出
口と、対応する検出器
(41、42)との間に配置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記UVLED(21、2
2)の少なくとも1つが、交換可能に配置される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
対照検出器、または検出器配列を備え、前記光ファイバ束(60)が、前記
対照検出
器または前記検出器配列に光
路を提供する光ファイバを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、波長が400nm以下のUV光の吸収を示す、溶液中の物質の吸光度を測定する装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの物質は、その化学組成により、紫外線、または可視光を吸収する。物質による光の吸収は、このような物質の存在を検出し、濃度を測定する基礎として長年用いられてきた。物質の濃度は、ランベルト・ベールの法則を用いて決定することができる。
【0003】
A=Ebc
ここで、
Aは吸光度、
Eは、Lmol-1cm-1を単位とするモル吸光係数、
bは、cmで定義される試料の光路長、
cは、mol-1で表される溶液中の化合物の濃度である。
【0004】
UV領域は、1nm~400nmの領域の波長の光からなるとみなすことができ、180nm~300nmの波長の光は、「深UV」として知られる。
【0005】
深紫外線(UV)領域で吸収する物質を検出する分析機器のほとんどは、光源として水銀ランプ、重水素ランプ、またはキセノン閃光ランプを用いている。このような機器の一例がフローセルであり、1種以上のUV吸収物質を含む溶液が、UV光源(例えば、水銀ランプ)と、UV検出器(例えば、光電子増倍管、またはフォトダイオード)との間を通り、検出器に到達するUV光の強度の変化を、溶液中のUV吸収物質の濃度に関連付ける。
【0006】
タンパク質、核酸、およびペプチドの検出は、環境科学、生物科学、および化学を含む多くの分野において非常に重要である。タンパク質は、深UV領域において主に2つの吸収ピークを有し、1つはペプチド結合が吸収する、最大約190nmの非常に強い吸収バンドであり、もう1つは、芳香族アミノ酸(例えば、チロシン、トリプトファン、およびフェニルアラニン)による光の吸収に起因する、約280nmの弱いピークである。
【0007】
核酸は、260nm近辺でUV光を吸収し、核酸のサブユニット(プリン)のいくつかは、260nmをわずかに下回ったところに最大吸光度を有し、他のサブユニット(ピリミジン)は、260nmをわずかに上回ったところに最大吸光度を有する。ほとんど全てのタンパク質は、光吸収性の芳香族アミノ酸を含むため、約280nmに最大吸光度を有する。タンパク質濃度の検出および測定に用いられる分析系の検出器の光源は、歴史的に水銀線ランプである。水銀は、波長が280nmではなく、254nmの光を生成するので、水銀ランプが生成した254nmの光をより長い波長に変換するために蛍光コンバータが必要になり、280nm近辺の領域を遮断するためにバンドパスフィルタが使用される。水銀ランプは寿命が比較的短く、時間と共に不安定になる可能性があり、さらにこのようなランプの廃棄は、環境問題につながる可能性がある。重水素ランプ、およびキセノン閃光ランプなどの、紫外光の生成に用いられる他のランプは、不都合なことに高電圧を必要とし、複雑な電子機器が必要になり、時間と共に不安定になることが多い。現在使用されている紫外光源は、全て比較的大型であり、分析機器の小型化には適していない。さらに、ランプは全て、その動作に高電圧が必要とされるために大量の熱が発生する。
【0008】
最近、250nm~365nmの範囲で発光するAlGaN/GaN型の発光ダイオード(LED)が開発された。Sensor Electronic Technology社(米国、サウスカロライナ州コロンビア)は、特に、生物学的に汚染された水などの流体を照射して殺菌消毒するための、このようなUV光発光ダイオードの開発、および用途の先駆者である(例えば、米国特許出願公開第2005/0093485号明細書)。他の企業も、浄水システムにUV光発光ダイオードを使用している(例えば、Phillips Electronics社の国際公開第2005/031881号)。
【0009】
可視スペクトル域で発光する発光ダイオード(LED)が、間接光度検出(Johns C.ら、(2004)Electrophoresis,25,3145-3152)、およびキャピラリー電気泳動における物質の蛍光検出(Tsai C.ら、(2003)Electrophoresis,24,3083-3088)に使用されている。King等によるAnalyst(2002)127,1564-1567にもまた、無機陰イオンの間接光度検出に、379.515nmで発光するUV光発光ダイオードを使用することが報告されている。核酸の検出系における光源として深UV光発光ダイオードを使用することが、米国特許出願公開第2005/0133724号明細書に開示されている。しかしながら、LEDを用いた検出系が開示されてはいるが、提案された系がポリメラーゼ連鎖反応測定法での核酸量の測定に実際にうまく使用できたことを示す実験データはない。この系は、バンドパスフィルタも、ビームスプリッタおよび対照検出器も使用していないので、感度、直線性、およびダイナミックレンジに欠け、LEDは温度のわずかな変化にも極めて敏感であり、摂氏百分の一度程度の温度変化でもベースラインにドリフトが生じる。しかも、この系には、バンド幅を狭くすると共に可視スペクトル域の光を遮蔽する働きをするバンドパスフィルタが存在しない。試料の本来のバンド幅よりも狭い、好ましくは1対10比の狭いバンド幅で、応答の良好な直線性および広いダイナミックレンジが得られる(Practical Absorbance Spectrometry.Ed.A Knowles and C.Burgess,Chapman and Hall,New York)。
【0010】
特開2002-005826号公報には、オゾン濃度の測定系が開示されている。しかしながら、直線性およびダイナミックレンジを示す実験データは提供されていない。この系は、波長240~270nmに発光ピークを有する紫外光を発するため、ダイヤモンド半導体薄膜からなる半導体エミッタを使用している。UVピークの半値幅での発光スペクトルは、オゾンの吸収スペクトル(発光最大約254nm)のピークの半値幅より幾分狭い。しかしながら、オゾン濃度の測定には十分であったとしても、バンド幅を、例えばオゾン吸収ピークの半値幅の十分の一に下げることができるバンドパスフィルタが存在しないため、検出器の直線性およびダイナミックレンジは大きく低下する(Practical Absorbance Spectrometry.Ed.A Knowles and C.Burgess,Chapman and Hall,New York)。この系は対照光検出器も欠いており、放射光の強度の測定は行われない。これは、温度変化による発光強度の変化の補正ができないことを意味する。
【0011】
国際公開第2007/062800号(参照することによって本明細書に組み込まれる)では、液体試料中の物質の濃度分析用の光源としての、UV LEDの使用について説明されているが、試料に異なる波長を当てて、異なる波長におけるその吸収特性によって、物質をより正確、または迅速に規定するために、光のスペクトルは広いほうが望ましいことが分かっている。しかしながら、既知のLEDは、光の波長の出力範囲が、ごく限られている。
【0012】
国際公開第2013/178770号では、前述の問題を克服するために、波長がUVスペクトル以内の複数のLEDを用いて、溶液中の物質の吸光度を測定するシステム、および方法が開示されている。しかしながら、特に費用対効果に関して、およびより小型の装置を作成することに関して、技術をさらに発展させることが有利であろう。本発明は、このような問題に対処し、この分野で既知の方法、および装置をさらに改善するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【0014】
用語「物質」が、本明細書において使用されるとき、任意の化学物質を指すことを理解できるであろう。特に、有機化合物および無機化合物が含まれる。有機化合物の例として、これらに限られるわけではないが、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、タンパク質核酸、薬物候補、および生体異物が挙げられる。無機化合物の例として、金属塩が挙げられる(硫酸第二鉄、塩化銅、硝酸ニッケルなど)。
【0015】
本発明の目的は、上述の問題を排除するか、または少なくとも最小限に抑えることである。これは、添付の独立項による装置および方法によって達成される。
【0016】
本発明により、各LEDから光路への光の伝送は、これまでに既知のよりも少ない部品でより小規模にすることができ、その結果、より効率的で費用対効果の高い装置になる。複数の光ファイバを含む、関連する光ファイバ束を配置することによって、各LEDからの光出力は、これまで必要とされてきたビームスプリッタや、別のファイバ束などの部品を追加する必要なく、この束によって受けることができ、この束は、各LEDから1つ以上のフローセルの各光路までの光導波路を提供する。
【0017】
本発明の態様によれば、光源配置からの光出力を制御するために、コントローラが設けられる。コントローラは、1つのLEDを選択して光出力を与えることができ、その結果、1つのLEDのみからの光が光路に到達するが、その代わりに、それぞれが異なる周波数で光出力を放射するようにLEDをさらに制御することもでき、その結果、全てのLEDからの光が各光路に到達するが、通常は同時に到達することはない。
【0018】
本発明に吸光度が異なる物質が使用されてもよいように、路長が異なる光路が、同じフローセルに配置されてもよい。あるいは、光路は、異なるフローセルに配置されて、それぞれが装置の光ファイバに接続されてもよい。
【0019】
LEDからの光出力は、1つのみの波長、または非常に狭い波長バンドの光のみが光路に到達できるように、フィルタリングすることができる。フィルタは、LEDと光ファイバとの間に配置することができるが、その代わりに、光ファイバと光路との間、または光路と検出器との間に配置することもできる。後者の場合、各光路、および各LEDに対して1つの光学フィルタが必要になり、対応するLEDが作動しているときに特定のフィルタを除去および挿入できるように、例えば、フィルタホイール、または類似の構造に配置される。別の可能性は、2つ以上のLEDに対応する波長の光を可能にするフィルタを設けることであり、その結果、各光路の前後に必要なフィルタは1つのみとなる。
【0020】
本発明の一実施形態では、使用者が本発明で使用する光の波長を選択できるように、LED、ならびに任意選択で、LEDと結合して配置された光学フィルタもまた、交換可能であってもよい。
【0021】
本発明のさらなる利点および利益は、以下の詳細な説明を考慮すると容易に明らかとなるであろう。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好ましい実施形態の概略図を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による装置の一実施形態の概略図である。装置10は、それぞれが紫外域のスペクトル(UV LED)の光を発する発光ダイオード21、22、23の、LED光源配置20と、物質を含む溶液が流れFを通過できる入口313、323、および出口314、324をそれぞれ有する、2つのフローセル31、32とを備える。なお、いくつかの用途において光は、可視光などUVスペクトル外の波長を有してもよく、本明細書でUVスペクトル以内の光に関して言及されていることは、他のLEDを使用するこのような用途にもあてはまる。
【0025】
フローセル31、32は、光入口311、321と、光出口312、322とを有する、光路315、325をさらに備え、LED光源配置20からの光がこれを通過でき、光検出器41、42によって受けられるが、光検出器41、42は、UV感応性光電子増倍管であってもよく、あるいはUV感応性フォトダイオードであってもよい。装置は、対象となるUV波長に対して吸光係数を低く維持しながら、望ましくない波長を排除して他の波長を通す、バンドパスフィルタ50をさらに備える。フィルタのバンド幅は、良好な直線性、および大きいダイナミックレンジを与えるために半値全幅であり、好ましくは10nm未満である。
【0026】
この好ましい実施形態は、LED光源配置20に3つのLED21、22、23を備え、それぞれが他のLEDの波長とは異なる、スペクトル以内の特定の波長の光を発するように配置され、かつそれぞれが、対応する光学フィルタ51、52、53を伴って配置され、他の光がフィルタを貫通するのを防止しながら、その特定の波長を通すことが可能なように構成される。光源配置20のLED21、22、23のそれぞれに隣接して光ファイバ束60があり、フィルタ51、52、53を通過した光を受けるために並べて配置され、各LEDから各光路315、325まで光を誘導する、複数の光ファイバを有する。光ファイバ束60は、各LED21、22、23からの1本の光ファイバが、各光路315、325に接続されるように配置され、その結果、本実施形態では、3つのLED21、22、23はそれぞれ、2本の光ファイバ60に光を放射する。他の実施形態では、LEDの数は、光路の数によって異なっていてもよく、この好ましい実施形態に関して本明細書で説明することは、このような構成の相違に容易に適合できることを理解されたい。あるいは、光学フィルタ50は、光入口311、321に配置されてもよい。
【0027】
LED光源配置20にあるフィルタ51、52、53は、所望に応じてフィルタを変更できるように、ホイールまたは類似の構造に配置されてもよい。あるいは、単一のフィルタがLED21、22、23の全てからの光を通すことが可能なように、複数の波長バンドを通すことが可能なフィルタが使用されてもよい。
【0028】
フローセル31、32は、光入口311、321を形成する窓を有し、これは、サファイア、石英、または合成溶融シリカなどのUV透過材で作られ、既知の路長を有する。ポリマーなど、他の材料を使用してもよい。溶液は、入口313、323、および出口314、324を通って矢印Fの方向に、フローセル31および32を通過し、タンパク質または核酸などの、300nm以下の光を吸収する物質を含み得る。LED光源配置20からのUV光は、フローセル31、32内の溶液Sを照射するのに用いられ、フローセル31、32に入った光は、点線で示されているように、UV透過窓311、321を通る。溶液を通過して、窓312、322から出た光は、その後、光検出器41、42によって検出される。当技術分野ではよく知られているように、フローセル31、32を通る光路から伝搬した光は、フローセル内の溶液中の物質の吸光度を決定するために、検出され定量化される。
【0029】
図2で開示して後述する実施形態と同様に、光入口311、321、および/または光出口314、324は、フローセル31、32に光が出入りでき、光路の路長を決定できるように、光ファイバ、ガラス棒などを含んでもよい。
【0030】
LED光源配置20にはコントローラ70が接続されて、フローセル31、32内の溶液を照射するのに、LED21、22、23のうちのどれを発光させるかを選択することによって、装置の動作を制御する。この選択は、LED21のみをオンに切り替えるか、または他のLED22、23を遮断して、これらの光がフローセル31、32に達するのを防止することによって行うことができる。あるいは、LED21、22、23は、同時に、ただし異なる周波数で発光することが可能であってもよい。コントローラ70もまた、検出器41、42に接続され、溶液に吸収されずに光路315、325を通過した光の定量化に対応する信号を受信することができる。このような信号は、コントローラ70によって分析され記憶されてもよく、あるいはさらに分析、記憶、および表示するために、別のユニット(図示せず)に送信されてもよい。コントローラは、フローセル31、32内の溶液の流れを制御するようにさらに構成されてもよく、あるいはその制御は、別のユニットによって行われてもよい。
【0031】
溶液の吸光度が測定されると、溶液中の物質の濃度は、物質のモル吸光係数Eが既知であれば、ランベルト・ベールの法則を用いて決定することができる。これは、手計算で、あるいはコンピュータ、または設けられたコントローラ70を用いて行うことができる。あるいは、物質の濃度は、280nmなどの所与の波長で、対象となる物質に対して事前に作成しておいた用量反応曲線を用いて決定することができ、または異なる波長で生成された複数の反応曲線を使用してもよい。このような決定は、コントローラ70へのデータリンクを介して、コンピュータを用いて行われる。いくつかの用途、例えば、クロマトグラフィカラムでのタンパク質の分離中は、対象となるのは吸光度の変化であり、したがって物質の濃度を決定する必要はない。この場合は、モル吸光係数(E)が知られていなくてもよい。2つの周波数の光を用いることによって、吸光度が閾値に達したときに、この吸光度の変化をより厳密に監視することもまた可能になり、2番目に少なく吸収された光に切り替えることによって、吸光度の変化率により良好な分解能を与えることができ、その結果、濃度値の最大値、または最小値に近づけることができる。
【0032】
この実施形態では、フローセル31、32を通る流れFは、並列、または直列にすることができるが、いずれの場合も流れは、溶液が変化したときの物質の濃度として、より広範囲の吸光度を提供するために、異なるUV周波数を用いて連続して、または同期して監視される。修正例では、2つのフローセルは、光路寸法が異なっていてもよく、これによって装置の範囲がさらに強化される。例えば、第1の周波数で物質の吸光度が低い場合は長い光路を用いることができ、第2の周波数で同じ物質の吸光度が高い場合は短い路長を用いることができる。
【0033】
図2は、路長が異なる2本の光路305、305’を有する二重フローセル30を用いる、代替実施形態を開示する。LED光源配置20は、LED21、22の2つのみを有し、それぞれが発する光は、光学フィルタ51、52を通過して、フローセル30に到達するように、光ファイバ60を通して伝送される。異なる路長にするためにガラス棒80が設けられ、フローセル30に挿入されて、第1の光路305、および第2の光路305’を作成し、第1の光路305は、第2の光路305’よりも路長がかなり短い。他の点においては、
図2の実施形態は先に開示した好ましい実施形態に対応し、これら2つの実施形態の特徴は、自在に組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0034】
本発明による装置は、既知の装置よりも費用対効果が高くなるように作成されてもよく、他の既知の装置よりも使用する部品がより少なく、かつ必要とするスペースがより小さい。
【0035】
LED光源配置20のLED、およびその対応する光学フィルタ50は、LEDを異なる波長の光出力に置き換えられるように、交換可能であってもよい。これには、本装置によって吸光度を測定できる物質の数が増えるという利点がある。
【0036】
動作時に、各実施形態は、試料が照射される瞬間の制御については、コントローラ70に依存する。各UV LEDが試料セルに光を当てる時点を変えるのは単純な作業であり、使用される装置は頑丈かつ安価なので、示されている実施形態が提供する液体装置は、適合性があり、信頼性が高く、かつ安価な、吸光度を測定することによって液体中の物質の濃度を決定する装置である。最大400nmで発光するUV LEDは、タンパク質、ペプチド、核酸、細胞抽出物、細胞溶解物、細胞培養物、またはこれらを組み合わせた溶液の濃度の測定に使用されることが好ましいが、本発明は、他の光の波長、特に最大700nmの波長にも適用性がある。2つ、または3つのLEDが示されているが、3つよりも多いLEDが使用されてもよく、4個、あるいは5個または6個以上のLEDを使用することができ、追加のLEDは、可視光を発することができる。この実施形態では、バンドパスフィルタが、試料セル30、31、32と、そのそれぞれのLED光源との間に配置されて示されているが、示されている装置は、フィルタが試料セルの後ろで、かつ検出器41、42の前に配置された場合も同等の有効性をもって機能する。この場合はフィルタを変更して、正しいLEDに正しいフィルタが使用されるようにする必要がある。
【0037】
図示されているLEDは、概略的に表されており、その形態は、図示とは異なっている場合がある。隣接する半導体領域とは異なる周波数の光を生成する、いわゆる複数光源LEDを使用してもよく、この場合、示されている装置の規模はより小さくなるが、その動作原理は同じである。
【0038】
全ての実施形態の1つの動作モードは、第1の波長で低濃度の物質を探索することであり、その物質は低濃度であっても、第1の周波数のその光を容易に吸収し、その後、濃度が上昇するにつれて、容易に吸収されない第2の波長に切り替えることによって、動作および感度を大幅に拡大する。別の動作モードでは、LEDを所定のサイクルで給電することができ、サイクルに従って各LEDからの光強度が記録されるように、検出器に対する出力が整合サイクルに記録される。これにより、各LEDから生じる出力は、サイクルに応じた、メモリ内の値の組み合わせの違いによって区別されるので、これを決定することができる。異なるLEDを区別するサイクルは、時間領域、または周波数領域で実行することができる。サイクルは、数分の一秒(数ヘルツ)など非常に短時間で実行できるので、LEDは、同時に発光しているように見える。検出器の補助電子回路を配置して、例えば、切り替えサイクルの所定の期間中にのみ出力を検出することによって、誤信号を抑制、または排除することができ、これによって、各LEDの発光開始時、または発光終了時に発生し得る、信号からのノイズを除去することができる。
【0039】
本発明による装置および方法は、検出器からの信号と比較する基準信号を出すために、LEDから光の一部を受けるように配置された、対照検出器をさらに備える。光は、光ファイバによって対照検出器に導かれるか、または他の適切な方法で導かれてもよく、光を分割するためにビームスプリッタなどの別の部品が使用されてもよい。特に、光をフローセルに伝搬するために、例えば、異なる光源から発した異なる波長の光に対して異なる光導波路を用いるなど、複数の光導波路が用いられる場合に、各光源からの光を受けるために、単一の対照検出器、または検出器配列を使用できることが想定され、光導波路は、検出器で、または検出器配列で1つになる。実際には、その使用時に各光源に基準値を提供するために、複数の光ファイバのうちの1本を、各光源から、使用される各フローセルまで経路指定し、別の光ファイバを、対照検出器、または複数のファイバが使用されている検出器配列まで経路指定することが可能である。重要なことは、強度の絶対値よりも、対照検出器での強度と、フローセル検出器での強度との比較によって測定される光強度の相違であり、したがって参照経路で用いられる光ファイバの長さはさほど重要ではないが、適正に実施するためには、フローセルの光路、および対照検出器の光路に用いられる光導波路用のファイバの長さは、等しいことが好ましい。
【0040】
前述の例は、本発明の特定の態様を示し、いかなる点においてもその範囲を限定することは意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。前述した本発明の教示の利益を受ける当業者であれば、これに多くの修正を施すことができる。このような修正は、添付の特許請求の範囲に記載されている通りに、本発明の範囲に包含されるものと解釈されるべきである。本開示の範囲を定義するために、1つの実施形態の任意の特徴は、1つ以上の他の実施形態の1つ以上の別の特徴と組み合わせられることが意図されている。
【符号の説明】
【0041】
10 装置
20 LED光源配置
21、22、23 発光ダイオード、LED
30、31、32 フローセル、試料セル
41、42 光検出器
50 光学フィルタ、バンドパスフィルタ
51、52、53 光学フィルタ
60 光ファイバ束
70 コントローラ
80 ガラス棒
305 第1の光路
305’ 第2の光路
311 光入口、UV透過窓
312 光出口、UV透過窓
313 入口
314 出口
315 光路
321 光入口、UV透過窓
322 光出口、UV透過窓
323 入口
324 出口
325 光路
F 流れ
S 溶液