(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ナノバブル含有化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20221011BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221011BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221011BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/34
A61Q5/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021571117
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001115
(87)【国際公開番号】W WO2021144889
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2021-12-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391027929
【氏名又は名称】三粧化研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】318014588
【氏名又は名称】株式会社超微細科学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】517135947
【氏名又は名称】株式会社H4
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】安東 淳
(72)【発明者】
【氏名】畠中 克人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇仁
(72)【発明者】
【氏名】切石 壯
(72)【発明者】
【氏名】竹島 陽介
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031129(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182647(WO,A1)
【文献】特開2011-245471(JP,A)
【文献】特開2005-169359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
B01F 21/00- 25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノバブル液および化粧料の成分を含み、
前記ナノバブル液が、液状媒体およびナノサイズの気泡であるナノバブルを含む溶液であって、
前記ナノバブルは、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製され、
前記ナノバブルの平均気泡径は80nm~140nmであり、
前記ナノバブルが室温下で前記ナノバブル液中に少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料。
【請求項2】
液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項1に記載のナノバブル含有化粧料。
【請求項3】
ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項1-2のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料。
【請求項4】
スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料。
【請求項5】
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製される、ナノバブル含有化粧料の製造方法であって、
(a)液状媒体にガスを供給して、気泡の平均気泡径
が80nm~140nmのナノバブル液を得る工程と、
(b)液状媒体に化粧料の成分を配合する工程と、を含み、
前記工程(a)、(b)が任意の順序又は同時に実施され、
ここで、前記気泡が室温下で少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料の製造方法。
【請求項6】
液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項5に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法。
【請求項7】
ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項5-6のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法。
【請求項8】
スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項5-7のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノバブル含有化粧料に関する。より詳しくは、ナノバブル液および化粧料の成分を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノバブル液とは、液体中にナノバブルが分散している液体をいう。
従来、炭酸(本明細書中では炭酸と二酸化炭素は同じ意味で用いる)を含有する化粧料は、肌に接触させることで血流促進効果があることが知られている。このような化粧料は、炭酸を水溶液中に安定して配合する必要があるため、例えば、2剤混合により用時調製する方法が用いられている。
【0003】
特許文献1には、炭酸を溶解させた液体化粧料が記載されており、炭酸を発生させる方法として、酸を含む第1剤と炭酸塩または炭酸水素塩を含む第2剤とを反応させて炭酸を発生させることが開示されている。
【0004】
非特許文献1には、マイクロバブル・ナノバブルの特性および発生方法等について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】柘植 秀樹著「マイクロバブル・ナノバブルの基礎」、日本海水学会誌 64巻(2010)1号、P.4-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、特許文献1では、炭酸を含有させる方法として、酸を含む第1剤と炭酸塩または炭酸水素塩を含む第2剤とを反応させて炭酸を発生させることが開示されている。しかしながら、2剤混合によって炭酸を含有する化粧料を調製する方法では気泡の直径が大きくなってしまうため、炭酸を水溶液に安定して含有させることが難しい。それ故に、炭酸を含有する化粧料を長期に亘って保存することができないという問題がある。加えて、この方法では炭酸以外のガスである水素、酸素、空気等のガスを含有する化粧料を調製することが難しく、種々のガスを含有する化粧料を調製することができない。また、充填剤が2つ必要であるため炭酸を含有する化粧料の調製に手間を要し、第1剤および第2剤の夫々を製造する必要があるため製造工程が増加する問題がある。
そこで、2剤混合による調製を用いない、安定なガス含有化粧料の調製方法が求められている。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、気泡の直径が5nm~500nmである炭酸、水素、酸素、空気等のナノバブル状態の気泡を液状媒体に分散して調製するナノバブル含有化粧料を提供するものである。本発明によれば、ナノバブル液に含まれるガスが微小気泡であるため、化粧料がガスを安定して含有することができ、長期に亘ってガスが抜ける虞のないナノバブル含有化粧料およびその製造方法を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、
ナノバブル液および化粧料の成分を含み、
前記ナノバブル液が、液状媒体およびナノサイズの気泡であるナノバブルを含む溶液であって、
前記ナノバブルは、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製され、
前記ナノバブルの平均気泡径は80nm~140nmであり、
前記ナノバブルが室温下で前記ナノバブル液中に少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項1に記載のナノバブル含有化粧料に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノバブル含有化粧料に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製される、ナノバブル含有化粧料の製造方法であって、
(a)液状媒体にガスを供給して、気泡の平均気泡径が80nm~140nmのナノバブル液を得る工程と、
(b)液状媒体に化粧料の成分を配合する工程と、を含み、
前記工程(a)、(b)が任意の順序又は同時に実施され、
ここで、前記気泡が室温下で少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料の製造方法に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項5に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項5または6に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法に関する。
【0016】
請求項8に係る発明は、スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、
ナノバブル液および化粧料の成分を含み、
前記ナノバブル液が、液状媒体およびナノサイズの気泡であるナノバブルを含む溶液であって、
前記ナノバブルは、ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製され、
前記ナノバブルの平均気泡径は80nm~140nmであり、
前記ナノバブルが室温下で前記ナノバブル液中に少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料に関するため、
ナノバブル液が安定してガスを含有することができ、長期に亘ってガスが抜ける虞のない化粧料を提供できる。さらに、ナノバブルが皮膚に浸透しやすいので血流促進効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に温感を得ることができる。また、化粧料は保湿効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をしっとりとさせることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項1に記載のナノバブル含有化粧料であるため、この範囲において液状媒体を設定することができ、化粧料使用者に合わせた適切な化粧料を提供できる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノバブル含有化粧料であるため、この範囲においてガスを選択することができ、化粧料使用者に合わせて適切なガスを選択した化粧料を提供できる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料であるため、化粧料使用者の用途に合わせて、適切な形体の化粧料を調製することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)によって調製される、ナノバブル含有化粧料の製造方法であって、
(a)液状媒体にガスを供給して、気泡の平均気泡径が80nm~140nmのナノバブル液を得る工程と、
(b)液状媒体に化粧料の成分を配合する工程と、を含み、
前記工程(a)、(b)が任意の順序又は同時に実施され、
ここで、前記気泡が室温下で少なくとも1ヶ月維持されてなる、
血流促進効果を持つことを特徴とする、ナノバブル含有化粧料の製造方法に関するため、
ナノバブル液が安定してガスを含有することができ、長期に亘ってガスが抜ける虞のない化粧料を提供できる。さらに、ナノバブルが皮膚に浸透しやすいので血流促進効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に温感を得ることができる。また、化粧料は保湿効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をしっとりとさせることができる、化粧料の製造方法を提供できる。
【0022】
さらに、工程(a)、(b)が任意の順序又は同時に実施されるため、化粧料に応じて適切な製造方法を選択することができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、液状媒体が、水、エタノールからなる群から選択される1以上の液状媒体であることを特徴とする、請求項5に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法であるため、この範囲において液状媒体を設定することができ、化粧料使用者に合わせた適切な化粧料を提供できる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、ナノバブルが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気からなる群から選択される1以上のガスから作られたナノバブルであることを特徴とする、請求項5または6に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法であるため、この範囲においてガスを選択することができ、化粧料使用者に合わせて適切なガスを選択した化粧料を提供できる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、スキンケア用化粧料または頭髪用化粧料であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のナノバブル含有化粧料の製造方法であるため、化粧料使用者の用途に合わせて、適切な形体の化粧料を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るナノバブル含有化粧料(以下、単に化粧料と称する)の好適な実施形態について説明する。
【0027】
本発明に係る化粧料は、ナノバブル液および化粧料の成分を備えている。
【0028】
ナノバブルとは、液体(主に水)の中の、微小気泡の総称であり、気泡の直径が1μm未満のものを指す。尚、ナノバブルはウルトラファインバブルと呼ばれることもある。
ファインバブルとは気泡の直径が100μm以下のものを指し、ファインバブルはマイクロバブルとナノバブル(ウルトラファインバブル)とに分類される。マイクロバブルの直径は1μm~100μmであり、気泡の直径は上記したように1μm未満である。
【0029】
液状媒体とは、ガスを供給するための媒体である。さらに、他の成分を溶解または分散させるための媒体であっても良い。
液状媒体としては、例えば、水、エタノール、香料添加エタノール、変性エタノールなどを用いることができるが、これらに限定されず、当業者に自明のものであれば全て用いることができ、混合して用いても良い。
液状媒体に用いる水は、例えば、常水、精製水、蒸留水、滅菌水、食塩水、生理食塩水等を用いることができるが、この限りではない。
液状媒体が水である場合、化粧料使用者にとって快適に使用することができる化粧料を得ることができる。
【0030】
ナノバブル液とは、液体中にナノバブルが分散している液体をいう。
【0031】
ナノバブル液では、気泡の直径が1μm未満のものであれば、いかなる直径のものも用いることができる。
尚、本発明におけるナノバブル液では、気泡の直径が5nm~500nmのものを用いることが望ましく、50nm~500nmのものを用いることがより望ましい。尚、気泡の平均気泡径では、80nm~140nmであることが望ましい。
その他には、下限値が0.1nm、1nm、3nmであっても良く、またはこの間の値であっても良い。気泡の直径が500nmより大きい場合は気泡径が大きいために溶液からガスが抜ける虞がある。
【0032】
ナノバブル液に含まれるナノバブルは、ガスであれば全て用いることができるが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気を用いることが望ましい。これらのガスは皮膚に浸透しやすく、化粧料に血流促進効果を付与することができる。
【0033】
本発明の化粧料の成分としては、保湿剤(柔軟剤、エモリエント剤)、収瞼剤(制汗剤)、清涼剤、美白剤、紫外線吸収剤、その他の薬剤等が挙げられる。保湿剤としてはジグリセリン、ジプロピレングリコール、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、プロパンジオール、マルチトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、1,2-オクタンジオール、エチルヘキシルグリセリン、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、ミネラルオイル、ホホバ油、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、エチルヘキサン酸セチル、オリーブ油、コメヌカ油、スクワラン、メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、水添ナタネ油アルコール、バチルアルコール、アラキルアルコール、セテアリルアルコール等が挙げられる。収斂剤としては、クエン酸、乳酸、硫酸アルミニウム、レモン水、ハマメリス等が挙げられる。清涼剤としては、メントール、エチルアルコール、カンフル、ユーカリ油等が挙げられる。美白剤としては、アルブチン、トラネキサム酸、レチノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、PABA、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン-1、オキシベンゾン-2、オキシベンゾン-3、オキシベンゾン-4、オキシベンゾン-5、オキシベンゾン-6、オキシベンゾン-9、ポリシリコーン-15、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。他の薬剤としては、にきび用剤、ふけ・かゆみ用剤、腋臭防止剤、抗炎症剤(グリチルリチン酸ジカリウム等)、殺菌剤、栄養剤、賦活剤、生体生理機能向上剤等が挙げられる。しかしながら、これらの例に限定されるものではなく、当業者に自明のものであれば全て用いることができる。
【0034】
本発明の化粧料は、添加剤、植物エキス、増粘剤をさらに含んでいても良い。添加剤の種類としては、防腐剤、酸化防止剤、金属封鎖剤(金属イオン元素封止剤)、褪色防止剤、緩衝剤等が挙げられる。
添加剤は特に限定されないが、例えば、防腐剤として、酸化銀、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、第四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、クロロキシジン、ペンチレングリコール、フェノキシエタノール、酸化防止剤としては、トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、金属封鎖剤としては、キレート剤(エデト酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、クエン酸等)を用いることができる。
また、本発明の化粧料は、ビタミンエキス、動物性エキス(コラーゲン等)を用いることが望ましく、優れた血流促進効果および保湿効果を化粧料に付与することができる。
【0035】
本発明の化粧料は、化粧水、美容液、ジェル、クリーム、洗顔または乳液などのスキンケア化粧料として調製することができる。さらに、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、養毛料などの頭髪用化粧料としても調製できる。これにより、化粧料使用者の用途に合わせて、適切な形体の化粧料を調製することができる。また、化粧料は化粧水であることが望ましい。化粧水の主成分は水であるため粘性が低く、ナノバブル液からガスが抜ける虞が少ない。これにより、優れた血流促進効果を有する化粧水として使用することができる。
【0036】
前述したように、本発明の化粧料はナノバブル液を含んでおり、ナノバブルが皮膚に浸透しやすいため、血流促進効果を有している。そのため、血流促進効果を有する化粧料として用いることができる。これにより、化粧料使用者は化粧料使用後に温感を得ることができる。また、化粧料は保湿効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をしっとりとさせることができる。また、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をツルツルにすることができ、加えて、みずみずしい肌の実感を得ることができる。
【0037】
本発明に係る化粧料の製造方法は、液状媒体にガスを供給して気泡の直径が5nm~500nmのナノバブル液を得る工程aと、液状媒体に化粧料の成分を配合する工程bと、を含み、前記工程a、bが任意の順序又は同時に実施されることを含む。
【0038】
工程aでは、液状媒体にガスを供給して気泡の直径が5nm~500nmのナノバブル液を得る。
液状媒体は前述したものを用いることができ、例えば、水、エタノールなどを用いることができる。液状媒体が水である場合、化粧料使用者にとって快適に使用することができる化粧料を得ることができる。
ガスを供給する手段は、ナノバブル液が得られるものであれば全て用いることができるが、ナノバブル発生装置を用いることが望ましい。例えば、ナノバブル発生装置として、株式会社超微細科学研究所製のナノバブル発生装置を用いることができるが、これに限定されるものではない。尚、ガスを供給する速度は特に限定されない。
【0039】
工程bでは、液状媒体に化粧料の成分を配合する。
化粧料の成分は上記したものを用いることができる。
【0040】
本発明の化粧料の製造方法では、工程aおよびbが任意の順序又は同時に実施されることから、以下のパターンがあり得る。
液状媒体にガスを供給して得られたナノバブル液に、化粧料の成分を配合して化粧料を得る(工程a、工程bの順序で実施)。
液状媒体に化粧料の成分を配合した後に、ガスを供給してナノバブル液を得ることで化粧料を得る(工程b、工程aの順序で実施)。
液状媒体および化粧料の成分にガスを供給しながら配合して化粧料を得る(工程a、工程bを同時に実施)。
【0041】
供給するガスは、当業者に自明のものであれば全て用いることができるが、水素、酸素、二酸化炭素、および空気を用いることが望ましい。これらのガスは皮膚に浸透しやすく、化粧料に血流促進効果を付与することができる。
【0042】
上記の製造方法によって製造した化粧料は、化粧水、美容液、ジェル、クリーム、洗顔または乳液などのスキンケア化粧料として調製することができる。さらに、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、養毛料などの頭髪用化粧料としても調製できる。これにより、化粧料使用者の用途に合わせて、適切な形体の化粧料を提供できる。また、化粧料は化粧水であることが望ましい。化粧水の主成分は水であるため粘性が低く、ナノバブル液からガスが抜ける虞が少ない。これにより、優れた血流促進効果を有する化粧水を製造することができる。
【0043】
上記の製造方法によって製造した化粧料はナノバブル液を含んでおり、ナノバブルが皮膚に浸透しやすいため、血流促進効果を有している。そのため、血流促進のための化粧料として製造することができる。また、化粧料は保湿効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をしっとりとさせることができる。また、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をツルツルにすることができ、加えて、みずみずしい肌の実感を得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明に係る化粧料の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)により、精製水に水素ガスを通気することによってナノバブル液を調製した。次いで、ナノバブル液および化粧料の成分を表1の割合で配合して調製した(以下、実施例1と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。ナノサイズに処理した気体を水に分散した水素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0046】
【0047】
(実施例2)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)により、精製水に二酸化炭素ガスを通気することによってナノバブル液を調製した。次いで、ナノバブル液および化粧料の成分を表2の割合で配合して調製した(以下、実施例2と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。ナノサイズに処理した気体を水に分散した二酸化炭素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0048】
【0049】
(実施例3)
ナノバブル発生装置(株式会社超微細科学研究所製)により、精製水に酸素ガスを通気することによってナノバブル液を調製した。次いで、ナノバブル液および化粧料の成分を表3の割合で配合して調製した(以下、実施例3と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。ナノサイズに処理した気体を水に分散した酸素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0050】
【0051】
(比較例1)
ナノバブル液の代わりに精製水を用いてブランク溶液を調製した(以下、比較例1と称する)。化粧料の効果の確認方法は以下に従って行った。ブランク溶液を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、ブランク溶液を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0052】
(比較例2)
表4の割合で配合して調製した(以下、比較例2と称する)。化粧料の調製は従来法による2剤混合で行った。また、化粧料の効果の確認方法は以下に従って行った。気体を水に分散した二酸化炭素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0053】
【0054】
(比較例3)
ボンベを用いて、精製水に水素ガスを通気することによってミリバブル液を調製した。次いで、ミリバブル液および化粧料の成分を表5の割合で配合して調製した(以下、比較例3と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。気体を水に分散した水素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0055】
【0056】
(比較例4)
ボンベを用いて、精製水に二酸化炭素ガスを通気することによってミリバブル液を調製した。次いで、ミリバブル液および化粧料の成分を表6の割合で配合して調製した(以下、比較例4と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。気体を水に分散した二酸化炭素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0057】
【0058】
(比較例5)
ボンベを用いて、精製水に酸素ガスを通気することによってミリバブル液を調製した。次いで、ミリバブル液および化粧料の成分を表7の割合で配合して調製した(以下、比較例5と称する)。化粧料の調製および効果の確認方法は以下に従って行った。気体を水に分散した酸素を含有する化粧料を被験者の指に2g塗布後に血流促進、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察するとともに毛細血管拡張前後における血管太さの差を計測した。また、化粧料を手の甲全体に5g塗布後に被験者の塗布部位の感覚に違いが出るか官能試験し、化粧料の使用性、使用感の評価、および化粧料調製から1ヶ月における気泡状態の確認を行った。
【0059】
【0060】
化粧料を被験者の指に塗布後、毛細血管の拡張を毛細血管スコープ(株式会社血管美人、品番SC10-750)を用いて観察し、表8の判断基準で血流促進効果を測定した。
【0061】
【0062】
気泡の直径については、NanoSight LM10V-HS/英国 Malvernを用いて測定した。
【0063】
化粧料を手の甲全体に塗布後、表9の判断基準で被験者の塗布部位の感覚の違いを官能試験した。
【0064】
【0065】
化粧料調製から1ヶ月における気泡状態は、各化粧料を調製した後に1ヶ月間室温で静置し、ガラスの容器に入った化粧料に光を当て、目視で気泡状態を確認し、表10の判断基準で気泡状態を評価した。
また、気泡の状態は他の測定方法で評価することもでき、例えば、化粧料の気泡個数を測定し、その値を比較して評価することも可能である。
【0066】
【0067】
【0068】
以下、表11に示される実施例1~3および比較例1~5の化粧料の試験結果について考察する。
実施例1~3では、毛細血管拡張前後における血管太さの差が0.7mm、0.5mm、および0.3mmであり、大きく増加したことを示している。一方で、ブランクとして精製水を用いた比較例1では、毛細血管拡張前後における血管太さの差が0.1mm以下であり、変化が見られなかった。これにより、実施例1~3のナノバブル含有化粧料が血流促進効果を有していることが示された。
比較例2では、従来法による2剤混合を用いて炭酸含有化粧料を調製した。化粧料の効果の確認をしたところ、毛細血管拡張前後における血管太さの差が0.6mmであり、比較例2の炭酸含有化粧料は血流促進効果を有していることが示された。
比較例3~5では、ボンベを用いて、精製水にガスを通気することによってガス含有化粧料を調製した。化粧料の効果の確認をしたところ、毛細血管拡張前後における血管太さの差が0.1mm以下であり、比較例3~5の化粧料は血流促進効果を有していないことが示された。また、実施例1~3の化粧料に含まれる気泡の直径が5nm~500nm、比較例3~5の化粧料に含まれる気泡の直径が1mm~30mmであることから、ナノバブル液を用いた化粧料が血流促進効果を有していることが示された。一方、比較例2のように、気泡の直径が1mm~7.5mmであっても、用時調製したバブル液を用いた場合には化粧料が血流促進効果を有していることが示された。
また、化粧料調製から1ヶ月後における気泡の状態を確認した。実施例1~3のナノバブル含有化粧料は、化粧料調製から1ヶ月後においても気泡を十分に含むことが示された。この結果より、実施例1~3のナノバブル含有化粧料は、長期に亘ってガスが抜ける虞のない化粧料であることが示された。一方、比較例1~5の化粧料は、化粧料調製から1ヶ月後においていずれも気泡を全く含まないことが示された。これは、比較例1~5の化粧料に含まれる気泡の直径が大きいため、化粧料からガスがすぐに抜けてしまうことを示している。これにより、実施例1~3のナノバブル含有化粧料は、比較例1~5の化粧料と比較して、長期に亘る保存が可能となり、安定性に優れていることが示された。
【0069】
(考察)
実施例1~3のナノバブル含有化粧料は、従来法である2剤混合により調製する比較例2の炭酸含有化粧料よりも容易に調製することができる。また、ガスが水素、炭酸および酸素からなる群から選択できるため、化粧料使用者に合わせて化粧料を調製できる。加えて、ナノバブル含有化粧料は、気泡径が小さいナノバブル液を用いているため、例えば比較例2の炭酸含有化粧料よりもガスが抜けにくく、長期に亘ってガスが抜ける虞のない化粧料を提供することができる。また、比較例2は、2剤を混合してからすぐに化粧料を使用する必要があるため、化粧料としての使用性が低い。そのため、実施例1~3のナノバブル含有化粧料は、化粧料の使用性の点で比較例2の化粧料よりも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係るナノバブル含有化粧料によれば、ナノバブル液および化粧料の成分を含み、前記ナノバブル液が、液状媒体およびナノサイズの気泡であるナノバブルを含む溶液であって、前記気泡の直径が5nm~500nmであるため、液状媒体およびナノバブル液が安定してガスを含有することができ、長期に亘ってガスが抜ける虞のないナノバブル含有化粧料を提供できる。さらに、ナノバブルが皮膚に浸透しやすいので血流促進効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に温感を得ることができる。また、化粧料は保湿効果を有しており、化粧料使用者は化粧料使用後に肌をしっとりとさせることができる。加えて、気泡の直径が5nm~500nmであるため、より長期に亘ってガスが抜ける虞のないナノバブル含有化粧料を提供できる。
【0071】
したがって、本発明に係るナノバブル含有化粧料は、長期に亘ってガスが抜ける虞のない、且つ血流促進効果を有する化粧料として、好適に幅広く利用することができる。