(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】骨関連疾患の予防または治療のための薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20221011BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221011BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20221011BHJP
A61P 3/14 20060101ALI20221011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221011BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221011BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221011BHJP
A61P 15/12 20060101ALI20221011BHJP
A23L 33/11 20160101ALI20221011BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P19/08
A61P43/00 107
A61P19/10
A61P3/14
A61P35/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61K45/00
A61P15/12
A61P43/00 111
A23L33/11
(21)【出願番号】P 2019565936
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2018006174
(87)【国際公開番号】W WO2018221966
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0068400
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0005406
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055737
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521020701
【氏名又は名称】ネクシオン バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXYON BIOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジョン テク
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ソク ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ジン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-520239(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2014-0018814(KR,A)
【文献】国際公開第94/026208(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/161078(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/178427(WO,A1)
【文献】Acta Obstet Gynecol Scand,1981年,60,p.481-488
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロール(Sterol)硫酸
塩を有効成分として含む、骨疾患の予防または治療用薬学組成物
であって、
前記ステロール(Sterol)硫酸塩は、下記化学式1で表されるものである、薬学組成物:
【化1】
【請求項2】
前記骨疾患は、骨粗鬆症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨委縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、癌(cancer)関連の骨再吸収疾病、骨折(fracture)、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(osteoarthritis)、
およびリウマチ関節炎(rheumatoid arthritis
)から構成された群より選択される1種以上である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記骨粗鬆症は、老化による原発性骨粗鬆症、閉経による原発性骨粗鬆症
、卵巣摘出術による原発性骨粗鬆症
、および睾丸摘出による原発性骨粗鬆症から構成された群より選択される1種以上である、請求項
2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記骨粗鬆症は、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、甲状腺機能亢進性骨粗鬆症、固定誘発性骨粗鬆症、ヘパリン誘発性骨粗鬆症、免疫抑制誘発性骨粗鬆症、腎不全による骨粗鬆症、炎症性骨粗鬆症、クッシング症候群による骨粗鬆症、リウマチ性骨粗鬆症、およびエストロゲン合成抑制剤による骨粗鬆症から構成された群より選択される1種以上である、請求項
2に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記薬学組成物は、海綿骨の体積を増加させるものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記薬学組成物は、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進するものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制するものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
コレステロール(
cholesterol)硫酸
塩を有効成分として含む、骨疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項9】
前記骨疾患は、骨粗鬆症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨委縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、癌(cancer)関連の骨再吸収疾病、骨折(fracture)、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(osteoarthritis)、
およびリウマチ関節炎(rheumatoid arthritis
)から構成された群より選択される1種以上である、請求項
8に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨関連疾患の予防または治療のための薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な骨関連疾患である骨粗鬆症は、骨を吸収する破骨細胞と骨を形成する骨芽細胞の骨恒常性調節の不均衡によって発生する疾患であり、骨折の危険性が増加しうる低下した骨強度を特徴とする骨格障害をいう(米国国立保健院による定義NIH、2000)。
【0003】
前記骨恒常性調節の不均衡は老化、全身疾患、閉経などの原因によって発生し、骨密度が減少し、骨組織の微細構造が退化して骨折危険の増加を示す全身疾患に相当する。すなわち、古い骨の消滅と新しい骨の生成がバランスをとりながら骨密度が維持されるが、老化、閉経などで新しい骨の入れ替えが円滑に行われず骨が粗くなり、この過程が繰り返されるにつれて骨が薄くなり、折れたり壊れる危険性が高まるのである。
【0004】
特に、前記閉経とは、卵巣の機能が低下して排卵および女性ホルモンの生産がそれ以上行われない現象を意味するもので、40代以降老化が進むにつれて現れる現象として知られているが、40歳以下の若い女性でも早期閉経が増加する傾向にあり、卵巣を摘出した女性の場合、閉経関連疾患にさらに脆弱になる。卵巣機能の減少から引き起こされた視床下部-脳下垂体-卵巣につながる性腺軸の機能失調が原因とされ、これによって性ホルモン、脂質および心血関係の代謝、骨代謝、記憶作用などの身体および精神的な変化が現れる。閉経期の女性はホルモンの不均衡とカルシウム欠乏および体内の酸化的ストレスの増加で様々な疾病の危険にさらされる。すなわち、閉経期のエストロゲンの変化により、冠状動脈疾患、骨粗鬆症、アルツハイマーなどの疾患の発病率は急増し、特に閉経期以降のエストロゲンの減少は急速な骨損失をもたらす。これによって、閉経期の女性の身体的、精神的健康および生の質を改善するために更年期の症状を改善できる治療剤の開発が求められ、このような閉経期疾患の改善のためにホルモン代替療法および非ステロイド系製剤などの薬物が開発されている。しかし、これらの薬物の場合、大部分が頭痛および体重増加などの副作用があることが知られており、特に、エストロゲン代替療法の場合にも、人為的に体内にホルモンを投与することから、これに対する拒絶反応とともに、子宮出血、脳卒中、心臓発作、乳癌および子宮癌の発生の危険性が高まる(Swaran L.,et.al.,Obstetrics&Gynecology,91,678-684,1998)。したがって、副作用がないうえに、閉経期疾患の症状を緩和させることができる優れた効果を有する新たな閉経期疾患に対する治療剤の開発が求められているのが現状である。
【0005】
骨粗鬆症は、正常な活動を維持するのに骨のカルシウム量が減少するなど、必要な骨量が減少して、すなわち、骨密度が減少して軽い衝撃でも骨折が誘発されやすい疾患である。前記骨粗鬆症に進む前の状態を骨減少症といい、骨の厚みなどが引き続き薄くなり軽くなりつつ穴があく前までの状態を意味する。また、骨軟化症は、ビタミンDが不足したり、カルシウムを大量に排泄する腎臓疾患がある場合、骨にカルシウムが混じらず軟骨が生じてしまう状態で、骨の曲がる症状を意味する。さらに、骨萎縮は、骨の退行縮小、すなわち、すでに完成した骨組織の骨量が減少する症状を意味する。
【0006】
人体内の骨の量は、骨芽細胞と破骨細胞の均衡による骨恒常性の調節によって維持されるので、これらの細胞において重要な役割をする分子を標的とした治療剤の開発が重要である。すなわち、骨を形成する骨芽細胞の活性が減少し、骨を吸収する破骨細胞の活性が増加すれば、骨の分解が促進され、骨が薄くなり、折れやすい骨粗鬆症のような疾病が起こるので、骨芽細胞および破骨細胞の活性を調節可能なタンパク質が骨疾患の治療剤として研究されている(Gregory R.Mundy,Journal of Bone and Mineral Metabolism(1996)14:59-64;Chad Deal,nature clinical practice RHEUMATOLOGY(2009)vol5 no1;Kalervo Vaananen,Advanced Drug Delivery Reviews57(2005)959-971)。しかし、現在市販の骨粗鬆症治療薬物は、parathyroid hormoneを除く大部分が破骨細胞の活性を抑制する薬物であり、そこで、骨芽細胞をターゲットとする薬物の開発が切実な状況である。
【0007】
一方、ステロール硫酸塩に相当するコレステロール硫酸塩(cholesterol sulphate)は、細胞膜をなす構成成分の一つで、血液および皮膚などに高い濃度で存在しているが、現在まで免疫機能と皮膚細胞への分化に関連する機能の一部だけが明らかになっただけで、生体内の役割について明確に報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するためになされたものであって、ステロール硫酸塩を有効成分として含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物、または食品組成物を提供する。
【0009】
本発明の目的上、骨関連疾患の予防または治療のために、ステロール硫酸塩を追加的に供給するか、またはステロール硫酸塩の分解を抑制して、体内のステロール硫酸塩の濃度を高く維持する方策が提示される。前記ステロール硫酸塩を追加的に供給する方策として、本発明の化学式1([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート)を提供し、ステロール硫酸塩の分解を抑制する方策として、本発明の化学式2(6-オキソ-6,7,8,9,10,11-ヘキサヒドロシクロヘプタ[c]クロメン-3-イルスルファメート)を提供する。
【0010】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は、以上で述べた課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本願に記載の多様な具体例を図面を参照して記載する。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物および工程などが記載されている。しかし、特定の具体例は、これらの特異的詳細事項の一つ以上なく、または他の公知の方法および形態とともに実行されてもよい。他の例において、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにしないために、特定の詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」についての本明細書全体にわたる参照は、具体例と結び付けて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が本発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置で表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも本発明の同じ具体例を示すのではない。追加的に、特別な特徴、形態、組成、または特性は、一つ以上の具体例においていかなる好適な方法で組み合されてもよい。
【0012】
本発明者らは、骨芽細胞による骨形成を増加させ、破骨細胞による骨吸収を抑制させる効果を同時に発揮する薬物は報告されておらず、上記のような化合物について研究を重ねた結果、ステロール硫酸塩、特に、[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)が骨恒常性を調節する過程により骨関連疾患の治療および予防に著しい効果が存在して、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の一実施形態は、ステロール(Sterol)硫酸塩を有効成分として含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
本発明において、前記ステロール(Sterol)は、ステロイドアルコールの略語で、ステロイド系化合物の有機分子を意味する。大部分の植物と動物、カビ類から発見されると報告されており、真核生命体に重要な生理的機能、例えば、動物細胞の膜を構成したり流動性に影響を及ぼし、二次信号伝達子などとして作用できる。本発明の目的上、前記ステロールは、植物性ステロールであるカンペステロール(Campesterol)、シトステロール(Sitosterol)、およびスチグマステロール(Stigmasterol)と、動物性ステロールであるコレステロール(Cholesterol)の硫酸塩であってもよい。好ましくは、前記ステロール硫酸塩は、コレステロール硫酸塩であって、下記化学式1で表される化合物である[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)であってもよいが、これに制限されることはない:
【化1】
【0015】
本発明の他の具体例においては、[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)を有効成分として含む骨関連疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0016】
ただし、本発明において、前記化学式1で表される化合物は、人体内で循環するステロイド硫酸塩であるDHEAS(Dehydroepiandrosterone sulfate)と同一の濃度で存在し、細胞膜の構成成分で浸透性溶解から赤血球を保護し、精子の受容体を調節する成分であるだけでなく、細胞信号伝達、血液凝固、線維素溶解、および表皮細胞の付着に関連する活性を調節する(J Lipid Res.2003Jul;44(7):1268-78)。
【0017】
本発明において、前記骨関連疾患は、身体内で骨を生成する役割をする骨芽細胞(osteoblast)と骨を破壊する役割をする破骨細胞(osteoclast)との間の活性におけるバランスが壊れることによりもたらされる。
【0018】
本発明において、前記破骨細胞(osteoclast)は、骨が成長する過程で不要になった骨組織を破壊または吸収する大型の多核細胞であり、成熟した破骨細胞は多核細胞であり、造血幹細胞を起源として分化して形成される。また、中間葉幹細胞から分化した骨芽細胞は約34ヶ月間生存して、活性化された破骨細胞が古い骨を分解させたサイトで新しい骨を形成し、数多くの骨芽細胞が骨基質を作り、基質が無機質化される過程により骨形成が完成する。このような骨形成が完成した後、骨芽細胞の約70%以上は死滅し、一部は骨細胞(osteocyte)および骨表面細胞(bone lining cell)に分化して生存するが、このような恒常性が持続的に不均衡をなす場合に骨関連疾患が発生しうる。
【0019】
したがって、本発明の目的上、前記ステロール硫酸塩を有効成分として含む薬学組成物は、すでに報告された骨関連疾患の薬学組成物とは異なり、骨芽細胞の分化を促進し、破骨細胞の分化および機能を抑制する役割を同時に果たすことができ、これによって、骨関連疾患の治療にさらに効果的である。
【0020】
具体的には、本発明において、前記骨関連疾患は、骨粗鬆症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨委縮(bone atrophy)、線維性骨異形成症(fibrous dysplasia)、パジェット病(Paget’s disease)、高カルシウム血症(hypercalcemia)、骨の腫瘍性破壊(neoplastic destruction)、癌(cancer)関連の骨再吸収疾病、骨折(fracture)、骨溶解(osteolysis)、骨関節炎(osteoarthritis)、およびリウマチ関節炎(rheumatoid arthritis)から構成された群より選択される1種以上であってもよい。
【0021】
ただし、本発明において、前記骨粗鬆症は、老化による原発性骨粗鬆症、閉経による原発性骨粗鬆症、卵巣摘出術による原発性骨粗鬆症、および睾丸除去による原発性骨粗鬆症から構成された群より選択される1種以上であってもよい。また、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、甲状腺機能亢進性骨粗鬆症、固定誘発性骨粗鬆症、ヘパリン誘発性骨粗鬆症、免疫抑制誘発性骨粗鬆症、腎不全による骨粗鬆症、炎症性骨粗鬆症、クッシング症候群による骨粗鬆症、リウマチ性骨粗鬆症、およびエストロゲン合成抑制剤による骨粗鬆症から構成された群より選択される1種以上であってもよい。
【0022】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物を有効成分として含む閉経期疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【化2】
【0023】
本発明の一実施形態において、前記化学式2は、6-オキソ-6,7,8,9,10,11-ヘキサヒドロシクロヘプタ[c]クロメン-3-イルスルファメートであって、ステロイドスルファターゼ(steroid sulfatase;STS)抑制剤の一つである。これは、ステロイドスルファターゼの基質であるコレステロール硫酸塩(steroid sulfate)がコレステロールに変換されることを抑制して、血中内のコレステロール硫酸塩の濃度が高くなることによって、閉経期関連疾患の予防、改善および治療に効果的に利用可能である。それ以外のステロイドスルファターゼ抑制剤としては、AHBS(C6H7NO4S)、Danazol(C22H27NO2)、EMATE(C18H23NO4S)、Irosustat(C14H15NO5S)、KW-2581(C25H36N2O4S)、Progesterone(C21H30O2)、SR-16157(C28H46N2O4S)、STX213(C28H46N2O4S)、およびSTX681(C16H13BrN6O3S)などがあり、ステロイドスルファターゼを抑制できる物質であれば制限はない。
【0024】
一方、コレステロール硫酸塩は、細胞膜をなす構成成分の一つで、血液および皮膚などに高い濃度で存在しており、現在まで免疫機能と皮膚細胞への分化に関連する機能の一部だけが明らかになっている。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記閉経期疾患は、閉経期の骨疾患であって、前記骨疾患は、閉経によるI型骨粗鬆症、卵巣摘出術によるI型骨粗鬆症、脊柱管狭窄症、脊椎圧迫骨折、骨関節炎から構成された群より選択される1種以上であってもよい。
【0026】
特に、骨粗鬆症は、代表的な骨関連疾患であって、骨を形成する骨芽細胞と骨を吸収する破骨細胞の骨恒常性調節の不均衡によって骨密度が減少する疾患で、骨折の危険性が増加しうる低下した骨強度を特徴とする骨格障害をいう。
【0027】
一般的に、前記骨恒常性調節の不均衡は、老化、全身疾患、閉経などの原因によって発生し、骨密度が減少し、骨組織の微細構造が退化して骨折危険の増加を示す全身疾患に相当する。すなわち、古い骨の消滅と新しい骨の生成がバランスをとりながら骨密度が維持されるが、多様な原因などによって新しい骨の入れ替えが円滑に行われず骨が粗くなり、この過程が繰り返されるにつれて骨が薄くなり、折れたり壊れる危険性が高まるのである。
【0028】
米国整形外科学会は、骨粗鬆症を、発生原因によって、成人から骨粗鬆症を誘発しうる別の全身疾患がない状態で発生する一次性骨粗鬆症(primary osteoporosis)と、別の明白な原因疾患がある二次性骨粗鬆症(secondary osteoporosis)とに分類しており、一次性骨粗鬆症は、さらに細分化して、閉経後骨粗鬆症(postmenopausal osteoporosis、type I osteoporosis)、老人性骨粗鬆症(age-associated osteoporosis、senile osteoporosis、type II osteoporosis)、特発性骨粗鬆症(idiopathic osteoporosis)などに分類される(American Academy of Orthopaedic Surgeons.“Osteoporosis/Bone health in adults as a national public health priority.”Position Statement1113(2015))。
【0029】
特に、I型骨粗鬆症は、早期閉経によって40歳以下の若い女性患者からも発生することがあり、このような早期閉経が現れる場合、正常に50歳以降に閉経が現れる患者に比べて骨密度が大きく低下することが知られている(Shuster,Lynne T.,et al.“Premature menopause or early menopause:long-term health consequences.”Maturitas65.2(2010):161-166)。
【0030】
本発明の一実施形態において、本発明に係る組成物は、海綿骨(Trabecular bone)の体積を増加させることができる。海綿骨とは、海綿質のハニコム-類似構造を有する骨の内部層を構成している組織を意味する。
【0031】
特に、I型骨粗鬆症は、閉経後、エストロゲンとアンドロゲンなどのホルモンの減少によって骨の入れ替え率(bone turnover)が増加し、骨吸収が骨形成よりも大きく増加して骨密度が低下し、皮質骨(cortical bone)より相対的に海綿骨(trabecular bone)の損失がより大きい特徴を示す。これとは逆に、II型骨粗鬆症は、男女ともにおいて老化による漸進的な骨密度の低下に関連し、骨形成のための幹細胞の減少が主な原因であり、主に皮質骨の損失が特徴的である(Dobbs,Matthew B.,Joseph Buckwalter,and Charles Saltzman.“Osteoporosis:the increasing role of the orthopaedist.”The Iowa orthopaedic journal19(1999):43)。
【0032】
本発明の一実施形態において、本発明に係る薬学組成物は、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進するものである閉経期疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0033】
また、本発明の一実施形態において、本発明に係る薬学組成物は、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制するものである閉経期疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0034】
本発明において、閉経期の骨関連疾患は、身体内で骨を生成する役割をする骨芽細胞(osteoblast)と骨を破壊する役割をする破骨細胞(osteoclast)との間の活性におけるバランスが壊れることによりもたらされる。
【0035】
本発明において、前記破骨細胞(osteoclast)は、骨が成長する過程で不要になった骨組織を破壊または吸収する大型の多核細胞であり、成熟した破骨細胞は多核細胞であり、造血幹細胞を起源として分化して形成される。また、中間葉幹細胞から分化した骨芽細胞は約34ヶ月間生存して、活性化された破骨細胞が古い骨を分解させたサイトで新しい骨を形成し、数多くの骨芽細胞が骨基質を作り、基質が無機質化される過程により骨形成が完成する。このような骨形成が完成した後、骨芽細胞の約70%以上は死滅し、一部は骨細胞(osteocyte)および骨表面細胞(bone lining cell)に分化して生存するが、このような恒常性が持続的に不均衡をなす場合に骨関連疾患が発生しうる。
【0036】
本発明に係る薬学組成物は、海綿骨の体積を増加させるだけでなく、骨芽細胞の分化を促進し、破骨細胞の分化および機能を抑制する役割を同時に果たすことができ、これによって、閉経期疾患、特に閉経期の骨疾患の治療にさらに効果的である。
【0037】
一方、本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて骨関連疾患によって発生した症状を遮断したり、閉経期疾患によって発生した症状を遮断したり、その症状を抑制または遅延させるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0038】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて骨関連疾患によって発生した症状が好転したり、閉経期疾患によって発生した症状が好転したり、有利になるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0039】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象とすることを特徴とすることができる。
【0040】
本発明において、前記薬学組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤、および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、前述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0041】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含んでもよい。
【0042】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0043】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内、および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与可能である。
【0044】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合、および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路、および期間に応じて異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~10g/kgまたは0.001~10g/kgで投与することができる。投与は1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形可能である。
【0045】
本発明の他の実施形態は、前記化学式1で表される化合物を有効成分として含む骨関連疾患の予防または改善用食品組成物を提供し、前記化学式2で表される閉経期疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0046】
一方、本発明において、「改善」は、本発明の食品組成物を用いて骨関連疾患によって発生した症状が好転または有利に変更されるあらゆる行為であれば制限なく含むことができる。
【0047】
本発明の前記化合物を有効成分として含む食品組成物は、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、お菓子、餅、パンなどの形態で製造できる。
【0048】
本発明において、前記化合物が食品組成物に含まれる時、その量は全体重量の0.1~50%の割合で添加することができるが、これに制限されることはない。
【0049】
本発明において、前記食品組成物が飲料形態で製造される場合、指示された割合で前記食品組成物を含む以外の特別な制限はなく、通常の飲料と同じく、多様な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。具体的には、天然炭水化物として、ブドウ糖などのモノサッカライド、果糖などのジサッカライド、スクロースなどのポリサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールなどを含むことができる。前記香味剤としては、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリシルヒジンなど)、および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)などであってもよい。
【0050】
本発明において、その他の本発明の前記食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。
【0051】
本発明において、前記成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができる。前記添加剤の割合は、本発明の核心的な要素に該当しないものの、本発明の食品組成物100重量部あたり0.1~約50重量部の範囲から選択可能であるが、これに制限されることはない。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る化学式1を有効成分として含む薬学組成物および食品組成物は、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進して石灰化結節の生成を誘導するだけでなく、同時に、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制し、破骨細胞の機能を抑制することで骨恒常性を効果的に調節して、骨関連疾患の予防または治療に非常に効果的である。
【0053】
また、本発明に係る化学式2を有効成分として含む薬学組成物および食品組成物は、海綿骨の体積を増加させ、血中コレステロール硫酸塩の濃度を高めて、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進して石灰化結節の生成を誘導するだけでなく、同時に、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制し、破骨細胞の機能を抑制することで骨恒常性を効果的に調節する効果を有することにより、閉経期疾患、特に、閉経期の骨関連疾患の予防、改善または治療に非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の一実施例による化学式1、タウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸の添加による骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)の生成程度を確認した結果を示すものである。
【
図2】本発明の一実施例による化学式1の添加による骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)の生成程度を確認した結果を示すものである。
【
図3】本発明の一実施例によるタウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸の添加による骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)の生成程度を確認した結果を示すものである。
【
図4】本発明の一実施例による骨芽細胞の分化マーカー遺伝子の発現を確認した結果を示すものである。
【
図5】本発明の一実施例による骨髄細胞の破骨細胞への分化程度を確認した結果を示すものである。
【
図6】本発明の一実施例による破骨細胞の機能評価結果を示すものである。
【
図7】本発明の一実施例による卵巣摘出術マウスモデルにおける骨密度を分析した結果を示すものである。
【
図8】本発明の一実施例による骨芽細胞の分化程度を確認した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明に係る化合物によって骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)を著しく促進するかを確認した結果、本発明の化合物である化学式1を添加した前骨芽細胞は、前記化合物を処理しなかった陰性対照群(0μM)に比べて、15μMから35μMに処理濃度が増加するほど、結節に着色された色素の量が増加した。しかし、化学式1と同一に胆汁酸から誘導される化合物に分類されるタウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸を添加した前骨芽細胞は、実験に適用された全濃度において前骨芽細胞の分化効果が全くないことが明らかになった。
【0056】
また、卵巣摘出術マウスモデルで実験した結果、対照群対比、OVXグループで海綿骨の体積が40%程度と減少したことを確認することができる。これに対し、化学式2を経口投与した群では、ビヒクルのみを経口投与したOVX群に比べて、海綿骨の体積が90%増加した。すなわち、これは、化学式2が卵巣摘出術によって誘導されたI型骨粗鬆症を効果的に治療することを示唆する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0058】
実施例1.化学式1の骨関連疾患の予防または治療効果の確認
実施例1-1.前骨芽細胞(Preosteoblast cell)および骨髄細胞の分離
本発明に係る化合物の骨恒常性調節効果を確認するために、前骨芽細胞(preosteoblast cell)および骨髄細胞(Bone marrow cell)をネズミから分離した。
【0059】
前骨芽細胞を分離するために、1~3日齢のネズミの頭蓋冠(calvaria)を採取した後、1mg/mlコラゲナーゼ(collagenase)および2mg/mlディスパーゼ(Dispase)を処理する過程により前骨芽細胞を得た。
【0060】
また、骨髄細胞を分離するために、4~6週齢の雄ネズミの脛骨(tibia)および大腿骨(femur)を分離した後、骨の両端を切断し、真ん中の部分から細胞を抽出する過程により骨髄細胞を得た。
【0061】
実施例1-2.骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)の測定
本発明に係る化合物によって骨芽細胞の石灰化結節(Mineralized nodule)を著しく促進するかを確認した。
【0062】
前記実施例1-1で得られた前骨芽細胞を12-ウェル細胞培養プレートに0.5×10
5cells/wellの数だけ分注し、培地ボリュームの10%に相当するウシ胎児血清(FBS)と、培地ボリュームの1%に相当する抗生剤(penicillin-streptomycin)、50μg/mlのL-アスコルビン酸(L-ascorbic acid)、および10mMのβ-グリセロホスフェート(β-glycerophosphate)が含まれているα-MEM培地に、本発明の化合物である化学式1、または本発明の化学式1と同一に胆汁酸から誘導される化合物として、タウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸を0~50μMの濃度でそれぞれ添加して骨芽細胞の分化を誘導した。ただし、前記分化を誘導する培地は2~3日の間隔で新鮮な培地に切り替え、計21日間の時間で分化を誘導した。前記分化した骨芽細胞の分化を確認するために、アリザリンレッド(alizarin red)染色を行った。分化誘導が完了した細胞を10%の中性ホルマリン(neutral formalin)で4℃、20分間培養して固定した後、1.36%、pH4.1~4.3のアリザリンレッド溶液で40分間培養して染色した。前記結果を
図1に示した。実験の結果、本発明の化合物である化学式1を添加した前骨芽細胞は、前記化合物を処理しなかった陰性対照群(0μM)に比べて、15μMから35μMに処理濃度が増加するほど、結節に着色された色素の量が増加した。しかし、化学式1と同一に胆汁酸から誘導される化合物に分類されるタウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸を添加した前骨芽細胞は、実験に適用された全濃度において前骨芽細胞の分化効果が全くないことが明らかになった。これは、胆汁酸から誘導された化合物のうち、本発明の化学式1のみ特異的に骨芽分化効果があることを意味する。
【0063】
化学式1を添加した前骨芽細胞の分化程度を定量的に評価するために、10%のセチルピリジニウムクロライド(Cetylpyridinium chloride)で結節に着色された色素を抽出した後、570nmにおける吸光度を測定して、その結果を
図2に示した。実験の結果、OD値が10μMで約0.5であるのに対し、35μMでは2、40μMでは約3と測定されて、10~45μMの範囲で濃度依存的に骨芽分化効果が増加することが分かった。
【0064】
タウロウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、またはタウロコール酸を定量した結果を
図3に示した。
図1のイメージと同様に、定量的にも陰性対照群(0μM)と比較して有意な差はないことが明らかになった。
【0065】
実施例1-3.骨芽細胞の分化測定
本発明に係る化合物によって前骨芽細胞が骨芽細胞への分化を促進するかを確認するために、骨芽細胞の分化マーカー遺伝子の発現を確認した。
【0066】
前記実施例1-2において、25μMの[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)を処理し、15日間培養して分化が誘導された前骨芽細胞から、RNeasy Mini(QIAGEN)キットを用いて、前記キットで提示されたプロトコルによってそれぞれのRNA全体(total RNA)を抽出した。前記抽出されたRNA2μgをリバートエイド逆転写酵素(RevertAid Revert Transcriptase)(Thermo Scientific,USA)と42℃で1時間反応させてcDNAを得た後、SensiFAST
TMSYBR Hi-ROXキット(Bioline)を用いて、リアルタイム重合酵素連鎖反応(real-time PCR)を行った。具体的な反応条件は、95℃で3分間変性させた後、95℃で5秒、60℃で10秒、72℃で15秒ずつ、40サイクルを反応させて得た定量的な結果を
図4に示した。
【0067】
図4に示されるように、骨芽細胞の分化マーカーに相当する遺伝子であるSp7、BgiapおよびIbspの遺伝子の発現が、対照群(OS)に比べて2倍以上の著しい発現差を示した。
【0068】
前記結果を通じて、本発明に係る前記化合物は、骨芽細胞で発生する石灰化結節の量を著しく増加させるだけでなく、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進することが分かる。
【0069】
実施例1-4.破骨細胞の分化測定
本発明に係る化合物によって破骨細胞の分化を著しく抑制するかを確認した。
【0070】
前記実施例1-1で得られた骨髄細胞を96-ウェル細胞培養プレートに5×104cells/wellの数だけ分注し、培地ボリュームの10%に相当するウシ胎児血清(FBS)と、培地ボリュームの1%に相当する抗生剤(penicillin-streptomycin)、30ng/mlのM-CSFおよび50ng/mlのRANKLが含まれているα-MEM培地に、[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)を0~25μMの濃度でそれぞれ添加して破骨細胞の分化を誘導した。ただし、前記分化を誘導する培地は2日の間隔で新鮮な培地に切り替え、計4~5日間の時間で分化を誘導した。
【0071】
前記分化が完了した骨髄細胞の分化程度を確認するために、TRAP染色キット(Sigma Aldrich、USA)を用いて、製造会社から提示されたプロトコルによって染色を実施し、顕微鏡で測定した結果を
図5に示し、TRAP酵素の活性を測定した結果を
図6に示した。
【0072】
図5、および
図6に示されるように、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制し、本発明に係る化合物の濃度が6.25μM、および12.5μMでは陰性対照群に比べて約0.2程度機能が抑制され、25μMでは約0.3程度機能が抑制された。
【0073】
前記結果を通じて、本発明に係る[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]ハイドロジェンスルフェート([(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-dimethyl-17-[(2R)-6-methylheptan-2-yl]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-dodecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-3-yl]hydrogen sulfate)は、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制するだけでなく、破骨細胞の機能を抑制させることが分かる。
【0074】
実施例2.化学式2の骨関連疾患の予防または治療効果の確認
実施例2-1.卵巣摘出術マウスモデルにおける薬物投与実験
8週齢のC57BL/6雌マウス24匹を、ランダムに、対照群(sham)、卵巣摘出群(OVX)、卵巣摘出群に下記化学式2を投与したOVX+化学式2群として、8匹ずつ分けた。3つの群とも、ゾレチル、ロンパンを用いて麻酔させた後、OVX群およびOVX+化学式2群は、卵巣摘出を実施した後に縫合し、対照群は、卵巣露出後、卵巣の除去なしに縫合し、4週間骨粗鬆症を誘発させた。
【化3】
【0075】
卵巣摘出術4週後から1週間に5日、1日に1回ずつ、対照群とOVX群にビヒクル(テトラヒドロフラン:PEG-400:水=1:6:3の体積)200μlを経口投与し、OVX+化学式2群は、化学式2を5mg/kgでビヒクルに混ぜて200μl経口投与した。
【0076】
4週間経口投与した後、すべてのマウスを犠牲にして大腿骨(femur)を摘出し、10%中性ホルマリンで固定させた。Skyscan 1173 micro-CT機械を用いて、7.1μmのボクセルサイズで撮影した後、CTAnプログラムにより骨密度を分析して、その結果を
図7に示した。
【0077】
図7に示すように、対照群対比、OVXグループで海綿骨の体積が40%程度と減少したことを確認することができる。これに対し、化学式2を経口投与した群では、ビヒクルのみを経口投与したOVX群に比べて、海綿骨の体積が90%増加した。すなわち、これは、化学式2が卵巣摘出術によって誘導されたI型骨粗鬆症を効果的に治療することを示唆する。
【0078】
実施例2-2.骨芽細胞の分化実験
1~3日齢のマウスの頭蓋冠(calvaria)を採取した後、1mg/mlコラゲナーゼ、2mg/mlディスパーゼの酵素処理により前骨芽細胞を得た。前記得られた前骨芽細胞を12-ウェル培養プレート(0.5×105個の細胞/ウェル)に分注し、α-MEM(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mlのL-アスコルビン酸、10mMのβ-グリセロホスフェート)にコレステロール硫酸塩単独で0~50μMを添加した群と、前記コレステロール硫酸塩に化学式2を5μMで追加的に処理した群とに分けて、骨芽細胞の分化を誘導した。分化培地は2~3日の間隔で切り替え、計14~21日間分化させた。
【0079】
アリザリンレッドSの染色により骨芽細胞の分化を評価して、石灰化結節(Mineralized nodule)の生成程度を定量化して評価した。分化した細胞を10%中性ホルマリンで4℃、20分間固定させた後、1.36%アリザリンレッド溶液(pH4.1~4.3)で40分間染色した。染色された様相を撮影またはスキャンし、定量的な評価のために、10%セチルピリジニウムクロライドで結節に着色された色素を抽出して、分光光度計で570nmにおける吸光度を測定した。骨芽細胞の分化程度を
図8に示した。
【0080】
図8に示すように、コレステロール硫酸塩は、用量依存的に骨芽細胞の分化を増加させることを確認することができる。これに対し、6-オキソ-6,7,8,9,10,11-ヘキサヒドロシクロヘプタ[c]クロメン-3-イルスルファメートは、単独で骨芽細胞に処理時、骨芽細胞の分化を増加させないものの、コレステロール硫酸塩とともに処理時、コレステロール硫酸塩の効果をさらに増進させることを確認することができる。これは、骨芽細胞のステロイドスルファターゼ酵素の活性を抑制させて、骨芽細胞内の有効なコレステロール硫酸塩の濃度を増加させることから、6-オキソ-6,7,8,9,10,11-ヘキサヒドロシクロヘプタ[c]クロメン-3-イルスルファメートを添加することでコレステロール硫酸塩の効能を増加させることを示す。
【0081】
前記結果を通じて、6-オキソ-6,7,8,9,10,11-ヘキサヒドロシクロヘプタ[c]クロメン-3-イルスルファメートは、卵巣摘出術で誘導した閉経後骨粗鬆症であるI型骨粗鬆症を効果的に治療し、これは、ステロイドスルファターゼ酵素を抑制してコレステロール硫酸塩の有効濃度を高めたためであり、血中に存在するコレステロール硫酸塩とのシナジー効果により、骨芽細胞の分化を促進させることを確認することができる。
【0082】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、骨関連疾患の予防または治療のための薬学組成物に関し、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進して石灰化結節の生成を誘導するだけでなく、同時に、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制し、破骨細胞の機能を抑制することで骨恒常性を効果的に調節して、骨関連疾患の予防または治療に非常に効果的である。
【0084】
また、本発明は、閉経期疾患の予防または治療のための薬学組成物に関し、特に、閉経期の骨疾患において、海綿骨の体積を増加させ、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を促進して石灰化結節の生成を誘導するだけでなく、同時に、骨髄細胞の破骨細胞への分化を抑制し、破骨細胞の機能を抑制することで骨恒常性を効果的に調節して、閉経期の骨関連疾患の予防または治療に非常に効果的である。