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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】細径ビーム生成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/09 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
G02B27/09
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022079234
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2022-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520359848
【氏名又は名称】株式会社テックジェーピー
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】松居 寛
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04577937(US,A)
【文献】米国特許第04333713(US,A)
【文献】米国特許第05113244(US,A)
【文献】米国特許第02882784(US,A)
【文献】米国特許第04325612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの発散光をコリメートするか、又は所定の立体角範囲内に集光する集光手段と、
前記集光手段から出射する光線の少なくとも一部を、入射光束より狭い領域に集約する第1の光線集約手段と、
前記第1の光線集約手段から出射する光線を直線状の細径ビームとして集約する第2の光線集約手段と、前記集光手段と前記第1の光線集約手段との間に配置される環状光集光手段と、を有し、
前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段はいずれも奇数次数非球面である光学素子、又は光学系であり、
前記第2の光線集約手段は、前記第1の光線集約手段による光線の集約位置に配置され、
前記第1の光線集約手段と前記第2の光線集約手段は異なる形状を有し、
前記環状光集光手段は、入射側から順に配置される第1の光学素子と第2の光学素子と、からなり、
前記第1の光学素子は、前記集光手段からの光が垂直に入射する平面と、出射側に設けられる凹アキシコン面と、を有し、
前記第2の光学素子は、入射側に凸アキシコン面を有する、細径ビーム生成装置。
【請求項2】
前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段はいずれもアキシコン作用を有する光学素子により構成される、請求項1に記載の細径ビーム生成装置。
【請求項3】
前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段が、いずれも1つの屈折面からなる場合、前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段は、一体の素子として構成され、
前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段が、いずれも1つの反射面を有する場合、前記第1の光線集約手段の前記反射面には、前記第2の光線集約手段により集光された前記直線状の細径ビームが通過可能な孔部が形成される、請求項1又は2に記載の細径ビーム生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径ビーム生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発光素子等の光源を用いたプロジェクタ装置やディスプレイ装置が知られている。例えば、レーザなどの1つまたは複数の光源と、ビーム整形光学素子と、結合光学素子と、MEMSスキャナと、取り付けを容易にし、光学的配置を維持するための光学フレームなどの1つまたは複数の機械構成要素と、を含む統合型フォトニクスモジュールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年においては、ARやMR、VR等のXRと称される仮想現実画像を視界に入れることが可能なメガネ型表示デバイスが台頭してきている。特に、表示方式がLBS(Laser Beam Steering)と呼ばれるレーザ走査型方式は網膜スキャンディスプレイに対しても適用可能であり、視力が悪い人であっても鮮明な映像を見ることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、半導体レーザから出射されたレーザ光のビーム径及び光強度分布を調整する手段として、頂角の等しい二個一対のアキシコンプリズムをその底面同士を向かい合わせて光軸に沿って間隔調整可能に配設する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-533715号公報
【文献】特開平11-064782号公報
【文献】特開平10-239632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術においては、焦点位置のみ、若しくは短い焦点位置の前後でしか細径ビーム光を得ることが出来ないため、レーザ描画や切断加工に使用する際は焦点位置に対象物が正確に置かれている必要があり、その搬送機構や焦点を合わせるフォーカス機構が複雑かつ精密でなければならず、装置全体の構造が大きなものになってしまっていた。また、レーザ光の光ファイバー結合においては、従来は結合レンズでビーム光をフォーカスして光ファイバー端面に光を入力していたが、結合点から発散する角度があるために、結合に損失が出るため、例としてシングルモードファイバー(コア径3μm)にレーザーダイオードの光を入れる際には、概ね30%の結合効率しか得られないといった問題点があった。
【0007】
また、引用文献2に開示されているような網膜スキャンディスプレイ等のデバイスを好適に実現するためには、網膜という非常に小さい領域に対して高精細な画像を投影する必要がある。このため、網膜を走査するビームは非常に小さい径(例えば、20μm程度)であることが好ましい。しかし、従来の技術においては、例えばガウシアンビームの径は300μm程度以下の平行ビームとすることが不可能であるため、特定距離で集光するスポットビームを代替手段として使用していた。スポットビームは特定距離では非常に小さなビーム径になるが、焦点距離の前後の位置でのビーム径は大きくなってしまうため、メガネ型表示デバイスにおいて、メガネの着用者の個体差で画像が網膜に到達する距離が異なるため、その距離を調整するための繊細な調整機構が必要になるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、任意の光源から発せられる光に基づき、出射位置からの距離に依存せず所定の大きさ以下の径を有する直線状の細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明は、光源と、前記光源からの発散光をコリメートするか、又は所定の立体角範囲内に集光する集光手段と、前記集光手段から出射する光線の少なくとも一部を、入射光束より狭い領域に集約する第1の光線集約手段と、前記第1の光線集約手段から出射する光線を直線状の細径ビームとして集約する第2の光線集約手段と、を有し、前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段はいずれも奇数次数非球面である光学素子、又は光学系であり、前記第2の光線集約手段は、前記第1の光線集約手段による光線の集約位置に配置され、前記第1の光線集約手段と前記第2の光線集約手段は異なる形状を有する、細径ビーム生成装置に関する。
【0010】
(2) 前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段はいずれもアキシコン作用を有する光学素子により構成される、(1)に記載の細径ビーム生成装置。
【0011】
(3) 前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段が、いずれも1つの屈折面からなる場合、前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段は、一体の素子として構成され、前記第1の光線集約手段及び前記第2の光線集約手段が、いずれも1つの反射面を有する場合、前記第1の光線集約手段の前記反射面には、前記第2の光線集約手段により集光された前記直線状の細径ビームが通過可能な孔部が形成される、(1)又は(2)に記載の細径ビーム生成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、任意の光源から発せられる光に基づき、出射位置からの距離に依存せず所定の大きさ以下の径を有する直線状の細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
図3図2におけるA-A線断面図である。
図4A】本発明の第2実施形態に係る第1の光線集約手段、及び第2の光源集約手段を示す斜視図である。
図4B】本発明の第2実施形態に係る第1の光線集約手段、及び第2の光源集約手段を示す斜視図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る細径ビーム生成装置の構成を示す模式図である。
図7】奇数次数非球面と偶数次数非球面に対する入射光線がそれぞれ偏心した場合の影響を比較する模式図である。
図8】第1実施形態に係る細径ビーム生成装置の光学シミュレーション結果を示す図である。
図9】第2実施形態に係る細径ビーム生成装置の光学シミュレーション結果を示す図である。
図10】第3実施形態に係る細径ビーム生成装置の光学シミュレーション結果を示す図である。
図11】第4実施形態に係る細径ビーム生成装置の光学シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の内容は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0015】
《第1実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1は、図1に示すように、光源2と、集光手段としてのコリメータ光学素子3と、光学素子4と、を有する。光学素子4は、第1の光線集約手段である凸アキシコン面41と、第2の光源集約手段である凹アキシコン面42とが一体化された光学素子である。
【0016】
本実施形態において、コリメータ光学素子3、及び光学素子4は光軸がほぼ同一の光軸Xとなるように配置される。なお、コリメータ光学素子3、及び光学素子4の光軸は必ずしも光軸Xの軸中心にある必要はなく、多少の軸のズレがあってもよい。細径ビーム生成装置1において、光学素子4の凹アキシコン面42からの出射直後の位置を起点として細径ビームL1が生成される。細径ビームL1の径の大きさは、原理的には出射位置からの距離に依存せず一定であり、細径ビームL1の長さは原理的には無限遠である。
【0017】
上記細径ビームL1を生成できる細径ビーム生成装置1の用途としては、特に限定されず、様々なプロジェクタ装置、ディスプレイ装置、レーザ加工装置、照明装置、光通信装置、光メモリ装置、光情報処理装置等に対して細径ビーム生成装置1を適用できる。特に、細径ビームL1のビーム径の大きさは所定の大きさ以下とすることができ、かつ光軸X方向の所定の長さ(原理的には無限遠まで)において殆ど発散せず、細径ビームL1のビーム径は出射位置からの距離に依存せずほぼ一定であるため、焦点位置の調整が不要である。このため、細径ビーム生成装置1は網膜スキャンディスプレイに対して好ましく適用できる。細径ビームL1のビーム径は、例えば、50μm以下とすることができ、20μm以下とすることもでき、10μm以下とすることもできる。
【0018】
上記以外に、細径ビーム生成装置1をフォトリソグラフィに利用する場合には、高精細なフォトマスクの直接描画を精密なフォーカス機構を有さずに実現できる。また、細径ビーム生成装置1をレーザ加工装置に利用する場合には、従来はレーザ加工孔がテーパー状にならざるを得ないところ、均一な深さを有する加工孔を形成できる。更に、従来のレーザと比較して端面面積あたりのエネルギーが非常に高いため、せん断装置に適用した場合、従来よりも小さな出力のレーザ発振器でも十分な加工を行える。また、細径ビーム生成装置1をセンシング技術に利用する場合には、センシング距離に依存することなく高分解能でのセンシングが可能になる。また、細径ビーム生成装置1と光ファイバーを結合する場合には、従来は30%程度の結合効率しか得られなかったシングルモード光ファイバーへの入光を90%以上の結合効率に改善できる可能性がある。
【0019】
光源2は、例えば半導体レーザ(LD)、LED、面光源等の任意の光源である。光源2としては特に限定されず、空間的コヒーレンス性、及び時間的コヒーレンス性のいずれも要求されないため、任意の光源を用いることができる。光源2は、電源となる光源ドライバーなどにより光強度を調整、変調可能であってもよい。光源2としては、同一又は異なる波長の光を発する光源が複数設けられていてもよい。例えば、複数の光源を用い、RGBの光を合波した光源としてもよい。
【0020】
集光手段としてのコリメータ光学素子3は、光源2から発せられた光が入射する光学素子である。コリメータ光学素子3は、上記入射する光を光軸Xに略平行な平行光に変換して射出する。集光手段としてのコリメータ光学素子3としては、コリメータレンズ、ミラー、回折光学素子(DOE)等が挙げられる。回折光学素子は、表面に微細な凹凸構造を有し、光の回折現象を利用することで光を空間的に分岐させ、所望のパターン、形状の光を出力できる素子である。コリメータ光学素子3は、光源2が複数設けられる場合には、光源2の数に応じて複数設けられる。なお、発散特性のある光源に対してはコリメータ光学系が用いられるが、発散特性が無い光源においてはコリメータ光学系を用いず、直に又はビームエクスパンダーを使用して後段の光学系に合わせて入射させてもよい。なお、集光手段としては、完全なコリメート光を生成する手段に限られず、光源からの発散光を所定の立体角範囲内に集光する集光手段であればよい。
【0021】
光学素子4は、コリメータ光学素子3により生成された平行光が入射する光学素子である。光学素子4は、第1の光線集約手段である凸アキシコン面41と、凸アキシコン面41とは異なる形状を有する第2の光源集約手段である凹アキシコン面42と、を有する。凸アキシコン面41、及び凹アキシコン面42は、いずれも奇数次数非球面である屈折面である。凸アキシコン面41に対して上記平行光が入射し、凹アキシコン面42の頂点から細径ビームL1が出射される。凸アキシコン面41と、凹アキシコン面42とは、図1に示すように、それぞれのアキシコン面の頂点が光軸X上に配置される。凸アキシコン面41は上記平行光の入射側に向けて配置され、凹アキシコン面42は上記平行光の出射側に向けて配置される。凸アキシコン面41と凹アキシコン面42とは同じ頂角を有する直円錐面及び直円錐内面である。第1の光線集約手段と第2の光源集約手段を上記異なる形状とすることで、例えば第1の光線集約手段と第2の光源集約手段をいずれも凸アキシコン面とする場合と比較して、細径ビーム生成装置1をコンパクトに構成することができる。
【0022】
凸アキシコン面41は、コリメータ光学素子3により生成された平行光を入射光束より狭い領域に集約する機能を有する。凹アキシコン面42は、凸アキシコン面41による光線の集約位置に配置される。詳細には、凹アキシコン面42における円錐内面の頂点は、凸アキシコン面41による平行光の集約位置(ベッセルビーム生成位置)における凸アキシコン面41に対する最遠方付近に配置される。これにより、ある広がりをもって凸アキシコン面41に入射した光束の最外周の光線が、凸アキシコン面41により集約され、凹アキシコン面42の頂点から光軸Xに平行な細径ビームL1として集約されて出射される。また、上記最外周の光線が、光軸X付近に集中するため、光強度が強い細径ビームL1が出射される。
【0023】
本実施形態において、光学素子4は、ガラス等の光透過性を有する材料により構成され、第1の光線集約手段である凸アキシコン面41と、第2の光源集約手段である凹アキシコン面42とが一体となって構成される光学素子である。上記以外に、凸アキシコン面41を有する光学素子と、凹アキシコン面42を有する光学素子とをそれぞれ別の光学素子として設けてもよいが、光学素子4のように一体の光学素子として構成することが好ましい。これにより、別の光学素子を設ける場合と比較して、凸アキシコン面41と凹アキシコン面42との位置調整が不要となるため、精度よく所望のビーム径を有する細径ビームL1を生成できる。また、細径ビーム生成装置1の構成を簡易化できる。
【0024】
<光学シミュレーション結果>
図8は、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1を用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った結果を示す図である。図8は、凹アキシコン面42からの距離Dがそれぞれ100mm、500mm、1000mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す。図8の出力結果における縦軸及び横軸は、ディテクタサイズ(一辺20μm)に対応し(単位:mm)、中心(縦軸=0、横軸=0)が光軸Xの位置に対応する。第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1の各構成の詳細を以下の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1における非球面係数値とは、以下の式(1)(二次曲面ベース非球面式)で定義される非球面形状における非球面係数値である。
Z={H/R}/[1+{1-(1+k)(H/R)1/2]+Σα (1)
式(1)中、Z:光軸に平行な面の変位量(サグ量)、H:入射光線高さ、R:ベース面の曲率半径、K:円錐定数、α:Hのn乗に掛かる非球面係数、をそれぞれ示す。表1における面間隔(mm)とは、入射方向における光軸X上の次の面までの間隔を示す。表1における屈折率とは、入射側の媒質の屈折率に対する出射側の媒質の屈折率(相対屈折率)を意味する。
【0027】
図8に示すように、細径ビーム生成装置1によって生成される細径ビームは、出射位置からの距離に依存せず数μm程度の所定の径以下の径が維持されている結果が明らかである。
【0028】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
【0029】
《第2実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
第2実施形態に係る細径ビーム生成装置1aは、図2に示すように、光源2と、集光手段としてのコリメータ光学素子3と、光学素子4aと、を有する。光学素子4aはアキシコンミラー41aと、アキシコンミラー42aと、からなる。細径ビーム生成装置1aにおける光学素子4a以外の構成は、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1と同様である。
【0030】
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1aは、第1の光線集約手段及び第2の光線集約手段が奇数次数非球面である反射面により構成されている。これにより、入射光の波長に依存しない安定した特性を有する細径ビームL2を生成できる。
【0031】
アキシコンミラー41aは、第1の光線集約手段である凹アキシコン面41a1を有し、アキシコンミラー42aは、第2の光線集約手段である凸アキシコン面42a1を有する。凹アキシコン面41a1、及び凸アキシコン面42a1は、いずれも奇数次数非球面である反射面である。凹アキシコン面41a1に対してコリメータ光学素子3により生成された平行光が入射し、凹アキシコン面41a1によって集約されて反射された反射光は凸アキシコン面42a1に入射する。そして、凸アキシコン面42a1によって集約されて反射された反射光は、アキシコンミラー41aに形成された孔部hから光軸Xに平行な細径ビームL2として集約されて出射される。
【0032】
凹アキシコン面41a1と、凸アキシコン面42a1とは、図2に示すように、それぞれのアキシコン面の頂点が光軸X上に配置される。凹アキシコン面41a1は、上記コリメータ光学素子3により生成された平行光の入射側に向けて配置され、凸アキシコン面42a1は、コリメータ光学素子3と凹アキシコン面41a1との間に、凹アキシコン面41a1と対向するように配置される。凹アキシコン面41a1と、凸アキシコン面42a1とは同じ頂角を有する直円錐面又は直円錐内面であり、凸アキシコン面42a1の底面積は、凹アキシコン面41a1の底面積よりも小さい。
【0033】
凹アキシコン面41a1は、コリメータ光学素子3により生成された平行光を反射し、入射光束より狭い領域に集約する機能を有する。凸アキシコン面42a1の頂点は、凹アキシコン面41a1による平行光の集約位置に配置される。これにより、ある広がりをもって凹アキシコン面41a1に入射した光束の最外周の光線が、凹アキシコン面41a1により集約されて凸アキシコン面42a1に入射する。そして、凸アキシコン面42a1の頂点から光軸Xに平行な細径ビームL2として、反射により集約されて出射される。また、上記最外周の光線が、光軸X付近に集中するため、光強度の強い細径ビームL2が出射される。
【0034】
アキシコンミラー41aにおける、凹アキシコン面41a1の円錐内面の頂点に対応する位置には、図4A及び図4Bに示すように、孔部hが形成されている。孔部hは、凸アキシコン面42a1の頂点から出射される細径ビームL2が通過可能な孔部であり、孔部hの径は細径ビームL2の径よりも十分に大きい径を有する。孔部hの径は、特に限定されないが、例えば、アキシコンミラー42aの光軸X方向の投影形状以下の径とすることができる。上記構成により、コリメータ光学素子3により生成された平行光は、アキシコンミラー42aにより遮られるため、直接孔部hには到達せず、凸アキシコン面42a1により集約された細径ビームL2のみが孔部hに到達する。これにより、細径ビームL2の径を所定の大きさ以下の径とすることができる。そして、アキシコンミラー41aに孔部hを設けて、アキシコンミラー42aから出射される細径ビームL2が、孔部hから出射するように細径ビーム生成装置1aを構成することで、細径ビーム生成装置1aをコンパクトに構成できる。
【0035】
<光学シミュレーション結果>
図9は、第2実施形態に係る細径ビーム生成装置1aを用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った結果を示す図である。図9は、孔部hからの距離Dがそれぞれ100mm、500mm、1000mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す。図9の出力結果における縦軸及び横軸は、ディテクタサイズ(一辺20μm)に対応し(単位:mm)、中心(縦軸=0、横軸=0)が光軸Xの位置に対応する。凹アキシコン面41a1の円錐内面の頂角、及び凸アキシコン面42a1の円錐面の頂角はいずれも20度とし、頂角間の距離は3mmとし、凹アキシコン面41a1の円錐内面の底面の直径は6mmとし、凸アキシコン面42a1の円錐面の底面の直径は1mmとした。第2実施形態に係る細径ビーム生成装置1aの各構成の詳細を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
図9に示すように、細径ビーム生成装置1aによって生成される細径ビームは、出射位置からの距離に依存せず数μm程度の所定の径以下の径が維持されている結果が明らかである。
【0038】
《第3実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
第3実施形態に係る細径ビーム生成装置1bは、図5に示すように、光源2と、集光手段としてのコリメータ光学素子3と、臨界角アキシコン素子5と、光学素子4と、を有する。細径ビーム生成装置1bにおける臨界角アキシコン素子5以外の構成は、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1と同様である。
【0039】
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1bは、コリメータ光学素子3と、光学素子4と、の間に臨界角アキシコン素子5が配置されて構成される。細径ビーム生成装置1bを、臨界角アキシコン素子5を設けずに構成する場合(即ち、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1の場合)、細径ビームの生成に寄与する光は、光学素子4の光軸X方向から視て外周付近の光のみである。このため、細径ビームを生成することは可能ではあるが、入射光の利用効率は高いとは言えない。本実施形態に係る臨界角アキシコン素子5は、コリメータ光学素子3から出射される平行光を、光学素子4の光軸X方向から視て外周付近に環状の光として集光させて出射する機能を有する。これにより、細径ビーム生成装置1bは、臨界角アキシコン素子5を有しない細径ビーム生成装置1と比較して、入射光の利用効率を向上させることができる。
【0040】
臨界角アキシコン素子5は、光学素子51と、光学素子52により構成される。光学素子51は、入射側にコリメータ光学素子3から出射される平行光が垂直に入射するように配置される平面51aを有し、出射側に直円錐内面である凹アキシコン面51bを有する。光学素子52は、入射側に凹アキシコン面51bと同じ頂角を有する直円錐面である凸アキシコン面52aを有し、出射側に凸アキシコン面52bを有する。凹アキシコン面51bと凸アキシコン面52aとは当接して配置される。凹アキシコン面51bと凸アキシコン面52aとは、例えば適切な光学的性質を有する接着剤によって光透過可能に接着されていてもよい。
【0041】
光学素子51と、光学素子52とは、何れも光透過性を有する部材により構成されるが、光学素子51を構成する材料の屈折率は光学素子52を構成する材料の屈折率とは異なる。具体的には、以下に説明するように、光学素子51から出射される光が凸アキシコン面52aに沿って伝播するように、光学素子51及び光学素子52を構成する材料の屈折率と、凹アキシコン面51b及び凸アキシコン面52aの頂角とが設定される。
【0042】
光学素子51及び光学素子52を構成する材料の屈折率が異なることで、光学素子51から光学素子52に対して入射する光は、境界面である凹アキシコン面51b(凸アキシコン面52a)においてスネルの法則に従って屈折する。光学素子51を構成する材料の屈折率をN、光学素子52を構成する材料の屈折率をN’とすると、凹アキシコン面51bに対して入射角度θで入射した光は、以下の式(2)を満たす角度θ’で屈折する。ここで、入射角度θは、凹アキシコン面51b及び凸アキシコン面52aの頂角の1/2と略等しい。
N・sinθ=N’・sinθ’ (2)
【0043】
ここで、入射角度θがいわゆる臨界角θcを超える場合、光学素子51から光学素子52に対して入射する光は、境界面である凹アキシコン面51b(凸アキシコン面52a)で全反射する。しかし、入射角度θ=臨界角θcである場合、光学素子51から光学素子52に対して入射する光は、凸アキシコン面52aに沿って伝播する。この際、屈折率Nと屈折率N’との関係は、以下の式(3)を満たす。なお、入射角度θが臨界角θcに厳密に一致しない場合であっても、入射角度θが臨界角θcを超えず、臨界角θcに非常に近い角度であれば、光学素子51から出射される光を凸アキシコン面52aに沿った非常に狭い領域に集中させることができる。
N・sin(θc)=N’ (3)
【0044】
即ち、光学素子51及び光学素子52を構成するそれぞれの材料の屈折率から算出される臨界角θcと、凹アキシコン面51b及び凸アキシコン面52aの頂角の1/2とが略等しくなるように光学素子51及び光学素子52を構成することで、光学素子51から出射される光を凸アキシコン面52aに沿って伝播させることができる。
【0045】
光学素子52において凸アキシコン面52aに沿って伝播した光は、凸アキシコン面52bにより環状の平行光として集約されて出射される。凸アキシコン面52bから出射した環状の平行光は、光学素子4の光軸X方向から視て外周付近に入射する。光学素子4に入射した光は、上記第1実施形態において説明したように、凸アキシコン面41により集約され、凹アキシコン面42の頂点から光軸Xに平行な細径ビームL3として集約されて出射される。
【0046】
<光学シミュレーション結果>
図10は、第3実施形態に係る細径ビーム生成装置1bを用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った結果を示す図である。図10は、凹アキシコン面42からの距離Dがそれぞれ100mm、500mm、1000mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す。図10の出力結果における縦軸及び横軸は、ディテクタサイズ(一辺20μm)に対応し(単位:mm)、中心(縦軸=0、横軸=0)が光軸Xの位置に対応する。第3実施形態に係る細径ビーム生成装置1bの各構成の詳細を以下の表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
図10に示すように、細径ビーム生成装置1bによって生成される細径ビームのビーム径は、出射位置からの距離Dが100mmの場合7.0μm、同じく500mmの場合9.2μm、同じく1000mmの場合12.0μmであった。この結果から、少なくとも出射位置からの距離Dが1000mm以下である場合には、直径12μm以下の細径ビームが得られることが確認された。また、上記細径ビームを形成する光量は、入射光量の87%であり、第1実施形態に係る細径ビーム生成装置1と比較して入射光の利用効率が約100倍程度向上していることが確認された。
【0049】
《第4実施形態》
<細径ビーム生成装置の構成>
第4実施形態に係る細径ビーム生成装置1cは、図6に示すように、光源2と、集光手段としてのコリメータ光学素子3と、光学素子4bと、を有する。
【0050】
光学素子4bは、光学素子41bと、光学素子42bにより構成される。光学素子41bは、入射側にコリメータ光学素子3から出射される平行光が垂直に入射するように配置される平面41b1を有し、出射側に直円錐面である凸アキシコン面41b2を有する。光学素子42bは、入射側に凸アキシコン面41b2と同じ頂角を有する直円錐内面である凹アキシコン面42b1を有し、出射側に非球面42b2を有する。凸アキシコン面41b2と凹アキシコン面42b1とは当接して配置される。凸アキシコン面41b2と凹アキシコン面42b1とは、例えば適切な光学的性質を有する接着剤によって光透過可能に接着されていてもよい。
【0051】
凸アキシコン面41b2及び凹アキシコン面42b1は、第1の光線集約手段として機能する。光学素子4bは、上記臨界角アキシコン素子5と類似する構成を有している。具体的には、光学素子41bと、光学素子42bとは、屈折率の異なる光透過性部材により構成されると共に、光学素子41b及び光学素子42bを構成するそれぞれの材料の屈折率から算出される臨界角θcと、凸アキシコン面41b2及び凹アキシコン面42b1の頂角の1/2とが略等しくなるように光学素子41b及び光学素子42bが構成される。従って、平面41b1から光学素子41bに入光した平行光は、光学素子42bにおいて、凹アキシコン面42b1に沿って伝播することで集約される。
【0052】
本実施形態に係る細径ビーム生成装置1cは、第2の光線集約手段として非球面42b2を有する。非球面42b2は、第1の光線集約手段である凸アキシコン面41b2及び凹アキシコン面42b1による光線の集約位置に配置される。凸アキシコン面41b2及び凹アキシコン面42b1により集約された光は、非球面42b2の頂点から光軸Xに平行な細径ビームL4として集約されて出射される。
【0053】
非球面42b2は、アキシコン作用を有し、3次項を導入した奇数次数非球面である屈折面である。第2の光線集約手段として奇数次数非球面を用いることで、以下に説明するように、偏心の影響を受け難く、設計上の自由度が高く、かつ製造が容易であるという利点を有する。
【0054】
図7は、奇数次数非球面と偶数次数非球面にそれぞれ光線が入射した場合における、入射光線の偏心の影響を比較する模式図である。奇数次数非球面Zodd、及び偶数次数非球面Zevenは、例えばそれぞれ以下の式(4)及び(5)で定義される。以下の式(4)及び(5)におけるHは、入射高さを意味する。
Zodd=H+H+H (4)
Zeven=H+H+H (5)
【0055】
図7に示すように、入射光線が光軸Xに沿ってΔZだけ偏心した場合、入射光線の偶数次数非球面上の変化量をΔHeven、奇数次数非球面上での変化量をΔHoddと表すと、必ずΔHeven>ΔHoddとなり、奇数次数非球面上での変化量の方が偶数次数非球面上での変化量よりも小さい。従って、奇数次数非球面は偶数次数非球面よりも偏心敏感度が小さく、偏心の影響を受け難い利点を有する。
【0056】
非球面42b2等の第2の光線集約手段は、狭い領域に集約された光線を同一方向へ平行に射出させる必要がある。そのため、第2の光線集約手段である非球面は、形状変化量がある程度狭い範囲に留まるように設計することが必要となる。上記を実現するための形状としては、アキシコン面が挙げられる。アキシコン面の形状は、例えば以下の式(6)で示される。以下の式(6)におけるαは、頂点傾角を意味し、Hは、入射高さを意味する。
Zaxicon=tan(α)・H (6)
【0057】
アキシコン面の形状分布は入射高さHによる形状変化分散値が0であることから、形状変化分散値が小さいほど、アキシコン面の特性に近いことを意味する。従って、設計自由度を高めると共にアキシコン作用を保持するためには、偶数次数非球面よりも形状変化分散値が小さい奇数次数非球面の方が有利である。なお、非球面形状分布の一次微分値は、光線の出射方向を決定するため、上記一次微分値の変動量を小さくすることで出射光線の伝搬方向のバラツキを小さくすることができる。更に、奇数次数非球面はアキシコン面よりも先端形状が鈍った形状を有するため、製造しやすいという利点を有する。特に、高次項を導入した奇数次数非球面の方が、上記製造しやすいという利点が大きい。
【0058】
<光学シミュレーション結果>
図11は、第4実施形態に係る細径ビーム生成装置1cを用いて、光学設計ソフトウェアZEMAX(登録商標)(ZEMAX Development Corporation社製)を使用し、光学シミュレーションを行った結果を示す図である。図11は、非球面42b2からの距離Dがそれぞれ100mm、500mm、1000mmの位置において、光軸Xに垂直な面上にディテクタを設置し上記光学シミュレーションにより放射照度分布を出力した結果を示す。図11の出力結果における縦軸及び横軸は、ディテクタサイズ(一辺20μm)に対応し(単位:mm)、中心(縦軸=0、横軸=0)が光軸Xの位置に対応する。第4実施形態に係る細径ビーム生成装置1cの各構成の詳細を以下の表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
図11に示すように、細径ビーム生成装置1cによって生成される細径ビームのビーム径は、いずれのディテクタ上でも直径2μm程度の非常に小さい径を有していた。この結果から、第2の光線集約手段として高次の奇数次数非球面を用いた場合においても、所定の大きさ以下の径を有する細径ビームを生成できる結果が確認された。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【0062】
上記第3実施形態では、細径ビーム生成装置1bは、コリメータ光学素子3と、光学素子4と、の間に臨界角アキシコン素子5が配置されて構成されるものとして説明した。上記に限定されない。コリメータ光学素子3と、第2実施形態に係る光学素子4aと、の間に臨界角アキシコン素子5を配置しても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b、1c 細径ビーム生成装置
2 光源
3 コリメータレンズ(コリメータ光学系)
41、41a1、41b2、42b1 第1の光線集約手段
42、42a1、42b2 第2の光線集約手段
L1、L2、L3、L4 細径ビーム
X 光軸
【要約】
【課題】任意の光源から発せられる光に基づき、出射位置からの距離に依存せず所定の大きさ以下の径を有する直線状の細径ビームを生成できる、細径ビーム生成装置を提供する。
【解決手段】光源と、光源からの発散光をコリメートするか、又は所定の立体角範囲内に集光する集光手段と、集光手段から出射する光線の少なくとも一部を、入射光束より狭い領域に集約する第1の光線集約手段と、第1の光線集約手段から出射する光線を直線状の細径ビームとして集約する第2の光線集約手段と、を有し、第1の光線集約手段及び第2の光線集約手段はいずれも奇数次数非球面である光学素子、又は光学系であり、第2の光線集約手段は、第1の光線集約手段による光線の集約位置に配置され、第1の光線集約手段と第2の光線集約手段は異なる形状を有する、細径ビーム生成装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11