(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】試験室圧力制御装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20221011BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01M17/007 P
G01M15/02
(21)【出願番号】P 2019044528
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】小栗 光貴
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-148038(JP,A)
【文献】特開2003-121340(JP,A)
【文献】特開2007-171009(JP,A)
【文献】特開昭63-212836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00
G01M 15/02
G01M 9/04
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置された室内の空気の温度を調節可能な空調機と、
被試験体が設置されるとともに、内部に設置された前記空調機によって所定の温度環境を形成可能な環境試験室とを備え、
前記環境試験室内に前記被試験体を設置した上で該被試験体の試験を行うときに、前記環境試験室内の圧力を制御可能な試験室圧力制御装置であって、
前記環境試験室内に位置する放出口を有するとともに該放出口から放出された外部空気を前記空調機へと供給可能に構成され前記空調機に対し間接接続される第一通路、及び、該第一通路とは異なる第二通路に分岐され、外部から前記環境試験室内へと供給される外部空気が通る外部給気ダクトと、
前記外部給気ダクトにおける前記第一通路及び前記第二通路の分岐部分よりも上流に配置され、外部から前記環境試験室内へと供給される外部空気を除湿するための除湿機と、
前記環境試験室内に配置されるとともに、前記第二通路と接続され、かつ、内部空間を具備する室圧調節用容器と、
前記室圧調節用容器と接続されるとともに、該室圧調節用容器内の空気を外部に排出するための排気ダクトと、
前記第一通路を通して前記空調機側へと空気を送るとともに、前記第二通路を通して前記室圧調節用容器内へと空気を送るために空気に動圧を加えて搬送する送気手段と、
前記排気ダクトを通して前記室圧調節用容器内の空気を外部へと排出するための排気手段と、
前記第二通路を通した前記室圧調節用容器内に対する空気の供給量を調節する給気量調節手段、及び、前記排気ダクトを通した前記室圧調節用容器内からの空気の排出量を調節する排気量調節手段のうちの少なくとも一方を具備し、前記環境試験室内の圧力を調節可能な圧力調節手段とを有し、
前記室圧調節用容器は、前記環境試験室の室内空間と連通する開口部を具備し、該開口部を除いて前記室圧調節用容器の内部空間と前記環境試験室の室内空間とが隔離状態となるように構成されていることを特徴とする試験室圧力制御装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記室圧調節用容器の下部に設けられ、下方に向けて開口することを特徴とする請求項1に記載の試験室圧力制御装置。
【請求項3】
前記圧力調節手段は、前記給気量調節手段及び前記排気量調節手段の双方を具備し、
前記環境試験室内の圧力を検知するための圧力検知手段と、
前記圧力検知手段による検知圧力に基づき前記給気量調節手段及び前記排気量調節手段を制御することで、前記室圧調節用容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の試験室圧力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度環境を形成可能な環境試験室を有し、環境試験室内に配置された被試験体の試験を行う際に、環境試験室内の圧力を制御可能な試験室圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平地だけでなく高地のような低圧環境などの様々な圧力環境での使用を想定して、内燃機関やこれを有する車両、原動機などの被試験体に対し負荷試験を行うことがある。このような試験には、試験室圧力制御装置が利用される。試験室圧力制御装置としては、被試験体を設置可能な環境試験室と、環境試験室内における空気温度を調節して環境試験室に所定の温度環境を形成可能な空調機と、環境試験室内に外部空気を供給するための外部給気ダクトと、環境試験室内の排気ガスを含む空気を外部へと排出するための排気ガス排気ダクトと、環境試験室内の圧力を調節するための圧力調節手段と、環境試験室内の圧力を検知するための圧力センサとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1の場合、圧力調節手段は、環境試験室内の、被試験体から排出される排気ガス及び室内空気を主通気管、つまり排気ガス排気ダクト内へと吸込んで排出するための減圧用ブロアと、被試験体から排出される排気ガスを排出する通気管のほかに、排気ガス排気ダクト内に対する室内空気の吸込量(つまり空気の排出量)を調節するための調圧弁とにより構成される。この試験室圧力制御装置では、圧力センサにより検知された環境試験室内の圧力に応じて減圧用ブロアや調圧弁の動作を制御し、環境試験室内から排出される空気量を調節することで、環境試験室内に所望の圧力環境を形成可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した試験室圧力制御装置では、空調機により温度調節された環境試験室内の空気が排出されることで、環境試験室内の圧力が調節される。そのため、環境試験室が例えば低温環境を実現する空気条件に設定された場合、空調機では、環境試験室内部循環の空気及び被試験体の試験に必要な外部空気(例えば被試験体の吸気分の空気)のみならず、環境試験室内の圧力調節に用いられる外部空気の温度調節も行われることとなる。従って、温度調節された空気のうち圧力調節に用いられる外部空気が無駄に排出されることとなって、その分だけ空調機における空調負荷が高くなってしてしまい、高い空調負荷に対応可能な比較的大型(高性能)の空調機を用意する必要が生じ、ランニングコストなどコスト面で不利になるおそれがある。特に環境試験室に低温環境を形成する空調機では、室内低温空気の露点温度の低さから、常温の空気から非常に多量の除湿を行わなければならず莫大な冷凍エネルギーやデシカント吸湿材の再生エネルギーが必要となる。また、空調負荷が高ければその分エネルギー消費することは必定で、省エネルギー性能や環境性能(CO2排出量など)の点で十分に良好な結果を得ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた省エネルギー性能や環境性能を発揮でき、かつ、コストの抑制を図ることができる試験室圧力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0007】
手段1.設置された室内の空気の温度を調節可能な空調機と、
被試験体が設置されるとともに、内部に設置された前記空調機によって所定の温度環境を形成可能な環境試験室とを備え、
前記環境試験室内に前記被試験体を設置した上で該被試験体の試験を行うときに、前記環境試験室内の圧力を制御可能な試験室圧力制御装置であって、
前記環境試験室内に位置する放出口を有するとともに該放出口から放出された外部空気を前記空調機へと供給可能に構成され前記空調機に対し間接接続される第一通路、及び、該第一通路とは異なる第二通路に分岐され、外部から前記環境試験室内へと供給される外部空気が通る外部給気ダクトと、
前記外部給気ダクトにおける前記第一通路及び前記第二通路の分岐部分よりも上流に配置され、外部から前記環境試験室内へと供給される外部空気を除湿するための除湿機と、
前記環境試験室内に配置されるとともに、前記第二通路と接続され、かつ、内部空間を具備する室圧調節用容器と、
前記室圧調節用容器と接続されるとともに、該室圧調節用容器内の空気を外部に排出するための排気ダクトと、
前記第一通路を通して前記空調機側へと空気を送るとともに、前記第二通路を通して前記室圧調節用容器内へと空気を送るために空気に動圧を加えて搬送する送気手段と、
前記排気ダクトを通して前記室圧調節用容器内の空気を外部へと排出するための排気手段と、
前記第二通路を通した前記室圧調節用容器内に対する空気の供給量を調節する給気量調節手段、及び、前記排気ダクトを通した前記室圧調節用容器内からの空気の排出量を調節する排気量調節手段のうちの少なくとも一方を具備し、前記環境試験室内の圧力を調節可能な圧力調節手段とを有し、
前記室圧調節用容器は、前記環境試験室の室内空間と連通する開口部を具備し、該開口部を除いて前記室圧調節用容器の内部空間と前記環境試験室の室内空間とが隔離状態となるように構成されていることを特徴とする試験室圧力制御装置。
【0008】
尚、「該開口部を除いて前記室圧調節用容器の内部空間と前記環境試験室の室内空間とが隔離状態となる」とあるのは、換言すれば、「前記室圧調節用容器の内部空間から前記環境試験室の室内空間へと直接的に(第一通路や第二通路を介することなく)連通する箇所が開口部のみとなる」ということである。また、「給気量調節手段」は、可変流量の給気ファンや流量調節弁などによって構成することができる。この場合、給気ファンが「送気手段」を兼ねることとしてもよい。さらに、「排気量調節手段」は、可変流量の排気ファンや流量調節弁などによって構成することができる。この場合、排気ファンが「排気手段」を兼ねてもよい。
【0009】
上記手段1によれば、外部から環境試験室内へと供給される空気(外部給気ダクトを通る空気)は第一通路及び第二通路に分流される。そして、送気手段により、第一通路を通る空気は環境試験室内に放出された上で空調機側へと供給され、第二通路を通る空気は室圧調節用容器内へと供給される。空調機側へと供給された空気は該空調機により温度調節される。これにより、環境試験室内に所定の温度環境が形成される。一方、第二通路を通って室圧調節用容器内へと供給された空気は、排気手段によって排気ダクトを通して外部へと排出される。そして、圧力調節手段によって第二通路を介した空気の供給量及び/又は排気ダクトを介した空気の排出量が調節されることで、室圧調節用容器内の圧力が調節される。このときに生じる圧力の変化は、室圧調節用容器に設けられた開口部を通して環境試験室内へとすぐに伝播されるため、環境試験室内の圧力は室圧調節用容器内の圧力と速やかに均一となる(等しくなる)。そのため、室圧調節用容器内の外部給気量と排気量とを調節することだけで、環境試験室内の圧力を調節することが可能となる。
【0010】
さらに、上記手段1によれば、第一通路を通って環境試験室内(空調機側)に供給された空気(前者の空気)及び第二通路を通って室圧調節用容器内に供給された空気(後者の空気)は、環境試験室内の設定温度が低温度設定の場合、それぞれ共通の除湿機によって除湿されたものとなる。そのため、除湿エネルギーは消費するもののその常温で乾燥した空気をさらに低温に温調するエネルギーを消費する手前で、両空気におけるそれぞれの絶対湿度をより確実にほぼ等しくすることができる。加えて、前者の空気は空調機によって温度調節される一方で後者の空気は特段温度調節されないため、両空気の間で十分な温度差を生じさせることができる。そのため、一般に絶対湿度がほぼ等しい一方で温度差のある空気同士は混合した後すぐには均一になりにくい(混ざりにくい)という性質があることから、環境試験室内の空気と室圧調節用容器内の空気とが均一になりにくい(混ざりにくい)状態とすることができる。その結果、環境試験室内の温度調節された空気が室圧調節用容器内の空気と混ざることを効果的に抑制できる。
【0011】
そして、温度調節された空気が室圧調節用容器内の空気と混ざることを抑制できるため、室圧調節用容器から排出される空気を、基本的には、第二通路を通って室圧調節用容器内に供給された空気、すなわち、特段温度調節されていない空気とすることができる。これにより、空気として何ら温度調節されたものを要求しない圧力調節のために温度調節された空気を無駄に排出せずに済み、空調機において、室圧調節用容器内に出入りする空気すなわち環境試験室内の圧力調節に利用される空気の温度調節をほとんど行わずに済む。これらの結果、空調機における空調負荷を大幅に低減させることができ、優れた省エネルギー性能や環境性能を発揮することができる。さらに、空調負荷の低減によって、空調機としては比較的小型な(さほど高性能でない)もので足りることとなり、ランニングコストなどのコストを効果的に抑制することができる。
【0012】
また、空調機は、除湿機によって除湿された空気の温度を調節する。除湿されていない外部の空気は通常多量の水分を含むため、室内に設置された空調機が環境試験室内の空気を冷却除湿し、その空気で室内の内装を冷やしていくと、外部給気ダクトの第一通路から流入した空気の運び入れる多量の水が室内で凝縮しこれが凍結することが繰り返され、霜や氷結が発生・成長し、低温で所定の湿度の環境を形成できない。第一通路と空調機とをダクト等で接続しても、このような空気の温度調節の際には空調機における空調負荷の増大を招き、コストの抑制を十分に図ることができないおそれがある。この点、上記手段1によれば、除湿された空気の温度が調節されることとなるため、空調負荷の低減をより効果的に図ることができ、コストの抑制効果を一層高めることができる。
【0013】
さらに、上記手段1によれば、環境試験室内(空調機側)や室圧調節用容器内へと供給される空気は除湿機により除湿されるため、環境試験室を低温環境とした場合において、環境試験室や室圧調節用容器における結露の発生をより確実に防止することができる。加えて、空調機に内蔵される冷却部分から伝熱された低温表面における結露防止のために、空調機を断熱材で覆わなくてもよく、また、空調機の構成材料として防錆性能に優れる特別な材料を用いる必要がなくなる。そのため、コスト抑制をより効果的に図ることができる。
【0014】
手段2.前記開口部は、前記室圧調節用容器の下部に設けられ、下方に向けて開口することを特徴とする手段1に記載の試験室圧力制御装置。
【0015】
上記手段2によれば、環境試験室内を低温環境とした場合において、室圧調節用容器内の空気がその周囲の環境試験室内の空気より高温となって室圧調節用容器内の上辺から温度成層をなして上昇しようとするので下部開口から漏出しにくくなり、環境試験室内の温度調節された空気が室圧調節用容器内の空気と混ざることをより効果的に抑制できる。これにより、空調機における空調負荷を一層低減させることができ、省エネルギー性能や環境性能、コストの面でより有利な効果を得ることができる。
【0016】
手段3.前記圧力調節手段は、前記給気量調節手段及び前記排気量調節手段の双方を具備し、
前記環境試験室内の圧力を検知するための圧力検知手段と、
前記圧力検知手段による検知圧力に基づき前記給気量調節手段及び前記排気量調節手段を制御することで、前記室圧調節用容器内の圧力を制御可能な圧力制御手段とを有することを特徴とする手段1又は2に記載の試験室圧力制御装置。
【0017】
上記手段3によれば、圧力調節手段は、給気量調節手段及び排気量調節手段のうちの一方のみではなく双方を備えるため、室圧調節用容器内の圧力を速やかに調節することができ、ひいては環境試験室内の圧力についても速やかに調節することができる。また、圧力制御手段によって環境試験室内の圧力に基づく室圧調節用容器内の圧力制御が可能となるため、環境試験室内の圧力を自動的に所望の圧力に変更したり所望の圧力で維持したりすることが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態における試験室圧力制御装置の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。試験室圧力制御装置1は、環境試験室2、空調機3、外部給気ダクト4、除湿機5、室内ガス排出部6、室圧調節用容器7、排気ダクト8、圧力調節手段としての圧力調節部9、圧力検知手段としての圧力センサ10及び圧力制御手段としての圧力制御部11を備えている。
【0020】
環境試験室2は、断熱材などを備えてなる複数の壁によって画された室内空間を有しており、該室内空間には、被試験体としての車両21が設置されている。車両21は、図示しないエンジン(内燃機関)を有しており、該エンジンはその動作時に排気ガスを排出する。また、環境試験室2には、作業者等の出入りや車両21の搬入出のためのドアやシャッタなど(不図示)が設けられている。
【0021】
空調機3は、環境試験室2内に設置されており、該環境試験室2内における空気の温度を調節することで、環境試験室2内に所定の温度環境を形成するためのものである。空調機3は、例えば、空気を加熱するための電気ヒータ若しくは熱媒をチューブ内に流す加熱コイル、空気を冷却するためのブラインコイルや直膨コイルである冷却機、環境試験室2内の空気を吸込むための第一有圧換気扇、及び、外部に温度調節された空気を吹出すための第二有圧換気扇などを備えている(それぞれ不図示)。空調機3中の空気を搬送する送風機は、第一有圧換気扇と第二有圧換気扇とに分けずともシロッコファンなど違う形式で静圧が確保できれば一台にまとめてもよい。本実施形態において、空調機3は、少なくとも空気の温度を低温(例えば約-40℃~約15℃)に調節することが可能であり、空気を上記のような低温に調節することで、環境試験室2内に低温環境(例えば0℃以下の温度環境)を形成可能となっている。また、本実施形態における空調機3は、結露防止のための断熱材などで覆われてはおらず、さらに、その構成材料として防錆性能に優れる特別な材料を用いていないものである。
【0022】
加えて、空調機3には、温度調節された空気(本実施形態では例えば冷却された空気)を車両21側に送るための温調給気ダクト13の一端部が接続されている。また、温調給気ダクト13の他端側開口の正面には、車速による気流速形成吹出ファン14が設けられている。空調機3によって温度調節された空気は、前記車速による気流速形成吹出ファン14の動作により、温調給気ダクト13を通って供給される温調給気及び周囲の室内空気を共に吸い込んで車両21に向けて吹き出される。尚、エンジン単体を被試験体として車速に合わせた気流が必要ない場合などでは、空調機3により温度調節された空気を、環境試験室2内へと単に放出するように構成してもよい。
【0023】
外部給気ダクト4は、環境試験室2内及び外部を連通し、外部から環境試験室2内へと供給される空気が通る流路を構成する。外部給気ダクト4は、共通路43と、それぞれ共通路43の最下流部に連なる分岐形成された第一通路41及び第二通路42とを備えている。
【0024】
除湿機5は、環境試験室2外において、第一通路41及び第二通路42への分岐部分よりも上流の前記共通路43に対応して配置されており、外部から環境試験室2内へと供給される外部空気を除湿する。除湿機5により除湿された外部空気は、第一通路41及び第二通路42のそれぞれに分岐して流入する。尚、本実施形態では、除湿機5により除湿された空気の露点温度が、空調機3により温度調節されるべく試験のため設定された室内温湿度条件の空気の露点温度と同じものとされる。
【0025】
第一通路41は、環境試験室2内に位置する放出口41aを端部に有している。放出口41aにおいて、後述する給気ファン91aの動作により外部から外部給気ダクト4へ導入した空気が除湿機5を通過し、第一通路41を通過した除湿済みの空気が環境試験室2内に放出される。そして、放出された除湿空気は、環境試験室2内の空気とともに空調機3へと空調機3に内蔵される送風機によって吸引供給される。すなわち、第一通路41は、空調機3に対し間接接続されている。
【0026】
第二通路42は、その端部が室圧調節用容器7の上部(後述する上面部71)に接続されている。後述する給気ファン91aの動作により、外部から導入された除湿空気は、第二通路42を通って室圧調節用容器7内に供給される。
【0027】
室内ガス排出部6は、環境試験室2内の被試験体である車両21(のエンジン)から排出される排気ガス及びそれを冷却するための周囲空気などの室内に不要なガスを外部へと排出するためのものである。室内ガス排出部6は、室内ガス排出管61及び室内ガス排出ファン62を備えている。
【0028】
室内ガス排出管61は、環境試験室2内及び外部を連通し、前記ガスの通る流路を構成する。室内ガス排出管61の端部には、排気ガスと、排気ガスを希釈しかつ間接接続で排気ガスを溢れさせないための希釈用空気としての環境試験室2内の空気とを取込むための取込口61aが設けられている。
【0029】
室内ガス排出ファン62は、環境試験室2内から外部へと前記ガスを送り出すためのファンである。室内ガス排出ファン62の動作により、排気ガスと空気とが室内ガス排出管61内に取り込まれて混合され、空気によって希釈されて十分に低温(例えば350℃程度以下)となった排気ガスが外部へと排出される。排気ガスを希釈して低温とすることで、室内ガス排出ファン62などの破損防止を図ることができる。
【0030】
室圧調節用容器7は、内部空間を有する箱状体であり、環境試験室2内における該環境試験室2の床面から離間した位置に配置されている。本実施形態において、室圧調節用容器7は、上壁部71、下壁部72及び上下両壁部71,72間に位置する4つの側壁部73を備えており、直方体状(箱状)の外観をなしている。
【0031】
また、室圧調節用容器7は、自身の内部空間と環境試験室2の室内空間とを連通する開口部7aを備えている。本実施形態の開口部7aは、室圧調節用容器7の下部(下壁部72)に設けられており、下方に向けて開口する1つの円形状又は多角形状の孔により構成されている。尚、空調機3の動作に伴い室圧調節用容器7の空気が空調機3側へと流出しないように、開口部7aを、室圧調節用容器7における空調機3側に位置する部位以外の部位に形成することが好ましい。
【0032】
さらに、室圧調節用容器7の内部空間は、開口部7aを除いて環境試験室2の室内空間と隔離された状態となっている。すなわち、室圧調節用容器7の内部空間から環境試験室2の室内空間へと直接的に(第一通路41や第二通路42を介することなく)連通する箇所は、開口部7aのみとされている。
【0033】
排気ダクト8は、室圧調節用容器7内と外部とを連接し、室圧調節用容器7内から外部へと排出される空気の流路を構成する。排気ダクト8は、室圧調節用容器7(本実施形態では側壁部73)と接続されている。
【0034】
圧力調節部9は、室圧調節用容器7内及び環境試験室2内の圧力を調節するためのものである。圧力調節部9は、給気量調節手段としての給気量調節部91と、排気量調節手段としての排気量調節部92とを備えている。尚、室圧調節用容器7内の圧力は、開口部7aを通して環境試験室2内へとすぐに伝播される。そのため、環境試験室2内の圧力は室圧調節用容器7内の圧力と速やかに均一となる(等しくなる)。
【0035】
給気量調節部91は、第二通路42を通した室圧調節用容器7内に対する空気の供給量を調節しながら環境試験室2の圧力も調節するためのものである。給気量調節部91は、給気ファン91a、第一流量制御弁91b及び第二流量制御弁91cを備えている。給気ファン91aは、共通路43に対応して設けられており、例えばファンモータの回転数可変のためのインバータなどによって、自身の動作速度を増減することにより下流側(第一通路41及び第二通路42側)に送る空気の流量を変更可能に構成されている。第一流量制御弁91bは、第一通路41に対応して設けられており、第一通路41の開度を調節可能である。第二流量制御弁91cは、第二通路42に対応して設けられており、第二通路42の開度を調節可能である。尚、本実施形態では、給気ファン91aの動作によって、第一通路41を通して空調機3側へと空気を送られ、第二通路42を通して室圧調節用容器7内へと空気が送られる。従って、給気ファン91aが送気手段に相当する。
【0036】
排気量調節部92は、排気ダクト8を通した室圧調節用容器7内から外部への空気の排出量を調節するためのものである。排気量調節部92は、排気ファン92aを備えている。排気ファン92aは、排気ダクト8に対応して設けられており、例えばファンモータの回転数可変のためのインバータなどによって、自身の動作速度を増減することにより下流側(外部側)へ送る空気の流量を変更可能に構成されている。尚、本実施形態では、排気ファン92aの動作によって、排気ダクト8を通して室圧調節用容器7内の空気が外部へと送出される。本実施形態では、排気ファン92aが排気手段に相当する。
【0037】
圧力センサ10は、少なくとも圧力の検知部が環境試験室2内に設置されており、環境試験室2内の圧力を検知する。圧力センサ10は、検知された環境試験室2内の圧力計測実測値を電気的信号にして圧力制御部11へと送信する。
【0038】
圧力制御部11は、例えばCPUや各種情報を記憶するROM、RAM等を備えたコンピュータシステムにより構成されている。圧力制御部11は、圧力センサ10による検知圧力実測信号と圧力制御部11に設定される圧力設定値との偏差に基づき出力信号を演算し、圧力調節部9(給気ファン91a、第一流量制御弁91b、第二流量制御弁91c及び排気ファン92a)の各操作器の動作について各々へ制御信号を出力しこれらを制御することで、室圧調節用容器7内の圧力を制御する。本実施形態において、圧力制御部11は、第二通路42を通った室圧調節用容器7内に対する空気の供給量と、排気ダクト8を通った室圧調節用容器7内から外部に対する空気の排出量とのバランスを調節することで、室圧調節用容器7内の圧力やひいては環境試験室2内の圧力を制御する。
【0039】
また、圧力制御部11は、室内ガス排出ファン62の動作も制御可能とされる場合がある。本実施形態において、圧力制御部11は、室内ガス排出管61を通って外部へと排出されるガスの流量の多段階で選択可能な設定値に応じて、該設定値と第一通路41を通って環境試験室2内へと供給される空気の流量の設定値とがほぼ同量(より詳しくは、標準状態に換算した場合の流量がほぼ同量)に設定されるように、室内ガス排出ファン62や給気ファン91a等の動作を制御する。勿論、室内ガス排出ファン62の流量は一定でも構わない。
【0040】
上記のように構成された試験室圧力制御装置1では、第一通路41を通った環境試験室2内に対する空気の供給と室内ガス排出部6によるガスの排出との風量差によって、被試験体であるエンジンを含む車両21の吸気量や排気ガス排出量が一定の場合、環境試験室2内にはある程度の外部との圧力差が生じた状態となる。つまり、室内ガス排出部6によるガスの排出量が大きく、第一通路41を介した環境試験室2への空気の供給量が小さい場合、大気圧である外部より低圧の圧力場を形成できる。そして、被試験体である車両21の運転状態変化による車両21の吸入空気量と燃焼後の排気ガス量との過渡的な量変化に伴う環境試験室2内の圧力変動は、圧力制御部11によって圧力調節部9の動作を制御して室圧調節用容器7内の圧力を調節し、この調節された圧力を環境試験室2内へと伝播させることによって調節することができる。例えば、圧力制御部11による、応答の早い第一流量制御弁91bや第二流量制御弁91cなどの即座の応答による開度変化、及び、圧力変化に専用動作を行う排気ファン92aの風量変化により、室圧調節用容器7内の圧力が比較的低くなるように圧力調節部9を制御することで、過渡的に高くなりつつある環境試験室2内の圧力についても即座に比較的低いものとすることができる。一方、圧力制御部11による、応答の早い第一流量制御弁91bや第二流量制御弁91cなどの即座の応答による開度変化、及び、圧力変化に専用動作を行う排気ファン92aの風量変化により、室圧調節用容器7内の圧力が比較的高くなるように圧力調節部9を制御することで、過渡的に低くなりつつある環境試験室2内の圧力について即座に比較的高いものとすることができる。
【0041】
以上詳述したように、本実施形態によれば、圧力調節部9によって第二通路42を介した空気の供給量及び排気ダクト8を介した空気の排出量が調節されることで、室圧調節用容器7内の圧力を調節することができる。そして、このときに生じる圧力の変化は、開口部7aを通して環境試験室2内へとすぐに伝播されるため、環境試験室2内の圧力は室圧調節用容器7内の圧力と速やかに均一となる(等しくなる)。従って、室圧調節用容器7内の圧力を、2つの流量制御弁91b,91cと排気ファン92aとを積極的に調節することだけで、環境試験室2内の圧力を調節することができる。
【0042】
さらに、第一通路41を通って環境試験室2内(空調機3側)に供給された空気(前者の空気)及び第二通路42を通って室圧調節用容器7内に供給された空気(後者の空気)は、それぞれ共通の除湿機5によって除湿されたものとなる。そのため、両空気におけるそれぞれの絶対湿度をより確実にほぼ等しくすることができる。加えて、前者の空気は空調機3によって温度調節される一方で後者の空気は特段温度調節されないため、両空気の間で十分な温度差を生じさせることができる。そのため、一般に絶対湿度がほぼ等しい一方で温度差のある空気同士は均一になりにくい(混ざりにくい)という性質があることから、環境試験室2内の空気と室圧調節用容器7内の空気とが均一になりにくい(混ざりにくい)状態とすることができる。その結果、環境試験室2内の温度調節された空気が室圧調節用容器7内の空気と混ざることを効果的に抑制できる。
【0043】
そして、温度調節された空気が室圧調節用容器7内の空気と混ざることを抑制できるため、室圧調節用容器7から排出される空気を、基本的には特段温度調節されていない空気とすることができる。これにより、圧力調節のために温度調節された空気を無駄に排出せずに済み、また、空調機3において、室圧調節用容器7内に出入りする空気すなわち環境試験室2内の圧力調節に利用される空気の温度調節をほとんど行わずに済む。これらの結果、空調機3における空調負荷を大幅に低減させることができ、優れた省エネルギー性能や環境性能を発揮することができる。さらに、空調負荷の低減によって、空調機3としては比較的小型な(さほど高性能でない)もので足りることとなり、ランニングコストなどのコストを効果的に抑制することができる。
【0044】
また、空調機3は、除湿機5によって除湿された空気の温度を調節する。従って、除湿されていない外部の空気の温度調節を行う場合と比較して、空調負荷の低減をより効果的に図ることができ、コストの抑制効果を一層高めることができる。
【0045】
さらに、環境試験室2内(空調機3側)や室圧調節用容器7内へと供給される空気は除湿機5により除湿されるため、本実施形態のように環境試験室2を低温環境とした場合において、環境試験室2や室圧調節用容器7における結露の発生をより確実に防止することができる。加えて、空調機3として、結露防止のための断熱材で覆われておらず、また、防錆性能に優れる特別な材料を構成材料としないものを利用することができる。そのため、コスト抑制をより効果的に図ることができる。
【0046】
また、除湿機5により除湿された空気の露点温度が、空調機3により温度調節された空気の温度よりも低いものとされるため、環境試験室2や室圧調節用容器7における結露の発生を一層確実に抑えることができる。
【0047】
さらに、開口部7aを室圧調節用容器7の下部において下方に開口するように構成することで、本実施形態のように環境試験室2内を低温環境とした場合において、環境試験室2内の温度調節された空気が室圧調節用容器7内の空気と混ざることをより効果的に抑制できる。これにより、空調機3における空調負荷を一層低減させることができ、省エネルギー性能や環境性能、コストの面でより有利な効果を得ることができる。
【0048】
加えて、圧力調節部9は、給気量調節部91及び排気量調節部92のうちの一方のみではなく双方を備えるため、室圧調節用容器7内の圧力を速やかに調節することができ、ひいては環境試験室2内の圧力についても速やかに調節することができる。また、圧力制御部11によって環境試験室2内の圧力に基づく室圧調節用容器7内の圧力制御が可能であるため、環境試験室2内の圧力を自動的に所望の圧力に変更したり所望の圧力で維持したりすることが容易に可能となる。
【0049】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0050】
(a)上記実施形態において、室圧調節用容器7は、直方体状の外観をなすように構成されているが、室圧調節用容器7の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、室圧調節用容器7の外観形状を円柱状、円錐状、角柱状、球状又は錐台状などとしてもよい。
【0051】
(b)上記実施形態において、開口部7aは、室圧調節用容器7の下壁部72に設けられた、下方に向けて開口する1つの円形状の孔により構成されているが、開口部7aの配設位置や形状、数に関しては、環境試験室2内に対する室圧調節用容器7内の圧力の伝播や、室圧調節用容器7内の空気に対する環境試験室2内の空気の混合抑制が十分に可能である限り、適宜変更可能である。従って、例えば、開口部7aを、室圧調節用容器7の側壁部73(例えば、側壁部73の下側部位など)に設けてもよい。また、開口部7aを三角形状や矩形状、多角形状、楕円形状などとしてもよいし、複数設けることとしてもよい。
【0052】
(c)上記実施形態において、圧力調節部9は、給気量調節部91及び排気量調節部92を備えており、第二通路42を通った室圧調節用容器7内に対する空気の供給量、及び、排気ダクト8を通った室圧調節用容器7からの空気の排出量の双方を調節可能とされている。これに対し、第二通路42を通った室圧調節用容器7内に対する空気の供給量、及び、排気ダクト8を通った室圧調節用容器7からの空気の排出量のうちの一方のみを調節可能となるように圧力調節部9を構成してもよい。すなわち、圧力調節部9は、給気量調節部91及び排気量調節部92のうちの一方のみを備えるものであってもよい。
【0053】
(d)上記実施形態において、給気量調節部91は、給気ファン91a、第一流量制御弁91b及び第二流量制御弁91cを備えているが、第二通路42を通した室圧調節用容器7内に対する空気の供給量を調節可能である限り、給気量調節部91の構成を適宜変更してもよい。従って、例えば、給気量調節部91を、給気ファン91aのみによって構成してもよいし、第一流量制御弁91b及び第二流量制御弁91cのうちの一方と給気ファン91aとによって構成してもよい。また、給気量調節部91は、第二通路42に対応して設けられたファンを備えるものであってもよい。
【0054】
(e)上記実施形態における給気ファン91aは、下流側(第一通路41及び第二通路42側)へ送る空気の流量を変更可能に構成されているが、給気ファンを一定の回転数で回転動作するものとし、下流側へと一定量の空気を送るように構成してもよい。尚、この場合、給気量調節部91は第一流量制御弁91bを少なくとも必須構成とする。また、排気量調節部92は可変流量の排気ファン92aによって構成することができる。
【0055】
(f)上記実施形態において、送気手段は、共通路43に設けられた給気ファン91aにより構成されているが、第一通路41及び第二通路42のそれぞれに設けられた給気ファンによって送気手段を構成してもよい。つまり、送気手段は、第一通路41を通して空気を送るものと、第二通路42を通して空気を送るものとが別々となった構成であってもよい。尚、この場合、第二通路42に設けられた給気ファンによって、第二通路42を通した室圧調節用容器7内に対する空気の供給量を調節可能としてもよい。すなわち、第二通路42に設けられた給気ファンが給気量調節部91の構成要素となるようにしてもよい。
【0056】
(g)上記実施形態において、排気量調節部92は、排気ファン92aにより構成されているが、排気ダクト8を通した室圧調節用容器7から外部への空気の排出量を調節可能である限り、排気量調節部92の構成を適宜変更してもよい。従って、例えば、排気量調節部92を、排気ファン92aと、排気ダクト8の流路断面積(流路抵抗)を調節可能な流量制御弁とによって構成してもよい。
【0057】
(h)上記実施形態における排気ファン92aは、下流側(外部)へと送る空気の流量を変更可能に構成されているが、排気ファンを一定の回転数で回転するものとし、下流側へと一定流量の空気を送るように構成してもよい。尚、この場合、排気量調節部92を、排気ダクト8の流路断面積(流路抵抗)を調節可能な流量制御弁によって構成することができる。
【0058】
(i)上記実施形態では、被試験体として車両21を例示しているが、被試験体はこれに限定されるものではない。従って、被試験体は、例えば、エンジン単体や原動機などであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…試験室圧力制御装置、2…環境試験室、3…空調機、4…外部給気ダクト、5…除湿機、7…室圧調節用容器、7a…開口部、8…排気ダクト、9…圧力調節部(圧力調節手段)、10…圧力センサ(圧力検知手段)、11…圧力制御部(圧力制御手段)、21…車両(被試験体)、41…第一通路、41a…放出口、42…第二通路、91…給気量調節部(給気量調節手段)、92…排気量調節部(排気量調節手段)、91a…給気ファン(送気手段)、92a…排気ファン(排気手段)。