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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】散布装置及びタイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20221011BHJP
   B05C 19/06 20060101ALI20221011BHJP
   B65D 88/26 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01M17/02
B05C19/06
B65D88/26 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019534438
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2018027944
(87)【国際公開番号】W WO2019026733
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2017151165
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017226344
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-211747(JP,A)
【文献】実開平06-016328(JP,U)
【文献】特開平09-183516(JP,A)
【文献】特開2007-176701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0173439(US,A1)
【文献】特開2005-132427(JP,A)
【文献】実開平06-025236(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103203331(CN,A)
【文献】特開平08-040566(JP,A)
【文献】米国特許第4349323(US,A)
【文献】特開平07-300185(JP,A)
【文献】特表2016-527516(JP,A)
【文献】特開2002-181609(JP,A)
【文献】特開2001-242056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01N 3/56
B65G 65/30-65/48
B65D 88/26-88/32
B65D 88/68
B65B 37/10
B65B 1/12
B05C 19/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被散布体が貯蔵されるホッパーと、
前記ホッパー内の前記被散布体を撹拌する撹拌子と、
前記ホッパーから出た前記被散布体を定量的に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された前記被散布体を吸引して、該被散布体が分散した気体を噴出させるエジェクターと、
を備え、
前記ホッパーが、円柱面状の内周面を有し、
前記撹拌子が、前記内周面と接触しながら旋回する摺動子を有し、
前記摺動子が、導電性又は帯電防止性を有する樹脂から形成されたブラシである、
散布装置。
【請求項2】
前記搬送部が、
スクリューと、
前記スクリューを収容する筒状のケースと、
前記スクリューを所定の回転数で回転させる駆動部と、を備えた、
請求項に記載の散布装置。
【請求項3】
前記ケースの軸方向一端側において該ケースの入口が上向きに開口し、
前記入口に前記ホッパーの底部に形成された該ホッパーの排出口が接続された、
請求項に記載の散布装置。
【請求項4】
前記撹拌子が、
前記ホッパーの内周面と同心に配置され、該内周面の軸を中心に回転するロッドと、
前記ロッドの側面から前記ホッパーの内周面に向かって延びる枝部と、
前記枝部に取り付けられた、前記摺動子を保持する摺動子保持部と、を備えた、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の散布装置。
【請求項5】
複数の前記摺動子を備え、
前記複数の摺動子が、前記ホッパーの軸方向において異なる位置に配置された、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の散布装置。
【請求項6】
前記ホッパーの軸方向において隣接する2つの前記摺動子が、前記旋回の方向において、異なる位置に配置された、
請求項に記載の散布装置。
【請求項7】
前記搬送部により搬送された前記被散布体を前記エジェクターに導く第1の管路を備え、
前記搬送部のケースの軸方向他端側において該ケースの出口が下向きに開口し、
前記ケースの出口には、下方に延びる直管の入口が接続され、
前記直管の出口と前記第1の管路の入口とが、隙間を介して、上下に対向して配置された、
請求項から請求項のいずれか一項に記載の散布装置。
【請求項8】
模擬路面と、
試験タイヤを前記模擬路面に接地した状態で回転可能に保持するタイヤ保持部と、
前記模擬路面及び前記試験タイヤの外周面の少なくとも一方に、前記試験タイヤの摩耗により生じるゴム屑を付着し難くする粉末を散布する、請求項から請求項のいずれか一項に記載の散布装置と、
を備えた、
タイヤ試験装置。
【請求項9】
外周に前記模擬路面が設けられた回転ドラムと、
前記試験タイヤに与えるトルクを発生するトルク発生部と、
前記回転ドラムを回転駆動する電動機であるモーターを備えた回転駆動部と、
を備え、
前記トルク発生部が、
回転可能に支持されたケースと、
前記ケースに同軸に取り付けられた電動機であるサーボモーターと、を備え、
回転駆動部が前記トルク発生部のケースを回転駆動する、
請求項8に記載のタイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験方法、タイヤ試験装置及び散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩耗性を評価するタイヤ摩耗試験には、実車に試験タイヤを装着し、所定の条件で実路面上を走行して、このときに生じるタイヤの摩耗を調べる実走試験の他に、特開昭57-91440号公報に記載されているような、回転ドラムの外周面(模擬路面)にタイヤを接地させた状態で回転ドラムとタイヤを回転させてタイヤを摩耗させる台上試験(模擬試験)がある。
【発明の概要】
【0003】
このような模擬試験を行うタイヤ試験装置では、タイヤの摩耗により発生するゴム屑がタイヤ試験装置の各部に付着して、タイヤ試験装置の故障の原因となり得る。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、タイヤ摩耗試験により発生するゴム屑がタイヤ試験装置や試験タイヤに付着するのを防ぎ、これによりタイヤ試験装置の故障を防止することを目的とする。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、回転ドラムの外周に設けられた模擬路面に試験タイヤを接地させる接地ステップと、回転ドラム及び模擬路面に接地した試験タイヤを回転させる回転ステップと、回転ドラム及び試験タイヤの少なくとも一方の外周面に、試験タイヤの摩耗によって生じるゴム屑を付着し難くする粉末を散布する粉末散布ステップと、を含む、タイヤ試験方法が提供される。
【0006】
上記のタイヤ試験方法において、粉末散布ステップが、粉末を一定のレートで搬送する搬送ステップと、搬送された粉末を気体に分散させる分散ステップと、粉末が分散した気体を外周面に吹き付ける吹付ステップと、を含む構成としてもよい。
【0007】
上記のタイヤ試験方法において、吹付ステップにおいて、粉末が分散した気体を、模擬路面と試験タイヤとの接地部に向けて、走行方向前方から吹き付ける構成としてもよい。
【0008】
上記のタイヤ試験方法において、搬送ステップにおいて、搬送手段であるスクリューを所定の速度で回転させることにより、粉末を一定のレートで搬送する構成としてもよい。
【0009】
上記のタイヤ試験方法において、分散ステップが、エジェクターに圧縮された気体を供給する圧縮気体供給ステップと、エジェクターが発生する負圧により粉末を吸引するステップと、気体に分散した粉末をエジェクターから噴出させる噴出ステップと、を含む構成としてもよい。
【0010】
上記のタイヤ試験方法において、分散ステップが、エジェクターから噴出した気体を吹き付ける位置まで管路により導く誘導ステップと、を含み、誘導ステップにおいて、粉末がより均一に気体に分散される構成としてもよい。
【0011】
上記のタイヤ試験方法において、吹付ステップが、粉末が分散した気体をラッパぐちから吹き付ける構成としてもよい。
【0012】
上記のタイヤ試験方法において、粉末がタルクを含む構成としてもよい。
【0013】
また、本発明の別の一実施形態によれば、被散布体を定量的に搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された被散布体を吸引して、被散布体が分散した気体を噴出させるエジェクターと、を備えた、散布装置が提供される。
【0014】
この構成によれば、被散布体を定量的に(例えば、単位時間当たり一定の量を連続的に)散布可能な散布装置が提供される。
【0015】
上記の散布装置において、搬送部が、スクリューと、スクリューを収容する筒状のケースと、スクリューを所定の回転数で回転させる駆動部と、を備えた構成としてもよい。
【0016】
上記の散布装置において、スクリューが、外周面に螺旋状の溝が形成された略円柱状部材である構成としてもよい。
【0017】
上記の散布装置において、被散布体が貯蔵されるホッパーを備え、ケースの軸方向一端側においてケースの入口が上向きに開口し、入口にホッパーの底部に形成されたホッパーの排出口が接続された構成としてもよい。
【0018】
上記の散布装置において、ホッパー内の被散布体を撹拌する撹拌子を備え、ホッパーが、円柱面状の内周面を有し、撹拌子が、ホッパーの内周面と接触しながら旋回する摺動子を有する構成としてもよい。
【0019】
上記の散布装置において、撹拌子が、ホッパーの内周面と同心に配置され、内周面の軸を中心に回転するロッドと、ロッドの側面からホッパーの内周面に向かって延びる枝部と、枝部に取り付けられた、摺動子を保持する摺動子保持部と、を備えた構成としてもよい。
【0020】
上記の散布装置において、複数の摺動子を備え、複数の摺動子が、ホッパーの軸方向において異なる位置に配置された構成としてもよい。
【0021】
上記の散布装置において、ホッパーの軸方向において隣接する2つの摺動子が、旋回の方向において、異なる位置に配置された構成としてもよい。
【0022】
上記の散布装置において、搬送部により搬送された被散布体をエジェクターに導く第1の管路を備え、搬送部のケースの軸方向他端側においてケースの出口が下向きに開口し、ケースの出口には、下方に延びる直管の入口が接続され、直管の出口と第1の管路の入口とが、隙間を介して、上下に対向して配置された構成としてもよい。
【0023】
また、本発明の更に別の一実施形態によれば、外周面に模擬路面が設けられた回転ドラムと、試験タイヤを模擬路面に接地した状態で回転可能に保持するタイヤ保持部と、回転ドラム及びタイヤ保持部を回転させる駆動部と、回転ドラム及び試験タイヤの少なくとも一方の外周面に、試験タイヤの摩耗によって生じるゴム屑を付着し難くする粉末を散布する上記の散布装置と、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
【0024】
また、本発明の更に別の一実施形態によれば、外周に模擬路面が設けられた回転ドラムと、試験タイヤを模擬路面に接地した状態で回転可能に保持するタイヤ保持部と、試験タイヤに与えるトルクを発生するトルク発生部と、回転ドラムを回転駆動する電動機であるモーターを備えた回転駆動部と、を備え、トルク発生部が、回転可能に支持されたケースと、ケースに同軸に取り付けられた電動機であるサーボモーターと、を備え、回転駆動部がトルク発生部のケースを回転駆動する、タイヤ試験装置が提供される。
【0025】
この構成によれば、油圧システムを使用しないため、作動油による環境汚染を防止することができ、従来の油圧を使用した装置と比べてエネルギー消費量を低減することが可能になる。また、トルク発生部(トルク発生装置)を導入することにより、回転駆動とトルク発生という2つの役割を2つのモーターに分担させることが可能になるため、低容量で小型のモーターを使用することが可能になり、更なる省エネと省スペース化が可能になる。
【0026】
上記のタイヤ試験装置において、模擬路面が、回転ドラムの外周に着脱可能な複数の模擬路面ユニットにより形成された構成としてもよい。
【0027】
この構成によれば、模擬路面ユニットをプレハブで製造することが可能になり、生産効率の向上が可能になる。
【0028】
上記のタイヤ試験装置において、模擬路面ユニットが、回転ドラムの外周に着脱可能なフレームと、フレームの表面に着脱可能な模擬路面体と、を備えた構成としてもよい。
【0029】
この構成によれば、消耗品である模擬路面体の交換が容易になる。また、低コストで模擬路面体のバリエーションを増やすことが可能になる。
【0030】
上記のタイヤ試験装置において、模擬路面が、骨材と、骨材を結合する結合材と、を含む材料から形成された構成としてもよい。
【0031】
上記のタイヤ試験装置において、骨材がセラミックス片を含み、
結合材が硬化性樹脂を含む構成としてもよい。
【0032】
上記のタイヤ試験装置において、模擬路面が、実際の道路の路面と同じ材料(又は異なる材料)により形成された構成としてもよい。
【0033】
上記のタイヤ試験装置において、模擬路面が、回転ドラムの軸方向に並ぶ複数の走行レーンを有する構成としてもよい。
【0034】
上記のタイヤ試験装置において、複数の走行レーンが、同じ材料(又は異なる材料)により形成された構成としてもよい。
【0035】
上記のタイヤ試験装置において、タイヤ保持部が、回転ドラムを軸方向に移動することにより回転ドラムが走行する走行レーンを切り替え可能な走行レーン切替機構を備えた構成としてもよい。
【0036】
上記のタイヤ試験装置において、回転駆動部からトルク発生部への動力の伝達を中継する中継部と、回転駆動部と中継部とを連結する第1の連結手段と、中継部とトルク発生部とを連結する第2の連結手段と、を備え、第2の連結手段が巻掛け伝動機構を含み、巻掛け伝動機構が、トルク発生部のケースに同軸に取り付けられた受動プーリーを備えた構成としてもよい。
【0037】
上記のタイヤ試験装置において、回転駆動部が、動力結合部を備え、動力結合部が、モーターが接続された入力軸と、一端に第1の連結手段が接続され、他端に回転ドラムの軸が接続された出力軸と、を備えた構成としてもよい。
【0038】
上記のタイヤ試験装置において、中継部が、第1の連結手段が接続された第1のギヤと、第1のギヤと噛み合い、かつ、第2の連結手段が接続された第2のギヤと、を備え、第1のギヤと第2のギヤの回転軸間の距離を変更できるように、第1のギヤ及び第2のギヤのいずれか一方のギヤが他方との距離方向に移動可能に構成され、第1の連結手段及び第2の連結手段のうち、一方のギヤと接続された方が、両端部にユニバーサルジョイントを備え、かつ、長さが可変に構成されたドライブシャフトを含む構成としてもよい。
【0039】
上記のタイヤ試験装置において、トルク発生部が、サーボモーターの軸に連結された第1の軸を備え、ケースが、一端部に第1の軸を通す開口部が形成された筒状であり、サーボモーター及び第1の軸の一端側の部分がケース内に収容され、第1の軸の他端側の部分が開口部からケースの外部に露出した構成としてもよい。
【0040】
上記のタイヤ試験装置において、タイヤ保持部が試験タイヤを回転可能に保持するスピンドル部と、スピンドル部の位置又は向きを変更して模擬路面に対する試験タイヤのアライメントを調整可能なアライメント機構と、を備え、スピンドル部が、タイヤが装着されるホイール部と、一端にホイール部が同軸に取り付けられ、回転可能に支持されたスピンドルと、を備えた構成としてもよい。
【0041】
上記のタイヤ試験装置において、トルク発生部の第1の軸とスピンドルとを連結する第3の連結手段を備え、第3の連結手段が、等速ジョイントを含む構成としてもよい。
【0042】
上記のタイヤ試験装置において、タイヤ保持部が、スピンドルを回転可能に支持するスピンドルケースと、試験タイヤが模擬路面に接地する接地面と垂直かつホイール部の中心を通る軸の周りにスピンドルケースを回転させることによって試験タイヤのスリップ角を調整可能なスリップ角調整機構と、接地面を通りスピンドルと垂直な軸の周りにスピンドルケースを回転させることによって試験タイヤのキャンバ角を調整可能なキャンバ角調整機構と、スピンドルケースを接地面と垂直な方向に移動することによって試験タイヤの垂直荷重を調整可能なタイヤ荷重調整機構と、を備えた構成としてもよい。
【0043】
上記のタイヤ試験装置において、回転ドラム及び試験タイヤの少なくとも一方の外周に、試験タイヤの摩耗により生じるゴム屑を付着し難くする粉末を散布する上記の散布装置を備えた構成としてもよい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、タイヤ試験により発生するゴム屑がタイヤ試験装置や試験タイヤに付着するのを防ぎ、これによりタイヤ試験装置の故障を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の右側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るタイヤ試験装置の左側面図である。
図5】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図6】模擬路面ユニットの外観図である。
図7】模擬路面ユニットの横断面図である。
図8】トルク発生部の縦断面図である。
図9】キャンバ調節機構の側面図である。
図11】タイヤのトレッドの2次元プロファイルの模式図である。
図10】滑材散布装置の概略構成を示す図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図13】本発明の第2実施形態に係るタイヤ試験装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する構成要素には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明は省略する。
【0047】
図1~4は、順に、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の平面図、正面図、右側面図及び左側面図である。なお、説明の便宜のため、図2~4において、タイヤ試験装置1の一部の図示が省略されている。また、図5は、タイヤ試験装置1の制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。
【0048】
以下の説明において、図1中に座標で示すように、図1における左から右へ向かう方向をX軸方向、下から上へ向かう方向をY軸方向、紙面に垂直に裏か表に向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0049】
タイヤ試験装置1は、回転ドラム22の外周に設けられた模擬路面23bに試験タイヤTを接地させた状態で回転ドラム22と試験タイヤTを所定時間(例えば24時間)回転させることで、試験タイヤTを実走試験に近い条件で摩耗させるタイヤの台上試験を行うことが可能な装置である。本実施形態のタイヤ試験装置1は、駆動系に電動機及び動力循環方式を採用することにより、高いエネルギー利用効率を実現している。また、後述するトルク発生装置を採用することにより、回転駆動とトルク付与という2つの機能にそれぞれ専用のモーターを設けて、回転制御とトルク制御を独立に行うことが可能になっている。これにより、自由度が高く高精度のトルク制御が可能になると共に、電動機の低容量化が可能になり、試験装置の小型化及び消費電力の低減が可能になっている。また、トルク発生装置に、加速性能に優れた超低慣性サーボモーターを使用することにより、急発進・急制動時の高い周波数成分を有するトルク変動を正確に再現することが可能になっている。
【0050】
タイヤ試験装置1は、試験タイヤTを保持するタイヤ保持部10と、試験タイヤTが接地する模擬路面23bを有する路面部20と、動力循環回路を回転駆動する回転駆動部30と、試験タイヤTに与える制動力及び駆動力を発生するトルク発生部50と、回転駆動部30からトルク発生部50への動力伝達を中継する中継部40を備えている。また、タイヤ試験装置1は、回転駆動部30と中継部40とを連結する第1連結手段(ドライブシャフト62)と、中継部40とトルク発生部50とを連結する第2連結手段(Vベルト66)と、トルク発生部50とタイヤ保持部10(スピンドル152)とを連結する第3連結手段(等速ジョイント64)を備えている。路面部20、回転駆動部30、中継部40、トルク発生部50及びタイヤ保持部10の後述するスピンドル部15は、試験タイヤTを介して環状に連結して、動力循環回路を形成している。
【0051】
なお、本実施形態では、回転ドラム22がY軸方向に回転軸を向けて配置されているが、例えばX軸方向、Z軸方向又はこれらの中間方向(例えばX軸及びZ軸のそれぞれと45°の角度を成す方向)に回転ドラム22の回転軸を向けて配置してもよい。その場合、タイヤ試験装置1のその他の各部の向きや配置も回転ドラム22の向きに応じて変更される。
【0052】
また、図5に示すように、タイヤ試験装置1の制御システム1aは、試験装置全体の動作を統制する中央制御部70と、タイヤ試験装置1に設けられた各種センサからの信号に基づいて各種の計測を行う計測部80と、外部との入出力を行うインターフェース部90を備えている。
【0053】
図1-4に示すように、路面部20は、回転ドラム22と、回転ドラム22の外周部に設けられた模擬路面部23と、回転ドラム22の軸22aを回転可能に支持する軸受部24を備えている。軸受部24は、回転ドラム22の回転数を検出するロータリーエンコーダー241(図5)を備えている。本実施形態の模擬路面部23は、回転ドラム22の外周に周方向に隙間なく並べられた複数枚の模擬路面ユニット231(図6図7)により形成されている。
【0054】
図6は、回転ドラム22の外周に取り付けられる模擬路面ユニット231の斜視図である。また、図7は、図6に示す切断面A-A´で模擬路面ユニット231を切断した横断面図である。模擬路面ユニット231は、フレーム231aと、フレーム231aの表面に形成された凹部231adに嵌め込まれた模擬路面体231b(231b1、231b2)と、フレーム231aとの間で模擬路面体231bを挟み込んでフレーム231aに固定する左右一対の押さえ板231cを備える。押さえ板231cは、複数の皿ねじ231dによりフレーム231aに固定されている。また、フレーム231aの幅方向(図7における横方向)両端部には、模擬路面ユニット231を回転ドラム22に固定するためのボルトを通す貫通孔231ahが形成されている。
【0055】
模擬路面23bは、周方向に並べられた複数の模擬路面体231bの表面によって形成される。本実施形態の模擬路面体231bは、互いに異なる材料によって形成された周方向に延びる2つの部分(図7における左半分の第1部分231b1と右半分の第2部分231b2)から構成されている。第1部分231b1は後述する第1走行レーン23b1を形成し、第2部分231b2は第2走行レーン23b2を形成する。
【0056】
なお、模擬路面体231bの全体を単一の材料により均一に形成してもよい。また、本実施形態の模擬路面体231bは、表面が滑らかな円柱面状に形成されているが、例えば模擬路面体231bの厚さを周方向(又は、周方向及び幅方向の両方向)において周期的に又はランダムに変化させて、表面に周方向(又は、周方向及び幅方向の両方向)の凹凸を設けても良い。
【0057】
また、本実施形態では、予め形成された模擬路面体231bが押さえ板231cによってフレーム231aに取り付けられているが、模擬路面体231bにフレーム231aに固定するためのボルトを通す貫通穴を設けて、模擬路面体231bを直接ボルトでフレーム231aに取り付けてもよい。また、例えばコンクリートや硬化性樹脂等の可塑性を有する材料を凹部231adに充填して硬化させることにより模擬路面ユニット231の表面に模擬路面体231bを定着させてもよい。
【0058】
模擬路面体231bは、例えば炭化ケイ素やアルミナ等の耐摩耗性に優れたセラミックスを粉砕した(更に、必要に応じて研磨した)骨材に、例えばウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の硬化性の樹脂を含む結合剤(バインダー)を添加したものを成形・硬化させた部材である。
【0059】
本実施形態においては、模擬路面23bは、回転ドラム22の軸方向(幅方向)に2つの走行レーン(第1走行レーン23b1、第2走行レーン23b2)に区画されて形成されている。なお、本実施形態では、模擬路面23bに2つの走行レーンが形成されているが、単一又は3つ以上の走行レーンが形成されていてもよい。模擬路面23bの2つの走行レーン23b1、23b2は、使用する骨材の粒径や量を変えて形成されている。走行方向を向いて右側の第1走行レーン23b1は、アスファルト舗装路面等の滑らかな路面を模擬した模擬路面であり、左側の第2走行レーン23b2は、石畳等の粗い路面を模擬した模擬路面である。試験タイヤTを接地させる模擬路面23bの走行レーン23b1、23b2を切り替えることにより、路面条件を変更することができるようになっている。走行レーンの切り替えは、後述するタイヤ保持部10のトラバース機構11(走行レーン切替機構)により行われる。
【0060】
回転駆動部30は、モーター32と、モーター32から出力される動力を動力循環回路に結合させる動力結合部34を備えている。モーター32はインバーター回路32a(図5)によって駆動制御される。モーター32のシャフト32bは、動力結合部34の入力軸34aと結合している。動力結合部34の出力軸34bの一端34b1は、回転ドラム22の軸22aと結合し、出力軸34bの他端34b2は、ドライブシャフト62の一端と結合している。動力結合部34の出力軸34bは動力循環回路の一部を構成しており、動力結合部34を介して、モーター32の出力軸が動力循環回路と結合している。すなわち、モーター32によって、動力循環回路が回転駆動され、動力循環回路の回転数が制御されるようになっている。
【0061】
中継部40は、ギヤボックス42と、駆動プーリー44と、駆動プーリー44の軸を回転可能に支持する軸受部45と、駆動プーリー44に巻掛けられたVベルト66に所定の張力を与えるテンションプーリー46と、テンションプーリー46の軸を回転可能に支持する軸受部47を備えている。
【0062】
ギヤボックス42は、ドライブシャフト62の他端と結合した第1ギヤ42aと、第1ギヤ42aと噛み合う第2ギヤ42bを備えている。第2ギヤ42bは駆動プーリー44の軸と結合している。本実施形態では、第1ギヤ42aと第2ギヤ42bの歯数が同数であるため、ギヤボックス42は、ドライブシャフト62から入力された回転を、等速逆向きの回転に変換して、駆動プーリー44に伝達する。
【0063】
第1ギヤ42a及び第2ギヤ42bは、歯数(直径)の異なるものに交換可能になっている。例えば、第1ギヤ42aと第2ギヤ42bの歯数に差を与えて、ギヤボックス42により回転速度が増減するようにしてもよい。第1ギヤ42a及び第2ギヤ42bの歯数を変更可能にするために、第1ギヤ42aと第2ギヤ42bの回転軸間の距離が変更可能になっている。具体的には、第2ギヤ42bの回転軸の位置が固定されており、第1ギヤ42aの回転軸の位置が横(第2ギヤ42bとの距離方向。すなわち、X軸方向。)に移動可能になっている。各ギヤの歯数を変更する場合には、第1ギヤ42aの回転軸の位置を横に移動して第2ギヤ42bとの噛み合いが調整される。両端部にそれぞれユニバーサルジョイント621を備え、長さが可変なドライブシャフト62によって回転駆動部30(具体的には、動力結合部34の出力軸34bの他端34b2)と第1ギヤ42aが連結されている。そのため、第1ギヤ42aが横に移動しても、ドライブシャフト62や第1ギヤ42aに歪みが生じず、動力循環回路のスムーズな回転が維持されるようになっている。
【0064】
図8は、トルク発生部50(トルク発生装置)の縦断面図である。トルク発生部50は、外筒51(ケース)と、外筒51内に備え付けられたサーボモーター52、減速機53及び軸54と、外筒51を回転可能に支持する3つの軸受部55、55、56と、スリップリング部57(スリップリング57a、ブラシ57b)と、スリップリング57aを回転可能に支持する軸受部58と、従動プーリー59を備えている。
【0065】
本実施形態においては、サーボモーター52は、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下、定格出力が7kW乃至37kWの超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用される。図5に示すように、サーボモーター52は、サーボアンプ52aを介して中央制御部70に接続されている。
【0066】
外筒51は、直径が大きな円筒状のモーター収容部512及び減速機保持部513と、直径が小さな略円筒状の軸部514及び516を有している。モーター収容部512の一端(図8における右端)には、軸部514が同軸に(すなわち回転軸が一致するように)結合している。また、モーター収容部512の他端(図8における左端)には、減速機保持部513を介して、軸部516が同軸に結合している。軸部514は軸受部56により回転可能に支持され、軸部516は一対の軸受部55により回転可能に支持されている。
【0067】
一対の軸受部55の間には、軸部516と結合した従動プーリー59が配置されている。外筒51は、従動プーリー59を介して、中継部40の駆動プーリー44との間に巻掛けられたVベルト66(図1)によって回転駆動される。
【0068】
軸部516の内周の両端部には、軸受517が設けられている。軸54は、軸部516の中空部に挿入され、一対の軸受517を介して軸部516によって回転可能に支持されている。軸54は、軸部516を貫通していて、その一端は減速機保持部513内に突出し、他端は外筒51の外部に突出している。
【0069】
モーター収容部512の中空部にはサーボモーター52が収容されている。サーボモーター52は、その軸521がモーター収容部512と同軸に配置され、モーターケースが複数のロッド523によりモーター収容部512に固定されている。また、サーボモーター52のフランジ522は、連結筒524を介して、減速機53のギヤケース53aと結合している。また、減速機53のギヤケース53aは、減速機保持部513の内フランジ513aに固定されている。
【0070】
サーボモーター52の軸521は、減速機53の入力軸531と接続されている。また、減速機53の出力軸532には軸54が接続されている。サーボモーター52から出力されるトルクは、減速機53によって増幅されて、軸54に伝達される。軸54の回転は、回転駆動部30のモーター32によって駆動される外筒51の回転に、サーボモーター52によって駆動される回転が足し合されたものとなる。
【0071】
外筒51の軸部514には、スリップリング57aが接続されている。また、スリップリング57aと接触するブラシ57bは、軸受部58の固定フレーム58aに支持されている。サーボモーター52のケーブル525は、軸部514の中空部に通され、スリップリング57aに接続されている。また、ブラシ57bはサーボアンプ52a(図5)に接続されている。すなわち、サーボモーター52とサーボアンプ52aとは、スリップリング部57を介して接続されている。
【0072】
次に、図1-3及び図9を参照しながら、タイヤ保持部10の構成を説明する。図9は、タイヤ保持部10の背面図(部分断面図)である。タイヤ保持部10は、試験タイヤTを、模擬路面23bに対して所定のアライメントで接地させ、所定の荷重を与えながら、回転可能に保持する機構部である。タイヤ保持部10は、上下に積層された4つのベースプレート101、102、103、104と、試験タイヤTを回転可能に保持するスピンドル部15を備えている。また、タイヤ保持部10は、試験タイヤTのアライメント機構として、トラバース機構11、キャンバ角調整機構12、タイヤ荷重調整機構13及びスリップ角調整機構14を備えている。アライメント機構は、スピンドル部15の位置又は向きを変更することにより、模擬路面23bに対する試験タイヤTにアライメントを調整可能な機構である。
【0073】
トラバース機構11(走行レーン切替機構)は、ベースプレート101に対してベースプレート102をY軸方向に移動させることにより、試験タイヤTの位置を軸方向に移動させて、試験タイヤTを接地させる模擬路面23bの走行レーン23b1、23b2を切り替える機構である。トラバース機構11は、ベースプレート101に対してベースプレート102を回転ドラム22の軸方向(Y軸方向)に案内する複数のリニアガイド111と、ベースプレート102を駆動するサーボモーター112と、サーボモーター112の回転運動をY軸方向の直線運動に変換するボールねじ113(送りねじ機構)を備えている。なお、ボールねじ113は、ねじ軸113aとナット113bを備えている。
【0074】
また、各リニアガイド111は、レール111aと、図示されていない転動体を介してレール111a上を走行可能な一つ以上のキャリッジ111bを備えている。リニアガイド111のレール111aはベースプレート101の上面に取り付けられていて、キャリッジ111bはベースプレート102の下面に取り付けられている。すなわち、ベースプレート101とベースプレート102とは、複数のリニアガイド111を介して、Y軸方向にスライド可能に連結されている。
【0075】
また、ベースプレート101には、Y軸方向に軸を向けたサーボモーター112が取り付けられている。サーボモーター112の軸はボールねじ113のねじ軸113aと結合し、ナット113bはベースプレート102の下面に取り付けられている。サーボモーター112を駆動することにより、ベースプレート102がベースプレート101に対してY軸方向に移動する。これにより、回転ドラム22に対する試験タイヤTの位置がY軸方向に移動し、試験タイヤTが接地する模擬路面23bの走行レーン23b1、23b2が切り換えられる。
【0076】
図5に示すように、サーボモーター112は、サーボアンプ112aを介して中央制御部70に接続されている。サーボモーター112による走行レーンの切り替え動作は、中央制御部70によって制御される。
【0077】
図9は、タイヤ保持部10の上部を示す背面図である。キャンバ角調整機構12は、ベースプレート102に対してベースプレート103をZ軸周りに旋回させることにより、試験タイヤTのキャンバ角を調整する機構である。キャンバ角調整機構12は、鉛直に延びる軸121と、軸121を回転可能に支持する軸受122と、軸121を中心とするベースプレート103の旋回を案内する曲線ガイド123と、Y軸方向に軸を向けてベースプレート102に取り付けられたサーボモーター124と、サーボモーター124の回転運動をY軸方向の直線運動に変換するボールねじ125(送りねじ機構)を備えている。
【0078】
軸121はベースプレート103に取り付けられ、軸受122はベースプレート102に取り付けられている。軸受122には、軸121の角度位置(すなわち、キャンバ角)を検出する、図5に示すロータリーエンコーダー122a(キャンバ角検出手段)が設けられている。また、軸121は、回転ドラム22に試験タイヤTが接地する接地面の直下に配置されている。具体的には、軸121の中心線(回転軸)は、スピンドル152と垂直な接地面を通る直線となっている。曲線ガイド123は、軸121と同心の円弧状に延びるレール123aと、図示されていない転動体を介してレール123a上を走行可能なキャリッジ123bを備えている。レール123aはベースプレート102の上面に取り付けられ、キャリッジ123bはベースプレート103の下面に取り付けられている。また、ボールねじ125のねじ軸125aはサーボモーター124の軸と結合し、ナット125bは鉛直軸周りに揺動可能なヒンジ126を介してベースプレート103に取り付けられている。サーボモーター124を駆動することにより、ベースプレート103が軸121を中心に旋回して、試験タイヤTのキャンバ角が変化する。
【0079】
図5に示すように、サーボモーター124は、サーボアンプ124aを介して中央制御部70に接続されている。サーボモーター124によるキャンバ角の調整動作は、中央制御部70によって制御される。
【0080】
タイヤ荷重調整機構13は、ベースプレート103に対してベースプレート104をX軸方向に移動させることにより、試験タイヤTを径方向に移動させて、試験タイヤTに加えられる垂直荷重(接地圧)を調整する機構である。タイヤ荷重調整機構13は、ベースプレート103に対してベースプレート104を回転ドラム22の径方向(X軸方向)に案内する複数のリニアガイド131と、ベースプレート104を駆動するサーボモーター132と、サーボモーター132の回転運動をX軸方向の直線運動に変換するボールねじ133(送りねじ機構)を備えている。
【0081】
リニアガイド131は、X軸方向に延びるレール131aと、転動体を介してレール上を走行可能なキャリッジ131bを備えている。リニアガイド131のレール131aはベースプレート103の上面に取り付けられ、キャリッジ131bはベースプレート104の下面に取り付けられている。
【0082】
また、ベースプレート103には、X軸方向に軸を向けたサーボモーター132が取り付けられている。サーボモーター132の軸はボールねじ133のねじ軸133aと結合し、ナット133bはベースプレート104に取り付けられている。サーボモーター132を駆動することにより、ナット133bと共に、ベースプレート104がベースプレート103に対してX軸方向に移動する。これにより、回転ドラム22と試験タイヤTの軸間距離が変化し、試験タイヤTの荷重が変化する。
【0083】
図5に示すように、サーボモーター132は、サーボアンプ132aを介して中央制御部70に接続されている。サーボモーター132による試験タイヤTの荷重調整動作は、中央制御部70によって制御される。
【0084】
スリップ角調整機構14は、ベースプレート104に対してスピンドル部15をX軸周りに回転させることにより、回転ドラム22の回転軸に対して試験タイヤTの回転軸をX軸周りに傾けて、試験タイヤTのスリップ角を調整する機構である。
【0085】
スリップ角調整機構14は、スピンドル部15のスピンドルケース154(軸受部)に一端が固定されてY軸方向に延びる軸141と、軸141をX軸周り(すなわち、接地面に垂直な軸の周り)に回転可能に支持する軸受部142と、サーボモーター143と、ボールねじ144(送りねじ機構)を備えている。軸受部142は、軸141の角度位置(すなわち、試験タイヤTのスリップ角)を検出するロータリーエンコーダー142a(図5)を備えている。軸141の中心線(回転軸)は、ホイール部156の略中心を通り、ホイール部156の回転軸と垂直に配置されている。サーボモーター143は、軸を略Z軸方向に向けて、Y軸周りに揺動可能なヒンジ143bを介してベースプレート104に取り付けられている。サーボモーター143の軸はボールねじ144のねじ軸144aと結合している。また、ボールねじ144のナット144bは、Y軸周りに揺動可能なヒンジ146を介して、スピンドルケース154のX軸方向における一端部(軸141の中心からX軸方向に離れた箇所)に取り付けられている。
【0086】
サーボモーター143を駆動して、ボールねじ144のナット144bを上下に移動させることで、スピンドルケース154が軸141と共に回転する。これにより、スピンドル部15に保持された試験タイヤTのスリップ角が変化する。
【0087】
図5に示すように、サーボモーター143は、サーボアンプ143aを介して中央制御部70に接続されている。サーボモーター143によるスリップ角の調整動作は、中央制御部70によって制御される。
【0088】
スピンドル部15は、スピンドル152と、スピンドル152を回転可能に支持するスピンドルケース154(軸受部)と、スピンドル152の一端に同軸に取り付けられたホイール部156を備えている。試験タイヤTはホイール部156に装着される。スピンドル152は、試験タイヤTに加わるトルクを検出するトルクセンサ152aと、試験タイヤTに加わる3分力(すなわち、X軸方向の力[Radial Force;荷重]、Y軸方向の力[Lateral Force;横力]及びZ軸方向の力[Tractive Force;接線力])を検出する3分力センサ152b(図5)を備えている。また、スピンドルケース154は、スピンドル(すなわち、試験タイヤT)の回転数を検出するロータリーエンコーダー154b(図5)を備えている。トルクセンサ152a及び3分力センサ152bには、いずれも圧電素子が使用されているため、スピンドル152及びスピンドルケース154は高い剛性を有し、これにより高精度の測定が可能になっている。また、ホイール部156は、試験タイヤTの空気圧を検出する空気圧センサ156a(図5)を備えている。
【0089】
タイヤ保持部10は、試験タイヤTに冷風又は温風を当てて試験タイヤTの温度を調節するタイヤ温度調節システム18(図2に送風ダクト182aのみを示す。)を備えている。試験時(走行時)の試験タイヤTの温度(特に、トレッド面の温度)は、試験結果(摩耗量)に影響を及ぼす。そのため、試験中に試験タイヤTのトレッド面の温度を一定の温度範囲内(例えば35±5℃)に保つことが望ましい。また、後述する試験タイヤTの摩耗量の測定においても、試験タイヤTの温度が測定結果に影響する。摩耗量を正確に測定するためには、測定時に試験タイヤTの温度を所定の基準温度(例えば25℃)に調節する必要がある。そのため、タイヤ温度調節システム18を使用して、試験時及び摩耗量の測定時に、試験タイヤTの温度が設定された温度に調節される。
【0090】
タイヤ温度調節システム18(図5)は、制御部181、スポット空調装置182及び温度センサ183を備えている。温度センサ183は、試験タイヤTのトレッド面の温度を測定する非接触温度センサ(放射温度計)であり、トレッド面に対向して配置される。制御部181は、温度センサ183の測定結果に基づいて、設定温度からの偏差が解消されるように、スポット空調装置182の動作を制御して、試験タイヤTのトレッド面等に冷風、温風又は室温の風を吹き付ける。試験タイヤTの設定温度は、試験時(走行時)と摩耗量測定時とで異なる値を設定することが可能になっている。また、試験タイヤTの種類に応じて異なる設定温度を設定可能になっている。また、タイヤ温度調節システム18に室温測定用の温度センサを更に設けて、室温及び試験タイヤTの温度に基づいて、スポット空調装置182の動作を制御する構成としてもよい。
【0091】
なお、本実施形態のタイヤ温度調節システム18は、スポット空調装置182を使用して、試験タイヤTに温風や冷風を吹き付けることにより試験タイヤTの温度を調節するように構成されているが、タイヤ温度調節システムはこの構成に限定されない。例えば、試験タイヤTの全体を囲うカバー(恒温室)を設けて、カバー内の気温の調節により試験タイヤTの温度を調節するようにしてもよい。
【0092】
また、試験時の設定温度は、タイヤが使用される地域の気候に合わせて設定してもよい。また、タイヤの摩耗は温度の上昇によって促進される。そのため、タイヤ温度調節システム18を使用して、試験時の試験タイヤTの温度を通常の走行時のタイヤの温度よりも高く調節することにより、加速劣化試験を行うこともできる。
【0093】
また、タイヤ保持部10は、試験タイヤTのトレッドの摩耗量を測定するために使用される2次元レーザー変位センサ17(以下、「変位センサ17」と略記する。)を備えている。変位センサ17は、シリンドリカルレンズによって帯状に広げられたレーザー光束(レーザーライトシート)を用いて、試験タイヤTのトレッド面の2次元プロファイル(タイヤの回転軸を含む平面で切断された断面形状)を非接触で測定する。
【0094】
図5に示すように、変位センサ17は、計測部80に接続されていて、計測部80と共に摩耗測定部として機能する。計測部80は、変位センサ17の動作を制御すると共に、変位センサ17が取得した2次元プロファイルに基づいて試験タイヤTの摩耗量を計算する。
【0095】
摩耗測定部による2次元プロファイル測定は、試験タイヤTを静止させた状態で、タイヤ試験の前後で(付加的に試験の中途で)行われる。試験前後(及び中途)に測定された2次元プロファイルに基づいて、試験によって生じた試験タイヤTの摩耗量が計算される。なお、上述のように、タイヤの摩耗量の測定値はタイヤの温度の影響を受けるため、試験終了(又は停止)後に測定を行う場合は、自然放熱又はタイヤ温度調節システム18による強制冷却により、タイヤ全体が所定の基準温度に到達してから試験を行うことが望ましい。
【0096】
図10は、摩耗測定部を用いた2次元プロファイル測定によって取得された試験タイヤTのトレッド面の2次元プロファイルの模式図である。図10において、横軸(Y)が試験タイヤTの幅方向の位置を示し、縦軸(H)が試験タイヤTの溝の高さ方向(試験タイヤTの径方向)の位置を示す。試験タイヤTには、周方向に延びる4本の溝G1、G2、G3及びG4が形成されている。2次元プロファイルの画像解析により、2次元プロファイルにおけるU字状に凹んだ部分が、各溝G1~G4に対応付けられる。
【0097】
また、各溝G1~G4の幅方向(Y軸方向)両側の所定範囲に、近傍領域L1とR1、L2とR2、L3とR3及びL4とR4がそれぞれ設定される。以下、第n番目の溝を符号Gnにより示し、溝Gnの近傍領域を符号Ln、Rnにより示す。また、溝Gnの横軸負方向側(図10における左側)の近傍領域を近傍領域Lnとし、溝Gnの横軸正方向側(図10における右側)の近傍領域を近傍領域Rnとする。近傍領域Ln(Rn)は、例えば、溝Gnの左端(右端)から溝Gnの幅の半分の距離までの領域として設定される。
【0098】
溝Gnの深さDnが、例えば、近傍領域Ln及びRnにおける高さHの平均値と溝Gnにおける高さHの平均値との差分として計算される。また、試験前後の各溝Gnの摩耗量Wnが、試験前後での溝Gnの深さDnの差分として計算される。また、試験タイヤTの平均摩耗量Wが、摩耗量W1~4の平均値として計算される。
【0099】
また、上記の溝の深さDnに加えて(又は、溝の深さDnに替えて)、最小溝深さDnminを計算してもよい。溝Gnの最小溝深さDnminは、例えば、近傍領域Lnにおける高さHの最小値と近傍領域Rnにおける高さHの最小値との平均値と、溝Gnにおける高さHの最大値との差分として計算される。この場合、溝の深さDnの代わりに最小溝深さDnminを用いて、摩耗量Wnや平均摩耗量Wを計算してもよい。
【0100】
摩耗量Wnや平均摩耗量Wの計算方法は、上記に例示したものに限らず、他の方法により計算してもよい。例えば、上記の例では、近傍領域Ln及びRnの両方の高さHを使用して溝Gnの深さDnや最小溝深さDnminを計算しているが、近傍領域Ln及びRnのいずれか一方(例えば、試験タイヤTの幅方向中央に近い方)の高さHを使用して溝Gnの深さDn等を計算してもよい。また、最小二乗法等により、溝G1~G4の部分と溝G1~G4以外の部分について、それぞれ2次元プロファイルの近似曲線(例えば2次曲線)を求め、試験前後での両近似曲線の平均距離の差分として平均摩耗量Wを計算してもよい。
【0101】
また、摩耗測定部17は、各溝Gnの摩耗量Wnや平均摩耗量Wと共に、単位走行距離(例えば1km)当たりの摩耗量Wや、単位走行時間(例えば1時間)当たりの摩耗量Wを計算して表示する。
【0102】
タイヤ保持部10は、試験タイヤTのトレッド面及び回転ドラム22の模擬路面23bに滑材(被散布体)を散布する滑材散布装置16(粉末散布装置)を備えている。滑材散布装置16は、空気に滑材を分散させた混合物を試験タイヤTと模擬路面23bとの接地部の走行方向前方(図1における上方)から散布する。これにより、試験タイヤTの摩耗により発生するゴム粉末がタイヤ試験装置1の各部に付着することによって生じる動作不良や故障が防止される。また、滑材の散布により、試験タイヤTや模擬路面23b等へのゴム粉末の付着が試験結果に充てる影響が軽減され、試験精度が向上する。
【0103】
滑材には、例えばタルク(含水珪酸マグネシウム)等の不可燃性の粉末が使用される。これにより、粉塵爆発が防止され、防爆設備等の粉塵爆発に対する安全対策が不要になり、イニシャルコスト及びランニングコストの大幅な削減が可能になる。
【0104】
図11は、滑材散布装置16の概略構成を示した図である。滑材散布装置16は、滑材が貯留されるホッパー161(貯蔵部)と、ホッパー161内を撹拌する撹拌子162と、撹拌子162を回転駆動する駆動部163と、滑材を定量的に搬送する定量搬送部164と、滑材を吸引して空気と混ぜて噴出させるエジェクター166と、定量搬送部164からエジェクター166まで滑材を導く管路165と、エジェクター166から散布位置まで滑材が分散した空気を導く管路167と、管路167の先端に取り付けられたラッパぐち168を備えている。
【0105】
撹拌子162は、上下に延びるロッド162aと、ロッド162aの側面からホッパー161の内周面に向かって径方向に垂直に延びる3対の枝部162bと、枝部162bの各対の先端部にそれぞれ取り付けられた3つのシュー保持部162c(摺動子保持部)と、シュー取付部162cに保持された3つのシュー162d(摺動子)を備えている。ロッド162aは、ホッパー161の円柱面状の内周面と同心に配置され、その一端が駆動部163に接続されている。各シュー162dは、先端がホッパー161の内周面に接触するように配置され、ホッパー161の内周面に付着した滑材を削ぎ落しながら、ホッパー161の内周面に沿って旋回する。本実施形態では、シュー162dとして、例えば導電性(又は帯電防止性)を有する樹脂から形成されたブラシが使用される。タイヤ試験装置1の運転中は、常に撹拌子162によってホッパー161内の滑材が撹拌される。これにより、ホッパー161内で滑材が凝集して詰まることによる滑材の供給量の変動や供給の中断が防止される。滑材はホッパー161の内周面に付着して凝集の起点となり易いため、シュー162dの先端でホッパー161の内周面を擦ることにより、滑材の詰まりが効果的に防止され、滑材の安定した供給が可能になる。
【0106】
なお、本実施形態ではシュー162dとしてブラシが使用されるが、ブラシ以外の部材(例えばゴム弾性を有するスポンジやシート等)をシュー162dとして使用してもよい。シュー162dの弾性により、シュー162dがホッパー161の内周面に適度な力で押し当てられ、ホッパー161の内周面に固着した滑材が擦り落とされる。また、シュー162dに適度な弾性が無い場合は、シュー取付部162cや枝部162bに弾性を持たせても良い。例えば、枝部162bに板ばねを使用することにより、板ばねの弾性力でシュー162dをホッパー161の内周面に押し当てることができる。また、樹脂又はゴム製のシュー162dを使用することにより、シュー162dの滑動によるホッパー161の内周面の傷や摩耗が防止される。
【0107】
また、導電性を有する材料(例えばカーボンブラックが練り込まれた合成樹脂)から形成されたシュー162dを使用することにより、静電気によるシュー162dの表面へ滑材の集積が防止される。
【0108】
駆動部163は、モーター163mと、モーター163mに駆動電流を供給するドライバ163md(図5)と、モーター163mの出力の回転数を減速する減速機163gを備えている。
【0109】
ホッパー161及び撹拌子162の軸は、本実施形態では鉛直を向いているが、上下方向を向いていればよい(すなわち、軸が鉛直に対して傾いていてもよい)。
【0110】
定量搬送部164は、円柱状の中空部を有する筒状のケース164aと、ケース164aの中空部に同心に収容された略円柱状のスクリュー164bと、スクリュー164bを回転駆動する駆動部164cを備えている。駆動部164cはサーボモーター164cmと、サーボモーター164cmに駆動電流を供給するサーボアンプ164cma備えている。サーボモーター164cmに替えて、回転数の制御が可能な他の種類のモーターを使用してもよい。
【0111】
スクリュー164bは、外周に螺旋溝が形成された略円柱状の本体部164b1と、本体部164b1の軸方向両端から軸方向に延びた、本体部164b1よりも細い軸部164b2を有する。また、ケース164aの軸方向両端部には、軸部164b2と回転可能に嵌合する軸受孔164a1がそれぞれ形成されている。軸部164b2の一方には、駆動部164cの軸が接続されている。
【0112】
ケース164aの軸方向両端部には開口部が設けられている。一方の開口部である入口164a2は、ケース164aの一端側において上面に形成されている。また、他方の開口部である出口164a3は、ケース164aの他端側において下面に形成されている。入口164a2にはホッパー161の排出口が接続され、出口164a3には鉛直に延びる直管164dが接続されている。
【0113】
スクリュー164bの外周には、1本の螺旋溝が形成されている。螺旋溝は、横断面が半円状に形成されている。なお、本実施形態では螺旋溝のピッチは一定であるが、不等ピッチにしてもよい。また、スクリュー164bに複数の螺旋溝(多重螺旋構造)を形成しても良い。スクリュー164bの本体部164b1の外径は、ケース164aの中空部の内径よりもわずかに小さい。なお、スクリュー164bの外周面とケースの内周面との隙間が狭いと隙間に滑材が詰まって摩擦抵抗が増大し、逆に隙間が広いと搬送効率が低下する。
【0114】
スクリュー164bの回転により、滑材はケース164aの中空部内を入口164a2から出口164a3に向かって移動し、直管164dから排出される。スクリュー164bの1回転当たりに搬送される滑材の量は一定であるから、スクリュー164bを等速で回転させることにより、一定の速度で滑材を連続的に供給することが可能になる。また、スクリュー164bの回転数を変えることにより、滑材の供給速度を調整することが可能である。
【0115】
エジェクター166は、配管166aから供給される圧縮空気を駆動源として作動し、内蔵されたノズルから吐出側に向けて圧縮空気を高速で噴射させることで、管路165が接続された吸引ポートを負圧にして滑材を吸引ポートから吸引すると共に、管路167が接続された吐出ポートから滑材が分散した空気を噴出させる。
【0116】
管路165の入口は、定量搬送部164の直管164dの出口と、隙間Gを介して、上下に対向して配置される。エジェクター166が発生する負圧により、隙間Gから管路165に空気が流入する。直管164dの出口から投下される滑材は、隙間Gから流入する空気により管路165に導入される。
【0117】
また、管路167の先端(ラッパぐち168)は、試験タイヤTと模擬路面23bとの接地部の真上に配置されている。エジェクター166から噴出した滑材を含む空気は、管路167を通り、ラッパぐち168から接地部に向けて噴射される。また、図11に示すように、試験タイヤTと回転ドラム22は、接地部が下方に移動する向きに回転駆動される。すなわち、滑材は、走行方向の前方から接地部に向けて噴射される。
【0118】
以上に説明した滑材散布装置16を使用して試験タイヤTと模擬路面23bとの接地部の前方に滑材を散布することにより、試験タイヤTの摩耗によって生じるゴム屑が試験タイヤTやタイヤ試験装置1に付着するのが防止され、ゴム屑の付着に起因する試験精度の低下やタイヤ試験装置1の故障が防止される。
【0119】
図5に示すように、滑材散布装置16の駆動部163のモーター163m及び定量搬送部164のサーボモーター164cmは、中央制御部70に接続されている。滑材散布装置16の動作は、中央制御部70によって制御される。
【0120】
図5に示すように、制御システム1aのインターフェース部90は、例えば、ユーザとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0121】
計測部80には、変位センサ17、ロータリーエンコーダー122a、142a、154b及び241、トルクセンサ152a、3分力センサ152b、空気圧センサ156a並びに温度センサ183が接続されている。計測部80は、各センサの信号に基づいて、試験タイヤTに加わるトルク、加重(Radial Force)、接線力(Tractive Force)及び横力(Lateral Force)、試験タイヤTの回転数、キャンバ角、スリップ角、トレッド面の温度及び空気圧並びに回転ドラム22の回転数及び路面速度(回転ドラム22の周速)を測定し、これらの測定値を中央制御部70に送信する。なお、路面速度は、ロータリーエンコーダー241による回転ドラム22の回転数の測定値から計算される。
【0122】
中央制御部70は、設定に応じて、計測部80から取得した測定値をディスプレイ装置に表示すると共に、測定時刻と共に不揮発性メモリ71に記憶させる。
【0123】
中央制御部70には、サーボアンプ52a、112a、124a、132a、143a及び164cmaをそれぞれ介して、サーボモーター52、112、124、132、143及び164cmが接続されている。また、中央制御部70には、インバーター回路32a及びドライバ163mdをそれぞれ介して、モーター32及び163mが接続されている。更に、中央制御部70には、タイヤ温度調節システム18の制御部181を介して、スポット空調装置182及び温度センサ183が接続されている。
【0124】
本実施形態のタイヤ試験装置1を使用した試験では、予め基準となる設計のタイヤ(以下「基準タイヤ」という。)について、実際の車両に装着して走行したときの摩耗状態を調べる実走試験を行い、タイヤ試験装置1による台上試験でも実走試験と同じ摩耗状態が再現されるように試験条件を調整し、調整後の試験条件(「調整試験条件」という。)により各種設計のタイヤについて試験が行われる。なお、基準タイヤは、試験対象となるタイヤと比較的に設計の近いタイヤから選択される。例えば、乗用車用タイヤとバス・トラック用タイヤについて、それぞれ基準タイヤが設定される。
【0125】
以上に説明した本発明の実施形態によれば、油圧装置を使用せずに、電動機が使用されているため、従来の試験装置よりも電気使用量を大幅に削減することができる。
【0126】
また、消費電力が少ないため、大規模災害等により電力供給が制限された場合でも、タイヤ試験装置1を安定的に運用することができる。
【0127】
また、油圧装置を使用しないため、作動油による環境汚染の問題が生じることもない。
【0128】
また、ゴム製のタイヤは作動油に接触すると品質が劣化するため、作動油で汚染された試験環境では正確な試験を行うことが難しい。本実施形態のタイヤ試験装置1を使用すれば、試験タイヤTが作動油で汚染されることがないため、より正確な試験を行うことができる。
【0129】
また、本実施形態では、トルク発生部50(トルク発生装置)に、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下、定格出力が22kW(7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターを使用することにより、急激なトルク変動の発生が可能になり、複雑な波形のトルク変化を正確に再現可能になっている。
【0130】
また、従来の動力循環システムでは、先にトルクを動力循環回路に加え、トルクが掛かった状態で回転駆動が開始されるように構成されているため、試験中にトルクを変化させることができず、一定のトルクを加えることしかできなかった。本実施形態のタイヤ試験装置1では、超低慣性高出力型のACサーボモーターを搭載したトルク発生装置を動力循環回路に組み入れる構成を採用することにより、高速走行中に高速(高い周波数)で複雑なトルク変動を供試体に与えることが可能になり、高速走行中の急加速や急減速、ABSブレーキ試験等の過酷で複雑な条件の試験を正確に模擬することが可能になっている。
【0131】
また、従来の単一の駆動用モーターを使用する構成では、駆動用モーターに高速・大トルクの回転駆動が要求されるため、乗用車用タイヤの試験でも600kW以上の大容量のモーターが必要となる。しかし、本実施形態のトルク発生装置を採用することにより、各モーターの役割が低速・大トルク駆動と高速・低トルク駆動に分けられるため、トルク発生部50のサーボモーター52の容量は22kWで足り、回転駆動部30のモーター32の容量も37kWで足りるため、合計しても60kWの容量で足りることになり、必要な電気使用量を約1/10に削減することが可能になっている。なお、トラック・バス用タイヤの試験に適合する試験装置では、電気使用量は約1/13にまで削減される。また、油圧モーターを使用する場合、非稼働時にも作動油の温度管理に電力が使用されるが、電気モーターは休転中には殆ど電力を消費しないため、実質的な電気使用量は1/15程度まで削減され得る。
【0132】
また、低容量のモーターを使用することにより、製造コストの低減が可能になり、また、装置の小型化も可能になる。
【0133】
また、本実施形態のタイヤ試験装置1では、新規な複合材料を使用して模擬路面23bを形成することにより、模擬路面23bの耐久性が向上し、ランニングコストの削減が可能になっている。また、本実施形態の模擬路面23bを使用すれば、骨材やバインダーの変更によって、様々な路面を正確に模擬した試験が可能になる。
【0134】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図12及び図13は、それぞれ本発明の第2実施形態に係るタイヤ試験装置1000の平面図及び正面図である。なお、説明の便宜のため、各図において、タイヤ試験装置1000の一部が断面で示されている。また、第1実施形態と共通又は対応する構成要素については、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。
【0135】
本実施形態のタイヤ試験装置1000は、乗用車用タイヤとバス・トラック用タイヤの試験を1台の試験装置で行うことができるように構成されている。
【0136】
タイヤ試験装置1000は、中継部1040の一部(ギヤボックス1042、軸1049)と路面部1020(回転ドラム1022)を共有する2系統の動力循環回路(動力循環回路A、動力循環回路B)を備え、2つの試験タイヤT1、T2の試験を同時に行うことができるように構成されている。
【0137】
また、本実施形態では、回転駆動部1030が路面部1020のフレーム1020Fの上に設置され、モーター1032の動力が、モーター1032の軸に結合した駆動プーリー1034、Vベルト1068及び回転ドラム1022の軸1022aに結合した従動プーリー1025及び回転ドラム1022を介して、各動力循環回路A、Bに伝達されるように構成されている。
【0138】
中継部1040A、1040Bには、駆動プーリー1044A、1044B及び従動プーリー1048A、1048Bが、それぞれ2組設けられている。一組は乗用車用タイヤの試験に減速比が適合したものであり、もう一組はバス・トラック用タイヤの試験に減速比が適合したものである。Vベルト1066A、1066Bは、乗用車タイヤの試験時には乗用車タイヤ用のプーリー対に巻掛けられ、バス・トラック・タイヤの試験時にはバス・トラック・タイヤ用のプーリー対に巻掛けられる。Vベルト1066A、1066Bを掛け替えるだけで、各種のタイヤに適した減速比に変更することができるようになっている。
【0139】
中継部1040は、1つの第1ギヤ1042aと2つの第2ギヤ1042bを備えている。第1ギヤ1042a及び第2ギヤ1042bの中心には、それぞれ貫通孔が設けられている。この貫通孔には、それぞれ従動プーリー1048A、1048Bが一端に取り付けられた軸1041A、1041Bが非接触に通されている。軸1041A、1041Bの他端は、トルク発生部1050A、1050Bの軸1051A、1051Bに接続されている。また、各第2ギヤ1042bは、トルク発生部1050A、1050Bの外筒1051と結合している。
【0140】
以上が本発明の一実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0141】
上記の実施形態では、中継部40の第1ギヤ42aの回転軸の位置が横に移動可能に構成されているが、第2ギヤ42bの回転軸の位置を横に移動可能に構成してもよい。この場合、第2ギヤ42bと駆動プーリー44とは、第2ギヤ42bの移動が許容されるように、例えばユニバーサルジョイントを備えたドライブシャフト62等によって連結される。
【0142】
上記の実施形態では、第2連結手段にVベルトが使用されているが、第2連結手段として、平ベルト、歯付きベルト、その他のベルトを使用してもよい。また、第2連結手段として、チェーン、ワイヤ、その他の巻掛け媒介節を使用してもよい。また、上記の第1実施形態では、中継部40とトルク発生部50が一つのVベルトによって連結されているが、並列又は直列に接続した複数の第2連結手段によって連結する構成としてもよい。また、複数の第2連結手段を直列に接続する場合、異なる種類の第2連結手段を組み合わせて使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13