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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】多孔質ナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/92 20060101AFI20221011BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20221011BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221011BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221011BHJP
【FI】
H01M4/92
H01M4/86 M
H01M4/88 Z
B01J23/44 M
B01J35/06 J
B01J35/10
B01J37/08
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022075064
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】202110492174.4
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 438, Hebei Street, Haigang District, Qinhuangdao City, HeBei 066004 P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高 発明
(72)【発明者】
【氏名】于 丹
(72)【発明者】
【氏名】劉 倩
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088740(JP,A)
【文献】特表2015-536529(JP,A)
【文献】特開2011-089143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法であって、
以下の段階S1、S2を含み、
カーケンドール効果を活用してPdPt合金ナノチューブを形成する段階S1:直径3~7nmのPdナノワイヤー粉末、ポリビニルピロリドン、NaI、アスコルビン酸および塩化白金酸を有機溶媒に溶解し、180~290℃下で1~2時間混合および攪拌反応して、PdPt合金ナノチューブ粉末を製造し、
チューブ壁エッチング段階S2:S1段階で得られたPdPt合金ナノチューブ粉末を水に分散させかつ45~60℃に加熱し、その中にホールエッチング溶液を滴下し、10~60分間反応させ、粗い多孔質表面を有するチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブをろ過によって得、ここで、前記ホールエッチング溶液は、FeCl、NaI、PVP、HCl成分を含む
ことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
S1段階において、Pdナノワイヤー粉末は、電気化学的方法によって製造された直径5~6nmのナノワイヤーであり、ポリビニルピロリドンの分子量は、1~130万であり、前記有機溶媒は、エチレングリコールであることを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【請求項3】
S1段階において、Pdナノワイヤー粉末と塩化白金酸との供給比は、モル比で1:2~6であり、ポリビニルピロリドンとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で50~100:1であり、NaIとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で20~80:1であり、アスコルビン酸とPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で3~8:1である
ことを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【請求項4】
S1段階において、Pdナノワイヤー粉末と塩化白金酸との供給比は、モル比で1:3~5であり、ポリビニルピロリドンとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で60~90:1であり、NaIとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で30~60:1であり、アスコルビン酸とPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で4~7:1であることを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【請求項5】
S2段階において、前記ホールエッチング溶液中のFeCl、NaI、PVP、HCl成分の供給比は、次のとおりであり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とFeClとの供給比は、質量比で1:7~50であり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とNaIとの供給比は、質量比で1:60~120であり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とPVPとの供給比は、質量比で1:10~25であり、
FeClとHClとの供給比は、モル比で1:0.5~1.5である
ことを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【請求項6】
S2段階において、前記ホールエッチング溶液中のFeCl、NaI、PVP、HCl成分の供給比は、次のとおりであり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とFeClとの供給比は、質量比で1:8~15であり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とNaIとの供給比は、質量比で1:80~100であり、
PdPt合金ナノチューブ粉末とPVPとの供給比は、質量比で1:15~20であり、
FeClとHClとの供給比は、モル比で1:0.9~1.25である
ことを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【請求項7】
S2段階において、チューブ壁のエッチング反応は、10~60分間に制御され、エッチング溶液のpH値は、0.5~2.5に制御されることを特徴とする
請求項1に記載のチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二金属層状多孔質構造ナノチューブの製造方法に関し、特に、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法、および当該方法によって製造された多孔質ナノチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の急速な発展に伴い、人間の生産および生産における資源の消費は徐々に増加し、多くの天然資源は徐々に不足し、同時に環境の汚染は、ますます深刻になっている。ここで、従来の自動車による自動車の排気ガスによる大気汚染は無視できず、この段階で、エネルギーデバイスとしてプロトン交換膜燃料電池を使用する電気自動車は、徐々に人々の視野に入り、急速に発展し、プロトン交換膜燃料電池は、高出力密度、簡単な保管、ゼロエミッション等の多くの利点を有し、従来の化石燃料による大気汚染を解決するだけでなく、化学エネルギーを直接メタノール燃料電池および直接エタノール燃料電池等の電気エネルギーに直接変換することで、天然資源不足の問題を解決することができる。しかし、プロトン交換膜燃料電池の作業プロセスにおいて、水素―酸素燃料電池を例にとると、陰極での吸着および水素結合の切断等の一連の複雑な化学プロセスにより、陰極で酸素還元の反応速度は遅く、酸素還元反応を妥当な速度で駆動するには高い過電圧が必要であり、これは、このようなエネルギーデバイスのアプリケーションにおける主要なボトルネックになっており、陰極酸素還元反応の過電圧を低減できる触媒の開発に多くの研究を費やす必要がある。触媒発展の過程において、白金ベースの材料は、常に優れた触媒活性および安定性を示し、最も効率的な触媒として認識される。しかしながら、白金は、自然環境での元素の埋蔵量が少なく、非常に高価であるため、生産された燃料電池の作動装置が高価になり、実際の適用が制限される。従って、白金ベースの触媒の研究過程において、人々は、白金の付加を減らすと同時に、触媒活性を改善し、電池寿命を維持できる触媒の開発に取り組んでいる。
【0003】
白金ベースの触媒発展において、科学者は、上記の二つの困難について多くの優れた研究を行ってきた。燃料電池のコストを下げるために、触媒中の白金の使用量を減らすことが不可欠であり、ここで、触媒材料に鉄、コバルト、ニッケル等の他の非貴金属をドーピングすることが含まれるが、これらの非貴金属が酸性電解質で機能する場合、酸腐食および溶解を起こしやすいため、触媒の安定性が低くなり、一方、科学者は、白金原子の利用率を向上させるために、材料構造の設計を積極的に追求し、一次元ナノワイヤー、ナノチューブ,二次元ナノシート、ナノディスク、三次元立方体、ナノ多面体、ナノフラワー等を作成し、一方、研究者は、白金ベースの材料を中空構造にしたため、白金原子の利用率が大幅に向上され、その触媒活性は、市販のPt/Cの数十倍になることができる。ここで、一次元材料は、材料自体の異方性特性により炭素担体との接触面が良好であるため、作業プロセスにおいて凝集が起こりにくく、その安定性も向上される。例えば、Shouheng SunおよびShaojun Guoら(J.Am.Chem.Soc.2011、133、15354-15357)は、熱分解法により超微細FePtPdナノワイヤーを作成し、酸性条件下でのメタノール酸化試験に使用される場合、その0.665V(Ptナノ粒子)のメタノール酸化ピーククラスターは、0.614V(FePtPdナノワイヤー)に減少するが、触媒の安定性の理由は明らかではない。その後、Hongwen HuangおよびLei Gaoら(J.Am.Chem.Soc.2019、141、18083-18090)は、2段階の方法を使用して、オレイルアミン溶媒中で白金ナノワイヤーを最初に合成し、その後、白金ナノワイヤー上でガリウム白金混成によって白金ガリウムナノワイヤーを製造し、その触媒性能は、市販の白金炭素の数十倍を示し、白金とガリウムとの非通常のp-d混成により、その循環安定性は、30000サイクルの電圧試験後に、質量比の活性が15.8%減少する。Zhiqing zouおよびChuanting Fanら(Journal of Power Sources.2019、429、1-8)は、エレクトロスピニング技術によってニッケルナノファイバーを最初に合成し、次に白金イオンおよびニッケルの置換反応によってNi@Ptナノファイバーが形成され、360℃下のN下で2.5時間アニーリング処理することによってNi@PtNiナノチューブが形成され、最後に酸洗浄を使用してPtNiナノチューブを形成し、その性能は、市販の白金炭素に比較して6.2倍向上し、10000サイクルの循環電圧試験後の質量活性は、わずか8.6%減少した。
【0004】
この特許は、上記の研究の進歩を考慮して、二重元素の薄壁、多孔質、および粗いチューブ壁のナノチューブを設計および発明し、そのコアは、直径が約5~6nmのPdナノワイヤーであり、次にカーケンドール(Kirkendall)効果を使用して、白金イオンをパラジウムの表面で核形成され、堆積層のギャップから内部のパラジウムを徐々に除去し、外径が8~9.5nmであり、壁の厚さが約0.1~2nmである中空PdPtナノチューブを形成し、当該ナノチューブは、さらに処理されて、チューブ壁の元素がPt/PdPt合金/Pt中間層である構造を形成する。生成物PdPtナノチューブは、ナノチューブ壁の内側と外側の白金元素を完全に露出させることができるため、材料中の白金の利用率を大幅位に向上させ、チューブ壁の中間層には、PdPt二重元素が含まれ、二金属間の応力およびひずみ効果により、触媒反応活性が大幅に向上される。本発明は、一次元材料のチューブ壁の設計に関して独特で革新的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の内容は、二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁を備えるナノチューブの独特な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明は、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法を提供し、以下の段階S1、S2を含み、
カーケンドール効果を活用してPdPtナノチューブを形成する段階S1:直径3~7nmのPdナノワイヤー粉末、ポリビニルピロリドン、NaI、アスコルビン酸および塩化白金酸を有機溶媒に溶解し、180~290℃で1~2時間混合および攪拌反応して、PdPtナノチューブ粉末を製造し、
チューブ壁エッチング段階S2:S1段階で得られたPdPtナノチューブ粉末を水に分散させ、かつ45~60℃に加熱し、その中にホールエッチング溶液を滴下し、10~60分間反応させ、粗い多孔質表面を有するチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブをろ過によって得、ここで、前記ホールエッチング溶液は、FeCl、NaI、PVP、HCl成分を含む。
【0007】
本発明の上記の製造方法は、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブであり、長さは、1~3μmであり、外径は、8~15nmであり、内径は、4~7nmであり、チューブ壁は、0.1~2nmであり、外表面は、Ptであり、内表面もPtであり、チューブ壁は、Pt/PdPt合金/Ptの構造で構成され、PdPt合金において、Pd/Ptのモル比は、30~80/70~20である。当該タイプのナノチューブも、本発明において初めて開示される。
【0008】
本発明は、主にカーケンドール効果を使用して、PtイオンをPdナノワイヤーの外表面で核形成しかつ徐々に反応して管状ナノ構造を形成し、さらにFeClエッチング処理を行うことで、チューブ壁の内外面に露出したPdをエッチングおよび除去し、高活性で、構造が独特で、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブが形成される。
【発明の効果】
【0009】
従来技術と比較して、本発明は、以下の利点を有する。
【0010】
(1)既存の一次元ナノチューブ状構造は、チューブ壁の表面が滑らかであるか、またはチューブ壁が純白金元素で構成されるかのいずれかであり、これまでナノチューブチューブ壁に対して元素層状設計を行われていない。本特許は、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブを製造する。
【0011】
(2)既存のナノチューブ状構造材料と比較して、本特許によって製造された粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブは、チューブ壁のPt元素が完全に露出され、Pt元素の利用率を改善し、同時に中空の多孔質構造により、Ptの使用量を減少させて、触媒の活性が大幅に向上され、白金ベースの触媒材料を低コストで実現するための新しいアイデアを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】本発明の実施例1で使用されたコアテンプレートPdナノワイヤーのTEM図である。
図1b】本発明の実施例1においてP1によって製造された多孔質ナノチューブのTEM図である。
図1c】本発明の実施例1においてP1によって製造された多孔質ナノチューブのHRTEM図である。
図2a-2d】本発明の実施例2によって製造された多孔質ナノチューブのHAADF-STEM図および元素分析図である。
図3a】本発明の実施例3によって製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブのRTEM図である。
図3b】本発明の実施例3によって製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブのラインスキャン図である。
図4a-4d】本発明の実施例3によって製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブのHAADF-STEM図および元素分析図である。
図5a】本発明の自作ナノ材料および市販のPt/CのCV曲線図である。
図5b】本発明の自作ナノ材料および市販のPt/CのLSV-ORR曲線図である。
図5c】本発明の自作ナノ材料および市販のPt/Cの質量活性および実際の比放射能の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブの製造方法を提供し、以下の段階を含み、
カーケンドール効果を使用してPdPtナノチューブを形成する段階S1:直径3~7nmのPdナノワイヤー粉末、ポリビニルピロリドン(PVP)、NaI、アスコルビン酸(以下、AAとも呼ばれる)および塩化白金酸(HPtCl)を有機溶媒に溶解し、180~290℃下で1~2時間混合および攪拌反応して、PdPtナノチューブ粉末を製造する。
【0014】
チューブ壁エッチング段階S2:S1段階で得られたPdPtナノチューブ粉末を水に分散させ、かつ45~60℃に加熱し、その中にホールエッチング溶液を滴下し、10~60分間反応させ、粗い多孔質表面を有するチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブをろ過によって得、ここで、ホールエッチング溶液は、FeCl、NaI、PVP、HCl成分を含む。
【0015】
本発明のS1段階において、直径のPdナノワイヤーは主に基板として使用され、カーケンドール(Kirkendall)効果の形成によって、Ptは、パラジウムナノワイヤーの表面に核形成および堆積され、堆積層のギャップから内部のPdを除去して、PdPtナノチューブを形成する。カーケンドール効果と元の金属拡散メカニズムとの根本的な違いは、拡散係数の異なる二つの金属が接触すると、それらの間の界面が拡散処理後に移動することであり、界面は、拡散係数の大きい金属に向かって移動する。カーケンドール効果は、金属が異なれば拡散係数も異なることを説明する。本発明において、有機溶媒中でPdナノワイヤーを塩化白金酸と反応させることにより、Ptをパラジウムナノワイヤー表面で核形成および堆積させることができ、堆積層のギャップから内部のPdを除去して、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造であるナノチューブを形成する。
【0016】
本発明のS1段階において、当技術分野で従来のPdナノワイヤー、例えば、直径5~6nmのPdナノワイヤー粉末のPdナノワイヤー、例えば、中国特許2017114204741に開示された方法によって製造されたPdナノワイヤー、「Pdナノワイヤーの製造における研究の進歩」(Jun Duら、化学通報(オンラインバージョン)、2008年、No.1)に開示された製造方法によって製造されたPdナノワイヤー等を選択することができる。S1段階において、ポリビニルピロリドンは、保護剤でおり、ポリビニルピロリドンの分子量は、1~130万であり、反応を速くすることができる。NaIは、構造指向剤であり、アスコルビン酸は、還元剤として機能する。上記の成分の相乗効果により、チューブ壁にPt/PdPt合金/Pt中間層構造を形成することができる。上記の各成分のプロポーショニングは、当業者が必要に応じて調整することができ、好ましいプロポーショニング方法は、Pdナノワイヤー粉末と塩化白金酸との供給比が、モル比で1:2~6であり、ポリビニルピロリドンとPdナノワイヤーとの供給比が、質量比で50~100:1であり、NaIとPdナノワイヤーとの供給比が、質量比で20~80:1であり、アスコルビン酸とPdナノワイヤーとの供給比が、質量比で3~8:1である。
【0017】
反応に使用される有機溶媒は、上記成分を効果的に分散させることができる任意の有機溶媒であってよく、入手しやすさ、低コスト、効果的な観点からエチレングリコールが好ましい。
【0018】
本発明のS1段階において、さらに好ましくは、Pdナノワイヤー粉末と塩化白金酸との供給比は、モル比で1:3~5であり、ポリビニルピロリドンとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で60~90:1であり、NaIとPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で30~60:1であり、アスコルビン酸とPdナノワイヤーとの供給比は、質量比で4~7:1である。
【0019】
本発明のS1段階で得られたチューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造であるナノチューブの形成は、ろ過し、洗浄し、次いで次の段階に入れる必要があり、通常の処理方法は、ろ過し、遠心分離した後に洗浄する段階でもあり得る。典型的な操作段階は、5000~7000r/min下で10分間の遠心分離、エタノールでの2回洗浄を含み、最後に70℃のブラスト乾燥オーブンで乾燥させるが、これは、ただ例であり、このような操作に限定されるものではない。
【0020】
本発明的S2段階において、FeClを使用して得られたナノチューブチューブ壁をエッチング処理し、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブを製造し、その中のNaI、PVPを省略できない。FeClおよびHClは、エッチャントであり、これらの成分のプロポーショニングは、当業者の必要に応じて調整することができ、好ましい比率関係は、ホールエッチング溶液中のFeCl、NaI、PVP、HCl成分の供給比であり得、次のとおりであり、
PdPtナノチューブ粉末とFeClとの供給比は、質量比で1:7~50であり、
PdPtナノチューブ粉末とNaIとの供給比は、質量比で1:60~120であり、
PdPtナノチューブ粉末とPVPとの供給比は、質量比で1:10~25であり、
FeClとHClとの供給比は、モル比で1:0.5~1.5である。
さらに好ましくは、S2段階において、ホールエッチング溶液中のFeCl、NaI、PVP、HCl成分の供給比は、次のとおりであり、
PdPtナノチューブ粉末とFeClとの供給比は、質量比で1:8~15であり、
PdPtナノチューブ粉末とNaIとの供給比は、質量比で1:80~100であり、
PdPtナノチューブ粉末とPVPとの供給比は、質量比で1:15~20であり、
FeClとHClとの供給比は、モル比で1:0.9~1.25である。
【0021】
本発明のS2段階において、チューブ壁エッチング反応は、10~60分に制御して効率的に完了することができ、エッチング溶液のpH値は、必要に応じて調整することができ、より良い表面粗さのナノチューブを得るために、pHは、0.5~2.5に制御することが好ましい。
【0022】
本発明の好ましい具体的な方案は、以下のように要約することができる。
200~500mgのPVP、100~300mgのNaI、15~30mgのAA、3~6mgのPdナノワイヤー粉末を15~30mLのエチレングリコールに均一に混合および分散させ、20~30分間超音波処理し、50mLのフラスコに入れ、90~140℃の油浴で20分間マグネチックスターラーで予熱し、次に1℃/minの加熱速度で油浴の温度を190~210℃に昇温させ、この間、0.1mM/Lの濃度のHPtClエチレングリコール溶液3~6mLを反応フラスコにゆっくりと加え、190~210℃下で1~2時間加熱および攪拌を続ける。反応が完了し、温度が室温に達した後、反応物を5000~7000r/min下で10分間遠心分離し、エタノールで2回洗浄し、最後に70℃のブラスト乾燥オーブンで乾燥させて、PdPt二金属ナノチューブ粉末を得る。
【0023】
上記段階で製造された2~4mgのナノチューブ粉末を3~6mL精製水に分散させ、50℃の水浴で10分間予熱し、その後、20~40mgのFeCl、200~350mgのNaI、40~60mgのPVP、0.15~0.22mLのHClを4~6.5mLの精製水に混合および分散させ、次にピペットで予熱した溶液にゆっくりと滴下し、20~40分間反応させ、その後、生成物を5000~7000r/min下で10分間遠心分離し、精製水で4回洗浄して、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブを得る。
【0024】
上記の方法に基づいて、チューブ壁がPt/PdPt合金/Pt中間層構造である多孔質ナノチューブを得ることができ、長さは、1~3μmであり、外径は、8~15nmであり、内径は、4~7nmであり、チューブ壁は、0.1~2nmであり、外表面は、Ptであり、内表面もPtであり、チューブ壁は、Pt/PdPt合金/Ptの構造で構成され、PdPt合金において、Pd/Ptのモル比は、30~80/70~20である。これらのナノチューブにおいて、外径が8~9nm、チューブ壁が2~2.5nmである白金ベースの触媒の効果は、非常に優れる。これは、生成物のPdPtナノチューブがナノチューブ壁の内側および外側の白金元素を完全に露出でき、材料中の白金の利用率が大幅に向上し、チューブ壁の中間層にPdPt二重元素が含まれ、二金属間の応力およびひずみ効果により、触媒活性が大幅に向上されるためである。燃料電池の陰極反応用の触媒として使用される場合、酸素還元反応において触媒の反応活性が大幅に向上され、その活性比表面積ECSAは、市販のPt/Cの1.46倍であり、質量放射能(Mass activity)は、市販のPt/Cの14.3倍であり、比放射能(Specific activity)は、市販のPt/Cの9.64倍である(本発明によって提供される評価試験結果を参照することができる)。本発明は、Ptチューブ壁の設計に対して独特性を有し、非常に良好な効果を得る。
【0025】
以下、添付の図面を参照しかつ実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明し、以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明は、以下の実施例に限定されない。以下の実施例で使用される科学試薬および反応装置は、特に明記しない限り、国薬試薬および百霊威試薬会社から購入される。
【0026】
<実施例1>
200mgのPVP(天津科密欧によってポリビニルピロリドンが提供され、分子量は、1~130Wである)、100mgのNaI、15mgのAA、3mgのPdナノワイヤー粉末を15mLのエチレングリコールに均一に混合および分散させ、20分間超音波処理し、かつ50mLのフラスコに入れ、90℃の油浴で20分間マグネチックスターラーで予熱し、次に1℃/minの加熱速度で油浴の温度を190℃に昇温させ、この間、0.1mM/Lの濃度のHPtClエチレングリコール溶液3mLを、反応フラスコにゆっくりと加え、190℃下で1~2時間加熱および攪拌反応する。反応が完了し、室温に達した後、反応物を5000r/min下で10分間遠心分離し、エタノールで2回洗浄し、最後に70℃のブラスト乾燥オーブンで乾燥させて、PdPt二金属ナノチューブ粉末を得る。
【0027】
上記の段階(1)で製造された2mgのナノチューブ粉末を3mLの精製水に分散させ、かつ50℃の水浴で10分間予熱し、その後、20mgのFeCl、200mgのNaI、40mgのPVP、0.15mLの1Mol/LHClを4mLの精製水に混合および分散させ、次にピペットで予熱した溶液にゆっくりと滴下し、20分間反応させ、その後、生成物を5000r/min下で10分間遠心分離し、精製水で4回洗浄して、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブを得る。
【0028】
図1a~図1cに示されるように、この方法で使用されるコアテンプレートは、超微細で超長のPdナノワイヤーであり、その平均直径は、5.5nmである。および多孔質ナノチューブの直径は、11nmである。図1に示される内容:図1aは、本発明の実施例1で使用されたコアテンプレートPdナノワイヤーのTEM図であり、図1b、図1cは、P1によって製造された多孔質ナノチューブのTEM図およびHRTEM図である。
【0029】
<実施例2>
350mgのPVP(天津科密欧によってポリビニルピロリドンが提供され、分子量は、1~130Wである)、200mgのNaI、25mgのAA、4mgのPdナノワイヤー粉末を20mLのエチレングリコールに均一に混合および分散させ、25分間超音波処理し、かつ50mLのフラスコに入れ、110℃の油浴で20分間マグネチックスターラーで予熱し、次に1℃/minの加熱速度で読翼の温度を200℃に昇温させ、この間、0.1mM/Lの濃度のHPtClエチレングリコール溶液4mLを、反応フラスコにゆっくりと加え、200℃下で1.5時間加熱および攪拌反応する。反応が完了し、室温に達した後、反応物を6500r/min下で10分間遠心分離し、エタノールで2回洗浄し、最後に70℃のブラスト乾燥オーブンで乾燥させて、PdPt二金属ナノチューブ粉末を得る。
【0030】
上記の段階(1)で製造された4mgのナノチューブ粉末を3~6mLの精製水に分散させ、かつ50℃の水浴で10分間予熱し、その後、40mgのFeCl、350mgのNaI、40~60mgのPVP、0.22mLの1Mol/LHClを6.5mLの精製水に混合および分散させ、次にピペットで予熱した溶液にゆっくりと滴下し、20~40分間反応させ、その後、生成物を5000~7000r/min下で10分間遠心分離し、精製水で4回洗浄して、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブを得る。
【0031】
図2a~図2dに示されるように、製造された多孔質ナノチューブおよび元素分析図により、Pt、Pd元素の分布状況を明確に決定することができる。図2a~図2dに示される内容:本発明の実施例2で製造された多孔質ナノチューブのHAADF-STEM図および元素分析図である。
【0032】
<実施例3>
500mgのPVP(天津科密欧によってポリビニルピロリドンが提供され、分子量は、1~130Wである)、300mgのNaI、30mgのAA、6mgのPdナノワイヤー粉末を30mLのエチレングリコールに均一に混合および分散させ、30分間超音波処理し、かつ50mLのフラスコに入れ、140℃の油浴で20分間マグネチックスターラーで予熱し、次に1℃/minの加熱速度で油浴の温度を210℃に昇温させ、この間、0.1mM/Lの濃度のHPtClエチレングリコール溶液6mLを、反応フラスコにゆっくりと加え、210℃下で2時間加熱および攪拌反応する。反応が完了し、室温に達した後、反応物を7000r/min下で10分間心分離し、エタノールで2回洗浄し、最後に70℃のブラスト乾燥オーブンで乾燥させて、PdPt二金属ナノチューブ粉末を得る。
【0033】
上記の段階(1)で製造された4mgのナノチューブ粉末を6mLの精製水に分散させ、かつ50℃の水浴で10分間予熱し、その後、40mgのFeCl、350mgのNaI、60mgのPVP、0.22mLの1Mol/LのHClを6.5mLの精製水に混合および分散させ、次にピペットで予熱した溶液をゆっくりと滴下し、40分間反応させ、その後、生成物を7000r/min下で10分間遠心分離し、精製水で4回洗浄して、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブを得る。
【0034】
図3a~図3bに示されるように、製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブの直径は、約8nmであり、壁の厚さは、約2nmである。図3aおよび図3bに示されるそれぞれの内容:製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブのHRTEM図およびラインスキャン図である。
【0035】
図4a~4dに示されるように、製造された多孔質ナノチューブおよび元素分析図により、Pt、Pd元素の分布状況を明確に決定することができる。図4a~図4dに示される内容:実施例3で製造された二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブのHAADF-STEM図および元素分析図である。
【0036】
<実施例4.本発明のナノチューブの効果評価>
回転ディスク電極作業装置(米国PINE CPR+Wavenow)を使用して、以下の当技術分野での通常の半電池試験手段に従って、材料の性能試験を実行し、具体的な方法は、次のとおりである。
【0037】
本発明の特許の材料(上記の実施例1~3で得られた二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁多孔質ナノチューブ)およびXC-72炭素担体(Cabot)、質量比1:4の複合体を取り、その後、1mgの粉末を1mLの液体(イソプロパノール:水:パ―フルオロスルホン酸=50:49:1)に溶解して、性能試験に必要なスラリーを得、市販の白金炭素(白金含有量は、20%である)は、本発明の材料の比較試験と同じ比率でスラリーに製造し、スラリーを20分間超音波処理した後に直径0.5mmの電極に10uLを滴下し、窒素ガス飽和下で0.05~1.2Vの間のサイクリックボルタンメトリーを試験し、図5aに示されるように、Hupdを使用して、本発明の特許の材料の活性比表面積を計算するのは、市販の白金炭素の1.46倍になり、酸素ガス飽和化で分極曲線試験を実行し、図5bに示されるように、すべての試験は、0.1M HClO電解質で実行される。その後、スラリー中の白金含有量を誘導結合試験した後、白金の知る腸および活性比表面積を使用して、本発明の特許における材料の質量活性は、市販の白金炭素の14.3倍であり、実際の比放射能は、市販の白金炭素の9.64倍であると計算される。
【0038】
これにより、本発明の材料を燃料電池の陰極反応用の触媒として使用される場合、酸素還元反応において触媒の反応活性が大幅に向上され、その活性比表面積ECSAは、市販のPt/Cの1.46倍であり、質量活性は、市販のPt/Cの14.3倍であり、実際の比放射能は、市販のPt/Cの9.64倍であることが分かる。これにより、この材料は、Ptの原子利用率が非常に高いため、本発明の材料が形態および実際の適用の両方においての唯一性および革新性は、非常に明白であることが分かる。具体的な効果データについては、図5a~図5cを参照することもできる。図5a~図5cの具体的に示される内容は、それぞれ自作ナノ材料および市販のPt/CのCV曲線である。自作ナノ材料および市販のPt/CのLSV-ORR曲線である。自作ナノ材料および市販のPt/Cの質量活性と実際の比放射能の比較図である。
【0039】
上記に開示された各技術的特徴は、他の特徴との開示された組み合わせに限定されず、当業者は、本発明の目的に従って、技術的特徴の他の組み合わせを実行して、本発明の目的を達成することができ、本発明の設計精神から逸脱することなく、本発明の技術的解決策に対して当業者によってなされた様々な改善は、すべて本発明の特許請求の範囲によって決定される保護範囲に含まれるものとする。
【要約】
本発明は、粗い表面を有する二重元素Pt/PdPt合金/Pt中間層チューブ壁の多孔質ナノチューブおよびその製造方法を提供し、これは、Kirkendall効果をして、パラジウムナノワイヤーの表面に白金イオンを核形成し、堆積層のギャップを介して、内部のパラジウムを徐々に除去することにより、外径が8.6nmで、壁の厚さが1nm未満の中空PdPtナノチューブを形成し、当該ナノチューブは、さらに処理されて、チューブ壁の元素がPt/PdPt合金/Pt中間層である構造を形成する。燃料電池の陰極反応用の触媒として使用される場合、酸素還元反応において触媒の反応活性が大幅に向上され、その活性比表面積ECSAは、市販のPt/Cの1.46倍であり、質量活性(MA)は、市販のPt/Cの14.3倍であり、実際の比放射能(SA)は、市販のPt/Cの9.64倍である。
【選択図】図1
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c