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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ピラーガーニッシュ
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B60R13/02 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018143075
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019317
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】松井 博
(72)【発明者】
【氏名】小森 克也
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177147(JP,A)
【文献】特開2008-174185(JP,A)
【文献】特開2014-024526(JP,A)
【文献】特開2010-168044(JP,A)
【文献】特開2009-113714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00-99/00
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボデーを構成するピラーの車内側に取付けられる本体部と、前記本体部の車外側に設けられ、前記ピラーに前記本体部を取付けるためのクリップが組付けられる組付け座とを備え、
前記組付け座は、前記クリップの組付け穴が設けられる天壁部と、前記本体部の車外側表面から突出し、前記天壁部とつながる一対の縦壁部と、何れも前記本体部の長手方向を指向する前記天壁部の長手方向一端部と前記一対の縦壁部の長手方向一端部とで形成される開口部とを有するピラーガーニッシュにおいて、
前記開口部の端面のうち少なくとも一方の前記縦壁部の厚みが変化する部分又はその近傍から、第一リブが突出しており、
前記本体部の車外側表面には、前記縦壁部の外側から前記本体部の短手方向に伸びる第二リブが設けられ、
前記第二リブの側面が前記開口部の端面と連続して形成され、
前記第一リブが、前記開口部の端面のうち前記縦壁部の厚みが変化する部分又はその近傍から前記第二リブの側面に跨がった状態で、前記本体部の長手方向に突出していることを特徴とするピラーガーニッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラーガーニッシュに関し、特にピラーガーニッシュをボデーに取付ける際に使用するクリップを組み付ける組付け座を補強するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性向上に対する要求の高まりを受けて、様々な種類のエアバッグが開発され、導入されている。その一つに、主に側面衝突時にサイドウィンドウと乗員との間に展開し、乗員の頭部を保護するカーテンシールドエアバッグがある。
【0003】
カーテンシールドエアバッグの前方部は、車両のボデーを構成するフロントピラーと、フロントピラーを車内側から覆うピラーガーニッシュとの間に収納される。そのため、カーテンシールドエアバッグの展開時には、当該エアバッグが車内側に展開できるだけの隙間がフロントピラーとピラーガーニッシュとの間に形成される必要がある。また、上記隙間をフロントピラーとの間に形成した状態で、ピラーガーニッシュが引き続きボデー側に保持される必要もある。
【0004】
ここで、特許文献1には、ボデー側に対する所定の取付け構造を有するピラーガーニッシュが開示されている。このピラーガーニッシュは、フロントピラーを車内側から覆う長尺板状の本体部と、本体部の裏面(車外側表面)に設けられ、クリップが組付けられる組付け座とを一体的に有する。一方、クリップは、組付け座の係止穴に引っ掛って係止される第一係止部及び第二係止部と、第一係止部よりも車外側に位置するスナップフィット部とを有する。第二係止部は、第一係止部よりも大きく、組付け座の係止穴を挿通不能な大きさに設定されている。そして、上記構成を成すクリップのスナップフィット部をフロントピラーの係止穴の周縁に引掛けて係止させると共に、第一係止部を組付け座の係止穴の周縁に車内側から係止させることにより、ピラーガーニッシュがフロントピラーに取付けられる。この際、スナップフィット部とフロントピラーとの係止力は第一係止部と組付け座との係止力よりも大きいため、ピラーガーニッシュが車内側に押し込まれた際、クリップとフロントピラーとの固定状態は維持される一方、第一係止部と組付け座との係止状態が解消され、組付け座と共にピラーガーニッシュが車内側に移動し、第二係止部と組付け座とが新たに係止状態となる。これにより、カーテンシールドエアバッグの展開を可能としつつ、ピラーガーニッシュの脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5929724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のガーニッシュは、部品交換や補修などのために、フロントピラーから取り外されることがある。この際、特に上端側の組付け座(カーテンシールドエアバッグが収納される部位の組付け座)においては、クリップが強固にフロントピラーに固定されているため、ガーニッシュを取り外すためには、このクリップが破壊されるまでガーニッシュを車内側に引っ張る必要がある。その結果、ガーニッシュの各部、特に組付け座及び組付け座と連続する部分には多大な応力(応力集中)が生じ、組付け座の破損を招くおそれがある。
【0007】
組付け座の破損を防止するには、例えば応力集中部となる縦壁部の肉厚を増大すればよい。しかしながら、この種のガーニッシュにおいては、特許文献1に記載のように、縦壁部の基端部はガーニッシュの意匠面とその裏側でつながっており、かつ意匠面への影響を考慮して、縦壁部の他の部位に比べて薄肉に形成されている。そのため、縦壁部の基端部の肉厚を増したのでは、意匠面にヒケが生じ、意匠品質の低下を招くおそれが生じる。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、ピラーガーニッシュの意匠性を確保しつつも組付け座の補強を図ることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係るピラーガーニッシュによって達成される。すなわち、このガーニッシュは、車両のボデーを構成するピラーの車内側に取付けられる本体部と、本体部の車外側に設けられ、ピラーに本体部を取付けるためのクリップが組付けられる組付け座とを備え、組付け座は、クリップの組付け穴が設けられる天壁部と、本体部の車外側表面から突出し、天壁部とつながる一対の縦壁部と、何れも本体部の長手方向を指向する天壁部の長手方向一端部と一対の縦壁部の長手方向一端部とで形成される開口部とを有するピラーガーニッシュにおいて、開口部の端面のうち少なくとも一方の縦壁部の厚みが変化する部分又はその近傍から、第一リブが突出している点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明では、ピラーガーニッシュの組付け座に形成される開口部の端面に着目し、この端面のうち組付け座を構成する縦壁部の厚みが変化する部分又はその近傍から、第一リブが突出した形状とした。このような形状にすることで、例えば縦壁部が破損する場合、その起点(応力集中部)となり易い肉厚変化部又はその近傍を第一リブで補強することができるので、肉厚変化部における応力集中を緩和することができる。これにより、意匠面の裏側につながる部分(例えば縦壁部の基端部)の肉厚を増大させずに組付け座の応力集中部位を補強することができるので、本体部の意匠面にヒケが生じる事態を回避して、優れた意匠品質を確保することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るピラーガーニッシュにおいては、本体部の車外側表面に、縦壁部の外側から本体部の短手方向に伸びる第二リブが設けられ、第二リブの側面が開口部の端面と連続して形成され、第一リブが、開口部の端面のうち縦壁部の厚みが変化する部分又はその近傍から第二リブの側面に跨がった状態で、本体部の長手方向に突出していてもよい。
【0012】
本構成は、詳細は後述するが、本体部のうち組付け座の短手方向一方側又は両側の形状安定性を考慮して、上記形態のリブ(第二リブ)を設けることを考えた場合における組付け座の補強構造を規定したものである。すなわち、上記形態の第二リブを設けた場合に、ピラーガーニッシュを取り外そうとして車内側に引っ張ると、第二リブの形状ないし位置によっては、肉厚変化部付近の形状が変化して、応力集中部が第二リブと縦壁部との連結部側に移行することが考えられる。この点を考慮して、第一リブを開口部の端面のうち肉厚変化部又はその近傍から第二リブの側面に跨った状態で、本体部の長手方向に突出させるようにした。これにより、第二リブを設けたことで新たに生じた応力集中部を補強して、当該部位における応力集中を緩和することができる。よって、ピラーガーニッシュの形状を安定させながら、取り外しの際の強度を高めて、破損の発生を防止することが可能となる。もちろん、第一リブは開口部の端面と第二リブの側面とに跨って形成されるので、意匠面となる本体部の車内側表面にヒケ等の欠陥が生じるおそれもない。そのため、形状を含めた意匠品質を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、ピラーガーニッシュの意匠性を確保しつつも組付け座の補強を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るピラーガーニッシュを車内側から平面視した図である。
図2図1に示す組付け座のうち最も上端側に位置する組付け座の斜視図である。
図3図2に示す組付け座を矢印Aの方向から見た図である。
図4図3に示す組付け座のB-B断面における射出成形態様の一例を示す断面図である。
図5図3に示す組付け座のC-C断面における射出成形態様の一例を示す断面図である。
図6図1に示すピラーガーニッシュをボデーに取付けた状態において図2に示す組付け座を矢印Aの方向から見た図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る組付け座の斜視図である。
図8図7に示す組付け座を矢印Dの方向から見た図である。
図9図7に示す組付け座を矢印Eの方向から見た図である。
図10図9に示す組付け座のF-F断面における射出成形態様の一例を示す断面図である。
図11図7に示すピラーガーニッシュをボデーに取付けた状態において同図に示す組付け座を矢印Eの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態に係るピラーガーニッシュの内容を図面に基づき説明する。本実施形態では、自動車用ボデーのフロントピラーに取付けられるピラーガーニッシュに本発明を適用する場合を例にとって、以下にその内容を説明する。
【0016】
図1は、本発明の第一実施形態に係るピラーガーニッシュ1の平面図である。このピラーガーニッシュ1は、車両のボデーを構成するフロントピラー2(後述する図6を参照)の車内側に取付けられるもので、図1に示すように、長尺板状をなす本体部3と、本体部3の車外側表面3a(図1でいえば紙面手前側の表面)に立設される複数の組付け座4~6を一体的に有する。以下、複数の組付け座4~6のうち、最も上端側(図1でいえば最も右上)の組付け座4の詳細な構成を中心に説明する。
【0017】
組付け座4は、フロントピラー2に本体部3を取付けるためのクリップ7(後述する図6を参照)を組付け可能とされる。この組付け座4は、図2に示すように、クリップ7の組付け穴8が設けられる天壁部9と、本体部3の車外側表面3aから突出し、天壁部9とつながる一対の縦壁部10,10とを有する。この場合、組付け座4は、天壁部9と一対の縦壁部10,10で箱状に形成される。また、天壁部9の長手方向一端部9aと、一対の縦壁部10,10の長手方向一端部10a,10aとで、組付け座4の開口部11が形成される。この開口部11は、本体部3(すなわちピラーガーニッシュ1)の長手方向上側に向けて開口しており、開口部11を通じて組付け座4の内側空間にクリップ7の一部(図6に示す第一係止部12と第二係止部13)を収容可能としている。なお、図2等に記載のように、本実施形態においては、本体部3の長手方向をX方向、本体部3の短手方向をY方向、長手方向と短手方向の双方に直交する向きをZ方向として、以下に説明する。
【0018】
図3は、組付け座4を開口部11の側から見た図である。本実施形態では、各縦壁部10は、Z方向に対して傾斜した状態で本体部3の車外側表面3aから立設している。具体的には、天壁部9から本体部3に近づくにつれて、一対の縦壁部10,10間の距離(Y方向距離)が大きくなるよう、各縦壁部10が互いに異なる向きに傾斜している。各縦壁部10は、天壁部9とつながり相対的に肉厚の大きな厚肉部14と、本体部3とつながり相対的に肉厚の小さな薄肉部15とからなっている。ここで、厚肉部14は、例えば組付け座4全体の強度を担保する観点から2.0mm以上に設定され、好ましくは3.0mm以上に設定される。一方、薄肉部15は、意匠面となる本体部3の車内側表面3bとその裏側でつながっているため、例えば意匠面への影響を最小限に抑える観点から1.5mm以下に設定され、好ましくは1.0mm以下に設定される。もちろん、上述した厚み寸法は一例に過ぎず、諸条件を総合的に勘案して適正な範囲内で任意の数値に設定することが可能である。
【0019】
開口部11の端面11aのうち、少なくとも一方の縦壁部10の厚みが変化する部分P(本実施形態では厚肉部14と薄肉部15との連結部)又はその近傍から、第一リブ16が突出している。本実施形態では、第一リブ16は、厚肉部14から薄肉部15に跨った状態で、本体部3の長手方向(すなわちX方向)に突出している。第一リブ16の下端と、本体部3との間には所定の隙間が存在している。言い換えると、第一リブ16は、本体部3とつながることなく開口部11の端面11aから突出している。また、第一リブ16の側面16aは、縦壁部10の外側面10bと連続している。
【0020】
上記構成の組付け座4を有するピラーガーニッシュ1は、例えば樹脂の射出成形により形成される。この場合、ピラーガーニッシュ1は、本体部3と組付け座4(及び残りの組付け座5,6)を一体に有する樹脂成形品となる。図4は、ピラーガーニッシュ1の射出成形態様の一例を示す図である。同図に示すように、ピラーガーニッシュ1を成形するための金型は、コア17と、キャビティ18と、スライドコア19とを有する。この場合、スライドコア19は、コア17とキャビティ18との型締め又は型開き方向(図4ではZ方向)に直交する向き(図4ではX方向)にスライド可能に構成され、型開きに伴い、コア17から離れる向きに移動するようになっている。上記構成の金型を型締めすることで、金型17~19間に溶融樹脂の充填空間20aが形成される。そして、型締め状態で溶融樹脂を充填空間20aに充填し、固化させることで、充填空間20aに準じた形状の樹脂成形品、すなわち本体部3と組付け座4とを一体に有するピラーガーニッシュ1が成形される。この場合、組付け座4の天壁部9はアンダーカット部になるが、天壁部9と一対の縦壁部10,10の内側面は何れもスライドコア19で成形され、スライドコア19は型開きに伴い型開き方向に直交する向きに退避するため、これら金型17~19と干渉することなくピラーガーニッシュ1を取出すことができる。
【0021】
また、開口部11の端面11aから突出する第一リブ16についても、図5に示すように、コア17とスライドコア19との間に充填空間20bを形成し、この充填空間20bに溶融樹脂を充填し、固化した後、型開きに伴いスライドコア19を型開き方向に直交する向きに退避させることで、アンダーカット部になる事態を回避できる。よって、第一リブ16を一体に有する組付け座4(ピラーガーニッシュ1)を金型17~19との干渉なしに取出すことができる。
【0022】
以上の説明に係るピラーガーニッシュ1は、例えば図6に示す態様で車両のボデーに取付けられる。この取付け構造において、ピラーガーニッシュ1は、クリップ7を介してボデーを構成するフロントピラー2(ここではフロントピラー2のインナパネル21)に固定される。ここで、クリップ7は、組付け座4の組付け穴8に係止される第一係止部12と、第一係止部12よりも車内側(図6でいえば下側)に位置し、組付け座4の内側空間に収容される第二係止部13と、第一係止部12よりも車外側(図6でいえば上側)に位置するスナップフィット部22とを一体的に有する。第二係止部13は、第一係止部12よりも大きく、組付け座4の組付け穴8を挿通不能な大きさに設定されている。
【0023】
そして、上記構成を成すクリップ7のスナップフィット部22を車内側からフロントピラー2のインナパネル21の係止穴23に挿通し、当該係止穴23の周縁に引掛けて係止させると共に、第一係止部12を組付け座4の組付け穴8の周縁に車内側から係止させることにより、ピラーガーニッシュ1がフロントピラー2に取付けられる。この際、スナップフィット部22とフロントピラー2(のインナパネル21)との係止力は第一係止部12と組付け座4との係止力よりも大きい。そのため、ピラーガーニッシュ1が車内側に押し込まれた際、クリップ7とフロントピラー2との固定状態は維持される一方で、第一係止部12と組付け座4との係止状態が解消される。これにより、組付け座4と共にピラーガーニッシュ1が車内側に移動し、クリップ7の第二係止部13で組付け座4が係止される(図6中、二点鎖線で示す状態)。以上の動作により、カーテンシールドエアバッグ24の展開を可能としつつ、ピラーガーニッシュ1の脱落が防止される。
【0024】
また、ピラーガーニッシュ1を取り外す場合には、ピラーガーニッシュ1を図6中の二点鎖線で示す状態よりも車内側に引っ張る、言い換えるとクリップ7のスナップフィット部22が破壊されるまでピラーガーニッシュ1を引っ張る必要がある。これでは、外力(引張り力)を直接的に受ける本体部3と組付け座4の天壁部9との間で相対的に弱い部分、ここでは縦壁部10の肉厚変化部Pに応力集中が生じ、組付け座4の破損を招くおそれがある。
【0025】
ここで、本発明に係るピラーガーニッシュ1においては、組付け座4に形成される開口部11の端面11aのうち縦壁部10の肉厚変化部Pから第一リブ16が突出した形状とした。このような形状にすることで、破損の起点となり易い肉厚変化部Pを第一リブ16で補強することができるので、肉厚変化部Pにおける応力集中を緩和することができる。これにより、意匠面となる本体部3の車内側表面3bの裏側につながる部分(本実施形態でいえば縦壁部10の基端側に位置する薄肉部15)の厚みを増大させずに組付け座4の応力集中部位を補強することができるので、本体部3の意匠面にヒケが生じる事態を回避して、優れた意匠品質を確保することが可能となる。
【0026】
また、開口部11の端面11aからピラーガーニッシュ1の長手方向(本実施形態ではX方向)に突出する第一リブ16を設けた場合、この第一リブ16は、通常、ピラーガーニッシュ1の成形時にアンダーカット部となる。この点、本実施形態のように、組付け座4を一体に有するピラーガーニッシュ1を樹脂の射出成形品とし、組付け座4をスライドコア19で成形する場合には、組付け座4の開口部11もスライドコア19を用いて成形される(図4及び図5を参照)。そのため、開口部11の端面11aから本体部3の長手方向に突出した第一リブ16であれば、開口部11と同時に成形することができる。よって、成形性の面でも問題ない。また、第一リブ16がスライドコア19で組付け座4と同時に成形できるのであれば、従来と同じ工数で成形できるので、コスト面でも特に問題はない。
【0027】
以上、本発明の第一実施形態について述べたが、本発明に係るピラーガーニッシュは、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0028】
図7は、本発明の第二実施形態に係るピラーガーニッシュ25の最も上端側に位置する組付け座26の斜視図である。また、図8は、図7に示す組付け座26を矢印Dの向きから見た図である。これらの図に示すように、この組付け座26は、本体部3の車外側表面3aに設けられ、縦壁部10の外側面10bから本体部3の短手方向(図7及び図8ではY方向)に伸びる第二リブ27をさらに有する。この場合、第二リブ27は、本体部3及び縦壁部10とそれぞれつながっている。本実施形態では、第二リブ27の側面27aが開口部11の端面11aと連続して形成されている。なお、上記構成の第二リブ27は、本実施形態では、組付け座26の短手方向両側に設けられているが、特に後述する形状安定性が必要となる一方の側(例えばカーテンシールドエアバッグ24が配置される側)のみに第二リブ27を設けてもよい。
【0029】
第一リブ28は、本実施形態では、図9に示すように、開口部11の端面11aのうち一方の縦壁部10(カーテンシールドエアバッグ24側の縦壁部10)の厚みが変化する部分Pから第二リブ27の側面27aに跨がった状態で、本体部3の長手方向(X方向)に突出している。また、第一リブ28の側面28aは、側面28aと同じ方向(ここでは車外側)を指向する第二リブ27の頂面27bと連続している。なお、第一リブ28及び第二リブ27を除く組付け座26の構造は、第一実施形態に係る組付け座4の構造と同じであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
上記構成の組付け座26を有するピラーガーニッシュ25は、例えば第一実施形態に係るピラーガーニッシュ1と同様、樹脂の射出成形により形成される。この際、図10に示すように、本体部3の長手方向(X方向)対向するコア17とスライドコア19との間に形成された充填空間20cに溶融樹脂を充填し、固化することで第二リブ27が成形されると共に、第二リブ27とその上端部でつながる第一リブ28が成形される。また、成形後、型開きに伴いスライドコア19を型開き方向と直交する向きに退避させることで、第二リブ27と第一リブ28ともにアンダーカット部となる事態を回避して、第二リブ27と第一リブ28を一体に有する組付け座26(ピラーガーニッシュ25)を金型17~19との干渉なしに取出すことができる。
【0031】
このように、本実施形態では、本体部3の車外側表面3aに、縦壁部10の外側から本体部3の短手方向に伸びる第二リブ27を設けることで、本体部3の形状安定性、特に組付け座4よりも本体部3の短手方向一方側(ここではカーテンシールドエアバッグ24の展開側)の剛性を高めて、フロントピラー2への取付け時における形状安定性を高めることができる。
【0032】
ところで、上述のように縦壁部10の側方から本体部3の短手方向に伸びる第二リブ27を設けた場合には、ピラーガーニッシュ25を取り外そうとして車内側に引っ張った際の応力集中部が、例えば第一実施形態に示す縦壁部10の肉厚変化部Pから第二リブ27と縦壁部10との連結部側に移行するケースも想定され得る。ここで、例えば第二リブ27の頂面27bにおける縦壁部10側の曲率半径を大きくすれば、上記箇所における応力集中を緩和できるように思われるが、これだとカーテンシールドエアバッグ24などを収容するためのスペースが圧迫され、場合によっては収容物との干渉が懸念され得る。もちろん、第二リブ27は本体部3の車外側表面3aとつながっているため、厚みを増すことは意匠面の品質低下を招くおそれがある。以上の点を考慮して、本実施形態では、第一リブ28を開口部11の端面11aのうち肉厚変化部Pから第二リブ27の側面27aに跨った状態で、本体部3の長手方向に突出させるようにした(図9を参照)。これにより、第二リブ27を設けたことで新たに生じた応力集中部を補強して、当該部位における応力集中を効果的に緩和することができる。よって、ピラーガーニッシュ25の形状を安定させながら、取り外しの際の強度を高めて、破損の発生を防止することが可能となる。特に、本実施形態のように、第二リブ27の頂面27bに沿って第一リブ28を配置(第二リブ27の頂面27bと第一リブ28の側面28aが連続するように第一リブ28を配置)することにより、所定の取り外し態様に対して特に有効である。すなわち、図示は省略するが、本体部3の短手方向端部に指を引っ掛けて車内側に押し曲げるようにしてピラーガーニッシュ25を取り外そうとした場合、第二リブ27と縦壁部10との連結部に多大な曲げ応力が生じることが予想される。この場合、第一リブ28を第二リブ27の頂面27bに沿って形成することにより、上述した曲げ応力を効果的に小さくすることができるので、第二リブ27と縦壁部10との間で割れが生じる事態を防止することが可能となる。 もちろん、第一リブ28は開口部11の端面11aと第二リブ27の側面27aとに跨って形成されるので、意匠面となる本体部3の車内側表面3bにヒケ等の欠陥が生じるおそれもない。そのため、形状を含めた意匠品質を確保することが可能となる。
【0033】
なお、以上の説明では、第一リブ16(28)を、開口部11の端面11aのうち縦壁部10の厚みが変化する部分(肉厚変化部)Pから突出させた形態を例示したが、もちろんこれには限定されない。隣接する部位に設けることによっても、応力集中の緩和効果が期待できることから、組付け座4(26)及びその周辺の形状によっては、第一リブ16(28)を、開口部11の端面11aのうち縦壁部10の肉厚変化部Pの近傍から突出させてもよい。
【0034】
また、以上の説明では、第一リブ16(28)を、一方の縦壁部10の側のみに設けた場合を例示しているが、もちろん、一対の縦壁部10,10双方の側に第一リブ16(28)を設けてもかまわない。
【0035】
また、以上の説明では、複数ある組付け座4(26)~6のうち、最も上端側の組付け座4(26)のみに本発明を適用した場合を例示したが(図1を参照)、もちろんこれには限られない。例えば、カーテンシールドエアバッグの仕様変更、新たな種類のエアバッグなどの搭載に備えて、二以上の組付け座4(26),5…に本発明を適用してもよい。
【0036】
また、以上の説明では、車両のボデーを構成するフロントピラーの車内側に取付けられるピラーガーニッシュ1(25)に本発明を適用した場合を例示したが、もちろんこれには限らず、例えばセンターピラーやリヤピラーなどフロントピラー以外のピラーの車内側に取付けられるピラーガーニッシュに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,25 ピラーガーニッシュ
2 フロントピラー
3 本体部
3a 車外側表面
3b 車内側表面
4~6,26 組付け座
7 クリップ
8 組付け穴
9 天壁部
10 縦壁部
11 開口部
11a 端面
12 第一係止部
13 第二係止部
16,28 第一リブ
17 コア
18 キャビティ
19 スライドコア
20a~20c 充填空間
21 インナパネル
22 スナップフィット部
24 カーテンシールドエアバッグ
27 第二リブ
P 肉厚変化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11