(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】シリンダ制御ユニット、作業機姿勢制御装置、シリンダ制御プログラムおよびトップリンク長補正係数算定方法
(51)【国際特許分類】
A01B 63/10 20060101AFI20221011BHJP
A01B 63/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A01B63/10 F
A01B63/10 A
A01B63/10 C
A01B63/00 Z
(21)【出願番号】P 2019195205
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519386268
【氏名又は名称】株式会社エース・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 康輝
(72)【発明者】
【氏名】野田 和利
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-249303(JP,A)
【文献】特開2019-004844(JP,A)
【文献】実開昭59-014508(JP,U)
【文献】実開平06-011006(JP,U)
【文献】特開平08-289609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 51/00 - 61/04
A01B 63/00 - 67/00
A01B 71/00 - 79/02
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機の姿勢を制御するための作業機姿勢制御装置に用いられるシリンダ制御ユニットであって、
前記作業機姿勢制御装置は、
前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダと、
左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダと、
地面に対する前記トラクタの前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜センサと、
地面に対する前記トラクタの左右方向の傾斜角度を検出する左右傾斜センサと、
前記トップリンクシリンダの長さを検出するトップリンク長センサと、
前記レベリングシリンダの長さを検出するレベリング長センサと、
地面に対する前記作業機の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を、入力操作するための設定値入力コントローラと
を有しており、
前記シリンダ制御ユニットは、
前記設定値入力コントローラにより入力された前後方向傾斜角度の設定値および左右方向傾斜角度の設定値を記憶する設定値記憶部と、
前記作業機による作業中に前記設定値記憶部から前記前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記前後傾斜センサにより検出された前後方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から前後方向の傾斜制御量を算出する前後傾斜制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記設定値記憶部から前記左右方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記左右傾斜センサにより検出された左右方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から左右方向の傾斜制御量を算出する左右傾斜制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記トップリンク長センサからトップリンク長の検出値を取得するとともに、前記レベリング長センサからレベリング長の検出値を取得し、前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出するトップリンク長検出値補正部と、
前記作業機による作業中に前記前後傾斜制御量算出部により算出された前記前後傾斜制御量をトップリンクシリンダの長さに換算した換算値と、前記
トップリンク長検出値補正部により補正されたトップリンク長の補正値との差から前記トップリンクシリンダの制御量を算出するトップリンク制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記左右傾斜制御量算出部により算出された前記左右傾斜制御量をレベリングシリンダの長さに換算した換算値と、前記レベリング長センサにより検出されたレベリング長の検出値との差から前記レベリングシリンダの制御量を算出するレベリング制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記トップリンク制御量算出部により算出された前記トップリンクシリンダ制御量に基づき前記トップリンクシリンダを伸縮制御するトップリンクシリンダ伸縮制御部と、
前記作業機による作業中に前記レベリング制御量算出部により算出された前記レベリングシリンダ制御量に基づき前記レベリングシリンダを伸縮制御するレベリングシリンダ伸縮制御部と、
を有する、前記シリンダ制御ユニット。
【請求項2】
前記トップリンクシリンダ伸縮制御部および前記レベリングシリンダ伸縮制御部は、前記トップリンクシリンダおよび前記レベリングシリンダの伸縮速度を、最低速度と、前記各制御量および係数の積との和で算出される速度に設定する、請求項1に記載のシリンダ制御ユニット。
【請求項3】
前記トップリンクシリンダ伸縮制御部および前記レベリングシリンダ伸縮制御部は、前記各シリンダを前記各制御量に応じて伸縮を開始させ、前記各シリンダの長さの検出値と前記各制御量とを比較して一致した場合に伸縮を停止する、請求項1または請求項2に記載のシリンダ制御ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシリンダ制御ユニットを備えた、作業機姿勢制御装置。
【請求項5】
トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機の姿勢を制御するための作業機姿勢制御装置に用いられるシリンダ制御プログラムであって、
前記作業機姿勢制御装置は、
前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダと、
左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダと、
地面に対する前記トラクタの前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜センサと、
地面に対する前記トラクタの左右方向の傾斜角度を検出する左右傾斜センサと、
前記トップリンクシリンダの長さを検出するトップリンク長センサと、
前記レベリングシリンダの長さを検出するレベリング長センサと、
地面に対する前記作業機の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を入力操作するための設定値入力コントローラと
を有しており、
前記シリンダ制御プログラムは、
前記設定値入力コントローラにより入力された前後方向傾斜角度の設定値および左右方向傾斜角度の設定値を記憶する設定値記憶部と、
前記作業機による作業中に前記設定値記憶部から前記前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記前後傾斜センサにより検出された前後方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から前後方向の傾斜制御量を算出する前後傾斜制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記設定値記憶部から前記左右方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記左右傾斜センサにより検出された左右方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から左右方向の傾斜制御量を算出する左右傾斜制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記トップリンク長センサからトップリンク長の検出値を取得するとともに、前記レベリング長センサからレベリング長の検出値を取得し、前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出するトップリンク長検出値補正部と、
前記作業機による作業中に前記前後傾斜制御量算出部により算出された前記前後傾斜制御量をトップリンクシリンダの長さに換算した換算値と、前記
トップリンク長検出値補正部により補正されたトップリンク長の補正値との差から前記トップリンクシリンダの制御量を算出するトップリンク制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記左右傾斜制御量算出部により算出された前記左右傾斜制御量をレベリングシリンダの長さに換算した換算値と、前記レベリング長センサにより検出されたレベリング長の検出値との差から前記レベリングシリンダの制御量を算出するレベリング制御量算出部と、
前記作業機による作業中に前記トップリンク制御量算出部により算出された前記トップリンクシリンダ制御量に基づき前記トップリンクシリンダを伸縮制御するトップリンクシリンダ伸縮制御部と、
前記作業機による作業中に前記レベリング制御量算出部により算出された前記レベリングシリンダ制御量に基づき前記レベリングシリンダを伸縮制御するレベリングシリンダ伸縮制御部
としてコンピュータを機能させる、前記シリンダ制御プログラム。
【請求項6】
請求項1または請求項5における前記補正係数を算定するためのトップリンク長補正計数算定方法であって、
トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機において、前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダにより前記作業機の前後方向の傾斜角度を水平状態にする前後方向傾斜角度水平工程と、
前後方向に水平状態の前記作業機を左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダにより前記作業機を左右方向に所定の角度で傾斜させる左右方向傾斜工程と、
このときの前記トップリンクシリンダの長さであるトップリンク長および前記レベリングシリンダの長さであるレベリング長を計測するシリンダ長計測工程と、
計測した前記トップリンク長および計測した前記レベリング長に基づき、前記作業機の前後方向の傾斜角度が水平になるトップリンク長が、計測した前記トップリンク長と、計測した前記レベリング長および補正係数の積との差となるように補正係数を算出する補正係数算出工程
とを有する、トップリンク長補正係数算定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに牽引される作業機による田畑の均平作業に用いられるシリンダ制御ユニット、作業機姿勢制御装置、シリンダ制御プログラムおよびトップリンク長補正係数算定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田では、生育ムラや雑草の害の増加を防止するため、水を張る前に地面を平らに均す均平作業が行われる。一般的に、均平作業は、トラクタの後端部に取り付けられた地面を平らに均す作業機をけん引しながら行われる。
【0003】
しかしながら、均平作業前における水田等の地面に大きな凹凸があると、走行するトラクタが前記凹凸によって前後左右に傾斜する。作業機はトラクタの傾斜に追従して動くため、前後左右に傾斜することになる。このため、地面に凹凸が残るという問題がある。
【0004】
そこで、これまでにトラクタが傾斜する場合に作業機の水平を保つための発明が種々提案されている。例えば、特開昭61-37009号公報では、伸縮可能に形成したトップリンクを設置することで前後方向の姿勢が一定になるように制御することのできる、トラクタにおける耕深自動制御装置に関する発明が提案されている(特許文献1)。また、特開平3-262402号公報では、ロワーリンクに連結されたリフトロッドを伸縮させることで左右方向の傾斜を制御することのできる、作業用走行機体における作業部の傾斜制御装置に関する発明が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-37009号公報
【文献】特開平3-262402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された発明は、前後方向または左右方向のいずれか一方のトラクタの傾斜にしか姿勢制御を行うことができない。よって、制御することのできない方向にトラクタが傾斜した場合は、作業機の姿勢を一定に保つことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、トラクタの後端部に3点リンク機構を介して取り付けられた作業機の前後方向および左右方向のいずれの方向にも姿勢制御を行うことのできる、シリンダ制御ユニット、作業機姿勢制御装置、シリンダ制御プログラムおよびトップリンク長補正係数算定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリンダ制御ユニットは、トラクタが左右方向に傾斜したときにトップリンクの位置が前後方向に移動し、設定値に対し作業機の前後方向の姿勢がずれてしまうという課題を解決するために、トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機の姿勢を制御するための作業機姿勢制御装置に用いられるシリンダ制御ユニットであって、前記作業機姿勢制御装置は、前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダと、左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダと、前記トラクタの前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜センサと、前記トラクタの左右方向の傾斜角度を検出する左右傾斜センサと、前記トップリンクシリンダの長さを検出するトップリンク長センサと、前記レベリングシリンダの長さを検出するレベリング長センサと、前記トラクタに対する前記作業機の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を入力操作するための設定値入力コントローラとを有しており、前記シリンダ制御ユニットは、前記設定値入力コントローラにより入力された前後方向傾斜角度の設定値および左右方向傾斜角度の設定値を記憶する設定値記憶部と、この設定値記憶部から前記前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記前後傾斜センサにより検出された前後方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から前後方向の傾斜制御量を算出する前後傾斜制御量算出部と、前記設定値記憶部から前記左右方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記左右傾斜センサにより検出された左右方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から左右方向の傾斜制御量を算出する左右傾斜制御量算出部と、前記トップリンク長センサからトップリンク長の検出値を取得するとともに、前記レベリング長センサからレベリング長の検出値を取得し、前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出するトップリンク長検出値補正部と、前記前後傾斜制御量算出部により算出された前記前後傾斜制御量をトップリンクシリンダの長さに換算した換算値と、前記トップリンク長補正部により補正されたトップリンク長の補正値との差から前記トップリンクシリンダの制御量を算出するトップリンク制御量算出部と、前記左右傾斜制御量算出部により算出された前記左右傾斜制御量をレベリングシリンダの長さに換算した換算値と、前記レベリング長センサにより検出されたレベリング長の検出値との差から前記レベリングシリンダの制御量を算出するレベリング制御量算出部と、前記トップリンク制御量算出部により算出された前記トップリンクシリンダ制御量に基づき前記トップリンクシリンダを伸縮制御するトップリンクシリンダ伸縮制御部と、前記レベリング制御量算出部により算出された前記レベリングシリンダ制御量に基づき前記レベリングシリンダを伸縮制御するレベリングシリンダ伸縮制御部とを有する。
【0009】
また、本発明の一態様として、トラクタが傾斜したときの姿勢制御を迅速に行うという課題を解決するために、前記トップリンクシリンダ伸縮制御部および前記レベリングシリンダ伸縮制御部は、前記トップリンクシリンダおよび前記レベリングシリンダの伸縮速度を、最低速度と、前記各制御量および係数の積との和で算出される速度に設定するようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、トップリンクシリンダおよびレベリングシリンダの伸縮制御を確実に実行させるという課題を解決するために、前記トップリンクシリンダ伸縮制御部および前記レベリングシリンダ伸縮制御部は、前記各シリンダを前記各制御量に応じて伸縮を開始させ、前記各シリンダの長さの検出値と前記各制御量とを比較して一致した場合に伸縮を停止するようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る作業機姿勢制御装置は、トラクタが左右方向に傾斜したときにトップリンクの位置が前後方向に移動し、設定値に対し作業機の前後方向の姿勢がずれてしまうという課題を解決するために、前記シリンダ制御装置を備えていている。
【0012】
本発明に係るシリンダ制御プログラムは、トラクタが左右方向に傾斜したときにトップリンクの位置が前後方向に移動し、設定値に対し作業機の前後方向の姿勢がずれてしまうという課題を解決するために、トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機の姿勢を制御するための作業機姿勢制御装置に用いられるシリンダ制御プログラムであって、前記作業機姿勢制御装置は、前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダと、左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダと、前記トラクタの前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜センサと、前記トラクタの左右方向の傾斜角度を検出する左右傾斜センサと、前記トップリンクシリンダの長さを検出するトップリンク長センサと、前記レベリングシリンダの長さを検出するレベリング長センサと、前記トラクタに対する前記作業機の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を入力操作するための設定値入力コントローラとを有しており、前記シリンダ制御プログラムは、前記設定値入力コントローラにより入力された前後方向傾斜角度の設定値および左右方向傾斜角度の設定値を記憶する設定値記憶部と、この設定値記憶部から前記前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記前後傾斜センサにより検出された前後方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から前後方向の傾斜制御量を算出する前後傾斜制御量算出部と、前記設定値記憶部から前記左右方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前記左右傾斜センサにより検出された左右方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前記設定値と前記検出値との差から左右方向の傾斜制御量を算出する左右傾斜制御量算出部と、前記トップリンク長センサからトップリンク長の検出値を取得するとともに、前記レベリング長センサからレベリング長の検出値を取得し、前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出するトップリンク長検出値補正部と、前記前後傾斜制御量算出部により算出された前記前後傾斜制御量をトップリンクシリンダの長さに換算した換算値と、前記トップリンク長補正部により補正されたトップリンク長の補正値との差から前記トップリンクシリンダの制御量を算出するトップリンク制御量算出部と、前記左右傾斜制御量算出部により算出された前記左右傾斜制御量をレベリングシリンダの長さに換算した換算値と、前記レベリング長センサにより検出されたレベリング長の検出値との差から前記レベリングシリンダの制御量を算出するレベリング制御量算出部と、前記トップリンク制御量算出部により算出された前記トップリンクシリンダ制御量に基づき前記トップリンクシリンダを伸縮制御するトップリンクシリンダ伸縮制御部と、前記レベリング制御量算出部により算出された前記レベリングシリンダ制御量に基づき前記レベリングシリンダを伸縮制御するレベリングシリンダ伸縮制御部としてコンピュータを機能させる。
【0013】
本発明に係るトップリンク長補正係数算定方法は、トラクタが左右方向に傾斜したときにトップリンクの位置が前後方向に移動し、設定値に対し作業機の前後方向の姿勢のずれを補正するために補正係数を算定するという課題を解決するために、トラクタの後端部にトップリンクおよび左右一対のロワーリンクを有する3点リンク機構を介して取り付けられる作業機において、前記トップリンクを前後方向に揺動させるトップリンクシリンダにより前記作業機の前後方向の傾斜角度を水平状態にする前後方向傾斜角度水平工程と、前後方向に水平状態の前記作業機を左右いずれかの前記ロワーリンクに連結されたリフトロッドを上下方向に揺動させるレベリングシリンダにより前記作業機を左右方向に所定の角度で傾斜させる左右方向傾斜工程と、このときの前記トップリンクシリンダの長さであるトップリンク長および前記レベリングシリンダの長さであるレベリング長を計測するシリンダ長計測工程と、計測した前記トップリンク長および計測した前記レベリング長に基づき、前記作業機の前後方向の傾斜角度が水平になるトップリンク長が、計測した前記トップリンク長と、計測した前記レベリング長および補正係数の積との差となるように補正係数を算出する補正係数算出工程とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トラクタの後端部に3点リンク機構を介して取り付けられた作業機の前後方向および左右方向のいずれの方向にも姿勢制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る作業機姿勢制御装置が設けられたトラクタおよび作業機の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の作業機姿勢制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態のトップリンク長補正係数算定方法の工程を示す工程図である。
【
図4】本実施形態の作業機姿勢制御装置による制御フローを示す制御フロー図である。
【
図5】本実施形態における作業機が(1)地面に対し前後方向に水平に設定した状態、(2)地面の凹凸によりトラクタが前後方向に傾斜した状態および(3)作業姿勢制御装置により作業機が地面に対し水平に制御された状態を示す側面図である。
【
図6】本実施形態における作業機が(1)地面に対し左右方向に水平に設定した状態、(2)地面の凹凸によりトラクタが左右方向に傾斜した状態および(3)作業姿勢制御装置により作業機が地面に対し水平に制御された状態を示す背面図である。
【
図7】本実施形態における作業機が(1)地面に対する左右方向の角度を所定の傾斜角度に設定した状態、(2)地面の凹凸によりトラクタが左右方向に傾斜した状態および(3)作業姿勢制御装置により作業機が設定された角度に制御された状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシリンダ制御ユニット、作業機姿勢制御装置、シリンダ制御プログラムおよびトップリンク長補正係数算定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施形態の作業機姿勢制御装置1は、
図1および
図2に示すように、トラクタ2の後端部21にトップリンク31および左右一対のロワーリンク32,32を有する3点リンク機構3を介して取り付けられる作業機4の姿勢を制御するためのものであり、前記トップリンク31を前後方向に揺動させるトップリンクシリンダ11と、左右いずれかの前記ロワーリンク32に連結されたリフトロッド33を上下方向に揺動させるレベリングシリンダ12と、前記トラクタ2の前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜センサ13と、前記トラクタ2の左右方向の傾斜角度を検出する左右傾斜センサ14と、前記トップリンクシリンダ11の長さを検出するトップリンク長センサ15と、前記レベリングシリンダ12の長さを検出するレベリング長センサ16と、前記トラクタ2に対する前記作業機4の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を入力操作するための設定値入力コントローラ17と、前記各シリンダ11,12を制御するシリンダ制御ユニット18とを有する。以下、各構成について説明する。
【0018】
トップリンクシリンダ11は、トラクタ2の後端部21と作業機4とを連結する3点リンク機構3におけるトップリンク31を前後方向に揺動させるためのものであり、
図1に示すように、トラクタ2の後端部21と前記作業機4側の前記トップリンク31とを連結するように設置されている。本実施形態のおけるトップリンクシリンダ11は、油圧により自在に伸縮することのできる油圧シリンダにより構成されており、油圧用のオイルを溜める油圧タンク191、この油圧タンク191から前記オイルを供給する油圧ポンプ192および前記トップリンクシリンダ11等へのオイルの供給や遮断を行う油圧バルブ193などを有する油圧供給装置19に連結されている。
【0019】
レベリングシリンダ12は、左右いずれかのロワーリンク32に連結されたリフトロッド33を上下方向に揺動させるためのものであり、本実施形態ではトップリンクシリンダ11と同様、油圧供給装置19に連結されており油圧により自在に伸縮することのできる油圧シリンダにより構成される。このレベリングシリンダ12は、
図1に示すように、トラクタ2の後端部21とリフトロッド33の略中央位置とを連結するように設置されている。
【0020】
前後傾斜センサ13は、トラクタ2の前後方向の傾斜角度を検出し、その検出結果を出力することのできるセンサである。本実施形態における前後傾斜センサ13は、トラクタ2の運転席22の近傍に設置されている。
【0021】
左右傾斜センサ14は、トラクタ2の左右方向の傾斜角度を検出し、その検出結果を出力することのできるセンサである。本実施形態における左右傾斜センサ14は、前後傾斜センサ13と一体的に構成されており、トラクタ2の運転席22の近傍に設置されている。
【0022】
なお、前後傾斜センサ13および左右傾斜センサ14は、一体的に構成されたものに限定されるものではなく、別体として構成されていてもよい。また、各センサ13,14の設置位置は、特に限定されるものではなく、トラクタ2や牽引する作業機4の構造に応じて、トラクタ2の前後傾斜および左右傾斜を検出しやすい箇所に設置されることが好ましい。
【0023】
トップリンク長センサ15は、トップリンクシリンダ11の長さ(トップリンク長)を検出し、その検出結果を出力することのできるセンサである。本実施形態におけるトップリンク長センサ15は、トップリンクシリンダ11に取り付けられている。
【0024】
レベリング長センサ16は、レベリングシリンダ12の長さ(レベリング長)を検出し、その検出結果を出力することのできるセンサである。本実施形態におけるレベリング長センサ16は、レベリングシリンダ12に取り付けられている。
【0025】
設定値入力コントローラ17は、トラクタ2に対する作業機4の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値を入力操作するための入力装置であり、本実施形態では、タッチパネル式の液晶ディスプレイを備えたタブレット型端末により構成されている。
【0026】
なお、設定値入力コントローラ17は、タブレット型端末に限定されるものではなく、ポテンショメータ等の各種アナログスイッチにより構成されていてもよい。
【0027】
シリンダ制御ユニット18は、作業機4の姿勢を制御するためにトップリンクシリンダ11およびレベリングシリンダ12の伸縮制御を実施するためのものである。本実施形態におけるシリンダ制御ユニット18は、
図2に示すように、シリンダ制御プログラム1aや設定値入力コントローラ17により入力された設定値などを記憶する記憶手段5と、主に前記シリンダ制御プログラム1aに基づく演算処理を実行する演算処理手段6とを有する。このシリンダ制御ユニット18には、例えば、設定値入力コントローラ17としても使用されるタブレット型端末や、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータなどが利用可能である。
【0028】
記憶手段5は、ROM、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等によって構成されており、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段6が演算を実行する際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態における記憶手段5は、主に、シリンダ制御プログラム1aを記憶するプログラム記憶部51と、設定値入力コントローラ17により入力された設定値を記憶する設定値記憶部52と、後述する補正係数を記憶する補正係数記憶部53とを有する。
【0029】
プログラム記憶部51には、シリンダ制御プログラム1aがインストールされている。そして、演算処理手段6が、前記シリンダ制御プログラム1aを実行し、主に、前後傾斜制御量算出部61、左右傾斜制御量算出部62、トップリンク長検出値補正部63、トップリンク制御量算出部64、レベリング制御量算出部65、トップリンクシリンダ伸縮制御部66およびレベリングシリンダ伸縮制御部67として機能させることにより、コンピュータをシリンダ制御ユニット18として機能させるようになっている。
【0030】
なお、シリンダ制御プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD-ROMやUSBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体にシリンダ制御プログラム1aを記憶させておき、この記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式やASP(application service provider)方式等で利用してもよい。
【0031】
設定値記憶部52は、設定値入力コントローラ17により入力された設定値を記憶するものであり、本実施形態では、トラクタ2に取り付けられる作業機4の前後方向の傾斜角度の設定値および左右方向の傾斜角度の設定値が記憶されている。作業機4における各傾斜角度の基準は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、作業機4が前後方向および左右方向に対し水平となる状態をゼロ値としている。
【0032】
補正係数記憶部53は、3点リンク機構3を介して取り付けられている作業機4が左右方向の傾斜制御、いわゆるレベリング制御により発生するトップリンク31の前後方向の傾きで目標とする制御位置がずれないように、トップリンク長センサ15により検出されたトップリンクシリンダ11の長さ(トップリンク長)を補正するための補正係数を記憶するものである。本実施形態では、後述するトップリンク長補正係数算定方法により算出された補正係数が記憶されている。
【0033】
次に、演算処理手段6について説明する。演算処理手段6は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されており、
図2に示すように、記憶手段5にインストールされたシリンダ制御プログラム1aを実行させることにより、コンピュータを、前後傾斜制御量算出部61、左右傾斜制御量算出部62、トップリンク長検出値補正部63、トップリンク制御量算出部64、レベリング制御量算出部65、トップリンクシリンダ伸縮制御部66およびレベリングシリンダ伸縮制御部67として機能させるようになっている。
【0034】
前後傾斜制御量算出部61は、設定値記憶部52から前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、前後傾斜センサ13により検出された前後方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの前後方向傾斜角度の設定値と、前後傾斜センサ13により検出された前後方向傾斜角度の検出値との差から前後方向の傾斜制御量の算出を実行するものである。
【0035】
左右傾斜制御量算出部62は、設定値記憶部52から左右方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、左右傾斜センサ14により検出された左右方向傾斜角度の検出値を取得し、これらの左右方向傾斜角度の設定値と左右傾斜センサ14により検出された左右方向傾斜角度の検出値との差から左右方向の傾斜制御量の算出を実行するものである。
【0036】
トップリンク長検出値補正部63は、3点リンク機構3においてレベリング制御を行うことで発生するトップリンク31の前後方向の移動(位置のずれ)を、トップリンクシリンダ11の長さ(トップリンク長)によって補正するためのものである。具体的には、補正係数記憶部53に記憶された補正係数を取得する。また、トップリンク長センサ15からトップリンクシリンダ11の長さであるトップリンク長の検出値を取得するとともに、レベリング長センサ16からレベリングシリンダ12の長さであるレベリング長の検出値を取得する。そして、取得した前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出する処理を実行する。
【0037】
トップリンク制御量算出部64は、トップリンクシリンダ11の制御量を算出するためのものであり、本実施形態では、左右方向の傾斜制御(レベリングシリンダ12の伸縮)に伴うトップリンク31の移動量を考慮して算出するものである。具体的には、前後傾斜制御量算出部61により算出された前後傾斜制御量をトップリンクシリンダ11の長さに換算した換算値の算出処理を実行する。そして、当該換算値と、トップリンク長検出値補正部63により補正されたトップリンク長の補正値との差からトップリンクシリンダ11の制御量を算出する処理を実行する。
【0038】
レベリング制御量算出部65は、レベリングシリンダ12の制御量を算出するためのものである。具体的には、左右傾斜制御量算出部62により算出された左右傾斜制御量をレベリングシリンダ12の長さに換算した換算値の算出処理を実行する。そして、当該換算値と、レベリング長センサ16により検出されたレベリング長の検出値との差からレベリングシリンダ12の制御量を算出する処理を実行する。
【0039】
トップリンクシリンダ伸縮制御部66は、トップリング制御量算出部64により算出されたトップリンクシリンダ制御量に基づきトップリンクシリンダ11の伸縮制御をするものである。本実施形態におけるトップリンクシリンダ伸縮制御部66は、トラクタ2が傾斜したときの姿勢制御を迅速に行うため、トップリンクシリンダ11の伸縮速度を、任意に設定される最低速度と、トップリング制御量算出部64により算出された制御量および係数の積との和で算出し、その設定に基づき制御するようになっている。
【0040】
つまり、トップリンクシリンダ制御量(シリンダの伸縮量)が多いほど、伸縮速度が速くなるように制御している。最低速度および係数は任意に設定可能であり、トップリンクシリンダ11およびこれを制御する油圧供給装置19の能力に応じて適宜設定することができる。
【0041】
また、本実施形態におけるトップリンクシリンダ伸縮制御部66は伸縮制御を確実に実行させるため、トップリンクシリンダ11を次のように制御する。
【0042】
まず、トップリンクシリンダ11をトップリンクシリンダ制御量に応じて伸縮を開始させる。例えば、トップリンクシリンダ制御量が正値(+値)であれば伸張制御を開始させる。一方、トップリンクシリンダ制御量が負値(-値)であれば収縮制御を開始させる。
【0043】
そして、トップリンクシリンダ伸縮制御部66は、トップリンク長センサ15により検出されたトップリンク長の検出値と、トップリンクシリンダ制御量とを比較して一致した場合には、トップリンクシリンダ11の伸縮を停止する。本実施形態では、油圧供給装置19によるトップリンクシリンダ11への油圧の供給を停止させることで、伸縮制御を停止するようになっている。
【0044】
レベリングシリンダ伸縮制御部67は、レベリング制御量算出部65により算出されたれレベリングシリンダ制御量に基づき前記レベリングシリンダ12の伸縮制御をするものである。本実施形態におけるレベリングシリンダ伸縮制御部67は、トップリンクシリンダ伸縮制御部66と同様に、制御量に応じた伸縮速度を設定するため、伸縮速度を任意に設定される最低速度と、レベリング制御量算出部65により算出されたレベリングシリンダ制御量および係数の積との和で算出し、その設定に基づき制御するようになっている。
【0045】
また、本実施形態におけるレベリングシリンダ伸縮制御部67は、トップリンクシリンダ伸縮制御部66と同様、レベリングシリンダ制御量が正値(+値)であれば伸張制御を開始させ、負値(-値)であれば収縮制御を開始させる。そして、レベリングシリンダ伸縮制御部67は、レベリング長センサ16により検出されたレベリング長の検出値と、レベリングシリンダ制御量とを比較して一致した場合には、レベリングシリンダ12の伸縮制御を停止するようになっている。
【0046】
次に、本実施形態のトップリンク長補正係数算定方法について説明する。本実施形態のトップリンク長補正係数算定方法は、
図3に示すように、前後方向傾斜角度水平工程と、左右方向傾斜工程と、計測するシリンダ長計測工程と、補正係数値算出工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0047】
前後方向傾斜角度水平工程は、トップリンク31の位置を確定させるため、トラクタ2の後端部21にトップリンク31および左右一対のロワーリンク32,32を有する3点リンク機構3を介して取り付けられる作業機4について、トップリンクシリンダ11を伸縮制御させてトップリンク31を前後方向に揺動し、前記作業機4を水平状態にする工程である(S1)。
【0048】
左右方向傾斜工程は、前後方向に水平状態とした作業機4について、左右いずれかのレベリングシリンダ12を伸縮させて作業機4を左右方向に所定の角度で傾斜させる工程である(S2)。具体的には、ロワーリンク32に連結されたリフトロッド33をレベリングシリンダ12を伸縮制御することで上下方向に揺動させ、作業機4を傾斜させる。このときリフトロッド33は、トラクタ2との連結点を基点として揺動することになり、揺動したリフトロッド33のロワーリンク32の位置が上下方向のみならず前後方向にも移動する。これにより作業機4の位置も前後方向に移動することになり、水平を保っていた作業機4が前後方向に傾斜することになる。
【0049】
左右方向傾斜工程において作業機4を傾斜させる角度は、特に限定されるものではないが、均平作業においてトラクタ2が傾斜する可能性の角度範囲に相当する-30度~+30度の範囲内のいずれかの角度で傾斜させることが好ましく、-15度~+15度の範囲内のいずれかの角度で傾斜させることがより好ましい。
【0050】
シリンダ長計測工程は、左右方向傾斜工程により作業機4を左右いずれかの方向に傾斜させたときのトップリンクシリンダ11の長さであるトップリンク長およびレベリングシリンダ12の長さであるレベリング長をそれぞれ計測する工程である(S3)。本実施形態では、トップリンク長センサ15およびレベリング長センサ16により検出された各検出値によりトップリンク長およびレベリング長を計測する。なお、計測方法は、トップリンク長センサ15およびレベリング長センサ16によるものに限定されるものではなく、定規等を用いて計測してもよい。
【0051】
補正係数算出工程は、シリンダ長計測工程により計測されたトップリンク長および計測されたレベリング長から、シリンダ制御ユニット18およびシリンダ制御プログラム1aのトップリンク長検出値補正部63において用いられる補正係数を算出するものであり、作業機4の前後方向の傾斜角度が水平になるトップリンク長が、計測したトップリンク長と、計測したレベリング長および補正係数の積との差となるように、補正係数を算出するものである(S4)。
【0052】
ここで、作業機4の前後方向の傾斜角度が水平になるトップリンク長は、本実施形態では、左右方向傾斜工程において前後方向に傾斜した作業機4を、トップリンクシリンダ11を伸縮させることで水平状態に戻し、そのときのトップリンクシリンダ11の長さを計測することで得ている。そしてシリンダ長計測工程で計測したトップリンク長および計測したレベリング長とともに、水平になるトップリンク長を式に代入することで補正係数を算出している。
【0053】
また、本実施形態では、補正係数算出工程により算出された補正係数は、設定値入力コントローラ17を介して補正係数記憶部53に記憶されるようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の作業機姿勢制御装置1の各構成における作用について説明する。
【0055】
前後傾斜制御量算出部61が設定値記憶部52から設定値入力コントローラ17により入力されたトラクタ2に対する作業機4の前後方向傾斜角度の設定値を取得するとともに、左右傾斜制御量算出部62が設定記憶部52から設定値入力コントローラ17により入力されたトラクタ2に対する作業機4の左右方向傾斜角度の設定値を取得する(SS1)。例えば、
図5(1)および
図6(1)に示すように、作業機4が地面に対して前後方向および左右方向に水平になるように設定されている場合は、その設定値を取得する。
【0056】
なお、設定値は水平状態に限定されるものではなく、例えば、
図7(1)に示すように、予め左右いずれかの方向に傾斜させた状態を設定値として設定したり、図示しないが、前後方向に傾斜させた状態を設定値として設定してもよい。
【0057】
次に、前後傾斜制御量算出部61が前後傾斜センサ13からトラクタ2の前後方向の傾斜角度の検出値を取得するとともに、左右傾斜制御量算出部62が左右傾斜センサ14からトラクタ2の左右方向の傾斜角度の検出値を取得する(SS2)。
【0058】
そして、前後傾斜制御量算出部61および左右傾斜制御量産出部62は、各設定値および各検出値の差から各制御量を算出する(SS3)。具体的には、前後傾斜制御量算出部61が、前後方向傾斜角度の設定値と、前後方向傾斜角度の検出値との差を算出し、この差を前後方向傾斜制御量とする。また、左右傾斜制御量算出部62は、左右方向傾斜角度の設定値と、左右方向傾斜角度の検出値との差を算出し、この差を左右方向傾斜制御量とする。
【0059】
次に、トップリンク長検出値補正部63がトップリンク長センサ15により検出されたトップリンクシリンダ11の長さであるトップリンク長の検出値と、レベリング長センサ16により検出されたレベリングシリンダ12の長さであるレベリング長の検出値とを取得する(SS4)。
【0060】
そして、トップリンク長検出値補正部63がトップリンク長の検出値およびレベリング長の検出値を用いて前記トップリンク長の補正を実行する(SS5)。具体的には、トップリンク長検出値補正部63が補正係数記憶部53に記憶された補正係数を取得し、前記トップリンク長の検出値と、前記レベリング長の検出値および補正係数の積との差から、前記トップリンク長の補正値を算出する。
【0061】
次に、トップリンク制御量算出部64は、トップリンクシリンダ11の制御量を算出する(SS6)。具体的には、トップリンク制御量算出部64が、前後傾斜制御量算出部61により算出された前後傾斜制御量をトップリンクシリンダ11の長さに換算した換算値と、トップリンク長補正部63により補正されたトップリンク長の補正値との差を算出し、この差をトップリンクシリンダ11の制御量とする。このように、トップリンクシリンダ制御量の算出に、トップリンク長の補正値を用いることで、左右方向に傾斜することによる作業機4の前後方向の傾斜をトップリンクシリンダ制御量に反映させることができる。
【0062】
また、レベリング制御量算出部65は、レベリングシリンダ12の制御量を算出する(SS7)。具体的には、レベリング制御量算出部65は、左右傾斜制御量算出部62により算出された左右傾斜制御量をレベリングシリンダ12の長さに換算した換算値と、レベリング長センサ16により検出されたレベリング長の検出値との差を算出し、この差をレベリングシリンダ12の制御量とする。
【0063】
そして、トップリンクシリンダ伸縮制御部66およびレベリングシリンダ伸縮制御部67は、それぞれ、算出されたトップリングシリンダ制御量およびレベリングシリンダ制御量に応じて伸縮速度を設定する(SS8)。
【0064】
また、トップリンクシリンダ伸縮制御部66およびレベリングシリンダ伸縮制御部67は、トップリンクシリンダ11およびレベリングシリンダ12の伸縮制御を開始する(SS9)。
【0065】
そして、トップリンクシリンダ伸縮制御部66およびレベリングシリンダ伸縮制御部67は、各シリンダ11,12の長さの検出値と、設定値記憶部52に記憶された各設定値とを比較し、一致しているか否かを判別する(SS10)。ここで、比較結果が一致していないと判別された場合は(SS10:NO)、そのまま各シリンダ11,12には適宜伸縮させる。一方、比較結果が一致した場合は(SS10:YES)、各シリンダ11,12の伸縮を停止させる(SS11)。
【0066】
ここでトップリンクシリンダ11およびレベリングシリンダ12のいずれかが先に一致した場合は、一致した方のシリンダの伸縮を停止させ、他方のシリンダの比較結果が一致するまで伸縮させる。そして、いずれも一致した場合は、各シリンダ11,12の伸縮制御を終了する。このように各シリンダ11,12の伸縮制御の停止タイミングが異なっていても、トップリンクシリンダ制御量には、レベリングシリンダを伸縮制御することによるトップリンク31の移動分がトップリンク長検出値補正部63による補正値として反映されているため、作業機4を正確に設定値になるように姿勢を制御することができる。
【0067】
以上のような本実施形態のシリンダ制御ユニット18、作業機姿勢制御装置1、シリンダ制御プログラム1aおよびトップリンク長補正係数算定方法によれば、以下の効果を奏することができる。
1.トラクタ2の後端部21に3点リンク機構3を介して取り付けられた作業機4の前後方向および左右方向のいずれの方向にも姿勢制御を行うことができる。
2.トラクタ2が左右方向に傾斜したときにトップリンク31の位置が前後方向に移動し、設定値に対する作業機4の前後方向の姿勢のずれを補正するための補正係数を算定することができる。
3.補正係数を用いてトラクタ2が左右方向に傾斜したときにトップリンク31の位置が前後方向に移動し、設定値に対し作業機4の前後方向の姿勢がずれてしまうのを防止し、正確な姿勢制御を行うことができる。
4.各シリンダ11,12の制御量に応じて伸縮速度を増減させることで、トラクタ2が傾斜したときの姿勢制御を迅速に行うことができる。
5.トップリンク長およびレベリング長の検出結果に基づくフィードバック制御によりトップリンクシリンダ11およびレベリングシリンダ12の伸縮の停止制御を行うことで、伸縮制御を確実に実行させることができる。
【0068】
なお、本発明に係るシリンダ制御ユニット、作業機姿勢制御装置、シリンダ制御プログラムおよびトップリンク長補正係数算定方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、トップリンクシリンダ11およびレベリングシリンダ12は、油圧シリンダによるものに限定されるものではなく、例えば電動モータなどの伸縮制御可能なものから適宜選択してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 作業機姿勢制御装置
1a シリンダ制御プログラム
2 トラクタ
3 3点リンク機構
4 作業機
5 記憶手段
6 演算処理手段
11 トップリンクシリンダ
12 レベリングシリンダ
13 前後傾斜センサ
14 左右傾斜センサ
15 トップリンク長センサ
16 レベリング長センサ
17 設定値入力コントローラ
18 シリンダ制御ユニット
19 油圧供給装置
21 後端部
22 運転席
31 トップリンク
32 ロワーリンク
33 リフトロッド
51 プログラム記憶部
52 設定値記憶部
53 補正係数記憶部
61 前後傾斜制御量算出部
62 左右傾斜制御量算出部
63 トップリンク長検出値補正部
64 トップリンク制御量算出部
65 レベリング制御量算出部
66 トップリンクシリンダ伸縮制御部
67 レベリングシリンダ伸縮制御部
191 油圧タンク
192 油圧ポンプ
193 油圧バルブ