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特許7154551インフラ保守支援装置、インフラ保守支援方法及びインフラ保守支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】インフラ保守支援装置、インフラ保守支援方法及びインフラ保守支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20221011BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20221011BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q10/06 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022046207
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522116764
【氏名又は名称】株式会社共創
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】谷 真孝
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194736(JP,A)
【文献】特開2020-166596(JP,A)
【文献】特開2017-117323(JP,A)
【文献】米国特許第05617342(US,A)
【文献】米国特許第10977593(US,B1)
【文献】吉野賢治,ナビゲーション法による保守教育支援手法の確立(その2)RHRポンプ保守教育支援プロトタイプシステムの基本設計,電力中央研究所報告,S01001,日本,財団法人 電力中央研究所,2002年04月,1-18,JST資料番号: L0188A
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置であって、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
を実行する制御部を備え
前記制御部は、
前記第2情報に含まれる前記生産性が最も優れた人員又は/及び組織について、前記保守作業の手順をベストモデルの作業手順として更に取得し、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている前記保守作業を実行するのに必要な人的資源を、前記将来人的資源として算出し、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて前記保守作業を実行するのに必要な技能を前記第2情報として更に取得し、
前記技能を教育するための人材育成計画を前記インフラ設備の保守支援計画に含めて提供する、
インフラ保守支援装置。
【請求項2】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置であって、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第2情報に含まれる前記生産性が所定の水準以上の人員で、且つ該人員の技能が所定の標準作業手順書で定義される技能の標準モデルを超えない人員について、前記保守作業の手順を準ベストモデルの作業手順として更に取得し、
前記準ベストモデルの作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている前記保守作業を実行するのに必要な人的資源を、前記将来人的資源として算出する、
インフラ保守支援装置。
【請求項3】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置であって、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記保守作業の実施状況について、1年を通しての繁閑差及び地域差を前記第1情報として更に取得し、
前記繁閑差及び前記地域差が平滑化されるように、前記保守作業の実施が繁忙期となり得る所定の地域が他の地域からの人的資源の応援を受けるものとして、前記インフラ設備の保守支援計画を作成することを、更に実行する、
インフラ保守支援装置。
【請求項4】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置であって、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記インフラ設備の保守支援計画について、将来実施されることが予定されている全ての前記保守作業に対する実行可能性を判定することと、
前記実行可能性を、所定のインタフェースを介して閲覧可能に提供することと、を更に実行し、
将来実施されることが予定されている任意の前記保守作業について、前記将来人的資源に対して確保され得る人的資源が不足する場合には、前記実行可能性として該保守作業が実行できないことを、前記インタフェースを介して閲覧可能に提供する、
インフラ保守支援装置。
【請求項5】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援方法であって、
コンピュータが、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
前記第2情報に含まれる前記生産性が最も優れた人員又は/及び組織について、前記保守作業の手順をベストモデルの作業手順として取得することと、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている前記保守作業を実行するのに必要な人的資源を、前記将来人的資源として算出することと、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて前記保守作業を実行するのに必要な技能を前記第2情報として取得することと、
前記技能を教育するための人材育成計画を前記インフラ設備の保守支援計画に含めて提供することと、
を実行するインフラ保守支援方法。
【請求項6】
インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援プログラムであって、
コンピュータに、
前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、
前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、
複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、
前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、
前記第2情報に含まれる前記生産性が最も優れた人員又は/及び組織について、前記保守作業の手順をベストモデルの作業手順として取得することと、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている前記保守作業を実行するのに必要な人的資源を、前記将来人的資源として算出することと、
前記ベストモデルの作業手順に基づいて前記保守作業を実行するのに必要な技能を前記第2情報として取得することと、
前記技能を教育するための人材育成計画を前記インフラ設備の保守支援計画に含めて提供することと、
を実行させるインフラ保守支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置、インフラ保守支援方法及びインフラ保守支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、電気やガス、水道、道路などは、人間が社会生活を送る上で重要な社会インフラとなっている。したがって、これらインフラ設備に対して、定期的な保守作業(これには、設備の更新が含まれる。)が行われている。
【0003】
ここで、重要な社会インフラの一つである電気は、架空送電設備によって送電されるため、電気インフラの保守では、鉄塔での特殊高所作業等が生じる。そして、このような電気インフラの工事作業は、その工事作業を発注する発注会社と、それを請け負い作業する請負会社と、が作業調整することで進められている。
【0004】
特許文献1には、発注会社が、個々の工事作業に必要作業人員数、依頼業務内容及び作業希望日に関する発注業務情報を登録し、複数の請負会社が、個々の工事作業について稼働可能人員数、受託可能業務及び受託可能日に関する受託可能業務情報を登録することで、作業調整を行う、工事作業調整システムが開示されている。この技術では、発注業務情報について特定の請負会社がその作業可能と判定されると、該当する請負会社その発注業務情報が配信されるとともに、発注会社に作業可能な請負会社の情報が配信されることで、グループ企業内の作業人員と依頼作業とが効率よく調整され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-9092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現代社会をささえる電気やガス、水道、道路などの社会インフラは、我が国の高度経済成長期に多くが整備され、新設されてから50年以上経過したインフラ設備が全国各地に存在している。そして、このようなインフラ設備に対しては、定期的な保守作業(これには、設備の更新が含まれる。)が行われているが、それに必要な資源(例えば、人的資源や機械資源等の有形資産、ノウハウ等の無形資産など)の不足が問題となっている。例えば、新設されてから長期間が経過したインフラ設備の保守作業に対しては、その新設の際に用いた資源(人的資源、機械資源や、ノウハウ等)をそのまま活用することが困難である。また、インフラ設備の改良・更新工事は、該設備の新設工事よりも難易度が高いことがあり、作業人口の高齢化も影響して、このような高難易度の作業に対応可能な作業人員が不足している。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術によれば、発注会社からの発注業務に対して、対応する請負会社が調整されることで、グループ企業内の作業人員と依頼作業とが効率よく調整され得るが、これは、顕在化している作業に対する短期的観点での資源の効率化であって、中長期的観点での保守作業に対する資源の不足に対応できるものではない。そして、このような中長期的観点での保守作業に対する資源の不足は社会発信されておらず、仮に該資源の不足が社会的に漠然と認識されていたとしても、現状では、電気やガス、水道、道路などの社会インフラが比較的低コストで安定的に供給されている。そのため、社会インフラを永続的に安定稼働させるために必要な資源に対する社会的な認知度が低く、将来的なインフラ設備の保守に対する危機管理が適切になされているとは言い難い。
【0008】
本開示の目的は、将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を予測し、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のインフラ保守支援装置は、インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置である。そして、このインフラ保守支援装置は、前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、を実行する制御部を備える。
【0010】
上記のインフラ保守支援装置では、例えば、将来に予定されている各保守作業(設備更新やメンテナンス対応等の内容やこれらの優先度が予め定められている。)について、複数の第1情報の中から、その作業内容や作業環境が類似している情報を抽出し、更に、該情報に対応する第2情報を参照することで、将来人的資源を含んだ第3情報を生成することができる。そして、これにより、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を予測することができる。更に、第3情報に基づいてインフラ設備の保守支援計画を提供することで、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることを可能にする。なお、上記の第2情報に含まれる各人員についての生産性は、各人員が作業完了までに要した従事時間に基づいて取得されてもよい。また、保守作業に従事した人員構成と、該人員構成における作業進捗の実績値と、を含んだデータを蓄積して、該蓄積データに対する統計解析に基づいて抽出された人的要因から上記の生産性が取得されてもよい。
【0011】
そして、上記のインフラ保守支援装置において、前記制御部は、前記第2情報に含まれる前記生産性が所定の水準以上の人員又は/及び組織について、その作業手順を前記第2情報として更に取得し、前記作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている前記保守作業を実行するのに必要な人的資源を、前記将来人的資源として算出してもよい。このような作業手順では、その作業に要する人的資源を削減することができるため、これによれば、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を最小化することが可能になる。また、この場合、前記制御部は、前記作業手順に基づいて前記保守作業を実行するのに必要な技能を前記第2情報として更に取得し、前記技能を教育するための人材育成計画を前記インフラ設備の保守支援計画に含めて提供してもよい。これによれば、将来に所定の水準以上の作業が可能な人材を確保し易くなり、以て、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を最小化することができる。
【0012】
また、本開示のインフラ保守支援装置では、前記制御部は、前記保守作業の実施状況について、1年を通しての繁閑差及び地域差を前記第1情報として更に取得し、前記繁閑差及び前記地域差が平滑化されるように、前記インフラ設備の保守支援計画を作成することを、更に実行してもよい。これによれば、将来的なインフラ設備の保守に要する資源を効率化することができる。
【0013】
更に、本開示のインフラ保守支援装置において、前記制御部は、前記インフラ設備の保守支援計画について、将来実施されることが予定されている全ての前記保守作業に対する実行可能性を判定することと、前記実行可能性を、所定のインタフェースを介して閲覧可能に提供することと、を更に実行してもよい。これによれば、将来人的資源や上記の実行可能性といった客観的且つ具体的根拠に基づいて、その情報を社会に共有することができ、社会からの納得と共感をもって中長期的な対応策の立案と実行を図ることができる。
【0014】
また、本開示は、コンピュータによるインフラ保守支援方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示のインフラ保守支援方法は、インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援方法であって、コンピュータが、前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、を実行する。
【0015】
また、本開示は、インフラ保守支援プログラムの側面から捉えることができる。すなわち、本開示のインフラ保守支援プログラムは、インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援プログラムであって、コンピュータに、前記インフラ設備に対して実施される所定の保守作業について、その作業環境及びその作業内容を含んだ情報である第1情報を取得することと、前記保守作業に従事した人的資源について、その人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報である第2情報を取得することと、複数の前記第1情報と、複数の前記第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である第3情報を生成することと、前記第3情報に基づいて、前記インフラ設備の保守支援計画を提供することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を予測し、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態における、情報処理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
図3】第1実施形態における情報処理システムの動作の流れを例示する図である。
図4】第1実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための図である。
図5】作業手順のベストモデルに基づいて第3情報を生成する例を説明するためのフローチャートである。
図6】第2実施形態における保守支援計画を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における情報処理システムの概要について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における情報処理システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る情報処理システム100は、ネットワーク200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、を含んで構成される。なお、本開示の情報処理システムは、インフラ設備の保守支援計画を提供するシステムであって、これにより、インフラ設備の保守の支援を行うものである。また、このような保守支援計画の提供がサーバ300によって実行される。ここで、インフラ設備の保守の概念には、インフラ設備の更新が含まれるものとする。
【0020】
ネットワーク200は、例えば、IPネットワークである。ネットワーク200は、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、無線による通信であれば、ユーザ端末400は、無線LANアクセスポイント(不図示)にアクセスし、LANやWANを介してサーバ300と通信してもよい。また、ネットワーク200は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0021】
サーバ300は、ネットワーク200を介して、ユーザ端末400と接続される。なお、図1において、説明を簡単にするために、サーバ300は1台、ユーザ端末400は4台示してあるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0022】
サーバ300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、その他電子機器であってもよい。すなわち、サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0023】
また、サーバ300は、本実施形態に係る情報処理システム100専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0024】
ユーザ端末400は、情報処理システム100を利用するユーザ(後述する、作業管理ユーザや、実作業ユーザ、保守支援ユーザ)が保有する携帯端末等の電子機器であればよく、例えば、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等、その他端末機器であってもよい。
【0025】
次に、図2に基づいて、主にサーバ300の構成要素の詳細な説明を行う。図2は、第1実施形態における、情報処理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。
【0026】
サーバ300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0027】
ここで、通信部301は、サーバ300をネットワーク200に接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。サーバ300は、通信部301を介して、ユーザ端末400やその他の外部装置と通信可能に接続される。
【0028】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。また、記憶部302は、ユーザ端末400等から送信されたデータを記憶し、記憶部302には、後述する第1情報、第2情報、第3情報が記憶される。なお、サーバ300は、通信部301を介してユーザ端末400等から送信されたデータを取得する。
【0029】
制御部303は、サーバ300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、第1取得部3031と、第2取得部3032と、生成部3033と、提供部3034と、の4つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0030】
第1取得部3031は、インフラ設備に対して実施される保守作業についての第1情報を取得する。ここで、上記のインフラ設備とは、例えば、電気インフラのための架空送電設備であって、この場合の上記の保守作業は、例えば、架空送電設備の保守工事のための特殊高所作業である。そして、上記の第1情報とは、このような保守作業についての作業環境(これには、作業場所の環境や地形、工期、停電条件・通行止め条件等の制約条件などが含まれる。)や作業内容を含んだ情報であって、作業管理ユーザ(例えば、発注会社)のユーザ端末400から送信され得る。第1取得部3031は、作業管理ユーザのユーザ端末400から送信されたこのような情報を取得することで第1情報を取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0031】
ここで、本実施形態におけるユーザ端末400は、機能部として通信部401、入出力部402、記憶部403を有している。通信部401は、ユーザ端末400をネットワーク200に接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部402は、通信部401を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部401を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部403は、サーバ300の記憶部302と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0032】
入出力部402は、更に、表示部4021、操作入力部4022、画像・音声入出力部4023を有している。表示部4021は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部4022は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。画像・音声入出力部4023は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部4023は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0033】
作業管理ユーザは、このように構成されたユーザ端末400を用いて、上記の第1情報をサーバ300に送信することができる。ここで、サーバ300は、第1情報を入力するためのインタフェースをユーザ端末400に提供してもよい。そうすると、作業管理ユーザは、ユーザ端末400を介して上記のインタフェースに情報を入力することで、第1情報をサーバ300に送信することができる。
【0034】
そして、第2取得部3032は、上記の保守作業に従事した人的資源についての第2情報を取得する。ここで、第2情報とは、任意の一つの現場におけるインフラ設備の保守作業に従事した人員数、及び各人員についての属性、及び該保守作業に対する各人員についての生産性を含んだ情報である。なお、上記の属性は、年齢、インフラ設備の保守作業の経験年数・従事実績、所属する組織(会社等)などである。また、上記の生産性は、例えば、架空送電設備の電線の点検等の作業に対する作業効率であって、実作業時間を予め定められた標準作業時間で除するなどして算出され得る。第2取得部3032は、実作業ユーザのユーザ端末400から送信されたこのような情報を取得することで第2情報を取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0035】
ここで、実作業ユーザのうちの現場責任者は、ユーザ端末400を用いて、上記の保守作業に従事した日々の人員リストをサーバ300に送信することができる。これにより、サーバ300は、第2情報として、上記の保守作業に従事した人員数を取得することができる。また、上記の人員リストには、各人員についての属性が含まれる。そのため、サーバ300は、第2情報として、上記の保守作業に従事した各人員についての属性を取得することができる。なお、上記の現場責任者は、上記の人員リストを所定のデータベースに格納し、該データベースへアクセスするためのリンクを表す二次元コードを作業管理ユーザのユーザ端末400に送信してもよい。これによれば、作業管理ユーザは、上記の保守作業に従事する実作業ユーザの情報を上記のデータベースを介して取得することができる。この場合、人員リスト自体が送受信されることがないため、実作業ユーザの個人情報が保護され得る。
【0036】
また、上記の保守作業の現場には、実作業ユーザの出退勤時刻や作業開始・終了時刻を打刻するための情報端末が設置されていてもよい。この場合、各人員は、例えば、自身のユーザ端末400を該情報端末に読み込ませることで、作業の開始時刻および終了時刻をサーバ300に送信することができる。これに基づいて、サーバ300は、第2情報として、上記の保守作業に対する各人員についての生産性を取得することができる。なお、各人員は、ユーザ端末400に予めインストールされた所定のアプリを用いて、作業の開始時刻および終了時刻をサーバ300に送信してもよい。また、サーバ300は、保守作業に従事した人員構成と、該人員構成における作業進捗の実績値と、を含んだデータを記憶部302に蓄積させてもよい。そして、この蓄積データに対する統計解析に基づいて抽出された人的要因から、上記の生産性を取得してもよい。
【0037】
そして、生成部3033は、第1取得部3031によって取得された複数の第1情報と、第2取得部3032によって取得された複数の第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、第3情報を生成する。ここで、第3情報とは、上記の将来の保守作業に必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である。そして、この第3情報は、少なくとも将来人的資源に関する情報が含まれるものであって、該第3情報には、上記に加えて、上記の将来の保守作業に必要な機械資源やノウハウ等に関する情報が含まれてもよい。なお、インフラ設備の当初耐用年数や利用環境等から、上記の将来の保守作業について、設備更新やメンテナンス対応等の必要性や優先度が予め定められているものとする。生成部3033は、上記の第3情報を生成するにあたって、このような将来の保守作業に対する作業内容やスケジュール等を別途取得する。また、生成部3033が実行する処理の詳細は、後述する図3に基づいて説明する。
【0038】
提供部3034は、第3情報に基づいて、インフラ設備の保守支援計画を提供する。ここで、提供部3034は、保守支援ユーザのユーザ端末400に上記の保守支援計画に関する情報を送信することで、インフラ設備の保守支援計画を提供することができる。なお、提供部3034が実行する処理の詳細は、後述する図3に基づいて説明する。
【0039】
なお、制御部303が、第1取得部3031、第2取得部3032、生成部3033、および提供部3034の処理を実行することで、本開示に係る制御部として機能する。
【0040】
ここで、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れについて説明する。図3は、本実施形態における情報処理システム100の動作の流れを例示する図である。図3では、本実施形態における情報処理システム100における各構成要素間の動作の流れ、および各構成要素が実行する処理を説明する。
【0041】
本実施形態では、先ず、作業管理ユーザのユーザ端末400に、第1情報が入力される(S101)。ここで、第1情報は、インフラ設備に対して実施される所定の保守作業についての作業環境及び作業内容を含んだ情報であって、作業管理ユーザは、所定のインタフェースを用いて、第1情報をユーザ端末400に入力することができる。そして、第1情報は、作業管理ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0042】
サーバ300は、作業管理ユーザのユーザ端末400から送信された第1情報を取得するとともに記憶部302に記憶させる(S102)。ここで、複数の現場における保守作業について、各作業管理ユーザから第1情報が送信され、サーバ300は、これらを取得することで複数の第1情報を取得する。
【0043】
そして、実作業ユーザのユーザ端末400に、第2情報が入力される(S103)。ここで、第2情報は、S101の処理で入力された各第1情報に関する保守作業に従事した人的資源についての人員数、及び各人員についての所定の属性、及び該保守作業に対する各人員についての所定の生産性を含んだ情報であって、実作業ユーザは、所定のインタフェースを用いて、第2情報をユーザ端末400に入力することができる。ここで、上述したように、人員数や各人員についての属性は、実作業ユーザのうちの現場責任者のユーザ端末400に入力され、各人員についての生産性は、各人員のユーザ端末400に入力され得る。または、保守作業に従事した人員構成と、該人員構成における作業進捗の実績値と、を含んだデータが、第2情報として、現場責任者のユーザ端末400に入力されてもよい。この場合、サーバ300は、上記のデータを記憶部302に蓄積させ、この蓄積データに対する統計解析に基づいて抽出された人的要因から上記の生産性を取得することができる。そして、第2情報は、実作業ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0044】
サーバ300は、実作業ユーザのユーザ端末400から送信された第2情報を取得するとともに記憶部302に記憶させる(S104)。なお、サーバ300は、複数の現場についての各第1情報に対応する第2情報を夫々取得することで、複数の第1情報に対応する複数の第2情報を取得する。
【0045】
このようにして第1情報および第2情報が取得されると、サーバ300は、複数の第1情報と、複数の第2情報と、に基づいて、第3情報を生成する(S105)。ここで、第3情報は、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ情報である。これにより、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を予測することができる。
【0046】
ここで、サーバ300は、将来に予定されている各保守作業(設備更新やメンテナンス対応等の内容やこれらの優先度が予め定められている。)について、複数の第1情報の中から、その作業内容や作業環境が類似している情報を抽出し、更に、該情報に対応する第2情報を参照することで、第3情報を生成することができる。
【0047】
また、サーバ300は、複数の第1情報及び複数の第2情報を用いて学習を行うことにより構築された事前学習モデルを用いて、第3情報を生成してもよい。この場合、サーバ300は、所定の実施予定作業データの入力を受け付ける入力層と、入力された該実施予定作業データから作業に必要な所定の資源を表す特徴量を抽出する中間層と、該特徴量に基づく識別結果を出力する出力層と、を有するニューラルネットワークモデルであって、複数の第1情報及び複数の第2情報を用いて学習を行うことにより構築された事前学習モデルに、実施予定作業データを入力することで、作業に必要な所定の資源データを出力する。
【0048】
ここで、図4は、本実施形態における事前学習モデルに対する入力から得られる識別結果と、該事前学習モデルを構成するニューラルネットワークを説明するための図である。本実施形態では、事前学習モデルとして、ディープラーニングにより生成されるニューラルネットワークモデルを用いる。本実施形態における事前学習モデル30は、所定の実施予定作業データの入力を受け付ける入力層31と、入力層31に入力された該実施予定作業データから作業に必要な所定の資源を表す特徴量を抽出する中間層(隠れ層)32と、特徴量に基づく識別結果を出力する出力層33とを有する。なお、図4の例では、事前学習モデル30は、1層の中間層32を有しており、入力層31の出力が中間層32に入力され、中間層32の出力が出力層33に入力されている。ただし、中間層32の数は、1層に限られなくてもよく、事前学習モデル30は、2層以上の中間層32を有してもよい。
【0049】
また、図4によると、各層31~33は、1又は複数のニューロンを備えている。例えば、入力層31のニューロンの数は、入力される実施予定作業データに応じて設定することができる。また、出力層33のニューロンの数は、識別結果である作業に必要な所定の資源データに応じて設定することができる。
【0050】
そして、隣接する層のニューロン同士は適宜結合され、各結合には重み(結合荷重)が機械学習の結果に基づいて設定される。図4の例では、各ニューロンは、隣接する層の全てのニューロンと結合されているが、ニューロンの結合は、このような例に限定されなくてもよく、適宜設定することができる。
【0051】
このような事前学習モデル30は、保守作業データ(第1情報)と、対応する人的資源(第2情報)を表す正解ラベルと、の組みである教師データを用いて教師あり学習を行うことで構築される。具体的には、特徴量とラベルとの組みをニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じとなるように、ニューロン同士の結合の重みがチューニングされる。このようにして、教師データの特徴を学習し、入力から結果を推定するための事前学習モデルが帰納的に獲得される。
【0052】
これによれば、事前学習モデルを用いることで、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を精度よく予測することができる。なお、教師データとして、保守作業データ(第1情報)と、それに対応する所定の資源(人的資源、機械資源、ノウハウ等)を表す正解ラベルと、の組みを用いて事前学習を行うことで、将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を精度よく予測することもできる。
【0053】
また、サーバ300は、第3情報を生成する際に、所定の水準以上の人員又は/及び組織についての作業手順に基づいて、将来実施されることが予定されている保守作業を実行するのに必要な人的資源を、将来人的資源として算出してもよい。この場合、サーバ300は、第2情報に含まれる生産性が所定の水準以上の人員又は/及び組織について、その作業手順を第2情報として更に取得する。なお、上記の生産性が所定の水準以上の人員又は/及び組織とは、例えば、生産性が最も優れた人員又は/及び組織である。
【0054】
そして、図5は、作業手順のベストモデルに基づいて第3情報を生成する例を説明するためのフローチャートである。図5に示す例では、S104の処理の後に、第2情報として取得した作業手順の中から生産性が最も優れたベストモデルが抽出される(S1051)。S1051の処理では、例えば、最も高い作業効率を有する作業手順がベストモデルとして抽出される。
【0055】
次に、S1051の処理で抽出したベストモデルに対応する第2情報に基づいて、将来人的資源が算出される(S1052)。S1052では、例えば、ベストモデルの作業手順に基づいて保守作業を実施する際に必要な人的資源が算出される。このようなベストモデルの作業手順では、その作業に要する人的資源を削減することができるため、これによれば、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を最小化することが可能になる。そして、算出された将来人的資源を用いて第3情報が生成され(S1053)、S106の処理へ進む。
【0056】
なお、上記は、生産性が最も優れたベストモデルを用いる例について説明したが、該ベストモデルが各人員の技能に頼る作業手順である場合には、技能の影響を除外した作業手順(この場合、二番目や三番目の作業効率を有する作業手順が抽出され得る。)に基づいて将来人的資源を算出してもよい。この場合、サーバ300は、第2情報に含まれる生産性が所定の水準以上(例えば、作業効率が上位五番以内)の人員又は/及び組織で、且つその人員の技能が所定の標準作業手順書で定義される技能の標準モデルを超えない人員又は/及び組織について、その作業手順を取得し、これに基づいて将来人的資源を算出してもよい。これによれば、人員の技能によらずに将来人的資源を算出することができる。なお、保守作業における各人員の技能は、例えば、その作業中にスマートグラスを介して取得され、それがユーザ端末400からサーバ300に送信され得る。
【0057】
そして、図3に戻って、サーバ300は、第3情報に基づいて、インフラ設備の保守支援計画を提供する(S106)。ここで、サーバ300は、上記の保守支援計画を保守支援ユーザのユーザ端末400に送信することで、これを提供することができる。なお、保守支援計画には、例えば、将来の保守作業の作業内容やスケジュールに対する、人的資源、機械資源等の割り当てが含まれ、保守支援ユーザは、取得したこのような情報(S107)に基づいて、将来の保守作業の体制を構築していく。これにより、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることを実現する。
【0058】
なお、サーバ300は、上記の保守支援計画に人材育成計画を含めて提供してもよい。この場合、サーバ300は、上述したベストモデルの作業手順に基づいて保守作業を実行するのに必要な技能を第2情報として更に取得する。そして、サーバ300は、例えば、各技能を達成するための教育カリキュラムとして予め定められた情報(データベース)を参照することで、この技能を教育するための人材育成計画を作成し、これを上記の保守支援計画に含めて提供する。これによれば、将来にベストモデルの作業手順に従って作業する際の人材を確保し易くなり、以て、将来的なインフラ設備の保守に要する人的資源を最小化することが可能になる。
【0059】
ここで、中長期的観点で保守作業に対する資源の不足が問題となっているが、これが適切に社会発信されておらず、社会インフラを永続的に安定稼働させるために必要な資源に対する社会的な認知度が低い。そのため、将来的なインフラ設備の保守に対する危機管理が適切になされているとは言い難い。
【0060】
そこで、サーバ300は、インフラ設備の保守支援計画について、将来実施されることが予定されている全ての保守作業に対する実行可能性を判定することと、この実行可能性を所定のインタフェースを介して閲覧可能に提供することと、を更に実行してもよい。上述したように、将来の保守作業は、インフラ設備の当初耐用年数や利用環境等から、設備更新やメンテナンス対応等の必要性や優先度が予め定められている。そして、サーバ300は、将来の保守作業について、複数の第1情報の中から、その作業内容や作業環境が類似している情報を抽出し、更に、該情報に対応する第2情報を参照することで、第3情報を生成することができるが、例えば、将来人的資源に対して、確保可能だと考えられる人的資源(これは、現在の人的資源とその年齢構成、および育成する人的資源から推測することができる。)が不足する場合には、将来の全ての保守作業に対応することができない事態が生じ得る。したがって、サーバ300は、上記の実行可能性を判定し、それを、例えば、所定のウェブサイトによって提供されるインタフェースを用いて、閲覧可能に提供する。そうすると、上記のウェブサイトを介して、将来の保守作業の実行可能性を社会発信することができる。
【0061】
これによれば、将来人的資源や上記の実行可能性といった客観的且つ具体的根拠に基づいて、その情報を社会に共有することができ、社会からの納得と共感をもって中長期的な対応策の立案と実行を図ることができる。また、将来の全ての保守作業に対応することができない場合には、それを早期に社会に共有することができ、その事態への対策期間を確保することが可能になる。
【0062】
以上に述べた情報処理システム100によれば、将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を予測し、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることができる。
【0063】
<第2実施形態>
第2実施形態における情報処理システム100について、図6に基づいて説明する。本実施形態では、サーバ300は、第1情報として、インフラ設備に対して実施される保守作業についての1年を通しての繁閑差及び地域差を更に取得する。
【0064】
ここで、例えば、架空送電設備の保守工事のための特殊高所作業では、該作業を実施するために一時的に通電を停止させる必要がある。そうすると、このような保守作業は、電力需要が比較的少ない春や秋に集中する傾向にある。つまり、インフラ設備に対して実施される保守作業について、1年を通して繁閑差が生じることになる。また、例えば、発電所などの発電設備の設置場所が限定されているため、架空送電設備の設置場所に地域差が生じ、その結果、該設備の保守作業にも地域差が生じることになる。
【0065】
そこで、サーバ300は、繁閑差及び地域差が平滑化されるように、インフラ設備の保守支援計画を作成する。これにより、将来的なインフラ設備の保守に要する資源を効率化することができる。
【0066】
図6は、本実施形態における保守支援計画を説明するための図である。ここで、図6(a)には、繁閑差及び地域差の平滑化を行わない場合の保守支援計画を例示していて、図6(b)には、繁閑差及び地域差の平滑化を行った場合の保守支援計画を例示していて、夫々について、作業予定日、作業場所、作業内容、他地域からの応援の有無、必要資源が定められている。そして、図6(a)によると、2026年10月の前半に岐阜県で150名規模の作業が予定されているが、この場合、当該地域における人的資源が不足する虞がある。
【0067】
そこで、本実施形態では、図6(b)に示すように、2026年10月1日の作業が、2026年5月1日の作業と2026年10月1日の作業とに分割されて予定される。つまり、繁閑差が平滑化される。そうすると、各作業に必要な人的資源を、例えば50名とすることができるため、人的資源を確保し易くなる。更に、同様に岐阜県にて2026年10月8日に予定されている作業では、同県における請負会社の負担を軽減するため、他地域から応援を受けることが予定される。つまり、地域差が平滑化される。そうすると、地域間での人材の流入・流出が可能になり、業界全体として資源の効率化が図られる。
【0068】
このように、本実施形態では、インフラ設備に対して実施される保守作業について、中長期的視点で業界全体で資源を適正に配置することができ、将来的なインフラ設備の保守に要する資源を効率化することができる。
【0069】
そして、本実施形態に係る情報処理システム100によっても、将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を予測し、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることができる。
【0070】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0071】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、第1取得部3031や第2取得部3032をサーバ300とは別の演算処理装置に形成してもよい。このとき当該別の演算処理装置はサーバ300と好適に協働可能に構成される。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0072】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0073】
100・・・情報処理システム
200・・・ネットワーク
300・・・サーバ
301・・・通信部
302・・・記憶部
303・・・制御部
400・・・ユーザ端末
【要約】
【課題】将来的なインフラ設備の保守に要する所定の資源を予測し、インフラ設備を効率的且つ永続的に安定稼働させることができる技術を提供する。
【解決手段】本開示のインフラ保守支援装置は、インフラ設備の保守支援計画を提供するインフラ保守支援装置である。インフラ保守支援装置は、保守作業についての作業環境及びその作業内容を含んだ第1情報を取得することと、保守作業に従事した人的資源についての第2情報を取得することと、複数の第1情報と、複数の第2情報と、に基づいて、将来実施されることが予定されている所定の保守作業について、それに必要な人的資源である将来人的資源を含んだ第3情報を生成することと、第3情報に基づいて、インフラ設備の保守支援計画を提供することと、を実行する制御部を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6