(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ハウスに設置するシステムおよびその利用
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A01G9/24 F
(21)【出願番号】P 2021113265
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595102178
【氏名又は名称】沖縄県
(73)【特許権者】
【識別番号】506164394
【氏名又は名称】沖阪産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300054033
【氏名又は名称】株式会社ハヤト・インフォメーション
(73)【特許権者】
【識別番号】517252130
【氏名又は名称】株式会社ファイトペトラム
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】玉城 麿
(72)【発明者】
【氏名】宮城 健次
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史紘
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-79234(JP,U)
【文献】実開昭58-65854(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1490496(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
E06B 9/00 - 9/92
H02P 7/00 - 7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウスに設置するシステムであって、
前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、
前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、
前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、
前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、
前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、
前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、
前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、を制御し、
前記第1の動作と前記第2の動作とにおいて、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、さらに、
前記第1の直流モータの電圧を計測する第1の電圧計を備える、システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、さらに、
前記第2の直流モータの電圧を計測する第2の電圧計を備える、システム。
【請求項4】
ハウスであって、
前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、
前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、
前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、
前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、
前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、
前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、
前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、を制御し、
前記第1の動作と前記第2の動作とにおいて、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する、ハウス。
【請求項5】
ハウスに設置するシステムの制御方法であって、
前記システムは、前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、を備え、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、
前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、において、
前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハウスに設置するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスの上部や側部に設けられたシートを巻き上げ巻き出しする機構として、特許文献1に示すような手動で行う機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、手動でシートの巻き上げ巻き出しを行うことは煩雑である。このため、モータによりシートの巻き上げ巻き出しを行う方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、ビニールハウスのシートの巻き上げ巻き出しをモータによって行う場合、異物等がシートに挟まった場合等において、モータのトルクが必要以上に増大することによってビニールハウスが損傷する虞があることを発明者らは見出した。このため、ビニールハウスが損傷することを抑制する技術の開発が望まれる。このような課題は、ビニールハウスに限った課題ではなく、ガラスハウスやテント等、シート状のカバーが巻き出されるハウス一般に共通する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することができる。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、ハウスに設置するシステムが提供される。このシステムは、前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、を制御し、前記第1の動作と前記第2の動作とにおいて、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する。
【0008】
この形態のシステムによれば、各モータの電流が予め定められた電流値に達した場合、制御部は各モータについて定電流制御を行うことにより、各モータが一定のトルク以上になることを抑制できる。このため、異物等がカバーやベルトに挟まった場合に各モータの回転が自動で止まる結果として、各モータのトルクが必要以上に増大することによって引き起こされるハウスの損傷を抑制できる。
【0009】
(2)上記形態のシステムにおいて、さらに、前記第1の直流モータの電圧を計測する第1の電圧計を備えてもよい。
【0010】
この形態のシステムによれば、第1の直流モータについて定電流制御がされた状態における第1の直流モータの電圧を測定できる。この結果として、第1の直流モータへのトルク負荷を推定できることにより、第1の直流モータが回転させる第1の棒状部材に固定されているカバーおよびベルトへ張力を推定することができる。
【0011】
(3)上記形態のシステムにおいて、さらに、前記第2の直流モータの電圧を計測する第2の電圧計を備えてもよい。
【0012】
この形態のシステムによれば、第2の直流モータについて定電流制御がされた状態における第2の直流モータの電圧を測定できる。この結果として、第2の直流モータへのトルク負荷を推定できることにより、第2の直流モータが回転させる第2の棒状部材に固定されているベルトの張力を推定することができる。
【0013】
(4)本開示の他の形態によれば、ハウスが提供される。このハウスは、前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、を制御し、前記第1の動作と前記第2の動作とにおいて、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する。
【0014】
(5)本開示の他の形態によれば、ハウスに設置するシステムの制御方法が提供される。このハウスは、前記ハウスの少なくとも一部を覆うシート状のカバーと、前記カバーの一端に固定された第1の棒状部材と、前記第1の棒状部材を回転させる第1の直流モータと、前記第1の棒状部材に一端が固定されたベルトと、前記ベルトの他端に固定された第2の棒状部材と、前記第2の棒状部材を回転させる第2の直流モータと、を備え、この制御方法は、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材から前記カバーと前記ベルトとを巻き出しつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材に前記ベルトを巻き取る第1の動作と、前記第1の棒状部材を回転させることによって前記第1の棒状部材に前記カバーと前記ベルトとを巻き取りつつ、前記第2の棒状部材を回転させることによって前記第2の棒状部材から前記ベルトを巻き出す第2の動作と、において、前記第1の直流モータと前記第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が前記電流値に達した場合は定電流制御する。
【0015】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ハウスを備える農場等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態としてのハウスに設置するシステムの概略構成を示す正面図。
【
図3】カバーを巻き取っている状態の概略構成を示す正面図。
【
図4】カバーの巻き取りが完了した状態の概略構成を示す正面図。
【
図5】カバーの巻き取りが完了した状態の概略構成を示す側面図。
【
図6】カバーの巻き取り完了後にベルトを固定した状態の概略構成を示す正面図。
【
図7】第1の直流モータと第2の直流モータとの制御の流れを示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態としてのハウスに設置するシステムの概略構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態
図1は、本開示の一実施形態としてのハウスHに設置するシステム100の概略構成を示す正面図である。
図2は、システム100の概略構成を示す側面図である。ハウスHとしては、特に限定されないが、例えば、ビニールハウスやガラスハウス、テント等の建屋が挙げられる。ハウスHの用途は、特に限定されないが、例えば、施設園芸等の農業用、魚や貝等の養殖用、鶏舎や堆肥舎等の畜産用、遊技場等の屋外イベント用等が挙げられる。また、ハウスHの形状としては、特に限定されないが、
図1に示すようなアーチ状であってもよく、ドーム状や山型状等の任意の形状であってもよい。本実施形態において、システム100は、ハウスHとしての園芸用のビニールハウスに取り付けられている。
【0018】
本実施形態のシステム100は、カバー10と、第1の棒状部材20と、第1の直流モータ30と、ベルト40と、第2の棒状部材50と、第2の直流モータ60と、制御部70とを備える。
図1に示すように、本実施形態では、ハウスHの正面視において略左右対称に一対のシステム100が設けられている。
【0019】
カバー10は、ハウスHの少なくとも一部を覆うシート状の部材である。本実施形態では、カバー10は、ハウスHの上部を覆うが、これに限られず、例えば、ハウスHの側部を覆ってもよい。本実施形態では、カバー10として遮光フィルムを用いるが、これに限定されない。カバー10は、例えば、ビニールハウスを構成するビニールであってもよく、ネット等であってもよい。カバー10の一端は、第1の棒状部材20と固定されている。本実施形態において、カバー10の一端は、鉛直方向下方端に相当する。本実施形態において、カバー10の他端、すなわちカバー10の鉛直方向上方端は、ハウスHに固定されている。つまり、本実施形態では、カバー10の他端はハウスHの最上部に位置する大棟に固定されている。しかし、このような構成に限られず、カバー10の他端は、対をなすシステム100を構成するカバー10の他端と接続されていてもよい。
図1および
図2に示す状態において、カバー10は、ハウスHの上部を覆っている。
【0020】
第1の棒状部材20は、カバー10の一端に固定された棒状の部材である。本実施形態において、第1の棒状部材20は、
図1の紙面に垂直な方向、すなわちハウスHの奥行方向に沿って伸びる部材である。本実施形態では、第1の棒状部材20として丸パイプを用いるが、丸パイプに限らず、角パイプや丸棒等の任意の棒状部材を用いてもよい。
【0021】
第1の直流モータ30は、第1の棒状部材20を回転させる直流モータである。本実施形態において、第1の直流モータ30は、正回転および逆回転が可能である。
【0022】
ベルト40は、第1の棒状部材20に一端が固定されている。本実施形態において、ベルト40の一端は、鉛直方向上方端に相当し、ベルト40の他端は、鉛直方向下方端に相当する。本実施形態において、ベルト40は、第1の棒状部材20の鉛直方向下側に設けられている。また、本実施形態では、
図2に示すように、第1の棒状部材20の長手方向において一定の間隔をあけて、複数のベルト40が第1の棒状部材20に固定されている。本実施形態において、ベルト40は、帯状の部材によって構成されているが、ワイヤーやロープ等によって構成されていてもよく、一部または全部が弾力のあるゴム等によって構成されていてもよい。
【0023】
第2の棒状部材50は、ベルト40の他端に固定された棒状の部材である。本実施形態において、第2の棒状部材50は、
図1の紙面に垂直な方向、すなわちハウスHの奥行方向に沿って伸びる部材である。第2の棒状部材50は、第1の棒状部材20に対して略平行に延設されている。本実施形態では、第2の棒状部材50として丸パイプを用いるが、丸パイプに限らず、角パイプや丸棒等の任意の棒状部材を用いてもよい。
【0024】
第2の直流モータ60は、第2の棒状部材50を回転させる直流モータである。本実施形態において、第2の直流モータ60は、正回転および逆回転が可能である。
【0025】
制御部70は、少なくとも、第1の直流モータ30と第2の直流モータ60とをそれぞれ制御する。制御部70は、図示しない記憶部に記憶されるプログラムを読み込んで、そのプログラムに含まれる命令を実行することにより、システム100の動作を制御する。
【0026】
制御部70は、第1の動作と第2の動作との制御を行う。ここで、第1の動作とは、第1の棒状部材20を回転させることによって第1の棒状部材20からカバー10とベルト40とを巻き出しつつ、第2の棒状部材50を回転させることによって第2の棒状部材50にベルト40を巻き取る動作を示す。また、第2の動作とは、第1の棒状部材20を回転させることによって第1の棒状部材20にカバー10とベルト40とを巻き取りつつ、第2の棒状部材50を回転させることによって第2の棒状部材50からベルト40を巻き出す動作を示す。制御部70は、後述するフローチャートに従って、第1の直流モータ30と第2の直流モータ60とを、それぞれ独立して制御する。
【0027】
本実施形態において、第1の直流モータ30の回転方向は、第1の動作と第2の動作とにおいて互いに反対となる。同様に、第2の直流モータ60の回転方向は、第1の動作と第2の動作とにおいて互いに反対となる。第1の動作と第2の動作とにおいて、第1の直流モータ30および第2の直流モータ60の回転方向以外の制御は、互いに同様である。
【0028】
第2の動作を実行する旨の指示、すなわちカバー10を巻き取る旨の指示を制御部70が受けた場合、制御部70は、第1の直流モータ30を駆動させることによって、第1の棒状部材20を回転させる。このようにすることにより、制御部70は、第1の棒状部材20にカバー10とベルト40とを巻き取る。また、第1の直流モータ30の駆動と並行して、制御部70は、第2の直流モータ60を駆動させることによって、第2の棒状部材50を回転させる。このようにすることにより、制御部70は、第2の棒状部材50からベルト40を巻き出す。カバー10を巻き取る旨の指示を制御部70が受ける場合としては、特に限定されないが、例えば、システム100の使用者が図示しないスイッチを押下する場合等が挙げられる。
【0029】
図3は、カバー10を巻き取っている状態の概略構成を示す正面図である。すなわち、
図3では、第2の動作の実行途中の状態を示している。制御部70が第2の動作を実行させることによって、
図1に示すようなカバー10がハウスHの上部を覆った状態から、
図3に示すように、第1の棒状部材20がハウスHの上部に沿ってカバー10の他端側に向かって移動する。
【0030】
図4は、カバー10の巻き取りが完了した状態の概略構成を示す正面図である。
図5は、カバーの巻き取りが完了した状態の概略構成を示す側面図である。すなわち、
図4および
図5では、第2の動作が完了した状態を示している。
図3に示す状態から、制御部70がさらに第1の棒状部材20および第2の棒状部材50を回転させることによって、
図4に示すように第1の棒状部材20がハウスHの上端に達し、第1の棒状部材20にカバー10が完全に巻き取られる。
【0031】
図6は、カバー10の巻き取り完了後にベルト40を固定した状態の概略構成を示す正面図である。制御部70は、
図4に示す状態から、第2の棒状部材50のみを逆回転させることによって、
図6に示すようにベルト40を張った状態に固定してもよい。このようにすることにより、風が吹いた場合等においてもベルト40が撓むことを抑制できる。
【0032】
また、第1の動作を実行する旨の指示、すなわちカバー10を巻き出す旨の指示を制御部70が受けた場合、制御部70は、第1の直流モータ30を駆動させることによって、第2の動作とは反対の回転方向となるように第1の棒状部材20を回転させる。このようにすることにより、制御部70は、第1の棒状部材20からカバー10とベルト40とを巻き出す。また、第1の直流モータ30の駆動と並行して、制御部70は、第2の直流モータ60を駆動させることによって、第2の動作とは反対の回転方向となるように第2の棒状部材50を回転させる。このようにすることにより、制御部70は、第2の棒状部材50にベルト40を巻き取る。カバー10を巻き出す旨の指示を制御部70が受ける場合としては、特に限定されないが、例えば、システム100の使用者が図示しないスイッチを押下する場合等が挙げられる。なお、第1の動作の実行前の状態は
図4に示す状態に相当し、第1の動作の実行途中の状態は
図3に示す状態に相当し、第1の動作の完了後の状態は
図1に示す状態に相当する。
【0033】
図7は、第1の直流モータ30と第2の直流モータ60との制御の流れを示すフローチャートを示す図である。以下の説明では、第1の直流モータ30または第2の直流モータ60を、単に「モータ」とも呼ぶ。
【0034】
制御部70は、第1の直流モータ30および第2の直流モータ60を、それぞれ以下のように制御する。つまり、制御部70は、モータを流れる電流値Iが予め定められた電流値It未満の場合(工程S110:YES)、そのモータについて定電圧制御を行う(工程S120)。一方、制御部70は、モータを流れる電流値Iが予め定められた電流値Itに達した場合(工程S110:NO)、制御部70は、そのモータについて定電流制御を行う(工程S130)。本実施形態では、予め定められた電流値Itをリミットとするリミッターが、各モータに設けられている。この電流値Itの大きさは、ハウスHの大きさやカバー10の材質等に応じて定めることができ、予め実験を行うことによって定められてもよい。
【0035】
本実施形態において、制御部70は、このフローチャートに沿った制御を予め定められた期間が経過するまで繰り返し行い、予め定められた期間が経過すると、この制御を停止する。なお、制御部70は、第2の動作を停止する旨の指示、すなわちカバー10の巻き取りを停止する旨の指示を受けた場合や、第1の動作を停止する旨の指示、すなわちカバー10の巻き出しを停止する旨の指示を受けた場合に、この制御を停止してもよい。カバー10の巻き取りや巻き出しを停止する旨の指示を制御部70が受ける場合としては、特に限定されないが、例えば、システム100の使用者が図示しないスイッチを押下する場合等が挙げられる。
【0036】
一般に、直流モータは、トルク負荷が上昇するほど電流量が増加する。本実施形態において、制御部70は、モータを流れる電流値Iが予め定められた電流値It未満の場合(工程S110:YES)、そのモータについて定電圧制御を行う(工程S120)。このため、制御部70は、トルク負荷がかかっていない状態やトルク負荷が小さい状態において、定電圧制御によって一定の電圧にてモータを駆動する。また、本実施形態において、制御部70は、モータに流れる電流値Iが予め定められた電流値Itに達した場合(工程S110:NO)、そのモータについて定電流制御を行う(工程S130)。このため、制御部70は、トルク負荷がかかって電流値Iが電流値Itに達すると、電流値Itが維持されるようにモータにかかる電圧を制御する。その後、モータにかかる負荷が減少してモータを流れる電流値Iが予め定められた電流値It未満になった場合(工程S110:YES)、制御部70は、そのモータについて定電圧制御を行う(工程S120)。このように、制御部70は、上記フローチャートに沿った制御を繰り返し行うことにより、モータを略一定のトルクで駆動することができる。
【0037】
工程S130において制御部70が定電流制御を行うことにより、そのモータに流れる電流量が過度に増加することを抑制できるので、モータが焼き付くことを抑制できる。また、工程S130において制御部70が定電流制御を行うことにより、そのモータのトルクが一定の値以上になることを抑制できる。このため、異物等がカバー10やベルト40に挟まった場合に、電圧が大きく低下してモータの回転が自動で止まる。この結果として、モータのトルクが必要以上に増加することによって引き起こされるハウスHの損傷を抑制できる。したがって、モータを流れる電流値Iが予め定められた電流値Itに達した場合に定電流制御を行うことによって、システム100の故障やハウスHの損傷を抑制できる。また、本実施形態によれば、異物等がカバー10やベルト40に挟まった場合にモータの回転が停止するので、異物等を検知するための障害物センサーの設置を省略できる。
【0038】
また、本実施形態によれば、第1の直流モータ30と第2の直流モータ60とを互いに独立に制御するので、モータの制御が複雑化することを抑制できる。また、本実施形態によれば、複雑な制御を必要とせず、かつ、トルクモータ等の特殊なモータを用いずに、カバー10の巻き取り巻き出しを制御可能である。また、本実施形態によれば、モータを略一定のトルクで駆動させることができるので、トルク負荷が過度に増大することを抑制できる結果、トルク負荷の過度な増大を検知するための過負荷センサーの設置を省略できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、カバー10の巻き取りの際、すなわち第2の動作を実行する際に、カバー10やベルト40に一定の張力をかけた状態でカバー10やベルト40を巻き取ることができる。また、本実施形態によれば、ベルト40の巻き取りの際、すなわち第1の動作を実行する際に、ベルト40に一定の張力をかけた状態でベルト40を巻き取ることができる。したがって、カバー10やベルト40の張力を測定するための張力センサーの設置を省略できる。
【0040】
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態としてのハウスに設置するシステム100Aの概略構成を示す正面図である。第2実施形態のシステム100Aは、第1実施形態のシステム100と比較して、さらに、第1の電圧計32と第2の電圧計62とを備える点で異なるが、それ以外の構成は同じであるため、その詳細な説明を省略する。第1の電圧計32は、第1の直流モータ30の電圧を測定する。第2の電圧計62は、第2の直流モータ60の電圧を測定する。
【0041】
第2実施形態によれば、第1の電圧計32を備えるため、第1の直流モータ30について定電流制御がされた状態における第1の直流モータ30の電圧が測定できる。この結果として、第1の直流モータ30へのトルク負荷が推定できることにより、第1の直流モータ30が回転させる第1の棒状部材20に固定されているカバー10およびベルト40の張力を推定することができる。このため、制御部70は、以下のような制御が可能となる。つまり、第1の直流モータ30の電圧が予め定められた電圧よりも低くなった場合、制御部70は第1の直流モータ30の駆動を停止させることができる。このようにすることにより、カバー10およびベルト40へ過度な張力がかかる前に、第1の直流モータ30を停止できる。また、第1の直流モータ30へのトルク負荷が推定できることにより、カバー10およびベルト40の巻き出しや巻き取りが完了したことを推定できる。
【0042】
また、第2実施形態によれば、第2の電圧計62を備えるため、第2の直流モータ60について定電流制御がされた状態における第2の直流モータ60の電圧が測定できる。この結果として、第2の直流モータ60へのトルク負荷が推定できることにより、第2の直流モータ60が回転させる第1の棒状部材20に固定されているベルト40の張力を推定することができる。つまり、第2の直流モータ60の電圧が予め定められた電圧よりも低くなった場合、制御部70は第2の直流モータ60の駆動を停止させることができる。このようにすることにより、ベルト40へ過度な張力がかかる前に、第2の直流モータ60を停止できる。また、第2の直流モータ60へのトルク負荷が推定できることにより、ベルト40の巻き出しや巻き取りが完了したことを推定できる。
【0043】
C.他の実施形態
上記各実施形態におけるシステム100、100Aの構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、システム100Aは、第1の電圧計32と第2の電圧計62とのいずれか一方のみを備えていてもよい。このような構成によっても、モータのトルクが必要以上に増加することを抑制できるので、ハウスHの損傷を抑制できる。
【0044】
上記各実施形態におけるシステム100、100Aでは、カバー10を巻き取る旨の指示やカバー10を巻き出す指示を制御部70が受ける場合等として、システム100の使用者が図示しないスイッチを押下する場合を例示したが、これに限られない。例えば、システム100、100Aは、さらに、日射量を測定するセンサーを備えてもよく、制御部70は、日射量が予め定められた量よりも多い場合にカバー10を巻き出す制御を行い、日射量が予め定められた量よりも多い場合にカバー10を巻き取る制御を行ってもよい。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…カバー、20…第1の棒状部材、30…第1の直流モータ、32…第1の電圧計、40…ベルト、50…第2の棒状部材、60…第2の直流モータ、62…第2の電圧計、70…制御部、100,100A…システム、H…ハウス、I…電流値、It…電流値
【要約】
【課題】ハウスの損傷を抑制する。
【解決手段】ハウスに設置するシステムは、第1の棒状部材を回転させることによって第1の棒状部材からカバーとベルトとを巻き出しつつ、第2の棒状部材を回転させることによって第2の棒状部材にベルトを巻き取る第1の動作と、第1の棒状部材を回転させることによって第1の棒状部材にカバーとベルトとを巻き取りつつ、第2の棒状部材を回転させることによって第2の棒状部材からベルトを巻き出す第2の動作と、を制御し、第1の動作と第2の動作とにおいて、第1の直流モータと第2の直流モータとを、電流が予め定められた電流値未満の場合は定電圧で制御し、電流が電流値に達した場合は定電流制御する。
【選択図】
図7