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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】作業領域表示装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/608 20160101AFI20221011BHJP
   E01F 9/688 20160101ALI20221011BHJP
   E01H 3/04 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E01F9/608
E01F9/688
E01H3/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021031645
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132913
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391007747
【氏名又は名称】株式会社興和
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】桑原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩和
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328483(JP,A)
【文献】実開昭61-82859(JP,U)
【文献】特開2005-199162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/608
E01F 9/688
E01H 3/04
E01H 1/00
E01H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路における消雪用散水ノズルが間隔を置いて並設された作業領域で使用される作業領域表示装置であって、前記道路を前記消雪用散水ノズルに沿って移動可能に設けられ作業領域表示部を備えた無人移動体と、この無人移動体と任意の間隔を置いて前記道路に配され該無人移動体の移動目標となる目標体とから成り、前記無人移動体には、前記目標体へ向けて自動移動する移動制御部が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業領域表示装置において、前記移動制御部は、前記目標体が発する情報に基づき前記無人移動体の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の作業領域表示装置において、前記目標体には全球測位衛星システムにおいて位置情報を取得する位置情報取得部が設けられ、前記移動制御部は、前記位置情報取得部の位置情報に基づき前記無人移動体の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の作業領域表示装置において、前記無人移動体には前記目標体を撮影するカメラが設けられ、前記移動制御部は、前記目標体の画像情報に基づき前記無人移動体の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の作業領域表示装置において、前記目標体には、前記カメラの画像照合機能による照合を高精度化する模様から成る被照合部が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の作業領域表示装置において、前記目標体には加速度センサーが設けられ、この加速度センサーで衝撃を検知したら報知する報知部が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業領域表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪地域の道路に設置される消雪施設は、道路に間隔を置いて並設される消雪用散水ノズル(特許文献1)から地下水を散水することで路面上の雪を融かすものであるが、特にこの消雪施設を使用しない時期(春から秋まで)において、消雪用散水ノズルの散水孔が砂や泥で詰まり易い。
【0003】
そこで、この消雪用散水ノズルの孔詰まりを解消すべく、降雪前の時期になると、各消雪用散水ノズルの散水孔に細棒材を差し込んで詰まりを解消する孔詰まり解消作業が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平6-36888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際に前述した孔詰まり解消作業を行う場合、消雪用散水ノズルの並設方向に一列となって孔詰まりを解消する作業員(2~3人)と、この作業者の前後位置に立って交通誘導する誘導員とが隊列となって当該消雪用散水ノズルの並設方向に移動しながら作業を行っている。
【0006】
しかしながら、この孔詰まり解消作業を行う道路が、車両が通行する車道であった場合、特に隊列の端に立つ誘導員は危険を伴う作業となっている。
【0007】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、従来に無い非常に実用的な作業領域表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
道路50における消雪用散水ノズル60が間隔を置いて並設された作業領域Aで使用される作業領域表示装置であって、前記道路50を前記消雪用散水ノズル60に沿って移動可能に設けられ作業領域表示部2を備えた無人移動体1と、この無人移動体1と任意の間隔を置いて前記道路50に配され該無人移動体1の移動目標となる目標体3とから成り、前記無人移動体1には、前記目標体3へ向けて自動移動する移動制御部4が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の作業領域表示装置において、前記移動制御部4は、前記目標体3が発する情報に基づき前記無人移動体1の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の作業領域表示装置において、前記目標体3には全球測位衛星システムにおいて位置情報を取得する位置情報取得部5が設けられ、前記移動制御部4は、前記位置情報取得部5の位置情報に基づき前記無人移動体1の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の作業領域表示装置において、前記無人移動体1には前記目標体3を撮影するカメラ6が設けられ、前記移動制御部4は、前記目標体3の画像情報に基づき前記無人移動体1の自動移動を制御するように構成されていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【0013】
また、請求項4記載の作業領域表示装置において、前記目標体3には、前記カメラ6の画像照合機能による照合を高精度化する模様7aから成る被照合部7が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1~5いずれか1項に記載の作業領域表示装置において、前記目標体3には加速度センサー8が設けられ、この加速度センサー8で衝撃を検知したら報知する報知部9が設けられていることを特徴とする作業領域表示装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、例えば消雪用散水ノズルの孔詰まり解消作業を安全に行うことができるなど、従来にない非常に実用的な作業領域表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例を用いた消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を示す説明図である。
図2】本実施例に係る無人移動体1を示す斜視図である。
図3】本実施例に係る目標体3を示す正面図である。
図4】本実施例に係る要部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
例えば、道路50において消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を行う場合、目標体3を道路50の作業進行方向の前方位置にして無人移動体1と任意の間隔を置いた位置に配し、この状態で無人移動体1を作動させると、無人移動体1は移動制御部4に制御されて目標体3へ向けて自動移動する。
【0019】
この目標体3に向けて自動移動する無人移動体1を先導として、作業員は散水孔に細棒材70を差し込むなどして孔詰まり解消作業を行いながら移動する。
【0020】
従って、消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業の際、従来のように誘導員が作業を行う隊列の端部に立つ必要がないから、この消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を安全に行うことができる。
【実施例
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、車道や歩道などの道路50における消雪用散水ノズル60が間隔を置いて並設された作業領域Aで使用される作業領域表示装置(作業領域Aにて作業が行われていることを周囲に知らせるための装置/通行車両の誘導や徐行指示などを行う交通誘導員をロボット化したもの)である。
【0023】
尚、本実施例では、使用される作業領域Aとして道路50(片側一車線の車道)のセンターライン50a脇に消雪用散水ノズル60が並設された場所としているが、道路50の種類や消雪用散水ノズル60が並設される箇所など、前述した場合に限られるものではなく、本実施例の特性を発揮する場所(作業領域A)であれば適宜使用し得るものである。また、この作業領域Aで行われる作業は、消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業の他、消雪施設における散水量調整や配管内の異物除去、消雪用散水ノズル60の設置工事や交換工事など様々あり、本実施例はこれらの各種作業に適用し得るものである。
【0024】
具体的には、本実施例は、道路50を消雪用散水ノズル60に沿って移動可能に設けられた無人移動体1と、この無人移動体1と任意の間隔を置いて道路50に配され該無人移動体1の移動目標となる目標体3とで構成されている。
【0025】
無人移動体1は、図1,2に図示したように板状基体1aの前後左右に移動手段として車輪1bを設けた台車構造体であり、前方左右の車輪1b夫々には後述する移動制御部4によって駆動制御される移動用駆動源(モーター)が独立して設けられ、後方左右の車輪1bは自在キャスターであり基体1aの下面に水平旋回可能に設けられている。
【0026】
この無人移動体1は、移動用駆動源の作動により前方左右の車輪1bが駆動することで前進後退可能であり、また、この前方左右の車輪1bを回転差を生じさせて駆動、または、片側だけ駆動(片側が停止)させることにより左右折が可能となるように構成されている。尚、移動手段としてはクローラー構造を採用しても良い。
【0027】
また、基体1aには移動用駆動源や移動制御部4や後述する作業領域表示部2等の電子機器に電気を供給するバッテリーが設けられている。
【0028】
また、移動制御部4は、図1,2,4に図示したように基体1aの上面部に設けられており、目標体3へ向けて無人移動体1の自動移動を制御するように構成されている。
【0029】
具体的には、無人移動体1と目標体3とは、互いにWi-Fiにより無線で信号を送受信するように接続される通信部10A,10Bを備え、目標体3の通信部10Bから発せられる信号情報(全球測位衛星システムを用いて取得される位置情報(座標))を、無人移動体1の通信部10Aで受信して移動制御部4で処理し、この移動制御部4で無人移動体1の自動移動を制御するように構成されている。
【0030】
従って、無人移動体1は、目標体3が発する情報に基づき移動制御部4の制御により適宜向きを補正しながら目標体3へ向けて自動移動する。
【0031】
また、無人移動体1は、図1,2に図示したように目標体3を撮影するカメラ6が設けられ、移動制御部4は、目標体3の画像情報に基づき無人移動体1の自動移動を制御するように構成されている。
【0032】
従って、前述した全球測位衛星システムを用いた位置情報に基づく自動移動制御に加え、カメラ6で撮影した画像情報に基づく自動移動制御も行うことで、より高精度な自動移動が可能となる。
【0033】
また、無人移動体1はリモコン操作により移動操作し得るように構成されている。
【0034】
尚、無人移動体1を自動移動させる制御技術としては、例えば消雪用散水ノズル60や該消雪用散水ノズル60が並設される部位に形成されるライン(消雪用散水ノズル60を備えた消雪ブロックにより形成されるライン)などを画像処理してトレースしたりセンシングして移動するような技術でも良い。また、移動制御部4には、作業員との距離を検知し、作業員が近づくことでその距離を維持するように前進移動する機能を備えても良い。
【0035】
また、本実施例では、無人移動体1(移動制御部4)に設けられる通信部10Aは、作業者が被るヘルメット11に設けられる通信部10CとBluetooth(若しくはWi-Fi)により無線で信号を送受信するように接続されている。
【0036】
本実施例では、ヘルメット11に種々の機能が付与されており、その一つの機能として作業者に危険を知らせる機能(報知部9)が設けられている。
【0037】
この報知部9は、後述する目標体3に設けられる加速度センサー8が衝撃を検知した際、その情報を前述した通信部10A,10B,10Cを介して振動や音などで作業者に知らせるように構成されている。
【0038】
従って、万一、目標体3に車両が衝突して危険な状況となった場合、その情報を素早く作業者に知らせることができる。
【0039】
尚、この報知部9は、ヘルメット11のみに限らず、無人移動体1や目標体3に設ける構成としても良い。
【0040】
また、無人移動体1には作業領域表示部2が設けられている。
【0041】
この作業領域表示部2は、図1に図示したように基体1aの上部に電光掲示板を立設して構成されている。
【0042】
この作業領域表示部2には、矢印であったり、道路標識であったり、文字であったり、誘導員の映像であったりなど、車両を運転する人や通行する人に注意喚起したり進路変更(車線変更)を促すものなどが適宜表示される。
【0043】
符号2’は警告灯である。
【0044】
目標体3は、図1,3に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成した中空円錐体(ラバーコーン)であり、本実施例での使用に適した寸法(高さや径)や重量に設定されている。尚、この目標体3は隊列の最前端部に配されることから、万一の車両が衝突した際に該車両の損傷が抑えられるよう素材や構造となっているのが良い。
【0045】
この目標体3には、上端部に全球測位衛星システム(GNSS(Global Navigation Satellite System))において位置情報(地理的座標)を取得するように動作可能な位置情報取得部5(GPS受信機を備えた位置情報処理部)が設けられている。
【0046】
この位置情報取得部5で取得された位置情報は、通信部10Bを介して無人移動体1へ発信される。
【0047】
また、目標体3には、カメラ6の画像照合機能による照合を高精度化する模様7aから成る被照合部7が設けられている。
【0048】
この被照合部7は、方形状の板材の表面に二色の方形形状(正方形)を交互に配した市松模様を設けており、本発明者等はこの市松模様は比較的遠い距離でも照合し易いことを確認している。
【0049】
この被照合部7に設けられる模様7aとしては、前述した場合の他、例えば、二次元バーコード(QRコード(登録商標))であったり、人物の顔など、作業領域Aに配した際に周囲と区別(認識)し易くて照合に適した(照合を高精度化する)図や絵や形など様々なものが採用される。
【0050】
また、目標体3には、上端部(位置情報取得部5の下方位置)に加速度センサー8が設けられている。
【0051】
この加速度センサー8で衝撃を検知した際、この情報信号は、通信部10A,10B,10Cを介して無人移動体1経由で作業者のヘルメット11へ発信され、前述した報知部9を介して作業者に報知される。
【0052】
また、本実施例は、前述した孔詰まり解消作業を行う作業者の前方に配されて先導する先導機能を備えた無人移動体1の他、作業者の後方に配されて追従する追従機能を備えた無人移動体21を設けている。
【0053】
この無人移動体21は、前述した無人移動体1と同様の基本構造を備え、作業者に一定間隔を介して追従する移動制御部12が設けられている。
【0054】
また、無人移動体21はリモコン操作により移動操作し得るように構成されている。
【0055】
本実施例は上述のように構成したから、道路50において消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を行う場合、目標体3を道路50の作業進行方向の前方位置にして無人移動体1と任意の間隔(数十メートル間隔)を置いた位置に配すると共に、最後尾の作業者から所定の間隔を置いた位置に無人移動体21を配する。
【0056】
この状態で無人移動体1及び無人移動体21を作動させると、無人移動体1は移動制御部4に制御されて目標体3へ向けて自動移動し、無人移動体21は移動制御部12に制御されて作業員に追従するよう自動移動する。
【0057】
この目標体3に向けて自動移動する無人移動体1を先導として、作業員は散水孔に細棒材70を差し込むなどして孔詰まり解消作業を行いながら移動する。
【0058】
よって、本実施例によれば、消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業の際、従来のように誘導員が作業を行う隊列の端部に立つ必要がなく、作業員は無人移動体1及び無人移動体21により守られた状態で消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を安全に行うことができる。
【0059】
また、本実施例は、目標体3が前方位置に配されることで、作業領域表示部2を備えた無人移動体1に対する車両の衝突が可及的に防止されることになる。
【0060】
また、本実施例は、移動制御部4は、目標体3から発する情報に基づき無人移動体1の自動移動を制御するように構成されているから、良好な自動移動制御が可能となる。
【0061】
また、本実施例は、目標体3には全球測位衛星システムにおいて位置情報を取得する位置情報取得部5が設けられ、移動制御部4は、位置情報取得部5の位置情報に基づき無人移動体1の自動移動を制御するように構成されているから、精度の高い良好な自動移動制御が可能となる。
【0062】
また、本実施例は、無人移動体1には目標体3を撮影するカメラ6が設けられ、移動制御部4は、目標体3の画像情報に基づき無人移動体1の自動移動を制御するように構成されているから、より一層精度の高い良好な自動移動制御が可能となる。
【0063】
また、本実施例は、目標体3には、カメラ6の画像照合機能による照合を高精度化する模様7aから成る被照合部7が設けられているから、この点においてもより一層精度の高い良好な自動移動制御が可能となる。
【0064】
また、本実施例は、目標体3には加速度センサー8が設けられ、この加速度センサー8で衝撃を検知することで作業員に報知する報知部9を有するから、この点においても消雪用散水ノズル60の孔詰まり解消作業を安全に行うことができる。
【0065】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
A 作業領域
1 無人移動体
2 作業領域表示部
3 目標体
4 移動制御部
5 位置情報取得部
6 カメラ
7 被照合部
7a 模様
8 加速度センサー
9 報知部
50 道路
60 消雪用散水ノズル
図1
図2
図3
図4