(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】トルクヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20221011BHJP
E05D 11/02 20060101ALI20221011BHJP
E05D 11/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F16C11/04 E
E05D11/02
E05D11/08 B
(21)【出願番号】P 2018040723
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501354462
【氏名又は名称】株式会社オースズ
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瑞貴
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-46039(JP,A)
【文献】特開2004-116773(JP,A)
【文献】特開2007-303223(JP,A)
【文献】実開平7-8642(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動中心となる軸部と、前記軸部に回動不能に装着された第一の支持部と、前記軸部に対して回動可能に装着された第二の支持部と、前記軸部に回動不能に装着されたワッシャと、押さえ手段とを有するトルクヒンジ装置で
あり、前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面の少なくともいずれか1箇所の摺動面には、溝を有することを特徴とするトルクヒンジ装置であって、互いに摺動する面において、
前記溝が意図的に形成された溝であり、前記摺動面の溝の
形状は、孔状、ディンプル状、線状、錐状、柱状、又はお椀状からなる群から選択される少なくとも1種であり、一の摺動面の溝の形状は、他の摺動面の溝の形状と異なる形状であることを特徴とするトルクヒンジ装置。
【請求項2】
前記溝の
形状が孔状であって、前記溝が複数ある場合、前記孔状の
溝は、摺動面において、前記回動の同一円周上に設けないことを特徴とする
請求項1記載のトルクヒンジ装置。
【請求項3】
前記溝の
形状が線状であって、前記線状の溝の構造は、メッシュ状、格子状、網目状、直線状、曲線状、螺旋状、又は放射線状である
請求項1又は2に記載のトルクヒンジ装置。
【請求項4】
さらに、前記軸部にはスプリングワッシャを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載のトルクヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクヒンジ装置に関し、特に、耐久性に優れたトルクヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄型の液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)やプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)が広く普及しつつあり、これらディスプレイの省スペース性を生かしつつ、パネル面の向き(水平角・俯仰角)の変更ができるようにした支持装置も、各種提案されている。また、コンビニエンスストア、業務用ダイニングキッチンやスナックバーなどで設置される、跳ね上げ式カウンタ用支持装置が、各種提案されている。このような支持装置に欠かせないのが、トルクヒンジ装置である。
【0003】
例えば、従来のトルクヒンジ装置として、跳ね上げ式カウンタに取り付けると、可動天板を180度水平になるまで回動でき、開閉いずれの方向についても、該可動天板の引き上げは容易であり且つ回動半ばから水平位置までを部分制動して自由落下を防ぐ制動ヒンジ機構が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1も含め、従来のトルクヒンジ装置においては、耐荷重等の対策はできているものの、耐久性に依然として課題があった。優れた耐久性を付与するには、経時的な使用によっても、摺動面が摩耗により破損せずに、部品が長持ちすることが重要な点の一つである。
【0006】
また、従来のトルクヒンジ装置においては、耐久性以外の点に重点が置かれていたために、十分な耐久性を得られることなく、製品寿命が比較的長い製品に要求されるような耐久性には対応できていないという問題点を有する。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来よりも耐久性が向上したトルクヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者は、トルクヒンジ装置のトルク機構について、鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0009】
すなわち、本発明のトルクヒンジ装置は、回動中心となる軸部と、前記軸部に回動不能に装着された第一の支持部と、前記軸部に対して回動可能に装着された第二の支持部と、前記軸部に回動不能に装着されたワッシャと、押さえ手段とを有するトルクヒンジ装置であり、前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面の少なくともいずれか1箇所の摺動面には、溝を有することを特徴とするトルクヒンジ装置であって、互いに摺動する面において、前記溝が意図的に形成された溝であり、前記摺動面の溝の形状は、孔状、ディンプル状、線状、錐状、柱状、又はお椀状からなる群から選択される少なくとも1種であり、一の摺動面の溝の形状は、他の摺動面の溝の形状と異なる形状であることを特徴とする。
【0012】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、前記溝の形状が孔状であって、前記溝が複数ある場合、前記孔状の溝は、摺動面において、前記回動の同一円周上に設けないことを特徴とする。
【0013】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、前記溝の形状が線状であって、前記線状の溝の構造は、メッシュ状、格子状、網目状、直線状、曲線状、螺旋状、又は放射線状であることを特徴とする。
【0014】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、さらに、前記軸部にはスプリングワッシャを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトルクヒンジ装置によれば、摺動面に設置された溝にグリスが貯蔵して、当該トルクヒンジ装置を備えた製品の耐久性を向上させることが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部を示す図である。
図1(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部を真上から見た図を示す。
図1(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部の側面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部を示す図である。
図2(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部を真上から見た図を示す。
図2(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部の側面図を示す。但し、
図2(b)では、ディンプル状の溝が入っていない側面であるので、溝は図示されていない。
【
図3】
図3は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部を示す図である。
図3(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部を真上から見た図を示す。
図3(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部の側面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを示す図である。
図4(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを真上(溝無し側)から見た図を示す。
図4(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャの断面図を示す。4(c)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを真上(溝有り側)から見た図を示す。4(d)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャ等の溝部の拡大図を示す。
【
図5】
図5は、耐久試験におけるサイクル図を示す。トルクヒンジ装置サンプルを試験機にセットして、0度の状態と、90度の状態において、トルクヒンジ装置を回動させた場合のサイクルを示す。
【
図6】
図6は、トルクヒンジ装置の耐久性試験における測定個所と方向を示す図である。
【
図7】
図7は、耐久性試験を16万サイクル行った場合のトルク値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のトルクヒンジ装置は、回動中心となる軸部と、前記軸部に回動不能に装着された第一の支持部と、前記軸部に対して回動可能に装着された第二の支持部と、前記軸部に回動不能に装着されたワッシャと、押さえ手段とを有するトルクヒンジ装置であって、少なくとも前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面には、溝を有することを特徴とする。前記回動中心となる軸部については、軸部に装着される部材が当該軸部を中心として回転可能にする手段、及び回転不能にする手段等を備える限り、特に限定されない。例えば、回転可能にするには、軸部が円とすると、当該円の直径よりやや大きい円を有する部材とすることができる。また、回転不能にする手段としては、特に限定されないが、例えば、軸部の一部が円以外の断面形状、例えば、長方形、四角形、いわゆる「Dカット」、「ダブルDカット」と呼ばれる円の一部を直線にした形状等で形成されている場合、当該断面形状と概ね同一またはそれ以上の形状の空隙を有する部材とするか、軸部に当該部分のみを固定することとしてもよい。
【0018】
また、溝には、グリス等の潤滑剤を貯蔵することができる。いわゆるグリス溜まりの役割を有することができる。したがって、溝は、潤滑剤貯蔵用溝とすることができる。従来においては、溝ではなく、穴が主流であったために、当該穴からグリス等の潤滑剤が漏れ、ひいては、当該ヒンジの耐久性を低下させる要因ともなっていたが、本発明では、溝としているので、グリス等の潤滑剤が漏れ出してしまうことは基本的にないため、耐久性を飛躍的に向上させることが可能である。すなわち、溝は、好ましくは、貫通していない溝とすることができる。
【0019】
これらの溝構造によって、より潤滑剤を保持することが可能となり、ひいては、トルクヒンジ装置の耐久性を向上させることが可能となる。また、このような溝の存在により、潤滑剤を長く保持することが可能であることから、同じ大きさの力で支持部同士を回動させることが可能となる。すなわち、通常は、回動させる場合、初期動作(回転動作の最初)はきつく動かしにくくなるのが一般的であるが、潤滑剤が充填された溝のおかげで、トルクヒンジ装置のスムーズな動作を可能とする。
【0020】
前記第一の支持部は、前記軸部に回転不能に装着することができる。回転不能に装着できれば足り、前記第一の支持部を、前記軸部に固定してもよく、前記軸部と一体成型であってもよい。
【0021】
また、押さえ手段が押さえワッシャである場合、前記押さえワッシャは、前記軸部に回転不能に装着することができる。回転不能に装着できれば足り、前記押さえワッシャを、前記軸部に固定してもよく、前記軸部と一体成型であってもよい。但し、前記第一の支持部及び前記押さえワッシャを双方とも、軸部に完全に固定してしまう場合、トルク圧を調節することが困難になるので、固定する場合には、好ましくは、前記第一の支持部又は前記押さえワッシャのいずれかを固定することができる。
【0022】
前記第二の支持部は、前記軸部に回転可能に装着することができる。回転可能である限り、ヒンジの役割を果たすことができる。また、押さえ手段は、前記第一の支持部、前記第二の支持部、前記軸部に回動不能に装着されたワッシャを、押さえることができ、トルクヒンジのトルク圧を調節することができる。なお、スプリングワッシャを用いる場合には、スプリングワッシャのばね力を介して調整することもできる。例えば、押さえ手段としては、押さえワッシャ、ナットなどを挙げることができる。押さえワッシャを用いる場合、押さえワッシャをどのくらい押し込んだ状態でカシメるかによって調整できる。また押さえ手段として、ナットを用いる場合(この場合、軸の先端にねじを切ることができる。)、ナットのねじ込み量でトルクを調整することもできる。
【0023】
また、本発明において、少なくとも前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面には、溝を有することができる。各摺動面は、第二の支持部が回転するときに、摺動する面とすることができる。
【0024】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面の溝の構造は、潤滑剤を摺動面にできるだけ多く、かつ、まんべんなく蓄えるという観点から、孔状、ディンプル状、線状、錐状、柱状、又はお椀状からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。孔状溝はグリス等を多く蓄えることができ格子状溝は摺動面にまんべんなくグリスを蓄えることができるという観点から、前記摺動面の溝の構造は、孔状、線状を好ましく使用することができる。
【0025】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、互いに摺動する面において、前記摺動面の溝の構造は、同形状の場合、回転時に完全に重なる場所が存在しスムーズな摺動を妨げる虞があるという観点から、異なる形状であることを特徴とする。
【0026】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、前記孔状の溝が複数ある場合、潤滑剤等の溝への添加剤を長持ちさせて、ひいてはトルクヒンジ装置の耐久性を高めるという観点、すなわち、回転運動時に、潤滑剤を摺動面のより広範囲に供給できることで摩耗を抑制し、トルクヒンジ装置の耐久性を高めると同時に摺動状態のむらを無くしトルクヒンジの良好な動作を実現することができるという観点から、前記孔状の溝は、摺動面において、前記回動の同一円周上に設けないことを特徴とする。回動の同一円周上に孔を設けないことによって、孔内の潤滑剤がより一層分散されて、良好なトルクヒンジ装置の動作も保証することができる。孔の数についても、所望の耐久性効果を発揮することができれば、特に限定されない。孔の数としては、例えば、支持部同士が接触して擦れる面積が減少する、すなわち摺動面積が減少すると、発生トルクが減るので、潤滑剤が切れないレベルで、かつ、可能な限り面積を広くとるという観点から、1個以上、好ましくは、2個~20個、より好ましくは、4~10個とすることができる。
【0027】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、前記線状の溝は、溝内の潤滑剤を摺動面内でより一層分散させて、潤滑剤を蓄えるとともに、トルクヒンジ装置の耐久性を向上させるという観点から、メッシュ状、格子状、網目状、直線状、曲線状、螺旋状、又は放射線状であることを特徴とする。
【0028】
また、本願発明のトルクヒンジ装置の好ましい実施態様において、さらに、前記軸部にはスプリングワッシャを備えることを特徴とする。スプリングワッシャは、さらばねとも呼ばれ、第一の支持部、第二の支持部、ワッシャ等の押圧状態をさらに極め細かく調節することができ、ひいては、所望のトルクを有するトルクヒンジ装置を提供することが可能である。同じ向きのさらばねの複数使用は、より強い押圧を提供することができる。スプリングワッシャの外側に、押さえ手段を設置することにより、所望のトルク値を有するトルクヒンジ装置を得ることができる。押さえ手段として、押さえワッシャを用いた場合には、カシメ等で固定することができる。また、押さえ手段として、ナットを用いた場合には、ナットの締め付けによってトルクの調整及び固定をすることができる。ナットを用いする場合には、押さえワッシャはあってもなくてもよい。
【0029】
なお、第一の支持部と、第二の支持部、軸部に回動不能に装着されたワッシャ等は、複数有していてもよい。このような場合においても、摺動面の溝の構造は、異なる形状とすることができる。
【実施例】
【0030】
ここで、本発明のトルクヒンジ装置の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0031】
図面を参照して、本発明のトルクヒンジ装置の一実施態様を説明すれば以下の通りである。
【0032】
図1は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部を示す図である。
図1(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部を真上から見た図を示す。
図1(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の軸部の側面図を示す。
図1において、1は回動中心となる軸部の端、2は円柱構造の一部を有する形状を備えた、相手方の構造に応じて回転可能な構造及び回転不能な構造を有する部分、3は円柱構造の一部を有する形状を備えた、相手方の構造に応じて回転可能な構造及び回転不能な構造を有する部分、4は円柱構造を有する部分(円柱構造部)、5は空間部(当該空間の役割はカシメ(カールカシメという形状)を行うために必要な空間とすることができる。押さえ手段がナット等の場合には、あってもなくてもよい。)、6は回動中心となる軸部、をそれぞれ示す。なお、上記3の部分は、さらばねが入ることができる場所であるので、円柱でもよいが、下側の上記2の部分に部品を入れるための通路としてダブルDカットが入って加工されている。
【0033】
図2は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部を示す図である。
図2(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部を真上から見た図を示す。
図2(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第一の支持部の側面図を示す。
図2において、10は溝(図示しないが、溝を有する部分)、11はトルクヒンジ装置を必要とする部材への固定手段、12は回転不能とする形状を有する構造の部分、13は第一の支持部をそれぞれ示す。
【0034】
図3は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部を示す図である。
図3(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部を真上から見た図を示す。
図3(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置の第二の支持部の側面図を示す。20は第二の支持部、21はトルクヒンジ装置を必要とする部材への固定手段、22及び23は溝(図示しないが、溝を有する部分)、24は溝、をそれぞれ示す。
【0035】
図4は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを示す図である。
図4(a)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを真上(溝無し側)から見た図を示す。
図4(b)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャの断面図を示す。4(c)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャを真上(溝有り側)から見た図を示す。4(d)は、本発明の一実施態様におけるトルクヒンジ装置のワッシャ等の溝部の拡大図を示す。
図4において、30はワッシャ、31は回転不能とする形状を有する構造の部分、32、33、34、35、36、及び37は溝(孔状)、38は溝(孔状)を、それぞれ示す。
【0036】
本発明のトルクヒンジ装置の構造の一例は以下の通りである。回動中心となる軸部6に、前記軸部に回動不能に装着された第一の支持部13と、前記軸部6に対して回動可能に装着された第二の支持部20と、前記軸部に回動不能に装着されたワッシャ30と、押さえ手段とを装着することができる。ここで、軸部6は様々な断面形状を有しており、それぞれの断面形状部分で、軸部に装着された第一の支持部、第二の支持部、ワッシャ、スプリングワッシャ等を、回動不能、又は回動可能に設定できるように構成することができる。例えば、第一の支持部は、軸部よりやや大きい円周形状を有する部分を備えるが、円柱構造の一部を有する形状を備えた、相手方の構造に応じて回転不能な構造を有する部分、すなわち、直線部分の穴(貫通している穴)を有するので、回転不能となる。
【0037】
これに対して、例えば、第二の支持部は、軸部よりやや大きい円状の穴(貫通している穴)を有し、軸部を中心として、回転可能(回動可能)となる。
【0038】
ワッシャ30も、第一の支持部と同様の穴(貫通している穴)を有するので、軸部に対して回動不能となる。
【0039】
このようにトルクヒンジ装置を組み立てると、少なくとも前記第一の支持部の摺動面、前記第二の支持部の摺動面、又は前記軸部に回動不能に装着されたワッシャの摺動面には、溝を有することができる。この例においては、異なる形状の溝が組み合わさるように設計されている。具体的には、第一の支持部13の溝10を有する摺動面と、第二の支持部20の溝22、又は23を有する摺動面が接触し(所望の構造により、溝22又は溝23が、溝10と接触することができる。)、溝22又は23を有する摺動面と、ワッシャ30の溝32~37等を有する摺動面とが接触することができる。
【0040】
この一例のように、溝10と、溝22又は23とは、異なる形状の溝であることが、同形状の場合、回転時に完全に重なる場所が存在しスムーズな摺動を妨げる虞があるという観点から、好ましい。
【0041】
なお、この例においては、溝10、32~37は、孔状であり、溝22及び23は、格子状として、接触する摺動面に設定される溝を異なる形状の溝としている。
【0042】
図示しないが、所望のトルク値を得るために、スプリングワッシャを使用して、圧力をかけることができる。スプリングワッシャを使用する場合、軸部に回転不能に装着されたワッシャと、押さえ手段との間に、スプリングワッシャを1個又はそれ以上挿入して、所望のトルク値を有するトルクヒンジを得ることができる。
【0043】
なお、摺動面に溝を有していればよく、第一の支持部、第二の支持部、ワッシャを、回動可能にするか、回動不能にするかは適宜設定することができ、このような態様も本発明の一実施態様である。孔の大きさも、同じ大きさのものを使用してもよく、全く異なる種々の大きさのものを使用してもよい。
【0044】
<耐久性試験>
次に、本発明のトルクヒンジ装置の一実施態様について、耐久性試験を行った。
製品規格値、初期値(製造時)規格:0.8~1.2N・m
耐久規格値:4万サイクル後に初期値±20%以内のこと。
使用測定器具:デジタルプッシュプルゲージ(メーカー:株式会社イマダ、モデル:DS2-500N、シリアルNo:212474)
【0045】
測定方法は以下の通りである。
測定方法:1)フォースゲージに接続されたブロックにブラケットB(第一の支持部)をセットする。2)ブラケットA(第二の支持部)に回転させる冶具をセットする。3)フォースゲージに表示された数値をトルク値に換算する。4)初動トルクはCW:61~64(
図6)、CCWは65~68(
図6)の各4点を測定した。動トルクはCWは61から64(
図6)、CCWは65から68(
図6)動かして上限および下限値を測定した。ただし、目視での数値確認の為、上限値は小数点以下を切り上げ下限値は小数点以下を切り下げた値とする。
【0046】
装置の摺動面の溝は、一方に、「格子状(メッシュ)のグリス溜りを設けたもの」、他方に「ディンプルのグリス溜りを設けたもの」とし、この2種類の溝同士を摺動させる組合せについて耐久性試験を行った。その結果、
図7に示すように、耐久回数(初期トルクの±20%以内を保つ)は16万回をクリアすることが明らかになった。
【0047】
一方、「グリス溜りを設けないもの」と「貫通穴のグリス溜りを設けたもの」とを摺動させる従来の組合せにおいては、耐久回数(初期トルクの±20%以内を保つ)は3万回にとどまることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
このような本発明のトルクヒンジ装置は、簡便な設計により従来技術に比べて耐久性を大幅に向上させることが可能であるため、広範な範囲での分野において有益であることが期待できる。
【符号の説明】
【0049】
1 軸部の端
2 円柱構造の一部を有する形状を備えた、相手方の構造に応じて回転可能な構造及び回転不能な構造を有する部分
3 円柱構造の一部を有する形状を備えた、相手方の構造に応じて回転可能な構造及び回転不能な構造を有する部分
4 円柱構造を有する部分(円柱構造部)
5 空間部
6 軸部
10 溝(図示しないが、溝を有する部分)
11 トルクヒンジ装置を必要とする部材への固定手段
12 回転不能とする形状を有する構造の部分
13 第一の支持部
20 第二の支持部
21 トルクヒンジ装置を必要とする部材への固定手段
22、23 溝(図示しないが、溝を有する部分)
24 溝(格子状)
30 ワッシャ
31 回転不能とする形状を有する構造の部分
32、33、34、35、36、37 溝(孔状)
38 溝(孔状)