(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】水抜き部材及び電気電子機器収納用箱
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20221011BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20221011BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K5/06 E
H05K7/20 J
(21)【出願番号】P 2018095059
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117886(JP,A)
【文献】特開2010-164205(JP,A)
【文献】特開2013-65788(JP,A)
【文献】実開昭54-55728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 5/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気電子機器収納用箱の底面に取り付けられる水抜き部材であって、電気電子機器収納用箱に係止する係止部と、水を通す空間部と、空間部を通過した水を外部に排水する排水部と、を備え、
空間部と排水部は、電気電子機器収納用箱に係止した状態において、係止部より下方で電気電子機器収納用箱の外面側に配置されるものであり、かつ、排水部は空間部より下方に配置されるものであり、
排水部は、空間部側から所定以上の圧力がかけられると、開口面積を広げるように弾性変形する水抜き部材。
【請求項2】
空間部を通過した水を排水部に導く傾斜面を備えた請求項1に記載の水抜き部材。
【請求項3】
係止部が、電気電子機器収納用箱の内面側に配置される第一の係止片と、電気電子機器収納用箱の外面側に配置される第二の係止片と、を備えた請求項1又は2に記載の水抜き部材。
【請求項4】
電気電子機器収納用箱の底面に取り付けられる水抜き部材であって、電気電子機器収納用箱に係止する係止部と、水を通す空間部と、空間部を通過した水を外部に排水する排水部と、を備え、排水部は、空間部側から所定以上の圧力がかけられると、開口面積を広げるように弾性変形する水抜き部材が取り付けられた電気電子機器収納用箱であって、電気電子機器収納用箱の換気に用いられる換気扇を備え、換気扇の回転方向を変えることにより、水抜き部材の空間部側から排水部に対して掛ける圧力を変えることができる電気電子機器収納用箱。
【請求項5】
電気電子機器収納用箱内の水量を測るセンサ部と、換気扇の回転方向を制御する制御部とを備え、制御部が、センサ部から送られる信号を基に換気扇の回転方向を切り替えるように制御する請求項4に記載の電気電子機器収納用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き部材及び電気電子機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、電気電子機器収納用箱の水抜き穴に水抜き部材を嵌め込むことが知られている。水抜き部材は電気電子機器収納用箱内の水を排水する機能と、外部から水が侵入しないようにする機能の双方を発揮させることを目的に水抜き穴に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、このような目的を叶えるために水抜き部材は、複数の部材を組み合わせて入り組んだ排水溝を構成するなど、複雑な構造となっていた。また、このような隙間から排水される量は一定量であり、その量はわずかなものであった。このため、何らかの異常により電気電子機器収納用箱内に多くの水が浸入した際は、対応できない虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、単純な構造の水抜き部材で電気電子機器収納用箱内に浸入した水を適切に排出できるようにするとともに、外部からの水の浸入を妨げるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電気電子機器収納用箱の底面に取り付けられる水抜き部材であって、電気電子機器収納用箱に係止する係止部と、水を通す空間部と、空間部を通過した水を外部に排水する排水部と、を備え、排水部は、空間部側から所定以上の圧力がかけられると、開口面積を広げるように弾性変形する水抜き部材とする。
【0007】
また、空間部を通過した水を排水部に導く傾斜面を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、係止部が、電気電子機器収納用箱の内面側に配置される第一の係止片と、電気電子機器収納用箱の外面側に配置される第二の係止片と、を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、上記水抜き部材が取り付けられた電気電子機器収納用箱であって、電気電子機器収納用箱の換気に用いられる換気扇を備え、換気扇の回転方向を変えることにより、水抜き部材の空間部側から排水部に対して掛ける圧力を変えることができる電気電子機器収納用箱とすることが好ましい。
【0010】
また、電気電子機器収納用箱内の水量を測るセンサ部と、換気扇の回転方向を制御する制御部とを備え、制御部が、センサ部から送られる信号を基に換気扇の回転方向を切り替えるように制御する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、単純な形状の水抜き部材で電気電子機器収納用箱内に浸入した水を排出できるようにするとともに、外部からの水の浸入を妨げるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】水抜き部材の底面図である。但し
図5よりも開口面積が広がっている。
【
図7】
図6に示す状態の水抜き部材を下方から見た斜視図である。
【
図8】水抜き部材の底面図である。但し
図6よりも開口面積が広がっている。
【
図9】
図8に示す状態の水抜き部材を下方から見た斜視図である。
【
図10】換気扇を備えた電気電子機器収納用箱の筐体本体を示した斜視図である。
【
図11】換気扇とセンサ部と制御部を備えた電気電子機器収納用箱の筐体本体を示した正面図である。
【
図12】
図2とは異なる形態の水抜き部材を上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の水抜き部材1は、電気電子機器収納用箱8の底面83に設けた水抜き穴84に取り付けられるものである。また、この水抜き部材1は、電気電子機器収納用箱8に係止する係止部11と、水を通す空間部12と、空間部12を通過した水を外部に排水する排水部13と、を備えている。また、この排水部13は、所定以上の圧力がかけられると、開口面積を広げるように弾性変形する。このため、単純な構造の水抜き部材1で電気電子機器収納用箱8内に浸入した水を適切に排出できるようにするとともに、外部からの水の浸入を妨げるようにすることが可能となる。
【0014】
ここで、電気電子機器収納用箱8について、説明する。
図1に示すように、電気電子機器収納用箱8は開口面を備えた筐体本体81と、開閉可能な扉82を備えている。電気電子機器収納用箱8の底面83には、水抜き穴84が設けられており、この水抜き穴84に水抜き部材1が取り付けられる。筐体本体81の内部に浸入した水は、この水拭き部材を通して電気電子機器収納用箱8の外部に排出できる。なお、本実施形態では水抜き穴84は四角状に切り抜かれているが、どのような形状で切り抜かれていても良く、円形状に切り抜かれているものとしても良い。なお、
図1に示した電気電子機器収納用箱8には通気可能なルーバー85が取り付けられている。
【0015】
実施形態における水抜き部材1は、弾性変形可能な部材により構成されている。より詳しくは、ゴムにより構成されており、上下方向に略一直線状に貫通する通水空間を備えたものとなっている。
図2などに示す例では、電気電子機器収納用箱8に係止する係止部11は、電気電子機器収納用箱8の内面側に配置される第一の係止片14と、電気電子機器収納用箱8の外面側に配置される第二の係止片15と、を備えている。
図3及び
図4に示すように、この第一の係止片14と、第二の係止片15により、水抜き穴84の端部を挟むようにすることで、水抜き部材1が抜け落ちないようにしている。
【0016】
実施形態の係止部11は弾性変形可能であるため、電気電子機器収納用箱8の内側から押し込むことで第二の係止片15が弾性変形し、水抜き穴84を通過することができ、水抜き穴84を通過した第二の係止片15は、水抜き穴84の端部に引っ掛かるようになる。なお、本実施形態では、第二の係止片15はガイド用の斜面を形成するように断面視略三角形状に構成されており、水抜き部材1の取り付け時には比較的取り付けやすい一方、抜け落ちないものとなっている。また、第一の係止片14は第二の係止片15よりも長く水平方向に突出したものとなっており、水抜き部材1を押し込んだ際に第一の係止片14が水抜き穴84の端部に十分に引っ掛かるようになっている。
【0017】
図4に示すことから理解されるように、実施形態の水抜き部材1は、筒状の胴部として形成した空間部12を通過した水を排水部13に導く傾斜面16を備えている。このような傾斜面16を設けることで、筒状の空間部12に浸入した水を排水部13に集めやすいものとしている。
【0018】
図4及び
図5に示すことから理解されるように、本実施形態の排水部13は上下方向に延びる平板状の部分にスリット17を設けることで構成している。このスリット17は、通常時にも水が排出できるようなものでもよいし、通常時は水が排出できないようなものでもよい。つまり、切れ目は入っているが、密着することで、実質的に水が通る隙間がほとんど無いようなものでもよい。常時水が排出される必要は無く、水抜き部材1の内側に所定以上の圧力がかけられた場合に水が排出できれば、水を抜くという機能を果たすからである。なお、実施形態の水抜き部材1の排水部13に設けたスリット17は、切れ目は入っているが密着することで実質的に水が通る隙間がほとんどないようなものである。このため、強風を伴う雨が発生した場合であっても、電気電子機器収納用箱8の外側から雨水が排水部13を通じて空間部12側に浸入することが抑制される。また、強風や雨により平板状の排水部13が外側から圧力を受け、スリット17がより密着すると、更に雨水が浸入することが抑制される。一方、排水部13は、水抜き部材1の内側にかかる圧力によって開口面積を広げるように弾性変形可能であるため、水を抜くという機能は十分に果たすことができる。
【0019】
図5及び
図6に示す変化から理解されるように、実施形態の排水部13は所定以上の圧力がかけられると、開口面積を広げるように弾性変形する。これにより、排水しやすい状態となる。なお、スリット17が
図6に示す状態となっている場合、水抜き部材1は
図7に示すような形状となっている。
【0020】
更に、加圧された場合、スリット17が
図8に示すような状態となり、更に開口面積が広がることになる。なお、スリット17が
図8に示す状態となっている場合、水抜き部材1は
図9に示すような形状となっている。このように、排水部13にかかる圧力が増えるとスリット17の開口面積が広がる。このため、水抜き部材1に集まった水の量が増えると、その水の量から加わる水圧が増えて開口面積が広がり、より多くの水を排水することができる。つまり、浸入した水の量に応じて、排水する量を可変とすることができる。これにより、電気電子機器収納用箱8内に浸入した水を適切に排出することができる。
【0021】
ところで、実施形態の電気電子機器収納用箱8は、
図10に示すように、換気扇86を備えている。この換気扇86の回転方向を変えることにより、空間部12側から排水部13に対して掛ける圧力を変えることができる。このため、換気扇86を通じて電気電子機器収納用箱8内の空気を外部に排出するようにするか、換気扇86を通じて外部の空気を電気電子機器収納用箱8内に導入するようにするかを、選択することができる。
【0022】
したがって、通常は換気扇86を通じて、電気電子機器収納用箱8内の空気を外部に排出するように運転しつつ、必要に応じて、換気扇86を通じて外部の空気を電気電子機器収納用箱8内に導入する運転に切り替えることができる。
【0023】
換気扇86を通じて外部の空気を電気電子機器収納用箱8内に導入する運転をした場合、電気電子機器収納用箱8内に圧力を高めることができるため、水抜き部材1の内側に圧力をかけることができる。このようにすれば、排水部13に対して空間部12側から所定以上の圧力をかけて開口面積を広げるようにし易くなる。
【0024】
また、
図11に示す例のように、電気電子機器収納用箱8内の水量を測るセンサ部87と、換気扇86の回転方向を制御する制御部88とを備えるようにしても良い。この場合、制御部88が、センサ部87から送られる信号を基に換気扇86の回転方向を切り替えるように制御する。このようにすると、電気電子機器収納用箱8内の水量が所定以上であることをセンサ部87が検知した場合に、空気を外部に排出する状態から、外部の空気を電気電子機器収納用箱8内に導入するように換気扇86の運転を切り替えることができるため、水抜き部材1の排水部13の開口面積を広げ、浸入した水を排出し、電気電子機器収納用箱8内の水かさが増すことを抑制することができる。
【0025】
なお、
図1から
図11に示す例では水抜き部材1は、空間部12を通過した水を排水部13に導く傾斜面16を備えた構成としているが、
図12に示すように傾斜面16を備えない構成としても良いことは勿論である。また、傾斜面16は、傾斜角度が一定になっている必要は無く、傾斜角度が漸次変化するように構成しても良いし、その他の形状であっても良い。したがって、空間部12と排水部13を繋ぐ壁が側面視で略U字状にすることなども可能である。また、空間部12は、筒状に設けられる必要は無い。例えば、側面視において、排水部13側を一つの頂点とする逆三角形状となるように形成しても良いし、その他の形状であっても良い。
【0026】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、水抜き部材の空間部は断面視四角状に形成することに限る必要は無く、断面視円形状にしても良い。
【0027】
また、水抜き部材は単一の部材で設ける必要は無く、複数の部材を組み合わせて設けても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 水抜き部材
8 電気電子機器収納用箱
11 係止部
12 空間部
13 排水部
14 第一の係止片
15 第二の係止片
16 傾斜面
83 底面
84 水抜き穴
86 換気扇
87 センサ部
88 制御部