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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/42 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
F16K1/42 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018209787
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020076453
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102452
【氏名又は名称】エスアールエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】世良 和也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 敏治
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸伸
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特許第6359745(JP,B1)
【文献】実公昭47-038504(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体部と、
前記弁本体部の一端部と他端部との間に直線状に形成された軸通路と、
前記弁本体部における前記軸通路からそれぞれ離れた位置に設けられた少なくとも2つの流体ポートと、
前記少なくとも2つの流体ポートを前記軸通路に連通するように、前記軸通路における互いに離れて位置する少なくとも2つの接続位置で前記軸通路に接続されている少なくとも2つの流路と、
前記軸通路内にその長さ方向に沿って配置された軸と、
前記軸通路内における前記少なくとも2つの接続位置のうち前記一端部側にあるものよりも前記一端部側に寄った位置と、前記少なくとも2つの接続位置のうち前記他端部側にあるものよりも前記他端部側に寄った位置とに配置され、前記軸を前記弁本体部の外界とシールしている少なくとも2つのシール部材と、
前記軸通路に沿っての前記軸の進退を案内するように、前記軸通路に間隔をおいて配置された少なくとも2つの案内部材と、
前記軸通路における前記少なくとも2つの接続位置の間の位置に配置され、弁座を有する少なくとも1つの弁座部材と、
前記少なくとも2つの接続位置の間にある前記軸の部分に設けられ、前記軸の進退に応じて前記弁座に着座及び離座する少なくとも1つの弁体とを、
有し、前記シール部材によってシールされている前記軸の部分の径と、前記弁座の内径とがほぼ等しく形成された弁において、
前記弁座部材の外周面は前記軸通路の内周面に接触し、前記弁座部材外周面は前記他端部側に向かうに従って径が徐々に拡大される拡大面を有し、前記拡大面が接触している前記軸通路の前記内周面は、前記拡大面に一致するように前記他端部側に向かうに従って径が徐々に拡大するように形成され、前記拡大面を前記接触面に押圧する押圧手段が設けられている弁。
【請求項2】
請求項1記載の弁において、前記拡大面は、前記弁座よりも前記他端部側に設けられている弁。
【請求項3】
請求項1記載の弁において、前記押圧手段は、回転によって前記一端部側と前記他端部側とを進退する回転進退手段であって、前記弁座部材と前記押圧手段との間に回転非伝達押圧部材が介在している弁。
【請求項4】
請求項1記載の弁において、前記複数の案内部材のうち前記他端部側によった位置にある他端部側案内部材は、前記シール部材のうち前記他端部側にある他端部側シール部材よりも前記弁座部材側に配置され、前記弁座部材は、前記他端部側案内部材と一体に形成され、前記押圧手段は、前記弁座部材と一体に形成された前記他端部側案内部材を、前記他端部側から前記一端部側に押圧する弁。
【請求項5】
請求項1記載の弁において、前記弁座部材及び前記弁体の一方または両方は、ダイヤモンドライクカーボンによって被覆されている弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が取り付けられた軸を進退させて、弁体を弁座に着座及び離座させる弁に関し、特に、弁座の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような弁として、特許文献1に開示されたようなものがある。特許文献1の弁では、弁本体部の一端部と他端部との間に形成された円穴状の軸通路に、その長さ方向に沿って軸が配置されている。この軸は、弁本体部の一端部側に軸通路に沿って間隔をおいて配置した2つのシール部材と、他端部側に軸通路に沿って間隔をおいて配置した2つのシール部材とによって、外界とシールされている。弁本体部における軸通路から離れたそれぞれの位置に2つの流体ポートが形成されている。弁本体部内の2つの流路が、2つの流体ポートを軸通路に連通させている。2つの流路間に弁座が配置されている。軸に弁体が設けられている。弁体は、軸の進退に応じて弁座に着座及び離座する軸上の位置に配置されている。シール部材によってシールされている軸の部分の径と、弁座の内径とがほぼ等しく形成されている。軸は軸通路に配置された案内部材によって案内される。即ち、弁本体部の一端部側にあるシール部材のうち最も弁体に近いシール部材の位置よりも更に弁体に近い位置に1つの案内部材が配置され、弁本体部の他端部側にあるシール部材のうち最も弁体に近いシール部材の位置よりも更に弁体に近い位置に1つの案内部材が配置されている。この案内部材は、弁座と一体の弁座一体案内部材に形成されている。これら案内部材以外にも軸を案内する案内部材が設けられているが、その詳細は省略する。弁座一体案内部材では、弁座の形成部分の外周面は円筒状に形成され、この外周面に配置した弁座一体案内部材用のシール部材を介して軸通路の周面に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6359745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の弁では、弁座一体案内部材における弁座形成部分の外周面は、弁座一体案内部材用シール部材を介して円穴状の軸通路と接触して、流体の漏れを防止している。この弁座一体案内部材用シールには、合成樹脂やゴム製のOリングやパッキンが使用されることが多い。上記の弁が高圧流体を開閉するために使用されると、弁座一体案内部材用シールは、高圧力に晒されることになり、圧縮永久変形を受けて、経年劣化しやすく、弁の耐久性や信頼性が低かった。
【0005】
本発明は、耐久性や信頼性の高い弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の弁は、弁本体部を有している。弁本体部は、一端部と他端部とを備え、これらの間に直線状に軸通路が形成されている。弁本体部における軸通路からそれぞれ離れた位置に少なくとも2つの流体ポートが設置されている。少なくとも2つの流体ポートは、弁本体部の一端部側と他端部側とに位置することもできる。少なくとも2つの流路が、前記軸通路における互いに離れて位置する少なくとも2つの接続位置で、前記軸通路に接続されて、前記少なくとも2つの流体ポートを前記軸通路に連通している。前記軸通路内にその長さ方向に沿って軸が配置されている。この軸は一体物として形成することもできるし、複数の分割軸部材からなるものとすることもできる。また、この軸の駆動は、駆動部、例えば流体圧式または電磁式の駆動部を設けて、機械的に駆動することもできるし、手動によって駆動することもできる。前記軸通路内における前記少なくとも2つの接続位置のうち前記一端部側にあるものよりも前記一端部側に寄った位置と、前記少なくとも2つの接続位置のうち前記他端部側にあるものよりも前記他端部側に寄った位置とに、少なくとも2つのシール部材が配置され、前記軸を前記弁本体部の外界とシールしている。前記軸通路に間隔をおいて少なくとも2つの案内部材が配置されて、前記軸通路に沿って前記軸の進退を案内する。弁座を有している少なくとも1つの弁座部材が、前記軸通路における前記少なくとも2つの接続位置の間の位置に配置されている。前記少なくとも2つの接続位置の間にある前記軸の部分に、少なくとも1つの弁体が設けられ、前記軸の進退に応じて前記弁座に着座及び離座する。前記シール部材によってシールされている前記軸の部分の径と、前記弁座の内径とは、ほぼ等しく形成されている。前記弁座部材の外周面は前記軸通路の内周面に接触し、前記弁座部材外周面は前記他端部側に向かうに従って径が徐々に拡大される拡大面を有している。前記拡大面が接触している前記軸通路の前記内周面である接触面は、前記拡大面に一致するように前記他端部側に向かうに従って径が徐々に拡大するように形成されている。前記拡大面を前記接触面に押圧手段が押圧している。
【0007】
このように構成された弁では、弁座部材の外周面の拡大面が押圧手段によって軸通路の内周面である接触面に押圧されており、しかも拡大面は他端部側に向かうに従って径が拡大し、軸通路の接触面も他端部側に向かうに従って径が拡大しているので、いわゆる楔効果が得られる。弁座部材は、軸通路の内周面に直接に密着し、信頼性及び耐久性の点から問題のあるシール部材を使用する必要が無い。従って、耐久性及び信頼性が高い弁となる。
【0008】
上記の態様の弁において、前記拡大面を、前記弁座よりも前記他端部側に設けることができる。このように構成すると、上記の態様と同様に弁座部材を軸通路に内周面に密着させることができる上に、押圧手段によって押圧されることによって弁座部材に変形が生じるとしても、その変形は、弁座よりも他端部側にある拡大面で生じるので、弁座に変形は生じず、弁座に対する弁体の密着性が維持される。
【0009】
上記の態様の弁において、前記押圧手段は、回転によって前記一端部側と前記他端部側とを進退する回転進退手段とすることができる。この場合、前記弁座部材と前記押圧手段との間に回転非伝達押圧部材を介在させている。このように構成すると、回転進退手段が回転して、弁座部材の拡大面を押圧するとき、回転非伝達押圧部材を介在させているので、回転進退手段の回転は、弁座部材には伝わらず、弁座部材は回転しない。従って、押圧手段が弁座部材を押圧していく途中で、弁座が弁体に接触したとしても、弁座部材が回転しないので、弁座も回転せず、弁座や弁体に損傷が生じることはないし、弁座部材の外周面と、これに接触している軸通路の接触面も損傷することはない。
【0010】
上記の態様の弁において、前記複数の案内部材のうち前記他端部側に寄った位置にある他端部側案内部材を、前記シール部材のうち前記他端部側にある他端部側シール部材よりも前記弁座部材側に配置することができる。この場合、前記弁座部材を、前記他端部側案内部材と一体に形成する。前記押圧手段は、前記弁座部材と一体に形成された前記他端部側案内部材を、前記他端部側から前記一端部側に押圧する。
【0011】
このように構成すると、弁座部材と案内部材とが一体に形成されているので、案内部材を押圧手段によって押圧することで、弁座部材を軸通路に密着させることができる。
【0012】
前記弁座部材及び前記弁体の一方または両方を、ダイヤモンドライクカーボンによって被覆することができる。このように構成すると、例えば、この態様の弁が稼働時の弁体の着座時に、弁座及び弁体の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できる。また、この態様の弁を組み立てるために弁座部材を弁本体に挿入して押圧手段によって弁座部材を押圧するときに弁座部材が回転したとしても、弁体をダイヤモンドライクカーボンによって被覆しておくと、弁座及び弁体の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できる。また上記と同様に組立時に弁座部材が回転したとしても、弁座部材をダイヤモンドライクカーボンで被覆しておくか、弁座部材及び弁体の両方をダイヤモンドライクカーボンで被覆しておくと、弁座及び弁体の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できるうえに、弁座部材の傾斜面と軸通路の接触面との間の接触による摩擦による損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、弁座部材の軸通路への密着性を高めた状態をシール部材を使用せずに維持することができ、弁の信頼性を高めることができる上に耐久性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態の弁の縦断正面図である。
図2図1の一部の拡大図である。
図3】本発明の第2の実施形態の弁の部分省略縦断正面図である。
図4】第1及び第2の実施形態の弁の変形例の部分省略縦断正面図である。
図5】第1及び第2の実施形態の弁の別の変形例の部分省略縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態の弁は、開閉弁に本発明を実施したものである。この開閉弁は、高圧流体、例えば高圧気体、具体的には水素ガスを通過、遮断するために、水素ガスが供給されている配管中に配置される。
【0016】
この開閉弁は、図1に示すように、弁部2と駆動部4とを備えている。弁部2は、弁本体部、例えば弁ハウジング6を有している。弁ハウジング6は、例えば概略筒状に形成された金属製で、図1における上下方向の中央の周囲に、外方に全域が突出した膨出部6aを有している。この膨出部6aにおける上下方向の異なる位置に、ポート8、10が形成されている。ポート8は、弁ハウジング6の一端、例えば上端側にある膨出部6aの外周面から膨出部6aの内部に向かって水平に形成され、図1における右側に位置している。ポート10は、弁ハウジング6の他端、例えば下端側に膨出部6aの外周面から膨出部6aの内部に向かって水平に形成され、図1における左側に位置している。即ち、ポート8、10は、膨出部6aにおける互いに反対側に位置している。これらポート8、10それぞれに連なって、弁ハウジング6の中央に向かって水平に流路12、14が形成されている。これら流路12、14の内奥端は、軸通路16に連通している。従って、ポート8、10は、流路12、14及び軸通路16を介して通じている。
【0017】
軸通路16は、弁ハウジング6の一端と他端とをつなぐ直線、例えば上下方向の中心軸線上に直線状に形成された例えば円孔である。軸通路16は、上下両端で半径方向に拡大され、かつ開口し、後述するように中途には複数の段が形成され、直径が異なる複数の箇所がある。この軸通路16内に、その長さ方向、例えば上下方向に沿って軸が配置されている。軸は、例えば金属製で、複数、例えば2本の下側及び上側分割軸部材18、20を有している。
【0018】
下側分割軸部材18は、弁ハウジング6の下端付近から弁ハウジング6の中間付近まで位置している。下側分割軸部材18の上端部には概略円筒状の頭部22が形成されている。頭部22は、流路12よりも幾部上側に位置し、頭部22の下側に、頭部22よりも細径の円筒状の首部24が形成されている。首部24の下端の全域に弁体26が一体に形成されている。弁体26は、下側を向いた円錐台状に形成されている。弁体26の下側に連なって細径の円筒状部28が形成され、円筒状部28の下端には、円筒状部28よりも太径の円筒状部30が形成されている。
【0019】
円筒状部30の上部の一部と、円筒状部28と弁体26とを覆うように、軸通路16内には下側案内部材32が配置されている。下側案内部材32は、例えば弁ハウジング6と同一の金属製である。下側案内部材32の中心軸上に上下に貫通した貫通孔34が形成されている。この貫通孔34の中心軸線と下側分割軸部材18の中心軸線とは一致している。
【0020】
図2に拡大して示すように、貫通孔34の上端に、弁体26が着座及び離座可能な弁座36が形成されている。この弁座36の形成位置より下方に向かって円筒状部38が形成されている。円筒状部38に対応する軸通路16の部分16aの直径は、円筒状部38の外周面の直径よりも若干大きくされている。円筒状部38の下端からさらに下方に向かって徐々に直径が拡大する傾斜面40を持つ円錐台状部42が、円筒状部38の下端に形成されている。傾斜面40は、円筒状部38の中途に対応する位置まで下側案内部材32の全周面に形成されている。この傾斜面40に対応する軸通路16の部分16bも、傾斜面40に全周面で接触するように下方に向かって直径が徐々に拡大している傾斜接触面とされている。
【0021】
下側案内部材32の円錐台状部42の下端に円筒状部44が形成されている。円筒状部44は、傾斜面40の下端の直径と同一の直径を持ち、下側分割軸部材18の円筒状部30の上部に対応する位置まで形成されている。下側分割軸部材18の円筒状部28に対応する貫通孔34の直径は、円筒状部28よりも大きくされている。この直径が大きくされている貫通孔34の部分と流路14とを連通するように、流路14に対応する円筒状部44の位置には、円筒状部44の内外を貫通して連絡口46が形成されている。円筒状部44に対応する軸通路16の部分16cの直径は、円筒状部44の直径に等しい。円筒状部44の下端には、円筒状部44と同心に円筒状部44よりも直径の小さい小円筒状部48が形成されている。下側分割軸部材18の円筒状部30に対応する貫通孔34の部分は、円筒状部30と等しい直径を有し、円筒状部30の周面と接触している。この接触部分によって、下側分割軸部材18は、上下方向に摺動可能に案内される。小円筒状部48に対応する軸通路16の部分16dの直径は、円筒状部44に対応する部分の直径と同一であり、小円筒状部48と、これに対応する軸通路16の部分16dとの間には、間隙がある。
【0022】
軸通路16における部分16dに続く部分16eが下方に伸びている。この部分16eに続いて部分16fが下方に伸びている。部分16fは、部分16eよりも直径が大きく、その下端が開放されている。この部分16fに押圧部材、例えば蓋部材50が配置されている。蓋部材50の外周面には雄ねじが形成され、この雄ねじは、部分16fの周面に形成された雌ねじに螺合している。蓋部材50は、弁ハウジング6、下側案内部材32と同一の金属製である。
【0023】
蓋部材50の上下方向の中心軸は、下側分割軸部材18の中心軸と一致しており、この中心軸上に支持孔52が形成されている。支持孔52は上部が開口しており、この開口から下側分割軸部材18の下部が支持孔52内に侵入している。支持孔52は、その下端付近には下側分割軸部材18の円筒状部30の直径とほぼ同じ直径の部分52aがあり、この部分52aから上部に向かって2段階に直径が大きくなった段部52b、52cがある。
【0024】
上側の段部52cの直径は、下側案内部材32の小円筒状部48の外径に一致している。この上側の段部52cは、小円筒状部48よりも上側まで伸びている。この段部52cにおける小円筒状部48の下方にこれと接して配置されたシール部材54が下側分割軸部材18の円筒状部30に嵌められており、このシール部材54の外面は支持孔52の段部52cに接触している。シール部材54の下側にある下側分割軸部材18の円筒状部30にはスリーブ56が嵌められ、このスリーブ56は、シール部材54の下側に残った段部52cの部分と段部52bの上部とに接触している。スリーブ56の下側の円筒状部30にシール部材58が嵌められ、その外周面は、支持孔52の部分52bの残りの部分に接触している。
【0025】
蓋部材50の上面には、蓋部材50の外周面と同心に短円筒状部の台部60が形成されている。この台部60上に台部60と同心に上方に向かって押圧用円筒状部62が形成されている。押圧用円筒状部62の外径は軸通路16の部分16cの直径に等しい直径を有している。押圧用円筒状部62の上端は、軸通路16の部分16eを通過して部分16d内に侵入している。押圧用円筒状部62の上部の外周面は、部分16dに接触している。但し、押圧用円筒状部62の上端と円筒状部44の下面との間には、両者に接触して位置するように、非回転押圧用部材、例えばスラストワッシャ64が小円筒状部48の外側に位置している。スラストワッシャ64は、弁ハウジング6、下側案内部材32及び蓋部材50と同一金属製である。押圧用円筒状部62の外周面と部分16eとの間にシール部材66が配置されている。
【0026】
このように構成されているので、蓋部材50を回転させることによって蓋部材50が図1及び図2における上方に進行し、押圧用円筒状部62がスラストワッシャ64を介して下側案内部材32を上方に押し上げる。これによって下側案内部材32の傾斜面40が軸孔16の接触傾斜面16bに接触し、楔効果を発生し、両者を強固に接触させる。その結果、下側案内部材32の外周囲を介して流路12、14が連通することはない。
【0027】
しかも、蓋部材50の回転によって発生した押圧力は、スラストワッシャ64を介して下側案内部材32に伝達されるので、蓋部材50の回転によって下側案内部材自体が回転することはない。従って、弁座36に弁体26が接触している状態で押圧しても、弁座36が回転しながら弁体26に接触することがなく、両者が損傷することもない。
【0028】
そのうえ、傾斜面40は、弁座36から離れた位置に配置されているので、蓋部材50による押圧力は、傾斜面40に加わっても、弁座36には加わらないので、弁座36が押圧力によって変形することはない。
【0029】
なお、弁座36と一体の下側案内部材32及び弁体26の一方または双方には、ダイヤモンドカーボンライクの層が被覆されている。ダイヤモンドカーボンライクは、耐摩耗性が高く、また低摩擦係数を持つものであるので、この弁が稼働時において、弁体26の弁座36への着座時に、弁座36及び弁体26の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できる。また、この弁を組み立てるために弁座36と一体の下側案内部材32を軸通路16に挿入して蓋部材50によって下側案内部材32を押圧するときに弁座36と一体の下側案内部材32が回転したとしても、弁体26をダイヤモンドライクカーボンによって被覆しておくと、弁座36及び弁体26の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できる。また上記と同様に組立時に弁座36と一体の下側案内部材32が回転したとしても、下側案内部材32をダイヤモンドライクカーボンで被覆しておくか、下側案内部材32及び弁体26の両方をダイヤモンドライクカーボンで被覆しておくと、弁座36及び弁体26の摺動抵抗を軽減して、摩耗や摩擦による損傷を防止できるうえに、傾斜面40と軸通路16の接触面16bとの間の接触による摩擦による損傷を防止できる。
【0030】
図1に示すように、下側分割軸部材18の頭部22は、上側分割軸部材20とT溝結合されている。上側分割軸部材20は、円筒状に形成されている。T溝結合するため、下側分割軸部材18の頭部22にはT溝68が形成されている。このT溝68は、下側分割軸部材18の中心軸上に、逆T字状の形成され、その側方が開放されている。上側分割軸部材20の下端にはT字状部70が形成されており、これがT溝68内に配置されている。T字状部70は、上側分割軸部材20の中心軸上に逆T字状に形成されている。T字状部70とT溝68とは、図1に誇張して描いてあるように球面接触しており、T字状部70とT溝68との間には隙間があるように寸法設定されている。
【0031】
従って、上側分割軸部材20が傾いて配置されたとしても、下側分割軸部材18をその中心軸付近で押すので、下側分割軸部材18を傾けることなく、下側分割軸部材18に一体に形成されている弁体26が弁座36に確実に着座する。また、T溝68とT字状部70とは、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20の半径方向への移動が許容されるように結合されているので、上側分割軸部材20と下側分割軸部材18との中心軸のずれが生じても、そのずれは吸収される。この両者の結合については、特許文献1によって公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0032】
上側分割軸部材20の上端は、弁ハウジング6の上端よりも幾分上方に位置している。上側分割軸部材20は、上側案内部材72によって上下方向に案内される。上側案内部材72の大部分は、軸通路16の上部に形成された拡大部74に配置され、残りの部分は、拡大部74よりも上方に突き出している。上側案内部材72が上側分割軸部材20を案内するために、上側案内部材72の上端と下端との間にある上側分割軸部材20が挿通可能な孔76が上側案内部材72の中央に上下方向に沿って貫通した状態で形成されている。この孔76に上側分割軸部材20の大部分が配置されている。上側分割軸部材20の孔76内にある部分と、孔76の内周面との間には隙間があり、この隙間には、上下方向に間隔をおいて2つのシール部材78、80が配置されている。これらの内周面は上側分割軸部材20の周面と接触し、シール部材78、80の外周面が孔76の内周面と接触している。上側にあるシール部材78の上側に上側案内部材72が有するスリーブ82がシール部材78に対する圧力受けとして配置されている。シール部材78、80の間に、シール部材80に対する圧力受けとして上側案内部材72が有するスリーブ84が配置されている。下側のシール部材80の下側に上側案内部材72が有するスリーブ86が配置されている。スリーブ82、86の内周面は上側分割軸部材20の周面と接触し、これらが上側分割軸部材20を上下方向に案内する。従って、上側分割軸部材20と上側案内部材72との中心軸は一致し、上側分割軸部材20の摺動性及びシール性は良好である。なお、案内部材72の外周面と軸通路16との間にもシール部材88が配置されている。
【0033】
上側分割軸部材20の径は、下側分割軸部材18の円筒状部30の径とほぼ等しく、弁座36の径は、上側分割軸部材20の径とほぼ同じである。また、下側分割軸部材18の円筒状部30はシール部材54、58によってシールされ、上側分割軸部材20は、シール部材78,80によってシールされている。そして、弁体26は、これらシール部材54、58、78、80によって外界とシールされている下側分割軸部材18の部分に、形成されている。従って、特許文献1に詳細に記載されているように、流路14から高圧流体が軸通路16に供給される場合、弁体26が弁座36に着座している状態では、流路14からの高圧流体の圧力によって弁体26を上側に押す力が軽減されるし、弁体26が弁座36から離座したときには、流路12、14を流れる流体が高圧でも、その圧力が下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20に対して、これらの軸線方向のうち上下いずれか一方にのみ偏って作用することが軽減される。また、流路12から高圧流体が供給される場合、弁体26が弁座36に着座している状態において、弁体26の弁座36への押し付け力が必要以上に大きくならないので、弁座36の耐久性が向上する。また、弁体26が弁座36から離座している状態では、流路14から高圧流体が軸通路16に供給される場合と同様に、流路12、14を流れる流体が高圧でも、その圧力が下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20に対して、これらの軸線方向のうち上下いずれか一方にのみ偏って作用することが軽減される。
【0034】
弁ハウジング6の上端には上述した駆動部4が取りつけられている。駆動部4は、弁ハウジング6にねじ結合されている結合板90にねじ結合されている。駆動部4の構成は、特許文献1に開示されている駆動部4と同一であるので詳細な説明は省略する。なお、上側分割軸部材20の上端部は、駆動部4の結合軸92にT結合されており、駆動部4が動作していないとき、駆動軸92が図1に示す位置にあり、弁座36に弁体26が着座しており、ポート8.10間を遮断している。駆動部4が動作して、結合軸92が上昇したとき、弁座36から弁体26が離座して、ポート8、10間を連通させる。
【0035】
第2の実施形態の弁を図3に示す。第1の実施形態の弁では、非回転押圧用部材としてスラストワッシャ64を使用したが、第2の実施形態の弁では、スラストワッシャ64に代えて、T字状押圧部材100が使用され、それに伴い蓋部材150の形状が蓋部材50と異なっている。他の構成は、第1の実施形態の弁と同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
下側分割軸部材18の円筒状部30を収容するために蓋部材150に形成されている孔52のうち、蓋部材150の上端から円筒状部30の下端近傍までが、孔52と同心で蓋部材150の半径方向に拡大された拡大支持孔102とされている。この拡大支持孔102内にT字状押圧部材100の水平部104が配置されている。
【0037】
水平部104は、拡大支持孔102と同心の短円柱状に形成されており、その上面は、拡大支持孔102の上縁よりも幾分上方に位置している。水平部104は、拡大支持孔102に対して回転自在であり、蓋部材150がその中心軸の周りに回転しても、水平部104は共廻りしない。水平部104の上面上に垂直部106が形成されている。垂直部106は、水平部104と同心で、水平部104よりも小径で、下側案内部材32の円筒状部44と同一の径を持つ円柱状である。垂直部106は、上方に向かって突出し、円筒状部44の下面に接触している。
【0038】
この垂直部106の上面から水平部104の下面まで貫通孔が形成されている。この貫通孔は、垂直部106を通過し、水平部104の中途まで形成された上側貫通孔部分108と、この上側貫通孔部分108の下端から水平部104の下面まで形成された下側貫通孔部分110とからなる。上側貫通孔部分108は、下側案内部材32の小円筒状部48の外径に一致する径を有している。この上側貫通孔部分108の内周面が、小円筒状部48、その下方にあるシール部材54及びスリーブ56の頭部56aの外周面に接触した状態で、これらが上側貫通孔部分108の内部に収容されている。下側貫通孔部分110は、スリーブ56の脚部56bの外径と同じ内径を有し、上側貫通孔部分108と同心で、スリーブ56の脚部56bとシール部材58と円環体112の外周面が接触した状態で、これらが下側貫通孔部分110内部に収容されている。
【0039】
このように構成しているので、蓋部材150を回転させて、蓋部材150を上方へ移動させても、T字状押圧部材100は回転せずに上方に移動し、垂直部106が下側案内部材32を回転させずに、その円筒状部44に上方に押す。仮に、蓋部材150の回転に伴ってT字状部100が回転したとしても、下側案内部材32は回転しない。従って、第1の実施形態の弁と同様に、下側案内部材32の弁座36は回転せず、損傷しにくいし、下側案内部材32の傾斜面40が傾斜接触面16bに押圧される。
【0040】
上記の2つの実施形態の弁は、種々に変更可能である。例えば第1及び第2の実施形態の弁では、弁座36を下側案内部材32と一体に形成したが、図4に示すように、弁座36を形成した弁座部材361と、下側案内部材321とを別個に形成することもできる。この場合、弁座部材361に傾斜面40を形成する。図4の変形例では、弁座部材361と下側案内部材321とが直接に接触しているが、図5に示すように、弁座部材361と下側案内部材321との間にスラストワッシャ641を、第1及び第2の実施形態のスラストワッシャ64に加えて、あるいはスラストワッシャ64に代えて配置することもできる。
【0041】
上記の各実施形態では、駆動部4が非動作状態で弁座36に弁体26が着座し、駆動部4が動作状態で弁座36から弁体26が離座したが、逆に駆動部4が非動作状態で弁座36から弁体26が離座し、駆動部4が動作状態で弁座36に弁体26が着座してもよい。また、上記の各実施形態では、駆動部4によって軸を駆動したが、駆動部4を除去し、代わりに手動によって軸を操作する操作部を軸に設けることもできる。また、上記の各実施形態では、軸を2本の分割軸部材から構成したが、さらに多くの分割軸部材によって構成することもできるし、分割せずに1本の軸とすることもできる。上記の各実施形態では、1つの弁体が1つの弁座に着座、離座する開閉弁に本発明を実施したが、特許文献1に開示されているように1つのポートを2つのポートのうち選択されたポートに接続したり、2つのポートのうち選択されたものを、1つの別のポートに接続したりする三方切換弁に本発明を実施することもできる。また上記の実施形態では、弁体26を1つだけ下側分割軸部材18に形成したが、上側分割軸部材20にも別の弁体を形成し、これが着座及び離座可能な弁座を有する弁座部材を軸通路16に配置することもできる。この場合にも、弁座部材には傾斜面40と同様な傾斜面を形成し、軸通路16にも傾斜接触面16cと同様な傾斜接触面を形成する。上記の実施形態では、下側分割軸部材18を、2つのシール部材54、58でシールしたが、1つのシール部材でシールすることができるし、上側分割軸部材20も2つのシール部材78、80でシールしたが、1つのシール部材でシールすることもできる。上記の各実施形態では、ダイヤモンドカーボンライクによって弁座36と一体の下側案内部材32及び弁体26の一方または双方を被覆したが、耐摩耗性が高くかつ低摩擦係数を持つ層で弁座36と一体の下側案内部材32及び弁体26の一方または双方を被覆することもできる。
【符号の説明】
【0042】
6 弁ハウジング(弁本体部)
8 10 ポート
12 14 流路
16 軸通路
16b 接触面
18 下側分割軸部材(軸)
20 上側分割軸部材(軸)
26 弁体
32 下側案内部材(弁座部材、案内部材)
36 弁座
40 傾斜面(拡大面)
50 蓋部材(押圧部材)
54 58 78 80 シール部材
82 86 スリーブ(案内部材)
図1
図2
図3
図4
図5