(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】誘電体バリア放電式プラズマ治療用の可撓性平面被覆体
(51)【国際特許分類】
A61N 1/44 20060101AFI20221011BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A61N1/44
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2019523003
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 DE2017101097
(87)【国際公開番号】W WO2018127257
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】102017100161.1
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158435
【氏名又は名称】シノギー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CINOGY GmbH
【住所又は居所原語表記】Max-Naeder-Str. 15, 37115 Duderstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ハーンル、ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ストーク、カール-オット
(72)【発明者】
【氏名】トルトビグ、レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】バンドケ、ディルク
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0331989(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0110145(US,A1)
【文献】特表2014-505553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
A61N 1/32 - A61N 1/36
A61N 1/44
H05H 1/00 - H05H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療面に対する誘電体バリア放電式プラズマ治療用の、高電圧を供給可能な電極ユニットを備えた可撓性平面被覆体
であって、前記電極ユニットが、少なくとも1つの平面電極(3)および前記治療面に対する接触面を備えた可撓性平面材料から成る誘電体層(2)を有し、前記誘電体層が前記少なくとも1つの
平面電極(3)を前記治療面から電気的に遮蔽することで、前記
少なくとも1つの平面電極(3)の高電圧によって前記電極ユニットと前記治療面の間のガス空間内にプラズマ場が発生する場合に、誘電体バリア放電による電流のみが前記少なくとも1つの
平面電極(3)と前記治療面の間で流れ得る
可撓性平面被覆体において、
前記可撓性平面被覆体が前記高電圧を生成するための高電圧段(14)を有し、前記高電圧段の出力口が接続子(17、17’)を介して前記少なくとも1つの
平面電極(3)と接続されて
おり、前記接続子(17、17’)は導電部として前記可撓性平面被覆体における前記誘電体層(2)の内部に位置していることを特徴とする可撓性平面被覆体。
【請求項2】
前記接続子が前記誘電体層(2)の内部の高電圧用ストリップ導体(17、17’)であることを特徴とする、請求項1に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項3】
前記高電圧用ストリップ導体(17、17’)が射出成形された導電性添加物を含むプラスチック材料から成ることを特徴とする、請求項2に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項4】
前記高電圧用ストリップ導体(17、17’)が前記誘電体層(2)に挿入された金属製ストリップ導体であることを特徴とする、請求項2に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項5】
前記高電圧段(14)に達する交流の供給電圧用接続部(20)によって特徴付けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項6】
前記可撓性平面被覆体が直流電圧を供給するための電池(7)および直流電圧をより高いピーク電圧の交流電圧信号に変換するための制御回路(13)を有し、前記交流電圧信号が前記高電圧段(14)に達することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項7】
前記電極ユニットが、位相を変移させて交流高電圧
が供給
され得る少なくとも2つの部分電極(3a、3b)を有することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項8】
前記可撓性平面被覆体が創傷に障らない材料を有する創傷被覆材として形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項9】
前記誘電体層の前記接触面に創傷に障らない材料が取り付けられていることを特徴とする、請求項8に記載の可撓性平面被覆体。
【請求項10】
前記誘電体層(2)が射出成形部品として形成されており、前記少なくとも1つの
平面電極(3)と高電圧部品(14)を全面的に包囲
していることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療面に対する誘電体バリア放電式プラズマ治療用の、高電圧を供給可能な電極ユニットを備えた可撓性平面被覆体に関し、該電極ユニットは、少なくとも1つの平面電極および治療面に対する接触面を備えた可撓性平面材料から成る誘電体層を有し、該誘電体層が上記少なくとも1つの電極を治療面から電気的に遮蔽することで、電極の高電圧によって電極ユニットと治療面の間のガス空間内にプラズマ場が発生する場合に、誘電体バリア放電による電流のみが上記少なくとも1つの電極と治療面の間で流れ得る。
【背景技術】
【0002】
人の皮膚も含む表面の、誘電体バリア放電プラズマ場を用いた治療が知られている。例えば、特許文献1は、上述の特徴を有する可撓性平面被覆体を開示する。その際、主として誘電体によって完全に包囲された可撓性平面電極に、誘電体バリア放電プラズマ場の形成に必要とされる高電圧が適切な方法で高電圧ケーブルを介して供給される。電極の接触は、ケーシングに取り付けられた、誘電体層から突出する電極接続部において行われ得る。特許文献2によって周知のユニットにおいては、電極の接触が、誘電体層に押し通されることで誘電体を貫いて電極に接触する絶縁変位コネクタを用いて行われる。該絶縁変位コネクタはコネクタ用ケーシング内に配置されており、これによって操作者の高電圧との接触が確実に防止される。
【0003】
特許文献3は特に誘電体と共に球形状で記載された電極ユニットに関し、高電圧がケーシングの取っ手内で生成され、その後ケーシング内で通されたケーブルを用いて電極に導かれることを開示する。ケーシングの取っ手を用いて球形状の電極ユニットを治療面、例えば皮膚面上を広範囲に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許発明第102009060627号明細書
【文献】欧州特許第2723447号明細書
【文献】欧州特許第2946641号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、電極ユニットの電極への高電圧の供給をより容易でより確実に構成することにある。
【0006】
上記の課題を解決するために、冒頭に記載の方式の可撓性平面被覆体は発明により、該被覆体が高電圧を生成するための高電圧段を有し、その出力口が被覆体上の接続子を介して少なくとも1つの電極と接続されていることを特徴としている。
【0007】
したがって本発明による被覆体には電極ユニットだけではなく高電圧段も含まれる。これには高電圧段の出力口が電極ユニットの上記少なくとも1つの電極と最短経路で接続され得るという利点がある。これは適切に絶縁されたケーブル部分を介して実行可能であり、特に好ましい実施形態においては導電部としての接続子が誘電体層の内部に位置する。これにより、高電圧を導く接続子を、好ましくは上記少なくとも1つの電極を包囲して絶縁する誘電体で包囲し、それによって接触に対して確実に絶縁しておくことができる。したがって本発明による被覆体の場合、より長い区間を介した高電圧供給の問題は起こらない。電極ユニットの高電圧段と少なくとも1つの電極との間の短い導電部は、固有の絶縁体を備えることができるが、好ましくは上記少なくとも1つの電極も包囲する誘電体で囲まれている。このために接続子は誘電体層に挿入されたストリップ導体であり得る。このストリップ導体は上記高電圧段と上記少なくとも1つの電極を接続するための既製部品として配置されて、その後誘電体によって、好ましくは射出成形工程において包囲され得る。しかし、接続子を形成している導電部を、射出成形された導電性添加物を含むプラスチック材料から成る誘電体層の内部に形成することも可能である。この場合は、誘電体層の下層、次に接続子の導電層、その後に誘電体層の上層が射出される、3層射出成形を行うことが好都合である。導電部の製造と共に、上記少なくとも1つの電極が同様に導電性添加物を含むプラスチック材料で、好ましくは接続子と同じ射出成形過程で同時に製造され得る。
【0008】
本発明の実施形態の1つにおいては、可撓性平面被覆体がさらに直流電圧を供給するための電池および直流電圧をより高いピーク電圧の交流電圧信号に変換するための制御回路を有する場合に、被覆体を外部への接続部なしで形成することができる。上述のように形成された交流電圧信号はその後高電圧段に達し得る。電池も同様に誘電体に埋設することができ、これによって電池と制御回路の間、ならびに制御回路と高電圧段の間の接続ケーブルが、接続子の導電部と同じ方法で製造され得る。特に誘電体が射出成形工程で形成される場合、電池と制御回路の部品、特にマイクロプロセッサチップは、適切な方法で誘電体に挿入され得る。電池が挿入されている実施形態では、該可撓性平面被覆体は如何なる電圧源にも依存しない。非常に安価に製造され得る電池、制御回路および高電圧段により、該可撓性平面被覆体を単回使用品として形成可能であり、再処理費用を全てなくすことができることから、これは特に創傷被覆材として使用する場合に有利である。必要に応じて、電池を分離して処分または再利用できるように、電池を誘電体の材料から取り出し可能に形成することが考慮され得る。電池は一般的な使い切り電池でも充電式電池(蓄電池)でもあり得る。
【0009】
中間段において該可撓性平面被覆体は単に交流の供給電圧用接続部のみを有し、この供給電圧からさらに高電圧段によって必要とされる高電圧が生成される。この場合は、高電圧が取り扱われないことから、電池の処分は行われず、交流の供給電圧接続部は従来技術で形成され得る。
【0010】
本発明の実施形態の1つにおいては、高電圧段の入力口に交流電圧が到達する。高電圧段がここから、100Hz~100MHzの間の周波数を有し、好ましくは交流電圧振動が急激に減衰する狭い針状パルスとして形成された交流電圧パルスを生成し得る。使用された高電圧は好都合に1kV~100kVの間である。
【0011】
本発明の実施形態の1つにおいて、電極ユニットは、位相を変移させて交流高電圧を供給し得る少なくとも2つの電極を有する。交流電圧パルスが使用される場合に、上記少なくとも2つの電極間に2倍の電圧が形成されるように、交流電圧パルスを逆位相で上記電極に導くことが好都合であり得る。この方法で、治療面がほぼ接地電位にある対電極として用いられる場合でも、治療面、特に皮膚面に対するプラズマの生成効率が向上され得る。インパルスの極性が真逆の場合、接地電位は、逆極性インパルスの両ピーク電圧の中間に位置するゼロ電位である。この中間電位は、表面、したがって例えば治療するべき人または動物の身体が単独で接地電位/大地電位に置かれない場合にも現れる。
【0012】
本発明による可撓性平面被覆体は、実施形態の1つにおいて、創傷に障らない材料を有する創傷被覆材として形成しておくことができる。その際、創傷に障らない材料は誘電体層の材料であり得る。しかし、治療面を被覆するために考慮された誘電体の接触面に創傷に障らない材料を取り付けることも可能である。
【0013】
本発明の容易で好ましい実施形態において、誘電体は射出成形部品として形成されており、上記少なくとも1つの電極と高電圧部品を共に全面的に包囲する。制御部分および必要に応じて電池も考慮されている場合は、これらも誘電体によって包囲しておくことができ、したがって誘電体は被覆体の全ての電気部品を封入するカプセルとして機能する。
【0014】
添付の図面に本発明を解説するための複数の実施形態が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】可撓性平面被覆体の第1の実施形態の平面図である。
【
図2】可撓性平面被覆体の第2の実施形態の平面図および複数の断面図である。
【
図3】可撓性平面被覆体の第3の実施形態の平面図および断面図である。
【
図4】可撓性平面被覆体の第4の実施形態の平面図および断面図である。
【
図5】可撓性平面被覆体の第5の実施形態の平面図および断面図である。
【
図6】可撓性平面被覆体の第6の実施形態の平面図および断面図である。
【
図7】可撓性平面被覆体の第7の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示した実施例は下から見た図である
図1a)に示されており、使用時には不可視の被覆体内部の部品が示されている。さらに、該実施例は
図1a)の縦断面
図A-Aおよび複数の横断面
図B-B(
図1c))、C-C(
図1d))、D-D(
図1e))およびE-E(
図1f))を用いて示されている。
【0017】
ここに示した被覆体は基本的に長方形の基本型を有し、周囲に周縁部1が配置されている。周縁部1の下面は、被覆体を例えば身体部分の皮膚に粘着固定できるように、粘着性を有する形態であり得る。周囲に配置された周縁部1は誘電体層2と一体に結合しておくことができ、該層は周囲に配置された周縁部1より厚く形成されている。誘電体層2には導電性材料から成る層が電極3として埋設されており、これは、該層が誘電体層2の材料によって全面的に包囲されていることを意味する。電極3の形状は、ここに示した実施例においては同様に長方形であるが、誘電体層2のように全面的には広がらず、したがって誘電体層2の縁部分が電極3の全側面を越えて突出する。ここに示した被覆体の基本型の形状が他の形、例えば多角形、円形、長円形などでもよいことは明らかである。電極3の領域において、誘電体層2の下面は、細く交差する垂直辺5から成る格子状構造4に形成されており、これによって横断面がほぼ正方形の、下方向に開放された空室6が形成される。垂直辺5は壁の厚さが僅かであるにもかかわらず、被覆体が治療面に配置されている場合に、間隔保持具として機能する安定した格子状構造4を形成する。この方法で、空室6のガス空間(空隙)に、電極3によって引き起こされる安定した誘電体バリア放電式プラズマ放電を形成することができ、これを用いて表面の治療が行われる。格子状構造4によって得られた構造安定性により、垂直辺の幅を非常に狭くしておくことができ、その結果空室6の空隙は最適な大きさに広がる。垂直辺の幅は例えば垂直辺に対して垂直に測った空室6の長さの1/5未満である。
【0018】
図1において相互に垂直に延在する垂直辺5によって形成されている空室6の形状が、他の形、例えば菱形、六角形(ハニカム構造)などでもよいことは、専門家には明らかである。格子状構造4の安定性という利点を達成するためには、誘電体層2の各方向において少なくとも4つ、特に少なくとも6つ、さらに特に少なくとも8つの空室6が連続配置されるよう考慮することが好都合である。誘電体層2と電極3から成る縦長の電極ユニットが必要とされる場合には、縦方向により多数の空室6を考慮するなら、横方向にも空室6をより少ない数で並置することが考えられ得る。誘電体層2の下面の空室6の数は、一般的な使用事例においては少なくとも12、特に少なくとも20、そして多くの場合少なくとも40である。
図1に示した実施例における空室6の数は縦方向に13と横方向に8であり、したがって空室6の総数は104となっている。
【0019】
図1に示した実施形態において、被覆体は外部への接続部を備えておらず、したがって、治療時に被覆体の配置された治療面が対電極として機能する場合に、被覆体単独で空室6内にプラズマ場を発生させることができる。したがって該被覆体は唯一の電極3を有し、この電極に対して、空室6内にプラズマ場を発生させるために高電圧が供給されなければならない。
【0020】
電極3への電圧供給のために、被覆体には、ここではボタン型電池の形態の3つの電池7が考慮されている。該電池は誘電体層2の下縁部8に位置し、該縁部は断面
図C-CおよびD-D(
図1d)および
図1e))から分かるように、電池を収容するために隆起して厚みを増した形態であり得る。電池7は誘電体層2に埋設されたストリップ導体9によって相互に接続されている。ストリップ導体9は誘電体層の横縁部10を通過してマイクロコントローラチップ11まで延びる。マイクロコントローラチップ11は電子式信号調整器12と共に制御装置13を形成する。信号調整器12の出力口によって形成された制御装置13の出力口はトランス段14の入力口と接続されており、該トランス段は例えば250Vの入力電圧から例えば15kVの高動作電圧を形成するために用いられる。制御装置13とトランス段14から成るユニットは誘電体層2の上縁部15に位置する。
【0021】
図1c~
図1fの断面図から明らかなように、上縁部15は電子部品を収容するために、同様に、電極3の領域の誘電体層2に対して厚みを増した形態になっている。周縁部8、10および15に電極3は広がらない。
【0022】
マイクロコントローラチップ11、信号調整器12およびトランス段14は、ストリップ導体9と同じ方法で形成された、誘電体層2に埋設されているストリップ導体16を介して相互に接続されている。
【0023】
トランス段14の出力口と電極3との接続は高電圧の伝送に適した高電圧用ストリップ導体17を介して行われ、該導体は電極3の一体型連結部として形成しておくことができる。
【0024】
マイクロコントローラチップ11の供給電圧は電池7から得られ、該電池はマイクロコントローラチップ11の供給電圧として相互間で加えられた電池電圧を供給するために、電気的に直列接続しておくことができる。マイクロコントローラチップ11は、信号調整器12における交流電圧パルスの形成を制御し、該パルスは数Vの電池の供給電圧からピーク電圧約250Vの交流電圧に高められる。この交流電圧は例えば(図示されない)点火区間を用いて高電圧パルスを形成するためにトランス段14に達し、その際、この(極性が反転する)高電圧パルスは発振回路のある特定の挙動に基づいて振幅が急激に減少する交流電圧特性となり得る。高電圧パルスによって電極3は対電極として作用する治療面に対して交互に電位の高い陽電位と陰電位に反転され、これによって空室6内にあるガス(主として空気)中で所望の誘電体バリア放電式プラズマ放電が起こり得る。
【0025】
図1はさらに、空室6の上部の境界を成す誘電体層2に通過孔18が設けられており、これを通して例えば流体をプラズマ治療前、治療中または治療後に表面から吸引可能、あるいはその代わりに治療前または治療中に治療ガスを空室6に導入可能であることを示す。
【0026】
通過開口部の領域において誘電体層2を用いて電極3を遮蔽するために、電極3には各通過孔18に対して1つの空所19が設けられており、これが通過開口部18より大きいことによって通過開口部18の内壁が誘電体層2の材料によって連続的に形成される。
【0027】
ここに示した実施例において各空室に通過開口部18が設けられているが、これはこのような形態が必要であるという意味ではない。流体の吸引は明らかにより少数の通過開口部18を介しても行われ得る。これは特に、格子状構造4の垂直辺5が空室6の間における流体連通を(少なくとも部分的に)可能にする場合に当てはまる。ここに示した実施例においては、各空室6に1つの通過開口部18が設けられている。これによって高さが一定の垂直辺5の形態が可能になり、したがって被覆体を治療面に配置した場合に垂直辺5によって広範囲に密閉された空室6が形成される。これは表面の形状が不均一な場合には、誘電体層2の材料と電極3の材料が共に可撓性を有することで、被覆体が例えば皮膚面または創傷面といった不規則な表面に適合し得ることによっても形成される。
【0028】
図2に示した第2の実施形態は、電極3が2つの部分電極3a、3bによって形成されており、これらが櫛状に組み合わされた形態であるという点でのみ、
図1の実施形態と区別される。部分電極3a、3bの間に導電性の電極層が存在しない領域があることから、蛇行形状の帯状絶縁部が誘電体層の材料を通って存在する。
図2はこの電極3の形態によって被覆体のその他の構造が変更されないことを明らかにする。特に空室6は部分電極3a、3bの領域においても帯状絶縁部の領域においても存在し得る。同様に、通過孔18はここでも各空室6に対して考慮されている。
【0029】
部分電極3aおよび3bにはトランス段14’から相互に逆極性を有する高電圧パルスができるだけ同位相で供給される。これにより表面によって形成された対電極に対向する部分電極3a、3bの間にプラズマ場が発生し、しかも両部分電極3a、3bの間の電圧差が2倍の大きさになることによって、部分電極3aと3bの間に発生した電界によるプラズマ形成がさらに改善される。
【0030】
トランス段14’はこの場合2つのトランス用コイルを備え、これらが相互に逆の極性を有し、したがって各々両部分電極3a、3bの一方に電圧パルスを供給する。トランス段14’と部分電極3aおよび3bの間には高電圧用ストリップ導体17が1つずつ相応に配置されている。
【0031】
図3に示した実施例は
図1による実施例に相応するが、固有の電池7が考慮されていないという違いがある。より正確には、被覆体がこの実施例においては外部に通じる接続部20を備えており、これに直流電圧源21を接続することができる。その際、接続部20は被覆体の連結部に位置して相応に接触されても、直流電圧源21への接続を確立する接続ケーブルによって形成されていてもよい。直流電圧源21は単に電池7に代わるものであり、したがって被覆体の構造および機能は変わらず維持される。電池7を被覆体に入れておく必要がないことから、
図1による実施例の下縁部8はなくてもよい。
【0032】
図4に示した実施例は
図3による実施例と同じであるが、2つの部分電極3a、3bを備えた被覆体に関し、一方で
図3による実施例は唯一の電極3に関する。これに関しても機能は
図1および
図2に基づく記載と同じである。
【0033】
図5による第5の実施例では被覆体にトランス段14のみが含まれる。この実施例においても被覆体には、ここでは交流電圧源22によって形成される外部電源装置を接続するための接続部20が含まれ、この交流電圧源から、トランス段14が電極3と治療面との間のプラズマ発生に適した高電圧パルスを生成する。
【0034】
図6の通り、交流電圧源のトランス段14への直接的接続は、2つの部分電極3a、3bを備えた被覆体に対しても(上述のように)使用され得る。
図5および
図6による実施形態の場合、交流電圧の供給と信号調整は外部で行われる。しかし、高電圧信号が被覆体内部のトランス段14において初めて生成されて、例えば埋設された高電圧用ストリップ導体17を用いて電極3または部分電極3a、3bに短経路で導かれることから、安全技術的に危険な高電圧信号を被覆体に伝達する必要がないという利点は残る。既述したように、高電圧用ストリップ導体17は誘電体層に埋設しておくことができ、したがって電極3または部分電極3a、3bの遮蔽と共に、誘電体層2内部における高電圧用ストリップ導体17の絶縁も同じ技術で行われる。
【0035】
図7に示した第7の実施例は
図1による第1の実施例に相応するが、ここでは電池7、ストリップ導体9、16、マイクロコントローラチップ11、信号調整器12およびトランス段14は誘電体層2の材料に包囲されておらず、特に
図7bから明らかなように、誘電体層2の材料上に取り付けられている。その際ストリップ導体9、16は誘電体層2に直接取り付けておくか、あるいはシートに印刷して、このシート自体を誘電体層2に貼り付けておくことができる。電気部品は誘電体層に取り付けられたケーシング23によって覆われており、該ケーシングは、誘電体層2の周縁部を帯状に囲む、下方に開放された溝形状を成し、その下方は誘電体層2によって密閉されている。ケーシング23は絶縁材から成り、被覆体を不規則な表面に適合させるために必要とされる可撓性を得るために、絶縁性、形態安定性を有するが、柔軟性弾性である材料、例えばエラストマーで形成され得る。
【0036】
環状に閉じたケーシング23の形成によって、推奨方向を設定せずに被覆体が任意に使用可能になる。しかし、該ケーシングを周縁部の1辺においてのみ帯状に形成することも、(必要に応じて)L字またはU字型に形成することも可能である。
【0037】
図7c)は電極3への高電圧供給が、誘電体層2の上部で延在し、誘電体層2の開口部を通して誘電体層2内で導かれた電極3の連結部を突出部17’と接触させる高電圧用ストリップ導体17を用いて行われることを明らかにする。ここでも高電圧は短経路を介してのみ導かれ、ケーシング23によって接触および火花連結に対して問題なく遮蔽され得る。
【0038】
誘電体層2は全ての実施例において好ましくは、まず誘電体層2の下層を注入し、その上に電極3を置き、その次に誘電体層の上層を上から注入し、これが下層と一体に結合されることによって製造することができる。この代替案として誘電体層の下層を前もって製造し、次に電極3を置き、その次に既製型の誘電体層2の上層を取り付けることができる。両層は、その後絶縁しつつ貼り合わせるか、好ましくはミラー溶接することができる。さらに別の実施形態において、誘電体層2は1つの工程で射出成形によって一体に製造可能であり、その際、電極3は射出成形用鋳型に挿入される。
【0039】
同様の方法で、電池7、マイクロコントローラチップ11、信号調整器12、およびトランス段14といった電気部品は、ストリップ導体9、16および17を用いて誘電体層に組み込まれ得る。誘電体層2の下縁部8および上縁部15における隆起部は、例えば誘電体層2の上層を製造する際に射出成形工程で形成され得る。
【0040】
本発明による被覆体はここに示した全ての実施形態において単回使用製品として形成され、使用され得る。
図1、
図2および
図7の実施形態においては、ユニット全体が処分され、その他の実施形態においては、外部機器への接続部のみが取り外される。創傷分泌物を吸引する目的で被覆体を負圧源に接続する場合は、誘電体層の上面に吸引された流体を吸収する材料を、例えば吸収を促進する気密シートの下に配置しておくことができる。
【0041】
本発明による被覆体は、必要とされる治療期間中マイクロコントローラチップ11を用いて定期的に誘電体バリア放電式プラズマ治療を行うことができ、それによって創傷領域全体を繰り返し除菌できることで、創傷治癒が促進されることから、特に創傷の治癒期間全体に渡って創傷上に留置可能な創傷被覆材として適している。それに加えて、プラズマ放電によって生じる創傷領域内とその周囲および/または創傷のない皮膚内とその周囲における継続的な微小循環の向上にも役立つ。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 治療面に対する誘電体バリア放電式プラズマ治療用の、高電圧を供給可能な電極ユニットを備えた可撓性平面被覆体において、前記電極ユニットが、少なくとも1つの平面電極(3)および前記治療面に対する接触面を備えた可撓性平面材料から成る誘電体層(2)を有し、前記誘電体層が前記少なくとも1つの電極(3)を前記治療面から電気的に遮蔽することで、前記電極(3)の高電圧によって前記電極ユニットと前記治療面の間のガス空間内にプラズマ場が発生する場合に、誘電体バリア放電による電流のみが前記少なくとも1つの電極(3)と前記治療面の間で流れ得るものであって、前記可撓性平面被覆体が前記高電圧を生成するための高電圧段(14)を有し、前記高電圧段の出力口が前記可撓性平面被覆体上の接続子(17、17’)を介して前記少なくとも1つの電極(3)と接続されていることを特徴とする可撓性平面被覆体。
[2] 前記接続子が前記誘電体層(2)の内部の高電圧用ストリップ導体(17、17’)であることを特徴とする、[1]に記載の可撓性平面被覆体。
[3] 前記高電圧用ストリップ導体(17、17’)が射出成形された導電性添加物を含むプラスチック材料から成ることを特徴とする、[2]に記載の可撓性平面被覆体。
[4] 前記高電圧用ストリップ導体(17、17’)が前記誘電体層(2)に挿入された金属製ストリップ導体であることを特徴とする、[2]に記載の可撓性平面被覆体。
[5] 前記高電圧段(14)に達する交流の供給電圧用接続部(20)によって特徴付けられる、[1]から[4]のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
[6] 前記可撓性平面被覆体が直流電圧を供給するための電池(7)および直流電圧をより高いピーク電圧の交流電圧信号に変換するための制御回路(13)を有し、前記交流電圧信号が前記高電圧段(14)に達することを特徴とする、[1]から[4]のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
[7] 前記電極ユニットが、位相を変移させて交流高電圧を供給し得る少なくとも2つの部分電極(3a、3b)を有することを特徴とする、[1]から[6]のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
[8] 前記可撓性平面被覆体が創傷に障らない材料を有する創傷被覆材として形成されていることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。
[9] 前記誘電体層の前記接触面に創傷に障らない材料が取り付けられていることを特徴とする、[8]に記載の可撓性平面被覆体。
[10] 前記誘電体層(2)が射出成形部品として形成されており、前記少なくとも1つの電極(3)と高電圧部品(14)を全面的に包囲することを特徴とする、[1]から[9]のいずれか1項に記載の可撓性平面被覆体。