(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】コンタクト
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20221011BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20221011BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R12/57
(21)【出願番号】P 2018210508
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-60694(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102938512(CN,A)
【文献】特開2014-29809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/15-13/35
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
基部、弾性接触部及び空隙形成部を備え、
前記基部は、前記第1部材の部品実装面にはんだ付け可能に構成され、
前記弾性接触部は、弾性変形可能かつ前記基部に対して相対的に揺動可能に構成され、前記第2部材の被接触面に接触した際には弾性変形して前記被接触面に加圧接触するように構成され、
前記空隙形成部は、前記基部及び前記弾性接触部と一体に形成されて、第1端部において前記基部に繋がり、前記第1端部とは反対側にある第2端部において前記弾性接触部に繋がるように構成され、前記第1端部と前記第2端部との間には凹部が設けられ、当該凹部と前記部品実装面とが対向する向きにされた状態で前記基部が前記部品実装面にはんだ付けされる際に、前記凹部と前記部品実装面との間に空隙ができるように構成されて
おり、
前記基部は、底板部、左壁部、右壁部、後壁部及び天板部を有し、
前記左壁部には、左開口部が形成され、前記右壁部には、右開口部が形成されており、
前記弾性接触部は、第1傾斜部、前端折り返し部、第2傾斜部、前壁部、第3傾斜部、後端湾曲部及び突起部を有し、
前記前壁部には、前記左開口部を通じて前記左壁部を貫通する左規制片が設けられると共に、前記右開口部を通じて前記右壁部を貫通する右規制片が設けられている
コンタクト。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクトであって、
前記弾性接触部は、突出方向先端付近に設けられた突起部で、前記被接触面に加圧接触可能に構成され、
前記基部が前記部品実装面にはんだ付けされ、かつ、前記弾性接触部が前記部品実装面に対して垂直に配置された前記被接触面に加圧接触して、前記弾性接触部から前記被接触面に対して作用する力の大きさFxがあらかじめ定められた下限値Fmin以上かつ上限値Fmax以下となる状態にある場合に(ただし、Fx、Fmin及びFmaxは0.1≦Fmin≦Fx≦Fmax≦30を満たす値、単位はN。)、前記弾性接触部を前記部品実装面に垂直な方向から見て、前記突起部の突出方向に垂直な前記弾性接触部の幅方向をx軸方向、前記突起部の突出方向をy軸方向とすると、前記突起部の頂点の位置(x1,y1)、前記弾性接触部の突出方向先端部のエッジの位置(x2,y2)が、距離A=x2-x1、突出高さB=y2-y1、B/A>tan5°を満たす位置に配置されるように構成されている
コンタクト。
【請求項3】
請求項2に記載のコンタクトであって、
前記弾性接触部は、前記弾性接触部の突出方向先端部を含む一部において、当該一部以外の部分よりも前記弾性接触部の幅が狭くなるように構成されている
コンタクト。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコンタクトであって、
前記基部は、第1接合面及び第2接合面を有し、前記第1接合面を利用して前記部品実装面にはんだ付けされた場合に、前記凹部と前記部品実装面との間に空隙ができるように構成され、
前記第1接合面と前記第2接合面は、平行に配置されて相反する方向へ向けられていて、前記第1接合面及び前記第2接合面のうち、いずれか一方の接合面が前記部品実装面にはんだ付けされる場合、他方の接合面を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用可能に構成されている
コンタクト。
【請求項5】
請求項4に記載のコンタクトであって、
前記基部は、前記第1接合面及び前記第2接合面が向けられた方向に対して垂直な方向に向けられた第3接合面を有し、
前記弾性接触部には、前記第3接合面に対して平行に配置されて相反する方向へ向けられた平坦面が設けられ、前記第3接合面が前記部品実装面にはんだ付けされる場合、前記平坦面を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用可能に構成されている
コンタクト。
【請求項6】
第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
基部、弾性接触部及び空隙形成部を備え、
前記基部は、前記第1部材の部品実装面にはんだ付け可能に構成され、
前記弾性接触部は、弾性変形可能かつ前記基部に対して相対的に揺動可能に構成され、前記第2部材の被接触面に接触した際には弾性変形して前記被接触面に加圧接触するように構成され、
前記空隙形成部は、前記基部及び前記弾性接触部と一体に形成されて、第1端部において前記基部に繋がり、前記第1端部とは反対側にある第2端部において前記弾性接触部に繋がるように構成され、前記第1端部と前記第2端部との間には凹部が設けられ、当該凹部と前記部品実装面とが対向する向きにされた状態で前記基部が前記部品実装面にはんだ付けされる際に、前記凹部と前記部品実装面との間に空隙ができるように構成されており、
前記基部は、底板部、左壁部、右壁部、後壁部及び天板部を有し、
前記後壁部には、前記後壁部の左端から左方向へ突出する左突出片と、前記後壁部の右端から右方向へ突出する右突出片とが設けられており、
前記左壁部には、左開口部が形成され、前記右壁部には、右開口部が設けられており、
前記弾性接触部は、第1傾斜部、前端折り返し部、第2傾斜部、前壁部、第3傾斜部、後端湾曲部及び突起部を有し、
前記前壁部には、前記左開口部を通じて前記左壁部を貫通する左規制片が設けられると共に、前記右開口部を通じて前記右壁部を貫通する右規制片が設けられており、
前記左規制片は、前記左突出片と平行であり、前記右規制片は、前記右突出片と平行である
コンタクト。
【請求項7】
第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
基部、弾性接触部及び空隙形成部を備え、
前記基部は、前記第1部材の部品実装面にはんだ付け可能に構成され、
前記弾性接触部は、弾性変形可能かつ前記基部に対して相対的に揺動可能に構成され、前記第2部材の被接触面に接触した際には弾性変形して前記被接触面に加圧接触するように構成され、
前記空隙形成部は、前記基部及び前記弾性接触部と一体に形成されて、第1端部において前記基部に繋がり、前記第1端部とは反対側にある第2端部において前記弾性接触部に繋がるように構成され、前記第1端部と前記第2端部との間には凹部が設けられ、当該凹部と前記部品実装面とが対向する向きにされた状態で前記基部が前記部品実装面にはんだ付けされる際に、前記凹部と前記部品実装面との間に空隙ができるように構成されており、
前記基部は、底板部、左壁部、右壁部、後壁部及び天板部を有し、
前記後壁部には、前記後壁部の左端から左方向へ突出する左突出片と、前記後壁部の右端から右方向に突出する右突出片とが設けられている
コンタクト。
【請求項8】
請求項7に記載のコンタクトであって、
前記左突出片はその前面で前記左壁部の後端に当接し、前記右突出片はその前面で前記右壁部の後端に当接している
コンタクト。
【請求項9】
第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
基部、弾性接触部及び空隙形成部を備え、
前記基部は、前記第1部材の部品実装面にはんだ付け可能に構成され、
前記弾性接触部は、弾性変形可能かつ前記基部に対して相対的に揺動可能に構成され、前記第2部材の被接触面に接触した際には弾性変形して前記被接触面に加圧接触するように構成され、
前記空隙形成部は、前記基部及び前記弾性接触部と一体に形成されて、第1端部において前記基部に繋がり、前記第1端部とは反対側にある第2端部において前記弾性接触部に繋がるように構成され、前記第1端部と前記第2端部との間には凹部が設けられ、当該凹部と前記部品実装面とが対向する向きにされた状態で前記基部が前記部品実装面にはんだ付けされる際に、前記凹部と前記部品実装面との間に空隙ができるように構成されており、
前記基部は、底板部、左壁部、右壁部、後壁部及び天板部を有し、
前記天板部には、前記天板部の左端から左方に延出し、左端で下方へと湾曲して、右方へと折り返す左返し片と、前記天板部の右端から右方に延出し、右端で下方へと湾曲して、左方へと折り返す右折り返し片とが設けられている
コンタクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板のEMC(electromagnetic compatibility)対策に用いられるコンタクトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のコンタクトは、第1部材(例えば電子回路基板。)に表面実装され、弾性接触部で第2部材(例えば筐体のパネル。)に加圧接触し、第1部材と第2部材を電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなコンタクトにおいては、弾性接触部が基部から延出する帯状板金によって構成されることがある。その場合に、弾性接触部が第1部材に接する箇所から延出していると、はんだ付け工程において溶融するはんだが、基部と弾性接触部との境界となる箇所に入り込み、弾性接触部に接する位置にはんだフィレットが形成されることがある。このような状態になると、弾性接触部がはんだフィレットによって拘束され、設計通りのばね特性を発揮できなくなるおそれがある。
【0005】
本開示の一局面においては、弾性接触部が第1部材に接する箇所から延出していても、はんだによる影響を抑制可能なコンタクトを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能なコンタクトであって、基部、弾性接触部及び空隙形成部を備える。基部は、第1部材の部品実装面にはんだ付け可能に構成される。弾性接触部は、弾性変形可能かつ基部に対して相対的に揺動可能に構成され、第2部材の被接触面に接触した際には弾性変形して被接触面に加圧接触するように構成される。空隙形成部は、基部及び弾性接触部と一体に形成されて、第1端部において基部に繋がり、第1端部とは反対側にある第2端部において弾性接触部に繋がるように構成され、第1端部と第2端部との間には凹部が設けられ、当該凹部と部品実装面とが対向する向きにされた状態で基部が部品実装面にはんだ付けされる際に、凹部と部品実装面との間に空隙ができるように構成されている。
【0007】
このように構成されたコンタクトによれば、基部と弾性接触部との間に空隙形成部が設けられ、基部が部品実装面にはんだ付けされる際、空隙形成部が有する凹部と第1部材との間には空隙ができる。そのため、基部が第1部材にはんだ付けされる際、基部と第1部材との間ではんだが溶融しても、溶融したはんだが空隙のある位置を超えて弾性接触部に到達する可能性は極めて低い。したがって、弾性接触部の一端においてはんだフィレットが形成されるのを抑制し、弾性接触部を設計通りのばね特性で機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは第1実施形態のコンタクトを右前上方から見た斜視図である。
図1Bは第1実施形態のコンタクトを左後上方から見た斜視図である。
図1Cは第1実施形態のコンタクトを右後下方から見た斜視図である。
図1Dは第1実施形態のコンタクトを左前下方から見た斜視図である。
【
図2】
図2Aは第1実施形態のコンタクトの平面図である。
図2Bは第1実施形態のコンタクトの正面図である。
図2Cは第1実施形態のコンタクトの右側面図である。
図2Dは第1実施形態のコンタクトの背面図である。
図2Eは第1実施形態のコンタクトの底面図である。
図2Fは
図2B中にIIF-IIF線で示した切断面における断面図である。
【
図3】
図3Aは第2接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトを示す断面図である。
図3Bは第2接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトが第2部材に加圧接触する状態を示す断面図である。
【
図4】
図4Aは第1接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトを示す断面図である。
図4Bは第1接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトが第2部材に加圧接触する状態を示す断面図である。
【
図5】
図5Aは第3接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトを示す断面図である。
図5Bは第3接合面で第1部材にはんだ付けされた第1実施形態のコンタクトが第2部材に加圧接触する状態を示す断面図である。
【
図6】
図6Aは部品実装面に垂直な方向から見た第1実施形態のコンタクトを示す平面図である。
図6Bは
図6A中に示すVIB部の拡大図である。
【
図7】
図7Aは第2実施形態のコンタクトを右前上方から見た斜視図である。
図7Bは第2実施形態のコンタクトを左後上方から見た斜視図である。
図7Cは第2実施形態のコンタクトを右後下方から見た斜視図である。
図7Dは第2実施形態のコンタクトを左前下方から見た斜視図である。
【
図8】
図8Aは第2実施形態のコンタクトの平面図である。
図8Bは第2実施形態のコンタクトの正面図である。
図8Cは第2実施形態のコンタクトの右側面図である。
図8Dは第2実施形態のコンタクトの背面図である。
図8Eは第2実施形態のコンタクトの底面図である。
図8Fは
図8B中にVIIIF-VIIIF線で示した切断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、上述のコンタクトについて、例示的な実施形態を挙げて説明する。
(1)第1実施形態
[コンタクトの構成]
以下の説明においては、
図2Aの平面図に表れる箇所が向けられる方向を上、
図2Bの正面図に表れる箇所が向けられる方向を前、
図2Cの右側面図に表れる箇所が向けられる方向を右、右の反対方向を左、
図2Dの背面図に表れる箇所が向けられる方向を後、
図2Eの底面図に表れる箇所が向けられる方向を下と規定する。ただし、これらの各方向は、コンタクト1を構成する各部の相対的な位置を簡潔に説明するために規定する方向にすぎない。よって、例えばコンタクト1の出荷時や使用時等に、コンタクト1がどのような方向に向けられるかは不定である。コンタクト1の左側面図は右側面図と対称に表れる。
【0010】
図1A、
図1B、
図1C及び
図1Dに示すコンタクト1は、基部3、弾性接触部5及び空隙形成部7を備える。基部3、弾性接触部5及び空隙形成部7は、金属の薄板(本実施形態においてはリフロー処理が施されたすずめっき付きのばね用ベリリウム銅の薄板。)によって一体成形されている。
【0011】
基部3は、コンタクト1の使用時に想定される外力が作用してもほぼ変形しない程度の剛性が確保されている部分である。基部3は、
図2A、
図2B、
図2C、
図2D及び
図2E等に示すように、底板部11、左壁部13、右壁部15、後壁部17及び天板部19を有する。左壁部13は、底板部11の左端から湾曲して上方へと延出している。左壁部13には左開口部13Aが形成されている。右壁部15は、底板部11の右端から湾曲して上方へと延出している。右壁部15には右開口部15Aが形成されている。
【0012】
後壁部17は、底板部11の後端から湾曲して上方へと延出している。後壁部17には、後壁部17の左端から左方向へ突出する左突出片17Aと、後壁部17の右端から右方向へ突出する右突出片17Bが設けられている。左突出片17Aは、その前面で左壁部13の後端に当接している。右突出片17Bは、その前面で右壁部15の後端に当接している。天板部19は、後壁部17の上端から湾曲して前方へと延出している。天板部19には、天板部19の左端から左方へと延出し、左端で下方へと湾曲して右方へと折り返す左折り返し片19Aと、天板部19の右端から右方へと延出し、右端で下方へと湾曲して左方へと折り返す右折り返し片19Bが設けられている。左折り返し片19Aは、その下面で左壁部13の上端に当接している。右折り返し片19Bは、その下面で右壁部15の上端に当接している。
【0013】
弾性接触部5は、コンタクト1の使用時に想定される外力が作用するのに伴って弾性変形する部分である。弾性接触部5は基部3に対して相対的に揺動可能に構成されている。弾性接触部5は、空隙形成部7から帯状に延出する帯状板金によって構成されている。より詳しくは、弾性接触部5は、
図2F等に表れるように、第1傾斜部21、前端折り返し部22、第2傾斜部23、前壁部24、第3傾斜部25、後端湾曲部26及び突起部27を有する。
【0014】
第1傾斜部21は、空隙形成部7から斜め前下方へと延出している。前端折り返し部22は、第1傾斜部21の前端から下方へと湾曲して斜め後上方へと折り返すように構成されている。すなわち、上述の帯状板金の幅方向(図中でいう左右方向。)に平行な軸線を曲率中心として帯状板金が折り返されることにより、前端折り返し部22が形成されている。この前端折り返し部22によって、弾性接触部5の突出方向先端部が構成されている。第2傾斜部23は、前端折り返し部22から斜め後上方へと延出している。
【0015】
前壁部24は、第2傾斜部23の後端から湾曲して下方へと延出している。前壁部24には、
図2B、
図2C及び
図2D等に示すように、前壁部24の左端から左方へと突出する左規制片24Aと、前壁部24の右端から右方へと突出する右規制片24Bが設けられている。左規制片24Aは、左開口部13Aを通じて左壁部13を貫通する位置に配置されている。右規制片24Bは、右開口部15Aを通じて右壁部15を貫通する位置に配置されている。弾性接触部5が揺動する際には、左規制片24Aの可動範囲が左開口部13Aの範囲内に規制され、右規制片24Bの可動範囲が右開口部15Aの範囲内に規制される。第3傾斜部25は、前壁部24の下端から湾曲して斜め後上方へと延出している。後端湾曲部26は第3傾斜部25の後端から延出する部分が上方へと湾曲するように構成されている。突起部27は、弾性接触部5の突出方向先端部付近に設けられている。
【0016】
基部3は、
図1A、
図1B、
図1C及び
図1Dに示すように、第1接合面31、第2接合面32及び第3接合面33を有する。第1接合面31は、天板部19の上面である。第2接合面32は、底板部11の下面である。第3接合面33は、後壁部17の後面である。第1接合面31と第2接合面32は、平行に配置されて相反する方向(図中でいう上方及び下方。)へ向けられている。第3接合面33は、第1接合面31及び第2接合面32が向けられた方向(図中でいう上方及び下方。)に対して垂直な方向(図中でいう後方。)に向けられている。弾性接触部5には、平坦面34が設けられている。平坦面34は、前壁部24の前面である。第3接合面33と平坦面34は、平行に配置されて相反する方向(図中でいう左方及び右方。)へ向けられている。
【0017】
コンタクト1は、第1接合面31、第2接合面32及び第3接合面33のいずれかを利用してはんだ付け可能に構成されている。
図3A及び
図3Bには、第2接合面32を利用して第1部材91の部品実装面91Aにはんだ付けされたコンタクト1を例示する。第2接合面32が部品実装面91Aにはんだ付けされる場合、第1接合面31を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用することができる。コンタクト1が第2接合面32で第1部材91にはんだ付けされた場合は、第1部材91及び第2部材のいずれか一方を他方に対して相対的に
図3Aに示す位置から
図3Bに示す位置へと移動させると、弾性接触部5は突起部27で第2部材92の被接触面92Aに対して加圧接触する。
【0018】
図4A及び
図4Bには、第1接合面31を利用して第1部材91の部品実装面91Aにはんだ付けされたコンタクト1を例示する。第1接合面31が部品実装面91Aにはんだ付けされる場合、第2接合面32を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用することができる。コンタクト1が第1接合面31で第1部材91にはんだ付けされた場合は、第1部材91及び第2部材92のいずれか一方を他方に対して相対的に
図4Aに示す位置から
図4Bに示す位置へと移動させると、弾性接触部5は突起部27で第2部材92の被接触面92Aに対して加圧接触する。
【0019】
空隙形成部7は、第1端部7Aにおいて基部3に繋がり、第1端部7Aとは反対側にある第2端部7Bにおいて弾性接触部5に繋がるように構成されている。空隙形成部7において第1端部7Aと第2端部7Bとの間には、
図4A及び
図4Bに示すように、凹部7Cが設けられている。凹部7Cは、図中でいう下面が上向きに凹んだ形状とされ、第1接合面31を利用して基部3が第1部材91の部品実装面91Aにはんだ付けされる際には、凹部7Cと部品実装面91Aとが対向する向きにされた状態となり、凹部7Cと部品実装面91Aとの間に空隙41ができる。
【0020】
これにより、コンタクト1を第1部材91にはんだ付けする際には、第1接合面31と第1部材91の部品実装面91Aとの間ではんだが溶融しても、溶融したはんだが空隙41を超えて第2端部7B側へ到達するのを抑制できる。したがって、空隙形成部7によって弾性接触部5の下端においてはんだフィレットが形成されるのを抑制でき、弾性接触部5を設計通りのばね特性で機能させることができる。
【0021】
図5A及び
図5Bには、第3接合面33を利用して第1部材91の部品実装面91Aにはんだ付けされたコンタクト1を例示する。第3接合面33が部品実装面91Aにはんだ付けされる場合、弾性接触部5の平坦面34を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用することができる。コンタクト1が第3接合面33で第1部材91にはんだ付けされた場合は、第1部材91及び第2部材92のいずれか一方を他方に対して相対的に
図5Aに示す位置から
図5Bに示す位置へと移動させると、弾性接触部5は突起部27で第2部材92の被接触面92Aに対して加圧接触する。
【0022】
図4Bに示すように、弾性接触部5が部品実装面91Aに対して垂直に配置された被接触面92Aに加圧接触する場合、部品実装面91Aにおけるコンタクト1の実装位置が被接触面92Aに接近するほど、弾性接触部5から被接触面92Aに対して作用する力の大きさFxは大となる。弾性接触部5から被接触面92Aに対して作用する力が過小になると、コンタクト1と被接触面92Aとの間における電気抵抗が増大する。一方、弾性接触部5から被接触面92Aに対して作用する力が過大になると、コンタクト1と第1部材91との間のはんだ付け箇所に負荷がかかり、はんだ部分や第1部材91の破損を招く要因になる。
【0023】
そこで、弾性接触部5が部品実装面91Aに実装される際には、弾性接触部5から被接触面92Aに対して作用する力の大きさFxが、あらかじめ定められた下限値Fmin以上かつ上限値Fmax以下となるような位置に、コンタクト1を実装することが推奨される。下限値Fmin及び上限値Fmaxは、コンタクト1のサイズや用途に応じて適宜決定されればよい。ただし、コンタクト1と被接触面92Aとの間の電気抵抗が過大になるのを抑制する観点からは、下限値Fminが0.1N以上であると好ましい。また、コンタクト1と第1部材91との間のはんだ付け箇所に過大な負荷がかかるのを抑制する観点からは、上限値Fmaxが30N以下であると好ましい。
【0024】
これら下限値Fminから上限値Fmaxまでの数値範囲は、上記0.1Nから30Nまでの数値範囲内に含まれていれば、更に絞り込まれた数値範囲であってもよい。例えば、本実施形態のコンタクト1の場合は、弾性接触部5のばね定数との関係で、下限値Fmin=10N、上限値Fmax=20Nが推奨値となっている。
図6A及び
図6Bには、推奨される下限値Fminから上限値Fmaxまでの数値範囲内の大きさFxの力で、弾性接触部5が被接触面92Aに接触する状態において、部品実装面91Aに垂直な方向から見た弾性接触部5の突出方向先端部及び突出部を示す。
【0025】
本実施形態のコンタクト1は、
図6A及び
図6Bに示す方向から見た場合に、突起部27の突出方向に垂直な弾性接触部5の幅方向をx軸方向、突起部27の突出方向をy軸方向とすると、突起部27の頂点P1の位置(x1、y1)、弾性接触部5の突出方向先端部のエッジP2の位置(x2、y2)が、距離A=x2-x1、突出高さB=y2-y1、B/A>tan5°を満たす位置に配置されるように構成されている。
図6Bに示す状態では、図中の角度θは約8°であり、B/A≒tan8°である。
【0026】
上述のような距離Aと突出高さBがB/A>tan5°を満たすように構成されていると、コンタクト1の実装時に±5°の範囲内でθずれが生じたとしても、弾性接触部5を適切に突起部27で第2部材92の被実装面に加圧接触させることができる。ここでいうθずれとは、コンタクト1の実装位置が、図中でいう上下方向に延びる軸線を回転中心とする回転方向に角度がずれることをいう。
【0027】
突起部27の突出高さBが過小でB/A≦tan5°となる場合、コンタクト1の実装時に±5°の範囲内でθずれが生じるだけで、弾性接触部5のエッジP2(
図6B参照。)が被接触面92Aに接触する。また、上述の距離Aが過大でB/A≦tan5°となる場合も、コンタクト1の実装時に±5°の範囲内でθずれが生じるだけで、弾性接触部5のエッジP2が被接触面92Aに接触する。したがって、弾性接触部5を適切に突起部27で第2部材92の被実装面に加圧接触させるには、コンタクト1の使用状態を想定して上述のような下限値Fmin及び上限値Fmaxを選定し、その下限値Fminから上限値Fmaxまでの数値範囲内となる大きさFxの力で弾性接触部5が被接触面92Aに接触した場合に、B/A>tan5°を満たすように、上記距離Aと突出高さBが設定されているとよい。
【0028】
なお、本実施形態の場合、突起部27は、弾性接触部5の突出方向先端部の幅方向中央に設けられている。そのため、
図6A及び
図6Bでは弾性接触部5の右前端のエッジを図示してあるが、上記距離Aは弾性接触部5の左前端のエッジを想定しても弾性接触部5の右前端のエッジを想定した場合と等距離になる。突起部27が、弾性接触部5の突出方向先端部において幅方向中央よりも左寄りにある場合、上記距離Aは弾性接触部5の右前端のエッジを想定した距離とすればよい。突起部27が、弾性接触部5の突出方向先端部において幅方向中央よりも右寄りにある場合、上記距離Aは弾性接触部5の左前端のエッジを想定した距離とすればよい。
【0029】
[効果]
上記コンタクト1によれば、基部3と弾性接触部5との間に空隙形成部7が設けられ、基部3が部品実装面91Aにはんだ付けされる際、空隙形成部7の凹部7Cと第1部材91との間には空隙41ができる。そのため、基部3が第1部材91にはんだ付けされる際、基部3と第1部材91との間ではんだが溶融しても、溶融したはんだが空隙41のある位置を超えて弾性接触部5に到達する可能性は極めて低い。したがって、弾性接触部5の一端においてはんだフィレットが形成されるのを抑制し、弾性接触部5を設計通りのばね特性で機能させることができる。
【0030】
また、上記コンタクト1の場合、上述の距離Aと突起部27の突出高さBが、B/A>tan5°を満たすように構成されているので、コンタクト1の実装位置に±5°の範囲内でθずれが生じたとしても、突起部27を適正に第2部材92の被接触面92Aに接触させることができる。
【0031】
また、上記コンタクト1の場合、第1接合面31、第2接合面32及び第3接合面33を有するので、コンタクト1を3通りの方向のいずれかに向けて第1部材91の部品実装面91Aにはんだ付けすることができる。しかも、第2接合面32、第1接合面31及び平坦面34のいずれかを上述の吸着面として利用できるので、コンタクト1を上記3通りの方向のいずれに向けてはんだ付けする場合でも、コンタクト1を自動実装機で部品実装面91Aにマウントすることができる。
【0032】
(2)第2実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態は、第一実施形態で例示した構成の一部を変更しただけなので、第一実施形態との相違点を中心に詳述し、第一実施形態と同様な部分に関しては、その詳細な説明を省略する。
【0033】
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図8A、
図8B、
図8C、
図8D、
図8E及び
図8Fに示すコンタクト51は、基部3、弾性接触部53及び空隙形成部7を備える。基部3及び空隙形成部7は、第1実施形態のコンタクト1と全く同様である。一方、弾性接触部53は、一部の形状が第1実施形態の弾性接触部5とは相違する。具体的には、第2実施形態のコンタクト51の場合、弾性接触部53は、
図8Aに示すように、弾性接触部53の突出方向先端部を含む一部において、当該一部の幅W1が当該一部以外の部分の幅W2よりも狭くなるように構成されている。
【0034】
このような構成を採用すると、弾性接触部53の幅W2が第1実施形態の弾性接触部5と同一であっても、弾性接触部53の突出方向先端部の幅W1は上記幅W2よりも狭くなる。そのため、第1実施形態において説明した距離A=x2-x1が、第1実施形態の弾性接触部5よりも小さくなり、B/Aがより大きい値になる。したがって、第2実施形態のコンタクト51であれば、第1実施形態のコンタクト1よりも更に大きなθずれを許容することができる。
【0035】
また、弾性接触部53の突出方向先端部が幅W1で構成されているにもかかわらず、突出方向先端部以外は幅W2で構成されている。そのため、弾性接触部53の全体が幅W1とされている場合とは異なり、弾性接触部53の弾性力が弱まるのを抑制することができる。すなわち、弾性接触部53の突出方向先端部だけを幅W1とすることで、弾性接触部53の弾性力を低下させることなく、より大きなθずれに対応可能とすることができる。
【0036】
(3)他の実施形態
以上、本開示のコンタクトについて、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施形態では、基部3に第1接合面31、第2接合面32及び第3接合面33が設けられていたが、第2接合面32及び第3接合面33については、いずれか一方が設けられていなくてもよく、また、両方が設けられていなくてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、空隙形成部7が有する凹部7Cの形状について、一例として、左右方向から見た場合に円弧を描くような形状を例示したが、凹部7Cの形状は例示したような形状に限定されない。すなわち、凹部7Cは、凹部7Cと部品実装面91Aとが対向する向きにされた場合に、所期の空隙41ができるような形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0039】
以上の他、上記各実施形態における一つの構成要素によって実現していた機能を、複数の構成要素によって実現するように構成してもよい。また、複数の構成要素によって実現していた機能を一つの構成要素によって実現するように構成してもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0040】
(4)補足
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示のコンタクトは、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0041】
本開示の一態様では、弾性接触部は、突出方向先端付近に設けられた突起部で、被接触面に加圧接触可能に構成されてもよい。基部が部品実装面にはんだ付けされ、かつ、弾性接触部が部品実装面に対して垂直に配置された被接触面に加圧接触して、弾性接触部から被接触面に対して作用する力の大きさFxがあらかじめ定められた下限値Fmin以上かつ上限値Fmax以下となる状態にある場合に(ただし、Fx、Fmin及びFmaxは0.1≦Fmin≦Fx≦Fmax≦30を満たす値、単位はN。)、弾性接触部を部品実装面に垂直な方向から見て、突起部の突出方向に垂直な弾性接触部の幅方向をx軸方向、突起部の突出方向をy軸方向とすると、突起部の頂点の位置(x1,y1)、弾性接触部の突出方向先端部のエッジの位置(x2,y2)が、距離A=x2-x1、突出高さB=y2-y1、B/A>tan5°を満たす位置に配置されるように構成されていてもよい。
【0042】
本開示の一態様では、弾性接触部は、弾性接触部の突出方向先端部を含む一部において、当該一部以外の部分よりも帯状板金の幅が狭くなるように構成されていてもよい。
本開示の一態様では、基部は、第1接合面及び第2接合面を有し、第1接合面を利用して部品実装面にはんだ付けされた場合に、凹部と部品実装面との間に空隙ができるように構成されてもよい。第1接合面と第2接合面は、平行に配置されて相反する方向へ向けられていて、第1接合面及び第2接合面のうち、いずれか一方の接合面が部品実装面にはんだ付けされる場合、他方の接合面を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用可能に構成されていてもよい。
【0043】
本開示の一態様では、基部は、第1接合面及び第2接合面が向けられた方向に対して垂直な方向に向けられた第3接合面を有してもよい。弾性接触部には、第3接合面に対して平行に配置されて相反する方向へ向けられた平坦面が設けられ、第3接合面が部品実装面にはんだ付けされる場合、平坦面を、自動実装機の吸引ノズルで吸着するための吸着面として利用可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,51…コンタクト、3…基部、5,53…弾性接触部、7…空隙形成部、7A…第1端部、7B…第2端部、7C…凹部、11…底板部、13…左壁部、13A…左開口部、15…右壁部、15A…右開口部、17…後壁部、17A…左突出片、17B…右突出片、19…天板部、19A…左折り返し片、19B…右折り返し片、21…第1傾斜部、22…前端折り返し部、23…第2傾斜部、24…前壁部、24A…左規制片、24B…右規制片、25…第3傾斜部、26…後端湾曲部、27…突起部、31…第1接合面、32…第2接合面、33…第3接合面、34…平坦面、41…空隙、91…第1部材、91A…部品実装面、92…第2部材、92A…被接触面、P1…頂点、P2…エッジ。