(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ホイール貼着用フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221011BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221011BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20221011BHJP
B60B 7/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B3/30
B60B7/00 S
(21)【出願番号】P 2022011440
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592182791
【氏名又は名称】株式会社スミロン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】尼子 裕大
(72)【発明者】
【氏名】岡山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森 隆晶
(72)【発明者】
【氏名】西崎 直哉
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-253888(JP,A)
【文献】特開2010-042665(JP,A)
【文献】特開2007-253435(JP,A)
【文献】特開2020-019172(JP,A)
【文献】特開2012-111800(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073375(WO,A1)
【文献】特開2009-280128(JP,A)
【文献】特開2020-050756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 27/00
B32B 3/30
B60B 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、この基材フィルムに設けられた粘着剤層とを有するホイール貼着用フィルムを、複数枚積層した積層体としており、前記基材フィルムは、表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で
0. 10~1. 50μmであり、最大高さ(Ry)で
1. 0~2. 50μmであることを特徴とするホイール貼着用フィルム積層体。
【請求項2】
前記基材フィルムに、耐候性を向上させるための添加剤を含有させたことを特徴とする請求項1に記載のホイール貼着用フィルム積層体。
【請求項3】
前記基材フィルムに、粘着剤層との密着性を向上させるための処理を施したことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール貼着用フィルム積層体。
【請求項4】
前記基材フィルムを、第一層、第二層、第三層の三層としていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のホイール貼着用フィルム積層体。
【請求項5】
前記基材フィルムの第一層、第二層、第三層の厚さの比率を約1:5:1としていることを特徴とする請求項4に記載のホイール貼着用フィルム積層体。
【請求項6】
前記基材フィルムの第一層の表面を、ベース樹脂と非相溶性樹脂との海島構造化による微細凸部構造にしていることを特徴とする請求項4または5に記載のホイール貼着用フィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のタイヤのホイールやブレーキディスクに錆が発生するのを防止したり、そのホイールの傷防止や保護したりするのに用いられるホイール貼着用フィルム積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホイール貼着用フィルム積層体としては、例えば、自動車のタイヤのホイールを覆うカバー部材と、このカバー部材を前記ホイールの側面に剥離可能に貼着する接着剤層を備えた防錆カバーが存在する(特許文献1)。
【0003】
前記防錆カバーは、数百枚積層した状態で、カバー部材を1枚ずつ剥がしてタイヤのホイールの側面に貼り付けるようにしている。
【0004】
このようにすると、貼り付け直前まで接着剤層の汚れを防止できるので汚れに起因した貼り付け不良を防止することができるとしている。
【0005】
さらに、この種のホイール貼着用フィルム積層体としては、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた粘着剤層とを有するホイール貼着用フィルムを複数枚積層したものが存在する(特許文献2)。
【0006】
前記ホイール貼着用フィルム積層体は、粘着剤層が露出している粘着面をタイヤのホイールに貼着し、このホイールに粘着剤層が接触しているホイール貼着用フィルム以外のホイール貼着用フィルム積層体を剥がすようにしている。
【0007】
このようにすると、ホイール貼着用フィルムを貼着する作業効率が高く、自動車のディスクブレーキが錆びるのを効果的に防止することが可能になるとしている。
【0008】
また、この種のホイール貼着用フィルム積層体としては、基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた粘着剤層とを有するホイール貼着用フィルムを複数枚積層した積層体であって、前記基材フィルムの曲げ弾性率(JISK7171:2008準拠)を100~600MPaにしたものが存在する(特許文献3)。
【0009】
前記ホイール貼着用フィルム積層体は、基材フィルム面が露出している側の一枚のホイール貼着用フィルムの一部を剥がして粘着剤層の一部を露出させ、この露出させた粘着剤層をホイールに貼着し、このホイールに一部を貼着したホイール貼着用フィルムを、積層体から剥がしつつ、ホイールにホイール貼着用フィルムの粘着剤層の全面を貼着するようにしている。
【0010】
このようにすると、ホイール貼着用フィルムを貼着する作業効率が高くなり、自動車のディスクブレーキが錆びるのを効果的に防止することが可能になると共に、ホイール貼着用フィルムに不本意な折れ跡や皺等が生じるのを効果的に防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3879985号公報
【文献】特許第5855505号公報
【文献】特許第5934541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記ホイール貼着用フィルム積層体において、ホイール貼着用フィルムを自動車等のタイヤのホイールに貼着する場合には、この積層体から一枚のホイール貼着用フィルムを剥がすが、この際に高い剥離帯電圧が発生して塵等を引き寄せてしまい、この塵等がホイール貼着用フィルムに付着してしまう。そのため、このホイール貼着用フィルムをホイールに貼着すると、この塵等がフィルムに付着したままになっており、ホイールの外観を損ねるという課題を有していた。
【0013】
また、前記ホイール貼着用フィルム積層体から一枚のホイール貼着用フィルムを剥がす際には、大きな剥離音が発生し、作業現場がうるさくなったり、作業者にとっても難聴等の健康障害の原因になるという課題を有していた。
【0014】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、ホイール貼着用フィルムを剥がす際に発生する剥離帯電圧を低下させると共に、その際に発生する剥離音をも低減させることができるホイール貼着用フィルム積層体を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのため、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、基材フィルム1と、この基材フィルム1に設けられた粘着剤層2とを有するホイール貼着用フィルムAを、複数枚積層した積層体としており、前記基材フィルム1は、表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 10~1. 50μmであり、最大高さ(Ry)で1. 0~2. 50μmであるものとしている。
【0016】
さらに、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、前記基材フィルム1に、耐候性を向上させるための添加剤を含有させたものとしている。
【0017】
さらに、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、前記基材フィルム1に、粘着剤層2との密着性を向上させるための処理を施したものとしている。
【0018】
そして、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、前記基材フィルム1を、第一層13、第二層14、第三層15の三層としている。
【0019】
さらに、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、前記基材フィルム1の第一層13、第二層14、第三層15の厚さの比率を約1:5:1としている。
【0020】
さらに、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、前記基材フィルム1の第一層13の表面を、ベース樹脂と非相溶性樹脂との海島構造化による微細凸部構造17にしている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、ホイール貼着用フィルムを剥がす際に発生する剥離帯電圧を低下させることができ、そのフィルムに塵等が付着し難くなり、そのフィルムをホイールに貼着しても、ホイールの外観を損ねることがないものとなった。
【0022】
さらに、本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、ホイール貼着用フィルムを剥がす際に発生する剥離音を低減させることができ、作業現場がうるさくならず、作業者にとっても健康障害の原因になることがないものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のホイール貼着用フィルム積層体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明のホイール貼着用フィルム積層体の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明のホイール貼着用フィルム積層体の一枚のホイール貼着用フィルムの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のホイール貼着用フィルム積層体を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明のホイール貼着用フィルム積層体は、
図1、2に示したように、基材フィルム1と、この基材フィルム1に設けられた粘着剤層2とを有するホイール貼着用フィルムAを、複数枚積層した積層体としている。
【0026】
前記ホイール貼着用フィルムAは、貼着する自動車等のホイールの直径と略同一とした円形状に形成されており、
図2に示したものでは、中央に同心円とした開孔11が形成されている。この開孔11は、ホイール貼着用フィルムAをホイールへ貼り付けた後に、例えばホイールに締め付けたボルトの締め付け状態等を点検するためのものである。
【0027】
さらに、前記ホイール貼着用フィルムAは、
図2に示したものでは、周縁の一部分から外方に突出させためくり片12が形成されている。このめくり片12は、指で摘んでホイール貼着用フィルム積層体からホイール貼着用フィルムAを一枚ずつめくっていくためのものであり、略四角形状や略半円形状等とすることができ、指で摘めるだけの最低限の大きさであればよい。なお、前記めくり片12は、周縁の複数部分から外方に突出させたものとしてもよく、さらに必要に応じて、全周から外方に突出させたものとしてもよい。このようにすることにより、めくり片12を摘む個所が多くなるので摘みやすくなり、ホイール貼着用フィルムAをめくる作業がはかどる。
【0028】
本発明のホイール貼着用フィルム積層体において、前記基材フィルム1は、
図3に示したように、第一層13、第二層14、第三層15の三層とするのが好ましいが、単層フィルムであってもよいし、二層または四層以上の積層フィルムであってもよい。
【0029】
前記基材フィルム1は、表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 05~1. 50μmであり、最大高さ(Ry)で0. 25~2. 50μmであり、好ましくは算術平均粗さ(Ra)で0.05~1. 00μmであり、最大高さ(Ry)で0. 25~2. 00μmであり、より好ましくは算術平均粗さ(Ra)で0.05~0. 50μmであり、最大高さ(Ry)で0. 5~1. 50μmである。なお、算術平均粗さ(Ra)と最大高さ(Ry)の測定は、JISーB 06015(1994)に準じて行った。測定装置としては、CS-H5000CNC表面性状測定器(ミツトヨ社製)を用いた。
【0030】
前記基材フィルム1の材質は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、軟質ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0031】
前記基材フィルム1の厚さは、特に制限ないが、通常20~200μmが好ましく、30~100μmが特に好ましい。
【0032】
前記基材フィルム1には、耐候性を向上させるための添加剤を含有させることができる。例えば、300~380nmの波長領域の分光透過率が0~20%となるように、紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤の含有割合としては、0.005~2質量%含有させることが好ましい。紫外線吸収剤を含有させることにより、基材フィルム1の耐候性を向上させると共に、粘着剤層2を紫外線から保護し、ホイールへの糊残りなく、ホイール貼着用フィルムAを剥がすことができる。
【0033】
前記紫外線吸収剤の具体例としては、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられる。これら紫外線吸収剤は、一種またはニ種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
さらに、前記基材フィルム1には、前記紫外線吸収剤と共に、光安定剤、酸化防止剤などの耐候助剤を含有させてもよい。
【0035】
前記基材フィルム1の粘着剤層2が設けられた反対側の面には、
図3に示したように、剥離剤層16が設けられてもよい。この剥離剤層16を設けることにより、ホイール貼着用フィルム積層体からホイール貼着用フィルムAを、より小さい力で剥がすことができる。これにより、ホイール貼着用フィルムAを剥がす際に余計な抵抗力で捩れて使い物にならなくなったり、伸び過ぎて貼り合せすべき寸法に一致しなくなったりすることがなくなる。また、ホイール貼着用フィルム積層体を長期間保管した後でも剥離不良が起こりにくくなり、ホイール貼着用フィルムAの剥離が容易になる。
【0036】
前記基材フィルム1には、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を含有させることができる。さらに、前記基材フィルム1には、粘着剤層2との密着性を向上させるために、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、放射線照射処理等を施してもよい。また、前記基材フィルム1には、サンドブラスト処理、エンボス処理、下引き易接着層塗布形成などの易接着処理を施してもよい。
【0037】
そして、前記基材フィルム1は、第一層13と第三層15を硬い層とし、第二層14を柔らかい層としており、第一層13、第二層14、第三層15の厚さの比率は約1:5:1とするのが好ましい。この比率が約1:3:1では硬過ぎ、約1:7:1では柔らか過ぎるので好ましくない。前記基材フィルム1が柔らか過ぎると、貼り付け時にフィルムが伸び、その後時間と共に縮み、残留歪が発生し、ホイール貼着面との間に浮きが発生する。前記基材フィルム1が硬過ぎると、ホイールの曲面部分に対して貼り付かない個所が発生する。
【0038】
さらに、このような比率であれば、第一層13を比較的薄い表面層として形成し、第一層13に使用する樹脂量を少なくすることができる。これにより、価格面及び作業面で優れたものとなると共に、後に述べる非相溶性樹脂の混入を容易なものとし、この非相溶性樹脂の混入によるフィルム強度の低下を回避することができる。また、多層構造を異なる熱収縮量の樹脂で形成することで、フィルムの貼り付け後の熱変形や熱劣化を抑制することができる。
【0039】
特に第二層14は、それ自体の上面が後に述べる第一層13の微細凸部構造に追従変形してなると共に、それ自体の下面が平坦であることが好ましい。このとき、第二層14が第一層13に接して第一層13の下側の微細凸部構造の変形量を吸収し、粘着剤層2側への接面が平坦かつ平滑(フラット)なものとなる。これにより、粘着剤層2の基材フィルム1への定着性が安定する。また、重ねあわせ前の粘着剤層2の粘着面を平坦に保つことで、重ね合わせによる粘着力の調整がより容易なものとなる。
【0040】
前記基材フィルム1の第一層13は、一般的なポリプロピレン樹脂(PP)またはポリエチレン樹脂(PE)等としたベース樹脂に非相溶性樹脂を混入した熱溶融液を製膜したものとしており、この第一層13の表面は、ベース樹脂と非相溶性樹脂とが海島構造化による微細凸部構造17が形成されたものとしている。非相溶性樹脂は、ベース樹脂よりも高い熱分解温度を有し、ベース樹脂と熱融解時の粘度が相違することが好ましい。このようなものであれば、フィルム製膜時に、混入された非相溶性樹脂が変性することなく、第一層のフィルム製膜による焼き焦げや熱劣化を防ぐことができる。
【0041】
前記非相溶性樹脂は、PP、PE等の一般的なベース樹脂よりも高い熱分解温度を有し、ベース樹脂と熱融解時の粘度が相違するものとしている。これにより、フィルム製膜時にベース樹脂の熱分解温度まで加熱されても非相溶性樹脂が変性することがない。この非相溶性樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)のなかでも、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、またはエチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)のいずれかであることが好ましい。EMMA、EMAなどのエチレン系樹脂或いはポリエチレン系樹脂は、330~360℃程度まで熱分解しないため、230~260℃で熱分解をするエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)に比べフィッシュアイとよばれる架橋物の表出が少なくなる。さらに、海島構造化したときの海島構造の大きさが微細であり、海島構造の分散均一性に優れる。このため、適度な表面粗さの凸部構造表面をより均一なものとして形成できる。また、EMMAの含有量調整による接着力の変化の制御が容易である。
【0042】
本発明のホイール貼着用フィルム積層体において、前記粘着剤層2は、タック性に優れ、初期粘着力に高い保持力があるアクリル系粘着剤からなり、
図1~3に示したものでは、基材フィルム1(図では裏面)に、溶剤型のアクリル系粘着剤層を形成してなる。他に、溶剤系感圧接着剤であれば合成ゴム系粘着剤を使用してもよい。例えば、貼り付け後30秒経過時点でのJIS Z 0237試験による粘着力が、常温にて4.50N以上であることが好ましい。このような基準を満たすアクリル系粘着剤は、特にアルミホイールに対して初期粘着性および貼り付け後の粘着維持性に優れており、例えば粘着用フィルムを貼り付けた後の自動車を急発進させた時でも、極めて剥がれ落ちにくいものとなる。
【0043】
前記アクリル系粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとして、官能基含有モノマーを共重合したものが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。また、前記合成ゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレン、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0044】
前記アクリル系粘着剤は、耐候性等の観点から好適に用いることができる。特に、アクリル系共重合体を、ポリイソシアナート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等の架橋剤で架橋させて得られるアクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。
【0045】
前記粘着剤層2の厚さは、特に制限ないが、通常3~100μmであればよく、好ましくは5~60μmである。
【0046】
前記粘着剤層2には、基材フィルム1の300~380nmの波長領域の分光透過率が0~20%となるように、紫外線吸収剤を含有させることもできる。紫外線吸収剤の含有割合としては、0.01~10質量%含有させることが好ましい。紫外線吸収剤の具体例としては、先に述べたものが挙げられる。
【0047】
さらに、前記粘着剤層2には、必要に応じて粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、填料、染料または顔料等の着色剤等の一種以上を適宜含有させることができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。填料としては、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明のホイール貼着用フィルム積層体を実施例によって具体的に説明する。
【0049】
〔実施例1〕
表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 10μm、最大高さ(Ry)で1. 0μmとした、幅25mm、長さ250mm、厚さ50μmの基材フィルム1の裏面に、アクリル系粘着剤(アクリル酸ブチル(BA)・メタクリル酸メチル(MMA)・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-HEMA)共重合体)からなる厚さ15μmの粘着剤層2を設けたホイール貼着用フィルムAを二枚積層したホイール貼着用フィルム積層体とした。
【0050】
〔実施例2〕
表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 10μm、最大高さ(Ry)で1. 0μmとした、幅25mm、長さ250mm、厚さ7μmの第一層13と、平滑な表面で、幅25mm、長さ250mm、厚さ36μmの第二層14と、平滑な表面で、幅25mm、長さ250mm、厚さ7μmの第三層15からなる基材フィルム1の裏面に、アクリル系粘着剤(BA・MMA・2-HEMA共重合体)からなる厚さ15μmの粘着剤層2を設けたホイール貼着用フィルムAを二枚積層したホイール貼着用フィルム積層体とした。
【0051】
〔実施例3〕
表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 30μm、最大高さ(Ry)で1. 0μmとした、幅25mm、長さ250mm、厚さ10μmの第一層13と、平滑な表面で、幅25mm、長さ250mm、厚さ45μmの第二層14と、平滑な表面で、幅25mm、長さ250mm、厚さ10μmの第三層15からなる基材フィルム1の裏面に、アクリル系粘着剤(BA・MMA・2-HEMA共重合体)からなる厚さ15μmの粘着剤層2を設けたホイール貼着用フィルムAを二枚積層したホイール貼着用フィルム積層体とした。
【0052】
〔比較例1〕
表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 03μm、最大高さ(Ry)で0. 3μmとした、幅25mm、長さ250mm、厚さ50μmの基材フィルム1の裏面に、アクリル系粘着剤(BA・MMA・2-HEMA共重合体)からなる厚さ15μmの粘着剤層2を設けたホイール貼着用フィルムを二枚積層したホイール貼着用フィルム積層体とした。
【0053】
〔比較例2〕
表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 04μm、最大高さ(Ry)で0. 3μmとした、幅25mm、長さ250mm、厚さ50μmの基材フィルム1の裏面に、アクリル系粘着剤(BA・MMA・2-HEMA共重合体)からなる厚さ15μmの粘着剤層2を設けたホイール貼着用フィルムAを二枚積層したホイール貼着用フィルム積層体とした。
【0054】
前記実施例1~3、比較例1、2のホイール貼着用フィルム積層体を用いて、これらホイール貼着用フィルム積層体から一枚のホイール貼着用フィルムAを剥がす際の剥離音および剥離帯電圧についての測定を行った。測定方法は以下の通りであり、測定結果は表1に示す。
【0055】
(剥離音測定方法)
前記実施例1~3、比較例1、2のホイール貼着用フィルム積層体から、それぞれ一枚のホイール貼着用フィルムAを1000mm/分の速度で剥がす際の剥離音を、積分形普通騒音計(LA-220S、小野測器社製)にて測定した。なお、これらの測定は全て温度25℃、湿度50%R.H.の条件下で行った。
【0056】
(剥離帯電圧測定方法)
前記実施例1~3、比較例1、2のホイール貼着用フィルム積層体から、それぞれ一枚のホイール貼着用フィルムAを1000mm/分の速度で剥がす際の剥離帯電圧を、ハンディ型静電気測定器(FMX-003、シムコジャパン社製)にて測定した。なお、これらの工程は全て温度25℃、湿度50%R.H.の条件下で行った。
【0057】
【0058】
(評価)
表1に示した通り、剥離音については、実施例1が80dB、実施例2が70dB、実施例3が70dBであったのに対し、比較例1では95dB、比較例2では100dBであったことから、本発明のホイール貼着用フィルム積層体から一枚のホイール貼着用フィルムAを剥がす際の剥離音は、少なくとも15dB低減させることができたといえる。
【0059】
また、剥離帯電圧については、実施例1が4.7kV、実施例2が4.2kV、実施例3が3.9kVであったのに対し、比較例1では6.2kV、比較例2では6.7kVであったことから、本発明のホイール貼着用フィルム積層体から一枚のホイール貼着用フィルムAを剥がす際の剥離帯電圧は、少なくとも1.5kV低下させることができたといえる。
【符号の説明】
【0060】
1 基材フィルム
2 粘着剤層
13 第一層
14 第二層
15 第三層
17 微細凸部構造
A ホイール貼着用フィルム
【要約】
【課題】ホイール貼着用フィルムを剥がす際に発生する剥離帯電圧を低下させると共に、その際に発生する剥離音をも低減させることができるホイール貼着用フィルム積層体を提供する。
【解決手段】基材フィルム1と、この基材フィルム1に設けられた粘着剤層2とを有するホイール貼着用フィルムAを、複数枚積層した積層体としており、前記基材フィルム1は、表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0. 05~1. 50μmであり、最大高さ(Ry)で0. 25~2. 50μmであるものとしている。
【選択図】
図1